JP2002309441A - 結晶化したポリイミド繊維及びその製造方法 - Google Patents

結晶化したポリイミド繊維及びその製造方法

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JP2002309441A
JP2002309441A JP2001111405A JP2001111405A JP2002309441A JP 2002309441 A JP2002309441 A JP 2002309441A JP 2001111405 A JP2001111405 A JP 2001111405A JP 2001111405 A JP2001111405 A JP 2001111405A JP 2002309441 A JP2002309441 A JP 2002309441A
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polyimide
fiber
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polyimide fiber
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JP2001111405A
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Mikio Furukawa
幹夫 古川
Katsuyuki Toma
克行 当麻
Yoshihisa Yamada
良尚 山田
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Unitika Ltd
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Unitika Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融紡糸法によっても得られる熱可塑性ポリ
イミドからなり、細繊度で高強度であり、かつ、寸法安
定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミド繊維及び
このようなポリイミド繊維を得るための製造方法を提供
する。 【解決手段】 主鎖中に特定の構造式で表される繰り返
し単位を80モル%以上有するポリイミドからなるマルチ
フィラメントであって、結晶化度が20%以上、かつ単
糸の平均繊維径が20μm以下である結晶化したポリイミ
ド繊維。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリイミド繊維に
関するものであり、さらに詳しくは、特定の繰り返し構
造を有するポリイミドからなるマルチフィラメントであ
って、単糸径が小さく、かつ結晶化されているポリイミ
ド繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリイミドは、樹脂の中で最高レ
ベルの耐熱性を有し、これに加えて優れた機械特性、摺
動特性、耐薬品性を有していることが知られており、種
々形態に加工され、使用されている。しかしながら、一
般に芳香族ポリイミドは優れた特性を有する反面、成形
加工性に劣るという問題点を有しており、多くの場合、
その前駆体であるポリアミック酸の段階で成形加工をし
た後、熱的もしくは化学的に反応させて最終的にポリイ
ミドの成形体とする検討がなされてきた。
【0003】繊維への成形加工についても同様の方法で
検討されており、例えば、特許第1147596号、特
許第1340821号、特開昭59−163416号公
報などにあるように、ポリアミック酸の溶液を口金より
水槽などの凝固槽に吐出して繊維形状に成形し、しかる
後に熱的もしくは化学的に反応させて最終的にポリイミ
ドの繊維とする、いわゆる、湿式紡糸法による製造が実
施されてきた。
【0004】一方で、主に加工性を向上する目的で、原
料モノマーの構造を適宜選択して、ポリイミドに熱加工
性を発現させる検討も行われており、熱可塑性ポリイミ
ドとして知られている。熱可塑性ポリイミドの場合、ポ
リイミド樹脂を熱的に溶融させて成形することが可能で
あり、繊維形状への成形加工についても、これを口金よ
り空気中に吐出させて成形する溶融紡糸法が検討されて
きた。
【0005】このような溶融紡糸法としては、例えば、
特許第2043366号や特開平5−140337号公
報にあるように、特定の化学構造を有する熱可塑性ポリ
イミドを用いた溶融紡糸法により得られたポリイミド繊
維が検討されてきた。
【0006】しかしながら、上記した湿式紡糸法による
ポリイミド繊維は耐熱性に特に優れているものの、その
製造方法に起因する溶剤の回収が必要であり、環境面、
コスト面からみて、問題点を有しており工業的に実施す
るにはさらなる製造方法の改善が必要であった。
【0007】一方、熱可塑性ポリイミドを用いた溶融紡
糸法によるポリイミド繊維については、未だ検討が不充
分であり、分子量の高いポリイミドを原料としたポリイ
ミド繊維や、強度が高く、かつ細繊度のポリイミド繊維
は得られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な問題点を解決し、溶融紡糸法によっても得られる熱可
塑性ポリイミドからなり、細繊度で高強度であり、か
つ、寸法安定性、熱安定性等の特性にも優れたポリイミ
ド繊維及びこのようなポリイミド繊維を得るための製造
方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の化学構造を有
する熱可塑性ポリイミドを原料とし、溶融紡糸、延伸の
条件を適切に選択することにより、結晶化され、細繊度
で強度が高く、熱安定性、寸法安定性等にも優れたポリ
イミド繊維を得ることに成功し、本発明に到達した。
【0010】すなわち、本発明は次の(A)、(B)を
要旨とするものである。 (A)主鎖中に下記構造式(1)で表される繰り返し単
位を80モル%以上有するポリイミドからなるマルチフィ
ラメントであって、結晶化度が20%以上、かつ単糸の
平均繊維径が20μm以下であることを特徴とする結晶化
したポリイミド繊維。
【化3】 (B)主鎖中に下記構造式(1)で表される繰り返し単
位を80モル%以上有するポリイミドの水分率を50ppm以
下に調節し、溶融粘度が600Pa・s以下になるように溶融
紡糸し、次いで、紡糸糸条をポリイミドの〔ガラス転移
点(Tg)−100〕〜(Tg−30)℃の温度で予熱を行い、続
いて、ポリイミドの Tg〜(Tg+100)℃の温度で加熱し
ながら、ポリイミドの(Tg−50)〜(Tg+50)℃の温度
の引取ローラで引き取って、延伸倍率1.2〜5.0倍
で延伸し、巻き取ることを特徴とする(1)記載のポリ
イミド繊維の製造方法。
【化4】
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリイミド繊維は、主鎖中に下記構造式(1)
で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミ
ドからなる。このようなポリイミドは、熱可塑性で熱加
工性に優れると共に結晶性を有するポリイミドである。
【化5】
【0012】構造式(1)に示される繰り返し単位を有
するポリイミドは、例えば、4,4’−ビス(3アミノ
フェノキシ)ビフェニルとピロメリット酸ニ無水物をN
−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトア
ミドもしくはN,N−ジメチルホルムアミドなどの有機
溶媒中で重合させポリアミック酸とした後、熱的もしく
は化学的に縮合閉環することによりアミド基をイミド基
に変換する従来公知の方法で製造することができる。
【0013】この際、種々目的で、他の化学構造を有す
る第三成分を配合、共重合したものでもよいが、その配
合量は上記構造式(1)で示される繰り返し単位が80
モル%以上になるようにする。第三成分を配合、共重合
して上記構造式(1)で示される繰り返し単位が80モ
ル%未満になると、第三成分の有する特性が顕著に発現
し、熱可塑性、結晶性、耐熱性等のポリイミドの優れた
特性が低下する。なお、第三成分はランダムに共重合し
てもよいし、特定の繰り返し単位数毎に共重合するブロ
ック共重合にしてもよい。
【0014】上記構造式(1)で示される繰り返し単位
からなるポリイミドの一例としては、三井化学社製の
『オーラム(商標名)』として市販されているものが挙
げられる。なお、このポリイミドは、耐熱性、機械特性
や耐薬品性など種々特性に優れており、DSC法によるガ
ラス転移点(Tg)が250℃、融点が388℃である。
【0015】また、上記のような本発明で使用するポリ
イミドには、本発明の目的を損なわない範囲で、潤滑
剤、可塑剤、結晶化促進剤、酸化防止剤、消艶剤等を配
合してもよい。
【0016】本発明のポリイミド繊維は、マルチフィラ
メントであって、単糸の平均繊維径が20μm以下、かつ
結晶化度が20%以上のものである。後述するように、
従来詳細に検討されなかった紡糸および延伸工程におけ
る条件を規定することにより、今まで得るのが困難であ
った、単糸径が20μm以下であり、かつ、結晶化した
ポリイミド繊維を得ることができることとなった。
【0017】本発明における結晶化度とは下記計算式に
より、結晶化度(Xc)を算出したものである。なお、
ポリイミド繊維の密度は、密度勾配管を用いた浮沈法に
より容易に測定することができる。密度勾配管に使用す
る溶液は適宜選択すればよいが、本発明においては、ト
ルエンおよび四塩化炭素を使用し、液温25℃での繊維
(5mm長)の浮沈位置から測定する。 結晶化度(Xc)={ρc(ρ−ρa)}/{ρ(ρc
−ρa)}×100(%) (ρはポリイミド繊維の密度、ρaはポリイミドの非晶
相の密度、ρcはポリイミドの結晶相の密度をそれぞれ
示す)
【0018】本発明のポリイミド繊維の結晶化度は20
%以上であり、さらに好ましい値は33%以上、より好
ましい値は38%以上である。
【0019】結晶化したポリイミド繊維は、結晶化の進
んでいないポリイミド繊維に比べて種々特性に優れる傾
向にあり、例えば、引張り強度および弾性係数が向上
し、加熱冷却サイクルによる寸法変化が小さくなり、さ
らには、酸やアルカリなどの薬品に対する耐性も向上す
るという好ましい特性を有する
【0020】結晶化度が20%未満であると、上記のよ
うな種々の物性を向上させることができず、産業資材用
途をはじめ種々の用途に用いることが困難となる。
【0021】本発明のポリイミド繊維は単糸径が20μ
m以下である。細繊度で、かつ結晶化したポリイミド繊
維であるので、種々の産業資材用途として有望な素材で
あり、長繊維として用い、製編織して布帛としたり、短
繊維として不織布としてもよく、耐熱衣、断熱材、耐熱
フィルター、絶縁紙やプリント基板材料などの素材とし
て有用である。
【0022】さらに、本発明のポリイミド繊維は、23
0℃で加熱したときの乾熱収縮率が0.1%以下である
ことが好ましく、さらに好ましくは0.07%以下であ
る。なお、本発明における乾熱収縮率は以下のように測
定する。ポリイミド繊維を15mmの長さに切断し、T
MA装置(TMAインスツルメント社製、TMA294
0型)を用いて引張り荷重2gfをかけた状態で室温から
230℃まで2℃/分の速度で昇温し、続けて、室温ま
で2℃/分の速度で降温したときの繊維長の変化量を求
め、繊維長に対する変化量の割合を乾熱収縮率とする。
【0023】乾熱収縮率は熱安定性を示すものであり、
乾熱収縮率が0.1%を超えると、長繊維及び短繊維の
いずれとして用いた際にも熱安定性に劣り、製品として
の寸法安定性も悪化する。
【0024】さらに、本発明のポリイミド繊維は、結晶
化が進んでいることで高強度となり、強度が3.0cN/dte
x以上であることが好ましい、さらに好ましくは4.5cN/
dtex以上である。強度が3.0cN/dtex未満であると、目
的とする産業資材用途に適した製品を得ることが困難と
なる。
【0025】加えて、本発明のポリイミド繊維は、ヤン
グ率が100〜200cN/dtexであることが好ましい。
ヤング率をこの範囲とすることによって、得られる製品
に適度な柔軟性を付与することができる。
【0026】本発明のポリイミド繊維はマルチフィラメ
ントであるが、単糸数は30以上とすることが好まし
い。単糸数が30未満であるとマルチフィラメント自体
の強力が弱くなり、製造において工程通過性よく延伸、
巻き取りを行うことが困難となり、糸切れ等を生じやす
く、生産性が低下するとともに、上記したような高強度
の糸とすることが困難となりやすい。また、各単糸の断
面形状は特に限定するものではなく、丸断面のもののみ
ならず、目的や用途に応じて異形断面としてもよい。
【0027】次に、本発明のポリイミド繊維の製造方法
について説明する。まず、主鎖中に上記構造式(1)で
表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミド
の水分率を50ppm以下に調節し、溶融粘度が600Pa・s以
下になるように溶融紡糸する。紡糸の際に溶融したとき
の溶融粘度が600Pa・sを超えると、溶融紡糸時の曳糸性
が悪く、口金より安定した紡出が困難となり、目的のポ
リイミド繊維を得ることが難しくなるため好ましくな
い。溶融粘度はポリイミドの重合度と、第三成分を配合
した場合はその組成および配合量によって決まるが、本
発明で使用するポリイミドでは、安定した溶融粘度を得
るために、重合時にジカルボン酸無水物などのいわゆる
末端封止剤を適量配合し、溶融粘度を600Pa・s以下にす
ることが好ましい。
【0028】また、溶融粘度は溶融温度によって変化す
るが、紡糸の際の溶融温度は、通常370〜415℃で行うこ
とが好ましく、本発明に使用するポリイミドの場合、溶
融温度が370℃未満であると、溶融が不充分となり溶融
粘度を600Pa・s以下にすることが困難となりやすい。一
方、溶融温度が415℃を超えると、ポリイミドの熱分解
が進行する傾向にあるため好ましくない。また、同様の
理由から、紡糸時には溶融滞留時間も極力短くすること
が好ましく、たとえ溶融温度が上記範囲内にあっても、
溶融滞留時間が30分を超えるとポリイミドの熱分解が
進行し、溶融粘度が上昇したり、ゲル状物の発生が起こ
る傾向にあるため好ましくない。
【0029】さらに、溶融に際してポリイミドは含水分
率を50ppm以下にしておくことが好ましい。ポリイミド
はレジンでも粉体状であってもかまわないが、例えば1
50〜220℃の温度で4〜24時間乾燥させることに
より、含水分率を50ppm以下にすることができる。ま
た、乾燥は窒素流通下もしくは真空下で行うことが効率
の面で好ましく、さらにはタンブラーなどを用いて流動
下乾燥させる方法が好ましい。
【0030】ポリイミドの含水率が50ppmを超えてい
ると、溶融時に水分によるガスが大量に発生し、紡出糸
中にボイドが含まれたり、原因は定かではないが、ゲル
状の不溶解物が発生して安定した紡糸が行えなくなるな
どの問題が生じるため好ましくない。また、同様の理由
から、紡糸工程中は上記した方法で含水分率を調整した
ポリイミドは、溶融するまで50〜150℃で保温して
おくことが好ましい。
【0031】そして、口金より吐出した紡出糸は、冷却
固化後、必要に応じて油剤を塗布し、ワインダーなどを
用いて巻き取る。この際、固化点を調整する目的で、口
金より吐出した紡出糸をフードで覆って保温してもよ
い。巻取速度は特に限定されるものではないが、通常の
溶融紡糸と同様に200〜1500m/分の速度で行え
ばよい。
【0032】本発明のポリイミド繊維は、このようにし
て紡糸されたマルチフィラメントを加熱延伸することに
より得ることができる。なお、加熱延伸工程は紡糸工程
と連続して行っても、紡糸工程で一旦引き取りを行った
後に行ってもどちらでもよい。加熱延伸工程を別工程と
する場合は、引き取った紡出糸を回転ローラなどを用い
て速度5〜20m/分で捲き出す。この際、各単糸をま
とめて捲き出してもよいが、引き取る前に油剤を付与し
て1本のマルチフィラメントにして引き取っておき、マ
ルチフィラメントとして捲き出すことが好ましい。捲出
速度が5m/分未満では生産性に劣るため好ましくな
く、20m/分を超えると目的のポリイミド繊維を得よ
うとした場合、糸切れなどが発生することがあり好まし
くない。
【0033】そして、まず、マルチフィラメントをポリ
イミドの(Tg−100)〜(Tg−30)℃の温度で予熱を行
う。予熱する手段は限定するものではないが、加熱した
回転ローラなどで予熱を施すことが好ましい。予熱温度
が(Tg−100)℃未満では、予熱する効果が減少
し、後工程の延伸工程において目的のポリイミド繊維を
安定して得ることが困難になり、(Tg−30)℃を超
えると、糸条の軟化が進行した状態で次の加熱工程に入
り、その際糸切れするため好ましくない。
【0034】続いて、ポリイミドの Tg〜(Tg+100)℃
の温度で加熱しながら、ポリイミドの(Tg−50)〜(Tg
+50)℃の温度の引取ローラで引き取って、延伸倍率
1.2〜5.0倍で延伸し、巻き取る。予熱したマルチ
フィラメントをポリイミドのTg〜(Tg+100)℃の温
度で加熱する際には、スリットヒーターやチャンバーな
どを用いた雰囲気下、もしくは、ヒーターなどで加熱さ
れた熱媒中で行うことが好ましい。すなわち、加熱を熱
媒中で行う方が熱伝導効率がよく、また、延伸応力が熱
媒によって均等に分配され、その結果緩和される傾向に
あり、目的とする結晶化したポリイミド繊維を容易に得
ることができる。
【0035】加熱温度がポリイミドのTg未満である
と、延伸工程等で糸切れが発生しやすく、Tg+100
℃を超えると、糸条の軟化が進行し、延伸応力に耐えき
れずに糸切れするため好ましくない。
【0036】次に、加熱されたマルチフィラメントをポ
リイミドの(Tg−50)〜(Tg+50)℃の温度の引取ロー
ラで引き取りながら延伸を行う。引取ローラを加熱ロー
ラとするのは、この前の熱処理での熱をある程度保温す
るためである。引取ローラの温度がポリイミドの(Tg
−50)℃未満であると、加熱軟化したポリイミド繊維
が急激に固化し、ローラに引き取る際に糸切れが発生し
やすくなる。一方、(Tg+50)℃を超えると、軟化
が進んだ状態でローラに引き取る状況になり、その時の
応力で糸切れしやすく、好ましくない。
【0037】さらに、この際、引取ローラの速度を延伸
倍率1.8〜5.0倍となるような速度とする。延伸倍
率が1.8倍未満であると、結晶化したポリイミド繊維
とすることが困難となる。一方、延伸倍率が5.0倍を
超えると、延伸時に糸切れが多発し、操業性が悪化する
とともに得られる繊維の強度も低下したり、単糸切れの
生じた繊維となる。
【0038】なお、本発明の製造方法においては、上記
のように延伸を延伸倍率で規定しているが、さらに好ま
しい要因として、紡糸時の紡糸口金の吐出孔の平均径を
200〜600μmとし、延伸により紡糸口金の孔径の
5%以下、すなわち、単糸繊度が20μmになるように
巻取り速度を調節して延伸することが好ましい。吐出孔
の平均径が200μm未満であると、溶融したポリイミ
ドが安定して吐出されなかったり、口金部での圧力が大
きくなり生産が困難になる傾向があるため好ましくな
い。一方、吐出孔の平均径が600μmを超えると、後
の延伸工程において、細繊度で結晶化したポリイミド繊
維を得ることが困難になるため好ましくない。
【0039】なお、得られたポリイミド繊維の結晶化を
さらに促進する目的で、延伸後、緊張させた状態で不活
性雰囲気下において250〜350℃で加熱処理を施し
てもよい。しかしながら、機械的強度は低下する傾向に
あるため、この点を考慮して加熱処理を行う。
【0040】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
する。なお、実施例中の各特性値の測定は下記方法によ
り行った。 (単糸の平均繊維径)得られたポリイミド繊維を脱脂綿
で包み、金枠にきつくはめて金枠面で切断し、その切断
面を偏光顕微鏡で300倍の倍率で撮影し、得られた画
像から単糸径を測定し、その平均値を平均繊維径とし
た。 (結晶化度)前記の方法で測定した。 (乾熱収縮率)前記の方法で測定した。 (強度)得られたポリイミド繊維を400mmの長さに切
断し、つかみ間隔が250mmになるように治具で固定
し、万能試験機(島津製作所製、オートグラフDSS−
500型)を用いて300mm/分の速度で引張ったと
きの応力を室温下で測定し、算出した。
【0041】実施例1 〈溶融紡糸工程〉ポリイミドとして『オーラム』(商
標、三井化学社製)のレジンを用いた。このポリイミド
のガラス転移点は250℃であり、400℃における剪
断速度100s-1での溶融粘度は500Pasであっ
た。レジンを減圧下200℃で20時間タンブラーを用
いて乾燥処理し、減圧下100℃まで放冷した後、常圧
に戻し、80℃に保たれたホッパー中に投入した。この
ときのレジンの水分率は43ppmであった。そしてホッ
パーに投入したレジンを、押出機を用いて加熱しながら
溶融させた。このときの溶融温度は410℃であり、溶
融時の溶融粘度を300Pa・s、溶融滞留時間を15分
として、口金より押出して繊維状に成形した。なお、口
金の手前には計量装置および200メッシュ相当、40
0メッシュ相当、600メッシュ相当および1000メ
ッシュ相当のフィルター2枚を順次配置し、計量装置で
一定の吐出量となるようにした。また、口金の口金孔数
は67個であり、口金孔径は0.3mmであった。口金
より吐出成形された紡出糸は、固化したところで油剤を
アトマイザーを用いて塗布し、1本のマルチフィラメン
トに集束した後、ワインダーを用いて巻取速度500m
/分で紙管に巻き取った。 〈延伸工程〉巻き取ったマルチフィラメントをローラに
架けて捲き出し、次いで直近に配置した引取ローラに引
き取って予熱した。このときの捲き出し速度は10m/
分、引取ローラの温度(予熱温度)は200℃であっ
た。次に、全長2mのスリットヒータを通して300℃
に加熱した後、280℃に加熱した保温ローラに引き取
り、延伸倍率2.8倍として延伸した後、ワインダーを
用いて紙管に巻き取り、本発明のポリイミド繊維を得
た。
【0042】実施例2〜7、比較例1〜5 溶融紡糸工程におけるポリマーの溶融温度、溶融時の溶
融粘度、溶融滞留時間、紡糸口金の口金孔径、口金孔数
を表1に示すように種々変更し、延伸工程においては、
捲き出し速度、予熱温度、加熱温度(スリットヒータ温
度)、保温ローラ温度、延伸倍率(保温ローラの回転速
度を調節して変更した)を表2に示すように種々変更し
た以外は実施例1と同様に行った。なお、実施例4、5
においては、スリットヒータの代わりに熱媒槽を配置
し、加熱した熱媒中に通過させることによりマルチフィ
ラメントを加熱した。
【0043】参考例1 延伸工程を実施しない繊維の物性を参考例として示すた
め、実施例7と同様の紡糸条件で紡糸し、延伸を施さず
にマルチフィラメントを得た。
【0044】比較例6 〈溶融紡糸工程〉主鎖中に上記構造式(1)で表される
繰り返し単位を含有しないポリイミドとして、実質的に
非晶性である『ウルテム』(商標、GEプラスチックス
社製)のレジンを用いた。このポリイミドのガラス転移
点は215℃であり、375℃における剪断速度100
-1での溶融粘度は300Pasであった。レジンを減
圧下180℃で20時間タンブラーを用いて乾燥処理
し、減圧下100℃まで放冷した後、常圧に戻し、80
℃に保たれたホッパー中に投入した。このときのレジン
の水分率は45ppmであった。ホッパーに投入したレジ
ンを、押出機を用いて加熱しながら溶融させた。このと
きの溶融温度は375℃であり、溶融時の溶融粘度を2
80Pa・s、溶融滞留時間を20分として、口金より押
出して繊維状に成形した。なお、口金の手前には計量装
置および200メッシュ相当、400メッシュ相当、6
00メッシュ相当および1000メッシュ相当のフィル
ター2枚を順次配置し、計量装置で一定の吐出量となる
ようにした。また、口金の口金孔数は48個であり、口
金孔径は0.3mmであった。口金より吐出成形された
紡出糸は、固化したところで油剤をアトマイザーを用い
て塗布し、1本のマルチフィラメントに集束した後、ワ
インダーを用いて巻取速度500m/分で紙管に巻き取
った。 〈延伸工程〉巻き取ったマルチフィラメントを表2に示
すように種々の条件を変更した以外は実施例1と同様に
延伸を行い、ポリイミド繊維を得た。得られたポリイミ
ド繊維は実質的に非晶性であった。
【0045】実施例1〜7、比較例1〜6、参考例1で
得られたマルチフィラメントの糸質物性等を表3に示
す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】表3から明らかなように、実施例1〜7で
は単糸径が小さく、かつ結晶化されており、強度が高
く、乾熱収縮率が低くて熱安定性にも優れたポリイミド
繊維を得ることができた。一方、比較例1、2では、延
伸倍率が低すぎたため、得られた繊維は、単糸径が大き
く、乾熱収縮率が高いものとなり、特に比較例2の繊維
は、結晶化度、強度ともに低かった。比較例3では、加
熱温度が低すぎたため、比較例4では、加熱温度が高す
ぎたため、ともに延伸工程で糸切れが多発し、繊維を得
ることができなかった。比較例5では、予熱温度が高す
ぎたため、加熱工程に導入される際に糸切れが生じ、繊
維を得ることができなかった。比較例6では、非晶性ポ
リイミドを用いたため、得られた繊維も実質的に非晶性
のmのであり、乾熱収縮率が高く、強度も低いものであ
った。また、参考例1では延伸を行わなかった繊維の物
性を測定した結果、結晶化度が低く、強度が低く、乾熱
収縮率が高くて熱安定性に劣るものであった。
【0050】
【発明の効果】本発明のポリイミド繊維の製造方法によ
れば、単糸径が小さく、結晶化したポリイミド繊維を操
業性よく得ることができ、本発明のポリイミド繊維は、
耐熱性に優れ、結晶化しているので、強度特性、乾熱収
縮や耐薬品性に優れており、種々産業資材の素材として
好適に用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L035 BB31 BB76 BB77 BB89 EE01 EE08 MD01 4L036 MA04 MA33 PA01 PA03 PA17 UA06

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主鎖中に下記構造式(1)で表される繰
    り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなるマ
    ルチフィラメントであって、結晶化度が20%以上、か
    つ単糸の平均繊維径が20μm以下であることを特徴とす
    る結晶化したポリイミド繊維。 【化1】
  2. 【請求項2】 230℃で加熱したときの乾熱収縮率が
    0.1%以下である請求項1記載の結晶化したポリイミ
    ド繊維。
  3. 【請求項3】 主鎖中に下記構造式(1)で表される繰
    り返し単位を80モル%以上有するポリイミドの水分率を
    50ppm以下に調節し、溶融粘度が600Pa・s以下になるよ
    うに溶融紡糸し、次いで、紡糸糸条をポリイミドの〔ガ
    ラス転移点(Tg)−100〕〜(Tg−30)℃の温度で予熱を
    行い、続いて、ポリイミドの Tg〜(Tg+100)℃の温度
    で加熱しながら、ポリイミドの(Tg−50)〜(Tg+50)
    ℃の温度の引取ローラで引き取って、延伸倍率1.2〜
    5.0倍で延伸し、巻き取ることを特徴とする請求項1
    〜2のいずれかに記載のポリイミド繊維の製造方法。 【化2】
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012036511A (ja) * 2010-08-04 2012-02-23 Kuraray Co Ltd 難燃性布帛およびそれを用いてなる防護衣

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