JP2002348655A - スケール付着防止膜付き部材およびその製造方法 - Google Patents

スケール付着防止膜付き部材およびその製造方法

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JP2002348655A
JP2002348655A JP2001149681A JP2001149681A JP2002348655A JP 2002348655 A JP2002348655 A JP 2002348655A JP 2001149681 A JP2001149681 A JP 2001149681A JP 2001149681 A JP2001149681 A JP 2001149681A JP 2002348655 A JP2002348655 A JP 2002348655A
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film
nitride film
chromium nitride
chromium
less
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JP2001149681A
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Isao Ando
勲雄 安東
Naoaki Kitagawa
直明 北川
Shinichi Okabe
信一 岡部
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温高圧水中に長時間使用しても部材表面に
スケールが付着しないスケール付着防止膜付き部材およ
びその製造方法を提供する。 【解決手段】 基材の表面に窒化クロム膜を膜厚2〜2
0μmの範囲で形成した後、窒化クロム膜の表面に付着
しているドロップレットを取り除き、表面荒さをRmax
1.5μm以下、Ra0.1μm以下とする。さらに、
窒化クロム膜の表面部にクロム酸化層を形成することが
好ましいが、熱処理で強度が低下する部材に対しては、
酸素分圧1〜100mTorr(0.133〜13.3
Pa)の減圧雰囲気で、室温以上300℃未満、0.5
〜5時間のプラズマ処理を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、高温高圧水の中
で使用する部材の表面にスケール(鉄錆、腐食生成物)
が生成および蓄積することを防止または抑制したスケー
ル付着防止膜付き部材とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】 火力発電、原子力発電の給水系には高
温高圧水を使用するが、この圧力、流量を制御するため
に、多くの金属部品や機器が使用されている。これらの
部材を高温高圧水の環境下で長時間使用すると、スケー
ルと呼ばれる鉄錆、腐食生成物が部材の表面に付着す
る。これは、高温高圧水の中に溶け込んでいた鉄が酸化
物、水酸化物などの形態に変化して付着したものと考え
られている。このスケールが付着し、成長して蓄積する
と、たとえば、流量計の場合には、口径が狭くなり流量
が見かけ上、上昇するなど、流量計や圧力計が正しい値
を示さなくなる。また、ポンプ部品の場合には、水が流
れづらくなるため、ポンプ圧力が上昇し、ポンプに負荷
がかかり、その寿命が短くなるといった問題が発生す
る。
【0003】スケールの付着を防止するために、部材を
セラミック材にすることが検討されたが、アルミナなど
の酸化物および窒化珪素のセラミックスは、高温高圧水
の中では、溶解するため、セラミック材が著しく損傷す
ることが判明した。さらに、これらのセラミック材は衝
撃に弱いので、機械部品の材料として信頼性を満たすも
のではなく、また、コスト面でも問題があった。
【0004】そのため、金属基材の表面をバフ研磨し、
表面の凹凸を減らして、スケール付着の基点をなくすこ
とも試みられたが、多少の効果があるものの、研磨費用
の増大と複雑な形状に適用できない欠点があった。
【0005】また、湿式クロムメッキや塗装などの各種
表面処理も考えられたが、これには、以下のような問題
がある。すなわち、硬質クロムメッキは、膜硬度が高
く、摩耗性、耐食性、機械的衝撃にも比較的優れている
が、膜応力が高く、表面に微少なマイクロクラックが生
成する。このクラックの割れ目を起点に、スケールが付
着しはじめる。また、複雑な形状の部材にメッキを形成
した場合、メッキ特有のエッジ効果で角部の膜厚が厚く
なるため、寸法精度が悪くなる。メッキ液は多くの不純
物を含み、通常のメッキ液には鉄分も含まれるので、こ
れがスケールの原因となってしまう。また、塗装は有機
物であり、熱水中では軟化し、溶解する。
【0006】さらに、カソードアーク式イオンプレーテ
ィングで部材表面に窒化クロムをコーティングすること
も提案された。このコーティングをした後、大気中で3
00〜1000℃、0.2〜16時間の熱処理を行った
ものは、スケール付着の防止には有効であるが、SUS
630材のような部材では、熱処理で強度が低下すると
いう問題があった。
【0007】このように、現状では、スケールの付着に
関して有効な対策がなく、部材表面を磨くか、硬質クロ
ムメッキを一部に適用しているに過ぎない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】 そこで、本発明は、
高温高圧水中に長時間使用しても部材表面にスケールが
付着せず、厳しい寸法精度が要求される部品や複雑形状
部品にも適用でき、しかも後加工が容易で、比較的低コ
ストで得られる、スケール付着防止膜付き部材およびそ
の製造方法を提供することを目的とする。また、部材が
高温の熱処理により強度が低下することがないスケール
付着防止膜付き部材およびその製造方法を提供すること
を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成する
ために、本発明のスケール付着防止膜付き部材およびそ
の製造方法は、基材の表面に窒化クロム膜を膜厚2〜2
0μmの範囲で形成することを基礎とする。かかる窒化
クロム膜の形成は、カソードアーク式イオンプレーティ
ング装置を用いることが望ましい。
【0010】そして、前述のように、窒化クロム膜を形
成した後に、窒化クロム膜の表面に付着しているドロッ
プレットと呼ばれるクロム金属の粒子を取り除き、表面
荒さをRmaxで1.5μm以下、Ra0.1μm以下とす
る。さらに、大気中で300〜1000℃で熱処理を施
すことで、窒化クロム膜の表面部にクロム酸化層を形成
させることが好ましい。
【0011】一方、前述のように、窒化クロム膜を形成
した後、またはさらにその膜の表面に付着しているドロ
ップレットを除去した後、酸素分圧1〜100mTor
r(0.133〜13.3Pa)の減圧雰囲気で、室温
以上300℃未満、0.2〜5時間のプラズマ処理を施
すことで、窒化クロム膜の表面部に酸化クロム層を形成
させることが望ましい。この処理は、熱処理で強度が低
下してしまう部材の場合に適用することが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】 本発明に用いられる部材は、特
に限定されないが、スケール付着が問題となる流量計や
ポンプ部品である炭素鋼やステンレス鋼に適用すると効
果が大きい。
【0013】なお、部材表面は機械加工跡などがなく平
滑であることが好ましい。機械加工跡などがあると、そ
の個所で被膜の応力が集中し、膜剥離する可能性がある
からである。たとえば、Rmaxで3μm以下の表面荒さ
に研磨加工するか、研磨の困難な部材では#400程度
のガラスビーズでブラスト処理などして、表面を均一に
することが望ましい。ただし、角部が重要な部材には、
エッジが欠ける可能性があるのでブラスト処理は適さな
い。
【0014】窒化クロム膜の効果は、次のように考えら
れる。すなわち、高温高圧水中には、Fe34(マグネ
タイト)、α−Fe34(ヘマタイト)、α−FeOO
H(ゲーサイト)、γ−FeOOH(レピドクロサイ
ト)が存在している。これらが基になり、部材表面にF
34として析出し、成長する。SUS基材とスケール
は、両者の金属イオンと酸素イオンが界面で同じように
並ぶため、電気的に引き合い付着力が強いと言われてい
る。一方、窒化クロム膜とスケールは界面で不規則に並
ぶため、電気的に反発し、付着力は弱いと言われてい
る。窒化クロム膜は耐食性に優れ、高温高圧水中でもほ
とんど酸化されず安定である。さらに、窒化クロム膜表
面にも50〜100Åの酸化膜が発生するが、これは結
晶的に脆い酸化膜で、ステンレスの不動態膜やアルミに
成長する酸化膜のような強固な膜ではなく、剥離しやす
い膜である。この酸化膜の上にスケールが付着しても、
酸化膜とともに容易に剥離してしまう。
【0015】窒化クロム膜は、カソードアーク式イオン
プレーティング法で形成するのが好ましい。カソードア
ーク式イオンプレーティング装置の真空容器内に窒素ガ
スを導入して所定の圧力に維持した後、アーク放電によ
って、金属クロムを瞬時に蒸発させ、イオン化する。こ
のとき、イオン化率は80%以上に達するが、このイオ
ン化された蒸発粒子が、負バイアス電圧を印加した基材
に引きつけられ、その表面で、導入した窒素ガスとイオ
ン化した金属粒子とが反応して、緻密で基材との密着性
がよく、良質な窒化クロム膜が形成される。
【0016】形成される窒化クロム膜の膜厚は2〜20
μmが望ましい。2μm未満では、耐久性が不十分とな
る可能性がある一方、20μmを超えると、ドロップレ
ットと呼ばれる未反応のクロム粒子が付着し、膜の表面
荒さが急激に増加して、スケール付着の起点となる可能
性がある。また、成膜(蒸着)時間が伸びるためコスト
が上昇する。
【0017】スケールが付着する起点となるドロップレ
ットをなくすためには、窒化クロム膜の表面を平滑にす
る必要がある。カソードアーク式イオンプレーテイング
法では、金属ターゲットを直接溶融、蒸発するので溶融
粒子がそのまま膜表面に付着する可能性があり、これは
厚膜になるほど顕著になる。この粒子は膜と反応して付
着するわけではないため、膜表面から簡単に剥離でき
る。すなわち、簡単な研磨紙、研磨材を使用して、人の
手でこする程度で容易に取り去ることができる。膜厚を
2〜20μmに形成した窒化イオン膜の表面に、このよ
うな研磨を行い、ドロップレットと呼ばれる粒子を取り
除くと、表面荒さはRmaxで1.5μm以下、Ra0.1
μm以下になり、膜本来の表面状態が得られる。
【0018】さらに、この膜に強固な酸化膜を形成させ
るのが望ましい。すなわち、結晶性が良く潤滑性に優れ
た、酸化クロムを形成させるのが好ましい。このため
に、酸素存在下で、雰囲気温度300〜1000℃の温
度で0.2〜16時間、熱処理することで、窒化クロム
膜の表面側に酸化クロム膜を形成する。300℃未満で
は、長時間熱処理を施しても、CrN膜の表面にごく薄
い結晶性の低い酸化クロム膜しかできない。一方、10
00℃を超える温度で熱処理を行うと、CrN膜の酸化
が進みすぎて酸化クロム主体となり、脆くなってしまう
可能性がある。また、高温による基材変形などが起こる
可能性がある。望ましくは600℃〜800℃で20分
〜40分、熱処理を行うのが好ましい。この熱処理温度
では、熱処理時間が20分〜40分程度と短く、強固で
結晶性が高いクロミナ膜Cr23が形成できる。熱処理
中に酸化して問題になる基材の場合には、全面コーティ
ングすることで酸化を防止することができる。
【0019】一方、SUS630材のように、高温の熱
処理で強度が低下してしまう基材の場合には、基材の表
面に窒化クロム膜を形成した後、またはさらにその膜の
表面に付着しているドロップレットを除去した後に、真
空容器内を酸素分圧1〜100mTorr(0.133
〜13.3Pa)の減圧雰囲気とし、部材にバイアス電
圧−300〜−1000Vを印加して、0.2〜5時間
のグロー放電によるプラズマ処理を行い、窒化クロム膜
の表面側にクロム酸化層を形成する。酸素分圧1mTo
rr未満、バイアス電圧−300V未満またはプラズマ
処理時間0.2時間未満では、長時間プラズマ処理を行
ってもクロム酸化層が形成されない。一方、酸素分圧が
100mTorrを超えると、プラズマ放電の継続が困
難となる。また、−1000Vを超えるバイアス電圧を
印加したり、5時間を超えるプラズマ処理を行うと、部
材の表面粗さが増大したり、温度が400℃を超えて部
材強度が低下する。酸素分圧5〜20mTorr(0.
665〜2.66Pa)で0.5〜2時間のプラズマ処
理を行うのが好ましい。真空容器内には、酸素以外にア
ルゴンやキセノンなどの希ガス元素あるいは窒素ガスを
混入させてもよい。
【0020】
【実施例】[実施例1] サイズが20×20×2mm
のSUS304の試験板をエタノールで超音波洗浄し、
乾燥後、マルチアーク社製のカソードアーク式イオンプ
レーティング装置にセットした。蒸発ターゲットとして
溶解法で作製した、純度99.9%のクロム金属を用い
た。部材および蒸発材を真空チャンバー内の所定の位置
にセッティングした後、真空チャンバー内を1×10-5
Torr(1.33×10-3Pa)まで排気し、部材に
バイアス電圧−800Vを印加して、クロムボンバード
メント処理を行った。この処理は、基材表面を洗浄し、
基板温度を400〜500℃まで上げるために行う。次
に、バイアス電圧−300V、カソード電流90Aと
し、毎分50ccで窒素ガスを流し、60分間、基材全
面にコーティングを施した。得られた膜厚は3μmであ
つた。
【0021】その後、ドロップレットと呼ばれる未反応
クロム粒子を、SiCが混入された研磨材で除去し、表
面を仕上げた。この処理により、表面荒さがRa=0.
08μm、Rmax=0.8μmとなった。
【0022】これを、温度:220℃、圧力:60気
圧、pH:9.2、添加物:マグネタイト100pp
m、試験液:純水にヒドラジン0.5ppmの条件のオ
ートクレープで、50時間の試験を行い、スケール付着
を評価した。比較として、SUS304基材および該基
材に他のコーティング膜(Cr、Nbなど)を形成した
部材およびTi基材を同様に試験し、スケール付着を評
価した。その結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】表1から、各種コーティング膜の中で、C
rN膜のスケール付着量が最も少ないことが明らかであ
る。
【0025】[実施例2] SUS304で作製され
た、サイズφ450mm、厚さ30mm、中央にφ24
0mmの孔が空いたオリフィス(流量計)を、塩化メチ
レンで超音波洗浄し、乾燥後、マルチアーク社製のカソ
ードアーク式イオンプレーティング装置にセットした。
蒸発ターゲットとして溶解法で作製した、純度99.9
%のクロムターゲットを用いた。大型部材なので、カソ
ードを8台使用し、部材および蒸発材を真空チャンバー
内の所定の位置にセッティングした後、真空チャンバー
内を1×10-5Torr(1.33×10-3Pa)まで
排気した。部材にバイアス電圧−800Vを印加して、
クロムボンバードメント処理を行った。この処理は、基
材表面を洗浄し、基板温度を400〜500℃まで上げ
るために行う。次に、バイアス電圧−300V、カソー
ド電流50A、窒素ガスを20mTorr(2.66P
a)流して、30分間コーティングした。得られた膜厚
は3μmであつた。
【0026】その後、ドロップレットと呼ばれる未反応
クロム粒子を研磨で除去し、表面を仕上げた。この処理
により、表面荒さがRa=0.08μm、Rmax=0.8
μmになった。この部品を、実際の高温高圧の環境下で
試験した結果、半年経過しても流量に変化は見られなか
った。一方、コーティングしないSUS304製品につ
いても、同様の試験を行ったところ、3ヶ月でスケール
が付着し、流量に変化が見られた。
【0027】[実施例3] SUS304で作製され
た、サイズφ10mm、長さが56mmのポンプ部品
に、実施例1と同様な処理を行い、膜厚15μmのCr
Nをコーティングした。これを高温高圧下で使用するポ
ンプに組み込み、試験を行った結果、10ヶ月経過して
も、ポンプ圧に変化は見られなかった。一方、比較とし
て、コーティングしないSUS304製品についても、
同様の試験を行ったところ、半年経過すると、スケール
が付着し、流路が狭くなり、ポンプ圧が上昇していた。
【0028】[実施例4] サイズが20×20×2m
mのSUS304の試験板をエタノールで超音波洗浄
し、乾燥後、マルチアーク社製のカソードアーク式イオ
ンプレーティング装置にセットした。蒸発ターゲットと
して溶解法で作製した、純度99.9%のクロム金属を
用いた。部材および蒸発材を真空チャンバー内の所定の
位置にセッティングした後、真空チャンバー内を1×1
-5Torr(1.33×10-3Pa)まで排気し、部
材にバイアス電圧−800Vを印加して、クロムボンバ
ードメント処理を行った。この処理は、基材表面を洗浄
し、基板温度を400〜500℃まであげるために行
う。次に、バイアス電圧−300V、カソード電流90
Aとし、毎分50ccで窒素ガスを流し、60分間、基
材全面にコーティングを施した。得られた膜厚は3μm
であつた。
【0029】その後、ドロップレットと呼ばれる未反応
クロム粒子を、SiCが混入された研磨材で除去し、表
面を仕上げた。この処理により、表面荒さがRa=0.
08μm、Rmax=0.8μmとなった。
【0030】さらに、大気中で800℃の電気炉により
20分間の熱処理を行った。電気炉から取り出した後
は、自然冷却した。膜表面をX線回析により結晶性を分
析したところ、ピークの高い順にCr23,Cr2N、
CrNよりなっていた。
【0031】これを、温度:220℃、圧力:60気
圧、pH:9.2、添加物:マグネタイト100pp
m、試験液:純水にヒドラジン0.5ppmの条件のオ
ートクレープで、50時間の試験を行い、スケール付着
を評価した。比較として、SUS304基材および該基
材に他のコーティング膜(Cr膜、Nb膜など)を形成
した部材およびTi基材を同様に試験し、スケール付着
を評価した。その結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】表2から、各種コーティング膜の中では、
Cr23・CrN膜のスケール付着量が最も少いことが
明らかである。
【0034】[実施例5] インコネル600で作製さ
れた、サイズφ10mm、長さが56mmのポンプ部品
に、実施例4と同様に、膜厚15μmのCrNをコーテ
ィングし、実施例4と同様に、大気中で800℃の電気
炉により20分間の熱処理を行った。これを高温高圧下
で使用するポンプに組み込み、使用試験を行った結果、
10ヶ月経過しても、ポンプ圧に変化は見られなかっ
た。一方、比較として、コーティングしないインコネル
600製品についても、同様の試験を行ったところ、半
年経過すると、スケールが付着し、流路が狭くなり、ポ
ンプ圧が上昇していた。
【0035】[実施例6] SUS304基板上に、実
施例4と同様に、膜厚15μmのCrNコーティング膜
を形成した後、大気中で300℃の電気炉により16時
間の熱処理を行った。電気炉から取り出した後は、自然
冷却した。膜表面をX線回析により結晶性を分析したと
ころ、ピークの高い順にCrN、Cr2N、Cr23
りなっていた。この試験片を実施例4と同様の条件でオ
ートクレーブ試験に供した結果、スケール付着量は非常
に少なかった。
【0036】[実施例7] 実施例5と同様のポンプ部
品に、膜厚15μmのCrNをコーティングし、実施例
6と同様に、大気中で300℃の電気炉により16時間
の熱処理を行った。これを高温高圧下で使用するポンプ
に組み込み、使用試験を行った結果、10ヶ月経過して
も、ポンプ圧に変化は見られなかった。
【0037】[実施例8] サイズが50×100×1
0mmのSUS630の試験片をエタノールで超音波洗
浄した後、マルチアーク社製のカソードアークイオンプ
レーティング装置にセットした。蒸発源には、溶解法で
作製した純度99.9%の金属クロムを用いた。イオン
プレーティング装置の真空容器内を1×10-5Torr
(1.33×10-6Pa)まで排気した後、試験片にバ
イアス電圧−800Vを印加して、クロムイオンボンバ
ードメント処理を2分間行った。このとき放射温度計で
測定した部材の温度は450℃であった。
【0038】次に、バイアス電圧−300V、窒素ガス
圧50mTorr(6.65Pa)、クロムカソード電
流100Aで、試験片の全面に60分間コーティングを
施した。このとき放射温度計で測定した試験片の温度は
350℃であった。次に、アルゴンガス16SCCM、
酸素ガス4SCCMを導入して、真空容器内の圧力を4
0mTorr(5.32Pa)とし、CrNコーティン
グ処理した試験片にバイアス電圧−1000Vをかけ、
60分間のグロー放電による低温プラズマ処理を施し
た。このとき放射温度計で測定した部材の温度は200
℃であった。得られたCrN膜厚は3μmであった。作
製した試験片の表面をXPSで深さ分析した結果、表面
に約25nmのCr酸化物層が生成していた。
【0039】この試験片についてビッカース硬度を測定
した。また、比較として、処理を行わないSUS630
材およびCrN膜を研磨することなく、大気中800℃
でCrN膜に熱処理を施したSUS630材の試験片に
ついてもビッカース硬度を測定した。これらの結果を表
3に示す。
【0040】さらに、これらの試験片を、220℃、5
0時間のオートクレープ試験に供し、スケール付着を評
価した。試験液は、マグネタイトを100ppm、ヒド
ラジン0.5ppm添加した純水とした。その結果も表
3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】表3から、CrN膜・プラズマ処理をした
本実施例のものが、硬度の低下もなく、もっともスケー
ル付着量が少なかったことがわかる。
【0043】[実施例9] SUS630で作製された
φ90mm、高さ65mmのバルブ部品をエタノールお
よびアセトンで超音波洗浄し、乾燥したのち、クロムイ
オンボンバード時間が10分間である以外は、実施例1
と同様な処理を行った。この部品を常温大気下でバルブ
開閉動作試験した結果、部品に著しい損傷は発生せず、
強度が低下していないことがわかった。また、この部品
を、実施例8と同様の条件で、オートクレーブ試験に供
した結果、スケール付着量は非常に少なかった。
【0044】[実施例10] サイズが50×100×
10mmのSUS630の試験片を用い、プラズマ処理
前のCrNコーティング表面を、SiCが混入された研
磨剤で、表面粗さRa=0.08μm、Rmax=1.1μ
mに研磨した以外は、実施例8と同様な処理を行った。
この部品を、実施例8と同様の条件で、オートクレーブ
試験に供した結果、スケール付着量は非常に少なかっ
た。
【0045】
【発明の効果】 本発明により、高温高圧水中に長時間
使用しても、部材の表面にスケールが付着しないスケー
ル付着防止膜付き部材およびその製造方法を提供するこ
とができる。特に、本発明は、厳しい寸法精度が要求さ
れる部品や、複雑形状の部品に適用でき、しかも後加工
が不要で比較的低コストでこれらの部材が得られる。ま
た、熱処理により強度が低下する部材にも適用すること
ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F01D 25/00 F01D 25/00 P (72)発明者 岡部 信一 千葉県市川市中国分3−18−5 住友金属 鉱山株式会社中央研究所内 Fターム(参考) 4K028 BA02 BA05 BA12 BA22 4K029 AA02 AA27 BA43 BA58 BB02 CA03 DD06 EA01 EA03 EA08 4K044 AA02 BA15 BA18 BB01 BB03 BC02 CA12 CA13

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材の表面に、膜厚2〜20μmの窒化
    クロム膜を形成した後、窒化クロム膜の表面荒さをRma
    xで1.5μm以下、Raで0.1μm以下としたスケー
    ル付着防止膜付き部材。
  2. 【請求項2】 窒化クロム膜の表面部に酸化クロム膜を
    形成した請求項1に記載のスケール付着防止膜付き部
    材。
  3. 【請求項3】 基材の表面に、膜厚2〜20μmの窒化
    クロム膜を形成した後、酸素分圧1〜100mTorr
    (0.133〜13.3Pa)の減圧雰囲気で、室温以
    上300℃未満、0.2〜5時間のプラズマ処理を施し
    て、窒化クロム膜の表面部に酸化クロム膜を形成したス
    ケール付着防止膜付き部材。
  4. 【請求項4】 基材の表面に、膜厚2〜20μmの窒化
    クロム膜を形成した後、窒化クロム膜の表面荒さがRma
    xで1.5μm以下、Raで0.1μm以下となるように
    窒化クロム膜を研磨するスケール付着防止膜付き部材の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 窒化クロム膜を、さらに大気中で300
    〜1000℃、0.2〜16時間の熱処理を施して、窒
    化クロム膜の表面部に酸化クロム膜を形成する請求項4
    に記載のスケール付着防止膜付き部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 基材の表面に、膜厚2〜20μmの窒化
    クロム膜を形成した後、酸素分圧1〜100mTorr
    (0.133〜13.3Pa)の減圧雰囲気で、室温以
    上300℃未満、0.2〜5時間のプラズマ処理を施し
    て、窒化クロム膜の表面にクロム酸化膜を形成するスケ
    ール付着防止膜付き部材の製造方法。
  7. 【請求項7】 基材の表面に、膜厚2〜20μmの窒化
    クロム膜を形成した後、窒化クロム膜の表面荒さがRma
    xで1.5μm以下、Raで0.1μm以下となるように
    窒化クロム膜を研磨した後、酸素分圧1〜100mTo
    rr(0.133〜13.3Pa)の減圧雰囲気で、室
    温以上300℃未満、0.2〜5時間のプラズマ処理を
    施して、窒化クロム膜の表面にクロム酸化膜を形成する
    スケール付着防止膜付き部材の製造方法。
  8. 【請求項8】 窒化クロム膜をカソードアーク式イオン
    プレーティング法で形成する請求項4〜7に記載のスケ
    ール防止膜付き部材の製造方法。
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