JP2000241605A - 反射防止膜及び表示装置並びに成膜装置 - Google Patents

反射防止膜及び表示装置並びに成膜装置

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JP2000241605A
JP2000241605A JP11334970A JP33497099A JP2000241605A JP 2000241605 A JP2000241605 A JP 2000241605A JP 11334970 A JP11334970 A JP 11334970A JP 33497099 A JP33497099 A JP 33497099A JP 2000241605 A JP2000241605 A JP 2000241605A
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thin film
optical thin
film forming
thickness
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Hirokazu Ishikawa
博一 石川
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Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 密着性に優れ、透過率を調整でき、かつ、光
学特性にも優れている。 【解決手段】 基板の一主面上に、ケイ素、ケイ素酸化
物、ケイ素窒化物のいずれかからなる接着層と、金属窒
化物を含有する第1の光学薄膜と、屈折率が1.8以上
である第2の光学薄膜と、屈折率が1.35〜1.7の
範囲である第3の光学薄膜とが、この順に積層形成され
てなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、反射防止膜及びそ
れを用いた表示装置、並びに当該反射防止膜の製造に適
した成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、反射防止膜は、例えば空気とガラ
スとの光学的境界面における屈折率を減少させる必要が
ある光学や電気光学の分野で広く使われている。これら
の応用分野としては、カメラのレンズ、コピー装置のプ
ラテン(原稿台)、機器用のカバーガラス、陰極線管
(いわゆる、CRT)用パネル、その他の表示装置等が
ある。
【0003】このような反射防止膜としては、例えば図
7に示すような構成のものが挙げられる。すなわち、樹
脂基板101の一主面101a上に例えば厚さ10nm
のSiOX(Xは2未満の正数)よりなる第1の層10
2、例えば厚さ20nmのITO(インジウム錫酸化
物:indium tin oxide)層よりなる第2の層103、例
えば厚さ25nmのSiO2よりなる第3の層104、
例えば厚さ60nmのITO層よりなる第4の層10
5、例えば厚さ100nmのSiO2よりなる第5の層
106が順次形成されてなるものが挙げられる。
【0004】しかしながら、このような反射防止膜は5
層にもわたる多層構造であり、総膜厚が215nmと厚
いことから、その製造が困難かつ煩雑となる。その結
果、生産性が良好ではない、製造コストが高価となって
しまうといった不都合が生じている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、積層数ができ
るだけ少ない反射膜が要求されている。積層数が少なけ
れば、積層工程が少ないことから製造が容易かつ簡便と
なり、生産性が良好となって、製造コストも削減される
ことは明らかである。
【0006】このような要求に対応するべく、特開平9
−156964号公報や、特開平9−165231号公
報等に示されるように、基板上に第1の光学薄膜として
TiNを主として含む薄膜を配し、その上に第2の光学
薄膜として比較的低屈折率のSiO2薄膜を配した反射
防止膜が提案されている。
【0007】しかしながら、これらの反射防止膜は、ガ
ラス基板に接着されることを前提として作製されてお
り、プラスチック基板に接着して使用する場合には、プ
ラスチック基板と反射防止膜との密着性がよくないこと
から、簡単に膜が剥離してしまう。
【0008】ところで、陰極線管のパネルガラスの透過
率は、50%前後とされているが、透過率が低いほど、
陰極線管の画像の輝度は下がり、その一方でコントラス
トは上がるという特性がある。特に、陰極線管をモニタ
ーとして用いる場合には、コントラストの高いものが好
まれる。コントラストの調整は、パネルガラスの透過率
を調整することで可能であるが、幾つかの製品毎にパネ
ルガラスのコントラストを微妙に調整するのは容易なこ
とではない。さらに、フラットパネルでは、中心部と端
部とでガラスの厚さが異なり、ガラス材料の吸収が強い
と、中心部と端部とで光の透過率が異なることとなる。
これは、陰極線管としては好ましいことではない。
【0009】そこで、パネルガラスには透明のものを用
い、反射防止膜の透過率を調整することによりコントラ
ストを上げる方法が模索されている。
【0010】しかしながら、反射防止膜の構成を変えず
に透過率を上げようとすると反射率が高くなり、また、
透過率を下げようとするとバンド幅が狭くなるなど、種
々の特性が良好な反射防止膜は得られていない。
【0011】そこで本発明は上述したような従来の実情
に鑑みて提案されたものであり、密着性に優れ、透過率
を調整でき、かつ、光学特性の良い反射防止膜を提供す
ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の反射防止膜は、
基板の一主面上に、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素窒化
物のいずれかからなる接着層と、金属窒化物を含有する
第1の光学薄膜と、屈折率が1.8以上である第2の光
学薄膜と、屈折率が1.35〜1.7の範囲である第3
の光学薄膜とが、この順に積層形成されてなることを特
徴とする。
【0013】上記第2の光学薄膜については、その屈折
率が比較的高い1.8以上のものが適当であるが、特に
2以上であることが好ましい。また第3の光学薄膜の材
料としては、比較的屈折率の低いSiO2、MgF2、A
23が好ましく、これらの屈折率は1.35〜1.7
の範囲内にある。
【0014】上述したような本発明に係る反射防止膜で
は、各構成膜の材料、特性が規定されているので、各構
成膜の膜厚を変化させることにより、光学特性を低下さ
せることなく透過率を調整することができる。
【0015】また、本発明の反射防止膜は、基板の一主
面上に、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物のいずれ
かからなる接着層と、金属窒化物を含有する第1の光学
薄膜と、屈折率が1.35〜1.7の範囲である第2の
光学薄膜とが、この順に積層形成されてなることを特徴
とする。
【0016】上述したような本発明に係る反射防止膜で
は、各構成膜の材料、特性が規定されており、各構成膜
の膜厚を変化させることにより、光学特性を低下させる
ことなく透過率を調整することができる。
【0017】また、本発明の表示装置は、表示部のフェ
ース・プレート表面側に、反射防止膜が配され、上記反
射防止膜は、基板の一主面上に、ケイ素、ケイ素酸化
物、ケイ素窒化物のいずれかからなる接着層と、金属窒
化物を含有する第1の光学薄膜と、屈折率が1.8以上
である第2の光学薄膜と、屈折率が1.35〜1.7の
範囲である第3の光学薄膜とが、この順に積層形成され
てなるとともに、上記基板が対向面となるように配され
ていることを特徴とする。
【0018】上述したような本発明に係る表示装置で
は、表示部のフェース・プレート表面側に配された上記
反射防止膜の各構成膜の材料、特性が規定されており、
各構成膜の膜厚を変化させることにより、光学特性を低
下させることなく透過率を調整することができるため、
コントラストの良い画像が得られる。
【0019】また、本発明の成膜装置は、連続して走行
するフィルム状の基板の主面上に薄膜を形成する成膜装
置であって、上記基板の走行路に沿って配された複数の
成膜室を有し、上記複数の成膜室は、異なる材料からな
る薄膜を形成する成膜手段をそれぞれ有し、上記基板
は、上記複数の成膜室を通過する際に、それぞれの成膜
室に配された成膜手段によって薄膜が形成されることに
より、複数の薄膜が順次積層形成されることを特徴とす
る。
【0020】上述したような本発明に係る表示装置で
は、異なる材料からなる薄膜を形成する成膜手段をそれ
ぞれ有する複数の成膜室が、走行するフィルム状の基板
の走行路に沿って連続して配されているので、連続的に
複数の薄膜を順次積層形成できる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。本実施の形態に係る反射防止膜1は、図1
に示すように、基板2上に、接着層3と、第1の光学薄
膜4と、第2の光学薄膜5と、第3の光学薄膜6とが、
この順に積層形成されてなる。
【0022】基板2は、ポリエチレンテレフタレート
(以下、PETと呼ぶ。)フィルム、透明又は半透明の
ガラス等からなる。基板2の材料としてPETフィルム
を用いる場合、図1に示すように、PETフィルム2a
上にハードコート層2bを形成する。このハードコート
層2bは、この種の反射防止膜において一般的なアクリ
ル等の樹脂が塗布することにより形成される。
【0023】接着層3の材料としては、ケイ素、ケイ素
酸化物、ケイ素窒化物のいずれかが用いられることが好
ましく、その中でも特に、光学特性等の観点からSiO
X(Xは2未満の正数)が用いられることが好ましい。
この接着層3は、反射防止膜1を基板2上に密着させる
役割を担うと同時に、反射防止膜1の光学特性にも寄与
する。
【0024】そして、この接着層3の膜厚は、1nm〜
10nm程度の範囲であることが好ましい。接着層3の
膜厚が1nmよりも小さいと、反射防止膜1を基板2上
に十分に密着させることができない。また、接着層3の
膜厚が10nmよりも大きいと反射防止膜1の光学特性
を低下させてしまう。接着層3の膜厚を1nm〜10n
mとすることで、反射防止膜1を基板2上に十分に密着
させることができるとともに、反射防止膜1の光学特性
を良好なものとすることができる。
【0025】具体的には、例えば後述する実験例にも示
されるように、接着層3の材料としてSiOXを用い、
反射防止膜1の透過率を63.5%とした場合には、光
学特性等の観点から、接着層3の最適膜厚は5nm程度
とされる。
【0026】第1の光学薄膜4は、金属窒化物を含有す
る。第1の光学薄膜4に用いられる金属窒化物として
は、窒化チタン、窒化ジルコニウム又は窒化ハフニウム
等が挙げられる。その中でも、導電性を有するものが好
ましく、窒化チタンが最も好ましいものとして挙げられ
る。
【0027】そして、この第1の光学薄膜4の厚みは、
光学特性の観点から、7nm〜37nm程度の範囲とす
ることが好ましい。さらに、この反射防止膜1でバンド
幅が1.5以上の特性を得ようとすると、第1の光学薄
膜4は、14nm〜27nm程度の厚さとすることがよ
り好ましい。例えば、第1の光学薄膜4の材料として窒
化チタン(TiN)を用いた場合、TiNは成膜条件に
より光学特性が異なるが、その厚みを上述の範囲とすれ
ば、良い特性の反射防止膜1を構成できる。
【0028】ここで、バンド幅とは、ある光学特性を満
たす波長領域の最長波長を最短波長で割った値であっ
て、ここでは反射率のカーブが1%を超える可視領域の
バンド幅、すなわち長波長側で反射率が1%を超えると
ころの波長を、短波長側で1%を超えるところの波長で
割った値とした。例えば、その特性を満たす波長領域が
450nmから700nmの間とすると、バンド幅は7
00/450≒1.556となる。この値は大きいほど
良い。
【0029】また、この第1の光学薄膜4に用いられる
材料は、視感波長範囲における屈折率nと消衰係数kと
が、{n(r)−0.5}≦n≦{n(r)+0.
5}、{k(r)−0.5}≦k≦{k(r)+0.
5}を満たす材料であることが好ましい。ここで、n
(r)は波長λにおける屈折率であり、また、k(r)
は波長λにおける消衰係数である。そして、このn
(r)及びk(r)は、次の近似式で表される。
【0030】n(r)=-0.00642nS 2+1.66878nS+0.02
786kS 2+0.83206kS+0.15426r2-0.85276r-0.01964nS
S-0.58109nSr-0.93386kSr+0.66289 k(r)=0.0496972nS 2-2.07664nS+0.00896kS 2+1.3
025kS-3.44187r2+7.11118r-0.03678nSS+1.95241
Sr-0.22876kSr-3.69482 ここで、上式中nSは、参照波長λSにおける屈折率であ
り、kSは、参照波長λSにおける消衰係数である。ま
た、rはλ/λSで表される係数である。
【0031】上式を満たすような材料を第1の光学薄膜
4に用いることで、導電性が高く、広い周波数帯域にお
いても反射防止率が高い反射防止膜1を得ることができ
る。なお、上記式については、本発明者の発明による特
開平9−165231号公報に、その詳細が記されてい
る。
【0032】第2の光学薄膜5は、屈折率が1.8〜3
程度の比較的屈折率の高い材料からなる。このような屈
折率の高い材料としては、透明導電膜、ITO又はSi
X(Xは2未満の正数)等が挙げられ、その中でもよ
り好ましい材料としてはITOが挙げられる。
【0033】そして、この第2の光学薄膜5は、その厚
みが25nm以下の範囲であることが好ましい。第2の
光学薄膜5の厚みを25nm以下の範囲とすることで、
良い特性の反射防止膜1が得られる。さらに、この反射
防止膜1でバンド幅が1.5以上の特性を得ようとする
と、第2の光学薄膜5の厚みは20nm以下とすること
がより好ましい。
【0034】第3の光学薄膜6は、屈折率が1.35〜
1.7の範囲である比較的屈折率の低い材料からなる。
このような屈折率の低い材料としては、SiO2、Mg
2又はAl23等が挙げられ、その中でもより好まし
い材料としてはSiO2が挙げられる。
【0035】そして、この第3の光学薄膜6の厚みは、
40nm〜100nmの範囲であることが好ましい。第
3の光学薄膜6の厚みを40nm〜100nmとするこ
とで、良い特性の反射防止膜1が得られる。さらに、こ
の反射防止膜1でバンド幅が1.5以上の特性を得よう
とすると、第3の光学薄膜6の厚みは60nm〜80n
mの範囲とすることがより好ましい。
【0036】上述したような構成を有することによっ
て、この反射防止膜1は、基板2との密着性を良好に保
つことができるだけでなく、光学特性にも優れたものと
なる。さらに、この反射防止膜1は、後述する実験例に
も示されるように、各層の膜厚を適宜変化させること
で、その透過率を45%〜70%の範囲で調整すること
ができる。
【0037】ここで、反射防止膜1の透過率が70%以
下である反射防止膜1の需要は、透過率が80%を超え
るものに比べて大きい。よって、反射防止膜1の透過率
の調整は、陰極線管のコントラストを向上させるために
は重要な技術であり、それを実現する反射防止膜1が強
く望まれていた。
【0038】本実施の形態に係る反射防止膜1では、後
述する実験例に具体的に示されるように、反射率やバン
ド幅等の特性を低下させることなく透過率を調整するこ
とができる。
【0039】さらに、この4層構成の反射防止膜1は、
トータル膜厚が110nm程度であり、従来の反射防止
膜の膜厚(200nm以上)に比べて半分程度である。
したがって、従来の製造装置を用いて本実施の形態に係
る反射防止膜1を製造する場合、生産量の向上が期待で
きる。
【0040】なお、この反射防止膜1を、接着層3と、
第1の光学薄膜4と、第3の光学薄膜6とからなる3層
構成とすることもできる。後述する実験例に示されるよ
うに、透過率が70%以下の反射防止膜1を要する場合
は4層の構成が必要とされるが、透過率が70%を超え
る反射防止膜1を要する場合は、第2の光学薄膜5をな
くした3層構成とした場合でも十分良好な特性が得られ
る。したがって、3層構成と4層構成とを適宜使い分け
ることで広範囲な透過率調整が可能となる。
【0041】また、この反射防止膜1については、第3
の光学薄膜6上に、保護膜が配されていることが好まし
い。この保護膜の厚さは、約5nm以下が適当である。
【0042】そして、上述したような反射防止膜1を表
示部のフェース・プレート表面側に配して陰極線管を構
成しても良い。
【0043】すなわち、図2に示すように、陰極線管1
0のフェース・プレート11上に接着層12を介して、
基板2上に接着層3と第1の光学薄膜4と第2の光学薄
膜5と第3の光学薄膜6とが積層された本実施の形態に
係る反射防止膜1を配し、さらにその上に防染コート層
13を配したものが挙げられる。この場合、反射防止膜
1の第1の光学薄膜4が窒化チタンを主として含み、こ
の第1の光学薄膜4が導電性を有し、かつ接地されてい
ることが好ましい。
【0044】上記本発明の反射防止膜1を、表示部のフ
ェース・プレート11の表面側に配した本発明の陰極線
管10においては、反射防止特性が良好で実用に適した
ものとなる。
【0045】さらに、この場合、反射防止膜1の第1の
光学薄膜4を窒化チタンとすると、上記窒化チタンは吸
収特性が強いことから、陰極線管10の表示画像のコン
トラストが向上し、好ましい。
【0046】上記のような陰極線管10においては、図
2中矢印A2で示される反射光の光量は、反射防止膜1
によって、図2中矢印A1で示す入射光の光量よりも少
なくなる。
【0047】さらに、上記のような陰極線管10におい
ては、反射防止膜1に電磁波シールド機能も持たせるこ
とが好ましい。したがって、反射防止膜1によって上記
陰極線管10内の図2中矢印B1で示す電磁波は、図2
中矢印B2で示すように陰極線管10内の電磁波よりも
弱められて放出される。
【0048】また、本実施の形態に係る反射防止膜1
は、図3に示すように、表示部のフェース・プレート表
面側が平面とされてなる、いわゆるフラットパネルの陰
極線管に適用することもできる。図3に示すように、フ
ラットパネルの陰極線管20では、パネルガラス21の
厚みが、例えば中心部で15mm(t1)、端部では1
8mm(t2)と、中心部と端部とで異なり、ガラス材
料の吸収が強い場合には、中心と端部とで光の透過率が
異なることとなってしまう。
【0049】そこで、パネルガラス21には透明のもの
を用い、反射防止膜1の透過率を調整することによりコ
ントラストを上げることが必要となってくる。
【0050】すなわち、図3に示すように、陰極線管2
0のパネルガラス21上に接着層22を介して、本実施
の形態に係る反射防止膜1を配し、さらにその上に防染
コート層23を配したものが挙げられる。このように、
本発明の反射防止膜1を用いることで、光学特性を低下
させることなく、その透過率を調整することができるた
め、フラットパネルの陰極線管20においても表示画像
のコントラストを向上させることができる。
【0051】次に、上述のような本実施の形態に係る反
射防止膜1の製造方法について述べる。先ず、例えばポ
リエチレンテレフタレート等の樹脂よりなるフィルム2
aの一主面上にハードコート層2bを塗布形成して樹脂
基板2を形成する。このハードコート層は、この種の反
射防止膜1において一般的なアクリル等の樹脂を塗布し
て形成すれば良い。
【0052】次に、上記樹脂基板2の一主面上に、接着
層3と、第1の光学薄膜4と、第2の光学薄膜5と、第
3の光学薄膜6とをこの順に積層形成する。
【0053】この接着層3をSiOXの化学式で示さ
れ、Xが2未満の正数である化合物により形成する場合
には、シリコンをターゲットとして直流或いは交流スパ
ッタリングを行って形成すれば良い。シリコンの酸化
は、マスフローコントローラー(MFC)等で導入され
た微量の酸素或いはバックグラウンドの残留酸素若しく
は水分により行えば良い。
【0054】また、上記第1の光学薄膜4をTiNより
なる薄膜とする場合には、チタンをターゲットとして、
例えば直流スパッタリングを行って形成すれば良い。
【0055】ここで、接着層3をSiOXの化学式で示
され、Xが2未満の正数である化合物から構成し、第1
の光学薄膜4をTiNから構成する場合、成膜時の水分
や酸素の分圧は、接着層3や第1の光学薄膜4の特性に
大きく影響する。
【0056】SiOXをスパッタリング等により被着さ
せて接着層3を形成する際に、成膜室内に残留水分が多
いと、SiOXのXを2未満の任意の正数値で安定して
作ることが難しく、SiOXがSiO2になりやすい。接
着層3がSiO2から構成されると、基板2と反射防止
膜1との間の密着性が低下してしまう。そこで、SiO
Xの成膜室に、水分を強力に排気する、−100℃以下
程度の低温に冷却されたクライオパネル等のポンプがあ
ると、プロセスが安定し、SiOXのXを2未満の任意
の正数値で安定して作ることができる。また、シリコン
の酸化の程度は酸素分圧により決定されるが、当然のこ
とながら酸素分圧が低いほど、ケイ素のみの組成とな
り、メタル化して光学的に吸収特性が強くなってしま
う。その結果、反射防止特性を損なうため、酸素分圧が
極端に低くならないようにすることが好ましい。
【0057】一方、TiNをスパッタリング等により被
着させて第1の光学薄膜4を形成する際に、成膜室内の
残留酸素や水分の存在で、TiNがTiOXYとなって
しまう。TiNといってもある程度の酸素を含む場合が
多いが、Oの割合が多いと、電気抵抗が高くなりやす
い。ここで、水分圧とTiNの体積抵抗率との関係を図
4に示す。TiNの体積抵抗値は、電磁波のシールドが
効率よく行われる5×10-4Ωcm以下であることが望
ましいので、TiN成膜時の残留水分を低く抑えること
は重要である。そのために、TiNの成膜室に、水分を
強力に排気する−100℃以下程度の低温に冷却された
クライオパネル等のポンプがあると良い。また、水分圧
が低い方が反射防止膜1を作るための光学特性の良いT
iN膜ができる。
【0058】また、成膜中に、光学モニターで膜の光学
特性を観察しながら成膜条件を適宜変化させることで、
安定した品質の反射防止膜1を得ることができる。例え
ば、接着層3の密着特性は、形成されたSiOX膜の光
の吸収を観察するとわかる。SiOXの吸収が大きいほ
ど、基板2との密着性は良い。
【0059】そして、第2の光学薄膜5をITOよりな
る薄膜とする場合においては、イリジウム−錫をターゲ
ットとして、例えば交流スパッタリングを行って形成す
れば良い。
【0060】また、第3の光学薄膜6をSiO2よりな
る薄膜とする場合においても、シリコンをターゲットと
して、例えば交流スパッタリングを行って形成すれば良
い。
【0061】この場合、図5に示すような成膜装置30
を使用すると、生産性が良好であり、好ましい。この成
膜装置30は、スパッタリングを行うことが可能であっ
て、接着層3、第1の光学薄膜4、第2の光学薄膜5及
び第3の光学薄膜6を、連続して順次形成することがで
きるようになされたものである。すなわち、この成膜装
置30は、巻き出し室31と、第1の成膜機32と、第
2の成膜機33と、巻き取り室34とを有する。
【0062】そして、巻き出し室31内には、図中矢印
1で示すように時計回り方向に回転する円柱状の巻き
出しロール35が配され、巻き取り室34内には、図中
矢印m2で示すように時計回り方向に回転する円柱状の
巻き取りロール36が配されている。
【0063】第1の成膜機32内には、図中矢印m3
示すように時計回り方向に回転する円柱状の冷却キャン
37が配され、第2の成膜機33内には、図中矢印m4
で示すように時計回り方向に回転する円柱状の冷却キャ
ン38が配されている。なお、第1の成膜機32及び第
2の成膜機33内には、冷却キャン37、38の表面を
例えば−120℃程度まで冷却する図示しない水分用冷
却ポンプが配されている。
【0064】このため、巻き出し室31内の巻き出しロ
ール35から図中矢印Mで示すように第1の成膜機32
へと送り出された樹脂基板2は、第1の成膜機32内の
冷却キャン37の周面を走行した後、第2の成膜機33
へと送られ、第2の成膜機33内の冷却キャン38の周
面を走行した後、巻き取り室34内の巻き取りロール3
6に巻き取られることとなる。そして、この成膜装置内
には、樹脂基板2が所定のテンションを有して円滑に走
行するように、円柱状のガイドロール39が順次設けら
れている。なお、これらの巻き出しロール35、冷却キ
ャン37、巻き取りロール36、ガイドロール39が、
樹脂基板2を幅方向に支持可能な大きさとなされている
ことは言うまでもない。
【0065】第1の成膜機32は、樹脂基板2の走行路
となる基板走行部40と、樹脂基板2上に接着層3を形
成する第1の成膜室41と、接着層3上に第1の光学薄
膜4を形成する第2の成膜室42と、第1の光学薄膜4
上に第2の光学薄膜5を形成する第3の成膜室43とを
備える。これらの基板走行部40、第1の成膜室41、
第2の成膜室42及び第3の成膜室43は、冷却キャン
37の周面に沿って配されるとともに、仕切り版によっ
て仕切られており、それぞれ独立したものとされてい
る。
【0066】基板走行部40では、巻き出し室31から
送り出されてきた樹脂基板2を冷却キャン37へと供給
し、また、冷却キャン37の周面を走行した樹脂基板2
を、接続部44を介して第2の成膜機33へと送り出
す。そして、基板走行部40は、ターボポンプ45によ
って排気されて所定の真空度とされている。
【0067】第1の成膜室41は、ターボポンプ46に
よって排気されて所定の真空度とされている。そして、
第1の成膜室41には、樹脂基板2に相対向する位置
に、接着層3となる材料のターゲット47が配されてい
る。この樹脂基板2上に接着層3をSiOXの化学式で
示され、Xが2未満の正数である化合物により形成する
場合には、シリコンターゲットが用いられる。
【0068】ここで、接着層3をSiOXから形成する
場合、第1の成膜室41には、水分を強力に排気するク
ライオパネル48が配されていることが好ましい。Si
X成膜時に、クライオパネル48によって水分の分圧
を最適化することでプロセスが安定し、SiOXのXを
2未満の任意の正数値で安定して作ることができる。
【0069】また、この第1の成膜室41には、接着層
3の光透過率を測定する光透過率測定部49が設けられ
ている。SiOX膜の光吸収が大きいほど、樹脂基板2
との密着性は良く、接着層3の成膜中に光透過率測定部
49で膜の光学特性を観察しながら成膜条件を適宜変化
させることで、安定した品質の反射防止膜1を得ること
ができる。
【0070】第2の成膜室42は、ターボポンプ50に
よって排気されて所定の真空度とされている。そして、
第2の成膜室42には、樹脂基板2に相対向する位置
に、第1の光学薄膜4となる材料のターゲット51が配
されている。第1の光学薄膜4をTiNにより形成する
場合には、チタンターゲットが用いられる。
【0071】ここで、第1の光学薄膜4をTiNから形
成する場合、第2の成膜室42には、水分を強力に排気
するクライオパネル52が配されていることが好まし
い。TiN成膜時には、水分圧が低い方が反射防止膜1
を作るための光学特性の良いTiN膜ができる。
【0072】第3の成膜室43は、ターボポンプ53に
よって排気されて所定の真空度とされている。そして、
第3の成膜室43には、樹脂基板2に相対向する位置
に、第2の光学薄膜5となる材料のターゲット54が配
されている。第2の光学薄膜5をITOにより形成する
場合には、イリジウム−錫ターゲットが用いられる。
【0073】そして、この第1の成膜機32には、接着
層3、第1の光学薄膜4及び第2の光学薄膜5が形成さ
れた樹脂基板2の反射率を測定する反射率測定部55
と、導電性を測定する接触式の導電性測定部56とが、
基板走行部40の冷却キャン37と接続部44との間に
配されている。成膜中に、反射率測定部55と導電性測
定部56とで膜の特性を観察しながら成膜条件を適宜変
化させることで、安定した品質の反射防止膜1を得るこ
とができる。
【0074】第2の成膜機33は、樹脂基板2の走行路
となる基板走行部57と、第2の光学薄膜5上に第3の
光学薄膜6を形成する第4の成膜室58及び第5の成膜
室59とを備える。これらの基板走行部57、第4の成
膜室58及び第5の成膜室59は、冷却キャン38の周
面に沿って配されるとともに、仕切り版によって仕切ら
れており、それぞれ独立したものとされている。
【0075】基板走行部57では、接続部44を介して
第1の成膜機32から送り出されてきた樹脂基板2を冷
却キャン38へと供給し、また、冷却キャン38の周面
を走行した樹脂基板2を巻き取り室34へと送り出す。
そして、基板走行部57は、ターボポンプ60によって
排気されて所定の真空度とされている。
【0076】第4の成膜室58は、ターボポンプ61に
よって排気されて所定の真空度とされている。そして、
第4の成膜室58には、樹脂基板2に相対向する位置
に、第3の光学薄膜6となる材料のターゲット62が配
されている。第3の光学薄膜6をSiO2により形成す
る場合には、シリコンターゲットが用いられる。
【0077】ここで、第3の光学薄膜6をSiO2によ
り形成する場合、その成膜速度が他の材料に比して比較
的遅いため、一つの成膜室のみで第3の光学薄膜6を形
成しようとすると、この工程が律速となって、反射防止
膜1の生産性を低下させてしまう。そこで、この成膜装
置30では、第3の光学薄膜6を形成するための成膜室
として、第5の成膜室59を設けている。
【0078】第5の成膜室59は、ターボポンプ63に
よって排気されて所定の真空度とされている。そして、
第5の成膜室59には、樹脂基板2に相対向する位置
に、第3の光学薄膜6となる材料のターゲット64が配
されている。第3の光学薄膜6をSiO2により形成す
る場合には、シリコンターゲットが用いられる。
【0079】このように、成膜速度が比較的遅いSiO
2からなる第3の光学薄膜6を成膜するための成膜室を
2つ設けることによって、第3の光学薄膜6の成膜速度
を上げて、反射防止膜1の生産性を向上することができ
る。この第5の成膜室59で形成されるSiO2は、第
4の成膜室58で形成されるSiO2と特性的に同じも
のであることは勿論である。
【0080】また、この第2の成膜機33には冷却キャ
ン38を通過して各層が形成された樹脂基板2を厚さ方
向に挟むように光照射部65aと受光部65bとを配
し、光照射部から照射された光が受光部によりどのくら
い受光されるかを測定する光透過率測定部65と、樹脂
基板2の反射率を測定する反射率測定部66とが、基板
走行部57に配されている。成膜中に、光透過率測定部
65と反射率測定部66とで膜の光学特性を観察しなが
ら成膜条件を適宜変化させることで、安定した品質の反
射防止膜1を得ることができる。
【0081】したがって、この成膜装置30により本発
明の反射防止膜1を製造する場合、以下に示すような方
法により製造を行う。
【0082】先ず、巻き出しロール35、冷却キャン3
7,38、巻き取りロール36を時計回りに回転させ
て、巻き出しロール35から樹脂基板2を図中矢印Mで
示すように、第1の成膜機32へと送り出す。
【0083】第1の成膜機32へと送り込まれた樹脂基
板2を、冷却キャン37周面上を走行させて、シリコン
ターゲットを用いたスパッタリングにより、SiOX
化学式で示され、Xが2未満の正数値である化合物より
なる接着層3を形成する。この後、上記接着層3の光透
過率が光透過率測定部49によって測定される。なお、
この測定結果に応じて製品の良否を判断するとともに、
この後の製造条件の調整を行う。そして、このように接
着層3が形成された樹脂基板2は第2の成膜室42へと
送り込まれる。
【0084】第2の成膜室42へと送り込まれた樹脂基
板2を、冷却キャン37周面上を走行させ、チタンター
ゲットを用いたスパッタリングにより、接着層3上に、
窒化チタンよりなる第1の光学薄膜4を形成する。そし
て、第1の光学薄膜4が形成された樹脂基板2は第3の
成膜室43へと送り込まれる。
【0085】第3の成膜室43へと送り込まれた樹脂基
板2を、冷却キャン37周面上を走行させ、イリジウム
−錫ターゲットを用いたスパッタリングにより、第1の
光学薄膜4上に、ITOよりなる第2の光学薄膜5を形
成する。
【0086】このようにして接着層3、第1の光学薄膜
4及び第2の光学薄膜5が形成された樹脂基板2は、こ
の後、基板走行部40に配された反射率測定部55によ
って反射率が測定され、また、導電率測定部56によっ
て導電率が測定される。なお、この測定結果に応じて製
品の良否を判断するとともに、この後の製造条件の調整
を行う。そして、接着層3、第1の光学薄膜4及び第2
の光学薄膜5が形成された樹脂基板2は、接続部44を
介して第2の成膜機33へと送られ、さらに第4の成膜
室58へと送り込まれる。
【0087】第4の成膜室58へと送り込まれた樹脂基
板2を、冷却キャン38周面上を走行させて、シリコン
ターゲットを用いたスパッタリングにより、第2の光学
薄膜5上に、第3の光学薄膜6となるSiO2を被着さ
せる。
【0088】このとき、SiO2の成膜速度は比較的遅
いため、第2の光学薄膜5上に、SiO2からなる第3
の光学薄膜6を形成する際に、第4の成膜室58と第5
の成膜室59とでSiO2を被着させる。第3の光学薄
膜6の半分程度の厚みにSiO2が被着された樹脂基板
2は第5の成膜室59へと送り込まれる。
【0089】第5の成膜室59へと送り込まれた樹脂基
板2を、冷却キャン38周面上を走行させて、シリコン
ターゲットを用いたスパッタリングによりSiO2を被
着させて第3の光学薄膜6を形成する。
【0090】このようにして接着層3、第1の光学薄膜
4、第2の光学薄膜5及び第3の光学薄膜6が順次形成
された反射防止膜1が完成し、この後、基板走行部57
に配された光透過率測定部65によって光透過率が測定
され、また、光反射率測定部66によって反射率が測定
される。なお、この測定結果に応じて製品の良否を判断
するとともに、この後の製造条件の調整を行う。そし
て、完成した反射防止膜1は、巻き取り室34に送られ
て、巻き取りロール36により巻き取られる。
【0091】このように、この成膜装置30では、樹脂
基板2上に接着層3、第1の光学薄膜4、第2の光学薄
膜5及び第3の光学薄膜6を、連続して形成することが
できるので、生産時間が短縮され、生産性が向上する。
【0092】なお、上述した説明では、樹脂基板2を一
方向にのみ走行させながら光学薄膜を積層形成する場合
を例に挙げたが、本実施の形態に係る成膜装置30は、
樹脂基板2を正逆両方向に走行させて光学薄膜を積層形
成することもできる。
【0093】また、上述した説明では、光学薄膜を積層
形成して反射防止膜1を製造する場合を例に挙げて説明
したが、本実施の形態に係る成膜装置30はこれに限定
されるものではなく、複数の薄膜が積層されてなるもの
を製造する場合にも適用可能である。
【0094】〈実験例〉次に、本発明を適用した反射防
止膜について、各構成膜の膜厚を変えた場合の特性の変
化について行った実験例について説明する。
【0095】上述したような構成を有する反射防止膜に
ついて、各膜の厚さを変化させて反射防止膜を作製し、
そのときの反射防止膜の反射特性、透過率、内面反射特
性及びバンド幅を評価した。
【0096】反射特性は、反射防止膜の表面からの光に
対するもので、裏側のPET基板と空気との境界面での
反射はないものとしている。ここでは視感反射率を計算
した。
【0097】透過率は、膜の表面から入射した光に対す
る視感透過率である。
【0098】内面反射特性は、PETフィルム内面から
反射防止膜へ向かう、つまり逆方向の光に対する視感反
射率である。この反射率が高いとフィルム内で蛍光体か
ら発せられた光がガラスとフィルムの内部で多重反射し
画像のコントラストを落とすので好ましくない。
【0099】ここで、本実験例においては、PET基板
上に、3.5μm厚のハードコート層を形成し、ハード
コート層上にSiOX膜と、TiN膜と、ITO膜と、
SiO2膜とをこの順に積層してNo.1〜No.13
の反射防止膜を作製した。ここで、この反射防止膜の各
構成膜に用いられた材料の、各波長における光学特性を
表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】表1より、接着層のSiOX膜と第3の光
学薄膜のSiO2膜の光学特性が異なっている。これ
は、SiOX膜はPET基板との密着性を重視し、Si
2膜は光学特性を重視したためである。
【0102】そして、No.1〜No.13の反射防止
膜の各構成膜の膜厚(nm)と、そのときの反射特性、
透過率、内面反射特性及びバンド幅を表2に示す。ま
た、No.5の反射防止膜について、波長と反射率との
関係を図6に示した。
【0103】
【表2】
【0104】ここで、この実験例では、反射防止膜の透
過率を40%〜85%の間とするとともに、その透過率
のときに反射率及び内面反射が小さくなるように各構成
膜厚を最適化した。反射防止膜の光学特性に対する要求
レベルを、製造マージンを考慮して以下のように考え
る。
【0105】反射率(視感反射率):0.5%以下 透過率(視感透過率):40〜85で任意に設定する 内面反射(視感反射率):20%以下 バンド幅:1.45以上 SiOX膜は、成膜条件によりその光学特性が大きく変
わり、それに応じて最適膜厚も変化するが、接着層とし
ては1nm〜10nmの範囲であればおおむねその役割
を満足する。
【0106】表2より、TiN膜の厚みを7nm〜37
nm程度の範囲としたときに良好な光学特性が得られて
いることがわかる。TiN膜の厚みが上記の範囲から外
れると反射率が上昇してしまう。また、バンド幅が1.
5以上の特性を得ようとすると、TiN膜の厚みは、1
4nm〜27nm程度とすることが好ましいことがわか
る。
【0107】また、ITO膜の厚みを25nm以下程度
の範囲としたときに良好な光学特性が得られていること
がわかる。ITO膜の厚みが25nmよりも大きいと反
射率や内面反射率が上昇してしまう。さらに、バンド幅
が1.5以上の特性を得ようとすると、ITO膜の厚み
は20nm以下とすることが好ましいことがわかる。
【0108】また、SiO2膜の厚みを40nm〜10
0nmの範囲としたときに良好な特性が得られているこ
とがわかる。SiO2膜の厚みが上記の範囲から外れる
と反射率や内面反射率が上昇してしまう。さらに、この
反射防止膜1でバンド幅が1.5以上の特性を得ようと
すると、SiO2膜の厚みは60nm〜80nmの範囲
とすることがより好ましい。
【0109】そして、表2から、透過率が45%〜78
%の程度の範囲とするときに、特性の良い反射防止膜が
得られることがわかる。また、透過率が70%以下の場
合では、4層の構成であるが、透過率が70%を超える
場合では、3層構成で最適解があるため第2の光学薄膜
は不要である。すなわち、3層構成と4層構成を適宜使
い分けることで広範囲な透過率調整が可能となることが
わかる。
【0110】このように、本発明に係る反射防止膜で
は、各構成膜の膜厚を変化させることで、光学特性を低
下させることなく簡単に透過率を調整することができ
る。また、No.6の反射防止膜について波長と反射率
との関係を示した図6からも明らかなように、広い波長
範囲において優れた反射防止効果を有する反射防止膜を
得ることができることがわかる。
【0111】また、第2の光学薄膜としてITO膜の代
わりにSiOX膜を用いて、同様に各膜の厚さを変化さ
せてNo.14〜No.16の反射防止膜を作製し、そ
のときの各特性を評価した。その結果を表3に示す。な
お、ここでは、反射防止膜の透過率として要求が強いと
思われる、63.5%の透過率についてのみ実験を行っ
た。
【0112】
【表3】
【0113】表3から、第2の光学薄膜としてITO膜
の代わりにSiOX膜を用いた場合においても、良好な
特性を有する優れた反射防止膜が得られることがわか
る。
【0114】
【発明の効果】本発明では、各層を構成する材料や厚み
を規定することで、特性を低下させることなく、透過率
を調整でき、かつはがれにくい反射防止膜を実現でき
る。
【0115】また、この反射防止膜をフェースプレート
に張り付けた本発明の表示装置では、コントラストを向
上させ、画像を見やすくすることができる。さらに、こ
の表示装置では、反射防止膜の透過率を調整すること
で、中心部と端部での透過率を均一にでき、画質の場所
による不均一をなくすことができる。
【0116】また、本発明の成膜装置では、複数の成膜
手段を基板の走行路に沿って配することで、複数の薄膜
を連続的に積層形成することができ、製造時間を大幅に
短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る反射防止膜の一構成例を示す断面
図である。
【図2】本発明に係る表示装置の一構成例を模式的に示
す断面図である。
【図3】本発明に係る表示装置の他の構成例を模式的に
示す断面図である。
【図4】TiNについて水分圧と体積抵抗率との関係を
示す図である。
【図5】本発明に係る成膜装置の一構成例を示す模式図
である。
【図6】実験例で作製された反射防止膜について波長と
反射率との関係を示す図である。
【図7】従来の反射防止膜の一構成例を示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1 反射防止膜、2 基板、3 接着層、4 第1の光
学薄膜、5 第2の光学薄膜、6 第3の光学薄膜

Claims (29)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板の一主面上に、 ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物のいずれかからな
    る接着層と、 金属窒化物を含有する第1の光学薄膜と、 屈折率が1.8以上である第2の光学薄膜と、 屈折率が1.35〜1.7の範囲である第3の光学薄膜
    とが、積層形成されてなることを特徴とする反射防止
    膜。
  2. 【請求項2】 上記接着層の厚みが1nm〜10nmの
    範囲であることを特徴とする請求項1記載の反射防止
    膜。
  3. 【請求項3】 上記ケイ素酸化物は、SiOX(Xは2
    未満の正数)で表されることを特徴とする請求項1記載
    の反射防止膜。
  4. 【請求項4】 上記金属窒化物が、窒化チタンであるこ
    とを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
  5. 【請求項5】上記第1の光学薄膜を形成する窒化チタン
    の体積抵抗値が5×10-4Ωcm以下であることを特徴
    とする請求項1記載の反射防止膜。
  6. 【請求項6】 上記第1の光学薄膜の膜厚が、7nm〜
    37nmであることを特徴とする請求項1記載の反射防
    止膜。
  7. 【請求項7】 上記第1の光学薄膜の膜厚が、14nm
    〜27nmであることを特徴とする請求項1記載の反射
    防止膜。
  8. 【請求項8】 上記金属窒化物が、窒化ジルコニウム又
    は窒化ハフニウムであることを特徴とする請求項1記載
    の反射防止膜。
  9. 【請求項9】 上記金属窒化物が、導電性を有すること
    を特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
  10. 【請求項10】 上記第2の光学薄膜の膜厚が、25n
    m以下であることを特徴とする請求項1記載の反射防止
    膜。
  11. 【請求項11】 上記第2の光学薄膜の膜厚が、20n
    m以下であることを特徴とする請求項1記載の反射防止
    膜。
  12. 【請求項12】 上記第2の光学薄膜が、透明導電膜で
    あることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
  13. 【請求項13】 上記第2の光学薄膜が、膜厚25nm
    以下のインジウム錫酸化物であることを特徴とする請求
    項1記載の反射防止膜。
  14. 【請求項14】 上記第2の光学薄膜が、膜厚25nm
    以下のSiOX(Xは2未満の正数)であることを特徴
    とする請求項1記載の反射防止膜。
  15. 【請求項15】 上記第3の光学薄膜が、SiO2から
    なり、当該第3の光学薄膜の厚さが40nm〜100n
    mであることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
  16. 【請求項16】 上記第3の光学薄膜が、SiO2から
    なり、当該第3の光学薄膜の厚さが60nm〜80nm
    であることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
  17. 【請求項17】 上記第3の光学薄膜が、MgF2又は
    Al23であることを特徴とする請求項1記載の反射防
    止膜。
  18. 【請求項18】 上記第3の光学薄膜上に、保護膜が形
    成されていることを特徴とする請求項1記載の反射防止
    膜。
  19. 【請求項19】 基板の一主面上に、 ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物のいずれかからな
    る接着層と、 金属窒化物を含有する第1の光学薄膜と、 屈折率が1.35〜1.7の範囲である第2の光学薄膜
    とが、積層形成されてなることを特徴とする反射防止
    膜。
  20. 【請求項20】 表示部のフェース・プレート表面側
    に、反射防止膜が配され、上記反射防止膜は、基板の一
    主面上に、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物のいず
    れかからなる接着層と、 金属窒化物を含有する第1の光学薄膜と、 屈折率が1.8以上である第2の光学薄膜と、 屈折率が1.35〜1.7の範囲である第3の光学薄膜
    とが、積層形成されてなるとともに、上記基板がフェー
    ス・プレート表面と対向するように配されていることを
    特徴とする表示装置。
  21. 【請求項21】 陰極線を用いた陰極線管であることを
    特徴とする請求項20記載の表示装置。
  22. 【請求項22】 上記フェース・プレート表面が略平面
    とされたフラットパネルディスプレイであることを特徴
    とする請求項20記載の表示装置。
  23. 【請求項23】 連続して走行するフィルム状の基板の
    主面上に薄膜を形成する成膜装置であって、 上記基板の走行路に沿って配された複数の成膜室を有
    し、 上記複数の成膜室は、異なる材料からなる薄膜を形成す
    る成膜手段をそれぞれ有し、 上記基板は、上記複数の成膜室を通過する際に、それぞ
    れの成膜室に配された成膜手段によって薄膜が形成され
    ることにより、複数の薄膜が順次積層形成されることを
    特徴とする成膜装置。
  24. 【請求項24】 上記成膜手段は、スパッタリングによ
    り薄膜を形成するものであることを特徴とする請求項2
    3記載の成膜装置。
  25. 【請求項25】 上記複数の成膜室は、 上記基板の主面上に、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素窒
    化物のいずれかからなる接着層を形成する第1の成膜室
    と、 上記第1の成膜室で形成された上記接着層上に、金属窒
    化物を含有する第1の光学薄膜を形成する第2の成膜室
    と、 上記第2の成膜室で形成された上記第1の光学薄膜上
    に、屈折率が1.8以上である第2の光学薄膜を形成す
    る第3の成膜室と、 上記第3の成膜室で形成された上記第2の光学薄膜上
    に、屈折率が1.35〜1.7の範囲である第3の光学
    薄膜を形成する第4の成膜室とが、この順に配されてい
    ることを特徴とする請求項23記載の成膜装置。
  26. 【請求項26】 上記基板の走行路中に配され当該基板
    上に形成された上記薄膜の特性を分析する分析手段と、 上記分析手段によって分析された薄膜の特性に応じて成
    膜条件を制御する制御手段とを備え、 上記分析手段は、成膜が継続して行われている状態で、
    基板上に形成された薄膜の特性を分析し、 上記制御手段は、上記分析手段で分析された薄膜の特性
    に応じて、成膜条件を制御することを特徴とする請求項
    23記載の成膜装置。
  27. 【請求項27】 上記分析手段は、光反射率を測定する
    光反射率測定手段であることを特徴とする請求項26記
    載の成膜装置。
  28. 【請求項28】 上記分析手段は、光透過率を測定する
    光透過率測定手段であることを特徴とする請求項26記
    載の成膜装置。
  29. 【請求項29】 上記分析手段は、導電性を測定する導
    電性測定手段であることを特徴とする請求項26記載の
    成膜装置。
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