JP2002289462A - 薄膜キャパシタの製造方法とその薄膜キャパシタを備えた温度補償用薄膜コンデンサ及び電子機器と電子回路 - Google Patents

薄膜キャパシタの製造方法とその薄膜キャパシタを備えた温度補償用薄膜コンデンサ及び電子機器と電子回路

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JP2002289462A
JP2002289462A JP2001089528A JP2001089528A JP2002289462A JP 2002289462 A JP2002289462 A JP 2002289462A JP 2001089528 A JP2001089528 A JP 2001089528A JP 2001089528 A JP2001089528 A JP 2001089528A JP 2002289462 A JP2002289462 A JP 2002289462A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、小型化、薄型化、軽量化が容易で
あって、温度補償が可能な薄膜キャパシタと薄膜コンデ
ンサの提供を目的とする。 【解決手段】 本発明は、第1の誘電体薄膜4と第2の
誘電体薄膜5とを積層して所望のシート容量値と容量温
度係数を有する薄膜キャパシタの製造方法であって、第
2の誘電体薄膜の容量温度係数をτとし、前記第2の誘
電体薄膜の比誘電率をκとし、前記第2の誘電体薄膜の
膜厚t2をt2={ε0τt0t/(C/S)}・{1/(τ
/κ)}(ただし、C/Sはシート容量値、ε0τt0t
所望の容量温度係数)とし、主結晶粒の(τ/κ)を
(τg/κg)とした場合、前記主結晶粒の結晶粒径の大
小により{(τ/κ)/(τg/κg)}の値が1を超え
る主結晶粒径の領域を選択して結晶粒径の目的値を決定
し、前記目的値になるように前記主結晶粒の粒径を制御
して前記第2の誘電体薄膜を成膜するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体素子の接合容
量の温度依存性を補償するために好ましい薄膜キャパシ
タの製造方法とこの製造方法により得られた薄膜キャパ
シタを使用し、電子回路の温度依存性を少なくした薄膜
コンデンサと電子回路に関する。
【0002】
【従来の技術】薄膜コンデンサとは一般に、基板上に下
部電極、誘電体層、上部電極を積層してなる構造とさ
れ、場合によっては下部電極としての機能を有する半導
体基板の上に誘電体層と上部電極層を順次積層してなる
構造とされている。この種の薄膜コンデンサにおいて
は、誘電体層の比誘電率およびQが大きく、かつ、共振
周波数の温度係数においては0を中心として正または負
の任意の温度係数が得られることが望まれている。従
来、このような特性を有する誘電体組成物として、例え
ば、特開昭60−124033号公報に開示されたもの
が知られている。この特許公報に開示された誘電体組成
物は、BaO-TiO2系の誘電体に酸化サマリウム(S
23)、酸化ガドリウム(Gd23)、酸化ジスプロ
シウム(Dy23)、酸化ユーロピウム(Eu23)等
を添加して焼成してなるものであった。しかしながら、
この種の従来の誘電体磁器組成物を得るための技術にあ
っては、比誘電率εrを61〜72、温度係数τを−2
4〜31ppm/℃の範囲内でしか制御することができ
ないものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような背景から技
術開発が進められ、共振周波数の温度係数が正の値の第
1誘電体磁器組成物シートと共振周波数の温度係数が負
の値の第2誘電体磁器組成物シートを積層し接着して組
み合わせてなる構造の誘電体磁器組成物が特開昭63−
110618号において提供された。この特許公報に記
載された技術によれば、必要組成の原料を混合したもの
を直径16mm、厚さ9mmの円板状に成形し、この成
形体を1260〜1450℃の温度で数時間焼成するこ
とで第1の誘電体磁器組成物を得るとともに、前記と異
なる組成の原料を用いて成形と焼成処理を施し、同サイ
ズの第2の誘電体磁器組成物を製造し、両誘電体磁器組
成物を厚さ1mm程度の厚さのシート状に切り出し、こ
れらを積層することで積層型の誘電体磁器組成物を得る
ものであった。より具体的には、比誘電率が異なるか、
あるいは、等しい誘電体磁器組成物を積層し、両者の体
積組成比を調整することによって所望の比誘電率及び温
度係数を得ることができるというものである。
【0004】ところが、特開昭63−110618号に
開示の技術によれば、焼結法で製造した第1の誘電体磁
器組成物と第2の誘電体組成物の1mm程度の厚さの複
数枚のシートを積層する構成であるが為に、シート状の
積層型のコンデンサには対応できるものの、更なる小型
化、軽量化には限界を有していた。例えば、厚さ1mm
以下の薄膜状のコンデンサとすることができず、これ以
上の薄膜化が困難であった。また、誘電体磁器組成物の
シートを接着により積層すると、シートとシートの境界
部分に誘電率の異なる接着層あるいは空気層が介在する
ことになるので、積層シート構造の厚さ方向に複数の不
連続部分を有することとなり、目的の理想的な温度係数
を有するコンデンサを得ることが難しいという問題を有
していた。更に、シート状の誘電体磁器組成物は多結晶
の厚膜状の誘電体であるため、膜厚方向に多数の結晶粒
界を有し、1GHz以上の高周波帯域での低誘電損失化
が困難であった。
【0005】以上の如き背景に鑑み、薄膜コンデンサに
ついて考察すると、シート容量値一定の条件下において
第2の誘電体薄膜の膜厚は、容量温度係数の絶対値と比
誘電率の比(以下τ/κ比と称する)に反比例する傾向
にある。一方でこのτ/κ比の絶対値は誘電体薄膜が薄
くなるほど小さくなってしまう。しかもその傾向は、高
誘電率であるほど顕著であるので、これらの面から鑑み
ると、高誘電率で薄膜化するには、従来のこの種の薄膜
コンデンサの開発技術では困難であると考えられてき
た。
【0006】更に具体的には、先の第1の誘電体薄膜と
第2の誘電体薄膜とを積層する構造の薄膜コンデンサに
おいては、異なる誘電体薄膜のそれぞれの比誘電率と温
度係数によりそれぞれの膜厚が決定される。特に、比誘
電率κc、容量温度係数0pmm/℃を持つ誘電体薄膜
(制御膜:第1の誘電体薄膜:C膜と呼称する)と、比
誘電率κN、容量温度係数τNppm/℃を持つ誘電体薄
膜(第2の誘電体薄膜;N膜と呼称する)との積層によ
りシート容量値(C/S)pF/mm2、容量温度係数
τppm/℃を持つコンデンサを構成する場合、第1の
誘電体薄膜(C膜)と第2の誘電体薄膜(N膜)のそれ
ぞれの膜厚tN、tcは、ε0を真空の誘電率とすると、
以下の(1)式と(2)式で表示される。
【0007】
【化1】
【0008】
【化2】
【0009】これらの(1)式と(2)式から明らかな
ように、第2の誘電体薄膜(N膜)の膜厚tN は、(τ
N/κN)の値により決定される。ここで従来、第2の誘
電体薄膜を既存の値よりも薄くするためには、誘電体材
料の種類に応じて異なる(τ N/κN)の値を変えるこ
と、即ち、誘電体材料そのものを変更して(τN/κN
の値を大きくする必要があり、(τN/κN)の値の大き
な誘電体材料そのものを新規に開発する必要があった。
【0010】本発明は前記の事情に鑑みてなされたもの
で、新規の誘電体材料そのものを開発することなく、薄
膜コンデンサの更なる小型化、薄型化、軽量化が容易で
あって、温度補償が可能な薄膜キャパシタを製造できる
技術の提供を目的とする。また、そのような製造方法で
得られた薄膜キャパシタを備えた薄膜コンデンサの提供
を目的とする。また、本発明は先の特徴を満たした上で
高周波帯域でのQ値が優れた薄膜コンデンサを提供する
ことを目的とする。更に本発明は、先の薄膜コンデンサ
を備えた電子回路の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に本発明の薄膜コンデンサの製造方法は、容量温度係数
の絶対値が50ppm/℃以下の第1の誘電体薄膜と、
前記容量温度係数が負である第2の誘電体薄膜とを積層
して所望のシート容量値と容量温度係数を有する薄膜キ
ャパシタの製造方法であって、前記第2の誘電体薄膜の
結晶構造が、主結晶粒と、該主結晶粒を取り囲む粒界層
とを具備する主結晶粒構造単位の集合体であり、前記主
結晶粒構造単位が多数結合されて前記第2の誘電体薄膜
が構成される場合、前記第2の誘電体薄膜の容量温度係
数をτとし、前記第2の誘電体薄膜の比誘電率をκと
し、前記第2の誘電体薄膜の膜厚t2をa2={ε0τt0t
/(C/S)}・{1/(τ/κ)}(ただし、C/S
はシート容量値、ε0τt0t)は所望の容量温度係数と
し、主結晶粒の(τ/κ)を(τg/κg)とした場合、
前記主結晶粒の結晶粒径の大小により{(τ/κ)/
(τg/κg)}の値が1を超える主結晶粒径の領域を選
択して結晶粒径の目的値を決定し、前記目的値になるよ
うに前記主結晶粒の粒径を制御して前記第2の誘電体薄
膜を成膜することにより該第2の誘電体薄膜の膜厚を薄
膜化して薄膜キャパシタを形成することを特徴とする。
【0012】本発明によれば、新規の誘電体材料を開発
することなく、従来の誘電体材料を用いる場合であって
も、従来の薄膜キャパシタよりも薄型化、小型化したも
のを製造することが可能となる。即ち、第1の誘電体薄
膜と第2の誘電体薄膜とを積層するタイプの薄膜キャパ
シタの場合、第2の誘電体薄膜の主結晶粒径の制御によ
り、薄膜キャパシタとしての比誘電率と容量温度係数と
を確保しながら膜厚を薄くできることを本発明者が見い
出し、この関係から好ましい主結晶粒径を選定すること
で薄膜キャパシタの薄型化が可能となる。即ち、誘電体
薄膜としての(τ/κ)と主結晶粒としての(τg
κg)の比の値、即ち、(τ/κ)/(τg/κg)の値
が1を超えるように主結晶粒の粒径を制御することで薄
膜キャパシタの誘電体薄膜を薄型化できる。
【0013】前記課題を解決するために本発明の薄膜コ
ンデンサの製造方法は、容量温度係数の絶対値が50p
pm/℃以下の第1の誘電体薄膜と、前記容量温度係数
が負である第2の誘電体薄膜とを積層して所望のシート
容量値と容量温度係数を有する薄膜キャパシタの製造方
法であって、前記第2の誘電体薄膜の結晶構造が、主結
晶粒と、該主結晶粒を取り囲む粒界層とを具備する主結
晶粒構造単位の集合体であり、前記主結晶粒構造単位が
多数結合されて前記第2の誘電体薄膜が構成される場
合、前記粒界層の厚さを2Δaとし、前記主結晶粒と該
主結晶粒の周囲に存在する粒界層の半分の厚さΔaの分
の粒界層とを含む主結晶粒構造単位の膜面方向の幅をa
とし、膜の厚さ方向の高さをbとし、前記第2の誘電体
薄膜の容量温度係数をτとし、前記第2の誘電体薄膜の
比誘電率をκとし、前記第2の誘電体薄膜の膜厚t2
2={ε0τt0t/(C/S)}・{1/(τ/κ)}
(ただし、C/Sはシート容量値、ε0τt0t)は所望の
容量温度係数とし、主結晶粒の(τ/κ)を(τg
κg)とした場合、b/aを一定数とした場合に、a/
2Δaとτ/κとの関係において{(τ/κ)/(τg
/κg)}の値が1を超える領域になるようにa/2Δ
aの値を選定して目的の主結晶粒径範囲を求め、この主
結晶粒径の範囲になるように前記第2の誘電体薄膜を形
成することで前記第2の誘電体薄膜の膜厚を薄膜化して
薄膜キャパシタを製造することを特徴とする。
【0014】本発明によれば、新規の誘電体材料を開発
することなく、従来の誘電体材料を用いる場合であって
も、従来の薄膜キャパシタよりも薄型化、小型化したも
のを製造することが可能となる。即ち、第1の誘電体薄
膜と第2の誘電体薄膜とを積層するタイプの薄膜キャパ
シタの場合、誘電体薄膜の主結晶粒のa/2Δaと誘電
体薄膜のτ/κの関係において、第2の誘電体薄膜の主
結晶粒径の制御によって、薄膜キャパシタとしての比誘
電率と容量温度係数とを確保しながら膜厚を薄くできる
ことを本発明者が見い出し、この関係から好ましい主結
晶粒径を選定することで薄膜キャパシタの薄型化が可能
となる。即ち、誘電体薄膜としての(τ/κ)と主結晶
粒としての(τg/κg)の比の値、即ち、(τ/κ)/
(τg/κg)の値が1を超えるように主結晶粒の粒径を
制御することで薄膜キャパシタの誘電体薄膜を薄型化で
きる。
【0015】前記課題を解決するために本発明の薄膜コ
ンデンサの製造方法は、容量温度係数の絶対値が50p
pm/℃以下の第1の誘電体薄膜と、前記容量温度係数
が負である第2の誘電体薄膜とを積層して所望のシート
容量値と容量温度係数を有する薄膜キャパシタの製造方
法であって、前記第2の誘電体薄膜の結晶構造が、主結
晶粒と、該主結晶粒を取り囲む粒界層を具備する主結晶
粒構造単位の集合体であり、前記主結晶粒構造単位が多
数結合されて前記第2の誘電体薄膜が構成される場合、
前記粒界層の厚さを2Δaとし、前記主結晶粒と該主結
晶粒の周囲に存在する粒界層の半分の厚さΔaの分の粒
界層を含む主結晶粒構造単位の膜面方向の幅をaとし、
膜の厚さ方向の高さをbとし、前記第2の誘電体薄膜の
容量温度係数をτとし、前記第2の誘電体薄膜の比誘電
率をκとし、a/2Δaを無次元パラメータxとし、b
/aを無次元パラメータγとし、前記κをxの関数とし
てκ(x)で示し、主結晶粒内部の比誘電率をκgとし、
粒界層の比誘電率をκgbとし、主結晶粒内部の容量温度
係数をτgとし、粒界層の容量温度係数をτgbとし、前
記第2の誘電体薄膜の膜厚t2をa2={ε0τt0t/(C
/S)}・{1/(τ/κ)}(ただし、C/Sはシー
ト容量値、ε0τt0t)は所望の容量温度係数とし、主結
晶粒の(τ/κ)を(τg/κg)とした場合、 κ(x)/κg=γ[(x−1)2/(γx−1+κg
κgb)+{(2−1/x)/γ}/(κg/κgb)]/x の関係を満足し、 τ(x)/τg=1−[(κg/κgb)・(1−τgb/τg)
・{(κg/κgb2(x−1)2+(γx−1+κg
κgb2(2−1/x)γ}/(κg/κgb)・(γx−1
+κg/κgb)・{(x−1)2・(κg/κgb)+(γx−
1+κg/κgb)・(2−1/x)/γ}] の関係を満足し、更に、{(τ(x)/κ(x))/(τ
g/κg)}の値を1.10以上なるように前記第2の誘
電体薄膜を製造して薄膜キャパシタを製造することを特
徴とする。
【0016】本発明によれば、新規の誘電体材料を開発
することなく、従来の誘電体材料を用いる場合であって
も、従来の薄膜キャパシタよりも薄型化、小型化したも
のを製造することが可能となる。即ち、第1の誘電体薄
膜と第2の誘電体薄膜とを積層するタイプの薄膜キャパ
シタの場合、誘電体薄膜の主結晶粒のa/2Δaと誘電
体薄膜のτ/κの関係において、第2の誘電体薄膜の主
結晶粒径の制御によって、薄膜キャパシタとしての比誘
電率と容量温度係数とを確保しながら膜厚を薄くできる
ことを本発明者が見い出し、この関係から好ましい主結
晶粒径を選定することで薄膜キャパシタの薄型化が可能
となる。
【0017】本発明は、前記{(τ(x)/κ(x))/
(τg/κg)}の値を1.25以上となるように前記第
2の誘電体薄膜を製造することを特徴とする。 {(τ(x)/κ(x))/(τg/κg)}の値が1.2
5以上となることで、1.10の場合よりも更なる薄膜
化、小型化に寄与する。
【0018】本発明は、前記a/2Δaの平均値を以下
の範囲、b/aの平均値を以下の範囲としたことを特徴
とする。1.7≦a/2Δa≦13、5≦b/a 本発明、前記a/2Δaの平均値を以下の範囲、b/a
の平均値を以下の範囲としたことを特徴とする。1.8
≦a/2Δa≦6、5≦b/a これらの値が先の範囲となるならば、薄膜化、小型化に
確実に寄与する。
【0019】本発明は、前記第2の誘電体薄膜の比誘電
率を100以上とすることを特徴とする。本発明は前記
第2の誘電体薄膜として、SrxBa1-xTiO3、Ca
TiO3、PbTiO3の中から選択されるいずれかの結
晶を用いることを特徴とする。これらの結晶の誘電体薄
膜であるならば、それらの結晶粒径の制御が可能であ
り、結晶粒径の制御により薄型化、小型化が確実にでき
る。
【0020】本発明の薄膜コンデンサは、先のいずれか
の製造方法で製造された薄膜キャパシタが電極間に配置
されたことを特徴とする温度補償型のものである。本発
明の電子機器は、先のいずれかの製造方法で製造された
薄膜キャパシタを備えたことを特徴とする。先の薄膜キ
ャパシタであるならば、目的の温度係数を有しながら薄
型化、小型化できるという特徴を有する。
【0021】本発明の電子回路は、先のいずれかの製造
方法で製造された薄膜キャパシタが電極間に介在されて
薄膜コンデンサが構成され、該薄膜コンデンサがバラク
タダイオードと並列接続され、前記薄膜コンデンサの電
極に入出力端子が接続されてなることを特徴とする。バ
ラクタダイオードは正の温度係数を有するので、先の構
成の薄膜コンデンサを並列接続することでバラクタダイ
オードの温度係数を薄膜コンデンサの温度係数で打ち消
すことができ、温度安定性に優れさせることが可能とな
る。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態について
図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施形態の
みに限定されるものではない。図1は本発明の第1実施
形態の薄膜コンデンサを示すもので、この第1実施形態
の薄膜コンデンサ1は、平面視矩形状の基板2の一面
に、薄膜状の第1の電極層(下部電極層)3と薄膜状の
第2の誘電体薄膜5と薄膜状の第1の誘電体薄膜4と薄
膜状の第2の電極層(上部電極層)7とが積層されて構
成されている。この構成の薄膜コンデンサ1においては
第1の誘電体薄膜4と第2の誘電体薄膜5とにより薄膜
キャパシタKが構成される。
【0023】前記基板2は、その材質等を特に限定する
ものではないが、コンデンサ全体に適度な剛性を付与す
るために充分な厚さを有するとともに、各々薄膜状の第
1の電極層3と第1の誘電体薄膜4と第2の誘電体薄膜
5と第2の電極層7を成膜法により基板2上に順次形成
する際に各成膜処理温度に耐えるものであれば良い。以
上のような条件を満たすものの例として、表面がケイ素
で覆われた部材、例えばシリコンウェハ、あるいは、S
iO2、Al23などからなる基板を例示することがで
きる。
【0024】前記第1の電極層3と第2の電極層7は、
Cu、Ag、Au、Pt等の単一金属からなる単層構造
でも良いし、複数の金属層からなる積層型構造であって
も良い。積層型構造の場合、ケイ素酸化物、Cr、N
i、クロム酸化物、ニッケル酸化物、Pt等からなる層
をあるいはこれらの層を2層以上積層して構成すること
ができる。前記第1の誘電体薄膜4は、後述する第2の
誘電体薄膜5よりも高耐圧で高いQ値を有し、低い温度
変化率のものを用いることが好ましい。
【0025】具体的に第1の誘電体薄膜4として、容量
温度係数の絶対値が50ppm/℃以下であり、比誘電
率が10以下、耐電界強度が、5MV/cm以上、より
好ましくは8MV/cm以上、無負荷Q値が200以
上、より好ましくは500以上(周波数1GHz以上に
おいて)、誘電緩和時間が1秒以上のものを用いること
が好ましい。前記第1の誘電体薄膜4としての厚さは1
μm(1×10-6m)以下が好ましく、250〜500
0Å(0.025〜0.5μm)程度の範囲の厚さがより
好ましい。これは、薄膜コンデンサ1としての全体の耐
電圧を確保し、かつ、薄型化、高生産性を実現するため
である。また、これらの条件を満たし得る材料として例
えば、非晶質SiOxy層、SiOx層を例示すること
ができる。前記非晶質SiOxy層は、例えばスパッタ
法もしくはPECVD法等の成膜法で作成することがで
きる。
【0026】前記第2の誘電体薄膜5は、耐圧の面とQ
値の面では先の第1の誘電体薄膜4よりも多少劣っても
良いが、前記第1の誘電体薄膜4よりも高い温度変化率
を示すものを用いることが好ましい。第2の誘電体薄膜
5としてより具体的には、容量温度係数が負で、その絶
対値が500ppm/℃以上、比誘電率が150以下、
無負荷Q値が50以上、より好ましくは100以上(周
波数1GHz以上において)、誘電緩和時間が1秒以上
のものを用いることが好ましい。
【0027】前記第2の誘電体薄膜5としての厚さは1
μm以下であり、0.025μm(250Å)〜0.5μ
m(5000Å)の範囲が好ましく、0.025μm
(250Å)〜0.3μm(3000Å)がより好まし
い。これは、第2の誘電体薄膜5を構成する主結晶粒の
膜面方向の粒径が、例えば0.5μm及至1μmである
とすると、膜厚方向に結晶粒界を複数形成しないように
するためと、膜自体が厚すぎると成膜法で成膜する際に
成膜時間がかかり過ぎるので、成膜時間をできる限り短
縮化するためである。ここでの第2の誘電体薄膜5は、
主結晶粒の周囲を粒界層が取り囲んで構成される組織と
なるが、この組織については後述する。更に、第2の誘
電体薄膜5を構成する主結晶粒の粒径が、例えば0.1
μm及至0.5μmであるとすると、膜厚方向に結晶粒
界を例えば10以上、あまり多く形成しないようにする
ためである。この膜厚方向に存在する結晶粒界の数は少
ない方が好ましく、できれば2以下の結晶粒界とするこ
とが好ましく、理想的には膜厚方向に結晶粒界がないこ
とが(即ち、膜厚方向には1つの結晶粒のみが存在する
状態が)より好ましい。
【0028】ここで以下に、前記第2の誘電体薄膜5の
結晶粒径と膜厚の関係について説明する。本発明におい
ては、第2の誘電体薄膜5の構造について、図3Aに示
すような結晶集合モデルを基に解析する。図3に示す結
晶集合モデルでは、図3AのX方向とY方向に沿う一辺
(膜面方向の一辺)がaの正方形状(膜面方向の縦幅、
横幅共にa)、かつ、Z方向(膜厚方向)に沿う高さが
bの主結晶粒構造単位6を想定する。この主結晶粒構造
単位6の内部には、主結晶粒8が存在し、この主結晶粒
8を厚さがΔaの均等厚の粒界層9が覆って主結晶粒構
造単位6が構成され、この主結晶粒構造単位6が多数結
合されて第2の誘電体薄膜5が構成されているものと想
定し、解析する。以上説明の関係から主結晶粒構造単位
6のX方向の一辺の長さをa−2Δaと表記でき、Y方
向の一辺の長さをa−2Δaと表記でき、Z方向の高さ
をb−2Δaと表記でき、このような大きさの主結晶粒
構造単位6が第2の薄膜5の面方向及び厚さ方向に多数
周期的に配置されて前記第2の誘電体薄膜5が構成され
ているものと想定する。
【0029】ここで、xを無次元の粒径パラメータ(主
結晶粒のもの)とすると、xをx≡a/2Δaと定式化す
ることで規格化できる。次に、γを無次元の結晶高さパ
ラメータ(主結晶粒のもの)とすると、γをγ≡b/
a、b/2Δa=γxと定式化することができ、これら
は主結晶粒の形状(例えば、γが大ならば膜厚方向に縦
長の主結晶粒となる。即ち、aに比べてbが大きい場
合)を表す。これらの関係式を元に、結晶学におけるバ
ルク結晶計算を基本として、κ(比誘電率)がxの関数
であるということを計算できるので、以下の(3)式で
示す関係が得られる。
【0030】
【化3】
【0031】なお、前記(3)式は、以下の如く表記で
きる。 κ(x)/κg =γ[(x−1)2/(γx−1+κg/κgb)+{(2−1/x)/γ}/(κg/ κgb)]/x …(3)式 この(3)式においてκは比誘電率、この比誘電率κが
xの関数であるということを意味するのでκ(x)と記載
している。この(3)式において、κgは主結晶粒(gra
in)内部の比誘電率、κgbは結晶粒界の比誘電率を示
す。
【0032】次に、同様な手法により、規格化容量温度
係数を定式化する。τ(容量温度係数)を同様にxの関
数と考え、τgを主結晶粒内部の温度係数、τgbを結晶
粒界の温度係数とすると、以下の(4)式で示す関係が
得られる。
【0033】
【化4】
【0034】この(4)式は以下の如く記載できる。 τ(x)/τg=1−[(κg/κgb)・(1−τgb/τg)・{(κg/κgb2(x −1)2+(γx−1+κg/κgb2(2−1/x)γ}/(κg/κgb)・(γx −1+κg/κgb)・{(x−1)2・(κg/κgb)+(γx−1+κg/κgb)・ (2−1/x)/γ}] …(4)式 更に、τ(x)、κ(x)、τg/κg、においては以下の
(5)式の関係が成立する。
【0035】
【化5】
【0036】この(5)式は以下の如く記載できる。 {τ(x)/κ(x)}/{τg/κg}={τ(x)/τg}/{κ(x)/κg} …(5)式 ここで、温度係数の定義は、τ≡(∂κ/∂T)/κ
(Tは絶対温度)の式で示され、この式の意味は、比誘
電率(または容量)κの相対温度変化率を意味する。従
って(τ/κ)比は薄膜化の重要なパラメータであると
認識できる。
【0037】次に、以上説明した各式の基本的導出手順
について再度詳細に説明する。まず、図4Aに示すよう
に主結晶構造粒8のX方向(膜面方向)の幅をa−2Δ
a、Y方向(膜面方向)の幅をa−2Δa、Z方向(膜
厚方向)の高さはb−2Δaであるので、1個の主結晶
粒8の上下に電極層を配置した微小構造のコンデンサ1
個の主結晶粒8の容量Cg (1)を求めると、以下の(6)
式の関係が成立する。
【0038】
【化6】
【0039】(6)式においてεは誘電率、κは比誘電
率、ε0を真空の誘電率とすると、ε=ε0κの関係を有
するので、(6)式の関係となる。次に、図4Bに示す
ように主結晶粒8の上下にΔaの厚さの結晶粒界を配置
して主結晶粒8の上下を厚さΔaの結晶粒界で挟んだ構
造を想定すると、その容量C(1)(in)を計算すると、以
下の(7)式の結果となる。
【0040】
【化7】
【0041】更に主結晶粒8の4側面を厚さΔaの結晶
粒界層で囲んだ構造の主結晶粒構造単位6の容量C(1)
を計算すると以下の(8)式のようになる。
【0042】
【化8】
【0043】次に、図4Cに示すように先の主結晶粒構
造単位6が縦にN3個積層された構造の容量C(1B)を計
算すると、以下の(9)式に示すようになる。
【0044】
【化9】
【0045】次に、先の(9)式で求めた縦にN3個積
層された構造の容量C(1B)が図4Dに示すように平面的
にN1×N2個並んだ構造の第2の誘電体薄膜の容量が以
下の(10)式で示すようになり、これが求めるべき第
2の誘電体薄膜の総容量と等価なる。
【0046】
【化10】
【0047】一方、第2の誘電体薄膜の膜厚をt2、電
極面積をSとすると、以下の(11)式が成立する。
【0048】
【化11】
【0049】この(11)式から、C=ε(N122
/N3b)=C×(N3b/N122)=(b/a2)・
C・(N3/N12)となり、ここで先の(10)式か
ら、C=(N12/N3)C(1)の関係があるので、この
関係を先の式に代入し、C=(b/a2)・C・(N3
12)=(b/a2)・(N12/N3)C(1)・(N3
/N12)となって、以下の(12)式の関係となる。
【0050】
【化12】
【0051】ここで先に説明した無次元パラメータ、x
≡a/2Δa、γ≡a/Δaとγx≡b/2Δaを用い
ると、以下の(13)式が成立する。
【0052】
【化13】
【0053】更に(13)式において、ε=κε0を用
い、更にκをκgで規格化すると、以下の(14)式が
得られる。この(14)式において、κがxの関数であ
るという意味でκ(x)と標記している。
【0054】
【化14】
【0055】次に、温度係数τの導出について説明す
る。温度係数τの定義により、以下の(15)式が成立
する。
【0056】
【化15】
【0057】従って。前記(14)式の対数を絶対温度
Tで微分することにより、先に記載したτ(x)/τg
数式、即ち、(4)式が得られる。また、{τ(x)/
κ(x)}/{τg/κg}については、{τ(x)/
τg}を{κ(x)/κg}で割ることにより計算するこ
とができ、先の(5)式の関係となる。
【0058】従って以上の知見から特に、図3と図4を
基に先に説明した結晶構造であるならば、先の(3)式
から比誘電率を計算することができ、先の(4)式から
規格化容量温度係数を計算できることが理解できる。こ
れらの計算モデルを基に、主結晶粒構造単位の集合体と
しての第2の誘電体薄膜の比誘電率、容量温度係数、τ
/κ比の計算結果を図5〜図8に示す。図5は主結晶粒
の場合のκとτg/κg比の各値が、結晶粒界での値の1
0倍と仮定した場合の計算結果を示し、図6は主結晶粒
の場合のκとτの各値が結晶粒界での値の10倍と仮定
した場合の計算結果を示す。いずれの計算結果を見て
も、τg/κg比を示す曲線には、a/2Δaの値を示す
横軸において1〜20の領域において上向きの凸のピー
クが存在する。この結果を基に、図5の場合について、
更に、b/a=3あるいはb/a=10の場合について
計算した結果を図7と図8に示す。b/a=3の場合を
示す図7とb/a=10の場合を示す図8を見ると、b
/aの値が大きくなるほどτ/κ比の極大値が大きくな
る傾向にある。また、この傾向は図6を基にした計算結
果においても同等となる。
【0059】これらの結果から、膜厚方向の主結晶粒サ
イズ、即ち、主結晶粒の膜厚方向の高さが、膜面方向の
結晶粒サイズより大きくなればなる程、小粒径領域での
規格化τ/κ比の極大値が大きくなることが判明した。
また、図6〜図8に示すいずれの結果を見ても、縦軸の
x/xbulkの値が1を超える領域が得られることがわか
る。これは、この種の第2の誘電体薄膜を用いた薄膜コ
ンデンサを構成する場合に、横軸のa/2Δaの値を縦
軸のx/xbulkの値が1を超える領域に、例えば、a/2
Δaの値を2〜12の領域にするならば、即ち、結晶粒
径を小さい範囲に限定するならば、薄膜コンデンサを構
成する誘電体薄膜の膜厚を従来よりも小さくできる範囲
が存在することを知見したこととなる。
【0060】これらの結果を総括し、主結晶粒の膜面方
向の粒径aと膜厚方向の高さbの比のb/aを5と設定
し、粒界層の膜厚を5Åと設定した場合の(τ/κ)/
(τ/κ)BULKを縦軸にとり、a/2Δaを横軸にとっ
た場合の計算結果を図9に拡大して示す。この図から、
1.7<a/2Δa<13の範囲において(τ/κ)/
(τ/κ)BULKの値が1を超える領域が存在しており、
この領域を利用して第2の誘電体薄膜を設計し製造する
ならば、即ち、第2の誘電体薄膜の主結晶粒を17Å<
a<130Å、85Å<b<650Åにするならば第2
の誘電体薄膜を従来よりも薄型化できることがわかる。
【0061】これらの結果を基に、粒径層膜厚Δaを5
Å、電極層と誘電体薄膜との界面に生成される境界層の
厚さを50Åとすると、理想的な単結晶から設計される
誘電体薄膜(従来の誘電体薄膜に相当)の厚さを250
Å〜500Å、500〜1000Å、1000Å〜20
00Å、2000Å〜5000Å、5000Å〜100
00Åの各範囲とした場合に好ましい粒径制御範囲と、
その好ましい粒径範囲に制御した場合に実際に設ける誘
電体薄膜としての必要な厚さ、膜厚減少率を計算した結
果を以下の表1に示す。
【0062】 「表1」 膜厚(単結晶の場合を想定) 粒径制御範囲 最大膜厚減少率 250〜500Å 13Å<a<50Å 38% 85Å<b<膜厚 500〜1000Å 12Å<a<80Å 57% 60Å<b<膜厚 1000〜2000Å 12Å<a<110Å 60% 60Å<b<膜厚 2000〜5000Å 12Å<a<130Å 62% 60Å<b<膜厚 5000〜10000Å 12Å<a<240Å 63% 50Å<b<膜厚
【0063】以上の表1のように、誘電体薄膜の主結晶
粒の膜面方向の粒径のaと膜厚方向の高さbを限定する
ことで、単結晶で誘電体薄膜を構成したとする場合より
も、即ち、従来の一般的な設計手法の誘電体薄膜よりも
38〜63%もの膜厚減少を実現できることがわかる。
【0064】以上説明してきた解析をまとめて説明する
と、第1の誘電体薄膜4の膜厚を決定するには、先の
(1)式、即ち、tc={(ε0κc)/(C/S)}−
{tN(κc/κN)}の関係から求めることと、第2の
誘電体薄膜5の膜厚を決定するには、先の(2)式、即
ち、tN={(εcτ)/(C/S)}・{1/(τN
κN)}の関係から求めることは変更がない。従来では
これらの式において第2の誘電体薄膜を薄膜化しようと
した場合、即ち、tNを小さくするには、(τN/κN
の大きな別の材料を探索するか、開発する必要を生じて
いたが、本発明ではこれらの式の関係を考慮し、かつ、
第2の誘電体薄膜の材料を特定のものに限定したとして
も、温度係数と(τN/κN)比が主結晶粒径とその膜厚
方向の高さに依存して変化することを見い出し、これら
をパラメータとして適切な範囲に調整することで、目的
の温度係数を有しながら、従来の誘電体薄膜よりも薄膜
化できる領域が存在することを見出したところに本発明
の最大の特徴を有する。
【0065】また、図9に示す結果から見て、10%以
上薄膜化するには、粒径比制御範囲を1.7≦a/2Δ
a≦13、かつ、5≦b/aの範囲とするならば好まし
く、25%以上薄膜化するには、粒径比制御範囲を1.
8≦a/2Δa≦6、かつ、5≦b/aの範囲とするな
らば好ましいことも明らかである。
【0066】また、以上説明した第2の誘電率薄膜5の
条件を満たし得る材料の層として例えば、SrxBa1-x
TiO3結晶、CaTiO3結晶、PbTiO3結晶、も
しくはTiO2層を例示することができる。SrxBa
1-xTiO3結晶、CaTiO3結晶、PbTiO3結晶は
いずれも相転移温度が室温以下で室温領域で誘電率温度
係数が負であり、比誘電率が100以上であるので、先
の第1の誘電体薄膜4の温度係数を調整する目的で設け
られるので、耐電圧が先の誘電体薄膜4よりは低く、リ
ーク電流発生の可能性を若干有するが、耐電圧が高い第
1の誘電体薄膜4を配しているので薄膜コンデンサとし
ての耐圧性能に問題は生じない。これらの層は、例え
ば、スパッタ法等の成膜法で作成することができる。
【0067】前記構成の薄膜コンデンサ1は、耐圧の面
で優れた第1の誘電体薄膜4を有しているので、耐圧性
の面で優れる。また、第1の誘電体薄膜4と第2の誘電
体薄膜5の積層により構成されているので、従来のシー
ト状の誘電体磁器組成物の積層構造とは異なり、薄型
化、小型化に有利であり、厚さ5μm程度以下のものを
容易に得ることができる。更に、用いる第1の誘電体薄
膜4と第2の誘電体薄膜5の膜厚、組成比を調整するこ
とでコンデンサとしてのQ値、耐電圧、容量温度係数を
調整することができ、使用環境において温度差が大きく
ても温度安定性を優れさせた薄膜コンデンサ1を得るこ
とができる。
【0068】以上のことから、図1に示す構成の薄膜コ
ンデンサ1は、携帯型電子機器、マイクロ波用通信機器
等の温度に対応して補償する必要がある電子機器回路に
有用である。例えば、電圧で発振周波数を制御する素
子、バラクタダイオードと組み合わせて使用することが
できる。
【0069】次に、先の形態においては、電極層3上に
第2の誘電体薄膜5と第1の誘電体薄膜4の順で積層し
たが、図10に示す構造の如く第1の誘電体薄膜4と第
2の誘電体薄膜5を順に積層して薄膜コンデンサ(薄膜
キャパシタ)10を構成しても良いのは勿論である。図
10に示す薄膜コンデンサ10においても先の第1実施
形態の薄膜コンデンサ1と同様な効果を得ることができ
る。
【0070】図11は、本発明に係る薄膜コンデンサ1
あるいは10からなる薄膜コンデンサC1を実用的な電
子回路に組み込んだ構成例を示すもので、この例の電子
回路では、コイルLに対してコンデンサC0とバラクタ
ダイオードDcを並列に接続し、前記バラクタダイオー
ドDcに先の実施形態の薄膜コンデンサC1を並列接続
し、薄膜コンデンサC1の上部電極7と下部電極3に入
出力端子11、12を接続し、入出力端子12と薄膜コ
ンデンサC1の一方の電極との間に抵抗Rを組み込んで
なる構造としたものである。
【0071】図11に示す回路において、バラクタダイ
オードDcとは電圧によってキャパシタンスが変化する
もので、このバラクタダイオードDcの温度係数が正の
所定の値を有するので、このバラクタダイオードDcの
温度係数を薄膜コンデンサC1で打ち消して、温度安定
性の優れた共振回路を提供できるものである。図12に
それらの温度係数分布を示すが、バラクタダイオードD
cの温度係数が+200〜+500ppm/℃の範囲で
あるとすると、薄膜コンデンサC1の温度係数分布を−
200〜−500ppm/℃の範囲とするならば、両者
の温度係数を調整して温度安定性を向上させることがで
きる。なお、先に記述した従来の特許によるコンデンサ
ではこのような−200〜−500ppm/℃もの広い
範囲で温度係数を調整できるものは得られなかった。な
お、薄膜コンデンサC1の温度係数について、本発明製
法を採用することにより、後述する例の如く−220〜
−470ppm/℃の範囲のものは確実に得ることがで
きる。このような薄膜コンデンサは、バラクタダイオー
ドの温度補償回路の適用等、温度補償用として広く適用
することが可能である。
【0072】次に、先の第2の誘電体薄膜5を製造する
場合に用いて好適な成膜装置の一例について説明する。
図13は先の第2の誘電体薄膜2を製造する場合に用い
て好適な2周波励起型のスパッタ装置の一例の構造を示
す。この例のスパッタ装置Aは、第1の高周波電源20
と第1電極24との間に整合回路22Aが介在されてい
る。この整合回路22Aはこれら高周波電源20と第1
電極24との間のインピーダンスの整合を得るための回
路として設けられたものである。
【0073】高周波電源20からの高周波電力は整合回
路22Aを通して給電板23により第1電極24へ供給
される。この整合回路22Aは導電体からなるハウジン
グにより形成される第1のマッチングボックス22内に
収納されており、第1電極24および給電板23は、導
体からなるシャーシ21によって覆われている。第1電
極24の下側には凹部24aが設けられるとともに、第
1電極24の下には、ターゲット25が凹部24aには
め込まれる形で着脱自在に装着されている。ターゲット
25の下方側にはチャンバ壁27で囲まれた成膜室28
が形成されており、シャーシ21とチャンバ壁27とは
絶縁体29で絶縁されている。なお、先の成膜室28に
は真空排気装置に接続された配管等が接続されていて内
部を10-7Pa程度の高真空などの減圧雰囲気に調整で
きるように構成されているが、図13では排気系の装置
及び配管を略している。
【0074】成膜室28には、第2電極30を受ける箱
型のシールド支持体31と、このシールド支持体31を
受ける支持底盤32と、第2電極30上に配置されたガ
ラス等の基板33とが設けられ、支持底盤32をチャン
バ壁27の底部に接続して成膜室28が区画されてい
る。また、第2電極30に接続するとともにシールド支
持体31の底壁を貫通するようにシャフト35が設けら
れている。そして、シールド支持体31の底壁を貫通し
たシャフト35はシールド支持体31の底部に接続され
た隔壁36を介して第2のマッチングボックス36に収
容された整合回路36Aに接続され、この整合回路35
Aは第2の高周波電源37に接続されている。
【0075】図13に示す構成のスパッタ装置Aにあっ
ては、第1の高周波電源20から第1の電極24側に1
kW〜3kW程度の出力で13.56MHz程度の電力
を投入し、第2の高周波電源37から例えば、40MH
z程度の周波数の電力を投入し、電極24と電極30間
にプラズマを生成させ、このプラズマによりターゲット
25の構成粒子を発生させてこの構成粒子を基板33上
に飛来させて堆積させ、必要な薄膜を基板33上に成膜
するものである。
【0076】また、成膜室28において、例えば、ベー
ス圧力を10-7Pa程度の高真空雰囲気に調整可能であ
ることが好ましく、雰囲気ガスとして供給するArガス
を不純物濃度1ppb程度の清浄なものとできることが
好ましい。次に、基板33の成膜面を成膜の前工程とし
てプラズマクリーニングする場合、第1の高周波電源2
0のみに13.56MHz程度の電力を投入してプラズ
マを発生させてこのプラズマにより基板成膜面をクリー
ニングできるように構成されている。また、基板33上
に成膜する際には、第1の高周波電源20から13.5
6MHz程度の電力を投入すると同時に、第2の高周波
電源37から40MHz程度の周波数の電力を投入し、
第2の高周波電源37側から投入する電力を基板33に
対するバイアス電力として利用できるように構成されて
いる。即ち、このような成膜の際には、2周波励起イオ
ン照射によるスパッタリングができるように構成されて
いる。
【0077】図13に示す構成の2周波励起型のスパッ
タリング装置Aを用いて実際に基板上に電極層と誘電体
薄膜を形成する場合、例えば、先に説明した如く、第1
の高周波電源20から13.56MHz程度の電力を投
入すると同時に、第2の高周波電源37から40MHz
程度の周波数の電力を投入しながら成膜する。この際、
バイアス電力として基板に印加する第2の高周波電源3
7からの電力を制御することで誘電体薄膜の結晶粒径を
制御することができる。例えば、後述する実施例におい
ても記載するように、TiO2の誘電体薄膜を成膜する
場合、第1の高周波電源20からの電力を例えば1.5
kW、基板バイアスを0Wとするならば、膜厚方向に粒
界を1〜2個程度有する縦長の主結晶粒からなる誘電体
薄膜を形成することができ、第1の高周波電源20から
の電力を例えば1.5kW、基板バイアスを200Wと
するならば、膜厚方向に数十の粒界を有し、先の場合よ
りも膜面方向の粒径も小さな主結晶粒からなる誘電体薄
膜を形成することができる。従って前記の中間のバイア
ス電力(0〜200Wの間)を第2の高周波電源37か
ら印加することで主結晶粒の膜面方向の粒径と膜厚方向
の高さとを制御することができる。
【0078】ここで、誘電体薄膜の一例として、TiO
2の薄膜に適用する場合、Arガス雰囲気中のO2分圧を
30〜90%に設定し、第1の高周波電源の投入電力を
1kHz〜3kHz、第2の高周波電源からの投入電力
を0〜400W、成膜室の圧力を0.5〜10Paの範
囲で適宜設定することで、TiO2の薄膜を構成する結
晶粒の膜面方向あるいは膜厚方向の大きさを制御するこ
とができる。なお、粒径制御を行うには、N2ガス等の
不純物をArガスに添加し、そのガス分量比を変えるこ
とによって結晶粒径の制御を行うこともできる。
【0079】以上説明のごとく結晶粒径を制御した状態
で形成された第2の誘電体薄膜5は結晶粒径の大小に応
じて先に説明したごとく{(τ/κ)/(τg/κg)}
の値が1を超える領域を有するので、従来の手法による
誘電体薄膜に比べて薄型化が可能なものとなる。
【0080】
【実施例】図13に示す2周波励起型のスパッタリング
装置を用い、アルミナ又はガラスからなる基板上にCu
からなる膜厚1.3μmの下部電極を室温成膜した。次
にこの下部電極の上に膜厚2400Å、3500Å、4
700ÅのCaTiO3薄膜(第2の誘電体薄膜)を後
述の製造条件で結晶粒径を制御しつつスパッタリング法
にて成膜し、続いて膜厚900Å、700Å、500Å
のa-SiNx薄膜(第2の誘電体薄膜)を後述の方法で
主結晶粒径を制御しながらスパッタ法で成膜し、最後に
Cuからなる膜厚1.3μmの上部電極をスパッタ法に
より室温成膜し、積層型の薄膜コンデンサを得た。これ
らの薄膜コンデンサのC/Sの値は480pF/mm2
とした。これらの薄膜コンデンサに対し、特に結晶粒径
を制御していないスパッタリング法にて成膜し、比較の
薄膜コンデンサ試料とした。これら各薄膜コンデンサの
特性を以下の表2において比較記載した。表2において
C膜とは第1の誘電体薄膜を示し、N膜とは第2の誘電
体薄膜を示す。
【0081】 「表2」 粒径制御型 温度係数 κN τN τN/κN C膜厚 N膜厚 薄膜コンデンサ 主結晶粒径 (ppm/℃) (ppm/℃) (ppm/℃) (Å) (Å) (a=50Å −220 43 −746 −17.3 900 2400 b=250Å) −330 43 −758 −17.6 700 3500 −470 43 −792 −18.4 500 4700 粒径制御なし −220 170 −1700 −10.0 1100 4100 (バルク値) −330 170 −1700 −10.0 1000 6100 −470 170 −1700 −10.0 900 8700
【0082】表2に示す誘電体薄膜をスパッタリング法
にて製造する場合、先に説明の2周波励起型のスパッタ
リング装置を用い、基盤バイアスを0〜300Wの範囲
に設定することにより結晶粒径制御を行った。表2に示
す結果から、本発明に係る製造方法で得られた薄膜コン
デンサであるならば、粒径制御を行っていない、換言す
ると、従来の薄膜コンデンサに比べて同等の温度係数に
する場合に、第2の誘電体薄膜の厚さ4100Åのもの
では2400Åに、厚さ6100Åのものを3500Å
に、厚さ8700Åのものは2700Åにそれぞれ大幅
に薄型化できた。よってこの例の薄膜コンデンサである
ならば、同じ温度係数において従来のものよりも、薄型
化できるとともに、温度係数を−220〜−470pp
m/℃の範囲で大幅に調整することができるので、バラ
クタダイオード等の温度係数が正の電子機器の温度補償
用に好適である。
【0083】次に、図13に示す2周波励起型のスパッ
タリング装置を用いて形成したTiO2の断面組織写真
を図14と図15に示す。図14に示す積層構造は、ガ
ラス基板上にCr電極層を形成し、その上にO2分圧比
80%、第1の高周波電源からの投入電力を1.5k
W、第2の高周波電源からの投入電力を0W、成膜室の
全圧を4Paに設定してTiO2の誘電体薄膜を積層
し、更にその上にCr電極層を積層した積層膜の断面構
造を示す。
【0084】図15に示す積層構造は、ガラス基板上に
Cr電極層を形成し、その上にO2分圧比80%、第1
の高周波電源からの投入電力を1.5kW、第2の高周
波電源からの投入電力を200W、成膜室の全圧を4P
aに設定してTiO2の誘電体薄膜を積層し、更にその
上にCr電極層を積層した積層膜の断面構造を示す。図
14に示す積層構造では膜厚方向に1〜2程度の粒界層
を有する結晶組織であることが明らかであり、図15に
示す積層構造では膜厚方向に数10もの粒界層を有する
結晶組織であることが明らかである。このような図14
と図15に示す積層構造の比較から、誘電体薄膜を構成
している主結晶粒の粒径をバイアス電力を調整すること
で制御できることが明らかである。
【0085】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、比
誘電率の異なる第1の誘電体薄膜と第2の誘電体薄膜が
一対の電極間に介在される薄膜コンデンサであり、第2
の誘電体薄膜の主結晶粒径が好ましい範囲に調整されて
いるので、第2の誘電体薄膜を薄型化できる結果、薄膜
コンデンサ全体を薄型化できる。また、比誘電率の異な
る第1と第2の誘電体薄膜を電極間に介在させているの
で、これらの誘電体薄膜の組み合わせによりQ値の調
整、耐電圧の調整、温度補償が可能となる。更に本発明
において、前記構造に加え、第1の誘電体薄膜の容量温
度係数の絶対値を50ppm/℃以下、前記第2の誘電
体薄膜の容量温度係数が負とするならば、温度係数の調
整が広い範囲で可能となり、温度補償が可能となる。
【0086】本発明の製造方法における主結晶粒径の調
整において、{(τ/κ)/(τg/κg)}の値が1を
超える範囲を選択しても良く、主結晶粒径のb/aを一
定数とした場合に、a/2Δaとτ/κとの関係におい
て{(τ/κ)/(τg/κg)}の値が1を超える領域
になるようにa/2Δaの値を選定しても良い。更に本
発明の製造方法における主結晶粒径の調整において、κ
(x)/κg=γ[(x−1)2/(γx−1+κg/κgb
+{(2−1/x)/γ}/(κg/κgb)]/xの関係を満
足し、 τ(x)/τg=1−[(κg/κgb)・(1−τgb/τg)
・{(κg/κgb2(x−1)2+(γx−1+κg
κgb2(2−1/x)γ}/(κg/κgb)・(γx−1
+κg/κgb)・{(x−1)2・(κg/κgb)+(γx−
1+κg/κgb)・(2−1/x)/γ}] の関係を満足し、更に、{(τ(x)/κ(x))/(τ
g/κg)}の値を1.10以上となるように主結晶粒の
粒径制御を行っても良い。
【0087】本発明において、{(τ(x)/κ(x))
/(τg/κg)}の値を1.25以上とすることで更な
る薄型化が可能となる。また、a/2Δaの値を特定の
範囲とすることで、薄型化が可能となる。本発明におい
て、第2の誘電体薄膜がSrxBa1-xTiO3、CaT
iO3、PbTiO3の中から選択されるいずれかの結晶
からなるならば、結晶粒径の調整により温度係数の調
整、並びに薄型化が容易にできる。
【0088】次に、先の製造方法により得られた薄膜キ
ャパシタあるいは薄膜コンデンサを有する電子機器ある
いは電子回路であるならば、拾い範囲で温度補償が可能
であり、また、バラクタダイオード等の正の温度係数を
有する部品との組み合わせにより効率の良い温度補償が
可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係る温度補償用薄膜コンデン
サの第1実施形態の断面構造を示す図である。
【図2】 図2は図1に示す薄膜コンデンサの平面図で
ある。
【図3】 図3Aは主結晶粒とその周囲を囲む結晶粒界
及びそれらを含む主結晶粒構造単位の説明図、図3Bは
主結晶粒構造単位の結合状態を示す平面図、図3Cは同
結合状態を示す側面図である。
【図4】 図4Aは主結晶粒を示す斜視図、図4Bは主
結晶粒の上下を粒界層で挟んだモデル構造を示す斜視
図、図4Cは主結晶粒構造単位を縦方向にN3個積層し
た状態を示す斜視図、図4Dは主結晶粒構造単位を膜面
方向に複数結合した状態を示す平面図である。
【図5】 図5はκg/κgb=10、τg/κg=10τ
gb/κgbの場合の(x/xBULK)の値と、a/2Δaの値
の関係を示すグラフである。
【図6】 図5はκg/κgb=10、τg/κg=τgb
κgbの場合の(x/xB ULK)の値と、a/2Δaの値の関
係を示すグラフである。
【図7】 図7はκg/κgb=10、τg/κg=10τ
gb/κgbの場合、かつb/a=3の場合の(x/xBULK
の値と、a/2Δaの値との関係を示すグラフである。
【図8】 図8はκg/κgb=10、τg/κg=10τ
gb/κgbの場合、かつb/a=10の場合の(x/
xBULK)の値と、a/2Δaの値との関係を示すグラフ
である。
【図9】 図9はΔa=5Å、b/a=5、とした場合
の(τ/x)/(τ/x)BULKの値と、a/2Δaの値と
の関係を示すグラフである。
【図10】 図10は本発明に係る温度補償用薄膜コン
デンサの第2実施形態の断面構造を示す図である。
【図11】 図11は本発明に係る薄膜コンデンサを備
えた電気回路の一例を示す回路図である。
【図12】 図12は本発明に係る薄膜コンデンサの温
度係数とバラクタダイオードの温度係数とを比較して示
す図である。
【図13】 図13は本発明に係る誘電体薄膜の製造に
用いて好適な2周波励起型のスパッタ装置の一例を示す
断面図である。
【図14】 図14は図13に示す2周波励起型のスパ
ッタリング装置により基板バイアスなしの状態で成膜し
たTiO2薄膜の断面構造を示す組織写真である。
【図15】 図15は図13に示す2周波励起型のスパ
ッタリング装置により基板バイアスを印加しながら成膜
したTiO2薄膜の断面構造を示す組織写真である。
【符号の説明】
1、10…薄膜コンデンサ、2…基板、3…第1の電極
層、4…第1の誘電体薄膜、5…第2の誘電体薄膜、7
…第2の電極層、6…主結晶粒構造単位、8…主結晶
粒、a…主結晶粒構造単位の膜面方向の幅、b…主結晶
粒構造単位の膜厚方向の高さ、Δa…粒界層の厚さ。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 容量温度係数の絶対値が50ppm/℃
    以下の第1の誘電体薄膜と、前記容量温度係数が負であ
    る第2の誘電体薄膜とを積層して所望のシート容量値と
    容量温度係数を有する薄膜キャパシタの製造方法であっ
    て、 前記第2の誘電体薄膜の結晶構造が、主結晶粒と、該主
    結晶粒を取り囲む粒界層とを具備する主結晶粒構造単位
    の集合体であり、前記主結晶粒構造単位が多数結合され
    て前記第2の誘電体薄膜が構成される場合、 前記第2の誘電体薄膜の容量温度係数をτとし、前記第
    2の誘電体薄膜の比誘電率をκとし、前記第2の誘電体
    薄膜の膜厚t2をt2={ε0τt0t/(C/S)}・{1
    /(τ/κ)}(ただし、C/Sはシート容量値、ε0
    τt0tは所望の容量温度係数)とし、主結晶粒の(τ/
    κ)を(τg/κg)とした場合、 前記主結晶粒の結晶粒径の大小により{(τ/κ)/
    (τg/κg)}の値が1を超える主結晶粒径の領域を選
    択して結晶粒径の目的値を決定し、前記目的値になるよ
    うに前記主結晶粒の粒径を制御して前記第2の誘電体薄
    膜を成膜することにより該第2の誘電体薄膜の膜厚を薄
    膜化して薄膜キャパシタを形成することを特徴とする薄
    膜キャパシタの製造方法。
  2. 【請求項2】 容量温度係数の絶対値が50ppm/℃
    以下の第1の誘電体薄膜と、前記容量温度係数が負であ
    る第2の誘電体薄膜とを積層して所望のシート容量値と
    容量温度係数を有する薄膜キャパシタの製造方法であっ
    て、 前記第2の誘電体薄膜の結晶構造が、主結晶粒と、該主
    結晶粒を取り囲む粒界層とを具備する主結晶粒構造単位
    の集合体であり、前記主結晶粒構造単位が多数結合され
    て前記第2の誘電体薄膜が構成される場合、 前記粒界層の厚さを2Δaとし、前記主結晶粒と該主結
    晶粒の周囲に存在する粒界層の半分の厚さΔaの分の粒
    界層とを含む主結晶粒構造単位の膜面方向の幅をaと
    し、膜の厚さ方向の高さをbとし、前記第2の誘電体薄
    膜の容量温度係数をτとし、前記第2の誘電体薄膜の比
    誘電率をκとし、前記第2の誘電体薄膜の膜厚t2をt2
    ={ε0τt0t/(C/S)}・{1/(τ/κ)}(た
    だし、C/Sはシート容量値、ε0τt0tは所望の容量温
    度係数を示す)とし、主結晶粒の(τ/κ)を(τ/
    κ)gとした場合、 b/aを一定数とした場合に、a/2Δaとτ/κとの
    関係において{(τ/κ)/(τg/κg)}の値が1を
    超える領域になるようにa/2Δaの値を選定して目的
    の主結晶粒径範囲を求め、この主結晶粒径の範囲になる
    ように前記第2の誘電体薄膜を形成することで前記第2
    の誘電体薄膜の膜厚を薄膜化して薄膜キャパシタを製造
    することを特徴とする薄膜キャパシタの製造方法。
  3. 【請求項3】 容量温度係数の絶対値が50ppm/℃
    以下の第1の誘電体薄膜と、前記容量温度係数が負であ
    る第2の誘電体薄膜とを積層して所望のシート容量値と
    容量温度係数を有する薄膜キャパシタの製造方法であっ
    て、 前記第2の誘電体薄膜の結晶構造が、主結晶粒と、該主
    結晶粒を取り囲む粒界層を具備する主結晶粒構造単位の
    集合体であり、前記主結晶粒構造単位が多数結合されて
    前記第2の誘電体薄膜が構成される場合、 前記粒界層の厚さを2Δaとし、前記主結晶粒と該主結
    晶粒の周囲に存在する粒界層の半分の厚さΔaの分の粒
    界層を含む主結晶粒構造単位の膜面方向の幅をaとし、
    膜の厚さ方向の高さをbとし、前記第2の誘電体薄膜の
    容量温度係数をτとし、前記第2の誘電体薄膜の比誘電
    率をκとし、a/2Δaを無次元パラメータxとし、b
    /aを無次元パラメータγとし、前記κをxの関数とし
    てκ(x)で示し、主結晶粒内部の比誘電率をκgとし、
    粒界層の比誘電率をκgbとし、主結晶粒内部の容量温度
    係数をτgとし、粒界層の容量温度係数をτgbとし、前
    記第2の誘電体薄膜の膜厚t2をt2={ε0τt0t/(C
    /S)}・{1/(τ/κ)}(ただし、C/Sはシー
    ト容量値、ε0τt0tは所望の容量温度係数を示す)と
    し、主結晶粒の(τ/κ)を(τg/κg)とした場合、 κ(x)/κg=γ[(x−1)2/(γx−1+κg
    κgb)+{(2−1/x)/γ}/(κg/κgb)]/x の関係を満足し、 τ(x)/τg=1−[(κg/κgb)・(1−τgb/τg)
    ・{(κg/κgb2(x−1)2+(γx−1+κg
    κgb2(2−1/x)γ}/(κg/κgb)・(γx−1
    +κg/κgb)・{(x−1)2・(κg/κgb)+(γx−
    1+κg/κgb)・(2−1/x)/γ}] の関係を満足し、更に、 {(τ(x)/κ(x))/(τg/κg)}の値を1.1
    0以上となるように前記第2の誘電体薄膜を製造して薄
    膜キャパシタを製造することを特徴とする薄膜キャパシ
    タの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記{(τ(x)/κ(x))/(τg
    κg)}の値を1.25以上となるように前記第2の誘電
    体薄膜を製造することを特徴とする請求項3に記載の薄
    膜キャパシタの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記a/2Δaの平均値を以下の範囲、
    b/aの平均値を以下の範囲としたことを特徴とする請
    求項3に記載の薄膜キャパシタの製造方法。 1.7≦a/2Δa≦13 5≦b/a
  6. 【請求項6】 前記a/2Δaの平均値を以下の範囲、
    b/aの平均値を以下の範囲としたことを特徴とする請
    求項3に記載の薄膜キャパシタの製造方法。 1.8≦a/2Δa≦6 5≦b/a
  7. 【請求項7】 前記第2の誘電体薄膜の比誘電率を10
    0以上とすることを特徴とする請求項3に記載の薄膜キ
    ャパシタの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記第2の誘電体薄膜として、Srx
    1-xTiO3、CaTiO3、PbTiO3の中から選択
    されるいずれかの結晶を用いることを特徴とする請求項
    3に記載の薄膜キャパシタの製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれかの製造方法で製
    造された薄膜キャパシタが電極間に配置されたことを特
    徴とする温度補償型薄膜コンデンサ。
  10. 【請求項10】 請求項1〜8のいずれかの製造方法で
    製造された薄膜キャパシタを備えたことを特徴とする電
    子機器。
  11. 【請求項11】 請求項1〜8のいずれかの製造方法で
    製造された薄膜キャパシタが電極間に介在されて薄膜コ
    ンデンサが構成され、該薄膜コンデンサがバラクタダイ
    オードと並列接続され、前記薄膜コンデンサの電極に入
    出力端子が接続されてなることを特徴とする電子回路。
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