JP2005082940A - ポリイミド異形断面繊維 - Google Patents

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【課題】 基材やフィラーとして好適な特定の異形形状を呈しているポリイミド繊維を提供すること。
【解決手段】 主鎖中に特定構造式で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなる繊維であって、繊維を構成する各単糸は、繊維軸方向に対して垂直方向に切断した断面形状の少なくとも一部が直線部を有するものであって、かつ、その断面形状の異形係数(S)が0.955以下であることを特徴とするポリイミド異形断面繊維。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ポリイミド繊維に関するものであり、詳しくは、特定の繰り返し構造を有するポリイミドからなる繊維であって、繊維を構成する各単糸が特定の形状を有するポリイミド異形断面繊維に関するものである。
芳香族ポリイミドは、樹脂の中で最高レベルの耐熱性を有し、これに加えて優れた機械的特性、摺動特性、耐薬品性を有していることが知られており、種々の形態に加工され、使用されている。しかしながら、一般に芳香族ポリイミドは優れた特性を有する反面、成形加工性に劣るという問題点を有しており、多くの場合、その前駆体であるポリアミック酸の段階で成形加工をした後、熱的もしくは化学的に反応させて最終的にポリイミドの成形体とする検討が行われてきた。
繊維への成形加工についても同様の方法で検討されており(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)、ポリアミック酸の溶液を口金より水槽などの凝固槽に吐出して繊維形状に成形し、しかる後に熱的もしくは化学的に反応させて最終的にポリイミドの繊維とする、いわゆる、湿式紡糸法による検討が実施されてきた。
一方、主に加工性を向上する目的で、原料モノマーの構造を適宜選択して、ポリイミドに熱加工性を発現させる検討も行われており、熱可塑性ポリイミドとして知られている。熱可塑性ポリイミドの場合、ポリイミド樹脂を熱的に溶融させて成形することが可能であり、繊維形状への成形加工についても、これを口金より空気中に吐出させて成形する溶融紡糸法の適用が検討されてきた。このような検討としては、例えば、特定の化学構造を有する熱可塑性ポリイミドを用いた溶融紡糸法によるポリイミド繊維が特許文献4や特許文献5に記載されている。
通常、上記した湿式紡糸法により得られるポリイミド繊維は、各単糸の断面形状が円形であるか、もしくはいわゆるドッグボーン形の異形形状であることが知られている。一方、熱可塑性ポリイミドを用いた溶融紡糸法によるポリイミド繊維については、各単糸の断面形状を真円とすることが検討されてきた。しかしながら、一般に、丸断面形状のポリイミド繊維は樹脂との接着性や親和性があまり良好でなく、複合材の基材やフィラーとして好適ではなかった。
特許第1147596号公報 特許第1340821号公報 特開昭59−163416号公報 特許第2043366号公報 特開平5−140337号公報
上記のような状況に鑑み、本発明は、基材やフィラーとして好適な特定の異形形状を呈しているポリイミド繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、主鎖中に下記構造式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなる繊維であって、繊維を構成する各単糸は、繊維軸方向に対して垂直方向に切断した断面形状の少なくとも一部が直線部を有するものであって、かつ、その断面形状の異形係数(S)が0.955以下であることを特徴とするポリイミド異形断面繊維を要旨とするものである。
Figure 2005082940
本発明のポリイミド繊維は、ポリイミド特有の耐熱性や耐薬品性、機械的特性を有していながら特定の異形断面形状を呈しているため、布帛や短繊維とし、樹脂加工を施すと、界面での接着強度が増大し、繊維による強化の効果を向上させることが可能となり、また、得られる製品は光沢も有するものとなり、種々の産業資材用の素材として好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリイミド繊維は、主鎖中に下記構造式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなる。このようなポリイミドは、熱可塑性で熱加工性に優れると共に結晶性を有するポリイミドである。
Figure 2005082940
構造式(1)に示される繰り返し単位を有するポリイミドは、例えば、4,4’−ビス(3アミノフェノキシ)ビフェニルとピロメリット酸ニ無水物をN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドもしくはN,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒中で重合させポリアミック酸とした後、熱的もしくは化学的に縮合閉環することによりアミド基をイミド基に変換する従来公知の方法で製造することができる。
この際、種々の目的で、他の化学構造を有する第三成分を配合、共重合したものでもよいが、その配合量は上記構造式(1)で示される繰り返し単位が80モル%以上になるようにする。第三成分を配合、共重合して上記構造式(1)で示される繰り返し単位が80モル%未満になると、第三成分の有する特性が顕著に発現し、熱可塑性、結晶性、耐熱性等のポリイミドの優れた特性が低下する。
なお、第三成分はランダムに共重合してもよいし、特定の繰り返し単位数毎に共重合するブロック共重合にしてもよい。
上記構造式(1)で示される繰り返し単位からなるポリイミドの一例としては、三井化学社製の『オーラム(商標名)』として市販されているものが挙げられる。なお、このポリイミドは、耐熱性、機械特性や耐薬品性など種々特性に優れており、DSC法によるガラス転移点(Tg)が250℃、融点が388℃である。
また、上記のような本発明で使用するポリイミドには、本発明の目的を損なわない範囲で、潤滑剤、可塑剤、結晶化促進剤、酸化防止剤、消艶剤等を配合してもよい。
そして、本発明のポリイミド繊維は、各単糸の繊維軸方向に対して垂直方向に切断した断面形状において、少なくとも一部が直線で形成されている異形形状を呈している。このような異形形状としては、例えば三角形、四角形等の多角形状や、Y型、星型、U型や半円形等の円形の一部を欠いた形状等が挙げられる。
さらには、このような異形断面形状における異形係数(S)を0.955以下とする。本発明でいう異形係数は、断面形状における面積(A)と、面積(A)に外接する円(外接円)の面積(B)から下記式で計算される。この異形係数が0.955を超えると、円形との相違が少なくなり、後述するような異形形状の効果を奏することが困難となる。
S=A/B
単糸の断面形状における面積A、Bを測定するには、単糸を厚さ1mmの孔の空いた金属プレートに垂直に通し、パラフィンで孔に固定した後、金属プレートの両面で薄い刃を用いてカットして断面形状を得、この断面形状を光学顕微鏡を用いて撮像した画像から各寸法を測定し、算出する。そして、1本の繊維を構成する単糸の全てにおいて断面積を測定し、異形係数を算出し、その平均値とする。
本発明の繊維を異形断面繊維とすることによる効果について説明する。本発明のポリイミド繊維は、織編物や不織布等の布帛にした後、樹脂を含浸させて加工したり、繊維をカットして短繊維とし、これを射出や押し出し成形樹脂中にフィラー(強化材)として含有させて使用するが、このとき、上記のような異形断面形状を呈していることによって、樹脂との接触界面が従来の円形断面形状の繊維に比較して増大するので、界面での接着強度が増大し、繊維による強化の効果を向上させることが可能となる。すなわち、本発明の異型断面繊維をフィラーとして使用した場合、得られる成形樹脂は剛性や熱寸法安定性に優れたものとなる。
特に、透明樹脂中にフィラーとして含有させると、断面形状が直線を含む形状で形成されているため、入射光の乱反射が起きやすく、光沢を発現し、意匠性に優れた成形物とすることが可能となる。つまり、本発明のポリイミド繊維に使用されるポリイミドは通常、黄色を呈しているので、染色など特別な処理を経ることなく、本発明の樹脂組成物に黄金色の意匠を発現させることができる。
本発明の繊維は、マルチフィラメント、モノフィラメントのいずれでもよく、本発明の繊維がマルチフィラメントの場合、マルチフィラメントを構成する単糸の繊度は1〜100dtex、マルチフィラメントの総繊度は100〜10000dtexとすることが好ましい。また、本発明の繊維がモノフィラメントの場合、モノフィラメントの単糸繊度は、30〜300dtexとすることが好ましい。
そして、本発明の樹脂組成物は、本発明のポリイミド異形断面繊維をフィラーとして含有するものである。本発明の繊維を0.1〜5mmの短繊維にカットして含有させることが好ましい。樹脂組成物のマトリックス樹脂としては、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよいが、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネイト樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。また熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物においては、マトリックス樹脂の種類あるいは樹脂組成物の用途に応じて本発明の異形断面繊維の含有量は適宜選択すればよく、0.1〜25質量%含有させることが好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、射出成型、押出成型や溶融成型を行って各種の成型品としたり、また、フィルム等のシート状物とすることもできる。
次に、本発明のポリイミド繊維の製造方法について説明する。
主鎖中に上記構造式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドを、溶融温度を370〜415℃として溶融紡糸を行う。通常の溶融紡糸装置を用いて行うことができ、異形断面形状とするために、目的とする断面形状と相似形の吐出孔を有する紡糸口金より吐出を行う。このとき、紡糸口金は金属プレート状のものを用いることが好ましく、溶融ポリイミドに含まれる不純物を取り除いたり、流動性を安定化させる目的で、200〜2000メッシュ程度のフィルターが複数枚配置されたものが好ましい。
次に、口金より吐出した冷却固化する前の繊維を0.02〜0.1秒間、150〜300℃の雰囲気温度内を通過させ、冷却固化され、オイリングが施された後、引取速度300〜800m/分で引き取る。
そして、本発明の樹脂組成物を製造する方法について説明する。上記のようにして得られた本発明の繊維を0.1〜5mmの短繊維にカットして、マトリックス樹脂中に含有させる。このとき、マトリックス樹脂を溶融させてポリイミド繊維を含有させる際には、溶融温度をそのポリイミドの融点未満とすることが好ましく、さらにはそのポリイミドのガラス転移点以下とすることが好ましい。マトリックス樹脂の溶融温度がそのポリイミドの融点以上であると、ポリイミド繊維が溶融軟化してその特異な断面形状が崩れてしまい、目的の性能を発揮できなくなることがある。なお、本発明の樹脂組成物を用いて溶融成型を行う際にも、上記と同様の理由から溶融温度はポリイミドの融点未満、さらにはガラス転移点以下とすることが好ましい。
また、マトリックス樹脂中にポリイミド繊維を含有させる際、マトリックス樹脂の粘度が高く、ポリイミド繊維の均一な分散が困難である場合、ポリイミド繊維を予め適量の溶媒に分散させておき、これにマトリックス樹脂を徐々に添加する方法を採用することが好ましい。
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種の物性値及び評価は以下のように行った。
〔異形係数(S)〕
前記と同様の方法で測定し、算出した。
〔シートの剛性〕
得られた樹脂組成物を用いて、JISK7238-2記載の「試験片の作り方」に準じて約4mm厚みの樹脂シートを得た。なお、マトリックス樹脂中にポリイミド短繊維を含有させる際、マトリックス樹脂粘度が高く均一な分散が困難であったので、ポリイミド短繊維を予め適量のメチルエチルケトンに分散させておき、これに樹脂液を徐々に添加する方法を採用した。
得られた樹脂シートを80×10mmに切断した試料を用いてJIS-K7171に準じて曲げ試験を行い、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
〔光沢〕
上記の評価において作成した樹脂シートの表面光沢を目視にて以下の2段階で評価した。
光沢に優れ、化粧板として好適であるものを○
光沢に乏しく、化粧板として好適でないものを×
実施例1
ポリイミドとして『オーラム』(商標、三井化学社製)の樹脂(ガラス転移点は250℃、400℃における剪断速度100s−1での溶融粘度は5000Poise)を用いた。このポリイミドを減圧下200℃で20時間タンブラーを用いて乾燥処理し、減圧下100℃まで放冷した後、常圧に戻し、80℃に保たれたホッパー中に投入した。ホッパーに投入したレジンを、押出機を用いて加熱しながら415℃で溶融させ、Y形状の吐出孔を20個有する紡糸口金より吐出させて繊維状に成形した。なお、口金の手前には計量装置および200メッシュ相当、400メッシュ相当、600メッシュ相当および1000メッシュ相当のフィルター2枚を順次配置し、計量装置で一定の吐出量となるようにした。口金より吐出成形された紡糸原糸は、固化したところで油剤をアトマイザーを用いて付与した後、ワインダーを用いて紙管に巻き取った。
次に、得られた紡糸原糸をローラに架けて引き出し、次いで直近に配置した予熱ローラに架けて予熱した。さらに、全長2mのスリットヒーターを通して300℃に加熱した後、加熱した保温ローラに引き取り、この保温ローラの回転速度を調節することにより延伸倍率の調節を行って延伸し、続いてワインダーを用いて紙管に巻き取り、ポリイミド繊維(1340dtex/20フィラメント)を得た。
得られたポリイミド繊維の各単糸は、図1に示すようなY字形状の断面形状を呈していた。エポキシ樹脂として油化シェルエポキシ社製、『エピコート5046B80』及び『エピコート154』57質量部(内訳:『エピコート5046B80』を37質量部、『エピコート154』を20質量部)、硬化剤としてジシアンジアミド2質量部、硬化促進剤として2,4−エチルメチルイミダゾール0.1質量部を用いエポキシ樹脂成分とした。
このエポキシ樹脂に得られたポリイミド繊維を1.0mm長にカットして短繊維(フィラー)としたものを含有させ、樹脂組成物を得た。このとき、ポリイミド短繊維の含有量は、エポキシ樹脂成分85質量部に対して15質量部となるようにした。
実施例2
三角形状の吐出孔を15個有する紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様に行い、1000dtex/15フィラメントのポリイミド繊維を得た。得られたポリイミド繊維の各単糸の断面形状は正三角形であった。
そして、得られたポリイミド繊維を用い、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
実施例3
四角形状の吐出孔を15個有する紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様に行い、1000dtex/15フィラメントのポリイミド繊維を得た。得られたポリイミド繊維の各単糸の断面形状は正方形であった。
そして、得られたポリイミド繊維を用い、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
比較例1
真円形状の吐出孔を26個有する紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様に行い、1680dtex/26フィラメントのポリイミド繊維を得た。得られたポリイミド繊維の各単糸の断面形状は真円形であった。
そして、得られたポリイミド繊維を用い、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
実施例4
実施例1で得られたポリイミド繊維を上記した延伸方法にて4倍に延伸して、335dtex/20フィラメントのポリイミド繊維を得た。られたポリイミド繊維の各単糸の断面形状は実施例1と同じY字形状であった。
そして、得られたポリイミド繊維を用い、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
比較例2
ポリイミド繊維を含有させない以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
実施例1〜4、比較例1で得られたポリイミド繊維の異形係数、実施例1〜4、比較例1〜2で得られた樹脂組成物からなるシートの剛性、光沢の評価結果を表1に示す。
Figure 2005082940
表1から明らかなように、実施例1〜4のポリイミド繊維は、本発明で規定する異形係数を満足する異形形状を呈しているため、この繊維を含有する樹脂からなるシートは剛性が高く、光沢にも優れているものであった。
一方、比較例1のポリイミド繊維は、円形断面形状のものであったため、この繊維を含有する樹脂からなるシートは剛性が低く、光沢を有していないものであった。比較例2はポリイミド繊維を含有しない樹脂組成物であったため、この樹脂からなるシートは剛性が低く、光沢を有していないものであった。
実施例1のポリイミド異形断面繊維の断面形状を示す拡大説明図である。

Claims (2)

  1. 主鎖中に下記構造式(1)で表される繰り返し単位を80モル%以上有するポリイミドからなる繊維であって、繊維を構成する各単糸は、繊維軸方向に対して垂直方向に切断した断面形状の少なくとも一部が直線部を有するものであって、かつ、その断面形状の異形係数(S)が0.955以下であることを特徴とするポリイミド異形断面繊維。
    Figure 2005082940
  2. 請求項1記載のポリイミド異形断面繊維をフィラーとして含有することを特徴とする樹脂組成物。
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CN102277647A (zh) * 2011-06-20 2011-12-14 东华大学 一种聚酰亚胺异形纤维的制备方法

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