JP2002226488A - アルコキシシランの製造方法 - Google Patents

アルコキシシランの製造方法

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JP2002226488A
JP2002226488A JP2001022531A JP2001022531A JP2002226488A JP 2002226488 A JP2002226488 A JP 2002226488A JP 2001022531 A JP2001022531 A JP 2001022531A JP 2001022531 A JP2001022531 A JP 2001022531A JP 2002226488 A JP2002226488 A JP 2002226488A
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Eiichi Suzuki
榮一 鈴木
Hiroshi Suzuki
浩 鈴木
Masayoshi Harada
勝可 原田
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Toagosei Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルキルジアルコキシシラン等の選択率、そ
の収率及び珪素の転化率が高い製造方法を提供する。 【解決手段】 本方法は、触媒の存在下に金属珪素、炭
素数1〜4のアルキルアルコール(メタノール、エタノ
ール等)及びオレフィン化合物等(エチレン、プロピレ
ン等)を気相で反応させてアルコキシシランを製造する
方法であって、アルキルジアルコキシシラン(エチル又
はプロピルジメトキシシラン等)の選択率が20%(特
に30%)以上であり、アルキルジアルコキシシラン及
びアルキルトリアルコキシシランに対する前者の割合が
60%(特に80%)以上である。反応温度が180〜
260℃、オレフィン分圧が0.3MPa以上、珪素転
化率が45%(特に50%)以上が好ましい。i化合物
に対してnプロピルジメトキシシランの割合が多い。反
応開始前に反応系内酸素濃度を1.0%以下とすること
ができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルコキシシラン
の製造方法に関し、更に詳しくは、アルコキシシランの
効率的な製造方法、特に、アルキル(アルケニル)ジア
ルコキシシランの選択率が高く、且つアルキル(アルケ
ニル)ジアルコキシシラン及びアルキル(アルケニル)
トリアルコキシシランの合計に対する前者の割合が高
く、且つ珪素の転化率が高い製造方法に関する。本発明
により得られるアルコキシシランは、各種シランカップ
リング剤や、絶縁薄膜、耐熱材料の原材料等に広く利用
される。
【0002】
【従来の技術】アルコキシシランは、各種シランカップ
リング剤や、絶縁薄膜、耐熱材料の原材料として有用で
あり、特にアルキルジアルコキシシランは分子内にSi
H結合を有し、容易に各種の誘導体に展開できることか
ら、その需要性は高く、安価で効率の良い製造法が求め
られている。従来、アルキルジアルコキシシランの製造
法としては、クロロシラン類とアルキルアルコールを原
料とする方法が知られているが、クロロシラン類がコス
ト高である上、目的とするアルコキシシランの他に塩酸
が副生するため、生成物の精製が困難で、かつ反応装置
が腐食する等の欠点があった。また、トリアルコキシシ
ランの製造方法として、触媒下において金属珪素と低級
アルコールを反応させる直接方法が知られている(特開
平6−321958号公報、特開平5−194540号
公報)が、これらはいずれも、オレフィンを反応させる
ものではなく、トリアルコキシシランを高選択に製造す
るものであり(例えば83モル%以上)、アルキルジア
ルコキシシランを製造するものではない。
【0003】そこで、発明者等は、金属珪素、メタノー
ルアルコール及びエチレンを、銅触媒の存在下に気相で
反応させる直接法を研究し、エチルジメトキシシランを
合成できることを見出し、学会にて発表した[平成9年
度触媒研究発表会 第80回触媒討論会(A)講演予稿
集、295頁]。この反応は、一段反応で目的とする有
用なH−Si結合を有するアルキルジアルコキシランを
製造できるため、工業的及び経済的に有利な方法であ
る。しかし、この予稿集においては、メタノールとエチ
レンのみを反応させたものしか開示されておらず、しか
も、エチレン分圧及び反応時間と、珪素転化率、目的と
するエチルジメトキシシランの選択率及び収率との関係
しか開示されていない。従って、エチルジエトキシシラ
ンの更なる効率的な製造方法、更なるこの化合物の選択
率の向上、特にエチルジエトキシシランとH−Si結合
を有しないエチルトリエトキシシランの合計に対する前
者の割合(選択性)の向上等がより一層望まれている。
また、メタノールと比べると著しく反応性が劣ると考え
られているエタノール、プロパノール、同様にエチレン
と比べると著しく反応性が劣ると考えられているプロピ
レン、ブチレン等についても効率的且つ選択的にアルキ
ルジアルコキシシランを直接製造できる技術の現出が望
まれている。
【0004】更に、上記直接法においても、珪素転化率
が十分ではなく、多量の未反応の金属珪素が産業廃棄物
として排出されるため、環境面でも問題があり、また目
的とするアルキルジアルコキシランの選択率及び収率も
満足できるものではなかった。即ち、有用な上記直接法
でアルコキシシランを製造するに際して、更に一層、珪
素転化率、目的とするアルキルジアルコキシランの選択
率及び収率に優れた製造方法の現出が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは上記のよ
うな問題点に鑑み、金属珪素の転化率が高く、環境面で
も改善され、またアルキルジアルコキシランの選択率が
向上して、目的物の収率が満足できるアルコキシランの
直接製造方法について鋭意研究した結果、本発明を完成
した。更に、メタノール以外のアルコール、及びエチレ
ン以外の他のオレフィンでの反応をも検討した結果、メ
タノール−エチレン以外の系でも目的としたアルキルア
ルコキシシランを製造できることを見出し、本発明を完
成した。本発明は、アルキル(アルケニル)ジアルコキ
シシランの選択率、特にアルキル(アルケニル)ジアル
コキシシラン及びアルキル(アルケニル)トリアルコキ
シシランの合計に対する該アルキル(アルケニル)ジア
ルコキシシランの割合、アルキル(アルケニル)ジアル
コキシシランの収率及び珪素の転化率が高い製造方法を
提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載のアルコキ
シシランの製造方法は、触媒の存在下に金属珪素、炭素
数1〜4のアルキルアルコール、並びにオレフィン化合
物及びアルキン化合物のうちの少なくとも1種を気相で
反応させてアルコキシシランを製造する方法において、
反応温度が180〜260℃であり、アルキル(アルケ
ニル)ジアルコキシシラン及びアルキル(アルケニル)
トリアルコキシシランの合計に対する該アルキル(アル
ケニル)ジアルコキシシランの割合が60モル%以上で
あることを特徴とする。尚、「アルキル(アルケニル)
ジアルコキシシラン」は、「アルキルジアルコキシシラ
ン又はアルケニルジアルコキシシラン」の意味を表す。
「アルキル(アルケニル)トリアルコキシシラン」は、
「アルキルトリアルコキシシラン又はアルケニルトリア
ルコキシシラン」の意味を表す。
【0007】請求項3記載のアルコキシシランの製造方
法は、触媒の存在下に金属珪素、炭素数1〜4のアルキ
ルアルコール及びオレフィン化合物を気相で反応させて
アルコキシシランを製造する方法において、上記アルキ
ルアルコールがメタノールであり、上記オレフィン化合
物がエチレンであり、エチルジメトキシシランの選択率
が20%以上であり、且つエチルジメトキシシラン及び
エチルトリメトキシシランの合計に対する該エチルジメ
トキシシランの割合が60モル%以上であることを特徴
とする。
【0008】請求項5記載のアルコキシシランの製造方
法は、触媒の存在下に金属珪素、炭素数1〜4のアルキ
ルアルコール及びオレフィン化合物を気相で反応させて
アルコキシシランを製造する方法において、上記アルキ
ルアルコールがメタノールであり、上記オレフィン化合
物がプロピレンであり、n−プロピルジメトキシシラン
及びi−プロピルジメトキシシランの合計に対する該n
−プロピルジメトキシシランの割合が80モル%以上で
あることを特徴とする。
【0009】請求項7記載のアルコキシシランの製造方
法は、触媒の存在下に金属珪素、炭素数1〜4のアルキ
ルアルコール及びオレフィン化合物を気相で反応させて
アルコキシシランを製造する方法において、上記アルキ
ルアルコールがエタノールであり、上記オレフィン化合
物がエチレンであり、エチルジエトキシシシランの選択
率が20%以上であり、且つエチルジエトキシシラン及
びエチルトリエトキシシランの合計に対する該エチルジ
エトキシシランの割合が60モル%以上であることを特
徴とする。
【0010】請求項9記載のアルコキシシランの製造方
法は、触媒の存在下に金属珪素、炭素数1〜4のアルキ
ルアルコール、並びにオレフィン化合物及びアルキン化
合物のうちの少なくとも1種を気相で反応させてアルコ
キシシランを製造する方法において、反応開始前に、反
応系内の酸素濃度を1.0%以下にすることを特徴とす
る。
【0011】上記「金属珪素」は、工業的に入手するで
きるものであっても、半導体で廃棄された高純度珪素ウ
ェハーを砕いたものでもでも使用することができる。ま
た、金属珪素を含んだフェロシリコン、カルシウムシリ
コン等の珪素合金も使用できる。金属珪素の形状は粒状
が好適であり、粒径は特に限定されるものではないが、
通常、平均粒径2mm以下が好ましく、更に好ましくは平
均粒径25〜500μmである。
【0012】上記「炭素数1〜4の低級アルキルアルコ
ール」(以下、単に「低級アルコール」ともいう。)と
しては、直鎖状あるいは分岐状のいずれでもよく、具体
的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、is
o −プロパノ−ル、n−ブタノ−ル、sec −ブタノ−
ル、iso−ブタノール、tert−ブタノールがあり、メタ
ノール、エタノールが好ましい。この低級アルキルアル
コールは純度95重量%以上が好ましく、脱水剤で処理
することにより水分の含有量を2000ppm 以下、更に
好ましくは500ppm 以下としたものが好ましい。
【0013】上記低級アルキルアルコールの反応系への
供給速度は、金属珪素1モルに対し、低級アルキルアル
コール10〜1,000ミリモル/hrが好ましく、更
に好ましくは50〜500ミリモル/hrである。1,
000ミリモル/hrを超えると未反応の低級アルキル
アルコールが増加し、更に金属珪素転化率の低下につな
がり、経済的とは言えず、あまり少なくても金属珪素転
化率が低下する恐れがある。低級アルキルアルコールは
単独で供給しても、希釈ガスにより希釈して供給しても
よい。希釈ガスとしては、原料やトリアルコキシシラン
と反応しないものであれば特に限定されるものではな
く、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。
【0014】上記「オレフィン化合物」は、二重結合を
有するものであればよく、モノオレフィン、ジオレフィ
ン等でもよいし、この二重結合の結合位置も問わない
が、反応性の点で末端位置にあるものが好ましい。ま
た、このオレフィン化合物は、使用条件において反応す
るものであればよく、その種類は特に限定されないが、
例えば、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチ
レン、イソブチレン、n−ペンテン、イソペンテン、ヘ
キセン等の炭素数が2〜8のオレフィン化合物が挙げら
れる。また、これらの1種又は2種以上を用いることが
できる。これらのうち、エチレンが好ましい。上記「ア
ルキン化合物」は、三重結合を有するものであればよ
く、その数、その結合位置は問わないが、通常、1個の
三重結合を有し、また反応性の点で末端位置にあるもの
が好ましい。また、このアルキン化合物としては、使用
条件において反応するものであればよく、その種類は特
に限定されないが、例えばアセチレン、プロピン、1−
ブチン、2−ブチン、1−ペンチン等の炭素数が2〜8
のアルキン化合物が挙げられる。これらの1種又は2種
以上を用いることができる。これらのうち、アセチレン
が好ましい。更に、上記オレフィン化合物と上記アルキ
ン化合物とを組み合わせて用いることもできる。尚、
「オレフィン化合物」及び/又は「アルキン化合物」を
表現する場合は、「オレフィン化合物等」ともいう。
【0015】オレフィン化合物等の反応系への供給速度
は、金属珪素1モルに対し、オレフィン化合物等10〜
1,000ミリモル/hrが好ましく、更に好ましくは
50〜500ミリモル/hrである。1,000ミリモ
ル/hrを超えると未反応のオレフィン化合物等が増加
し、更に金属珪素転化率の低下につながり、経済的とは
言えず、あまり少なくても金属珪素転化率が低下する恐
れがある。
【0016】上記「触媒」としては、銅触媒、亜鉛触
媒、ニッケル触媒等、通常用いられる触媒のいずれもが
使用でき、特に限定されるものではないが、銅触媒が特
に好ましい。具体例としては、(1)塩化第一銅、塩化
第二銅、臭化銅、沃化銅、弗化銅等のハロゲン化銅、炭
酸銅、硫酸銅、酢酸銅、蓚酸銅、チオシアン酸銅等の銅
塩、水酸化第一銅,水酸化第二銅、シアン化銅、硫化
銅、酸化銅等の銅含有無機化合物、(2)メチル銅、エ
チル銅などの有機銅化合物、又は金属銅が挙げられる。
これらのうちでも、塩化第一銅が更に好ましい。
【0017】触媒の粒径は40μm未満が好ましく、更
に好ましくは2μm未満である。40μm以上では反応
速度の低下をもたらすことがあり、これは金属珪素の転
化率の低下にもつながる。触媒の供給方法は、金属珪素
とは別個に反応系へ供給するのが一般的であるが、事前
に金属珪素と混合しても、あるいは金属珪素をこれに担
持させたものを供給してもよい。
【0018】触媒は、金属珪素と共に活性化して反応系
に供給するのが好ましい。好ましい活性化方法として
は、金属珪素と触媒を混合したものを100℃〜600
℃、特に好ましくは130℃〜300℃で加熱処理する
のが好ましい。100℃未満では活性化するのに時間を
要し効率的とはいえず、600℃を超えると触媒作用の
失活につながる恐れがある。触媒の使用量は、金属珪素
100重量部に対して0.5重量部〜50重量部が好ま
しく、更に好ましくは5重量部〜30重量部である。
0.5重量部未満又は50重量部を超えると、共に珪素
転化率の低下につながる恐れがある。
【0019】本発明は気相系で行う。即ち金属珪素及び
触媒に気体状の低級アルキルアルコール及びオレフィン
化合物等を接触させて反応させる。反応方式は、金属珪
素及び触媒を最初に全量を仕込むバッチ方式でも、また
反応中に連続的に仕込む連続式のどちらでもよく、また
金属珪素及び触媒を振動させて反応を行う振動方式や、
振動や物理的な力により金属珪素及び触媒を移動させな
がら反応を行う移動床方式、あるいは金属珪素及び触媒
を固定して反応を行う固定床方式、また流動床方式のい
ずれを採用してもよい。上記いずれの方式においても、
低級アルコール及びオレフィン化合物等は気体として反
応系に供給され、その供給は連続して行うのが一般的で
あるが、断続的に行うこともできる。
【0020】請求項1記載の発明における好ましい反応
温度は、180〜260℃であり、より好ましくは19
0〜260℃、更に好ましくは200〜250℃であ
る。180〜260℃の場合は、アルキルジアルコキシ
シランの選択率、金属珪素の転化率、アルキルジアルコ
キシシラン及びアルキルトリアルコキシシランの合計に
対する前者の割合が大きく、いずれの性能のバランスに
も優れる。尚、請求項3、5、7、及び9に係わる各発
明においては、この反応温度は特に限定されないが、通
常、180〜260℃程度の温度が用いられる。
【0021】本発明の方法は常圧、加圧のいずれで行っ
ても良いが,金属珪素の転化率が高く、またアルキルジ
アルコキシランの選択率が向上するという点で加圧が望
ましい.本発明における全反応圧力は、具体的には、ゲ
ージ圧で0MPa〜10MPaであり、好ましくは1〜
5Mpaである。10MPaを超えると高沸点生成物の
反応系外への留出が円滑に行われず、アルキルジアルコ
キシシランの選択率が低下し、0MPa未満では金属珪
素の転化率が低下して、経済的ではない。本発明におけ
るオレフィンの分圧は、例えば、ゲージ圧で0.1〜5
MPaであり、好ましくは0.3〜1Mpaである。
0.1MPa未満ではアルキルジアルコキシシランの選
択率が低下し、5MPaを超えると金属珪素の転化率が
低下して、経済的ではない。
【0022】本発明で得られるアルコキシシランは、原
料として使用する低級アルキルアルコールとオレフィン
化合物等に対応した官能基を有しており、具体的には、
(1)エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラ
ン、エチルジ−n−プロポキシシラン、エチルジイソプ
ロポキシシラン、エチルジ−n−ブトキシシラン、エチ
ルジ−sec −ブトキシシラン、エチルジイソブトキシシ
ラン、エチルジ−tert−ブトキシシラン、(2)プロピ
ルジメトキシシラン、プロピルジエトキシシラン、プロ
ピルジ−n−プロポキシシラン、プロピルジイソプロポ
キシシラン、プロピルジ−n−ブトキシシラン、プロピ
ルジ−sec −ブトキシシラン、プロピルジイソブトキシ
シラン、プロピルジ−tert−ブトキシシラン、(3)ビ
ニルジメトキシシラン、ビニルジエトキシシラン、ビニ
ルジ−n−プロポキシシラン等が挙げられ、本発明で製
造されるアルコキシシランとして更に好適なものにはエ
チルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、エチ
ルジプロポキシシランが最適である。
【0023】本発明の反応方式による反応生成液は、高
濃度のトリアルコキシシランとアルキルジアルコキシシ
ランを含有し、その他にテトラアルコキシシラン等の副
反応生成物や未反応アルコールを含んでいるが、目的物
であるアルキルジアルコキシシランはこの反応生成液か
ら蒸留その他常法に従って分離取得することができる。
尚、本明細書におけるアルキルジアルコキシシラン等の
選択率及び金属珪素転化率は、以下の実施例欄において
算出される値である。
【0024】アルキルジアルコキシシランの選択率、ア
ルキルジアルコキシシラン及びアルキルトリアルコキシ
シランの合計に対する前者の割合(両者間における前者
の選択率)及び金属珪素転化率、適正反応温度等は、使
用するアルコールの種類、オレフィンの種類によって種
々異なるので、具体的態様に従って以下に説明する。メ
タノールとエチレンとを用いた場合は、請求項3に示す
ように、エチルジメトキシシランの選択率が20モル%
(以下、単に「%」という。)以上、好ましくは30%
以上である。また、エチルジメトキシシラン及びエチル
トリメトキシシランの合計に対する該エチルジメトキシ
シランの割合(「両者に対するエチルジメトキシシラン
の割合」ともいう。)が60%以上、好ましくは70%
以上、より好ましくは80%以上である。更に、この場
合の反応温度は、請求項4に示すように180〜260
℃が好ましく、190〜260℃がより好ましい。18
0℃未満の場合及び260℃を超える場合は副生成物で
あるエチルトリメトキシシランが増加してくるので好ま
しくない(図3及び図4参照)。特に、260℃を超え
るとエチルトリメトキシシランが急激に増加するととも
に、エチルジメトキシシランの生成及び珪素の転化率が
急激に減少してくるので、好ましくない。このような高
温での急激なエチルトリメトキシシランの増加及び低温
でのこの増加は全く予期しない、意外なものであった
(図3、図4参照)。尚、参考までに。両者に対するエ
チルジメトキシシランの割合は、図3の180℃、20
0℃。220℃、240℃、260℃、280℃では各
々、61%、75%、82%、88%、88%、94
%、52%である。また、金属珪素、メタノール及びエ
チレンを原料とする反応の進行状況を示した図1の結果
((c)と(d))によっても、この割合はおおよそ9
0%程度を示している。
【0025】メタノールとプロピレンとを用いた場合
は、請求項5に示すように、n−プロピルジメトキシシ
ラン及びi−プロピルジメトキシシランの合計に対する
該n−プロピルジメトキシシランの割合が80%以上、
好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であ
る。また、プロピルジメトキシシラン及びプロピルトリ
メトキシシランの合計に対する該プロピルジメトキシシ
ランの割合は、好ましくは請求項6に示す60%以上、
より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上
である。エチルジメトキシシランの選択率は5%以上、
好ましくは10%以上である。更に、この場合の反応温
度は、180〜260℃が好ましく、180〜250℃
がより好ましく、200〜250℃がより好ましい。2
60℃以上、特に280℃以上になると、プロピルジメ
トキシシランの選択率及び珪素転化率が低下してくるの
で、好ましくない(図8参照)。また、プロピレン分圧
は0.2MPa以上が好ましく、0.3MPa以上がよ
り好ましく、0.4MPa以上が更に好ましい(図7参
照)。
【0026】エタノール及びエチレンを用いる場合、請
求項7に示すように、エチルジエトキシシシランの選択
率が20%以上(好ましくは25%以上)である。ま
た、エチルジエトキシシラン及びエチルトリエトキシシ
ランの合計に対する該エチルジエトキシシランの割合が
60モル%以上(好ましくは70%以上、より好ましく
は80%以上)である。この場合、請求項8に示すよう
に反応温度が180〜260℃が好ましく、190〜2
40℃がより好ましい。
【0027】上記請求項9記載の発明においては、反応
系内の残留酸素濃度が重要であり、残留酸素濃度は1.
0%以下であり、好ましくは0.5%以下、更に好まし
くは0.3%以下である。1%を超えると、珪素転化率
の低下につながるので好ましくない。
【0028】本発明の反応温度については、前記と同様
に、100〜300℃とすることができ、好ましくは1
50℃〜260℃、より好ましくは180〜260℃
(請求項10参照)、更に好ましくは190〜260
℃、特に好ましくは200〜250℃である。これらの
温度範囲とすることにより、残留酸素濃度を調節しない
場合と比べると、更に、アルキルジアルコキシシランの
選択率、金属珪素の転化率、アルキルジアルコキシシラ
ン及びアルキルトリアルコキシシランの合計に対する前
者の割合が向上するとともに、再現性に優れる。また、
前記に示す反応圧(全圧及び分圧)、特定のアルコール
の場合の好ましい反応条件等についての記載も、本発明
の製造方法にも適用される。
【0029】反応器の材質としては、石英管、ガラス
管、金属管等を使用することができ、特に限定されるも
のではないが、反応器の構造は低級アルキルアルコール
及びオレフィン化合物等の導入口、加熱冷却装置、生成
物の出口を具えており、気密構造になっているものが好
ましい。
【0030】好ましい反応器は、ステンレス製管からな
り、内壁が耐熱性化合物で被覆された高圧固定床流通反
応器である。材質をステンレス製にすることにより、耐
腐食性及び耐圧性を備えた工業的反応器を容易に製造で
きる利点がある。また、内壁を耐熱性化合物で被覆する
ことにより、触媒の金属成分とステンレスとの反応に起
因する悪影響を効果的に抑止できる利点がある。好まし
い耐熱性化合物は、Siの炭化物、酸化物及び窒化物等
のSi系耐火物、耐熱性シリコーン、テフロン(登録商
標)等の耐熱性樹脂等である。ステンレス製管は、少な
くとも触媒又は珪素の反応領域と接触する内壁が耐熱性
化合物で被覆されておれば良く、薄膜状の被覆で充分な
効果が得られる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、実施例により本発明を具体
的に説明する。 実施例1 本実施例は、各種のアルキルアルコキシシランの製造に
おける反応時間、オレフィン分圧又は反応温度等の影響
について検討したものである。 1.エチルジメトキシシランの合成における実験方法 珪素粒子(純度99.9%、粒径45〜63・香jを、
46%ふっ酸(HF)を用いて室温で1時間洗浄し、表
面酸化物を除去した。この珪素粒子と、触媒であるCu
Cl(I)粒子(純度99.9%、粒径45〜63・香
jを小さな容器に入れ、激しく混合した。9mmolの
珪素と10wt%の触媒(珪素に対する金属Cu換算
で)を含む混合物を、高圧固定床流通反応系内のステン
レス管(内径9.3mm)に充填した。反応管の内壁
は、珪素酸化物の薄膜をコーティングして、ステンレス
鋼とCuが反応してCu合金が生成しないように、ま
た、ステンレス鋼の存在下で生成物どうしが更に反応生
成物を作らないようにした。反応の前には、珪素触媒混
合物を大気圧で240℃、1時間、ヘリウム気流中で加
熱して、触媒を活性化させた。その後、ヘリウム−エチ
レン気流に変えて、背圧弁をコントロールして全圧を
1.5MPaまで上げた。最後にメタノールを気化させ
るプレヒート部を通して高圧液体ポンプによりメタノー
ルを反応管に送り込んだ。そして、所定の温度で所定時
間反応させた。生成物は、氷冷したエチルベンゼン中に
15分間トラップした。生成物を15分おきにサンプリ
ングし、内部標準として3−メチルペンタンを用いて、
ガラスカラム(長さ2m、充填剤SE−30)を用い
て、TCD検出のガスクロで分析した。選択率、収率及
び金属珪素転化率は、下式で定義した。 (1)選択率(モル%)=〔対象とするアルキル(アル
ケニル)ジアルコキシシラン(モル数)/有機シラン化
合物全体(モル数)〕×100 尚、この有機シラン化合物には、トリアルコキシシラン
及びテトラアルコキシシランも含む。 (2)収率(モル%)=[生成物量(モル数)/反応管
に充填された金属珪素量(モル数)]×100 (3)珪素転化率(モル%)=[有機シラン化合物全体
(モル数)/反応管に充填された珪素量(モル数)]×
100 以下、単に、「モル%」を「%」と略記する場合もあ
る。
【0032】2.反応時間の影響 珪素と触媒の混合物を、ヘリウム気流で240℃、1時
間加熱した後、珪素、メタノール及びエチレンを240
℃で反応させた。バランスガスとして、メタノール0.
15MPa、エチレン0.72MPa、ヘリウム0.1
3MPaを用いて全圧を1.0MPaとした。エチルジ
メトキシシラン(c)とトリメトキシシラン(b)は、
少量のエチルトリメトキシシラン(d)、メチルジメト
キシシラン(e)、テトラメトキシシラン(f)と一緒
に生成した。図1に、各生成物の生成速度((b)〜
(f))及び累積した珪素転化率(a)と反応時間との
関係結果を示す。すべての生成物の生成速度は、エチル
ジメトキシシランの生成速度が最大値となる1時間あた
りまで時間とともに増大し、その後小さくなった。反応
は4.25時間で終了し、その時の珪素転化率は63%
であった。このとき、エチルジメトキシシランの選択率
は30%であり、トリメトキシシランは61%、エチル
トリメトキシシランは4%、メチルジメトキシシランは
3%、テトラメトキシシランは2%であった。尚、エチ
ルジメトキシシラン及びエチルトリメトキシシランの合
計に対する該エチルジメトキシシランの割合([EDM
/(EDM+ETM)]比と略す。)は88モル%であ
る。
【0033】尚、比較としての大気圧流通反応装置、オ
ートクレーブ(液相反応)を用いた場合、[EDM/
(EDM+ETM)]比は、それぞれ、8%、4%を示
し、これらの場合と比較すると、本実施例における高圧
流通反応装置を用いる場合は、エチルジメトキシシラン
の選択率が大変高くなった。オートクレーブを用いた場
合のエチルジメトキシシランとエチルトリメトキシシラ
ンの選択率の合計(26%)と比較しても、本実施例に
おいて、エチルジメトキシシランの選択率は30%と高
かった。
【0034】3.エチレン分圧とエチルジメトキシシラ
ン選択率等との関係 エチレン分圧は、0〜1.25MPaの間で変化させ、
このエチレン分圧とエチルジメトキシシラン選択率等と
の関係を調べた。尚、反応温度は240℃、メタノール
分圧は0.15MPaとし、前処理は240℃、1時間
で行った。即ち、全圧を1.0〜1.4MPaの間で変
化させた。これらの結果を図2に示す。これらの結果に
よると、エチレン分圧が高くなるにつれて、0.5MP
a以下の範囲ではエチルジメトキシシランの選択率
(b)がほぼ比例して増加した。0,5MPaを超える
と、エチルジメトキシシランの選択率の増加傾向は小さ
くなり、1.25MPaでは36%となった。しかし、
珪素転化率(a)はエチレン分圧とともに徐々に低下し
た。エチルジメトキシシランの収率(c)は0.72M
Paでは19%に達したが、それを超えると少し減少し
た。エチレン分圧が0.4MPa以上であるとエチルジ
メトキシシランの選択率が20%以上を示し、約0.7
MPa以上では30%以上の優れた選択率となる。以上
より、エチレン分圧は、好ましくは0.3MPa以上、
より好ましくは0.4MPa以上、更に好ましくは0.
5MPa以上、特に好ましくは0.7MPa以上であ
る。尚、本反応は図9に示す反応メカニズムによって進
ものと考えられる。
【0035】4.反応温度とエチルジメトキシシランの
選択率等との関係 珪素と触媒との混合物を240℃、1時間前処理加熱し
た後、180〜240℃の各温度で反応させて、エチル
ジメトキシシランの選択率等との関係を調べた。尚、2
40℃、1時間の前処理を行い、メタノールとエチレン
の分圧は各々、0.15MPa、0.72MPaとし
た。その結果を図3に示す。反応温度が上がるととも
に、珪素転化率(a)、エチルジメトキシシランの選択
率(b)及び収率(c)は、高くなり、一方、エチルト
リメトキシシランの選択率(d)は低下した。また、2
40℃以上の反応温度の影響を前処理なしの場合で調べ
た。メタノールとエチレンの分圧は各々、0.15、
0.72とした。図4にこの結果を示した。この結果に
示すように、珪素転化率(a)は280℃で34%まで
低下し、エチルジメトキシシランの選択率(b)と収率
(c)も280℃ではともに低かった。特に260℃を
超えると、珪素転化率(a)もエチルジメトキシシラン
の選択率(b)も急に減少した。また、副生成物である
エチルトリメトキシシランの選択率は、280℃になる
と急激に増加した。このような高温での急激なエチルト
リメトキシシランの増加及び低温でのこの増加は全く予
期しない、意外なものであった。また、240℃及び2
60℃では、エチルジメトキシシランとエチルトリメト
キシシランの選択率の合計はほぼ同じであった。更に、
前記するように、両者に対するエチルジメトキシシラン
の割合は、180℃、200℃。220℃、240℃、
260℃、280℃では各々、61%、75%、82
%、88%、88%、94%、52%である。以上よ
り、200〜240℃、特に240℃においては、エチ
ルジメトキシシランの高い選択率と収率が得られている
ことを示している。従って、反応温度は、好ましくは1
90〜260℃、より好ましくは200〜260℃、更
に好ましくは200〜240℃である。
【0036】5.全圧とエチルジメトキシシランの選択
率等との関係 エチレンとメタノールの圧力の比を0.72:0.15
で一定にして、全圧を0.1〜1.5MPaの間で種々
変えた場合の結果を図5に示す。この結果によれば、エ
チルジメトキシシラン選択率(b)は全圧が大きくなる
につれ高くなり、1.5MPaでは33%であった。全
圧が約0.38MPaでこの選択率が20%、約0.9
MPaで30%となる。また、珪素転化率は、0.4M
Paまで増加し、それ以後は余り変わらなかったが、最
大で63%にまで達した。1.2MPaではエチルジメ
トキシシランが最大収率(20%)を示し、珪素転化率
とエチルジメトキシシラン選択率はそれぞれ62%、3
3%となった。以上より、全圧は、0.4MPa以上が
好ましく、好ましくは0.8MPa以上、より好ましく
は1.0MPaである。
【0037】6.珪素、メタノール及びプロピレンから
のn−プロピルジメトキシシランの合成 珪素、メタノール及びプロピレンの反応を、前記と同様
に高圧反応管を用いて240℃、メタノール及びプロピ
レン分圧が各々0.10MPa、0.60MPaにて行
った(尚、珪素と触媒の混合物に対して240℃、1時
間にて前処理を行っている。)。この反応の結果を、反
応時間に対する、金属珪素転化率(a)及び反応生成物
の生成速度(b)〜(f)との関係として図6に示す。
この結果によれば、プロピレン付加生成物としてのn−
プロピルジメトキシシラン(c)、イソプロピルジメト
キシシラン(d)及びn−プロピルトリメトキシシラン
(f)が、トリメトキシシラン(b)、テトラメトキシ
シラン(e)、メチルジメトキシシラン(g)及びメチ
ルトリメトキシシラン(h)と一緒に生成している。n
−プロピルジメトキシシランの選択率は14%、珪素転
化率は59%である。そして、i−プロピルジメトキシ
シランと比べてn−プロピルジメトキシシランの生成速
度が圧倒的に大きいことを示している。この比はおおよ
そ1:9である。
【0038】また、プロピレン分圧を種々変えて、反応
温度240℃、メタノール分圧が0.10MPaで行
い、この結果を図7に示す。この結果によれば、n−プ
ロピルジメトキシシランの選択率(b)は、プロピレン
分圧に比例して大きくなり、0.6MPaでは14%で
あった。珪素転化率(a)は60%あたりでほぼ一定で
あった。n−プロピルジメトキシシランとイソプロピル
ジメトキシシランの比は分圧に依存せず、ほぼ9:1
(図示せず)であった。以上より、プロピレン分圧が
0.3MPa以上の場合は上記選択率が7%以上、珪素
転換率は約58%、0.4MPa以上の場合は上記選択
率が10%以上、珪素転換率は約58%であった。ま
た、両者に対するn−プロピルジメトキシシランの割合
は約90%と大きい。
【0039】反応温度を種々変えて、メタノール分圧及
びプロピレン分圧を各々0.10MPa、0.60MP
aで行い、この結果を図8に示す(尚、珪素と触媒の混
合物に対して同様に前処理を行っている。)。この結果
によれば、n−プロピルジメトキシシランの選択率
(b)は、温度とともに増加し、220〜240℃の間
で14%に達した。そして、n−プロピルジメトキシシ
ランの生成は280℃でほとんど止まっている。珪素転
化率(a)は240℃で59%に達し、その後減少し
た。n−プロピルジメトキシシランの最大収率(c)は
240℃で8%であった。イソプロピルジメトキシシラ
ンに対するn−プロピルジメトキシシランの比は反応温
度とともに変化した。その比は220℃で10(両者の
合計に対するn−プロピルジメトキシシランの割合;9
1%)と大変大きく、高温になるにつれ低下し280℃
では4(両者の合計に対する割合;80%)であった。
メタノール分圧が240℃で半分(52kPa)にまで
低下すると、n−プロピルジメトキシシランの選択率と
珪素転化率の両方が増加し、それぞれ15%、82%と
なった。n−プロピルジメトキシシランの収率は12%
であった。
【0040】プロピルジメトキシシラン生成のメカニズ
ムは、図10のように考えられる。即ち、プロピレンは
表面シリレン(I)と反応してメチルシラシクロプロパ
ン種(VI)を生成する。次に、化学種(VI)にメタ
ノールが攻撃(a又はbを開裂させるための攻撃)し
て、プロピルジメトキシシランが生成する。このときの
攻撃場所の違いによって、プロピルジメトキシシランの
選択率が支配される。即ち、結合aが開裂すると、n−
プロピルジメトキシシランが生成すし、一方、結合bが
開裂すると、イソプロピルジメトキシシランが生成す
る。本発明においては、結合aが開裂することによるn
−体の生成が優先的に起こっていると推定される。一
方、シリレンとオレフィンとの反応によりn−体とi−
体が生成する類似の反応系が種々知られているが、通
常、i−体が優先的に生成する。例えば、メチルフェニ
ルシリレンと1−オクテンの反応によって得られる1−
メチル−1−フェニル−2−ヘキシルシラシクロプロパ
ンは、メタノール化してイソ体である2−(メチルフェ
ニルメトキシシリル)オクタンを生成することが報告さ
れている。このときのイソ体/n−体の比は7.0(n
−体;13%)である。1−オクテンの代わりにアリル
トリメチルシランを用いると、イソ生成物である1−ト
リメチルシリル−2−(メチルフェニルメトキシシリ
ル)プロパンが主として得られる。また、プロピルジク
ロロシランを合成するために、珪素、塩化水素及びプロ
ピレンを反応させた場合、主生成物はイソプロピルジク
ロロシランであることも知られている。本発明において
n−体が優先的に生成する現象は、メタノリシス反応系
の差異、即ち本発明では金属珪素の表面であるのに対し
て、類似の他の反応系では気相であることに起因してい
ると考えられる。本発明では、プロピレンの圧力を変化
させても生成物におけるi−体/n−体の比率は一定で
ある。このことは、金属珪素表面に対するプロピレンの
付加過程が、生成物におけるi−体/n−体の選択率を
決定する要因ではないことを示している。このことは、
図10に示した反応機構を支持している。
【0041】以上より、反応温度を200〜240℃の
場合には、n−プロピルジメトキシシランの選択率が1
0%以上であり、珪素転換率も40%以上であり、特に
220〜240℃においては珪素転換率は50%以上を
示す。また、常識的には本実施例に係わる反応において
もi−化合物が主生成物と考えられてもよいが、実際に
はn−化合物が90%程度の高選択性でもって製造され
ることは意外であった。従って、本製造方法は、n−プ
ロピルジメトキシシランの効率的な製造方法として極め
て有用である。
【0042】7.珪素、エタノール及びエチレンからの
エチルジエトキシシランの合成 珪素、エタノール及びエチレンを反応させることによ
り、エチルジエトキシシランを高い選択率で得ることが
できた。反応は240℃、エチレン0.99MPa、エ
タノール0.21MPaで行い、28%の選択率を有す
るエチルジエトキシシランを得た。同時に61%のトリ
エトキシシラン、2%のテトラエトキシシラン、5%の
エチルトリエトキシシラン、3%のジエチルエトキシシ
ラン及び1%のジエチルジエトキシシランを得た。珪素
転化率は46%で、エチルジエトキシシランの収率は1
3%であった。エチルジエトキシシラン及び5%のエチ
ルトリエトキシシランに対するエチルジエトキシシラン
の割合は、85%である。
【0043】実施例2 本実施例は、メタノール及びエチレンを用いた場合、反
応系内の酸素濃度について検討したものである。金属珪
素(珪素含有率99.9重量%、粒径45〜63μm)
9.0mmol、塩化第一銅(純度95%)0.56m
mol(珪素に対する銅の割合は10wt%となる)を
物理混合し、内径9.3mmのステンレス製反応管に充
填した。ヘリウムを30mmol/hで室温下(25〜
30℃)にて1時間流通させ、系内の残留酸素が0.2
パーセントになったことを確認した。続いて、ヘリウム
30mmol/h気流下、反応管を240℃まで昇温
し、同温度にて1時間保つ、前処理を行った。その後、
反応管の直前で気化されたメタノール(メタノール分圧
0.15MPa)とエチレン(エチレン分圧0.72M
Pa)、同伴ガスのヘリウムを流した。反応全圧を背圧
弁で調節し、1.0MPaで反応を行った。その結果、
反応時間4時間で、ケイ素転化率60%、目的物のエチ
ルジメトキシシランの選択率40%、収率は24%であ
った。
【0044】比較例 実施例2と同じ装置に、同じ仕込み条件で、金属ケイ素
を仕込み、ヘリウム30mmol/hで流通と同時に、
反応管の昇温に入り、240℃に達してから1時間保持
した。尚、反応系内は大気であったので、スタート時の
酸素濃度は21パーセントである。その後、ヘリウム3
0mmol/h気流下、反応管を240℃まで昇温しヘ
リウその後、メタノールガス(メタノール分圧0.15
MPa)とエチレン(エチレン分圧0.72MPa)、
同伴ガスのヘリウムを流した。反応全圧を背圧弁で調節
し、1.0MPaで反応を行った。反応開始後、直ぐに
生成液が溜出し始めた。溜出して来る生成液の組成をガ
スクロマトグラフィーにより分析し、その組成の経時的
変化を観察し、アルコールの組成が100%近くになっ
た時点をもって反応終了とした。その際の反応時間は5
時間である。その結果、ケイ素転化率は52%。目的物
のエチルジメトキシシランの選択率は28%、その収率
は15%であった。
【0045】実施例3 実施例2と同じ条件で、エチレンの代わりにプロピレン
を用いた。反応時間は4時間である。ケイ素転化率は6
0%、目的物のn−プロピルジメトキシシランの選択率
は15%、その収率は9%であった。
【0046】実施例4 実施例2と同じ条件で、メタノールの代わりにエタノー
ルを用いた。反応時間は4時間である。この結果、ケイ
素転化率は60%、目的物のエチルジエトキシシランの
選択率は35%。その収率は20%であった。
【0047】実施例2〜4の効果 これらの実施例においては、反応開始前の酸素濃度を
0.2%と極めて小さく調整しているので、いずれも、
比較例及び実施例1と比べて、ケイ素転化率、目的物の
アルキルジアルコキシシランの選択率及びその収率は大
きく、しかも安定した結果を示している。
【0048】尚、本発明においては、前記具体的実施例
に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範
囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、
上記実施例において用いたオレフィン化合物とアルコー
ルの組合せ以外の組合せも使用でき、例えば、エチレン
とプロパノール、プロピレンとエタノール若しくはプロ
パノールの組合せとすることもできる。また、これらの
アルコールと他のオレフィン(ブチレン等)、アルキン
化合物(アセチレン等)を組み合わせることもできる
し、ブタノールと種々のオレフィン化合物等の種々の組
合せを用いることもできる。更に、反応温度、各種化合
物(例えばオレフィン化合物等)の分圧、全圧、反応時
間等も、上記実施例以外の種々の組合せを用いることも
できる。
【0049】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、触媒の存在
下に金属珪素と炭素数1〜4のアルキルアルコール及び
オレフィン化合物等を気相でアルキルジアルコキシラン
を製造するに際し、所定の反応温度及び所定のオレフィ
ン分圧を用いるので、有用なアルキルジアルコキシシラ
ンの選択率が高く、しかもアルキルジアルコキシシラン
及びアルキルトリアルコキシシランの合計に対する前者
の割合が高いものとすることができる。他の本発明の製
造方法によれば、同様に気相で反応させてアルコキシシ
ランを製造するに際し、反応開始前に、反応系内の酸素
濃度を1.0%以下にすることにより、金属珪素の転化
率を更に一層高くでき、環境面でも改善され、またアル
キルジアルコキシランの選択率も更に一層向上させるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属珪素、メタノール及びエチレンの反応にお
いて、時間と速度又は転化率との関係を示す説明図であ
る。
【図2】金属珪素、メタノール及びエチレンの反応にお
いて、エチレン分圧と転化率、選択率又は収率との関係
を示す説明図である。
【図3】金属珪素、メタノール及びエチレンの反応にお
いて、反応温度(180〜240℃)と転化率、選択率
又は収率との関係を示す説明図である。
【図4】金属珪素、メタノール及びエチレンの反応にお
いて、反応温度(240〜280℃)と転化率、選択率
又は収率との関係を示す説明図である。
【図5】金属珪素、メタノール及びエチレンの反応にお
いて、全圧と転化率、選択率又は収率との関係を示す説
明図である。
【図6】金属珪素、メタノール及びプロピレンの反応に
おいて、時間と速度又は転化率との関係を示す説明図で
ある。
【図7】金属珪素、メタノール及びエチレンの反応にお
いて、エチレン分圧と転化率、選択率又は収率との関係
を示す説明図である。
【図8】金属珪素、メタノール及びエチレンの反応にお
いて、反応温度(200〜280℃)と転化率、選択率
又は収率との関係を示す説明図である。
【図9】金属珪素、メタノール及びエチレン等の反応メ
カニズムを示す説明図である。
【図10】金属珪素、メタノール及びプロピレン等の反
応メカニズムを示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4H039 CA92 CF10 4H049 VN01 VP01 VQ21 VR11 VR21 VR42 VS99 VT04 VT25 VT39 VT40 VW02 VW32

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 触媒の存在下に金属珪素、炭素数1〜4
    のアルキルアルコール、並びにオレフィン化合物及びア
    ルキン化合物のうちの少なくとも1種を気相で反応させ
    てアルコキシシランを製造する方法において、反応温度
    が180〜260℃であり、アルキル(アルケニル)ジ
    アルコキシシラン及びアルキル(アルケニル)トリアル
    コキシシランの合計に対する該アルキル(アルケニル)
    ジアルコキシシランの割合が60モル%以上であること
    を特徴とするアルコキシシランの製造方法。
  2. 【請求項2】 上記オレフィン化合物又はアルキン化合
    物の分圧が0.3MPa以上である請求項1記載のアル
    コキシシランの製造方法。
  3. 【請求項3】 触媒の存在下に金属珪素、炭素数1〜4
    のアルキルアルコール及びオレフィン化合物を気相で反
    応させてアルコキシシランを製造する方法において、上
    記アルキルアルコールがメタノールであり、上記オレフ
    ィン化合物がエチレンであり、エチルジメトキシシラン
    の選択率が20%以上であり、且つエチルジメトキシシ
    ラン及びエチルトリメトキシシランの合計に対する該エ
    チルジメトキシシランの割合が60モル%以上であるこ
    とを特徴とするアルコキシシランの製造方法。
  4. 【請求項4】 反応温度が180〜260℃であり、上
    記オレフィン分圧が0.3MPa以上であり、珪素転化
    率が45%以上である請求項3記載のアルコキシシラン
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 触媒の存在下に金属珪素、炭素数1〜4
    のアルキルアルコール及びオレフィン化合物を気相で反
    応させてアルコキシシランを製造する方法において、上
    記アルキルアルコールがメタノールであり、上記オレフ
    ィン化合物がプロピレンであり、n−プロピルジメトキ
    シシラン及びi−プロピルジメトキシシランの合計に対
    する該n−プロピルジメトキシシランの割合が80モル
    %以上であることを特徴とするアルコキシシランの製造
    方法。
  6. 【請求項6】 更に、プロピルジメトキシシラン及びプ
    ロピルトリメトキシシランの合計に対する該プロピルジ
    メトキシシランの割合が60モル%以上である請求項5
    記載のアルコキシシランの製造方法。
  7. 【請求項7】 触媒の存在下に金属珪素、炭素数1〜4
    のアルキルアルコール及びオレフィン化合物を気相で反
    応させてアルコキシシランを製造する方法において、上
    記アルキルアルコールがエタノールであり、上記オレフ
    ィン化合物がエチレンであり、エチルジエトキシシシラ
    ンの選択率が20%以上であり、且つエチルジエトキシ
    シラン及びエチルトリエトキシシランの合計に対する該
    エチルジエトキシシランの割合が60モル%以上である
    ことを特徴とするアルコキシシランの製造方法。
  8. 【請求項8】 反応温度が180〜260℃であり、上
    記オレフィン分圧が0.3MPa以上であり、珪素転化
    率が45%以上である請求項7記載のアルコキシシラン
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 触媒の存在下に金属珪素、炭素数1〜4
    のアルキルアルコール、並びにオレフィン化合物及びア
    ルキン化合物のうちの少なくとも1種を気相で反応させ
    てアルコキシシランを製造する方法において、反応開始
    前に、反応系内の酸素濃度を1.0%以下にすることを
    特徴とするアルコキシシランの製造方法。
  10. 【請求項10】 反応温度が180〜260℃であり、
    上記オレフィン化合物又はアルキン化合物の分圧が0.
    3MPa以上であり、珪素転化率が40%以上である請
    求項9記載のアルコキシシランの製造方法。
  11. 【請求項11】 ステンレス製管からなり、内壁が耐熱
    性化合物で被覆された高圧固定床流通反応器を用いて反
    応を行う請求項1乃至10のいずれかに記載のアルコキ
    シシランの製造方法。
JP2001022531A 2001-01-30 2001-01-30 アルコキシシランの製造方法 Pending JP2002226488A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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