JP2002228833A - 光学フィルタおよびその光学フィルタの製造方法 - Google Patents

光学フィルタおよびその光学フィルタの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基板上に成膜される膜の光学膜厚を正確に制
御し、正確な光学膜厚の光フィルタを製造する。 【解決手段】 基板3上に膜4を成膜しながら予め定め
た基準時刻を基準とした成膜時間を時刻tとし、基板3
上に成膜される膜にモニタ光を照射したときのエネルギ
ー透過率とエネルギー反射率の少なくとも一方の光学特
性を、該光学特性の理論式に基づいて理論定数a(k
は0以上の整数)を有する時刻tの関数f(t)により
表現する。膜4の成膜中に随時、時刻tにおいて膜4に
モニタ光を照射して測定される前記光学特性の実測値と
前記関数f(t)から求められる光学特性理論値との差
が最小になるように理論定数aを補正して適正定数a
’を求め、成膜される膜4の光学膜厚が設定膜厚とな
る設定膜厚到達時刻を適正定数a’に基づいて予測
し、前記設定膜厚到達時刻に成膜を停止して光学フィル
タとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光通信等に用いら
れる光学フィルタおよびその光学フィルタの製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えばフィルタに入射される光のうち、
予め定められた設定波長帯の光のみを通過する波長選択
透過フィルタ(バンドパスフィルタ)等の光学フィルタ
が光通信用として広く用いられている。
【0003】この種の光学フィルタを作製する方法とし
て、例えば基板上に真空蒸着法やスパッタリング法等に
よりフィルタ膜を成膜する成膜法が用いられている。
【0004】図2には成膜装置としての真空蒸着装置の
一例が概略図により示されている。同図において、蒸着
装置30内には、真空蒸着法の成膜エリア1内の基板ホ
ルダ2上に、成膜を行なう基板3が設置されており、基
板ホルダ2の下部側に蒸発源5a,5bが配置されてい
る。なお、同図において、成膜エリア1内は断面図によ
り示されている。
【0005】また、蒸着装置30には、図示されていな
い操作部が設けられており、この操作部の操作によって
装置を駆動させると、蒸発源5a,5bから蒸発した物
質が基板3上に付着し、膜(薄膜)4が成膜される構成
と成している。
【0006】蒸着装置30の外部には、モニタ光を発す
る光源7と、該光源7から発せられる光を蒸着装置30
へと導くための光ファイバ8と、受光器12、コンピュ
ータ14等が設けられている。
【0007】光源7からのモニタ光は、前記光ファイバ
8を介し、蒸着装置30の下部側の窓9から入射される
形態となっており、窓9から入射されたモニタ光は、同
図のAに示すように、成膜エリア1内を直進して膜4お
よび基板3に到達し、その一部が蒸着装置30の上方の
光ファイバ11を通って受光器12に到達する構成と成
している。
【0008】受光器12に到達した光の光量に対応した
信号が信号ケーブル13を通って前記コンピュータ14
に送信され、コンピュータ14の制御によって成膜され
る膜厚の制御が行なわれる。
【0009】すなわち、コンピュータ14は、受光器1
2に到達した光に基づいて成膜中の膜4にモニタ光を照
射したときのエネルギー透過率とエネルギー反射率のい
ずれか一方の光学特性の変化を測定する。そして、この
モニタ光のエネルギー透過率又はエネルギー反射率の変
化に基づき、成膜膜厚が目標とする膜厚に達したと判断
された以降に、成膜を停止するための信号を、信号ケー
ブル15を通って蒸着装置30の駆動部(図示せず)に
送る。
【0010】そうすると、蒸発源シャッタ6aまたは蒸
発源シャッタ6bが対応する蒸発源5a,5bの真上を
それぞれ覆い、成膜が停止される。
【0011】また、蒸発源5aから第N層(Nは正の整
数)成膜用の物質を蒸発させて第N層の成膜を行ない、
その後、続いて蒸発源5bから第N層成膜用の物質とは
異なる第(N−1)層成膜用の物質を蒸発させて第(N
−1)層の成膜を行ない、その後、蒸発源5aから第
(N−1)層成膜用の物質とは異なる第(N−2)層成
膜用の物質を蒸発させて第(N−2)層の成膜を行なう
といったように、上記作業を繰り返すことにより、互い
に異なる膜物質の薄膜を多層積層した光学フィルタを製
造することができる。
【0012】図3は、上記のようにして積層された多層
膜の一例を示す模式図である。同図において、屈折率n
の基板3上に、合計L層の多層膜を積層している。基
板3と反対側から順に、第1層、第2層、・・・第L層
としており、第1層の屈折率はn、第2層の屈折率は
、第j層の屈折率はn、第L層の屈折率はn
している。また、第1層の物理膜厚はd、第2層の物
理膜厚はd、第j層の物理膜厚はd、第L層の物理
膜厚はdとしており、光学膜厚は屈折率と物理膜厚の
積であるから、例えばj層においてnとなる。
【0013】ここで、光学膜厚とモニタ光のエネルギー
透過率との関係について述べ、上記コンピュータ14に
よる成膜停止判断方法について述べる。図3に示したよ
うな全L層の多層膜について考えた場合、光学膜厚とモ
ニタ光のエネルギー透過率との関係は、(数1)に示す
多層膜のエネルギー透過率により与えられる。
【0014】
【数1】
【0015】ここで、(数1)におけるパラメータm
11、m12、m21、m22は、(数2)で与えられ
る全層での特性行列Mの各要素であり、各層(第1層か
ら第L層)の特性行列M(j=1,2,3,・・・,
L)の総積によって与えられる。第j層の特性行列M
は(数3)で与えられ、(数3)に示すδは、(数
4)により表わされるものである。なお、上記の如く、
は第j層の屈折率、d は第j層の物理膜厚であ
り、λはモニタ光の波長である。また、(数2)、(数
3)において、iは虚数である。
【0016】
【数2】
【0017】
【数3】
【0018】
【数4】
【0019】そこで、(数4)に、第j層における光学
膜厚の設計値をnに代入し、(数1)〜(数4)
を用いれば、第j層の成膜におけるモニタ光に対する最
終的なエネルギー透過率の理論値が求まるので、j=1
〜Lとしてそれぞれの層についてモニタ光に対する最終
的なエネルギー透過率の理論値を求めることができる。
【0020】周知の如く、バンドパスフィルタ等の光通
信用に用いられる光学フィルタを製造するために成膜さ
れる多層膜のそれぞれの膜4の光学膜厚は、中心波長と
呼ばれる膜厚設計用に定めた基準波長に予め定めた設定
倍数を乗じた値に設計されるものであり、多くの光学フ
ィルタにおいては、1つの膜4の光学膜厚を中心波長の
約0.25(1/4)の整数倍とすることが多い。
【0021】したがって、前記モニタ光として前記中心
波長と等しい波長の光を用いれば、(数4)のδはπ
/2の整数倍となるため、各層の成膜はエネルギー透過
率変化曲線(光学膜厚とエネルギー透過率の関係式)の
極値で停止すればよいことになる。
【0022】図4は、基板3上に全3層の多層膜を成膜
した場合の光学膜厚とエネルギー透過率の関係を表わし
たグラフであり、n=n=n=λ/
4とすると、各層は曲線の極値で成膜を停止すればよい
ことが分かる。
【0023】そこで、従来は、エネルギー透過率の変化
の方向(増加又は減少)が逆になった時点でエネルギー
透過率の極値と判断したり、該極値の近傍で得られた光
学膜厚(あるいはそれとほぼ比例する成膜時間)とエネ
ルギー透過率との関係をフィッティング等により二次曲
線や正弦波曲線等の単純な式に当てはめて、例えば図4
の特性曲線の極値に達したことを判断し、各層の膜4の
成膜停止判断を行なっていた。
【0024】また、エネルギー反射率の変化に基づいて
各層の成膜停止判断を行なうときにも、上記エネルギー
透過率の変化に基づいて各層の成膜停止判断を行なうと
きと同様の判断により、各層の成膜停止判断を行なって
いた。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ように、エネルギー透過率やエネルギー反射率の変化の
みから直接光量変化の極値を求めて成膜停止判断を行な
う方法では、この極値を判断できるのが必ず極値を越え
た後であり、さらに、その判断にはある程度の時間を必
要とするため、光学膜厚の誤差が大きくなってしまうと
いった問題があった。
【0026】すなわち、コンピュータ等を用いて極値を
判断する場合、ノイズ等による微小な揺らぎを極値と誤
判断することを防止するために、エネルギー透過率ある
いはエネルギー反射率が極値からある程度反対側に変化
して初めて極値と判定するようにするのが一般的であ
り、極値の判断は、極値を越えて少し時間が経った後と
なる。また、この判断の後に、成膜を停止させる信号を
成膜装置に伝えて実際に成膜を停止するまでにもある程
度の時間を必要とするので、光学膜厚の誤差が大きくな
るのを防ぐことができなかった。
【0027】一方、エネルギー透過率あるいはエネルギ
ー反射率の極値に達したことをフィッティングなどによ
り判断する方法を適用する場合、実際のエネルギー透過
率あるいはエネルギー反射率の変化が二次曲線や正弦波
曲線等の単純な式とほぼ一致することが重要となるが、
そのように式と変化の状態がほぼ一致するのは、極値付
近で微小範囲のデータを用いた場合のみである。
【0028】そして、実際のエネルギー透過率あるいは
エネルギー反射率は滑らかな曲線を描くことが稀であ
り、極めて狭い範囲においてあたかも極値のように見え
る変化が起こることも少なくない。そのため、間違った
点を極値と判断してしまうおそれがあり、その場合、大
きな膜厚誤差を生じてしまう。
【0029】本発明は、上記課題を解決するために成さ
れたものであり、その目的は、作製する膜の光学膜厚を
より正確に制御することができる光学フィルタの成膜方
法を提供することと、正確な光学膜厚を有する光学フィ
ルタを提供することにある。
【0030】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は次のような構成をもって課題を解決するた
めの手段としている。すなわち、第1の発明の光学フィ
ルタの製造方法は、基板上に膜を成膜しながら予め定め
た基準時刻を基準とした成膜時間を時刻tとし、前記基
板上に成膜される膜にモニタ光を照射したときのエネル
ギー透過率とエネルギー反射率の少なくとも一方の光学
特性を、該光学特性の理論式に基づいて理論定数a
(kは0以上の整数)を有する時刻tの関数f(t)
により表現し、膜の成膜中に随時、時刻tにおいて前記
膜にモニタ光を照射して測定される前記光学特性の実測
値と前記関数f(t)から求められる光学特性理論値と
の差が最小になるように理論定数aを補正して適正定
数a’を求め、成膜される膜の光学膜厚が設定膜厚と
なる設定膜厚到達時刻を前記適正定数a’に基づいて
予測し、前記設定膜厚到達時刻に成膜を停止する構成を
もって課題を解決する手段としている。
【0031】また、第2の発明は、上記第1の発明の構
成に加え、膜の成膜中に随時求められる適正定数a
の変動量が予め定められた許容範囲内になってから設定
膜厚到達時刻を予測し、その予測した設定膜厚到達時刻
に成膜を停止する構成をもって課題を解決する手段とし
ている。
【0032】さらに、第3の発明は、上記第1又は第2
の発明の構成に加え、前記関数f(t)は光学特性測定
装置に起因する補正定数項を有する関数とした構成をも
って課題を解決する手段としている。
【0033】さらに、第4の発明の光学フィルタは、上
記第1又は第2又は第3の発明の光学フィルタの製造方
法を用いて製造された構成をもって課題を解決する手段
としている。
【0034】上記構成の本発明においては、予め定めた
基準時刻を基準とした成膜時間を測定して時刻tとす
る。また、モニタ光を照射したときのエネルギー透過率
とエネルギー反射率の少なくとも一方の光学特性を時刻
tの関数f(t)により表現し、この関数f(t)が有
する理論定数aを、関数f(t)と光学特性実測値に
基づいて補正して適正定数a’を求め、該適正定数a
’に基づいて膜の光学膜厚が設定膜厚となる設定膜厚
到達時刻を予測する。
【0035】上記設定膜厚到達時刻の予測は、上記のよ
うに光学特性の理論式に基づいて得られる関数f(t)
の適正定数a’に基づいて行われるので、非常に正確
に行なうことができ、本発明では、この設定膜厚到達時
刻に成膜を停止するので、従来例のように、成膜停止が
遅れたり、成膜停止のタイミングを誤ったりすることは
なく、設定膜厚の膜を正確に成膜することができ、正確
な光学膜厚の光学フィルタを製造することができる。
【0036】また、本発明の光学フィルタは、上記本発
明の光学フィルタの製造方法を用いて製造されているの
で、光学膜厚が予め設定した光学膜厚となるように正確
に制御された設計通りの光学膜厚を有する光学フィルタ
となる。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。なお、本実施形態例の説明におい
て、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重
複説明は省略する。
【0038】本発明の光学フィルタの実施形態例は、図
1に示すように、製品用基板3上に96層の膜(薄膜)
4を成膜してなるバンドパスフィルタ(BPF)であ
り、例えば図2に示したような真空蒸着装置を用いて製
造されている。
【0039】上記96層の膜4の構成(設計)は、Ta
を中心波長(ここでは1550nm)の4分の1
の光学膜厚で成膜したH層と、SiOを中心波長の4
分の1の光学膜厚で成膜したL層と、SiOを中心波
長の4分の6の光学膜厚で成膜した6L層を、基板3上
に以下のように積層して形成するものとした。
【0040】すなわち、媒質|L・(HL)・H・6
L・H・(LH)・L・(HL) ・H・6L・H・
(LH)・L・(HL)・H・6L・H・(LH)
|基板とした。
【0041】ただし、(HL)はH層とL層を交互に
7層ずつ(計14層)積層することを意味するものと
し、(LH)はL層とH層を交互に7層ずつ(計14
層)積層することを意味するものとする。
【0042】また、本実施形態例において、前記基板3
は膜4を蒸着する面の裏面に反射防止加工が施されてい
る。
【0043】本実施形態例の光学フィルタは、以下に示
す特徴的な光学フィルタの製造方法を用いて製造された
ものであり、以下、本実施形態例の光学フィルタの製造
方法について説明する。なお、本実施形態例の光学フィ
ルタの製造に関し、成膜時に基板3に照射する光(モニ
タ光)は前記中心波長と等しい波長の光を用いて行なっ
た。
【0044】まず、本実施形態例の光学フィルタの製造
に際し、基板3上に膜を成膜しながら予め定めた基準時
刻を基準とした成膜時間を時刻tとする。なお、本実施
形態例においては、成膜する各層の膜4の成膜開始時を
前記基準時刻(t=0)とした。
【0045】そして、基板3上に成膜される膜4にモニ
タ光を照射したときの光学特性として、エネルギー透過
率Tを、該エネルギー透過率Tの理論式に基づいて理論
定数a(kは0以上の整数)を有する時刻tの関数f
(t)により表現することにした。
【0046】以下、上記関数f(t)を求める手順につ
いて説明する。まず、図1に示すように、基板3の反対
側から各層の膜4に番号を付す。ここで、第j層の膜4
を成膜している場合に、既に成膜されている第96層の
膜4から第(j+1)層の膜4の特性行列をMとする
と、Mは、(数5)のように1つにまとめて表わすこ
とができる。
【0047】
【数5】
【0048】なお、(数5)におけるb11、i
12、ib21、b22は、第96層から第(j+
1)層の各膜4の特性行列の積により求まる数であり、
(数2)〜(数4)を用いて求められる。
【0049】また、成膜中の層(ここではj層)の膜4
の特性行列は(数3)で表わされるので、これらを合わ
せた特性行列は(数6)のように表わすことができる。
【0050】
【数6】
【0051】また、前記の如く、多層膜のエネルギー透
過率は、特性行列の各要素を用いて(数1)に示した理
論式により表わされるので、第j層の膜4を成膜してい
る場合のエネルギー透過率Tは、(数7)で表わすこと
ができる。
【0052】
【数7】
【0053】ただし、(数7)において、A,B,Cは
それぞれ、(数8)〜(数10)で表わされるように、
定数を置き換えたものである。
【0054】
【数8】
【0055】
【数9】
【0056】
【数10】
【0057】さらに、(数7)は(数12)および(数
13)を満たす定数βを用いて、(数11)のように表
わすことができる。
【0058】
【数11】
【0059】
【数12】
【0060】
【数13】
【0061】また、ある一つの層の膜4を成膜している
間は、(数4)のnおよびλは常に一定と考えること
ができるため、(数4)の位相膜厚δは物理膜厚d
に比例すると考えることができる。さらに、薄膜の成膜
では、一つの層における成膜中の成膜レート(単位時間
当たりの物理膜厚の増加量)がほぼ一定になるようにコ
ントロールするのが一般的であるため、物理膜厚d
成膜時間に比例することになる。
【0062】以上のことから、(数11)は、(数1
4)のように、1つ以上の理論定数a を有する時刻t
とエネルギー透過率Tとの関係式として表わすことがで
きる。なお、(数14)において、理論定数aは4つ
であり、kは0以上の整数(0,1,2,3)である。
【0063】
【数14】
【0064】また、本実施形態例では、例えば受光器1
2の暗電流等に記因する検出信号のオフセットを考慮し
て、(数14)の右辺に、光学特性測定装置としての受
光器12に起因する補正定数aの項を加えた式(数1
5)を、前記理論定数a(k=0,1,2,3)を有
する時刻tの関数f(t)とした。
【0065】
【数15】
【0066】なお、補正定数aは、例えば実際の成膜
を行なう以前に受光器12を用いて前記光学特性の測定
を行ないながら様々な膜の成膜を行ない、予め求められ
るものである。
【0067】本実施形態例では、以上のようにして関数
f(t)を決定し、前記基準時刻から現在時刻までの間
の有限時間範囲内の各時刻tにおける膜4にモニタ光を
照射して測定されるエネルギー透過率の実測値と、前記
関数f(t)から求められる光学特性理論値(エネルギ
ー透過率理論値)との差が最小になるように、非線形フ
ィッティングにより理論定数aを補正して適正定数a
’を求めた。
【0068】そして、成膜されるj層の膜4の光学膜厚
が設定膜厚となる設定膜厚到達時刻を前記適正定数
’(k=0,1,2,3)に基づいて予測し、前記
設定膜厚到達時刻に成膜を停止することにした。
【0069】なお、設定膜厚到達時刻の予測は以下のよ
うにして行なう。すなわち、目的とする光学膜厚n
から目的とする位相膜厚(2δ+β)の値を予め求
めておく。そして、ある時刻において、それまでの各時
刻tにおけるエネルギー透過率Tの実測値と透過率関数
f(t)の誤差が最小になるような適正定数a’(k
=0,1,2,3)を求め、この適正定数を用いて、最
適な(at+a)と(2δ+β)の値が等しくな
る時刻を設定膜厚到達時刻tとしている。
【0070】すなわち、t={(2δ+β)−
’}/a’となるため、この式から膜厚到達時刻
の予測を行なう。
【0071】なお、本実施形態例の光学フィルタの製造
に関し、前記の如く、成膜時に基板3に照射する光(モ
ニタ光)は前記中心波長と等しい波長の光を用いて行な
っているので、各層の膜4の成膜は、エネルギー透過率
変化曲線(光学膜厚とエネルギー透過率の関係式)の極
値で停止すればよいことになる。そして、エネルギー透
過率変化曲線が極値に近づくと、前記適正定数a’が
殆ど変動しなくなることが分かった。
【0072】そこで、本実施形態例では、j層の膜4の
成膜中に随時求められる上記適正定数a’の変動量が
予め定められた許容範囲内になってから(例えば適正定
数a ’が殆ど変動しない一定の値となってから)予め
定めた設定時間(例えば2〜3秒)が経過してから設定
膜厚到達時刻tを予測し、その予測した設定膜厚到達
時刻tに成膜を停止する構成とした。
【0073】そして、図2のコンピュータ14が、停止
信号を成膜装置の駆動部に送ってから駆動部による成膜
停止が行われるまでの遅れ時間分だけ早いタイミング
で、停止信号を送信するようにし、前記設定膜厚到達時
刻に正確に成膜停止が行われるようにした。
【0074】本実施形態例の光学フィルタは、上記光学
フィルタの製造方法を用いて製造されたものであり、本
実施形態例の光学フィルタは、挿入損失が0.26dB
のバンドパスフィルタとなった。
【0075】本実施形態例の光学フィルタは、上記のよ
うに、各膜4の成膜を前記設定膜厚到達時刻に停止して
製造したものであり、設定膜厚到達時刻の予測は、上記
のように光学特性の理論式に基づいて得られる関数f
(t)の適正定数a’に基づいて行われるので、正確
に予測した設定膜厚到達時刻に成膜を停止することによ
り、設計通りの光学膜厚を有する光学フィルタとするこ
とができる。
【0076】特に、本実施形態例においては、コンピュ
ータ14が、停止信号を成膜装置の駆動部に送ってから
駆動部による成膜停止が行われるまでの遅れ時間分だけ
早いタイミングで、停止信号を送信するようにすること
で、停止信号を送信してから成膜停止までの間の信号処
理に伴う遅れもなく、前記のように設計通りの光学膜厚
を有する光学フィルタとすることができる。
【0077】さらに、本実施形態例では、例えば受光器
12の暗電流等に記因する検出信号のオフセットを考慮
して、(数14)の右辺に定数aを加えた式(数1
5)を関数f(t)として各層において最終的に成膜を
停止する時刻を求めたために、上記オフセットの影響を
受けることもなく、より一層正確に各膜4の光学膜厚が
制御された光学フィルタとすることができる。
【0078】なお、本発明は上記実施形態例に限定され
ることはなく、様々な実施の態様を採り得る。例えば上
記実施形態例では、前記基準時刻から予測停止時刻まで
の間の有限の時間範囲におけるエネルギー透過率の時系
列データを求め、前記設定膜厚到達時刻を前記適正定数
’(k=0,1,2,3)に基づいて予測し、前記
設定膜厚到達時刻に成膜を停止することにしたが、前記
時系列データの時間範囲は特に限定されるものではなく
適宜設定されるものである。
【0079】例えば、前記時系列データは、成膜レート
が不安定な成膜開始時刻(基準時刻)直後のデータを除
いた有限時間範囲について求めてもよい。
【0080】また、上記実施形態例では、光学特性とし
てのエネルギー透過率を関数f(t)により表現し、こ
の関数f(t)の理論定数aを補正し、適正定数
’を求めたが、光学特性としてのエネルギー反射率
を関数f(t)により表現し、同様に、その適正定数a
’を求めるようにしてもよい。なお、エネルギー反射
率Rは、エネルギー透過率をTとしたときに、R=1−
Tで表わされるため、エネルギー透過率Tの理論式から
エネルギー透過率の関数f(t)を求めた手法を応用し
て、エネルギー反射率の関数f(t)を求めることがで
きる。
【0081】さらに、上記実施形態例は、エネルギー透
過率の極値で各膜4の成膜を停止する構成としたが、各
膜4の成膜停止基準は特に限定されるものではなく、設
計光学膜厚とエネルギー透過率やエネルギー反射率との
関係に基づいて適宜設定されるものである。そして、こ
の関係に基づき、関数f(t)の適正定数a’に基づ
いて予測する設定膜厚到達時刻の予測手法も適宜設定さ
れるものである。
【0082】
【発明の効果】本発明の光学フィルタの製造方法によれ
ば、基板上の膜の光学特性の理論式に基づいて得られる
関数f(t)の適正定数a’に基づいて、成膜される
膜の光学膜厚が設定膜厚となる設定膜厚到達時刻を予測
し、この時刻に成膜を停止するので、成膜停止が遅れた
り、成膜停止のタイミングを誤ったりすることはなく、
設定膜厚の膜を正確に成膜することができ、正確な光学
膜厚の光学フィルタを製造することができる。
【0083】また、あらゆる光学膜厚の膜の成膜におい
て、適正係数a’の変動量が許容範囲内になってから
設定膜厚到達時刻を予測し、その予測した設定膜厚到達
時刻で成膜を停止するとよく、このようにすることで、
光学膜厚を有する膜を正確に成膜することができる。
【0084】さらに、本発明の光学フィルタの製造方法
において、関数f(t)は光学特性測定装置に起因する
補正定数項を有する関数とした構成によれば、光学特性
測定装置のオフセット等による誤差の影響を受けること
なく、より一層正確に設定膜厚の膜を成膜することがで
きる。
【0085】さらに、本発明の光学フィルタによれば、
上記のような光学フィルタの製造方法を用いてい製造さ
れているので、基板上に成膜される膜の光学膜厚がほぼ
設計通りに正確に形成された、非常に高品質の光学フィ
ルタとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光学フィルタの一実施形態例を屈
折率nの媒質中に配置した状態を模式的に示す断面説
明図である。
【図2】光学フィルタの製造装置の一例を模式的に示す
構成図である。
【図3】屈折率nの媒質中で、屈折率nの基板上に
光学膜厚nの膜をL層成膜した状態を示す断面説
明図である。
【図4】基板上に3層の膜を成膜していく際の光学膜厚
とエネルギー透過率との関係例を示すグラフである。
【符号の説明】 1 成膜エリア 2 基板ホルダ 3 基板 4 薄膜 5a,5b 蒸発源 6a,6b 蒸発源シャッタ 7 光源 12 受光器 14 コンピュータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 水野 一庸 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古 河電気工業株式会社内 Fターム(参考) 2H048 GA07 GA12 GA35 GA51 GA60 GA62 2K009 CC03 CC42 DD03 EE00 4K029 BC07 BD00 CA01 CA05 EA01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に膜を成膜しながら予め定めた基
    準時刻を基準とした成膜時間を時刻tとし、前記基板上
    に成膜される膜にモニタ光を照射したときのエネルギー
    透過率とエネルギー反射率の少なくとも一方の光学特性
    を、該光学特性の理論式に基づいて理論定数a(kは
    0以上の整数)を有する時刻tの関数f(t)により表
    現し、膜の成膜中に随時、時刻tにおいて前記膜にモニ
    タ光を照射して測定される前記光学特性の実測値と前記
    関数f(t)から求められる光学特性理論値との差が最
    小になるように理論定数aを補正して適正定数a
    を求め、成膜される膜の光学膜厚が設定膜厚となる設定
    膜厚到達時刻を前記適正定数a’に基づいて予測し、
    前記設定膜厚到達時刻に成膜を停止することを特徴とす
    る光学フィルタの製造方法。
  2. 【請求項2】 膜の成膜中に随時求められる適正定数a
    ’の変動量が予め定められた許容範囲内になってから
    設定膜厚到達時刻を予測し、その予測した設定膜厚到達
    時刻に成膜を停止することを特徴とする請求項1記載の
    光学フィルタの製造方法。
  3. 【請求項3】 関数f(t)は光学特性測定装置に起因
    する補正定数項を有する関数としたことを特徴とする請
    求項1又は請求項2記載の光学フィルタの製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1又は請求項2又は請求項3記載
    の光学フィルタの製造方法を用いて製造されたことを特
    徴とする光学フィルタ。
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