JP4043836B2 - 多層膜光学フィルタの製造方法およびシステム、ならびに多層膜光学フィルタ - Google Patents
多層膜光学フィルタの製造方法およびシステム、ならびに多層膜光学フィルタ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の異なる波長の光信号を多重化して伝送するWDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)通信等の光通信に利用される多層膜光学フィルタの製造方法およびシステム、ならびに多層膜光学フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
ブロードバンド時代の到来により、データ伝送の高速化および大容量化が求められている現在、上記WDM通信等の光通信に大きな期待が寄せられている。
【0003】
光通信用として、上記多重化光信号から所定の波長を選択して透過させる帯域透過フィルタ(バンドパスフィルタ)が広く用いられている。
【0004】
このバンドパスフィルタとして、屈折率の高い物質および低い物質を交互に積層して成る多層膜構造の多層膜光学フィルタ(以下、単に多層膜フィルタとも記載する)が知られている。この多層膜フィルタによれば、各層の膜厚を好適に設計することにより、設計目標(ターゲット)の波長透過特性(所望の波長帯域内の波長毎の光透過特性)を得ることが可能になる。
【0005】
この多層膜フィルタを製造する方法として、例えば基板上に真空蒸着法やスパッタリング法等によりフィルタ膜(光学膜)を成膜する成膜法が知られている。
【0006】
すなわち、屈折率の高い物質および低い物質を基板上に交互に付着させていくことにより、屈折率の相異なる膜物質の光学膜が交互に積層された多層膜フィルタを製造することができる。
【0007】
また、成膜処理と並行して、成膜時の光学膜の膜厚を常時測定(モニタ)し、このモニタ結果に応じて成膜作業の実行/(または)停止制御を行うことにより、各光学膜の膜厚を、設計目標の波長透過特性に対応する膜厚に設定している。
【0008】
なお、本明細書において、“多層”とは、複数層を表す意味として用いている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した膜厚制御を用いて実際に成膜した結果、光学膜の膜厚に対して、膜物質毎にある一定量の制御誤差(膜厚誤差)が生じる場合が多く見られ、設計目標に略一致した波長透過特性を得ることが困難であった。
【0010】
また、上記制御誤差に加えて、成膜時と成膜後の温度差による膜厚変動量が膜物質によって異なる場合があり、その膜厚変動量の差異により、設計目標に略一致した波長透過特性を得ることをさらに困難にさせていた。
【0011】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、設計目標に略一致した波長透過特性を得ることを可能にした多層膜光学フィルタの製造方法およびシステム、ならびに上記波長透過特性を有する多層膜光学フィルタを提供することをその目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様によれば、屈折率の異なる複数の膜物質から成る複数の光学膜層から構成された多層膜光学フィルタの製造方法であって、予め設計された各光学膜層の光学膜厚に基づいて前記複数の膜物質を基板に成膜して多層膜光学フィルタを試作するステップと、試作した多層膜光学フィルタの透過率を測定することにより波長の関数で表現した第1の透過率データを取得するステップと、前記各光学膜層の設計光学膜厚に対して膜物質毎にパラメータを掛けた値を各光学膜層の光学膜厚として表した多層膜構造から求められる理論的な透過率を波長の関数で表現した第2の透過率データを算出するステップと、前記第1の透過率データと前記第2の透過率データとを比較し、その比較結果に応じて前記光学膜厚の層毎の修正値を求めるステップと、求めた光学膜厚の層毎の修正値を用いて前記多層膜構造を表し、表した多層膜構造に従って前記複数の膜物質を基板に成膜して多層膜フィルタを製造するステップと、を備えている。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、屈折率の異なる複数の膜物質から成る複数の光学膜層から構成された多層膜光学フィルタの製造装置であって、屈折率の異なる複数の膜物質から成る複数の光学膜層から構成された多層膜光学フィルタの製造装置であって、予め設計された各光学膜層の光学膜厚に基づいて前記複数の膜物質を基板に成膜して多層膜光学フィルタを試作する手段と、試作した多層膜光学フィルタの透過率を測定することにより波長の関数で表現した第1の透過率データを取得する手段と、前記各光学膜層の設計光学膜厚に対して膜物質毎にパラメータを掛けた値を各光学膜層の光学膜厚として表した多層膜構造から求められる理論的な透過率を波長の関数で表現した第2の透過率データを算出する手段と、前記第1の透過率データと前記第2の透過率データとを比較し、その比較結果に応じて前記光学膜厚の層毎の修正値を求める手段と、求めた光学膜厚の層毎の修正値を用いて前記多層膜構造を表し、表した多層膜構造に従って前記複数の膜物質を基板に成膜して多層膜フィルタを製造する手段と、を備えている。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、本発明に係る製造方法を用いて製造したことを特徴とする多層膜光学フィルタである。
なお、特許請求の範囲の各請求項に記載するように、本発明の上記およびその他の態様が可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態に係わる多層膜フィルタ1を示す図である。なお、本実施形態においては、多層膜フィルタ1として、中心波長がλ0(例えば1556.3nm)の所定の波長帯域{λ1(例えば、1556.1nm)〜λn(例えば、1556.5nm)]において所定の透過波長特性(透過率−0.4dB以上)を得るための多層膜フィルタ(狭帯域フィルタ)について説明する。
【0016】
図1に示すように、多層膜フィルタ1は、屈折率nsを有する例えばガラス製の基板(光学基板)2と、この基板2に例えば後述する蒸着等の方法により成膜・積層された複数(例えば164層)の光学膜層3(第1層3a1〜第L層3aL)とを備えている。
【0017】
基板2は、蒸着される面(積層側の面)の裏面が反射防止加工(Anti-Reflection)加工されている。
【0018】
複数の光学膜層3a1〜3aLの内、媒質(大気)側から偶数層(基板2側から奇数層)の光学膜層3a1、3a2、…、3a2K(L=2K)は、膜物質である例えば五酸化タンタル(Ta2O5)から成る層であり、以下、H層とも呼ぶ。また、複数の光学膜層3a1〜3aLの内、媒質(大気)側から奇数層(基板2側から偶数層)の光学膜層3a1、3a3、…、3a2K-1は、上記膜物質Ta2O5よりも低い屈折率を有する膜物質である例えばSiO2から成る層であり、以下、L層とも呼ぶ。
【0019】
また、奇数層の光学膜層3a1、3a3、…、3a2K-1は、それぞれ物理膜厚d1、d3、…、d2K-1および屈折率n1、n3、…、n2K-1を有しており、偶数層の光学膜層3a2、3a4、…、3a2Kは、それぞれ物理膜厚d2、d4、…、d2Kおよび屈折率n2、n4、…、n2Kを有している。
【0020】
さらに、光学膜層3a1〜3aLの光学膜厚は、対応する膜層の屈折率および物理膜厚の積、すなわち、n1d1〜nLdLで表される。
【0021】
本実施形態では、光学膜層3a1〜3aLの光学膜厚n1d1〜nLdLは、約(m1λ0)/4(m1は正の奇数;本実施形態では1)の光学膜厚を有しており、後述する膜厚設計・成膜処理に基づいて膜層毎に正確に設計・成膜されている。
【0022】
そして、本実施形態では、多層膜フィルタ1は、キャビティを複数層化(多層化)した下式(1)に示す多層膜構造D0を有している。
【0023】
媒質(大気)/L(7-4-7)L(7-6-7)L(8-4-8)L(7-6-7)L(7-4-7)/基板・・・(1)
【0024】
但し、(y-x-y)は、(HL)yHxLH(LH)yを表すキャビティであり、(HL)yは、HLHL…のように、H層およびL層の2層ペアをy回繰り返して積層された交互層、xLは、L層のx倍の膜厚を有する層(スペーサ層)をそれぞれ意味している。なお、本実施形態では、y=7,8、x=4,6である。また、媒質(大気)の屈折率をn0とする。
【0025】
すなわち、本実施形態における多層膜フィルタ1は、複数のキャビティ(y-x-y)が結合層(カップリング層;L層)を介して積層された構造(マルチキャビティ構造)を有している。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態に係わる多層膜フィルタ製造システム(成膜システム)11の概略構成を示す図(一部断面図)である。
【0027】
図2に示すように、多層膜フィルタ製造システム11は、真空容器(チャンバ)12と、この真空容器12内の例えば底部に並置された例えば2つの成膜源13a1、13a2と、真空容器12内における成膜源13a1、13a2と反対側(上部)に設けられており、基板2は基板ホルダ15により保持されている。
【0028】
成膜源13a1および13a2内には、上記膜物質Ta2O5およびSiO2がそれぞれセットされている。
【0029】
そして、多層膜フィルタ製造システム11は、真空容器12内に設けられており、成膜源13a1、13a2内に電子ビームを照射して成膜源13a1、13a2内の膜物質を加熱させるための電子銃20a1、20a2と、広波長帯域光である例えば白色光を測定光MLとして出力する光源21とを備えている。
【0030】
さらに、多層膜フィルタ製造システム11は、後述する制御装置から送信されるシャッタ信号に応じて成膜源13a1、13a2の上方を覆うことにより成膜動作を停止させ、開放信号に応じて成膜源13a1、13a2の上方を開放して成膜動作を開始させるためのシャッタ装置22a1、22a2と、光源21から発せられた測定光が成膜中の光学膜FIおよび基板2を透過した際の透過光を集光する集光レンズ23と、この集光レンズ23により集光された透過光を波長毎に受光する光ファイババンドル24とを備えている。
【0031】
この光ファイババンドル24は、真空容器12の例えば上壁に対して気密に取り付けられたシールドボックス25内を気密に貫通して真空容器外に延長している。
【0032】
そして、多層膜フィルタ製造システム11は、光ファイババンドル24を介して送られた透過光を順次モニタ光として受光してその受光量に対応する光量信号を出力する受光器30と、シャッタ装置22a1、22a2にデータ通信可能に接続された制御装置32とを備えている。
【0033】
この制御装置32は、受光器30から出力された光量信号を受信し、受信した光量信号に応じてシャッタ装置25a1、25a2に対して個別にシャッタ信号/開放信号を送信して、基板2上に実際に成膜されている光学膜層FIの膜厚を制御する機能等を備えている。
【0034】
図3は、図2に示す多層膜フィルタ製造システム11における制御装置32のハードウエア構成を示す図である。
【0035】
図3に示すように、制御装置32は、コンピュータシステムであり、受光器30から出力された光量信号をデジタル型の光量信号(デジタル光量データ)に変換するA/D変換器40と、フィルタ製造者が操作して情報を入力可能な入力部41と、この入力部41に通信可能に接続されたコンピュータ42と、このコンピュータ42に通信可能に接続されており、当該コンピュータ42に後述するフィルタ製造処理(膜厚設計/成膜処理)を実行させるためのプログラムPを予め記憶する記憶媒体としてのメモリ43とを備えている。なお、記憶媒体としては、半導体メモリ、磁気メモリ等、様々な記憶媒体が適用可能である
【0036】
以下、メモリ42に記憶されたプログラムPのアルゴリズム、すなわち、本実施形態の多層膜フィルタの製造方法の前提となる、多層膜フィルタ1にある波長の光が入射した際の光学膜厚と入射光の透過率との関係について説明する。
【0037】
図1に示す全L層の多層膜フィルタ1の透過率Tは、媒質の屈折率n0および基板2の屈折率nsを用いて、下式(2)で表される。
【0038】
【式1】
【0039】
但し、式(2)におけるパラメータm11、m12、m21、m22は、下式(3)で与えられる多層膜フィルタ1の全層での特性行列Mの各要素であり、この全層での特性行列Mとは、各層(第1層〜第L層)の特性行列Mj(j=1、2、…、L)の総積によって与えられる。
【0040】
【式2】
【0041】
但し、第j(j=1、2、…、L)層の特性行列Mjは、下式(4)
【式3】
で与えられ、iは、虚数単位である。
【0042】
また、ηjは、第j層の光学アドミッタンスであり、δjは、第j層の位相膜厚である。この位相膜厚δjは、第j層に入射した光が当該第j層を伝播する際の位相変化を表しており、光の第j層に対するその法線の入射角度をθ(=90°)とし、λを入射光の波長、njを第j層の屈折率、djを第j層の物理膜厚とすると、位相膜厚δjは、下式(5)として表される。
【0043】
【式4】
【0044】
ここで、第j層における光学膜厚の設計値njdjを式(5)に代入し、式(2)〜式(5)を用いれば、それぞれの光学膜層3a1〜3aLの透過率の波長毎の理論値が求められる。
【0045】
すなわち、上述した関係から、各波長における透過率を目標とする値(ターゲット値)に設定するための各層の光学膜厚(ターゲット膜厚)を求めることができる。
【0046】
したがって、プログラムPにより、コンピュータ42を、成膜時において、各光学膜層の膜厚をターゲット膜厚に一致させる成膜進行/停止制御(シャッタ装置25a1、25a2の開放/シャッタ制御)手段として機能させることにより、多層膜フィルタ1の各波長における透過率を、ターゲット値に設定するための処理を行っている。
【0047】
次に、本実施形態の全体動作について説明する。
【0048】
フィルタ製造者は、入力部43を介して、上記式(1)で示した多層膜構造D0、中心波長λ0および対象波長帯域λ1〜λnをそれぞれコンピュータ41に入力する(図4;ステップS1)。
【0049】
コンピュータ41は、プログラムPに基づいて動作し、入力された多層膜構造D0等のデータを膜設計データ(膜設計データファイルF1)として、メモリ42に記憶する(ステップS2)。
【0050】
次いで、コンピュータ41は、膜設計データファイルF1に基づいて、各光学膜層3a1〜3aLの光学膜厚n1d1〜nLdLが約λ0/4となるように、多層膜(各光学膜層3a1〜3aL)を成膜する(ステップS3)。
【0051】
例えば、光学膜層3aj(1≦j≦L)の成膜動作(例えば、成膜源13a2の成膜材料に対応する層であるとする)を行っている際においては、コンピュータ41の制御により、成膜源13a2のシャッタ装置22a2が開動作し、成膜源13a1のシャッタ装置22a1が閉動作(シャッタ動作)している。
【0052】
一方、電子銃20a1、20a2から成膜源13a1、13a2に対して電子ビームが照射されており、成膜源13a1、13a2内の加熱融解された膜物質Ta2O5、SiO2が蒸発する。
【0053】
このとき、上方をシャッタ装置により覆われていない成膜源13a2から蒸発した膜物質SiO2は、真空容器12内を上昇して基板2に蒸着され、光学膜層3ajの一部が形成される。
【0054】
上記成膜動作と並行して、光源21からは、広波長帯域光が成膜中の光学膜層3ajに照射される。そして、成膜中の光学膜層3ajを透過した透過光は、基板2、集光レンズ23および光ファイババンドル24を介して、モニタ光として受光器30に受光される。受光器30により受光された受光量に対応する光量信号はコンピュータ41に送信される。
【0055】
コンピュータ41は、送信されてきた光量信号を受信し、受信した光量信号に基づいて、光学膜層3ajの光学膜厚がλ0/4になる時点を算出し、算出した時点において、蒸着中の成膜源13a2に対応するシャッタ装置22a2に対してシャッタ信号を送信して成膜源13a2から蒸発した膜物質SiO2の基板2への蒸着を阻止する。
【0056】
成膜源13a1の膜物質Ta2O5については、シャッタ装置22a1を開動作させ、シャッタ装置22a2を閉動作させて膜物質Ta2O5の蒸着を開始し、光学膜厚がλ0/4になる時点において、蒸着中の成膜源13a1に対応するシャッタ装置22a1に対してシャッタ信号を送信してシャッタ装置22a1を閉動作させればよい。
【0057】
上述したシャッタ装置22a1、22a2の開動作/閉動作までの一連の動作を光学膜層毎に繰り返し行うことにより、多層膜構造D0に基づく多層膜(多層膜フィルタ)を成膜(製造)することができる。
【0058】
このようにして、設計した多層膜構造D0対応する多層膜フィルタが製造されると、フィルタ製造者は、その多層膜フィルタにおける対象波長帯域λ1〜λn内の各波長λ1、…、λnの透過率T(λ1)、…、T(λn)を測定する(ステップS4)。
【0059】
ここで、ステップS4の測定処理において測定された多層膜構造D0に基づく多層膜フィルタの透過率T(λ1)、…、T(λn)を図6に破線Bで示す。
【0060】
図6に示すように、多層膜フィルタの透過率T(λ1)、…、T(λn)によれば、各光学膜の膜厚に対して膜物質毎にある一定量の膜厚誤差や、成膜時と成膜後の温度差による膜厚変動量の膜物質に基づく差異等の原因により、中心波長λ0(1556.3nm)付近が落ち込み、波長帯域λ1(1556.1nm)〜λn(1556.5nm)において、ターゲットとなる透過波長特性(透過率−0.4dB以上)を得ることができない。
【0061】
このとき、本実施形態では、フィルタ製造者は、入力部43を介して、測定した透過率T(λ1)、…、T(λn)をコンピュータ41に入力する(ステップS5)。
【0062】
コンピュータ41は、入力された測定透過率T(λ1)、…、T(λn)を、測定透過率データT(λ1)、…、T(λn)(透過率データファイルF2)としてメモリ42に記憶する(ステップS6)。
【0063】
コンピュータ41は、膜設計データファイルF1における多層膜構造D0の各H層およびL層の膜厚をそれぞれパラメータ値であるa倍およびb倍し、当該パラメータaおよびbを用いて新たな多層膜構造D1を表す(ステップS7)。
【0064】
次いで、コンピュータ41は、表した多層膜構造D1における対象波長帯域λ1〜λn内の各波長λ1、…、λnの理論的な透過率データTA(λ1)、…、TA(λn)を、理論式(2)〜(5)に従って算出する(ステップS8)。
【0065】
そして、コンピュータ41は、透過率データファイルF2から測定透過率データT(λ1)、…、T(λn)を読み出し、読み出した測定透過率データT(λ1)、…、T(λn)と算出した透過率データTA(λ1)、…、TA(λn)との波長毎の2乗誤差E1(λ1)〜En(λn):
E1(λ1)={T(λ1)−TA(λ1)}2
E2(λ2)={T(λ2)−TA(λ2)}2
・・・
En(λn)={T(λn)−TA(λn)}2
を求める(ステップS9)。
【0066】
そして、コンピュータ41は、求めた2乗誤差E1(λ1)〜En(λn)の加算平均値(最小2乗誤差、2乗誤差平均値)を次式(6)に従って算出する(ステップS10)。
【0067】
【式5】
【0068】
次いで、コンピュータ41は、算出した最小2乗誤差の変化が収束するか否か判断する(ステップS11)。
【0069】
現在は最初の値であるため、ステップS11の判断の結果はNOとなり、コンピュータ41は、パラメータaおよびbの少なくとも一方を微小変化させて(ステップS12)、ステップS7の処理に戻り、ステップS7〜ステップS12の処理(フィッティング処理)を、ステップS12の判断の結果がYES、すなわち、算出した最小2乗誤差の変化が収束するまで繰り替えし実行する。
【0070】
すなわち、コンピュータ41は、設計した多層膜構造D0で得られた透過率データT(λ1)、…、T(λn)が理論的な透過率データTA(λ1)、…、TA(λn)に対して十分に近付くまで、ステップS7〜ステップS12のフィッティング処理を実行する。
【0071】
このようにして、算出した最小2乗誤差の変化が収束し、透過率データT(λ1)、…、T(λn)が理論的な透過率データTA(λ1)、…、TA(λn)に対して十分に近付く最適なパラメータaおよびb(例えば、a=0.999708、b=1.000108)が得られると、ステップS11の判断の結果はYESとなり、コンピュータ41は、得られたパラメータaおよびbの値それぞれの逆数(1/a、1/b)を多層膜構造D0における対応するH層およびL層それぞれの膜厚に乗じて多層膜構造D1を設計する(ステップS13)。
【0072】
次いで、コンピュータ41は、設計した多層膜構造D1および膜設計データファイルF1に基づいて、ステップS2〜3の処理を再度実行する。
【0073】
すなわち、コンピュータ41は、各光学膜層3a1〜3aLの光学膜厚n1d1〜nLdLが約λ0/4となるように、多層膜(各光学膜層3a1〜3aL)を成膜する(ステップS14;ステップS2〜3参照)。
【0074】
このようにして製造された多層膜構造D1に基づく多層膜フィルタ1の透過率T1(λ1)、…、T1(λn)を図6に実線Sで示す。
【0075】
図6に示すように、成膜された多層膜構造D1に基づく多層膜(多層膜フィルタ)1の透過率T1(λ1)、…、T1(λn)によれば、各光学膜の膜厚に対して膜物質毎にある一定量の膜厚誤差や、成膜時と成膜後の温度差による膜厚変動量の膜物質に基づく差異等が存在しても、波長帯域λ1(1556.1nm)〜λn(1556.5nm)において、ターゲットとなる透過波長特性(透過率−0.4dB以上)を得ることができた。
【0076】
以上述べたように、本実施形態によれば、屈折率の異なる2つの膜物質の光学膜層(H層およびL層)それぞれの膜厚に対する膜物質毎の膜厚誤差や、成膜時と成膜後の温度差による膜厚変動量の膜物質に基づく差異等の誤差成分を含む多層膜の透過率を、理論的に求められる多層膜の透過率に十分に近付けるために必要な各H層およびL層の膜厚補正パラメータaおよびbを求めることができる。
【0077】
そして、求めた膜厚補正パラメータaおよびbを用いて予め設計した多層膜の各H層およびL層の膜厚を補正し、補正した膜厚を含む膜設計データに基づいて多層膜フィルタ1を成膜(製造)することができる。
【0078】
この結果、膜厚誤差や、膜厚変動量の膜物質に基づく差異等の誤差成分を相殺して、予めターゲットとした波長透過特性に十分近い波長透過特性を有する多層膜フィルタ1を成膜(製造)することができる。
【0079】
したがって、多層膜フィルタ1の上記ターゲット波長透過特性に基づく製造歩留まりを高く維持することができ、その信頼性も向上させることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、多層膜フィルタ1として、中心波長がλ0(例えば1556.3nm)の所定の波長帯域{λ1(例えば、1556.1nm)〜λn(例えば、1556.5nm)]において所定の波長透過特性(透過率−0.4dB以上)を得るための狭帯域フィルタについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0081】
例えば、上記波長帯域以外の狭帯域フィルタ、広帯域フィルタ、所定の波長帯域において所定の波長損失特性を有する帯域遮断フィルタ、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)等の光増幅器の利得等化フィルタ等にも適用可能である。
【0082】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的思想に基づく範囲内において、上記実施形態に対して多様な変更または改良を加えることも可能である。
【0083】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係わる多層膜光学フィルタの製造方法およびシステム、ならびに多層膜光学フィルタによれば、予め設計された各光学膜層の光学膜厚を含む多層膜構造を、膜物質毎の膜厚誤差や、成膜時と成膜後の温度差による膜厚変動量の膜物質に基づく差異等の誤差成分をキャンセルできる多層膜構造に補正することができる。
【0084】
このため、補正した多層膜構造に従って多層膜光学フィルタを成膜(製造)することができる。この結果、上記誤差成分に関係なく多層膜光学フィルタの製造歩留まりを高く維持することができ、その信頼性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係わる多層膜フィルタを示す図。
【図2】図1に示す多層膜フィルタを製造するための多層膜フィルタ製造装置(成膜装置)の概略構成を示す図(一部断面図)。
【図3】図2に示す多層膜フィルタ製造装置における制御装置のハードウエア構成を示す図。
【図4】図2に示すコンピュータの多層膜フィルタの製造処理およびフィルタ製造者の作業工程を含む本発明のフィルタ製造に関するフローチャート。
【図5】図2に示すコンピュータの多層膜フィルタの製造処理およびフィルタ製造者の作業工程を含む本発明のフィルタ製造に関するフローチャート。
【図6】ステップS4の測定処理において測定された多層膜構造に基づく多層膜フィルタの透過率および本実施形態の製造工程により製造された多層膜フィルタの透過率をそれぞれ破線および実線で示したグラフ。
【符号の説明】
1 多層膜フィルタ
2 基板
3a1〜3aL 光学膜層
11 多層膜フィルタ製造システム
12 真空容器
13a1、13a2 成膜源
15 基板ホルダ
20a1、20a2 電子銃
21 光源
22a1、22a2 シャッタ装置
23 集光レンズ
24 光ファイババンドル
25 シールドボックス
30 受光器
32 制御装置
40 A/D変換器
41 入力部
42 コンピュータ
43 メモリ
P プログラム
Claims (8)
- 屈折率の異なる複数の膜物質から成る複数の光学膜層から構成された多層膜光学フィルタの製造方法であって、
予め設計された各光学膜層の光学膜厚に基づいて前記複数の膜物質を基板に成膜して多層膜光学フィルタを試作するステップと、
試作した多層膜光学フィルタの透過率を測定することにより波長の関数で表現した第1の透過率データを取得するステップと、
前記各光学膜層の設計光学膜厚に対して膜物質毎にパラメータを掛けた値を各光学膜層の光学膜厚として表した多層膜構造から求められる理論的な透過率を波長の関数で表現した第2の透過率データを算出するステップと、
前記第1の透過率データと前記第2の透過率データとを比較し、その比較結果に応じて前記光学膜厚の層毎の修正値を求めるステップと、
求めた光学膜厚の層毎の修正値を用いて前記多層膜構造を表し、表した多層膜構造に従って前記複数の膜物質を基板に成膜して多層膜フィルタを製造するステップと、
を備えたことを特徴とする多層膜光学フィルタの製造方法。 - 前記修正値を求めるステップは、前記第1の透過率データと第2の透過率データとの差が最小になるように前記光学膜厚の層毎の前記パラメータの値を求めるステップと、求めたパラメータの値を用いて前記予め設計された各光学膜層の光学膜厚を修正することにより前記修正値を求めるステップを有することを特徴とする請求項1記載の多層膜光学フィルタの製造方法。
- 前記第1の透過率データと第2の透過率データとの差は、最小2乗誤差であることを特徴とする請求項2記載の多層膜光学フィルタの製造方法。
- 前記屈折率の異なる複数の膜物質から成る複数の光学膜層は、所定の屈折率を有する第1の膜物質から成る第1の光学膜層、当該所定の屈折率よりも高い屈折率を有する第2の膜物質から成る第2の光学膜層であり、前記多層膜構造は、前記第1の光学膜層、前記第2の光学膜層および前記第1の光学膜層の偶数倍の光学膜厚を有するスペーサ層から成るキャビティが結合層を介して積層された構造であり、各キャビティは、前記第1および第2の光学膜層が前記スペーサ層の前記積層方向に沿った両側に交互かつ前記積層方向に沿って対称配置されることを特徴とする請求項1または2記載の多層膜光学フィルタの製造方法。
- 屈折率の異なる複数の膜物質から成る複数の光学膜層から構成された多層膜光学フィルタの製造装置であって、
予め設計された各光学膜層の光学膜厚に基づいて前記複数の膜物質を基板に成膜して多層膜光学フィルタを試作する手段と、
試作した多層膜光学フィルタの透過率を測定することにより波長の関数で表現した第1の透過率データを取得する手段と、
前記各光学膜層の設計光学膜厚に対して膜物質毎にパラメータを掛けた値を各光学膜層の光学膜厚として表した多層膜構造から求められる理論的な透過率を波長の関数で表現した第2の透過率データを算出する手段と、
前記第1の透過率データと前記第2の透過率データとを比較し、その比較結果に応じて前記光学膜厚の層毎の修正値を求める手段と、
求めた光学膜厚の層毎の修正値を用いて前記多層膜構造を表し、表した多層膜構造に従って前記複数の膜物質を基板に成膜して多層膜フィルタを製造する手段と、
を備えたことを特徴とする多層膜光学フィルタの製造装置。 - 前記修正値を求める手段は、前記第1の透過率データと第2の透過率データとの差が最小になるように前記光学膜厚の層毎の前記パラメータの値を求める手段と、求めたパラメータの値を用いて前記予め設計された各光学膜層の光学膜厚を修正することにより前記修正値を求める手段を有することを特徴とする請求項5記載の多層膜光学フィルタの製造装置。
- 請求項1乃至4の内の何れか1項記載の製造方法を用いて製造したことを特徴とする多層膜光学フィルタ。
- 前記第2の透過率データを算出するステップは、前記パラメータの特定の値毎に前記第2の透過率データを算出するサブステップを有し、
前記修正値を求めるステップは、
前記サブステップからの前記第2の透過率データと前記第1の透過率データとの差を算出するサブステップと、
前記差が所定条件を満たすかどうか判定するサブステップと、
前記差が前記所定条件を満たさない場合に、前記パラメータの値を変更し、変更した値を前記パラメータの特定の値として前記第2の透過率データを算出するステップに渡して、再度、前記第2の透過率データを算出せしめるサブステップと、
前記差が前記所定条件を満たす場合に、前記所定条件を満たした前記パラメータの特定の値を用いて前記修正値を求めるサブステップを
有することを特徴とする請求項1に記載の多層膜光学フィルタの製造方法。
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