JP2002289319A - スパークプラグ - Google Patents
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Abstract
の過度の温度上昇を抑制でき、ひいては貴金属発火部の
長寿命化を図ることができるスパークプラグを提供す
る。 【解決手段】 スパークプラグ100は、中心電極3の
火花放電ギャップg側に位置する先端部が直径0.7m
m以下の貴金属発火部31とされる。そして、貴金属発
火部31が接合される中心電極母材3fが、熱伝導率が
30W/m・K以上のNi合金にて構成される。
Description
ークプラグには更なる性能向上や長寿命化等が求められ
ている。例えば、火花放電ギャップに臨む中心電極の先
端部(以下、発火部という)の耐消耗性を高めるため
に、PtやIr等の貴金属にて該発火部を構成したスパ
ークプラグが使用されている。他方、近年では排ガス規
制の強化や燃焼効率向上を目的としてエンジンのリーン
バーン化が進められているが、リーンバーンエンジンで
は希薄混合気を使用するため、スパークプラグには着火
性の高いものが求められる。そこで、発火部を細径化し
て着火性を高めたスパークプラグも多く使用されるよう
になってきている。しかしながら、エンジン高性能化を
受けて運転条件も高速・高負荷化してくると、細径化し
た発火は温度が極めて上昇しやすく、貴金属発火部を使
用しているといえども、耐消耗性が必ずしも十分に確保
できないことがある。
火部は、Ni合金等で構成された中心電極本体の先端面
に貴金属チップをレーザー溶接あるいは電子ビーム溶接
等にて接合することにより形成される。そして、その貴
金属チップが溶接される中心電極本体の母材(以下、電
極母材という)は、耐熱性ひいては接合した貴金属チッ
プの耐剥離性に優れるNi基超耐熱合金(例えばインコ
ネル(商標名)など)が使用されてきた。
率がそれほど良好でないため、細径化によりただでさえ
温度上昇しやすい発火部の熱引きが進みにくくなり、発
火部が高温化して消耗が急進行する結果、早期に寿命が
つきやすい欠点があった。
を使用しつつも、その過度の温度上昇を抑制でき、ひい
ては貴金属発火部の長寿命化を図ることができるスパー
クプラグを提供することにある。
スパークプラグは、中心電極の火花放電ギャップ側に位
置する先端部が直径0.7mm以下に細径化された貴金
属発火部を有するものに係るものであり、上記の課題を
解決するために、該貴金属発火部が接合される中心電極
母材が、熱伝導率が30W/m・K以上のNi合金にて
構成されたことを特徴とする。
「貴金属」とは、Ir、Pt、Rh、Ru、Pd、Os
及びWから選ばれる1種又は2種以上を主成分とする金
属をいいう。また、本明細書においては「主成分」と
は、質量含有率において最も高い成分のことをいい、上
記金属元素の「2種以上が主成分である」とは、それら
2種以上の金属元素の合計含有量が、他のいずれの成分
よりも質量含有率が高くなっていることをいう。また、
「Ni合金」とは、Niを主成分とする合金のことであ
る。
径化された貴金属発火部が接合される中心電極母材が、
高温での耐酸化性に優れるNi合金にて構成されている
ので、貴金属発火部が高温化する場合でも中心電極母材
の耐久性を十分に確保することができる。さらに、その
Ni合金の材質として熱伝導率が30W/m・K以上と
なるものを選択して用いるので、発火部が高温にさらさ
れた場合でも電極母材側への熱伝導がスムーズに進行
し、ひいては発火部の熱引きを十分に行なうことができ
る。これにより、着火性向上のために直径Dが0.7m
m以下(望ましくは0.6mm以下)に細径化した貴金
属発火部を使用しつつも、その過度の温度上昇を抑制で
き、ひいては貴金属発火部の長寿命化を図ることができ
るようになる。
的温和な運転条件(あるいはエンジン停止もしくはアイ
ドリング)とが頻繁に切り替わる条件にてスパークプラ
グを使用した場合、貴金属発火部にはその冷熱サイクル
による熱衝撃が繰り返し付与される。そして、本発明者
らが検討したところによると、中心電極母材を上記のよ
うな熱伝導率の良好な材質にて構成しつつ、貴金属発火
部の細径化を行なうことにより、こうした冷熱サイクル
が繰り返される運転条件においても、貴金属発火部の耐
剥離性能を十分に確保することができることが判明し
た。すなわち、貴金属発火部の熱引きが促進される結
果、冷熱サイクル付加時に伴い発生する中心電極母材と
貴金属発火部との温度不整合が緩和され、かつ、貴金属
発火部が細径であることから、冷却時における中心電極
母材と貴金属発火部との収縮変位差の絶対値も小さくな
る。その結果、貴金属発火部の耐剥離性能が向上するも
のと考えられる。
面を用いて説明する。図1に示す本発明の一例たるスパ
ークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が
突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶
縁体2、先端に形成された貴金属発火部(以下、単に発
火部ともいう)31を突出させた状態で絶縁体2の内側
に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接
等により結合されるとともに他端側が側方に曲げ返され
て、その側面が中心電極3の先端部と対向するように配
置された接地電極4等を備えている。発火部31は、中
心電極3の火花放電ギャップg側に位置する先端部を形
成するものであり、直径Dが0.7mm以下(望ましく
は0.6mm以下:また、下限値は、発火部31の寿命
確保のため0.3mm以上とすることが望ましい)。ま
た、接地電極4には上記発火部31に対向する貴金属発
火部(以下、単に発火部ともいう)32が形成されてお
り、それら発火部31と、対向する発火部32との間の
隙間が火花放電ギャップgとされている。
された貴金属チップのうち、溶接による組成変動の影響
を受けていない部分(例えば、溶接により接地電極ない
し中心電極の材料と合金化した部分を除く残余の部分)
を指すものとする。
アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、そ
の内部には自身の軸方向に沿って中心電極3及び端子金
具8を嵌め込むための孔部6を有している。また、主体
金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されて
おり、スパークプラグ100のハウジングを構成すると
ともに、その外周面には、プラグ100を図示しないエ
ンジンブロックに取り付けるためのねじ部7が形成され
ている。
に示すように、先端面3sを含む表層部が少なくとも中
心電極母材3fにて構成された電極本体部3Mの、該先
端面3sをチップ被固着面として、そのチップ被固着面
3sに貴金属チップ31’を重ね合わせ、それら貴金属
チップ31’とチップ被固着面3sの形成部位とにまた
がる形にて、貴金属チップ31’(ひいては発火部3
1)の先端面31’tに到達しない全周溶接部10を形
成することにより、該貴金属チップ31’を貴金属発火
部31となしたものである。この全周溶接部は、後述の
通りレーザー溶接により形成することができるが、電子
ビーム溶接を採用してもよい。
部32は、Ir、Pt、Rh、Ru、Pd、Os及びW
から選ばれる1種又は2種以上を主成分とする貴金属を
主体に構成されている。これらの貴金属の使用により、
中心電極の温度が上昇しやすい環境下においても、発火
部の耐消耗性を良好なものとすることができる。また、
上記のような耐熱合金を母材とする中心電極3及び接地
電極4に対する溶接性も良好である。例えばPtをベー
スにした貴金属を使用する場合には、Pt単体の他、P
t−Ni合金(例えばPt−1〜30質量%Ni合
金)、Pt−Ir合金(例えばPt−1〜20質量%I
r合金)、Pt−Ir−Ni合金等を好適に使用でき
る。また、Irを主成分とするものとしては、Ir−R
u合金(例えばIr−1〜30質量%Ru合金)、Ir
−Pt合金(例えばIr−1〜10質量%Pt合金)、
Ir−Rh合金(例えばIr−5〜25質量%Rh合
金)、Ir−Rh−Ni合金(例えば、Ir−1〜40
質量%Rh−0.5〜8質量%Ni合金)等を使用でき
る。
には、元素周期律表の3A族(いわゆる希土類元素)及
び4A族(Ti、Zr、Hf)に属する金属元素の酸化
物(複合酸化物を含む)を0.1〜15質量%の範囲内
で含有させることができる。これにより、Ir成分の酸
化・揮発を効果的に抑制でき、ひいては発火部の耐火花
消耗性を向上させることができる。上記酸化物としては
Y2O3が好適に使用されるが、このほかにもLa2O
3、ThO2、ZrO2等を好ましく使用することがで
きる。この場合、金属成分はIr合金のほか、Ir単体
を使用してもよい。
1’)が接合される中心電極母材3fは、常温での熱伝
導率が30W/m・K以上のNi含有合金にて構成され
る(以下、特に断りがない限り、単に「熱伝導率」と帰
した場合は、全て常温での値を意味するものとする)。
中心電極母材3fをこのような材質にて構成すると、発
火部31が高温にさらされた場合でも電極母材3f側へ
の熱伝導がスムーズに進行し、ひいては発火部31の熱
引きを十分に行なうことができる。これにより、上記の
ように直径Dが0.7mm以下に細径化した貴金属発火
部31を使用しつつも、その過度の温度上昇を抑制で
き、ひいては貴金属発火部31の長寿命化を図ることが
できる。
よる熱衝撃が繰り返し付与される運転条件においても、
貴金属発火部31の耐剥離性能を十分に確保することが
できる。すなわち、貴金属発火部31の熱引きが促進さ
れる結果、冷熱サイクルが付加されたときに、貴金属発
火部31の温度変化が中心電極母材3fに追従しやすく
なる。その結果、冷却時において、貴金属発火部31側
から中心電極母材3f側に向けて形成される温度分布に
極端に急峻な変化が形成されにくくなり、剥離の原因と
なる貴金属発火部31と中心電極母材3fとの熱収縮変
位を縮小できる。また、貴金属発火部が細径であること
から、熱収縮変位の差の絶対値自体も小さくなる。その
結果、貴金属発火部31の耐剥離性能を大幅に向上でき
る。
としては、Ni含有率が93質量%以上のものを使用す
ることが、熱伝導率をさらに高める上で望ましい。ま
た、Ni含有合金に対する合金元素としては、例えばC
r、Fe、Mn及びSiなどを使用できる。これらの1
種又は2種以上を合計にて1〜7質量%の範囲にて含有
させることが望ましい。該合計含有量が1質量%未満で
は、中心電極母材3fの高温強度あるいは耐酸化性が不
足することにつながる。また、7質量%を超えると中心
電極母材3fの熱伝導率を30W/m・K以上に確保す
ることが困難となる。なお、中心電極母材3fの高温強
度と耐酸化性向上とを両立させる観点において、Crを
必須として含有させること、例えば1〜5質量%の範囲
にて含有させることがより望ましい。Crの含有量が1
質量%未満では高温での耐酸化性を十分に確保できなく
なる場合がある。また、5質量%を超えると中心電極母
材3fの熱伝導率を30W/m・K以上に確保すること
が困難となる場合がある。他方、中心電極母材3fの熱
伝導率は40W/m・K以下であることが好ましい。中
心電極母材31は燃焼室内に直接露出するために、高温
強度あるいは耐酸化性確保のため上記の添加元素の含有
が必要である。そして、これら添加元素の必要十分な含
有代を考慮した場合、材料の熱伝導率を40W/m・K
より大きくすることは結果的に困難となる場合がある。
構成する場合、電極本体部3Mは、貴金属発火部31の
熱引きを十分に進行させる観点において、その外径D1
が1.5mm以上確保されていることが望ましい。他
方、一般に使用されるスパークプラグの寸法を考慮すれ
ば、該外径D1が3.0mmを超えることは現実的でな
い。
が円錐台状のテーパ面3tにより縮径されて直棒状部が
形成されるとともに、その直棒状部の先端面3sに上記
発火部31を構成する合金組成からなる円板状の貴金属
チップ31'を重ね合わせる。さらにその接合面に沿っ
て水平方向からレーザーを照射させることにより全周溶
接部(以下、単に溶接部ともいう)10を形成して貴金
属チップ31'を固着することにより発火部31が形成
される。また、対向する発火部32は、発火部31に対
応する位置において接地電極4に貴金属チップを位置合
わせし、その外縁部に沿って斜め方向からレーザーを照
射させることにより溶接部を形成してこれを固着するこ
とにより形成される。ただし、中心電極3側の発火部3
1をIr系金属にて構成し、接地電極4側の発火部32
をPt系金属にて構成する場合、後者を抵抗溶接接合に
て形成することも可能である。発火部31の形成に用い
られる貴金属チップは、例えば直径Dが0.3〜0.7
mm、厚さHが0.5〜1.0mmのものを使用する。
材3fと接する形で、該中心電極母材3fよりも熱伝導
率が良好な金属からなる良熱伝導芯材部3cを配置する
ことができる。これにより、貴金属発火部31の熱引き
を一層促進することが可能となり、ひいてはその寿命を
向上させることができる。良熱伝導芯材部3cは、例え
ばCuあるいはCu合金(これらは、熱伝導率がNi合
金の10〜数10倍良好である)にて構成できる。な
お、良熱伝導芯材部3cの外径は、電極本体部3Mの外
径D1の55〜80%の範囲となっていることが望まし
い。55%未満になると、良熱伝導芯材部3cを設ける
ことによる伝熱促進の効果が顕著でなくなり、80%を
超えると、中心電極母材3fが薄くなりすぎて、中心電
極3の高温強度が不足したり、あるいは高温に昇温した
ときに、良熱伝導芯材部3cが過度に膨張して電極膨れ
等の不具合を招いたりする場合がある。
ザー溶接を用いて形成する方法につき、以下に詳しく説
明する。図2(a)に示すように、中心電極3の先端面
3sをチップ被固着面として、ここにチップ径D、チッ
プ厚さHの貴金属チップ31'を重ね合わせて重ね合せ
組立体170(スパークプラグワークW)を作り、
(b)及び(c)に示すように、その重ね合せ組立体1
70に対しレーザービームLBを照射して、貴金属チッ
プ31'とチップ被固着面とにまたがり、かつ貴金属チ
ップ31'の厚さ方向において放電面31a(図4参
照)に到達しない全周溶接部10をチップ外周面周方向
に沿って形成する。
状であり、図2(b)に示すように、該貴金属チップ3
1’と中心電極3との重ね合せ組立体170を、レーザ
ー照射ユニット200の出射光学部に対しチップ31’
(中心電極3)の中心軸線Oの周りにおいて相対的に回
転させながら、重ね合せ組立体170に向けて水平照射
する。
製造されたスパークプラグの、発火部31近傍を示すも
のである。すなわち、貴金属チップ31’の周方向にお
いて、貴金属チップ31’と中心電極3のテーパ面3t
の先端縮径部位とにまたがり、かつ貴金属チップ31’
の厚さ方向において放電面31aに到達しない形で、図
4(b)及び(c)に示すような溶接部深さ(溶け込み
深さ)d、溶接部幅wの全周溶接部10が形成される。
全周溶接部10の形成に伴って、貴金属チップ31’に
は放電面31aを有する発火部31が形成され、放電面
31aの外縁から全周溶接部10の対応する端縁までの
軸線O方向の最短距離が発火部厚さhとなる。この発火
部厚さhは、発火部31の寿命確保の観点において0.
2mm以上とすることが望ましい。なお、通常使用する
スパークプラグ形態において発火部厚さhが0.7mm
以下が望ましい。0.7mmを超えるとチップ先端部が
加熱され、火花消耗によるギャップ増大がおきやすい。
溶接部10の電極本体部3Mの軸線Oと直交する向きに
おける溶け込み深さをdとし、貴金属発火部31の先端
面の半径をR(=D/2)としたときに、d/Rが0.
6以上となるように照射エネルギーを調整することが望
ましい。全周溶接部10が未達となる貴金属発火部31
の中心付近では、電極本体部3Mと貴金属発火部31と
の境界は単なる接触界面となるので、該界面を経た熱移
動が妨げられ、ひいては貴金属発火部31の熱引きを妨
げる要因ともなる。しかしながら、エネルギーの最適化
を図ることにより、d/Rが0.6以上となるように全
周溶接部10を形成すれば、全周溶接部10を介した直
接熱伝導により、熱伝導率の良好な電極本体部3M側へ
の熱移動をスムーズに行なうことができ、ひいては貴金
属発火部31の熱引きを促進して耐消耗性あるいは耐剥
離性を向上させることができる。また、貴金属チップ3
1’自体の軸線O方向の高さをHとした場合、発火部3
1の接合強度確保及び耐剥離性向上と、良好な熱引きに
伴う長寿命化を図る観点において、0.3≦w≦0.9
とし、0.2≦h≦0.7の範囲となるように調整する
ことが望ましい。
の溶融割合が40〜60体積%となるように全周溶接部
10を形成することが望ましい。貴金属チップ31’側
の構成金属の溶融割合を40体積%以上とすることで、
中心電極母材3fより熱伝導率の高い貴金属が溶け込む
ことによる熱引き改善効果を顕著なものとすることがで
きる。また、溶融割合が40体積%未満となった場合、
溶け込み深さdが不足しがちとなり、発火部31の耐剥
離性能の低下を招くことにつながる。他方、上記溶融割
合が60体積%を超えると、高融点である貴金属チップ
側の溶融量を増大させるために、レーザービームによる
入熱量の増加を余儀なくされ、溶接部幅wの過剰な増大
ひいては発火部厚さhの不足につながる。また、溶接部
深さdの不足にもつながりやすい。
火部31の中心軸線Oを挟んだ全周溶接部10の両側部
分が半径方向において内部でつながらない場合(この場
合、全周溶接部10はドーナツ状の形態を呈する)に
は、溶接後においてチップ厚さH及び溶け込み深さd
を、中心軸線Oを含む断面(以下、軸平行断面という)
から実測すればよい。しかし、同図(c)に示すよう
に、両側の全周溶接部10が半径方向において内部でつ
ながってしまう場合(全周溶接部10は円板状の形態を
呈する)には、溶接後においてチップ厚さH及び溶け込
み深さdを、その軸平行断面において直ちに実測できる
わけではない。ただし、溶け込み深さdについては、全
周溶接部10の軸断面において、中心軸線Oを挟んで対
称と仮定し、チップ半径Rとすることができる。一方、
チップ厚さHについては、全周溶接部10を、周方向に
対して均一な濃度分布を有する貴金属チップ成分と電極
成分との溶融合金部として捉えることにより、次のよう
に定めるものとする。
1と中心電極3(チップ被固着面3sの形成部分)の金
属組成は既知であるとし、前者の主成分をC、含有率を
NC(質量%)、後者の主成分をE、含有率をNE(質量
%)とする。次に、貴金属発火部31の軸平行断面にお
いて、全周溶接部10の成分C及び成分Eの各平均含有
率NCW及びNEWを、EPMAあるいはEDX等の微小面
分析法により求める。溶接部10中の貴金属チップの溶
解比率をxとすると、図中のの関係が成立するから、
xはのように求めることができる。近似的ではある
が、本明細書では、成分C単体の室温での密度をρC
(g/cm3)、成分E単体の室温での密度をρE(g
/cm3)として、溶接部10中の貴金属チップの体積
溶解比率を、(x/ρC)/{(x/ρC)+(1−x)
/ρE}にて求めるものとする(この数値を100倍す
れば、体積%による表示となる)。該貴金属チップの体
積溶解比率の決定方法は、図4(b)のように、全周溶
接部10の両側部分が半径方向において内部でつながら
ない場合も同様である。
て求める(図7参照)。すなわち、軸線Oの方向におい
て、溶接部10を、該軸線Oと直交する断面(以下、軸
直交断面という)により、微小距離Δzに分割する。誤
差を小さくするには分割数は多ければ多いほどよいが、
例えば100分割程度あれば十分である。そして、各切
断面による溶接部10の軸直交断面積Si(ここでは、
チップ側から数えたi番目の切断面による軸直交断面積
をSiと表している;Si’についても同様)、前記軸
直交断面において溶接部10により切り取られる部分の
長さを直径とする円により近似する。なお、溶接部10
の上下のくぼみにかかる部分では、溶接部10により切
り取られる部分は、軸線Oの両側に別れて現われるが、
この場合は軸直交断面積Siを、外縁間距離及び内縁間
距離をそれぞれ直径とする円に挟まれたドーナツ状領域
の面積として求める。
原理により、各位置の軸直交断面積Skを底面とし微小
距離Δzを高さとする薄い柱体の体積和として算出でき
る(図中式)。また、貴金属チップ31’の体積溶解
比率は、すでに(x/ρC)/{(x/ρC)+(1−
x)/ρE}として算出してあるので、貴金属チップ3
1’及び中心電極3の各溶解体積は、前記全体積Vtを
用いて図中及び式によりそれぞれ算出できる。
の縁位置から、チップ被固着面3sの推定位置までの軸
線O方向の距離をtAとすれば、推定チップ厚さHは、
h+tA(図中式)にて表される。ここで、溶接部1
0のチップ(発火部)側のくぼみの体積Vrは、前記ド
ーナツ状の推定断面の内周縁に囲まれる領域の軸直交断
面積をSi’とすれば、同様の区分求積法により式の
ように算出できる。その結果、チップの直径をD、発火
部厚さをhとして、推定チップ体積Vmは式にて表さ
れるから、推定チップ高さHをのように求めることが
できる。このような演算は、前記軸平行断面の観察画像
を撮影し、その画像にコンピュータを用いた周知の図形
演算処理を施せば、迅速かつ正確に行なうことができ
る。
クプラグへの適用を図ることも可能である。該スパーク
プラグ400においては、絶縁体202の外側を覆う形
で筒状の主体金具205が設けられる。また、基端側が
主体金具205の端部に接合される一方、先端側は中心
電極2側に曲げ返される形態の接地電極204,104
が複数設けられる。そして、それら接地電極の1つ、す
なわち接地電極104は、側面が中心電極202の先端
面と対向するように配置される一方、残余の接地電極2
04の少なくとも1つ(ここでは2つ)のものが、端面
が中心電極202の側面と対向するように配置される。
向型のスパークプラグ100と同様の火花放電ギャップ
gαが接地電極104の側面と中心電極202の先端面
との間に形成され、多極スパークプラグと同様の火花放
電ギャップgβが、接地電極204の先端面と中心電極
2の側面との間に形成される。火花放電ギャップgαを
形成する中心電極202の先端部の構成は、図1のスパ
ークプラグ100と全く同じであり、当該ギャップgα
での火花放電に際して同様の効果を奏するものである。
すなわち、中心電極202の先端部には、貴金属発火部
105がレーザー溶接による全周溶接部106にて接合
されている。また、中心電極202の外周面には貴金属
耐消耗部242が形成されていてもよい。さらに、中心
電極202の内部には、CuあるいはCu合金にて構成
された良熱伝導性芯材部202mが形成されている。そ
して、貴金属発火部105が接合される中心電極母材2
02nは熱伝導率が30W/m・K以上のNi合金にて
構成される。
プgαの大きさをギャップgβよりも大きくおくと、通
常はギャップgαにて飛火しやすく、絶縁体203の先
端面が汚損した場合にはギャップgβで飛火しやすくな
る。平行対向型スパークプラグに形態の近いギャップg
αは火花の集中度が高く(特に中心電極202側を負と
して電圧印加する場合)、着火性を高めることができ
る。なお、この実施例では、側面が中心電極202の先
端面と対向するように配置される接地電極204は、そ
の端面が絶縁体203の先端部を間に挟んで中心電極の
側面と対向するように配置されている。すなわち、ギャ
ップgβでの飛火形態はセミ沿面飛火形態となる。
を行った。 (実施例1)Ir金属に対し、所定量のPt金属を配合
・溶解することにより、Ir−5重量%Ptの組成を有
する合金を作製した。この合金を合金溶解/圧延により
板材とし、さらに打抜き加工を行なうことによって、チ
ップ厚さHが0.6mm、チップ径Dが0.4〜1.0
mmの種々の貴金属チップを作製した。他方、外径1.
8mmのCu製芯材の周囲を、表1に示す種々の組成を
有するNi合金からなる中心電極母材により被覆するこ
とにより、外径2.5mmの電極本体部3Mを種々作製
するとともに、その先端を切削加工により図2に示すス
トレート部を1.3mm有する形態のテーパ状に加工し
た。ただし、本体部3Mの外径D1を2.5mm、先端
面3sの直径D2をチップ径+0.3mm、テーパ面3
tのテーパ角度を45°とした。また、各Ni合金を用
いて、寸法φ10×5mmの試験片を作製し、これを不
活性ガス雰囲気中にて常温でレーザーフラッシュ法によ
り熱伝導率を測定した。その結果を表1に示す。
わせ、さらに、パルス幅tを3ミリ秒となるように調整
したパルス状YAGレーザービームLBを、隣接する溶
融スポットの約半分が重なり合うようにパルス周波数f
を調整(周期τ=1000/12ミリ秒)して電極本体
部3M上に組み立てられた貴金属チップ31’の外周面
に沿って照射し、貴金属チップ31’の周方向にて全周
溶接部10を形成し、さらに、必要な他の部品を組み立
てて、図1に示す種々の試験品を作成した。また、各試
験品における形成される全周溶接部10の溶け込み深さ
dは、中心電極母材の材質に応じて図3に示す方法によ
りレーザービームLBのエネルギーを調整することによ
り、貴金属チップ31’(貴金属発火部31)の半径R
の80%となる値に合わせこんだ。
耐火花消耗性試験を行った。すなわち、プラグを6気筒
ガソリンエンジン(DOHC、排気量2500cc)に取
り付け、スロットル全開状態、エンジン回転数5500
rpmにて200時間運転を行ない、火花放電ギャップ
gの拡大量を測定した。図9はその結果を示すものであ
り、発火部31の直径Dが0.8mm(発明の範囲外)
の試験品での火花放電ギャップgの拡大量を1として、
各Dの値毎に相対値により示している。これによると、
発火部31の直径Dが0.7mm以下になるとギャップ
の拡大ひいては発火部31の消耗が起こりやすくなる
が、中心電極母材の熱伝導率を30W/m・K以上とす
ることで、消耗を著しく抑制できていることがわかる。
て、熱伝導率が31W/m・K(表1の番号4)のもの
を使用した試験品につき、冷熱サイクル試験を以下のよ
うにして行なった。すなわち、発火部31を含む中心電
極3の先端部をガスバーナーにより900℃に1分加熱
し、その後室温に1分放置して冷却するサイクルを、1
000サイクル繰り返す。そして、酸化スケールが50
%以下のものを良好(○)、50%を超えるものを不良
(×)として評価する。以上の結果を表2に示す。
7mmを超えた場合、中心電極母材をなすNi合金とし
て、熱伝導率が30W/m・K以上の材質を採用して
も、十分な耐剥離性能を確保できないことがわかる。
Dを有する貴金属チップを用意し、他方、中心電極本体
3Mとして、表1の番号5の合金(熱伝導率:35W/
m・K)により中心電極母材3fを作製したものを用意
した。そして、上記の電極本体部3Mに各チップを重ね
合わせ、さらに、パルス幅tを3ミリ秒となるように調
整したパルス状YAGレーザービームLBを、隣接する
溶融スポットの約半分が重なり合うようにパルス周波数
fを調整(周期τ=1000/12ミリ秒)して電極本
体部3M上に組み立てられた貴金属チップ31’の外周
面に沿って照射し、貴金属チップ31’の周方向にて全
周溶接部10を形成し、さらに、必要な他の部品を組み
立てて、図1に示す種々の試験品を作成した。なお、各
試験品における形成される全周溶接部10の溶け込み深
さdは、図3に示す方法によりレーザービームLBのエ
ネルギーを調整することにより、貴金属チップ31’
(貴金属発火部31)の半径Rの20〜100%となる
種々の値に設定した。これら試験品に対し、実施例1と
同様に実機耐久試験を行なった。結果を図10に示す。
これによると、溶け込み深さdを半径Rの60%以上に
調整することで、ギャップ拡大量が小さく、貴金属発火
部31の耐消耗性が向上していることがわかる。
面図及びその要部拡大図。
製造工程説明図。
明図。
法の概念説明図。
すグラフ。
すグラフ。
Claims (2)
- 【請求項1】 中心電極(3,202)の火花放電ギャ
ップ(g,gα)側に位置する先端部が直径0.7mm
以下の貴金属発火部(31,105)とされ、かつ該貴
金属発火部(31,105)が接合される中心電極母材
(3f,202n)の熱伝導率が30W/m・K以上の
Ni合金にて構成されたことを特徴とするスパークプラ
グ(100,400)。 - 【請求項2】 前記中心電極(3,202)は、先端面
(3s)を含む表層部が少なくとも前記中心電極母材
(3f)にて構成された電極本体部(3M)の前記先端
面(3s)をチップ被固着面として、そのチップ被固着
面(3s)に貴金属チップ(31’)を重ね合わせ、そ
れら貴金属チップ(31’)とチップ被固着面(3s)
の形成部位とにまたがる形にて前記貴金属チップ(3
1’)の先端面に到達しない全周溶接部(10)を形成
することにより接合された該貴金属チップ(31’)を
前記貴金属発火部(31)となしたものであり、前記全
周溶接部(10)の前記電極本体部(3M)の軸線
(O)と直交する向きにおける前記貴金属チップ外周面
からの溶け込み深さをdとし、前記貴金属発火部(3
1)の先端面の半径をRとしたときに、d/Rが0.6
以上である請求項1記載のスパークプラグ(100,4
00)。
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