JP4583640B2 - 押出成形セメント板の冷却方法及び冷却装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の壁材として用いられる押出成形セメント板の製造技術に関し、特に中空部を持つ押出成形板のオートクレーブ養生後の効率的な冷却方法及び冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、セメント、骨材と補強繊維を主原料とする成形材料を押出成形して製造した押出成形セメント板は、成形後、一次養生、オートクレーブ養生、仕上げなどの製造工程を経て製造される。従来その押出成形セメント板の製造においては、補強繊維としては、石綿が用いられていた。しかしながら、最近の石綿の使用の規制により、石綿を含有しないノンアスベストの押出成形セメント板が製造されるようになってきた。
ノンアスベストの押出成形セメント板は、石綿の代わりに補強繊維として石綿以外の無機繊維、合成繊維、パルプなどを配合している。しかしながら、ノンアスベストの押出成形セメント板は、製造時に、特にオートクレーブ養生後にオートクレーブから板材を取り出した時に、クラックが発生し易い。これはオートクレーブ内温度と外気温度との温度差によるものである。
【0003】
このようなノンアスベストの押出成形セメント板をオートクレーブで養生する場合、オートクレーブの効率を考え、鉄製パレットの上に平積みし、できるだけ多くの製品を養生できるようにしている。このため、積み上げられた下の製品には上の製品の重量がかかった状態になっている。このため、製品の形状や配合によっては、オートクレーブ処理終了後に減圧して製品をオートクレーブ内から取り出す時に、製品は130℃近い温度を保っており、特に冬場には外気と製品とで100℃以上の温度差が発生する。
このため、小口・側面の外回りが急激に冷却されるが、中央部はなかなか冷却されないので、製品内外の温度差の影響でクラックが入る。しかし、中空部の温度が80℃まで下がっていれば、外周部が冬場の低い外気温で急激に冷却されても、クラックは全く発生しないことが分かっている。
【0004】
このことから、従来、押出成形セメント板のクラック発生を防止するために下記の方法が取られていた。
クラックを防止するため、オートクレーブ内で徐々に温度を下げていく方法では、クラックが発生しない温度に下げるまで16〜24時間も必要であり、この間オートクレーブの利用ができないため生産性が悪くなる。
他のクラックを防止するための方法として、積み上げた製品に保温材をかぶせる手段を取れば急冷を防ぐことができる。しかし、この方法によるときには、クラックが発生しない温度である80℃まで冷却させるのに、7時間以上の時間が必要であり、また、保温材をかぶせた製品を冷却する場所が多く必要となり、生産性、コストの面で不利である。
【0005】
また別の方法として、製品をオートクレーブに入れるとき、1枚1枚立て掛けて製品間に空間を保つことで他の製品の重量が掛からないようにし、製品1枚ごとの全面から放熱することでクラックの発生を防ぐことができる。しかし、この方法では、オートクレーブに入れるためにパレットに積むことのできる製品の枚数が3〜4割少なくなる。また、全ての断面形状の製品に対応できない。さらに、立て掛け設備が必要なことや、一度に養生できる枚数が減ることから生産性を保つためオートクレーブの増設が必要となる。
本発明は、前記の問題点を解決し、オートクレーブ養生後、ノンアスベスト押出成形セメント板をクラックの発生を防ぎながら効率良く冷却するための方法及び装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、押出成形セメント板の外周部と中央部とが均一に温度が降下すれば、クラックが発生しないことに着目し、下記の手段により前記課題を解決した。
(1)中空部を有する押出成形セメント板をオートクレーブ養生する押出成形セメント板の製造方法において、オートクレーブから取り出したオートクレーブ養生終了後の押出成形セメント板について、その中空部を通して空気を循環させることによって冷却し、前記空気の循環は、前記中空部の温度が押出成形セメント板の外表面の温度に近い温度になるように調整されることを特徴とする押出成形セメント板の冷却方法。
(2)中空部を有する押出成形セメント板をオートクレーブ養生する押出成形セメント板の製造装置において、オートクレーブから取り出したオートクレーブ養生終了後の押出成形セメント板を収容する冷却室、前記冷却室の一端に前記冷却室内の押出成形セメント板の端面に面した吸気ダクトの吸気口と、前記冷却室の他端に前記押出成形セメント板の反対側の端面に面する排気ダクトの排気口とが設けられ、かつ前記吸気ダクトと排気ダクトとを連結する循環ダクトが設けられ、前記循環ダクトの途中に送風機及び循環する空気の温度を調整できる装置を設け、前記空気の循環は、前記中空部の温度が押出成形セメント板の外表面の温度に近い温度になるように調整されることを特徴とする押出成形セメント板の冷却装置。
【0008】
【発明の実施の形態】
押出成形セメント板の製造において、オートクレーブ養生が終了し、減圧後、オートクレーブから取り出した押出成形セメント板(製品)は、鉄製パレットの上に積み重ねられており、取り出した直後では約130℃の温度となっている。製品は取り出した後に放熱してその温度が徐々に低下して行き、冷却される。
しかし、製品の中央部は熱が抜けにくく、特に冬場においては外気で外周部は急激に冷却されるため、製品の両端部と中央部で大きな温度差(100℃以上)を急激に生じて、クラックを発生する。特に、この場合、製品は積み上げられて製品群となっているため、製品群の中央部では熱が抜けにくく、温度が下がりにくい。
【0009】
本発明は、この温度差を無くすために、熱の抜けにくい押出成形セメント板(製品)中央部の熱を一方の小口(製品端面の中空部に連通する開口をいう)から中空部を利用して吸い出し、他方の小口に吹きつけるようにする。これにより、製品の中空部がエアーダクトの役目を果たし、熱気が循環する。このとき中空部には製品両端側の温度の低い空気が循環して流れるため徐々に冷却される。さらに空気循環路に設けるダンパーを開くなどの手段を用いて、循環する空気に途中で数回(2〜3回)外気を導入し、徐々に温度を下げて行く。
【0010】
これにより、製品両端部と中央部の温度が短時間で均等に下がり、中央部を含めた製品の温度が80℃以下になるので、製品が外気にさらされて外周部の温度が急激に下がってもクラックの発生が防止される。なお、前記の「製品両端部と中央部の温度が短時間で均等に下がり」という主旨は、製品中央部の温度が短時間で製品両端部の温度と余り差がつかない程度で下がるという意味であり、両部の温度が同じ割合で下がることをいうものではなく、両部の温度がクラックの発生を招く程度の温度差を生じない範囲で下がることをいうものである。
なお、ダンパーを設ける手段を採用した場合において、ダンパーを開くタイミングは、空気を循環させて中央部の温度が降下し、温度降下がなくなり一定温度を保つようになった時点(約1時間後)で少し開き、さらに温度が降下し、90℃になった時点でさらに開きを大きくするのが効果的である。
【0011】
本発明方法を具体的に行うには、上記した押出成形セメント板の冷却装置を用いることが好ましいが、前記した装置以外のものでも行うことができる。
前記装置の冷却室を構成する容器は、製品を冷却するための冷却箱となり、内部で冷却ゾーンを形成する。このため、この冷却ゾーンの一方から冷却するための空気を吸気する長手方向の吸気ゾーンが形成され、他方には吸気ゾーンから送られてきた空気を冷却室内に排気するための長手方向の排気ゾーンが形成される。そして、容器には吸気ゾーンから送られてきた空気が製品の外側のみを流れて排出されることがないように、その冷却箱を2分する仕切り板を設けることが好ましい。
なお、前記では、冷却室内部の空気を吸気する吸気ゾーンを形成すると述べたが、これは送風機のどちら側からから操作を説明するかによって変わり得るもので、排気ゾーン側を冷却用の空気を送り込む「送風ゾーン」、吸気ゾーン側を内部の空気を排気する「排気ゾーン」ということもできる。
【0012】
本発明方法を実施する装置を図面を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明の冷却装置の概要説明図であり、冷却装置1は、オートクレーブ養生後の押出成形セメント板3を収容して冷却するための冷却室2を主体とし、長手方向に長い冷却室2の一端には、吸込ダクト4の開口5が設けられ、他端には排気ダクト6の開口7が設けられている。吸込ダクト4は循環ダクト8に接続し、循環ダクト8の他端は前記排気ダクト6に接続している。循環ダクト8の途中に送風機9が設けられ、吸込ダクト4から吸い込んだ冷却室2内の空気を排気ダクト6から冷却室内2に送り、押出成形セメント板3を冷却するようになっている。
この空気の循環により、押出成形セメント板3は徐々に冷却されるが、循環される空気の温度が上がってきて、冷却速度が小さくなるので、循環ダクト8の途中にダンパー10を設け、そこから外気を取り入れて循環空気の温度を調整することが好ましく、ダンパー10の開閉角度を調整することにより、外気の取り入れ量を変えて、押出成形セメント板3の冷却速度を加減することができる。図1中の「開1」及び「開2」はダンパー10の開閉角度の違いを示す。
【0013】
そして、この冷却室の構造では、空気が押出成形セメント板3の外側を単に通るだけになり易いので、押出成形セメント板3と冷却室の内壁との間に仕切板11を設ける。仕切板11は、通常ゴム製のものが使用されるが、ゴム製に限らず、吸込側と吸気側を完全に遮断するものであればよい。仕切板11は冷却室2を2等分する作用があり、吸込側と排気側を完全に遮断し、空気の循環が押出成形セメント板3の中空部を通過するようにすることが好ましい。
図2は、オートクレーブ養生室の扉を開けたところを示す正面図であり、オートクレーブ15内には、鉄製のACパレット16の上に押出成形セメント板3を複数枚水平に積み重ねた群が2列積置され、台車17に乗って入っている。通常、オートクレーブ15内で養生を終了した押出成形セメント板3は、台車17ごと引き出されて、本発明の冷却装置に入れて冷却を行うのが好適である。
【0014】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例によりなんら限定されるものではない。
【0015】
実施例1
オートクレーブ内で養生を終了し、減圧後、オートクレーブから取り出した押出成形セメント板を、図1に示す本発明の冷却装置を用いて冷却した。
用いた押出成形セメント板は、厚さ60mm、巾600mm、長さ4000mmの中空部を有するパネルであって、鉄製のACパレットの上に1列10枚積み重ねられ、図2に示すように2列並べたものを、オートクレーブから取り出し、外気に触れないように冷却装置の冷却室内の冷却ブース12に入れた。冷却ブース12に入れた後、直ちに送風機で空気の循環を開始した。
循環の開始直後は、パネル中央部は120〜130℃の温度を保っているが、送風機で空気を循環することにより、イ)右側から吸い込まれた65℃前後の空気が循環ダクトを通り、左側の開口部から排気されてパネルの端部に当たり、小口から中空部の内部を通る。
【0016】
前記中空部には、パネル両端部にある温度の低い空気が流れるために徐々に冷却される。約1時間程度で100℃程度にパネル中央部の温度が下がる。この時点でダンパーを15°開き、外気を取り入れながら空気を循環する。1時間15分後、パネル中央部の温度が約90℃になった時点で、ダンパーを30°開いた。この結果、約90分で中央部の温度がクラックが発生しない温度である80℃以下に下がった。なお、この時の外気温度は約10℃であった。
この試験に際しては、4ケ所の測定点を設定し、各測定点における時間の経過に伴う温度の変化を測定した。測定点1は、パネル右端部Aであり、測定点2は、パネル中央部Bであり、測定点3は、パネル左端部Cであり、測定点4は、吸気ダクト内Dである。
その温度の変化を図3にグラフで示す。
【0017】
比較例1
実施例1と同じ条件のパネルを、保温ブースでパネルが急激に冷却しないように保温しながら、時間の経過に対する温度の降下を測定した。120〜130℃である温度は徐々に降下していくが、7時間経過後も中央部及び外周部はその温度が80℃以下に下がらなかった。
この試験に際しては、3ケ所の測定点を設定し、各測定点における時間の経過に伴う温度の変化を測定した。測定点1は、パネル右端部Aであり、測定点2は、パネル中央部Bであり、測定点3は、パネル左端部Cである。
その温度の変化を図4にグラフで示す。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、オートクレーブ養生後の温度の高いノンアスベスト押出成形セメント板を、中央部と両端部との温度差があまりないようにして冷却することができるため、冷却後にクラックが発生することがなく、良質の押出成形セメント板を製造することができる。
さらに、本発明によれば、オートクレーブ養生後の押出成形セメント板を、短時間で効率良く冷却することができ、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冷却装置の概要説明図を示す。
【図2】オートクレーブ養生室の扉を開けたところの正面図を示す。
【図3】本発明の実施例1におけるパネルの各部位における時間に対する温度変化を表わすグラフを示す。
【図4】本発明の比較例1におけるパネルの各部位における時間に対する温度変化を表わすグラフを示す。
【符号の説明】
1 冷却装置
2 冷却室
3 押出成形セメント板
4 吸込ダクト
5 開口
6 排気ダクト
7 開口
8 循環ダクト
9 送風機
10 ダンパー
11 仕切板
12 冷却ブース
15 オートクレーブ
16 ACパレット
17 台車
A パネル右端部
B パネル中央部
C パネル左端部
D 吸気ダクト

Claims (2)

  1. 中空部を有する押出成形セメント板をオートクレーブ養生する押出成形セメント板の製造方法において、オートクレーブから取り出したオートクレーブ養生終了後の押出成形セメント板について、その中空部を通して空気を循環させることによって冷却し、前記空気の循環は、前記中空部の温度が押出成形セメント板の外表面の温度に近い温度になるように調整されることを特徴とする押出成形セメント板の冷却方法。
  2. 中空部を有する押出成形セメント板をオートクレーブ養生する押出成形セメント板の製造装置において、オートクレーブから取り出したオートクレーブ養生終了後の押出成形セメント板を収容する冷却室、前記冷却室の一端に前記冷却室内の押出成形セメント板の端面に面した吸気ダクトの吸気口と、前記冷却室の他端に前記押出成形セメント板の反対側の端面に面する排気ダクトの排気口とが設けられ、かつ前記吸気ダクトと排気ダクトとを連結する循環ダクトが設けられ、前記循環ダクトの途中に送風機及び循環する空気の温度を調整できる装置を設け、前記空気の循環は、前記中空部の温度が押出成形セメント板の外表面の温度に近い温度になるように調整されることを特徴とする押出成形セメント板の冷却装置。
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