JP2002161483A - 立毛皮革様シートおよびその製造方法 - Google Patents

立毛皮革様シートおよびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 天然皮革のスエード又はヌバック様のヌメリ
感のある滑らかな表面タッチと、腰の取れた適度な柔軟
性を有する、風合いに優れる、高級感のある立毛皮革様
シート及びその製法の提供。 【解決手段】 極細繊維よりなる絡合不織布とその内部
に含有された弾性重合体からなり且つ片面又は両面に極
細繊維よりなる立毛を形成してなる立毛皮革様シートで
あって、立毛部および弾性重合体を含有する絡合不織布
の厚み全体に、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を
含浸付与してなる立毛皮革様シート;並びにシルクプロ
テイン系物質と柔軟剤を含有する液中に立毛皮革様シー
トを浸漬して前記立毛皮革様シートを製造する製法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、良好な風合いを有
する立毛皮革様シートおよびその製造方法に関する。よ
り詳細には、本発明は、天然皮革のスエードまたはヌバ
ック様のヌメリ感のある滑らかな表面タッチと、腰の取
れた適度な柔軟性を有し、風合いに優れる、高級感のあ
る立毛皮革様シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】立毛を有する皮革様シート(立毛皮革様
シート)では、表面にタッチしたときの触感が皮革様シ
ートの風合いを大きく左右する。立毛皮革様シートにお
ける表面タッチの改良に関しては、従来から多くの提案
がなされている。そのような従来技術としては、例え
ば、立毛皮革様シートに柔軟剤を付与するウエットタ
ッチ化法、立毛皮革様シートにシリコーン樹脂を付与
するドライタッチ化法が挙げられる。これらおよび
の方法は、いずれも、立毛皮革様シートの表面タッチの
向上法として、工業的にも近年広く採用されている。し
かしながら、前記およびの従来法では、表面タッチ
はある程度向上するが未だ十分ではない。かかる点か
ら、天然皮革のスエードやヌバック様のヌメリ感のある
滑らかな表面タッチを有し、しかも腰が取れていて柔軟
性に優れる、高級感のある風合いを有する立毛皮革様シ
ートは得られていない。
【0003】また、皮革様シート以外の分野では、布帛
に天然のシルクプロテイン等を付与して、シルク様のド
ライなタッチを有する布帛を製造することが提案されて
いる(特開平5−78979号公報、特開平6−316
871号公報等)。そこで、本発明者らは、この方法を
立毛皮革様シートに応用する実験を行った。しかしなが
ら、シルクプロテインの付与量を多くすると立毛皮革様
シートにシルク様の風合いは付与されたが、天然皮革の
スエードまたはヌバック様のヌメリ感があり、しかも腰
が取れていて柔軟性に優れる、高級感のある表面タッチ
を有する立毛皮革様シートを得ることはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、天然
皮革のスエードまたはヌバック様の高級感のある風合
い、すなわちヌメリ感のある滑らか表面タッチと、腰が
取れていて柔軟性を有し、風合に優れる立毛皮革様シー
トおよびその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく
本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。その結果、極細繊
維よりなる絡合不織布およびその内部に含有された弾性
重合体からなり且つ表面に極細繊維よりなる立毛を形成
してなる立毛皮革様シートに、シルクプロテイン系物質
と柔軟剤を含有する液を含浸させて、立毛皮革様シート
の立毛部および弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み
全体にわたって含浸付与すると、天然皮革のスエードま
たはヌバック様のヌメリ感のある滑らかなタッチを有
し、しかも腰が取れていて柔軟性に優れる高級感のある
立毛皮革様シートが得られること、そして前記した特性
が長期にわたって維持されることを見出した。
【0006】そして、本発明者らは、立毛皮革様シート
に含浸付与するシルクプロテイン系物質としては、水溶
化したシルクプロテインおよび/またはシルクプロテイ
ンの水溶性部分加水分解物が好ましく用いられることを
見出した。さらに、本発明者らは、柔軟剤としては、布
帛に対して固形分で5質量%を均一に付与したときに
「こし」、「ぬめり」、「ふくらみ」からなる総合的に
判断される布帛の「風合い」の評価において、テスター
50人中30人以上が柔軟剤の付与前後の布帛について
確認できる柔軟化効果を与える柔軟剤が好ましく用いら
れることを見出した。ここで、「こし」とは、「触って
得られる可撓性、反撥力、弾性のある充実した感覚、例
えば弾力性のある繊維や糸で構成されており、また適度
に高い糸密度の布の持つ感覚」であり、「ぬめり」と
は、「細くて柔らかい羊毛の繊維からもたらされる触っ
ての滑らかさ、しなやかさ、柔らかさの混じった感覚、
例えばカシミヤから得られる感覚で、専門語では、毛質
の良さからくる柔らかさ」であり、「ふくらみ」とは、
「嵩高でよくこなれたふくよかな布の感覚で、例えば圧
縮に対して弾力性があり、暖かみを伴う厚み感」で定義
される。
【0007】また、本発明者らは、立毛皮革様シートに
含浸付与するシルクプロテイン系物質と柔軟剤の量、お
よび両者の質量比を特定の範囲にすることで、本発明の
目的がより好適に達成できることを見出した。さらに、
本発明者らは、立毛皮革様シートとしては、極細繊維よ
りなる絡合不織布とその内部に含有された弾性重合体か
らなり且つ表面に極細繊維よりなる立毛を有する立毛皮
革様シートであればいずれも使用できるが、特に混合紡
糸法または複合紡糸法により得られる海島構造繊維から
海成分を除去して得られた極細繊維製の絡合不織布から
なり、且つ極細繊維と弾性重合体とが実質的に接着して
いない立毛皮革様シートが好適に用いられることを見出
した。
【0008】また、本発明者らは、上記した立毛皮革様
シートは、立毛皮革様シートを、シルクプロテイン系物
質および柔軟剤を含有する液中に浸漬することによっ
て、円滑に製造されることを見出し、それらの種々の知
見に基づいて本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、(1) 極細繊維よ
りなる絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合
体からなり且つ片面または両面に極細繊維よりなる立毛
を形成してなる立毛皮革様シートであって、シルクプロ
テインおよびシルクプロテイン部分加水分解物から選ば
れる少なくとも1種のシルクプロテイン系物質と柔軟剤
を、立毛皮革様シートの立毛部および弾性重合体を含有
する絡合不織布の厚み全体にわたって含浸付与してなる
ことを特徴とする立毛皮革様シートである。
【0010】そして、本発明は、(2) シルクプロテ
イン系物質が、水溶化した絹フィブロインおよび絹フィ
ブロインの水溶性部分加水分解物から選ばれる少なくと
も1種である前記(1)の立毛皮革様シート;(3)
立毛皮革様シートへのシルクプロテイン系物質:柔軟剤
の含浸付与量の質量比が、20:80〜70:30であ
る前記(1)または(2)の立毛皮革様シート;(4)
シルクプロテイン系物質および柔軟剤を含浸付与する
前の立毛皮革様シートの目付け(A)(g/m2)に基
づいて、シルクプロテイン系物質の含浸付与量が0.0
005A〜0.025A(g/m2)で、柔軟剤の含浸
付与量が0.001A〜0.1A(g/m2)である前
記(1)〜(3)のいずれかの立毛皮革様シート;およ
び、(5) 極細繊維が、混合紡糸法または複合紡糸法
により得られる海島構造繊維から海成分を除去して得ら
れた極細繊維であり、立毛皮革様シート内で極細繊維と
弾性重合体とが実質的に接着していない前記(1)〜
(4)のいずれかの立毛皮革様シート;を好ましい態様
として包含する。
【0011】さらに、本発明は、(6) 極細繊維より
なる絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合体
からなり且つ片面または両面に極細繊維よりなる立毛を
形成してなる立毛皮革様シートに、シルクプロテインお
よびシルクプロテイン部分加水分解物から選ばれる少な
くとも1種のシルクプロテイン系物質と柔軟剤を含有す
る液をその内部にまで含浸させることを特徴とする、表
面および内部にシルクプロテイン系物質および柔軟剤を
含浸付与してなる立毛皮革様シートの製造方法である。
そして、本発明は、(7) 立毛皮革様シートをシルク
プロテイン系物質と柔軟剤を含有する液中に浸漬するこ
とからなる前記(6)の製造方法を好ましい態様として
包含する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明の立毛皮革様シートは、極細繊維よりなる
絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合体から
なり且つ片面または両面に極細繊維よりなる立毛を形成
してなる立毛皮革様シートをベースとする。
【0013】本発明の立毛皮革様シートでは、立毛皮革
様シートを構成している極細繊維の太さは特に限定され
ないが、一般的には、地組織部(絡合不織布部分)およ
び立毛部の両方が、0.0001〜0.5デシテック
ス、特に0.0001〜0.1デシテックスの極細繊維
から形成されていることが好ましい。極細繊維の太さ、
特に立毛部を形成している極細繊維の太さが、0.5デ
シテックスを超えると、表面タッチが天然皮革のスエー
ドまたはヌバック様のものになりにくくなる。一方、極
細繊維の太さが0.0001デシテックス未満である
と、染着性が低下して、色調が劣ったものになり易い。
【0014】極細繊維を形成するポリマーは、繊維形成
性のポリマーであればいずれでもよく、例えば、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香環を有する
ポリエステル類;ナイロン−6、ナイロン−66、ナイ
ロン−12、ナイロン−610、またはそれらの共重合
体などのポリアミド類;ポリエチレン、ポリプロピレン
などのポリオレフィン類などを挙げることができる。そ
のうちでも、極細繊維は、ポリエステル類および/また
はポリアミド類、特にポリアミド類から形成されている
ことが、強度、風合い、染色性どの点から好ましい。
【0015】立毛皮革様シートでは、前記した極細繊維
が互いに絡み合って絡合不織布を形成しており、その絡
合不織布の繊維空隙内に弾性重合体が含有されている。
絡合不織布内に含有させる弾性重合体としては、公知の
高分子弾性体であればいずれも使用でき、例えば、天然
ゴム、SBR、NBR、ポリクロロプレン、ポリイソプ
レン、クロルスルホン化ポリエチレン、ポリイソブチレ
ン、イソブチレンイソプレンゴム、アクリルゴム、ポリ
ウレタンエラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラス
トマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリスチ
レン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑
性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、
塩素系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができ、
これらの1種または2種以上を用いることができる。そ
のうちでも、立毛皮革様シートの風合い、染色性、耐摩
耗性、引張強度などの力学的特性などの点から、弾性重
合体としてはポリウレタンエラストマー(弾性ポリウレ
タン樹脂)が、好ましく用いられる。
【0016】ポリウレタンエラストマーとしては、弾性
を有するポリウレタン樹脂のいずれもが使用できるが、
特に数平均分子量が500〜5000の高分子ジオール
をソフトセグメント成分とし、有機ジイソシアネートを
ハードセグメント成分とし、それらの成分と共に低分子
鎖伸長剤を反応させて得られるセグメント化ポリウレタ
ンが好ましく用いられる。
【0017】セグメント化ポリウレタンの製造に用いる
前記した高分子ジオールとしては、例えば、ジカルボン
酸成分とジオール成分との反応により得られるポリエス
テルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネー
トジオール、ポリエステルポリカーボネートジオール、
ポリエーテルジオールなどを挙げることができ、これら
の高分子ジオールの1種または2種以上を用いることが
できる。セグメント化ポリウレタンの製造に用いる高分
子ジオールの数平均分子量が500未満であると、ソフ
トセグメントが短すぎて、ポリウレタンが柔軟性に欠け
たものとなり、天然皮革様の立毛皮革様シートが得られ
にくくなることがある。一方、該高分子ジオールの数平
均分子量が5000を超えると、ポリウレタン中におけ
るウレタン結合の割合が相対的に減少することによっ
て、耐久性、耐熱性および耐加水分解性などが低下し、
実用的な物性を有する立毛皮革様シートが得られにくく
なる。
【0018】セグメント化ポリウレタンの製造に用いる
有機ジイソシアネートとしては、ポリウレタンの製造に
従来から用いられている有機ジイソシアネートのいずれ
もが使用でき、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジ
イソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレ
ンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イ
ソホロンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソ
シアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチ
レンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、
水素化キシリレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソ
シアネートなどを挙げることができる。前記した有機ジ
イソシアネートの1種または2種以上を用いることがで
きる。
【0019】セグメント化ポリウレタンの製造に用いる
低分子鎖伸長剤としては、ポリウレタンの製造に従来か
ら用いられている低分子鎖伸長剤、特に分子量が400
以下の低分子鎖伸長剤のいずれもが使用でき、例えば、
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−
ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチ
ル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコー
ル、N−メチルジエタノールアミン、1,4−シクロヘ
キサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレ
フタレート、キシリレングリコール、1,4−ビス(β
−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのジオール類;ヒ
ドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イ
ソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェ
ニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミ
ン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジ
ド、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノフェ
ニルメタン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミ
ンなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノ
プロピルアルコールなどのアミノアルコール類などを挙
げることができ、これらの1種または2種以上を用いる
ことができる。
【0020】セグメント化ポリウレタンの製造に当たっ
ては、[全イソシアネート基]/[水酸基、アミノ基な
どのイソシアネート基と反応する全官能基]の当量比
が、0.9〜1.1の範囲になるようにして、上記した
高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび低分子鎖
伸長剤を反応させることが、引裂き強力の高い立毛皮革
様シートが得られる点から好ましい。また、ポリウレタ
ンの耐溶剤性、耐熱性、耐熱水性などを向上させる目的
で、必要に応じて、トリメチロールプロパンなどの三官
能以上のポリオールや三官能以上のアミン等を反応させ
てポリウレタン中に架橋構造を持たせてもよい。
【0021】本発明の立毛皮革様シートにおいては、天
然皮革様の柔軟な風合いが得られる点から、絡合不織布
等を構成する繊維成分:弾性重合体の質量比が、30:
70〜95:5の範囲内であることが好ましく、40:
60〜85:15の範囲内であることがより好ましい。
繊維成分の割合が立毛皮革様シートの質量に基づいて3
0質量%未満であると、ゴムライクな風合いとなり易
い。一方、繊維成分の割合が立毛皮革様シートの質量に
基づいて95質量%を超えると、極細繊維の脱落、耐ピ
リング性の低下などを生じ易くなる。
【0022】立毛皮革様シートの片面または両面におけ
る立毛は、立毛皮革様シートの片方または両方の表面
を、サンドペーパーなどによるバフィングや針布起毛な
どにより起毛処理して、絡合不織布を構成している極細
繊維の一部を立毛として起毛させることによって形成さ
れる。立毛部の立毛長や立毛密度は制限されず、立毛皮
革様シートの用途などに応じて調節することができる
が、一般的には、立毛長が0.05〜2mm、立毛密度
は10000本/cm2以上であることが好ましい。
【0023】本発明の立毛皮革様シートでは、極細繊維
と弾性重合体とが実質的に接着していないことが好まし
い。極細繊維と弾性重合体とが接着していないことによ
り、極細繊維が弾性重合体によって拘束されずに動きの
自由度が増して、天然皮革様の柔軟な風合いを得ること
ができる。
【0024】ベースをなす立毛皮革様シートの製造方法
は特に制限されず、従来から既知の方法を使用して製造
することができ、例えば、以下の(i)〜(iii)の方
法を挙げることができる。 (i)溶解性または分解性の異なる2種類以上の繊維形
成性のポリマーを混合紡糸法、海島型複合紡糸法、分割
型複合紡糸法などにより紡糸して得られる極細繊維発生
型繊維を用いて絡合不織布を製造し、それに弾性重合体
を含浸して凝固した後に、極細繊維発生型繊維中の少な
くとも1つのポリマー成分を除去して極細繊維化する
か、または極細繊維発生型繊維を分割して極細繊維化
し、次いで起毛処理するする方法。 (ii)前記極細繊維発生型繊維を用いて絡合不織布を製
造したのち、該極細繊維発生型繊維の少なくとも1つの
ポリマー成分を除去するか又は該極細繊維発生型繊維を
分割して極細繊維とし、さらに弾性重合体を含浸・凝固
し、次いで起毛処理する方法。 (iii)メルトブロー法などによって直接得られた極細
繊維を用いて絡合不織布を製造した後に弾性重合体を含
浸・凝固し、次いで起毛処理する方法。
【0025】上記(i)または(ii)の方法で用いる極
細繊維発生型繊維において、極細繊維として残留させる
繊維形成性ポリマー成分の例としては、上記のように、
ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタ
レート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香環を有
するポリエステル類;ナイロン−6、ナイロン−66、
ナイロン−12、ナイロン−610、またはそれらの共
重合体などのポリアミド類;ポリエチレン、ポリプロピ
レンなどのポリオレフィン類などを挙げることができ
る。また、上記極細繊維発生型繊維において、溶解除去
または分解除去されるポリマー成分としては、例えば、
ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン
共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレ
ン、スチレン−アクリル系モノマー共重合体、スチレン
−エチレン共重合体などを挙げることができる。また、
上記(iii)の方法で用いる極細繊維は、上記したよう
なポリエステル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類な
どを用いて製造することができる。
【0026】上記(i)の方法によって立毛を有する立
毛皮革様シートを製造する場合は、より具体的には例え
ば、以下の方法で製造することができる。 (a) 極細繊維発生型繊維に延伸、捲縮、カットなど
の処理を施して綿様の形態にする。それをカードで開繊
した後、ランダムウェバーまたはクロスラップウェバー
によりウェブとし、必要に応じて所望の目付けになるよ
うに該ウェブを積層する。ウェブの目付けは立毛皮革様
シートの用途などにより異なるが、一般的には100〜
3000g/m2であることが好ましい。 (b) 次いで、例えば、ニードルパンチング法、高圧
水流法などの公知の手段を用いて絡合処理を行って絡合
不織布を製造する。ニードルパンチング時のパンチ数
は、ニードルの形状やウェブの厚さなどにより異なり得
るが、一般的には200〜2500パンチ/cm2であ
ることが好ましい。また、立毛皮革様シートの伸び強力
の調整、目付けや厚みの調整、その他の目的により、ウ
ェブ形成後から絡合処理完了までのいずれかの段階で、
織編物、異なる繊維の不織布、フィルムなどのシート状
物を、絡合不織布に積層して一体化してもよい。
【0027】(c) 続いて、上記(b)で得られた絡
合不織布に弾性重合体を含有させる。弾性重合体の付与
方法は特に制限されないが、風合いのバランスの点から
弾性重合体の溶液または分散液を絡合不織布に含浸した
後、湿式法または乾式法により凝固(固化)する方法が
好ましく採用される。弾性重合体の溶液または分散液に
は、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、凝固性調
節剤、燃焼性調節剤などを添加することができる。 (d) 次に、弾性重合体を含有させた絡合不織布を、
極細繊維発生型繊維の1成分または複数成分に対して選
択的に溶解剤または分解剤として作用する液体で処理し
て、極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変性して、極細
繊維束よりなる絡合不織布内に弾性重合体が含有された
シート状物とする。 (e) 次いで、上記(d)で得られたシート状物を、
必要に応じて厚み方向に複数枚に切断(スライス)した
後、その片方または両方の表面を、サンドペーパー等に
よるバッフィング、針布起毛などにより起毛処理して立
毛を形成させる。
【0028】上記(a)〜(e)の一連の工程からなる
上記(i)の方法による場合、特に極細繊維発生型繊維
として海島構造繊維を用いて島成分を極細繊維として残
留させる場合は、極細繊維(束)と弾性重合体とが実質
的に接着していない構造となり、極細繊維束が弾性重合
体に拘束されていないことにより構造内での動きの自由
度が増すことから、天然皮革様の柔軟性に優れる立毛皮
革様シートを得ることができる。
【0029】既に極細化された繊維を用いて絡合不織布
を製造し、それに弾性重合体を含有させる上記(iii)
の方法による場合も、絡合不織布の製造、絡合不織布へ
の弾性重合体の含浸、起毛処理を、上記(i)の方法に
おけるのと同様にして行うことができる。上記(ii)ま
たは(iii)の方法において、極細繊維製の絡合不織布
に弾性重合体を含浸して凝固させる前に水溶性樹脂を絡
合不織布に予め付与しておき、弾性重合体の含浸・凝固
後に水溶性樹脂を水で溶解除去するようにすると、極細
繊維と弾性重合体との接着が防止または低減されて極細
繊維の動きの自由度が増して、柔軟性の向上した立毛皮
革様シートを得ることができる。また、上記(i)の方
法においても、絡合不織布に弾性重合体を含浸して凝固
させる前に水溶性樹脂を絡合不織布に付与しておき、弾
性重合体の含浸・凝固後に該水溶性樹脂を水で溶解除去
する方法を用いてもよく、これにより得られる立毛皮革
様シートの柔軟性が一層向上する。
【0030】立毛皮革様シートの厚さは、用途などに応
じて任意に選択できるが、一般的には、立毛部をも含め
て0.2〜4mm程度であることが風合い、強度などの
点から好ましく、0.3〜2mm程度であることがより
好ましい。
【0031】また、立毛皮革様シートの目付けは、柔軟
な風合い、適度な腰感と反発性を得るために、50〜1
000g/m2であることが好ましく、100〜800
g/m2であることがより好ましい。
【0032】立毛皮革様シートは、必要に応じて染色さ
れる。染料や染色機器の種類、染色条件などは特に限定
されず、極細繊維の種類、弾性重合体の種類、立毛皮革
様シートの用途などに応じて公知の技術より適宜選択す
ることができる。例えば、絡合不織布を構成する極細繊
維がナイロン繊維を主体とするものでは、酸性染料を用
いて、サーキュラー染色機中で、水温90℃以上で1〜
2時間染色処理を行うことにより染色できる。また、立
毛を有する立毛皮革様シートに対して一般的に行われて
いる立毛状態を整えるための整毛処理などの処理を必要
に応じて組み合わせて行うことができる。
【0033】本発明の立毛皮革様シートは、上記したよ
うな立毛皮革様シートにおいて、シルクプロテイン系物
質および柔軟剤を、立毛皮革様シートの立毛部および弾
性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体にわたって含
浸付与したものである。それによって、本発明の立毛皮
革様シートは、天然皮革のスエードまたはヌバック様の
ヌメリ感があり、しかも腰が取れていて柔軟性のある、
良好な表面タッチを有する、高級感のある風合いを有し
ている。そして、シルクプロテイン系物質と柔軟剤が、
立毛部だけでなく、弾性重合体を含有する絡合不織布の
厚み全体にわたって含浸付与されていることにより、シ
ルクプロテイン系物質および柔軟剤が立毛皮革様シート
から脱落などにより失われにくく、上記した高級感のあ
る風合が長期間維持される。
【0034】シルクプロテイン系物質および柔軟剤を、
立毛皮革様シートに含浸付与する方法は特に制限され
ず、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を立毛皮革様
シートの立毛部および絡合不織布全体に含浸付与し得る
方法であればいずれも採用でき、例えば、立毛皮革様シ
ートをシルクプロテイン系物質および柔軟剤を含有する
液中に浸漬する方法、シルクプロテイン系物質および柔
軟剤を含有する液などの立毛皮革様シートに上面から施
した後に圧縮してその内部にまで浸透させて付与する方
法などを挙げることができる。そのうちでも、シルクプ
ロテイン系物質および柔軟剤を含有する液中に浸漬する
方法が、操作が簡単であり、しかも立毛皮革様シート全
体に確実に含浸付与し得る点から好ましく採用される。
【0035】立毛皮革様シートに含浸付与するシルクプ
ロテイン系物質としては、絹に由来する水溶性または非
水溶性のプロテインまたはその部分加水分解物のいずれ
も使用できる。具体例としては、水溶化した絹フィブロ
イン、絹フィブロインの水溶性部分加水分解物、絹の繊
維を機械的に微粉化した非水溶性のシルクパウダーなど
を挙げることができる。しかし、シルクパウダーの場合
は、含浸付与量を多くすると、シルクの白い微粉が立毛
皮革様シートに含浸・付着した状態が目立つようになっ
て、立毛皮革様シートが白化して見える傾向がある。そ
のため、シルクプロテイン系物質としては、水溶化した
絹フィブロインおよび/または絹フィブロインの水溶性
部分加水分解物が好ましく用いられ、絹フィブロインの
水溶性部分加水分解物がより好ましく用いられる。水溶
化した絹フィブロインとしては、例えば、絹フィブロイ
ンを塩化カルシウム、硝酸カルシウム、臭化リチウム、
ジクロル酢酸などの水溶液に溶解したものを挙げること
ができる。また、絹フィブロインの水溶性部分加水分解
物としては、例えば、上記の絹フィブロインを酵素(プ
ロテアーゼ)で部分的に加水分解したものや、水酸化ナ
トリウムなどのアルカリまたは硫酸などの酸を用いて部
分的に加水分解した後、中和したものを挙げることがで
きる。特に、絹フィブロインの水溶性部分加水分解物と
しては、平均分子量が100〜10,000、好ましく
は平均分子量が500〜3,000の範囲のものがタッ
チや作業性の点から好適に用いられる。
【0036】立毛皮革様シートに含浸付与する柔軟剤と
しては、立毛皮革様シートを構成する極細繊維や弾性重
合体との親和性、柔軟化効果などを考慮して、一般に繊
維関連分野で用いられている種々の柔軟剤のうちから適
当なものを選択して使用することができる。本発明で用
い得る柔軟剤としては、例えば、アルキルシリコーン
系、アミノ変性シリコーン系、アミド変性シリコーン
系、エポキシ変性シリコーン系などの各種シリコーン系
柔軟剤や、ポリアミド系、脂肪酸アミド系などのアミド
系柔軟剤、多価アルコール系柔軟剤などを挙げることが
でき、これらの1種または2種以上を用いることができ
る。そのうちでも、本発明では、シリコーン系柔軟剤お
よび/またはポリアミド系柔軟剤、特にポリアミド系柔
軟剤が、付与量に対する柔軟化効果や作業性などの点か
ら好ましく用いられる。そのような柔軟剤の好ましい具
体例としては、大日本インキ化学工業社製「ディックシ
リコーンソフナー120」などのアルキルシリコーン系
柔軟剤、日華化学社製「ニッカシリコンAM−204」
などのアミノ変性シリコーン系柔軟剤、洛東化成社製
「ラクセットK−150」などのポリアミド系柔軟剤を
挙げることができる。
【0037】立毛皮革様シートへのシルクプロテイン系
物質:柔軟剤の含浸付与量の質量比は、風合いや表面タ
ッチなどのバランスの点から、20:80〜70:30
の範囲内であることが好ましく、30:70〜60:4
0の範囲内であることがより好ましい。シルクプロテイ
ン系物質と柔軟剤の合計の含浸付与量に基づいてシルク
プロテイン系物質の含浸付与量が10質量%未満である
と、天然皮革のスエードやヌバック様のヌメリ感や滑ら
かさのある風合いが得られにくくなり、柔軟剤処理特有
のべたつきの強い触感になり易い。一方、シルクプロテ
イン系物質と柔軟剤の合計の含浸付与量に基づいてシル
クプロテイン系物質の含浸付与量が50質量%を超える
と、ドライなタッチとなり、天然皮革のスエードやヌバ
ック様のヌメリ感や滑らかさのある風合いが得られにく
くなる。
【0038】また、立毛皮革様シートへのシルクプロテ
イン系物質および柔軟剤の含浸付与量は、シルクプロテ
イン系物質や柔軟剤の種類、立毛皮革様シートの用途な
どに応じて調整することができる。一般的には、効果の
バランス、生産性、立毛皮革様シートの力学的特性など
の点から、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を含浸
付与する前の立毛皮革様シートの目付け(A)(g/m
2)に基づいて、シルクプロテイン系物質の含浸付与量
が0.05〜2.5%[0.0005A〜0.025A
(g/m2)]で、柔軟剤の含浸付与量が0.1〜10
%[0.001A〜0.10A(g/m2)]であるこ
とが好ましく、シルクプロテイン系物質の含浸付与量が
0.08〜1.5%[0.0008A〜0.015A
(g/m2)]で、柔軟剤の含浸付与量が0.13〜8
%[0.0013A〜0.08A(g/m2)]である
ことがより好ましい。
【0039】立毛皮革様シートに付与する際のシルクプ
ロテイン系物質および柔軟剤の形態および立毛皮革様シ
ートへの付与方法としては、シルクプロテイン系物質お
よび柔軟剤の両方を含有する混合物を塗布する方法、或
いはシルクプロテイン系物質を含有する液と柔軟剤を含
有する液をそれぞれ調製しておき、これらの液を同時ま
たは逐次に塗布する方法が挙げられる。そのうちでも、
シルクプロテイン系物質と柔軟剤の両方を含有する混合
物を付与する方法が工程の簡略化などの点から好まし
い。その際の混合物の形態は、溶液、分散液、ペースト
状物などのいずれでもよいが、溶液または分散液状であ
ることが好ましい。
【0040】上記により得られる本発明の立毛皮革様シ
ートは、表面タッチと柔軟性に優れる、高級感のある風
合いを活かして、例えば、衣料、手袋、クッションシー
ト、鞄、履物、車両用内装材などのような人肌が触れる
各種の用途に好適に用いることができる。
【0041】
【実施例】以下に本発明について実施例などにより具体
的に説明するが、本発明は以下の例に何ら限定されるも
のではない。なお、以下の例中の「部」および「%」は
特に断らない限り質量部および質量%を意味する。ま
た、以下の例で得られた立毛皮革様シートの引裂強力の
測定、並びに表面タッチおよび柔軟性の評価は次のよう
にして行った。
【0042】(1)立毛皮革様シートの引裂強力:JI
S L−1096に準拠して測定した。
【0043】(2)立毛皮革様シートの表面タッチ:立
毛皮革様シートの表面に手で触れてみて、下記の評価基
準により評価した。 [表面タッチの評価基準] ○:天然皮革スエード様のヌメリ感のある滑らかなタッ
チである。 △:天然皮革スエード様の滑らかさが多少あるが、未だ
十分ではない。 ×:天然皮革スエード様の滑らかさが無い。
【0044】(3)立毛皮革様シートの柔軟性:立毛皮
革様シートを手に持ってみて、下記の評価基準により評
価した。 [柔軟性の評価基準] ○:適度に腰が取れていて衣料用などの用途に適した柔
軟性を有する。 △:衣料用などの用途に使用するためには柔軟性が不足
する。 ×:腰があり衣料用などの用途に使用するための柔軟性
を有していない。
【0045】《例1》[立毛皮革様シートの製造例]
(従来例) (1) ナイロン−6(乾燥時の相対粘度3.2)のチ
ップと低密度ポリエチレンのチップを50:50の質量
比で混合して280℃で溶融混合紡糸を行って、ナイロ
ン−6を島成分およびポリエチレンを海成分とする海島
型混合紡糸繊維(島数約300個)を製造した後、湿熱
延伸、機械捲縮、油剤付与およびカットして、単繊維繊
度が4デシテックスで繊維長51mmの綿状短繊維を製
造した。 (2) 上記(1)で得られた綿状短繊維をカードで開
繊し、クロスラップウェバーでウェブとし、さらにフェ
ルト針によるニードルパンチング機を用いて1500パ
ンチ/cm2の三次元絡合処理を施して、絡合不織布を
製造した。
【0046】(3) 上記(2)で得られた絡合不織布
に、ポリウレタン[ポリ(3−メチル−1,5−ペンタ
ンアジペート)とポリエチレングリコールからなる数平
均分子量2,000の高分子ジオール、4,4’−ジフ
ェニルメタンジイソシアネートおよび1,4−ブタンジ
オールを用いて形成したポリウレタン]のジメチルホル
ムアミド(DMF)溶液を含浸した。次いで、それをD
MF/水の混合浴中にて多孔質状態で湿式凝固させて、
シート中のDMFを水で置換した後、さらに90℃のト
ルエン浴中にて海島型混合紡糸繊維中のポリエチレンを
抽出除去して、ナイロン−6の極細繊維を形成させた。
続いて、シート中のトルエンを水で置換し、ピンテンタ
ー乾燥機中で乾燥して、目付けが420g/m2、厚み
が1.2mm、繊維:ポリウレタンの質量比が65:3
5であるシート状基材を製造した。これにより得られた
シート状基材においては、ナイロン−6製の極細繊維束
とポリウレタンとの接着が実質的に生じておらず、極細
繊維束の動きの自由度が高いものであった。 (4) 上記(3)で得られたシート状基材を厚み方向
に2分割した後、両面を400番のサンドペーパーにて
バフィングして、シートの厚みを0.5mmに調節する
と共に、両面にナイロン−6の極細繊維よりなる立毛を
形成することで、絡合不織布部分および立毛部を形成す
る極細繊維の単繊維繊度が0.006デシテックスであ
る立毛シートを製造した。
【0047】(5) 上記(4)で得られた立毛シート
に、下記に示す染色条件で、ウインス染色機にて染色処
理を施した後、ピンテンター乾燥機中で乾燥し、さらに
揉み処理および整毛処理を施して、平均立毛長が0.2
5mmである、スエード調の極めて良好な外観を有する
茶色の立毛皮革様シートを製造した。 [染色条件] 住友化学工業(株)製「ラニール ブラウンGR」(染料) 4% owf 丸菱油化(株)製「レベラン NKD」(染色助剤) 2g/リットル 染色温度 90℃ 浴比 1:20 (6) 上記(5)で得られた立毛皮革様シートの引裂
強力を上記した方法で測定すると共に、その表面タッチ
および柔軟性を上記した方法で評価したところ、下記の
表1に示すとおりであった。
【0048】《例2》[立毛皮革様シートの製造例]
(従来例) (1) ナイロン−6(乾燥時の相対粘度2.4)のチ
ップと低密度ポリエチレンのチップを別々に溶融し、紡
糸口金部分で両者を65:35の質量比で合流させ、2
70℃で溶融複合紡糸を行って、ナイロン−6を島成分
およびポリエチレンを海成分とする海島型複合紡糸繊維
(島数約50個)を製造した後、湿熱延伸、機械捲縮、
油剤付与およびカットして、単繊維繊度が4デシテック
スで繊維長51mmの綿状短繊維を製造した。 (2) 上記(1)で得られた綿状短繊維を用いて、例
1の(2)におけるのと同様にして絡合不織布を製造し
た。
【0049】(3) 上記(2)で得られた絡合不織布
を、ポリビニルアルコールの20%水溶液中に浸漬して
ポリビニルアルコールを繊維表面に付着させた後、パー
クレンにてポリエチレンを抽出除去して、ナイロン−6
の極細繊維を形成させた。 (4) 上記(3)で得られた極細繊維化した絡合不織
布に、例1で用いたのと同じポリウレタンのDMF溶液
を含浸し、それをDMF/水の混合浴中にて多孔質状態
で湿式凝固させてた後、シート中のDMFを水で置換す
ると共に繊維表面に付着しているポリビニルアルコール
を水で溶解除去し、次いでそれをピンテンター乾燥機中
で乾燥して、目付けが460g/m2、厚みが1.25
mm、繊維:ポリウレタンの質量比が70:30である
シート状基材を製造した。これにより得られたシート状
基材においては、ナイロン−6製の極細繊維束とポリウ
レタンとの接着が殆ど生じておらず、極細繊維束の動き
の自由度が高かった。
【0050】(5) 上記(4)で得られたシート状基
材を厚み方向に2分割した後、両面を400番のサンド
ペーパーにてバフィングして、シートの厚みを0.5m
mに調節すると共に、両面にナイロン−6の極細繊維よ
りなる立毛を形成することで、絡合不織布部分および立
毛部を形成する極細繊維の単繊維繊度が0.05デシテ
ックスである立毛シートを製造した。 (6) 上記(5)で得られた立毛シートに、例1にお
けるのと同じ染色条件で、ウインス染色機にて染色処理
を施した後、ピンテンター乾燥機中で乾燥し、さらに揉
み処理および整毛処理を施して、平均立毛長が0.5m
mである、スエード調の極めて良好な外観を有する茶色
の立毛皮革様シートを製造した。 (7) 上記(6)で得られた立毛皮革様シートの引裂
強力を上記した方法で測定すると共に、その表面タッチ
および柔軟性を上記した方法で評価したところ、下記の
表1に示すとおりであった。
【0051】《例3》[実施例] (1) 絹フィブロインの水溶性部分加水分解物(鐘紡
社製「シルクペプタイド」)5部、ポリアミド系柔軟剤
(洛東化成社製「ラクセットK−150」)20部およ
び水75部を混合して、立毛皮革様シート用の処理液を
予め調製した。 (2) 上記(1)で調製したシルクプロテイン系物質
と柔軟剤を含有する処理液15gを水で希釈して100
gにして希釈液を調製した。 (3) 上記(2)で調製した処理液(希釈液)中に、
例1で製造した立毛皮革様シートを浸漬して液を十分に
浸透させた後、マングルで絞って、立毛皮革様シートの
質量に対して60質量%の処理液を含浸付与した。これ
を60℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させて、シルク
プロテイン系物質と柔軟剤が含浸付与された目付け約1
87g/m2の立毛皮革様シートを製造した(立毛皮革
様シートへのシルクプロテイン系物質の含浸付与量=約
0.8g/m2、柔軟剤の含浸付与量=約1.4g/
2)。これにより得られた立毛皮革様シートの引裂強
力を上記した方法で測定すると共に、その表面タッチお
よび柔軟性を上記した方法で評価したところ、下記の表
1に示すとおりであった。 (4) また、上記(3)で使用した処理液(希釈液)
100g中に赤色染料5gを溶かして、上記(3)と同
様にして例1で製造した立毛皮革様シート中に浸透さ
せ、60℃で温風乾燥した。そして、これにより得られ
た立毛皮革様シートを厚さ方向に切断して、その断面を
光学顕微鏡にて観察したところ、立毛皮革様シートの両
方の表面から中央部にわたって、全体が赤く着色されて
いた。
【0052】《例4》[実施例] (1) 例3の(1)で調製したのと同じ処理液15g
を水で希釈して100gにして、シルクプロテイン系物
質と柔軟剤を含有する希釈された処理液(希釈液)を調
製した。 (2) 上記(1)で調製した処理液(希釈液)中に、
例2で製造した立毛皮革様シートを浸漬して液を十分に
浸透させた後、マングルで絞って、立毛皮革様シートの
質量に対して60質量%の処理液を含浸付与した。これ
を60℃の温風乾燥機中で10分間乾燥させて、シルク
プロテイン系物質と柔軟剤が含浸付与された目付け約1
88g/m2の立毛皮革様シートを製造した(立毛皮革
様シートへのシルクプロテイン系物質の含浸付与量=約
0.8g/m2、柔軟剤の含浸付与量=約1.5g/
2)。これにより得られた立毛皮革様シートの引裂強
力を上記した方法で測定すると共に、その表面タッチお
よび柔軟性を上記した方法で評価したところ、下記の表
1に示すとおりであった。 (3) また、上記(2)で使用した処理液(希釈液)
100g中に赤色染料5gを溶かして、上記(2)と同
様にして例1で製造した立毛皮革様シート中に浸透さ
せ、60℃で温風乾燥した。そして、これにより得られ
た立毛皮革様シートを厚さ方向に切断して、その断面を
光学顕微鏡にて観察したところ、立毛皮革様シートの両
方の表面から中央部にわたって、全体が赤く着色されて
いた。
【0053】《例5》[比較例] (1) 絹フィブロインの水溶性部分加水分解物(鐘紡
社製「シルクペプタイド」)2gを水で希釈して100
gにして希釈液を調製した。 (2) 上記(1)で調製した希釈液中に、上記の例1
で得られた立毛皮革様シートを浸漬して、例3における
のと同様に処理して、立毛皮革様シートの立毛部および
弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体にシルクプ
ロテイン系物質が含浸付与された目付け約187g/m
2の立毛皮革様シートを製造した(シルクプロテイン系
物質の含浸付与量=約2.2g/m2)。これにより得
られた立毛皮革様シートの引裂強力を上記した方法で測
定すると共に、その表面タッチおよび柔軟性を上記した
方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであっ
た。
【0054】
【表1】
【0055】上記の表1における例1および2の結果か
ら、シルクプロテイン系物質および柔軟剤を何ら付与し
ていない例1および2の立毛皮革様シート(従来の立毛
皮革様シート)は、スエード様の良好な外観を有するも
のの、天然皮革のスエード様のヌメリ感のある滑らかな
表面タッチと衣料用に適する柔軟性を有しておらず、高
級感に不足していることがわかる。それに対して、表1
の例3および4(実施例)の結果から、シルクプロテイ
ン系物質および柔軟剤を、立毛皮革様シートの立毛部お
よび弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体に含有
付与してなる例3および4の本発明の立毛皮革様シート
は、スエード様の良好な外観を有すると共に、天然皮革
のスエード様のヌメリ感のある滑らかな表面タッチと、
適度に腰の取れた衣料用などとして適する柔軟性を有し
ていて高級感のある風合いを有していることがわかる。
また、表1の例5(比較例)の結果から、シルクプロテ
イン系物質のみを含有付与した例5の立毛皮革様シート
は、表面タッチには優れているものの、衣料用などとし
て適する柔軟性を有していないことがわかる。
【0056】
【発明の効果】本発明により、天然皮革のスエード様の
良好な外観を有すると共に、天然皮革のスエードやヌバ
ック様のヌメリ感のある滑らかな表面タッチと、適度に
腰の取れた柔軟性のある、高級感のある、優れた風合い
を有する立毛皮革様シートが提供される。本発明では、
シルクプロテイン系物質および柔軟剤が立毛皮革様シー
トの立毛部および弾性重合体を含有する絡合不織布の厚
み全体にわたって含有付与されているので、シルクプロ
テイン系物質および柔軟剤が脱落などによって立毛皮革
様シートから失われにくく、前記した高級感のある優れ
た風合いを長期にわたって維持することができる。本発
明の立毛皮革様シートは、前記した優れた特性を活かし
て、衣類、手袋、シート類、鞄、履物、車両用内装材な
どのような人肌に触れるような各種用途に好適に用いる
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D06M 15/15 D06M 15/15 15/564 15/564 15/59 15/59 15/00 15/72 3/38 (72)発明者 延藤 芳樹 岡山県岡山市海岸通り1丁目2番1号 株 式会社クラレ内 (72)発明者 牧山 法生 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (72)発明者 田村 聡 新潟県見附市葛巻1丁目2番16号 Fターム(参考) 4F055 AA05 AA21 AA27 BA13 EA05 EA07 EA12 EA14 EA24 EA34 FA15 GA02 HA22 4L031 AA14 AA20 AB34 BA32 CA15 4L033 AA08 AB07 AC11 AC15 BA04 CA08 CA50 CA55 4L041 AA07 BA04 BA05 BA16 BA48 BA49 BD15 CA21 CA36 DD01 DD11 EE07 4L047 AA23 AB08 BA03 BA23 CB10 CC01 CC09 CC16 DA00 EA02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 極細繊維よりなる絡合不織布およびその
    内部に含有された弾性重合体からなり且つ片面または両
    面に極細繊維よりなる立毛を形成してなる立毛皮革様シ
    ートであって、シルクプロテインおよびシルクプロテイ
    ン部分加水分解物から選ばれる少なくとも1種のシルク
    プロテイン系物質と柔軟剤を、立毛皮革様シートの立毛
    部および弾性重合体を含有する絡合不織布の厚み全体に
    わたって含浸付与してなることを特徴とする立毛皮革様
    シート。
  2. 【請求項2】 シルクプロテイン系物質が、水溶化した
    絹フィブロインおよび絹フィブロインの水溶性部分加水
    分解物から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記
    載の立毛皮革様シート。
  3. 【請求項3】 立毛皮革様シートへのシルクプロテイン
    系物質:柔軟剤の含浸付与量の質量比が、20:80〜
    70:30である請求項1または2に記載の立毛皮革様
    シート。
  4. 【請求項4】 シルクプロテイン系物質および柔軟剤を
    含浸付与する前の立毛皮革様シートの目付け(A)(g
    /m2)に基づいて、シルクプロテイン系物質の含浸付
    与量が0.0005A〜0.025A(g/m2)で、
    柔軟剤の含浸付与量が0.001A〜0.1A(g/m
    2)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の立毛皮
    革様シート。
  5. 【請求項5】 極細繊維が、混合紡糸法または複合紡糸
    法により得られる海島構造繊維から海成分を除去して得
    られた極細繊維であり、立毛皮革様シート内で極細繊維
    と弾性重合体とが実質的に接着していない請求項1〜4
    のいずれか1項に記載の立毛皮革様シート。
  6. 【請求項6】 極細繊維よりなる絡合不織布およびその
    内部に含有された弾性重合体からなり且つ片面または両
    面に極細繊維よりなる立毛を形成してなる立毛皮革様シ
    ートに、シルクプロテインおよびシルクプロテイン部分
    加水分解物から選ばれる少なくとも1種のシルクプロテ
    イン系物質と柔軟剤を含有する液をその内部にまで含浸
    させることを特徴とする、表面および内部にシルクプロ
    テイン系物質および柔軟剤を含浸付与してなる立毛皮革
    様シートの製造方法。
  7. 【請求項7】 立毛皮革様シートをシルクプロテイン系
    物質と柔軟剤を含有する液中に浸漬することからなる請
    求項6に記載の製造方法。
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