JP2004176212A - 糸斑の低減されたポリイミド繊維及びその製造方法 - Google Patents

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幹夫 古川
Katsuyuki Toma
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良尚 山田
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Abstract

【課題】溶融紡糸法によって得られる熱可塑性ポリイミドからなり、マルチフィラメントとして糸斑(C%)が小さく、単糸繊度が小さく、かつマルチフィラメントを構成する各単糸繊度にばらつきが少ない、糸斑の低減されたポリイミド繊維及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】主鎖中に特定の繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなるマルチフィラメントであって、単糸数が30本以上、単糸繊度が6dtex以下であり、マルチフィラメントの太さ斑がウースタノーマルC%で10%以下、かつ、マルチフィラメントを繊維軸方向に対して垂直に切断したときの各単糸の断面積のばらつきが20%以下であることを特徴とする糸斑の低減されたポリイミド繊維。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミド繊維に関するものであり、さらに詳しくは、特定の繰り返し構造を有するポリイミドからなるマルチフィラメントであって、糸斑が低減されたポリイミド繊維及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリイミドは、樹脂の中で最高レベルの耐熱性を有し、これに加えて優れた機械特性、摺動特性、耐薬品性を有していることが知られており、種々形態に加工され、使用されている。しかしながら、一般に芳香族ポリイミドは優れた特性を有する反面、成形加工性に劣るという問題点を有しており、多くの場合、その前駆体であるポリアミック酸の段階で成形加工をした後、熱的もしくは化学的に反応させて最終的にポリイミドの成形体とする検討が実施されてきた。
【0003】
繊維への成形加工についても同様の方法で検討されており(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)、ポリアミック酸の溶液を口金より水槽などの凝固槽に吐出して繊維形状に成形し、しかる後に熱的もしくは化学的に反応させて最終的にポリイミドの繊維とする、いわゆる、湿式紡糸法による検討が実施されてきた。
【0004】
しかしながら、上記した湿式紡糸法によるポリイミド繊維は耐熱性に特に優れているものの、その製造方法に起因する溶剤の回収が必要であり、環境面、コスト面からみて、問題点を有しており工業的に実施するにはさらなる製造方法の改善が必要であった。
【0005】
一方で、主に加工性を向上する目的で、原料モノマーの構造を適宜選択して、ポリイミドに熱加工性を発現させる検討も行われており、熱可塑性ポリイミドとして知られている。熱可塑性ポリイミドの場合、ポリイミド樹脂を熱的に溶融させて成形することが可能であり、繊維形状への成形加工についても、これを口金より空気中に吐出させて成形する溶融紡糸法の適用が検討されてきた。このような検討としては、例えば、特許文献4や特許文献5にあるように、特定の化学構造を有する熱可塑性ポリイミドを用いた溶融紡糸法によるポリイミド繊維が検討されてきた。
【0006】
中でも、特許文献6には、特定の化学構造を有する熱可塑性ポリイミドを用いた溶融紡糸方法において、口金温度や加熱筒の雰囲気温度を特定のものとすることによって、増粘やゲル生成、分解ガスの発生により紡糸調子が悪化することを防ぎ、安定した紡糸を可能にする方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、この方法は紡糸口金周辺の異物の発生やガスの発生を防ぎ、生産性よく製造することを目的とするものであるため、比較的高速の引取速度で引き取っており、生産するポリイミド繊維も単糸繊度の大きいものであった。したがって、この方法により生産されるポリイミド繊維は生産性よく得ることはできるが、マルチフィラメントとして均斉のとれた物性を有するものではなく、ましてや細繊度の繊維を得るには不適であり、糸斑の大きい繊維となるものであった。
【0008】
また、本発明者らは、熱可塑性ポリイミドを用いた溶融紡糸法によるポリイミド繊維及びその製造方法を特許文献7において提案している。これによれば、繊維径が小さく、高強度であり、短繊維不織布用途に好適なポリイミド繊維を長時間安定して生産することができる。
【0009】
ポリイミド繊維を短繊維として使用する短繊維不織布用途においては、より薄く、厚み斑のない均一な厚みを有する製品が求められている。このような製品を得るためには、マルチフィラメントとして糸斑が小さく、単糸繊度が小さく、かつマルチフィラメントを構成する各単糸繊度にばらつきのないものが求められている。
【0010】
しかしながら、上述した熱可塑性ポリイミドを用いた溶融紡糸方法のいずれによっても、このような性能を満足するポリイミド繊維を得ることはできておらず、また生産性よく得る方法も提案されていなかった。
【0011】
【特許文献1】
特許第1147596号公報
【特許文献2】
特許第1340821号公報
【特許文献3】
特開昭59−163416号公報
【特許文献4】
特許第2043366号公報
【特許文献5】
特開平5−140337号公報
【特許文献6】
特開平6−33316号公報
【特許文献7】
特開2002−249927号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題点を解決し、溶融紡糸法によって得られる熱可塑性ポリイミドからなり、マルチフィラメントとして糸斑(C%)が小さく、単糸繊度が小さく、かつマルチフィラメントを構成する各単糸繊度にばらつきが少ない、糸斑の低減されたポリイミド繊維及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の化学構造を有する熱可塑性ポリイミドを原料とする細繊度のポリイミド繊維を製造する方法において、特定の溶融紡糸条件(固化前の熱処理温度や時間、引取速度等)を選定して溶融紡糸することにより、糸斑の低減されたポリイミド繊維束を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は次の(a)、(b)を要旨とするものである。
(a)主鎖中に下記構造式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなるマルチフィラメントであって、単糸数が30本以上、単糸繊度が6dtex以下であり、マルチフィラメントの太さ斑がC%で10%以下、かつ、マルチフィラメントを繊維軸方向に対して垂直に切断したときの各単糸の断面積のばらつきが20%以下であることを特徴とする糸斑の低減されたポリイミド繊維。
【化3】
Figure 2004176212
(b)主鎖中に下記構造式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドを、溶融粘度が300Pa・s以下になるように溶融し、吐出孔を30個以上有する口金を用いて溶融紡糸するに際し、口金より吐出した冷却固化する前の繊維を0.02〜0.1秒間、150〜300℃の雰囲気温度内を通過させ、引取速度800m/分以下で引き取ることを特徴とする、(a)記載のポリイミド繊維の製造方法。
【化4】
Figure 2004176212
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリイミド繊維は、主鎖中に下記構造式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなる。このようなポリイミドは、熱可塑性で熱加工性に優れると共に結晶性を有するポリイミドである。
【化5】
Figure 2004176212
【0016】
構造式(1)に示される繰り返し単位を有するポリイミドは、例えば、4,4’−ビス(3アミノフェノキシ)ビフェニルとピロメリット酸ニ無水物をN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドもしくはN,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中で重合させポリアミック酸とした後、熱的もしくは化学的に縮合閉環することによりアミド基をイミド基に変換する従来公知の方法で製造することができる。
【0017】
この際、種々の目的で、他の化学構造を有する第三成分を配合、共重合したものでもよいが、その配合量は上記構造式(1)で示される繰り返し単位が80モル%以上になるようにする。第三成分を配合、共重合して上記構造式(1)で示される繰り返し単位が80モル%未満になると、第三成分の有する特性が顕著に発現し、熱可塑性、結晶性、耐熱性等のポリイミドの優れた特性が低下する。
なお、第三成分はランダムに共重合してもよいし、特定の繰り返し単位数毎に共重合するブロック共重合にしてもよい。
【0018】
上記構造式(1)で示される繰り返し単位からなるポリイミドの一例としては、三井化学社製の『オーラム(商標名)』として市販されているものが挙げられる。なお、このポリイミドは、耐熱性、機械特性や耐薬品性など種々特性に優れており、DSC法によるガラス転移点(Tg)が250℃、融点が388℃である。
【0019】
また、上記のような本発明で使用するポリイミドには、本発明の目的を損なわない範囲で、潤滑剤、可塑剤、結晶化促進剤、酸化防止剤、消艶剤等を配合してもよい。
【0020】
そして、本発明のポリイミド繊維は、目的とする用途に適するものとするために、単糸数が30本以上、単糸繊度6dtex以下とする。中でもより厚みの薄い短繊維不織布を得る場合には単糸繊度を4dtex以下とすることが好ましい。単糸繊度の下限としては特に限定されるものではないが、本発明の製造方法により生産性よく得ることができる範囲としては、1dtex以上とすることが好ましく、延伸前の未延伸糸としては2dtex以上とすることが好ましい。
【0021】
また、単糸数が30未満であるとマルチフィラメント自体の強力が弱くなり、製造において工程通過性よく延伸、巻き取りを行うことが困難となり、糸切れ等を生じやすく、得られるマルチフィラメントの性能及び生産性が低下しやすい。なお、単糸数の上限は特に限定するものではないが、本発明の製造方法において紡糸直後の高温雰囲気下での熱処理効果が単糸間で不均一とならないようにするため、230本以下とすることが好ましい。
【0022】
本発明のポリイミド繊維は糸斑の低減されたものであるが、具体的にはマルチフィラメントの繊維長手方向における太さ斑が小さく、かつマルチフィラメントを構成する各単糸の繊度斑が小さいものである。
まず、マルチフィラメントの繊維長手方向における太さ斑が小さいことを示す指標としてC%を用いるものであり、C%を10%以下とすることが必要で、好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下とする。
C%が10%を超えると、マルチフィラメントとしての糸斑が大きくなり、例えば、低目付の短繊維不織布など各種の製品にした際に、均一性を確保することが難しく、使用することが困難となる。
【0023】
本発明において、C%はUSTER TESTER2(ツェルベガーウスター社)で測定するものである。糸速度50m/分、TWIST S撚80回m/分、EVALUTION TIME 2分30秒、RANGE25%、測定モードは、L−TESTでC%を測定し、その平均値とする。
【0024】
次に、マルチフィラメントを構成する各単糸の繊度斑が小さいことを示す指標として、マルチフィラメントを繊維軸方向に対して垂直に切断したときの各単糸の断面積のばらつきで示すものである。そして、このばらつきを20%以下とすることが必要で、好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下とする。
【0025】
各単糸の断面積のばらつきが20%を超えると、マルチフィラメントを構成する各単糸の太さ斑が大きいものとなり、たとえマルチフィラメントとしては太さ斑が少なかったとしても、各単糸が分散した状態となる不織布等に用いる場合には、得られる不織布の厚さ斑を生じることとなり、均一性が要求さえる用途に用いることが困難となる。
【0026】
なお、本発明において、マルチフィラメントを構成する各単糸の断面積のばらつきは、次のようにして測定し、算出するものである。
ポリイミドマルチフィラメントを繊維軸方向に対して垂直に切断し、その切断面を光学顕微鏡で600倍の倍率で撮影し、得られた画像から各単糸の単糸径を測定し、その値から各単糸の断面積を算出した。
【0027】
このとき、マルチフィラメントを構成する全ての単糸について断面積を算出し、得られた断面積の平均値(X)及び標準偏差(σ)を算出し、次式によりばらつきを求めた。
各単糸の断面積のばらつき(%)=(σ/X)×100
【0028】
なお、上記のように、本発明でいう各単糸の断面積のばらつきはマルチフィラメントの1点から測定を行うものであるが、マルチフィラメント(繊維)の長手方向に対しても単糸の断面積のばらつきが少ないことを示すために、1mの長さの繊維を取り出し、その繊維の任意の5点について測定を行い、これらの測定値のうち最大のばらつきのものが15%以下であることが好ましい。
【0029】
また、各単糸の断面形状は特に限定するものではなく、丸断面のもののみならず、目的や用途に応じて異形断面としてもよい。
【0030】
次に、本発明のポリイミド繊維の製造方法について説明する。
主鎖中に上記構造式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドを、溶融粘度が300Pa・s以下になるように溶融し、溶融紡糸を行う。溶融粘度が300Pa・sを超えると、溶融紡糸時の曳糸性が悪く、また、安定した口金からの紡出が困難となり、単糸間の糸斑が顕著になる傾向にあり、目的のポリイミド繊維を得ることが難しくなるため好ましくない。
【0031】
溶融粘度は、ポリイミドの重合度と第三成分を配合した場合はその組成および配合量によって決まるが、本発明のポリイミドでは、安定した溶融粘度を得るために、重合時にジカルボン酸無水物などのいわゆる末端封止剤を適量配合し、溶融粘度を300Pa・s以下にすることが好ましい。
【0032】
溶融粘度は溶融温度によって変化するが、紡糸の際の溶融温度は通常、370〜415℃で行うことが好ましく、本発明に使用するポリイミドの場合、溶融温度が370℃未満であると、溶融が不充分となり溶融粘度を300Pa・s以下にすることが困難であり、溶融温度が415℃を超えると、ポリイミドの熱分解が進行する傾向にあるため好ましくない。
【0033】
また、同様の理由から、紡糸時には溶融滞留時間も極力短くすることが好ましく、例え溶融温度が上記範囲内にあっても、溶融滞留時間が30分を超えるとポリイミドの熱分解が進行し、溶融粘度が上昇したり、ゲル状物の発生が起こる傾向にあるため好ましくない。
【0034】
また、溶融に際してポリイミドは含水分率を50ppm以下にしておくことが好ましい。ポリイミドはレジンでも粉体状であってもかまわないが、これを例えば150〜220℃の温度で4〜24時間乾燥させることにより、含水分率を50ppm以下にすることができる。また、乾燥は窒素流通下もしくは真空下で行うことが効率の面で好ましく、さらにはタンブラーなどを用いて流動下乾燥させる方法が好ましい。
【0035】
ポリイミドの含水率が50ppmを超えていると、溶融時に水分によるガスが大量に発生し、得られる紡糸原糸中にボイドが含まれたり、原因は定かではないが、ゲル状の不溶解物が発生して安定した紡糸が行えなくなるなどの問題が生じるため好ましくない。また、同様の理由から紡糸工程中は、上記した方法で含水分率を調整したポリイミドは、溶融するまで50〜150℃で保温しておくことが好ましい。
【0036】
そして、上記のようなポリイミドを吐出孔を30個以上有する口金を用いて溶融紡糸する。このとき、口金は金属プレート状のものを用いることが好ましく、溶融ポリイミドに含まれる不純物を取り除いたり、流動性を安定化させる目的で、200〜2000メッシュ程度のフィルターが複数枚配置されたものが好ましい。口金の吐出孔が30個未満であると、得られるマルチフィラメント自体の強力が弱くなり、巻取りの際、糸切れなどを発生する傾向にあり生産性に劣るため好ましくない。
【0037】
吐出孔の平均径は200〜600μmであることが好ましい。吐出孔の平均径が200μm未満であると、溶融したポリイミドが安定して吐出されなかったり、口金部での圧力が大きくなり生産が困難になる傾向があるため好ましくなく、吐出孔の平均径が600μmを超えると、後の延伸工程で目的のポリイミド繊維を得ることが困難になる傾向にあるため好ましくない。なお、吐出孔は通常真円であるが、その形状は特に限定されず、目的に合わせて、特定の形状でもよいし、不定形であってもよい。
【0038】
さらに、口金において、ホルダー等によって口金を紡糸装置に取り付けるのに要するスペースを除いた実質的に紡糸に使用される面(Scm)に対して吐出孔の数(N個)が多いと、得られるマルチフィラメントの単糸間の繊維径斑が大きくなる傾向にあることが、検討の結果判明した。すなわち、本発明のポリイミド繊維の製造方法においては、単位面積当りの吐出孔数N/Sが5.0個/cm以下である紡糸口金を用いることが好ましい。また、吐出孔の配列は不規則ではなく、各吐出孔間の距離が一定となるように配列されていることが好ましい。
【0039】
このような紡糸口金を用いることにより、その後の冷却固化前の高温雰囲気内を通過させる際の熱処理効果が均一となり、より各単糸の断面積のばらつきが小さいものとなり、マルチフィラメントの太さ斑も小さいものとすることができる。
【0040】
次に、口金より吐出し、冷却固化する前の繊維を0.02〜0.1秒間、150〜300℃の雰囲気温度内を通過させ、引取速度800m/分以下で引き取る。
このように、紡糸直後の冷却固化前の繊維を、特定の温度の高温雰囲気内を特定の時間通過させることにより、口金より吐出された溶融状態の樹脂が、口金より約5cm程度の距離で固化し、単糸間の繊度のばらつきが極小となり、マルチフィラメントの糸斑も低減する傾向にある。
【0041】
すなわち、溶融状態の繊維を高温雰囲気温度内を通過させることにより、紡糸直後の繊維の固化が急激に進行せず、マルチフィラメントフィラメントを構成する各単糸レベルで適度でかつ均一にドラフトがかかった状態で配向が進行することにより、単糸の繊維径が揃った繊維とすることが可能となるものである。また、このように緩やかな固化と均一なドラフトがかかる状態で配向が進行する状態が安定して継続することから、マルチフィラメントとしての太さ斑も少ない繊維とすることが可能となる。また、通常の低温での溶融紡糸では影響が少ないが、本ポリイミド繊維の溶融紡糸では、紡糸直後に紡糸線上での繊維束と雰囲気との間での温度差による空気の対流現象の影響が大きくなり、これが単糸間及び長さ方向での繊度斑の原因となる。したがって、紡糸直後に高温雰囲気温度内を通過させることにより、空気の対流現象を生じないようにすることができ、斑の少ないマルチフィラメントを得ることが可能となる。
【0042】
雰囲気温度が150℃より低かったり、通過時間が0.02秒より短いと、口金より吐出された溶融樹脂が急激に固化し、適切にドラフトがかからず、ドラフトのかかり具合に差異が生じるため、また、空気の対流現象を防ぐ効果も小さくなり、得られるマルチフィラメントは単糸間の断面積のばらつきが大きくなる傾向にあり、またマルチフィラメントの太さ斑も大きくなり、さらには強度等の特性にも劣るようになる。
【0043】
一方、雰囲気温度が300℃より高かったり、通過時間が0.1秒より長くなると、口金より吐出された溶融樹脂の固化点が口金面より下方になりすぎることにより、曳糸性が極端に低下し、いわゆるドラフト切れが発生し、操業性が低下すると同時に、上記と同様、得られるマルチフィラメントは単糸間の断面積のばらつきが大きくなり、またマルチフィラメントの太さ斑も大きくなる。
【0044】
本発明の製造方法において、上記のように冷却固化前の繊維を高温雰囲気内を通過させるには、各単糸における熱処理効果が均一になるようにするため、円筒状の加熱装置を用い、この加熱装置内を通過させることが好ましい。そして、これを口金直下に設置することが好ましい。さらに、加熱された空気を定常的に加熱装置内に送り込み、繊維と雰囲気間に発生する空気の乱れを解消してやることが好ましい。
【0045】
なお、通過時間はこの加熱装置の長さと巻取速度とを調節して行えばよく、例えば巻取速度を600m/minとした場合、装置の長さを0.2〜1mとすればよい。
【0046】
そして、このような加熱装置内を通過させた後の繊維は冷却固化され、オイリングが施された後、引取速度800m/分以下で引き取る。本発明の製造方法によれば、細繊度で単糸繊度斑及びマルチフィラメントとしての太さ斑の小さい均一性に優れた繊維を製造するので、引取速度が800m/分を超えると、冷却固化までの工程において繊維に適度なドラフトが各単糸に均一にかからず、前記したように太さ斑の少ない均一なポリイミド繊維を得ることが困難となる。一方、引取速度の下限は特に限定するものではないが、生産性を考慮して300m/分以上とすることが好ましい。
【0047】
以上のように、本発明の製造方法は、紡糸工程における条件を特定のものとすることによって、繊度斑のない本発明のポリイミド繊維を得ることができるものであり、したがって、延伸工程の条件は特に限定するものではなく、延伸糸としても、未延伸として用いてもよい。なお、本発明のポリイミド繊維の製造方法により一旦巻き取った繊維を別工程にて乾熱もしくは湿熱下で延伸することにより結晶化が進行し、機械特性の向上や乾熱収縮量の低減など種々特性が向上することが判っている。
【0048】
本発明においては、従来精密に検討されなかった溶融紡糸における条件を規定することにより、従来では得るのが困難であった、糸斑の低減されたポリイミド繊維を得ることが可能となった。本発明のポリイミド繊維は、その材料特性から、種々産業資材用途として有望な素材であり、例えば織布や不織布に加工して耐熱衣、断熱材、耐熱フィルター、絶縁紙やプリント基板材料などの素材として有用である。
【0049】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、強度の測定と操業性の評価は以下のようにして行った。
(強度)
得られたポリイミド繊維を400mmの長さに切断し、つかみ間隔が250mmになるように治具で固定し、万能試験機(島津製作所製、オートグラフDSS−500型)を用いて300mm/分の速度で引っ張ったときの応力を室温下で測定し、算出した。
(操業性)
各紡糸条件において製造を行った際に、3時間の間、ノズル下でのドラフト切れやゴゼットローラなどでの単糸の巻き付きが全く見られず、安定した生産が可能であった場合を○、前記問題が1回でも見られた場合を×とした。(但しノズル面の汚れに起因する糸切れなど本検討外の事項による不具合は除外した)
【0050】
実施例1
ポリイミドとして『オーラム』(商標、三井化学社製)の樹脂(ガラス転移点は250℃、融点が388℃)を用いた。このポリイミド樹脂を減圧下200℃で60時間タンブラーを用いて乾燥処理し、減圧下100℃まで放冷した後、常圧に戻し、80℃に保たれたホッパー中に投入した。このときの樹脂の含水率は35ppmであった。そしてホッパーに投入したポリイミド樹脂を押出機を用いて加熱しながら溶融させた。このときの溶融温度は410℃であり、溶融時の溶融粘度を200Pa・s、溶融滞留時間を15分として、口金より吐出させた。なお、口金の手前には計量装置および200メッシュ相当、400メッシュ相当、600メッシュ相当および1000メッシュ相当のフィルター2枚を順次配置し、計量装置で一定の吐出量となるようにした。また、口金の吐出孔数は67個、口金孔径は0.25mmであり、単位面積当りの吐出孔数N/Sが2.9個/cmであった。そして、口金直下に円筒型の加熱装置(長さを0.5m)を設置し、加熱装置内の雰囲気温度を170℃とし、冷却固化前の繊維を0.06秒間通過させた。続いて、冷却固化した繊維に油剤を付与し、引取速度500m/分で引き取り、巻取装置により巻き取った。
次に巻き取った繊維に次のようにして延伸を施した。まず、ローラに架けて繊維を捲き出し、次いで直近に配置した引取ローラに引き取って予熱した。このときの捲き出し速度は10m/分、引取ローラの温度(予熱温度)は200℃であった。次に、全長2mのスリットヒータを通して300℃に加熱した後、280℃に加熱した保温ローラに引き取り、限界延伸倍率の85%の倍率(例えば、限界延伸倍率4.0の場合、3.5倍)で延伸した後、巻取装置を用いて紙管に巻き取り、ポリイミド繊維を得た。
【0051】
実施例2〜5、比較例1〜5
口金の構成(孔数及びN/S)、加熱装置の温度、長さ、通過時間、引取速度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして行った。
【0052】
実施例1〜5、比較例1〜5で得られたポリイミド繊維のC%、各単糸の断面積のばらつき、強度、操業性の評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
Figure 2004176212
【0054】
表1から明らかなように、実施例1〜5では、糸斑(C%)が小さく、単糸繊度が小さく、かつマルチフィラメントを構成する各単糸繊度にばらつきが少ない、糸斑の低減されたポリイミド繊維を操業性よく得ることができた。
一方、比較例1では、加熱装置による雰囲気温度が高すぎたため、また、比較例2では加熱装置による雰囲気温度が高すぎ、かつ加熱時間が短かったため、両者ともに操業性が悪く、得られたマルチフィラメントは単糸間の断面積のばらつきが大きくなり、またマルチフィラメントの太さ斑も大きいものであった。比較例3では、加熱時間が短すぎたため、
比較例5では加熱装置を設けなかったため、吐出された溶融状態の繊維が急激に固化したことにより、得られたマルチフィラメントは単糸間の断面積のばらつきが大きく、太さ斑も大きいものであった。また、強度も劣っていた。比較例4は加熱時間が長すぎたため、操業性が悪くなり、得られたマルチフィラメントは単糸間の断面積のばらつきが大きくなり、またマルチフィラメントの太さ斑も大きいものであった。比較例6は引取速度が早すぎたため、冷却固化までの工程において繊維に適度なドラフトが各単糸に均一にかからず、得られたマルチフィラメントは単糸間の断面積のばらつきが大きくなり、またマルチフィラメントの太さ斑も大きいものであった。
【0055】
【発明の効果】
本発明のポリイミド繊維は、マルチフィラメントの繊維長手方向における太さ斑が小さく、かつマルチフィラメントを構成する各単糸の繊度斑が小さいものであるので、不織布用途をはじめとして、各種の均一性に優れた性能が要求される用途に好適に用いることができる。
本発明のポリイミド繊維の製造方法によれば、本発明の糸斑の低減されたポリイミド繊維を、操業性よく安定して得ることが可能となる。

Claims (2)

  1. 主鎖中に下記構造式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなるマルチフィラメントであって、単糸数が30本以上、単糸繊度が6dtex以下であり、マルチフィラメントの太さ斑がC%で10%以下、かつ、マルチフィラメントを繊維軸方向に対して垂直に切断したときの各単糸の断面積のばらつきが20%以下であることを特徴とする糸斑の低減されたポリイミド繊維。
    Figure 2004176212
  2. 主鎖中に下記構造式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドを、溶融粘度が300Pa・s以下になるように溶融し、吐出孔を30個以上有する口金を用いて溶融紡糸するに際し、口金より吐出した冷却固化する前の繊維を0.02〜0.1秒間、150〜300℃の雰囲気温度内を通過させ、引取速度800m/分以下で引き取ることを特徴とする請求項1記載のポリイミド繊維の製造方法。
    Figure 2004176212
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