JP2002184970A - 量子ドットを含む半導体装置、その製造方法及び半導体レーザ装置 - Google Patents

量子ドットを含む半導体装置、その製造方法及び半導体レーザ装置

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JP2002184970A JP2000381842A JP2000381842A JP2002184970A JP 2002184970 A JP2002184970 A JP 2002184970A JP 2000381842 A JP2000381842 A JP 2000381842A JP 2000381842 A JP2000381842 A JP 2000381842A JP 2002184970 A JP2002184970 A JP 2002184970A
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semiconductor
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Taketeru Mukai
剛輝 向井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 量子ドットへのキャリアの注入効率の低下を
防止することが可能な半導体装置を提供する。 【解決手段】 第1の半導体からなる主表面を有する基
板の主表面の上に、複数の量子ドットが離散的に分布す
る。第2の半導体からなる被覆層が、量子ドットの分布
する仮想的な面の上に形成されている。前記仮想的な面
内のうち、量子ドットの配置されていない領域の少なく
とも一部に障壁層が配置されている。障壁層は、第1及
び第2の半導体のバンドギャップよりも大きなバンドギ
ャップを有する第3の半導体もしくは絶縁材料で形成さ
れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、量子ドットを含む
半導体装置、その製造方法及び半導体レーザ装置に関
し、特に量子ドットに注入されたキャリアを利用する半
導体装置、その製造方法、及び量子ドット内のキャリア
の再結合による発光現象を利用した半導体レーザ装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】半導体プロセスの進歩に伴い、ナノスケ
ールの結晶成長技術や微細加工技術が半導体装置の製造
に利用されるようになってきた。この成長技術や微細加
工技術を利用することによって、半導体集積回路装置の
集積度の向上を図ることはもとより、量子力学的効果を
利用した素子、例えば量子井戸レーザ発振器等が実用化
されている。
【0003】量子ドット構造が、量子力学的効果を利用
する究極の構造として注目されている。量子ドットと
は、周囲のポテンシャルよりも低いエネルギ準位を有
し、キャリアを極微細な領域に三次元的に閉じ込めるこ
とができる極微細構造を意味する。ひとつの量子ドット
の伝導帯側の基底順位には、電子が2個しか入ることが
できない。量子ドットをレーザ発振器の活性領域として
用いることにより、電子と正孔との相互作用を効率化す
ることができる。また、量子ドットを用いたレーザ発振
器は、発振閾値や、閾値の温度特性等の点で、2次元的
に広がる量子井戸層を用いたレーザ発振器の限界を超え
る素子として期待されている。また、量子ドットを用い
た半導体素子として、ホールバーニング効果を応用した
量子ドットメモリ装置等の研究も盛んである。
【0004】量子ドット構造を作製する技術として、微
細加工技術を利用して人為的に量子ドットを形成する技
術が知られている。量子ドットの形成方法の例として、
電子線を用いたリソグラフィによる方法、マスクパター
ン上に積み上げたピラミッド型の結晶の頂点に量子ドッ
トを配置する方法(GaAs tetrahedral quantum dot str
uctures fabricated using selective area metalorgan
ic chemical vapor deposition, T. Fukui et al., App
l. Phys. Lett. 58 (18), 6 May 1991)、マスクパター
ンの下に形成した四角錐の頂点に量子ドットを配置する
方法、微傾斜基板上における結晶成長初期の横方向成長
を利用する方法、STM(scanning tunnel microscop
y)技術を応用した原子マニピュレーションによる方法
等が挙げられる。これらの方法は、半導体材料を人為的
に加工するという共通の特徴を持っている。このため、
量子ドットの形成位置を自在に制御することができると
いう利点を有している。
【0005】量子ドットを形成する他の方法として、量
子ドットを自己形成させる方法が知られている。量子ド
ットが自己形成される現象は、自己組織化現象と呼ばれ
る。具体的には、格子不整合となる特定の条件下で半導
体層を気相エピタキシャル成長させる。このとき、下地
表面上に2次元的に一様に広がった膜ではなく、3次元
的な微細構造(量子ドット構造)が自己形成される。こ
の方法によると、人為的に微細加工する場合に比べて、
量子ドットが高密度に分布し、かつ各々の量子ドットが
高品質である量子ドット構造を得ることができる。
【0006】量子ドットの自己組織化現象のうち最もよ
く知られているものは、ストランスキ−クラスタノフ
(Stranski-Krastanov)モード(SKモード)と呼ばれ
るものである。SKモードによる成長においては、成長
初期に下地表面上に2次元的に広がる薄い膜(濡れ層)
が成長し、原料供給を続けると、量子ドットが自己形成
される。SKモードにより形成された量子ドットを量子
井戸層で埋め込むことにより、量子ドットからの発光波
長を制御することができる。SKモードを利用して量子
ドットを形成すると、大きさの揃った均一な量子ドット
を得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】量子ドット形成技術の
進歩は目覚しいが、量子ドット構造を半導体素子へ応用
した場合の課題も明らかになりつつある。そのひとつ
は、量子ドットへのキャリアの注入効率が低いことであ
り、もうひとつは、フォノンボトルネック現象により基
底準位へのキャリアの注入効率が低下することである。
【0008】図1(B)を参照して、量子ドットへのキ
ャリアの注入効率の低下の要因について説明する。図1
(B)は、従来の量子ドット構造の一例の断面図を示
す。n型導電性の半導体基板1の表面上に、複数の量子
ドット2が離散的に分布する。量子ドット2を覆うよう
に、半導体基板1の表面上に、p型導電性の半導体層3
が形成されている。半導体基板1と半導体層3との間に
順方向電圧を印加すると、n型半導体基板1内の電子1
0a及びp型半導体層3内の正孔11aが量子ドット2
に注入される。
【0009】ところが、量子ドット2が離散的に分布し
ているため、一部の電子10c及び正孔11cは、量子
ドット2に注入されることなく、それぞれp型半導体層
3及びn型半導体基板1内に輸送される。また、一部の
電子10b及び正孔11bは、量子ドット以外の領域で
再結合する。このため、電流に寄与するキャリアの一部
しか量子ドット2へ注入されない。量子ドットを半導体
レーザ装置に応用した場合には、量子ドットへのキャリ
アの注入効率の低下が発光効率の低下につながる。
【0010】フォノンボトルネック現象は、エネルギ保
存則により離散準位へのキャリアの緩和(高い準位から
低い準位への遷移)が抑制される現象である。量子ドッ
トにおいては、状態密度関数がデルタ関数的になるた
め、キャリア緩和に光学フォノンが関与することにな
る。このため、キャリア緩和が生じにくくなる。フォノ
ンボトルネック現象のため、量子ドットにおけるキャリ
ア緩和が、量子井戸層におけるキャリア緩和よりも遅い
ことが報告されている(例えば、Physical ReviewB54,
R5243, 1996)。
【0011】本発明の目的は、量子ドットへのキャリア
の注入効率の低下を防止することが可能な半導体装置及
びその製造方法を提供することである。
【0012】本発明の他の目的は、フォノンボトルネッ
ク現象によってキャリア緩和が生じにくくなることを抑
制することが可能な半導体装置及びその製造方法を提供
することである。
【0013】本発明の他の目的は、量子ドットへのキャ
リアの注入効率を高め、高い発光効率を有する半導体レ
ーザ装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の一観点による
と、第1の半導体からなる主表面を有する基板と、前記
主表面の上に離散的に分布する複数の量子ドットと、前
記量子ドットの分布する面の上に形成された第2の半導
体からなる被覆層と、前記量子ドットの分布する面内の
うち、前記量子ドットの配置されていない領域の少なく
とも一部に配置され、前記第1及び第2の半導体のバン
ドギャップよりも大きなバンドギャップを有する第3の
半導体もしくは絶縁材料で形成された障壁層とを有する
半導体装置が提供される。
【0015】基板と被覆層との間に電流を流す際に、キ
ャリアが障壁層を通過できないため、量子ドットへのキ
ャリアの注入効率を高めることができる。
【0016】本発明の他の観点によると、半導体からな
る主表面の上に、離散的に分布する量子ドットを形成す
る工程と、前記主表面のうち前記量子ドットの配置され
ていない領域の上に、Alを含む化合物半導体からなる
第1の層を形成する工程と、前記量子ドット及び第1の
層を、半導体からなる第2の層で覆う工程と、前記第1
の層の端面を露出させる工程と、前記第1の層の露出し
た端面から、該第1の層を酸化する工程とを有する半導
体装置の製造方法が提供される。
【0017】酸化された第1の層は絶縁性を示すため、
この部分が障壁層として作用し、量子ドットへのキャリ
アの注入効率を高めることができる。
【0018】本発明の他の観点によると、第1導電型の
半導体からなる基板と、前記基板の表面上に形成された
第1の分離閉込へテロ層と、前記第1の分離閉込へテロ
層の上に離散的に分布する複数の量子ドットと、前記量
子ドットの分布する面の上に形成された第2の分離閉込
へテロ層と、前記第1の分離閉込へテロ層と前記第2の
分離閉込へテロ層との間であって、前記量子ドットの分
布する面内のうち前記量子ドットの配置されていない領
域の少なくとも一部に配置され、前記第1及び第2の分
離閉込へテロ層のバンドギャップよりも大きなバンドギ
ャップを有する半導体もしくは絶縁材料で形成された障
壁層と、前記第2の分離閉込へテロ層の上に形成され、
前記第1導電型とは逆の第2導電型の半導体からなるク
ラッド層と、前記基板と前記クラッド層との間に電圧を
印加するための一対の電極とを有する半導体レーザ装置
が提供される。
【0019】第1及び第2の分離閉込へテロ層の間に障
壁層が配置されているため、量子ドットへのキャリアの
注入効率を高めることができる。これにより、発光効率
を高めることが可能になる。
【0020】
【発明の実施の形態】図1(A)に、本発明の第1の実
施例による半導体装置の断面図を示す。n型GaAsか
らなる基板1の表面上に、In0.5Ga0.5Asからなる
複数の量子ドット2が離散的に分布している。各量子ド
ット2の面内方向の大きさは約10nm程度であり、高
さは5〜10nm程度である。GaAs基板1の表面の
うち、量子ドット2の配置されていない領域を、障壁層
4が覆う。量子ドット2及び障壁層4の上に、p型Ga
As層3が形成されている。
【0021】量子ドット2は、自己組織化現象を利用
し、分子線エピタキシ(MBE)により形成される。こ
の形成は、例えば、In原料温度750℃、Ga原料温
度900℃、As原料温度300℃、基板温度500
℃、成長速度毎秒0.1モノレイヤの条件で行われる。
【0022】なお、GaAs基板1の表面のうち量子ド
ット2の形成されていない領域が、数原子層の厚さの塗
れ層で覆われる場合もある。
【0023】次に、障壁層4の形成方法について説明す
る。量子ドット2を形成した後、GaAs基板1の上
に、MBEによりAlAs層を成長させる。このAlA
s層は量子ドット2の上にはほとんど成長しないため、
GaAs基板1の表面のうち量子ドット2の配置されて
いない領域のみがAlAs層で覆われる。p型GaAs
層3を成長させた後、GaAs基板1とGaAs層3と
の間に配置されているAlAs層を、その端面から酸化
する。横方向に酸化が進むことによりAlAs層のほと
んど全領域が酸化され、絶縁性の障壁層が形成される。
このとき、GaAs基板1、GaAs層3、及び量子ド
ット2は酸化されない。p型GaAs層3を成長させた
後に、その下のAlAs層を酸化するため、p型GaA
s層3は、GaAs基板1の表面の結晶性を引き継いで
成長したエピタキシャル成長層である。
【0024】次に、図2(A)を参照して、AlAs層
の好ましい酸化条件について説明する。
【0025】GaAs基板の表面上厚さ30nmのAl
As層を、Al0.6Ga0.4As層の厚膜で挟んだ積層構
造を、MBEにより形成した。この積層構造を部分的に
エッチングすることにより、幅約20μmの尾根状構造
を残した。このエッチングは、燐酸、過酸化水素、水を
1:1:10の体積比で混合したエッチング液を用いて
行うことができる。なお、混合前の燐酸の濃度は85
%、過酸化水素の濃度は31%である。尾根状構造を残
した基板を、水蒸気雰囲気中で熱処理した。尾根状構造
の側面に露出したAlAs層21の端面から横方向に酸
化が進む。
【0026】図2(A)に、酸化温度、酸化時間と酸化
の深さとの関係を示す。横軸は酸化時間を単位「分」で
表し、縦軸は酸化の深さを単位「μm」で表す。図中の
四角記号は、酸化温度を360℃とした場合を示し、丸
記号は、酸化温度を320℃とした場合を示す。酸化の
深さは、尾根状構造の断面を走査型電子顕微鏡(SE
M)で観察して測定した。この熱処理条件では、AlG
aAs層は実質的に酸化されなかった。
【0027】図2(A)から、水蒸気中で温度360℃
で30分間の熱処理を行えば、約6μmの深さまで酸化
されることがわかる。例えば、尾根状構造の幅を12μ
m以下にし、360℃で30分間の酸化を行うことによ
り、AlAs層の全領域を酸化することができる。尾根
状構造の幅に応じて酸化温度及び酸化時間を調節するこ
とにより、尾根状構造内のAlAs層の全領域を酸化す
ることができる。
【0028】図2(B)に、他の評価実験で用いた試料
の断面図を示す。GaAs基板20の上に、厚さ106
nmのInAlAs層21と厚さ93nmのInGaA
s層22とが交互に積層された尾根状構造が形成されて
いる。この積層構造を水蒸気雰囲気中で熱処理したとこ
ろ、酸化はAlを含んでいるInAlAs層21のみで
生じ、InGaAs層22はまったく酸化されていなか
った。これは、Alを含む化合物半導体層内にInGa
Asからなる量子ドットを分布させると、化合物半導体
層を酸化しても、量子ドットは酸化されないことを示し
ている。
【0029】図1(A)に示したように、第1の実施例
による量子ドット構造においては、GaAs基板1とG
aAs層3との間の、量子ドット2の配置されていない
領域に、障壁層4が配置されている。GaAs基板1と
GaAs層3との間に順方向電圧を印加すると、GaA
s基板1内の電子及びGaAs層3内の正孔が、両者の
界面の方向に移動する。これらのキャリアは、障壁層4
によって形成されたポテンシャル障壁により障壁層4内
には注入されず、ポテンシャルの低い量子ドット2内に
注入される。このため、量子ドット2内へのキャリアの
注入効率を高めることができる。
【0030】次に、図3を参照して、第2の実施例によ
る量子ドットを有する半導体装置について説明する。
【0031】図3(A)は、第2の実施例による半導体
装置の断面図を示す。図1に示した第1の実施例では、
量子ドット2及び障壁層4がGaAs基板1の表面上に
直接形成されていた。第2の実施例では、GaAs基板
1の表面上にInGaAsからなる量子井戸層5及びG
aAsからなるトンネル層6がこの順番に積層され、ト
ンネル層6の表面上に量子ドット2及び障壁層4が形成
されている。
【0032】量子井戸層5のIn組成比は0.2〜0.
3であり、その厚さは10〜30nmである。トンネル
層6の厚さは5nm以下であり、キャリアがトンネル現
象によりトンネル層6を通過することができる。
【0033】図3(B)に、GaAs基板1、量子井戸
層5、トンネル層6、量子ドット2、及びGaAs層3
の伝導体下端のエネルギバンド図を示す。なお、図3
(B)では、GaAs基板1とGaAs層3との間に順
方向電圧が印加されている状態を示す。
【0034】GaAs基板1内の伝導帯に励起されてい
る電子が量子井戸層5内に注入され、その基底状態を占
める。量子井戸層5の基底状態と量子ドットの1次準位
1との共鳴により、量子井戸層5内の電子が量子ドッ
ト2の1次準位L1に、トンネル現象により移動する。
量子ドット2の1次準位を占める電子は、量子ドット2
の基底準位L0に遷移する。このように、量子井戸層5
を介して量子ドット内に電子が注入される。
【0035】量子井戸層5がない場合には、GaAs基
板1の伝導帯中の電子が、量子ドット2の1次準位に注
入されなければならない。ところが、フォノンボトルネ
ック現象のため、伝導帯中の電子は量子ドット2に捕捉
されにくい。量子井戸層5を介して量子ドット2に電子
を注入することにより、フォノンボトルネック現象の影
響を回避することができる。量子井戸層5から量子ドッ
ト2へのトンネル現象による電子の移動は高速である。
このため、量子ドット2への電子の捕捉速度を速くする
ことができる。
【0036】また、図1(A)に示した第1の実施例の構
造では、GaAs基板1と障壁層4との界面に欠陥準位
が形成される場合がある。図3(A)に示した第2の実
施例では、GaAsトンネル層6と障壁層4との界面ま
でキャリアが到達しない。このため、この界面に欠陥準
位が形成されたとしても、欠陥準位にキャリアがトラッ
プされることを防止することができる。
【0037】図3(A)で説明した第2の実施例では、
量子ドット2が分布する仮想的な面とGaAs基板1と
の間に、量子井戸層5とトンネル層6とを配置した。図
3(C)に示すように、量子井戸層5Aとトンネル層6
Aとを、量子ドット2が分布する仮想的な面とp型Ga
As層3との間に配置してもよい。また、量子井戸層と
トンネル層とを、量子ドット2の分布する仮想的な面の
両側に配置してもよい。
【0038】図4に、上記第1の実施例による量子ドッ
ト構造を適用した半導体レーザ装置の断面図を示す。
【0039】(001)面を主面とするn型のGaAs
基板30の主面上に、n型のAl0. 4Ga0.6Asからな
る厚さ1μmのn型クラッド層31が形成されている。
n型クラッド層31の上に、GaAsからなる厚さ10
0nmの分離閉込へテロ層(SCH層)32が形成され
ている。分離閉込へテロ層32の表面上に、複数の量子
ドット33が離散的に分布する。分離閉込へテロ層32
の表面のうち量子ドット33の配置されていない領域
が、障壁層34で覆われている。量子ドット33はIn
GaAsで形成されている。障壁層34は、MBEによ
り形成されたAlAs層を酸化することにより形成され
た層である。
【0040】量子ドット33及び障壁層34の上に、G
aAsからなる厚さ100nmの分離閉込へテロ層35
が形成されている。分離閉込へテロ層35の上に、p型
のAl0.4Ga0.6Asからなる厚さ1μmのp型クラッ
ド層36が形成されている。その上に、p型Al0.2
0.8Asからなる中間層37、p+型GaAsからなる
コンタクト層38が形成されている。これらの各層は、
MBEにより形成される。量子ドット33は、SKモー
ドを利用したMBEにより形成される。なお、MBEに
よる成長時には、障壁層34の部分にAlAs層を成長
させる。
【0041】コンタクト層38の上面から分離閉込層3
2の下面よりもやや深い位置まで部分的にエッチングさ
れ、尾根45が残されている。このエッチングは、燐酸
と過酸化水素と水との混合液を用いたウェットエッチン
グにより行われる。障壁層34は、尾根45を形成した
後、その側面からAlAs層を酸化することにより形成
される。なお、この酸化は、Al0.4Ga0.6Asからな
るクラッドが酸化されない条件で行われる。
【0042】尾根45が残された基板の表面が、酸化シ
リコンからなる厚さ250nmの絶縁膜39で覆われて
いる。絶縁膜39に、尾根45の上面を露出させる開口
40が形成されている。絶縁膜39及び開口40の底面
に露出したコンタクト層38の上面を、p側電極41が
覆う。p側電極41は、Ti層とPt層とがこの順番に
積層された2層構造を有し、コンタクト層38にオーミ
ック接触する。
【0043】GaAs基板30の背面上に、n側電極4
2が形成されている。n側電極42は、AuGe合金層
とAu層とがこの順番に積層された2層構造を有し、G
aAs基板30にオーミック接触する。
【0044】尾根45の長手方向の両端に反射端面が形
成され、光共振器が画定される。n側電極42とp側電
極41との間に順方向電圧を印加すると、量子ドット3
3にキャリアが注入される。量子ドット33内で電子と
正孔とが再結合することにより、光が放射される。この
光が光共振器内を往復することにより、誘導放出が生ず
る。
【0045】図4に示した半導体レーザ装置において
は、分離閉込へテロ層32と35との間の、量子ドット
33が配置されていない領域に障壁層34が配置されて
いる。このため、図1(A)に示した第1の実施例の場
合と同様に量子ドット33へのキャリア注入効率を高め
ることができる。これにより、発光効率を高めることが
可能になる。
【0046】なお、図3(A)に示したように、図4の
量子ドット33の分布する仮想的な面と分離閉込へテロ
層32との間、及び量子ドット33の分布する仮想的な
面と分離閉込へテロ層35との間に、量子井戸層とトン
ネル層とを挿入してもよい。このような構造とすること
により、フォノンボトルネック現象に起因するキャリア
の注入効率の低下を回避することができる。
【0047】次に、図5(A)及び(B)を参照して、
上記実施例の変形例による量子ドット構造について説明
する。
【0048】上記第1及び第2の実施例では、AlAs
層の全領域を酸化することにより、例えば図1(A)に
示した障壁層4を形成した。この酸化がやや不十分であ
る場合には、図5(A)に示すように、量子ドット2の
周囲に未酸化のAlAs領域4aが残る場合がある。こ
のように、未酸化のAlAs領域4aが残っている場合
であっても、AlAs層のうち多くの領域が酸化されて
いれば、キャリア注入効率向上を図ることができる。な
お、AlAs層のうち少なくとも一部の領域が酸化され
ていれば、全く障壁層が形成されていない場合に比べ
て、キャリア注入効率が高まるであろう。
【0049】上記第1及び第2の実施例では、例えば図
1(A)に示したように、量子ドット2の各々が、その
上に形成されたp型GaAs層3に直接接触していた。
後に酸化されて障壁層4となるAlAs層をMBEによ
り成長させると、量子ドット2の上にはほとんど成長せ
ず、GaAs基板1の表面上に優先的に成長する。とこ
ろが、量子ドット2の上にもわずかに成長する場合があ
る。
【0050】図5(B)は、量子ドット2の上にもAl
As層が薄く成長した場合の量子ドット構造の断面図を
示す。量子ドット2の上に、薄いAlAs層が酸化され
て形成された上部被覆領域4bが残っている。この構造
では、量子ドット2とp型GaAs層3とが直接接触し
ない。しかし、上部被覆領域4bが、トンネル現象によ
りキャリアが通過できる程度に薄い場合には、十分高い
確率でキャリアを量子ドット2内に注入することができ
る。
【0051】上記図1(A)及び図3(A)に示した実
施例では、AlAsを酸化することによって障壁層4を
形成したが、他のAlを含む化合物半導体を酸化して障
壁層4を形成してもよい。Alを含む化合物半導体の酸
化速度は、Alの組成比に依存する。酸化すべき化合物
半導体の酸化速度が、酸化すべきでない化合物半導体の
速度に比べて十分速ければ、酸化すべき化合物半導体の
みを選択的に酸化することができる。また、障壁層4の
材料として、GaAs基板1及びGaAs層3のバンド
ギャップよりも大きなバンドギャップを有する半導体材
料を用いてもよい。
【0052】上記図1(A)及び図3(A)に示した実
施例では、基板材料をGaAsとし、量子ドット2をI
nGaAsで形成したが、その他の材料を用いることも
可能である。例えば、基板材料としてInPを用い、量
子ドットをInAsで形成してもよい。この場合、Al
AsもしくはAlInAsを酸化することによって障壁
層を形成することができる。
【0053】上記実施例では、量子ドットを自己組織化
現象を利用して形成する場合を説明したが、その他の方
法で形成してもよい。図6に、福井らによってアプライ
ドフィジクスレター(Appl. Phys. Lett. 58(18), 6 Ma
y 1991)に紹介された量子ドットの形成方法を説明す
る。
【0054】図6(A)に示すように、(111)B面
が表出したGaAs基板70の表面上に酸化シリコン膜
71を形成する。酸化シリコン膜71に、三角形の開口
72を形成し、GaAs基板70の表面を露出させる。
三角形の開口72は、その三辺が、それぞれGaAs基
板70の〔110〕、〔011〕、及び〔101〕方向
に平行になるように形成される。
【0055】図6(B)に示すように、基板上にMOC
VDによりAlGaAs層73をエピタキシャル成長さ
せる。なお、図6(B)は、1つの開口72を二等分す
る断面を示している。一定の成長条件の下では、AlG
aAs層が(111)B面上にのみ堆積し、{110}
面上にほとんど堆積しない。この条件で成長を行うと、
AlGaAs層73は{110}面を斜面とする三角錐
状に成長する。三角錐の頂上近傍を残してAlGaAs
層73の堆積を停止し、三角錐の頂上近傍にGaAs領
域74を成長させる。
【0056】図6(C)に示すように、三角錐の斜面上
にAlGaAs層75を堆積する。AlGaAs層75
の成長条件をAlGaAs層73の成長条件と変えるこ
とにより、{110}面上にもAlGaAs層を成長さ
せることができる。
【0057】このようにして、AlGaAs層73と7
5に囲まれた微小なGaAs領域74を形成することが
できる。GaAs領域74は周囲のAlGaAs層73
及び75よりもバンドギャップが小さいため、電子を三
次元的に閉じ込める量子ドットとして作用する。
【0058】次に、図6に示した量子ドットの形成方法
を利用して、図1(A)の第1の実施例による障壁層4
及びp型GaAs層3に相当する層を形成する方法につ
いて説明する。
【0059】図6(B)に示したAlGaAs層73の
代わりにGaAs層を形成し、GaAs領域74の代わ
りにInGaAs領域を形成する。図6(C)に示した
AlGaAs層75は形成する必要はない。図6(B)
に示した状態から酸化シリコン膜71を除去し、GaA
s基板70の表面を露出させる。
【0060】GaAs基板70の露出した表面上にAl
As層を成長させる。このAlAs層及びInGaAs
領域74を覆うようにGaAs層を成長させる。AlA
s層をその端面から酸化することにより、障壁層4を形
成することができる。障壁層4の厚さを、GaAs層7
3の高さとほぼ等しくしておくことにより、量子ドット
(InGaAs領域74)へのキャリアの注入効率を高
めることができる。
【0061】以上実施例に沿って本発明を説明したが、
本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種
々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に
自明であろう。
【0062】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
量子ドットの分布する仮想的な面内のうち、量子ドット
の配置されていない部分に障壁層を配したため、量子ド
ットへのキャリアの注入効率を高めることができる。ま
た、量子ドットに近接させて量子井戸層を配置し、量子
井戸層から量子ドット内へキャリアを共鳴トンネルさせ
ることにより、フォノンボトルネック現象によってキャ
リアが量子ドットの離散準位に遷移しにくくなることが
抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は、本発明の第1の実施例による半
導体装置の断面図であり、図1(B)は、従来の量子ド
ットを有する半導体装置の断面図である。
【図2】選択酸化の評価実験により得られたAlAs層
の酸化の深さを、酸化温度360℃の場合と320℃の
場合について、酸化時間の関数として示すグラフ、及び
他の選択酸化の評価実験に用いた積層構造の断面図であ
る。
【図3】図3(A)は、第2の実施例による半導体装置
の断面図であり、図3(B)は、量子ドットと量子井戸
層とのエネルギ準位の関係を示すエネルギバンド図であ
り、図3(C)は、第2の実施例の変形例による半導体
装置の断面図である。
【図4】本発明の実施例による半導体レーザ装置の断面
図である。
【図5】上記実施例の変形例による量子ドット構造の断
面図である。
【図6】微細加工技術を用いて量子ドットを形成する方
法を説明するための部分破断斜視図である。
【符号の説明】
1 GaAs基板 2 InGaAs量子ドット 3 GaAs層 4 障壁層 4a 未酸化AlAs領域 4b 上部被覆領域 5 InGaAs量子井戸層 6 GaAsトンネル層 10a〜10c 電子 11a〜11c 正孔 20 GaAs基板 21 InAlAs層 22 InGaAs層 30 GaAs基板 31 AlGaAsクラッド層 32、35 分離閉込へテロ層 33 InGaAs量子ドット 34 障壁層 36 AlGaAsクラッド層 37 AlGaAs中間層 38 GaAsコンタクト層 39 酸化シリコン層 40 開口 41、42 電極 45 尾根 70 GaAs基板 71 酸化シリコン膜 72 開口 73、75 AlGaAs層 74 GaAs領域

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の半導体からなる主表面を有する基
    板と、 前記主表面の上に離散的に分布する複数の量子ドット
    と、 前記量子ドットの分布する面の上に形成された第2の半
    導体からなる被覆層と、 前記量子ドットの分布する面内のうち、前記量子ドット
    の配置されていない領域の少なくとも一部に配置され、
    前記第1及び第2の半導体のバンドギャップよりも大き
    なバンドギャップを有する第3の半導体もしくは絶縁材
    料で形成された障壁層とを有する半導体装置。
  2. 【請求項2】 さらに、前記主表面と前記量子ドットの
    分布する面との間、もしくは前記量子ドットの分布する
    面と前記被覆層との間に配置され、前記第1及び第2の
    半導体のバンドギャップよりも小さなバンドギャップを
    有する第4の半導体からなる量子井戸層と、 前記量子井戸層と前記量子ドットの分布する面との間に
    配置され、該量子井戸層及び量子ドット内のエネルギ準
    位に対してポテンシャル障壁として機能し、かつ該量子
    井戸層と量子ドットとの間でキャリアがトンネル現象に
    より移動することができる厚さを有するトンネル層とを
    有する請求項1に記載の半導体装置。
  3. 【請求項3】 前記量子井戸層内の準位から前記量子ド
    ット内の準位に共鳴トンネル現象によってキャリアが移
    動することができるように、前記量子井戸層の組成及び
    厚さ、前記量子ドットの組成及び大きさが選択されてい
    る請求項2に記載の半導体装置。
  4. 【請求項4】 前記量子ドットがInGaAsで形成さ
    れ、前記障壁層がAlを含む化合物半導体を酸化して得
    られる材料で形成されている請求項1〜3のいずれかに
    記載の半導体装置。
  5. 【請求項5】 前記被覆層が、前記基板の主表面の結晶
    性を引き継いでエピタキシャル成長された単結晶層であ
    る請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
  6. 【請求項6】 半導体からなる主表面の上に、離散的に
    分布する量子ドットを形成する工程と、 前記主表面のうち前記量子ドットの配置されていない領
    域の上に、Alを含む化合物半導体からなる第1の層を
    形成する工程と、 前記量子ドット及び第1の層を、半導体からなる第2の
    層で覆う工程と、 前記第1の層の端面を露出させる工程と、 前記第1の層の露出した端面から、該第1の層を酸化す
    る工程とを有する半導体装置の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記量子ドットがInGaAsで形成さ
    れている請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
  8. 【請求項8】 第1導電型の半導体からなる基板と、 前記基板の表面上に形成された第1の分離閉込へテロ層
    と、 前記第1の分離閉込へテロ層の上に、離散的に分布する
    複数の量子ドットと、 前記複数の量子ドットの分布する面の上に形成された第
    2の分離閉込へテロ層と、 前記第1の分離閉込へテロ層と前記第2の分離閉込へテ
    ロ層との間であって、前記量子ドットの分布する面内の
    うち前記量子ドットの配置されていない領域の少なくと
    も一部に配置され、前記第1及び第2の分離閉込へテロ
    層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有す
    る半導体もしくは絶縁材料で形成された障壁層と、 前記第2の分離閉込へテロ層の上に形成され、前記第1
    導電型とは逆の第2導電型の半導体からなるクラッド層
    と、 前記基板と前記クラッド層との間に電圧を印加するため
    の一対の電極とを有する半導体レーザ装置。
  9. 【請求項9】 さらに、前記量子ドットの分布する面と
    前記第1の分離閉込ヘテロ層との間、もしくは前記量子
    ドットの分布する面と前記第2の分離閉込へテロ層との
    間に配置され、前記第1及び第2の分離閉込へテロ層の
    バンドギャップよりも小さなバンドギャップを有する半
    導体からなる量子井戸層と、 前記量子井戸層と前記量子ドットの分布する面との間に
    配置され、該量子井戸層及び量子ドット内のエネルギ準
    位に対してポテンシャル障壁として機能し、かつ該量子
    井戸層と量子ドットとの間でキャリアがトンネル現象に
    より移動することができる厚さを有するトンネル層とを
    有する請求項8に記載の半導体レーザ装置。
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