JP2002173849A - パイル経糸制御方法およびパイル経糸制御装置 - Google Patents

パイル経糸制御方法およびパイル経糸制御装置

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JP2002173849A JP2000375545A JP2000375545A JP2002173849A JP 2002173849 A JP2002173849 A JP 2002173849A JP 2000375545 A JP2000375545 A JP 2000375545A JP 2000375545 A JP2000375545 A JP 2000375545A JP 2002173849 A JP2002173849 A JP 2002173849A
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pile warp
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Zenji Tamura
善次 田村
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Tsudakoma Corp
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    • D03DWOVEN FABRICS; METHODS OF WEAVING; LOOMS
    • D03D39/00Pile-fabric looms
    • D03D39/22Terry looms
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 布移動式パイル織機において、織布の移動
やパイル経糸の開口の変化量に左右されることなく、常
に所望のパイル経糸張力を設定できるパイル経糸制御方
法およびパイル経糸制御装置を提供する。 【解決手段】 布移動式パイル織機1において、パイル
経糸3の送り出し経路中に、パイル経糸巻き掛け用の2
つのロールとして、第1のロール7および第2のロール
8を織機フレーム11に対して前後方向に変位自在に設
けるとともに、前記2つのロール7、8のうち、一方の
ものを織布の移動量およびパイル経糸の開口の変化量に
対応して駆動するとともに、他方のものを所望のパイル
経糸張力を生じるべく付勢する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、布移動式パイル織
機において、パイル経糸張力を制御する方法および装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】特許第2622685号の発明は、布移
動式パイル織機のパイル経糸制御装置を開示している。
そのパイル経糸制御装置は、布移動式パイル織機におい
て、前後方向に変位自在のテンションロールにパイル経
糸を巻き掛けることにより、パイル経糸を変位自在に支
持するとともに、テンションロールにパイル経糸張力と
釣り合う方向の力を作用させておき、パイルの形成にと
もなって、織布を前後に移動させる一方、前記テンショ
ンロールを織布の移動に追従して、前後方向に変位さ
せ、パイル経糸の消費量に応じて、送出ビームを送り出
し方向に回転させている。
【0003】布移動式パイル織機において、テンション
ロールが織布の移動に追従して変位する際、テンション
ロールの慣性力がパイル経糸に作用して、パイル経糸張
力が変動するという不都合がある。
【0004】特許第2710046号の発明は、上記の
不都合を解決すべく、織布の移動にともなうテンション
ロールの前後方向の変位時に、テンションロールの慣性
力を打ち消す方向の力をテンションロールの支持系に与
える技術を開示している。その技術により、テンション
ロールは、織布の前後の移動に対応して正確に追従す
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のいずれの技術
も、パイル経糸の開口運動について、何ら考慮されてい
ない。パイル経糸の開口量の減少によるパイル経糸張力
の低下にともなって、テンションロールが消極的に移動
する際、前記布移動のときと同様に、テンションロール
の慣性力に起因する張力むら(張力の過不足)が発生す
る。具体的には、過張力によるパイル抜けや、エンドロ
ーリング(テンションロールがパイル経糸から瞬間的に
離れて、パイル経糸の張力ゼロ状態になり、隣り合うパ
イル経糸どうしが縮み合うことをいう。)などの問題が
発生する。
【0006】また、いずれの技術も、パイル経糸張力を
1つのテンションロールの変位によって制御するもので
あり、織機の回転が高速化するにつれて、やはりテンシ
ョンロールの慣性力の問題により、張力制御が正確に追
従できず、張力むらが発生する。このことから、パイル
経糸に対し最良の制御とは言えなかった。
【0007】したがって、本発明の目的は、布移動式パ
イル織機において、織布の移動やパイル経糸の開口変化
量に左右されることなく、パイル経糸に対して、常に所
望のパイル経糸張力を設定できるパイル経糸制御方法お
よびパイル経糸制御装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は、布移
動式パイル織機において、パイル経糸の送り出し経路中
に、パイル経糸巻き掛け用の2つのロールとして、第1
のロールおよび第2のロールを織機フレームに対して前
後方向に変位自在に設けるとともに、前記2つのロール
のうち、一方のロールを織布の移動量およびパイル経糸
の開口変化量に対応して駆動するとともに、他方のロー
ルをを所望のパイル経糸張力を生じるべく付勢してい
る。
【0009】具体的に記載すると、請求項1のパイル経
糸制御方法は、パイルの形成にともなって織布を前後に
移動させる布移動式パイル織機において、織機フレーム
に前後方向に変位自在に支持され、パイル経糸が巻き掛
けられる第1のロールおよび第2のロールを設け、前記
2つのロールのうち一方のロールを織布の移動量および
パイル経糸の開口変化量のそれぞれに対応して駆動する
とともに、他方のロールを所望のパイル経糸張力を生じ
るべく付勢することを特徴とする。
【0010】そして、請求項2のパイル経糸制御装置
は、パイルの形成にともなって織布を前後に移動させる
布移動式パイル織機において、織機フレームに前後方向
に変位自在に支持され、パイル経糸が巻き掛けられる第
1のロールおよび第2のロールと、前記2つのロールの
うち一方のロールをを変位方向に駆動する駆動装置と、
他方のロールを変位方向に付勢する付勢装置とを有して
なり、前記駆動装置は、電動アクチュエータと、織布の
移動量およびパイル経糸の開口変化量のそれぞれにもと
づき織機の回転角度に対応する駆動パターンが設定され
る騒動パターン設定器と、織機の回転角度の信号が入力
され、前記騒動パターン設定器により設定された駆動パ
ターンにもとづき前記電動アクチュエータに対する駆動
量指令を出力する駆動制御器とを有することを特徴とす
る。
【0011】請求項3で、前記付勢装置は、パイル経糸
制御装置において、付勢アクチュエータと、織機の回転
角度に対応する付勢パターンが設定される付勢パターン
設定器と、織機の回転角度の信号が入力され、前記付勢
パターン設定器により設定された前記付勢パターンにも
とづき付勢アクチュエータに対する付勢力指令を出力す
る付勢制御器とを有することを特徴とする。
【0012】請求項4で、前記付勢パターンは、パイル
形成する1リピート内では異なるパイル経糸張力を発生
するように設定されることを特徴とする。
【0013】さらに、請求項5で、前記付勢パターン
は、ファーストピックにおけるパイル経糸の開口運動の
直前の閉口タイミングが少なくとも含まれるように定め
られる期間では、これ以外の期間におけるパイル経糸張
力よりも高いパイル経糸張力が発生するように設定され
ることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、布移動式パイル織機1に
本発明のパイル経糸制御方法によるパイル経糸制御装置
2を組み込んだ状態を示している。布移動式パイル織機
1は、後述するように、多数のパイル経糸3によるパイ
ル製織の過程で、織布10を前後に強制的に移動させ
る。
【0015】多数のパイル経糸3は、送り出しビーム4
の外周に織り幅にわたって、シート状に巻き付けられて
おり、送り出しモータ5の回転によって、積極的に送り
出され、送り出し経路中で、2つのガイドロール6、第
1のロール7および第2のロール8の外周に巻き掛けら
れた後、織布10の織り前9に供給される。
【0016】第1のロール7および第2のロール8は、
ともに織機フレーム11に対し、機械的な支持系として
のテンションレバー12、13および支点軸14、15
によって、布移動式パイル織機1の前後方向に変位自在
に支持されている。テンションレバー12、13は、そ
れぞれ支点軸14、15によって織機フレーム11の定
位置で回動自在に支持されている。
【0017】なお、テンションレバー13は、その一端
と織機フレーム11のスプリング掛け16との間に設け
られた張力スプリング17によって、パイル経糸3に対
し常に張力を掛ける方向に付勢されている。張力スプリ
ング17は、引きスプリングでなく、圧縮スプリングと
して構成することもできる。
【0018】送り出しモータ5は、送り出し制御装置1
8により制御される。送り出し制御装置18は、主制御
装置20からのパイル織り指令を受けて、速度設定器2
1により設定される目標の基本速度の信号と、変位検出
器22によって検出される加減用速度の信号とを入力と
して、送り出しモータ5を送り出し方向に駆動し、パイ
ル経糸3を送り出す。変位検出器22は、第2のロール
8の変位を所定の周期でサンプリングすることにより、
製織の進行にともなうパイル経糸3の消費量を間接的に
測定し、測定された消費量に応じて、加減用速度の信号
を発生する。この制御によって、第2のロール8の平均
位置は、目標の位置に保たれる。
【0019】なお、送り出し制御装置18は、フィード
バック制御系であり、通常、遅い応答特性のもとに応答
するため、パイル経糸3の開口運動時、あるいはパイル
形成時の一時的な第2のロール8の前後方向の変位を制
御の対象としていない。
【0020】そして、支点軸14は、駆動装置23によ
り、必要に応じ、ギヤ24を介して駆動されるようにな
っている。駆動装置23は、第1のロール7の位置を制
御するために、主制御装置20からのパイル織り指令を
受けて、布移動式パイル織機1の主軸19の回転角度に
対応する駆動パターンにもとづき支点軸14を回動さ
せ、第1のロール7を布移動式パイル織機1の前後の変
位方向に駆動する。ここで、駆動パターンは、織布10
の移動量およびパイル経糸3の開口変化量のそれぞれに
もとづき主軸19の回転角度に対応して設定される。な
お、主軸19の回転角度は、織機の回転角度と同じ意味
であり、主軸19に連結されている回転角度検出器25
により回転角度の信号として検出される。
【0021】また、支点軸15は、付勢装置26によ
り、必要に応じ、ギヤ27を介して駆動されるようにな
っている。付勢装置26は、パイル経糸3のパイル経糸
張力を変更可能とするために、主制御装置20からのパ
イル織り指令を受けて、布移動式パイル織機1の主軸1
9の回転角度に対応する付勢パターンにもとづき支点軸
15を必要なトルクで回動させ、第2のロール8を布移
動式パイル織機1の前後方向に付勢する。
【0022】張力スプリング17のスプリング力は、テ
ンションレバー13に対して、基本のトルクを与える。
これに対して、付勢装置26は、テンションレバー13
に対して、基本のトルクに加えて、変更分のトルクを付
加することにより、パイル経糸3のパイル経糸張力を変
更可能とする。このようにして、パイル経糸張力は、パ
イル織りから地織り、あるいはその逆に地織りからパイ
ル織りへの織り組繊の変更時や、パイル繊り期間内など
でも任意に変更できるようになっている。もちろん、第
2のロール8およびその駆動系として後述の付勢アクチ
ュエータ59やテンションレバー13などは、制御の応
答性を高めるために、可能なかぎり低い慣性の材料で構
成する。
【0023】一方、地経糸28は、地経糸送り出しビー
ム29によって供給され、地経糸28の張力制御用のバ
ックレスト30に巻き掛けられ、布移動式パイル織機1
の前方に案内されて、ヘルド31に通され、それらのヘ
ルド31の上下運動によって、パイル経糸3とともに開
口32を形成する。
【0024】開口32の位置で、パイル経糸3および地
経糸18は、緯入れされた緯糸33と交錯し、筬34に
よって織り前9に筬打ちされた緯糸33とともに、所定
の組織の織布10となる。所定の組織の織布10は、少
なくとも一部にパイル組織を形成している。織布10
は、前後方向に変位可能なクロスガイド35、定位置の
服巻ロール36および複数の案内ロール37を経て、布
巻ビーム38の外周に巻き取られていく。
【0025】バックレスト30およびクロスガイド35
は、織布10およびその織り前9を前後の方向に移動さ
せるために、布移動式パイル織機1の前後の方向に移動
自在に支持されている。バックレスト30は、支持アー
ム39および地経糸テンションレバー40によって、前
後方向に変位自在に支持されている。支持アーム39
は、織機フレーム11に対し支軸41により前後方向に
揺動可能な状態で支持されており、また、地経糸テンシ
ョンレバー40は、支持アーム39に対して支軸42に
より回動自在に支持され、しかも、消極イージング用の
張力スプリング43により地経糸28にバックレスト3
0を押し当てて、地経糸28に所定の張力を与えてい
る。
【0026】また、クロスガイド35は、織機フレーム
11に対して支軸44により前後方向に揺動可能な状態
で支持されている揺動レバー45の先端に回転自在に支
持されている。支持アーム39と揺動レバー45とは、
連結ロッド46および両端の連結ピン47により連結さ
れており、主軸19の回転と連動するテリーカム機構な
ど布移動用の揺動運動変換装置48の揺動運動によりパ
イル製織と同期して、織布10をその織り前9ととも
に、布移動式パイル織機1の前後の方向に移動させる。
【0027】布移動式パイル織機1で、筬打ちの位置
は、常に一定であるが、織布10およびその織り前9
は、布移動式パイル織機1の前後方向に移動する。揺動
運動変換装置48は、主制御装置20からのパイル織り
指令を受けているときに、バックレスト30およびクロ
スガイド35を主軸19の回転と同期した状態で、前後
方向に移動させることにより、ファーストピックの筬打
ち時に、織り前9を後方に移動させ、ファーストピック
の筬打ち後の2回のルーズピック時に、織り前9を前方
向に移動させることによって、2回のルーズピックで適
当な筬逃げ量dを与える。この筬逃げ量dは、図3に記
載されており、パイル経糸3により形成されるパイル長
さと対応している。
【0028】なお、前記のように、パイル経糸3の送り
出し制御は、織布10の前後方向の動きと直接関係せ
ず、目標の基本速度で送り出しを行いつつ、第2のロー
ル8の動きに応動して、送り量を増加または減少させ
る。
【0029】つぎに、図2は、主制御装置20、駆動装
置23および付勢装置26の一例を示す。主制御装置2
0は、布移動式パイル織機1の起動/停止、緯入れなど
織機全体の制御を行い、予め定められた製織パターンに
もとづき主軸19の回転角度に対応してパイル織り指令
を出力する。パイル織り指令は、パイル織り期間中連続
して出力され、揺動運動変換装置48を働かせ、バック
レスト30およびクロスガイド35を主軸19の回転と
同期した状態で、前後方向に移動させることにより、織
布10およびその織り前9を前後方向に移動させるとと
もに、駆動装置23および付勢装置26にも送られ、そ
れぞれに必要な制御を行わせる。
【0030】駆動装置23は、織布10の移動量および
パイル経糸3の開口変化量に応じて第1のロール7の前
後方向の位置を制御するために、駆動パターン設定器4
9、駆動制御器50および電動アクチュエータ51など
を有する。オペレータは、予め設定された製織データと
して、織布10の移動量およびパイル経糸3の開口変化
量などのデータを駆動パターン設定器49に入力する。
【0031】そこで、駆動パターン設定器49は、製織
データ、織機設計データなどをもとに、ソフトウェアの
アルゴリズムを利用して、駆動パターンを自動的に作成
し、駆動パターンを主軸19の回転角度の関数として駆
動制御器50内の関数発生用の制御器52に出力する。
駆動パターンは、織布10の移動量およびパイル経糸3
の開口変化量にもどづき、主軸19の回転角度に対応す
る回転量として設定される。なお、駆動パターンは、主
軸19の回転角度毎に手動にて逐次入力して作成するこ
ともできる。
【0032】関数発生用の制御器52は、回転角度の信
号を入力とし、回転角度を認識しながら、駆動パターン
設定器49からの駆動パターンにもとづき、所定のパル
ス数の駆動量指令を発生し、駆動制御回路53内の正逆
カウンタ54の正入力端に送る。正逆カウンタ54は、
駆動量指令のパルス数をカウントすることにより、カウ
ント値に対応する回転指令を電流増幅器55に出力し、
電流増幅器55の出力電流を駆動量指令として、サーボ
モータやトルクモータなどの電動アクチュエータ51を
駆動し、第1のロール7の前後方向の位置を制御する。
なお、電動アクチュエータ51の回転量は、それに連結
されたパルス発生器56により回転量に対応するパルス
数の信号として検出され、正逆カウンタ54の負入力端
に帰還される。
【0033】つぎに、付勢装置26は、第2のロール8
を前後の変位方向に付勢し、パイル経糸3のパイル経糸
張力を制御するために、付勢パターン設定器57、付勢
制御器58および付勢アクチュエータ59などを有す
る。付勢パターン設定器57には、パイル経糸3のパイ
ル経糸張力を設定するために、布移動式パイル織機1の
回転角度に対応する付勢量が設定される。付勢パターン
設定器57は、回転角度に対応して、パイル経糸張力に
対応する付勢パターンを作成し、これを関数として付勢
制御器58の内部の関数発生用の制御器60に出力す
る。なお、付勢パターンは、回転角度毎に手動にて逐次
入力してもよいし、設定データ〔張力値、付与期間(始
点角度・終点角度)〕をもとにソフトウェアアルゴリズ
ムを利用して自動生成してもよい。
【0034】付勢制御器58の内部の関数発生用の制御
器60は、回転角度の信号を入力とし、回転角度を認識
し、付勢パターン設定器57により設定された付勢パタ
ーンにもとづき、回転角度に対応するトルク指令を出力
し、トルク駆動用の電流増幅器61の出力電流を付勢力
指令として付勢アクチュエータ59を付勢する。付勢ア
クチュエータ59は、サーボモータやトルクモータなど
のモータで構成し、付勢力指令に対応するトルクの回転
力を発生し、第2のロール8を前後方向に付勢する。
【0035】なお、電動アクチュエータ51、付勢アク
チュエータ59としては力を調節できるものなら他の手
段も採用可能であり、モータに限定されない。また、駆
動制御回路50や付勢制御器58の内部構成は、図示の
ものに限定せされず、公知の回路を採用でき、フイード
バック制御系を構成することにより、第1のロール7お
よび第2のロール8をより速く駆動できる。
【0036】布移動式パイル織機1の運転により、製織
が進行すると、パイル経糸3が織布10に織り込まれ、
順次前方へ移動するため、パイル経糸張力は、次第に高
まっていく。それにともなって、テンションレバー13
は、張力スプリング17に抗して、図1で時計方向に回
動する。このときの第2のロール8の変位は、変位検出
器22によって変位量に比例する電気的な加減速度の信
号として常時検出されている。なお、第2のロール8の
検出は、常時連続的に行われているが、検出された電気
的な加減速度の信号は、前記のように、サンプリングの
技法により所定のサンプリング周期ごとに不連続な状態
として、送り出し制御に利用される。
【0037】変位検出器22により検出された加減用速
度の信号は、送り出し制御装置18の入力となるため、
送り出し制御装置18は、送り出しモータ5を積極的に
回転させることにより、パイル経糸3の送り出しビーム
4を送り出し方向に回転させて、パイル経糸3を送り出
すことにより、パイル経糸張力の高まりを抑えるととも
に、第2のロール8の変位を解消して行く。
【0038】また、地経糸28の送り出しは、前記のよ
うに、電動モータ式の送り出し機構あるいは機械式の送
り出し機構によって送り出される。電動モータ式の送り
出し機構であれば、その制御装置は、地経糸28を基本
速度に対応する指令速度で常時、継続的に送り出してお
り、送り出し過程で、地経糸28の張力を検出し、検出
した張力と目標の張力とを比較して、地経糸28の張力
を目標の張力値となるように、基本速度を補正し、この
補正結果を指令速度として出力させる。このように、地
経糸28の送り出し動作は、常時連続的に行われてお
り、その速度は、目標の張力値に対する高低に応じて変
化する。
【0039】つぎに、図3は、一例として、3本緯タオ
ルのパイル組織の布つまり織布10を布移動式パイル織
機1により織るときの動作を示している。3本緯タオル
のパイル組織の製織で、1リピート(1繰り返し)は、
3ピックすなわち主軸19の3回転であり、図3に見ら
れるように、(1)布の前進時・ルーズピックの筬打ち
時、(2)ルーズピックの筬打ち・布の後退開始時、
(3)布の後退中・ファーストピックの筬打ち開始時、
(4)パイル形成筬打ち時、および最後の(5)布前進
時の過程を経て、最初の(1)布の前進時・ルーズピッ
クの筬打ち時、に戻る。
【0040】なお、筬打ちは、第1番目および第2番目
の緯入れでは、通常の組織と同じように行われるが、第
3番目の緯入れでは、いわゆるテリーモーションという
特殊な態様で行われる。図3に見られるように、筬打ち
位置は、常に定位置であり、1ピック目〔図3の
(1)〕、2ピック目〔図3の(2)〕では、織り前9
が筬打ち位置より前進して、筬逃げ量dだけ離れている
ため、緯糸33は、織布10に対して不完全な状態で筬
打ちされるが、3ピック目〔図3の(4)〕では、織り
前9が後退して、筬打ち位置にあるため、筬打ちは完全
な状態となる。この完全な筬打ちにより、パイル経糸3
は、筬逃げ量dに応じた長さのパイルを形成する。な
お、筬逃げ量dは、不完全な筬打ち時の織り前9と筬打
ち位置との離間距離に相当する。
【0041】このように、第1および第2の緯入れで
は、パイルが形成されないので、普通の組織と同じよう
な筬打ちが行われるが、第3番目の緯入れでは、パイル
が形成されるため、いわゆるテリーモーションという特
殊な筬打ちが行われ、このテリーモーションという特殊
な筬打ちのときに、パイル経糸3は、パイルの形成に必
要な長さだけ急速に送り出される。
【0042】さて、本発明によるパイル経糸の張力制御
方法は、布移動式パイル織機1において、第1のロール
7および第2のロール8のうち一方のものを織布10の
移動量およびパイル経糸3の開口変化量に対応して駆動
するとともに、他方のものを所望のパイル経糸張力を生
じるべく付勢する。
【0043】そこで、パイル経糸制御装置2の駆動装置
23は、織布10の移動量およびパイル経糸3の開口変
化量のそれぞれにもとづき織機の回転角度に対応して作
成された駆動パターンにしたって電動アクチュエータ5
1に対する駆動量指令を出力し、電動アクチュエータ5
1により第1のロール7を所定の位置に移動させ、パイ
ル経糸張力を補正する。
【0044】また、パイル経糸制御装置2の付勢装置2
6は、織機の回転角度に対応する付勢パターン付勢パタ
ーンにもとづき付勢アクチュエータ59に対する付勢力
指令を出力し、付勢アクチュエータ59により第2のロ
ール8を付勢して、パイル経糸3に所望のパイル経糸張
力を与える。
【0045】図4は、3本緯タオルのパイル組織の織布
10で、横軸に回転角度をとり、縦軸に緯入れ、地経糸
28の開口パターン、パイル経糸3の開口パターン、お
よび織布10の移動パターンをとり、これらとの関連
で、第1のロール7の駆動パターンおよび第2のロール
8の付勢パターンの設定例、第2のロール8の位置、パ
イル経糸3のパイル経糸張力を示す。前記のように、1
リピートは、3ピックであり、2ピックのルーズピック
の後に、1ピックのファーストピックとなる。
【0046】緯入れのタイミングは、図4に見られるよ
うに、例えば回転角度で、95度から240度の間で行
われ、緯入れ時に、緯糸33は、パイル経糸3および地
経糸28の開口32内を飛走する。パイル経糸3および
地経糸28の開口状態は、図6に見られる通り、1ピッ
クの位相ずれの状態で繰り返されている。
【0047】織布10(織り前9)の前方から後方への
移動時期は、図4に見られる通り、1、2ピック目をル
ーズピックとするために、1ピック目の45(開始)度
から315度(終了)に設定されている。また、織布1
0(織り前9)の後方から前方への移動時期は、3ピッ
ク目をファーストピックとするために、3ピック目の4
5度(開始)から315度(終了)に設定されている。
【0048】第1のロール7の駆動パターンは、織布1
0の移動量およびパイル経糸3の開口変化量に対応して
駆動するために、織布10の移動分を考慮して、一点鎖
線のように、織布10の移動パターンに対して逆相で、
ほぼ相似の形態として設定する。より詳しくは〔織布1
0の移動分+開口変化量(減少分)〕を考慮して設定さ
れ、好ましくは上記運動分〔織布10の移動分+開口変
化量(減少分)〕を100%吸収するように設定する。
運動分を100%吸収する設定でなくとも、運動分に対
する吸収度合いが高いほど、パイル経糸張力の張力むら
が抑制される。なお、織布10に影響ない程度のラフな
パターン設定もできる。
【0049】図4に見られる通り、第1のロール7の駆
動パターンによれば、織布10(織り前9)が前方から
後方へ移動するとき、第1のロール7は、逆に、後方か
ら前方へ移動し、また、織布10(織り前9)が後方か
ら前方へ移動するとき、第1のロール7は、逆に、前方
から後方へ移動する。つまり、第1のロール7は、織布
10(織り前9)の前後方向の移動を許容するように動
く。
【0050】この結果、第2のロール8は、織布10の
前後方向の移動に対して従動的に変位せず、静止状態と
なり、ほぼ一定の位置を維持する。このため、織布10
が前後方向に移動しても、第2のロール8は、従動的に
移動せず、この移動にともなう運動の慣性力や静止の慣
性力の影響を受けないことになる。このようにして、第
2のロール8の近くで、パイル経糸3のパイル経糸張力
は、織布10の前後方向の移動にかかわらず、常に一定
に保持される。
【0051】図5は、従来例(特許第2710046
号)における駆動パターンを示す。この図5に見られる
ように、従来の技術は、テンションロールの駆動につい
て、開口変動分(減少分)を考慮していない。このた
め、開口量の減少とともに、第2のロール8に相当する
テンションロールが従動的に変位するから、テンション
ロールの慣性の影響により、制御に追従の遅れが発生
し、このときに、パイル経糸張力は、一時的に変動し、
三角波状に増加または減少する。
【0052】第2のロール8の付勢パターン(張力付与
パターン)は、第2のロール8の位置で、パイル経糸3
に所望のパイル経糸張力を生じるべく付勢するものであ
り、常に一定でもよいが、好ましくはパイル形成の1リ
ピート期間内では、2以上異なるパイル張力を設定す
る。ファーストピックの筬打ちタイミングが少なくとも
含まれるように定められる期間t1では、パイルを確実
に形成するために、低いパイル経糸張力が付与される。
これにより、確実にパイルが形成される。
【0053】ファーストピックにおけるパイル経糸3の
開口運動の直前の閉口タイミングが少なくとも含まれる
ように定められる期間t2では、これ以外の期間におけ
るパイル経糸張力よりも高いパイル経糸張力が付与され
る。これにより、糸さばきがよくなるので、開口不良に
よる緯入れミスが減少し、織物品質が高められ、生産性
が向上する。
【0054】いずれの場合も、異なる張力を設定する期
間t1、t2の始点・終点、およびパイル経糸張力の設
定張力値は、織布10の組織に合わせて適宜設定する。
パイル経糸張力は、目標張力に1段階で変更するほか、
多段階で滑らかに変更としてもよく、したがって、付勢
パターンは、自在に設定可能である。
【0055】図6は、駆動制御器50の変形例を示す。
制御器52は、複数の関数発生器62と、これらの出力
側の接点63を有している。主制御装置20の内部のパ
ターン選択回路64は、接点63を択一的にオンの状態
に設定し、複数の関数発生器62の駆動パターンのいず
れかを選択し、駆動指令として正逆カウンタ54に送
る。なお、電流増幅器55は、出力電流を電流検出器6
5に検出し、フィードバック制御をする。
【0056】図1で、駆動装置23は、第1のロール7
の位置を制御し、付勢装置26は、第2のロール8を付
勢しているが、逆に、付勢装置26で第1のロール7の
位置を制御し、駆動装置23で第2のロール8を付勢す
ることも可能である。
【0057】巻き掛け方向や、各ロールの配置設定は、
図示に限定されない。また、パイル織りは1種類に限ら
ず、例えば、1反のパイル織物あるいは1枚のタオルを
織る途中で、複数種類のパイル繊りを実行することもで
きる。その場合、その種類に対応して駆動パターンや付
勢パターンを設定することになる。図4の駆動パターン
は、所定織物長にわたって連続する駆動パターンを使用
したが、複数のパターンを適当なタイミングで切り換え
るように構成してもよい。また、パイル織り種類の変更
では、パイル形成する1リピー卜期間(3本緯タオル時
3サイクル)で1パターンを設定し、パイル織り(種
類)の切換り毎に対応の駆動パターンを選択することも
できる。
【0058】さらに、第1のロール7および第2のロー
ル8の支持形態は、例えば前後方向の直線に沿って変位
可能な状態で支持してもよい。したがって、電動アクチ
ュエータ51や付勢アクチュエータ52は、回転力に限
らず、直線方向の力を発生するものであってもよい。
【0059】
【発明の効果】請求項1、2の発明によれば、付勢側の
ロールは、布移動、経糸開口運動に関係なく常に静止状
態となり、従来のように、従動移動時、慣性の影響を受
けて遅れて変位することによる張力むら(過不足)が発
生しないから、所望のパイル経糸張力が確実に設定で
き、また、付勢側のロールの慣性の影響による上記不都
合が解消されるため、布移動式パイル織機を高速運転可
能になり、生産性がより向上する。
【0060】請求項3、4によれば、パイル経糸張力が
所定のパターンに従って確実に付与される。これによ
り、パイルがより確実に形成されるなど利点があるほ
か、織機の高速運転が可能になり、生産性がより向上す
る。
【0061】請求項3、5によれば、経糸さばきが良く
なり、開口不良による緯入れミス等のトラブルが減少す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】布移動式パイル織機に本発明のパイル経糸制御
装置を組み込んだ状態の概略的な側面図である。
【図2】本発明のパイル経糸制御装置での駆動装置およ
び付勢装置のブロック線図である。
【図3】パイル製織工程の説明図である。
【図4】本発明の製織動作、駆動パターンおよび付勢パ
ターンの説明図である。
【図5】従来の技術の製織動作および駆動パターンの説
明図である。
【図6】他の制御器のブロック線図である。
【符号の説明】
1 布移動式パイル織機 2 パイル経糸制御装置 3 パイル経糸 4 送り出しビーム 5 送り出しモータ 6 ガイドロール 7 第1のロール 8 第2のロール 9 織り前 10 織布 11 織機フレーム 12 テンションレバー 13 テンションレバー 14 支点軸 15 支点軸 16 スプリング掛け 17 張力スプリング 18 送り出し制御装置 19 主軸 20 主制御装置 21 速度設定器 22 変位検出器 23 駆動装置 24 ギヤ 25 回転角度検出器 26 付勢装置 27 ギヤ 28 地経糸 29 地経糸送り出しビーム 30 バックレスト 31 ヘルド 32 開口 33 緯糸 34 筬 35 クロスガイド 36 服巻ロール 37 案内ロール 38 布巻ビーム 39 支持アーム 40 地経糸テンションレバー 41 支軸 42 支軸 43 張力スプリング 44 支軸 45 揺動レバー 46 連結ロッド 47 連結ピン 48 揺動運動変換装置 49 駆動パターン設定器 50 駆動制御器 51 電動アクチュエータ 52 制御器 53 駆動制御回路 54 正逆カウンタ 55 電流増幅器 56 パルス発生器 57 付勢パターン設定器 58 付勢制御器 59 付勢アクチュエータ 60 制御器 61 電流増幅器 62 関数発生器 63 接点 64 パターン選択回路 65 電流検出器

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パイルの形成にともなって織布を前後に
    移動させる布移動式パイル織機において、 織機フレームに前後方向に変位自在に支持され、パイル
    経糸が巻き掛けられる第1のロールおよび第2のロール
    が設けられており、前記2つのロールのうち一方のロー
    ルを織布の移動量およびパイル経糸の開口変化量のそれ
    ぞれに対応して駆動するとともに、他方のロールを所望
    のパイル経糸張力を生じるべく付勢することを特徴とす
    るパイル経糸制御方法。
  2. 【請求項2】 パイルの形成にともなって織布を前後に
    移動させる布移動式パイル織機において、 織機フレームに前後方向に変位自在に支持され、パイル
    経糸が巻き掛けられる第1のロールおよび第2のロール
    と、前記2つのロールのうち一方のロールを変位方向に
    駆動する駆動装置と、他方のロールを変位方向に付勢す
    る付勢装置とを有してなり、 前記駆動装置は、電動アクチュエータと、織布の移動量
    およびパイル経糸の開口変化量のそれぞれにもとづき織
    機の回転角度に対応する駆動パターンが設定される駆動
    パターン設定器と、織機の回転角度の信号が入力され、
    前記駆動パターン設定器により設定された駆動パターン
    にもとづき前記電動アクチュエータに対する駆動量指令
    を出力する駆動制御器とを有することを特徴とするパイ
    ル経糸制御装置。
  3. 【請求項3】 前記付勢装置は、付勢アクチュエータ
    と、織機の回転角度に対応する付勢パターンが設定され
    る付勢パターン設定器と、織機の回転角度の信号が入力
    され、前記付勢パターン設定器により設定された付勢パ
    ターンにもとづき前記付勢アクチュエータに対する付勢
    力指令を出力する付勢制御器とを有することを特徴とす
    る請求項2記載のパイル経糸制御装置。
  4. 【請求項4】 前記付勢パターンは、パイル形成する1
    リピート内では異なるパイル経糸張力を発生するように
    設定されることを特徴とする請求項3記載のパイル経糸
    制御装置。
  5. 【請求項5】 前記付勢パターンは、ファーストピック
    におけるパイル経糸の開口運動の直前の閉口タイミング
    が少なくとも含まれるように定められる期間では、これ
    以外の期間におけるパイル経糸張力よりも高いパイル経
    糸張力が発生するように設定されることを特徴とする請
    求項3記載のパイル経糸制御装置。
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