JP2002273720A - 押出成形セメント板の冷却方法及び冷却装置 - Google Patents

押出成形セメント板の冷却方法及び冷却装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 オートクレーブ養生後のノンアスベスト押出
成形セメント板をクラックの発生を防ぎながら効率良く
冷却するための方法及び装置を提供する。 【解決手段】 中空部を有する押出成形セメント板をオ
ートクレーブ養生する押出成形セメント板の製造方法に
おいて、オートクレーブ養生終了後の押出成形セメント
板について、その中空部を通して空気を循環させること
によって冷却することを特徴とする押出成形セメント板
の冷却方法。オートクレーブ養生終了後の押出成形セメ
ント板を収容する容器、前記容器の一端に吸気ダクト、
他端に排気ダクトが設けられ、吸気ダクトと排気ダクト
とを連結する循環ダクトの途中に送風機及びガス温度調
整装置が設けられている冷却装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築物の壁材とし
て用いられる押出成形セメント板の製造技術に関し、特
に中空部を持つ押出成形板のオートクレーブ養生後の効
率的な冷却方法及び冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、セメント、骨材と補強繊維を
主原料とする成形材料を押出成形して製造した押出成形
セメント板は、成形後、一次養生、オートクレーブ養
生、仕上げなどの製造工程を経て製造される。従来その
押出成形セメント板の製造においては、補強繊維として
は、石綿が用いられていた。しかしながら、最近の石綿
の使用の規制により、石綿を含有しないノンアスベスト
の押出成形セメント板が製造されるようになってきた。
ノンアスベストの押出成形セメント板は、石綿の代わり
に補強繊維として石綿以外の無機繊維、合成繊維、パル
プなどを配合している。しかしながら、ノンアスベスト
の押出成形セメント板は、製造時に、特にオートクレー
ブ養生後にオートクレーブから板材を取り出した時に、
クラックが発生し易い。これはオートクレーブ内温度と
外気温度との温度差によるものである。
【0003】このようなノンアスベストの押出成形セメ
ント板をオートクレーブで養生する場合、オートクレー
ブの効率を考え、鉄製パレットの上に平積みし、できる
だけ多くの製品を養生できるようにしている。このた
め、積み上げられた下の製品には上の製品の重量がかか
った状態になっている。このため、製品の形状や配合に
よっては、オートクレーブ処理終了後に減圧して製品を
オートクレーブ内から取り出す時に、製品は130℃近
い温度を保っており、特に冬場には外気と製品とで10
0℃以上の温度差が発生する。このため、小口・側面の
外回りが急激に冷却されるが、中央部はなかなか冷却さ
れないので、製品内外の温度差の影響でクラックが入
る。しかし、中空部の温度が80℃まで下がっていれ
ば、外周部が冬場の低い外気温で急激に冷却されても、
クラックは全く発生しないことが分かっている。
【0004】このことから、従来、押出成形セメント板
のクラック発生を防止するために下記の方法が取られて
いた。クラックを防止するため、オートクレーブ内で徐
々に温度を下げていく方法では、クラックが発生しない
温度に下げるまで16〜24時間も必要であり、この間
オートクレーブの利用ができないため生産性が悪くな
る。他のクラックを防止するための方法として、積み上
げた製品に保温材をかぶせる手段を取れば急冷を防ぐこ
とができる。しかし、この方法によるときには、クラッ
クが発生しない温度である80℃まで冷却させるのに、
7時間以上の時間が必要であり、また、保温材をかぶせ
た製品を冷却する場所が多く必要となり、生産性、コス
トの面で不利である。
【0005】また別の方法として、製品をオートクレー
ブに入れるとき、1枚1枚立て掛けて製品間に空間を保
つことで他の製品の重量が掛からないようにし、製品1
枚ごとの全面から放熱することでクラックの発生を防ぐ
ことができる。しかし、この方法では、オートクレーブ
に入れるためにパレットに積むことのできる製品の枚数
が3〜4割少なくなる。また、全ての断面形状の製品に
対応できない。さらに、立て掛け設備が必要なことや、
一度に養生できる枚数が減ることから生産性を保つため
オートクレーブの増設が必要となる。本発明は、前記の
問題点を解決し、オートクレーブ養生後、ノンアスベス
ト押出成形セメント板をクラックの発生を防ぎながら効
率良く冷却するための方法及び装置を提供しようとする
ものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、押出成形セメ
ント板の外周部と中央部とが均一に温度が降下すれば、
クラックが発生しないことに着目し、下記の手段により
前記課題を解決した。 (1)中空部を有する押出成形セメント板をオートクレ
ーブ養生する押出成形セメント板の製造方法において、
オートクレーブ養生終了後の押出成形セメント板につい
て、その中空部を通して空気を循環させることによって
冷却することを特徴とする押出成形セメント板の冷却方
法。 (2)前記押出成形セメント板の中空部を通す空気の循
環は、前記中空部の温度が押出成形セメント板の外表面
の温度に近い温度になるように調整されることを特徴と
する前記(1)記載の押出成形セメント板の冷却方法。
【0007】(3)中空部を有する押出成形セメント板
をオートクレーブ養生する押出成形セメント板の製造装
置において、オートクレーブ養生終了後の押出成形セメ
ント板を収容する冷却室、前記冷却室の一端に前記冷却
室内の押出成形セメント板の端面に面した吸気ダクトの
吸気口と、前記冷却室の他端に前記押出成形セメント板
の反対側の端面に面する排気ダクトの排気口とが設けら
れ、かつ前記吸気ダクトと排気ダクトとを連結する循環
ダクトが設けられ、前記循環ダクトの途中に送風機及び
循環するガスの温度を調整できる装置を設けたことを特
徴とする押出成形セメント板の冷却装置。
【0008】
【発明の実施の形態】押出成形セメント板の製造におい
て、オートクレーブ養生が終了し、減圧後、オートクレ
ーブから取り出した押出成形セメント板(製品)は、鉄
製パレットの上に積み重ねられており、取り出した直後
では約130℃の温度となっている。製品は取り出した
後に放熱してその温度が徐々に低下して行き、冷却され
る。しかし、製品の中央部は熱が抜けにくく、特に冬場
においては外気で外周部は急激に冷却されるため、製品
の両端部と中央部で大きな温度差(100℃以上)を急
激に生じて、クラックを発生する。特に、この場合、製
品は積み上げられて製品群となっているため、製品群の
中央部では熱が抜けにくく、温度が下がりにくい。
【0009】本発明は、この温度差を無くすために、熱
の抜けにくい押出成形セメント板(製品)中央部の熱を
一方の小口(製品端面の中空部に連通する開口をいう)
から中空部を利用して吸い出し、他方の小口に吹きつけ
るようにする。これにより、製品の中空部がエアーダク
トの役目を果たし、熱気が循環する。このとき中空部に
は製品両端側の温度の低い空気が循環して流れるため徐
々に冷却される。さらに空気循環路に設けるダンパーを
開くなどの手段を用いて、循環する空気に途中で数回
(2〜3回)外気を導入し、徐々に温度を下げて行く。
【0010】これにより、製品両端部と中央部の温度が
短時間で均等に下がり、中央部を含めた製品の温度が8
0℃以下になるので、製品が外気にさらされて外周部の
温度が急激に下がってもクラックの発生が防止される。
なお、前記の「製品両端部と中央部の温度が短時間で均
等に下がり」という主旨は、製品中央部の温度が短時間
で製品両端部の温度と余り差がつかない程度で下がると
いう意味であり、両部の温度が同じ割合で下がることを
いうものではなく、両部の温度がクラックの発生を招く
程度の温度差を生じない範囲で下がることをいうもので
ある。なお、ダンパーを設ける手段を採用した場合にお
いて、ダンパーを開くタイミングは、空気を循環させて
中央部の温度が降下し、温度降下がなくなり一定温度を
保つようになった時点(約1時間後)で少し開き、さら
に温度が降下し、90℃になった時点でさらに開きを大
きくするのが効果的である。
【0011】本発明方法を具体的に行うには、上記した
押出成形セメント板の冷却装置を用いることが好ましい
が、前記した装置以外のものでも行うことができる。前
記装置の冷却室を構成する容器は、製品を冷却するため
の冷却箱となり、内部で冷却ゾーンを形成する。このた
め、この冷却ゾーンの一方から冷却するための空気を吸
気する長手方向の吸気ゾーンが形成され、他方には吸気
ゾーンから送られてきた空気を冷却室内に排気するため
の長手方向の排気ゾーンが形成される。そして、容器に
は吸気ゾーンから送られてきた空気が製品の外側のみを
流れて排出されることがないように、その冷却箱を2分
する仕切り板を設けることが好ましい。なお、前記で
は、冷却室内部の空気を吸気する吸気ゾーンを形成する
と述べたが、これは送風機のどちら側からから操作を説
明するかによって変わり得るもので、排気ゾーン側を冷
却用の空気を送り込む「送風ゾーン」、吸気ゾーン側を
内部の空気を排気する「排気ゾーン」ということもでき
る。
【0012】本発明方法を実施する装置を図面を用いて
具体的に説明する。図1は、本発明の冷却装置の概要説
明図であり、冷却装置1は、オートクレーブ養生後の押
出成形セメント板3を収容して冷却するための冷却室2
を主体とし、長手方向に長い冷却室2の一端には、吸込
ダクト4の開口5が設けられ、他端には排気ダクト6の
開口7が設けられている。吸込ダクト4は循環ダクト8
に接続し、循環ダクト8の他端は前記排気ダクト6に接
続している。循環ダクト8の途中に送風機9が設けら
れ、吸込ダクト4から吸い込んだ冷却室2内の空気を排
気ダクト6から冷却室内2に送り、押出成形セメント板
3を冷却するようになっている。この空気の循環によ
り、押出成形セメント板3は徐々に冷却されるが、循環
される空気の温度が上がってきて、冷却速度が小さくな
るので、循環ダクト8の途中にダンパー10を設け、そ
こから外気を取り入れて循環空気の温度を調整すること
が好ましく、ダンパー10の開閉角度を調整することに
より、外気の取り入れ量を変えて、押出成形セメント板
3の冷却速度を加減することができる。図1中の「開
1」及び「開2」はダンパー10の開閉角度の違いを示
す。
【0013】そして、この冷却室の構造では、空気が押
出成形セメント板3の外側を単に通るだけになり易いの
で、押出成形セメント板3と冷却室の内壁との間に仕切
板11を設ける。仕切板11は、通常ゴム製のものが使
用されるが、ゴム製に限らず、吸込側と吸気側を完全に
遮断するものであればよい。仕切板11は冷却室2を2
等分する作用があり、吸込側と排気側を完全に遮断し、
空気の循環が押出成形セメント板3の中空部を通過する
ようにすることが好ましい。図2は、オートクレーブ養
生室の扉を開けたところを示す正面図であり、オートク
レーブ15内には、鉄製のACパレット16の上に押出
成形セメント板3を複数枚水平に積み重ねた群が2列積
置され、台車17に乗って入っている。通常、オートク
レーブ15内で養生を終了した押出成形セメント板3
は、台車17ごと引き出されて、本発明の冷却装置に入
れて冷却を行うのが好適である。
【0014】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。ただし、本発明は、この実施例によりなんら限定さ
れるものではない。
【0015】実施例1 オートクレーブ内で養生を終了し、減圧後、オートクレ
ーブから取り出した押出成形セメント板を、図1に示す
本発明の冷却装置を用いて冷却した。用いた押出成形セ
メント板は、厚さ60mm、巾600mm、長さ400
0mmの中空部を有するパネルであって、鉄製のACパ
レットの上に1列10枚積み重ねられ、図2に示すよう
に2列並べたものを、オートクレーブから取り出し、外
気に触れないように冷却装置の冷却室内の冷却ブース1
2に入れた。冷却ブース12に入れ0後、直ちに送風機
で空気の循環を開始した。循環の開始直後は、パネル中
央部は120〜130℃の温度を保っているが、送風機
で空気を循環することにより、イ)右側から吸い込まれ
た65℃前後の空気が循環ダクトを通り、左側の開口部
から排気されてパネルの端部に当たり、小口から中空部
の内部を通る。
【0016】前記中空部には、パネル両端部にある温度
の低い空気が流れるために徐々に冷却される。約1時間
程度で100℃程度にパネル中央部の温度が下がる。こ
の時点でダンパーを15°開き、外気を取り入れながら
空気を循環する。1時間15分後、パネル中央部の温度
が約90℃になった時点で、ダンパーを30°開いた。
この結果、約90分で中央部の温度がクラックが発生し
ない温度である80℃以下に下がった。なお、この時の
外気温度は約10℃であった。この試験に際しては、4
ケ所の測定点を設定し、各測定点における時間の経過に
伴う温度の変化を測定した。測定点1は、パネル右端部
Aであり、測定点2は、パネル中央部Bであり、測定点
3は、パネル左端部Cであり、測定点4は、吸気ダクト
内Dである。その温度の変化を図3にグラフで示す。
【0017】比較例1 実施例1と同じ条件のパネルを、保温ブースでパネルが
急激に冷却しないように保温しながら、時間の経過に対
する温度の降下を測定した。120〜130℃である温
度は徐々に降下していくが、7時間経過後も中央部及び
外周部はその温度が80℃以下に下がらなかった。この
試験に際しては、3ケ所の測定点を設定し、各測定点に
おける時間の経過に伴う温度の変化を測定した。測定点
1は、パネル右端部Aであり、測定点2は、パネル中央
部Bであり、測定点3は、パネル左端部Cである。その
温度の変化を図4にグラフで示す。
【0018】
【発明の効果】本発明によれば、オートクレーブ養生後
の温度の高いノンアスベスト押出成形セメント板を、中
央部と両端部との温度差があまりないようにして冷却す
ることができるため、冷却後にクラックが発生すること
がなく、良質の押出成形セメント板を製造することがで
きる。さらに、本発明によれば、オートクレーブ養生後
の押出成形セメント板を、短時間で効率良く冷却するこ
とができ、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冷却装置の概要説明図を示す。
【図2】オートクレーブ養生室の扉を開けたところの正
面図を示す。
【図3】本発明の実施例1におけるパネルの各部位にお
ける時間に対する温度変化を表わすグラフを示す。
【図4】本発明の比較例1におけるパネルの各部位にお
ける時間に対する温度変化を表わすグラフを示す。
【符号の説明】
1 冷却装置 2 冷却室 3 押出成形セメント板 4 吸込ダクト 5 開口 6 排気ダクト 7 開口 8 循環ダクト 9 送風機 10 ダンパー 11 仕切板 12 冷却ブース 15 オートクレーブ 16 ACパレット 17 台車 A パネル右端部 B パネル中央部 C パネル左端部 D 吸気ダクト

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中空部を有する押出成形セメント板をオ
    ートクレーブ養生する押出成形セメント板の製造方法に
    おいて、オートクレーブ養生終了後の押出成形セメント
    板について、その中空部を通して空気を循環させること
    によって冷却することを特徴とする押出成形セメント板
    の冷却方法。
  2. 【請求項2】 前記押出成形セメント板の中空部を通す
    空気の循環は、前記中空部の温度が押出成形セメント板
    の外表面の温度に近い温度になるように調整されること
    を特徴とする請求項1記載の押出成形セメント板の冷却
    方法。
  3. 【請求項3】 中空部を有する押出成形セメント板をオ
    ートクレーブ養生する押出成形セメント板の製造装置に
    おいて、オートクレーブ養生終了後の押出成形セメント
    板を収容する冷却室、前記冷却室の一端に前記冷却室内
    の押出成形セメント板の端面に面した吸気ダクトの吸気
    口と、前記冷却室の他端に前記押出成形セメント板の反
    対側の端面に面する排気ダクトの排気口とが設けられ、
    かつ前記吸気ダクトと排気ダクトとを連結する循環ダク
    トが設けられ、前記循環ダクトの途中に送風機及び循環
    するガスの温度を調整できる装置を設けたことを特徴と
    する押出成形セメント板の冷却装置。
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