JP2002161152A - プリプレグの製造方法 - Google Patents

プリプレグの製造方法

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JP2002161152A JP2000359239A JP2000359239A JP2002161152A JP 2002161152 A JP2002161152 A JP 2002161152A JP 2000359239 A JP2000359239 A JP 2000359239A JP 2000359239 A JP2000359239 A JP 2000359239A JP 2002161152 A JP2002161152 A JP 2002161152A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ミーズリングの発生及び樹脂硬化物の特性の
悪化を低減することができると共に製造安定性に優れた
プリプレグの製造方法を提供する。 【解決手段】 エポキシ樹脂と、これの硬化剤としてジ
シアンジアミド及び1分子内に水酸基を3個以上有する
フェノール系硬化剤とを含有する実質的に無溶剤のエポ
キシ樹脂組成物を、基材の片面より塗布して浸透させ、
基材に浸透したエポキシ樹脂組成物をBステージ化させ
るプリプレグの製造方法に関する。上記エポキシ樹脂と
して少なくとも融点が60℃以下のものを用いる。エポ
キシ樹脂組成物を基材に塗布する治具の表面温度を60
〜95℃にする。治具によってエポキシ樹脂組成物を低
温で加熱すると共にジシアンジアミドの一部又は全部を
フェノール系硬化剤に溶解させることによってエポキシ
樹脂との相溶性を高める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、印刷配線板用の積
層板などを形成する際に用いられるプリプレグの製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】印刷配線板用の積層板を形成する際に用
いられるプリプレグは、従来一般的に、エポキシ樹脂等
の熱硬化性樹脂を有機溶剤に溶解させてエポキシ樹脂溶
液(エポキシ樹脂ワニス)を調製し、これをガラスクロ
ス等の基材に浸透(含浸)させ、この後、加熱して有機
溶剤を除去すると共にエポキシ樹脂をBステージ化する
ことによって製造されている。しかしこのような方法で
は有機溶剤を多量に使用し、その上、除去した有機溶剤
を処理する必要があって、作業環境やエネルギーコスト
の面で問題があった。
【0003】そこで特開平9−263647号公報に
は、無溶剤のエポキシ樹脂組成物を基材の一方の面に均
一に塗布して基材にエポキシ樹脂組成物を浸透させてプ
リプレグを製造する方法が提案されている。この方法で
は有機溶剤を用いていないので、有機溶剤の処理を行う
必要がなく、作業環境やエネルギーコストの問題が軽減
されるのである。
【0004】しかし上記特開平9−263647号公報
に記載の方法では、エポキシ樹脂の硬化剤であるジシア
ンジアミドを溶解させずに固形(粒状)のままエポキシ
樹脂組成物に配合して分散させているために、エポキシ
樹脂組成物を基材に浸透させる際に、ジシアンジアミド
が基材に浸透せず、基材の表面に付着して偏在すること
があった。そしてこの結果、積層板に成形した後に樹脂
硬化物の特性(例えば吸水率やガラス転移温度)が悪化
したり、基材のガラスクロス束の中心部における硬化性
が低くて成形後の積層板にミーズリング(ガラスクロス
交点の白化)が生じたりするという問題があった。
【0005】そこで、かかる問題を解決するために特開
2000−129011号公報においては、基材にエポ
キシ樹脂組成物を塗布する治具の表面温度を100〜1
95℃にすることによって、エポキシ樹脂組成物に含有
されているジシアンジアミドの一部又は全部を熱溶解さ
せてエポキシ樹脂との相溶性を高め、上記のようなミー
ズリングの発生及び樹脂硬化物の特性の悪化を低減する
ようにしているものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記特開20
00−129011号公報に記載のように、基材にエポ
キシ樹脂組成物を塗布する治具の表面温度を100℃以
上に加熱してしまうと、エポキシ樹脂組成物の反応性を
著しく高めることとなり、連続的にプリプレグを製造す
るにあたって、高温に加熱された治具上に滞留したエポ
キシ樹脂組成物がゲル化したり、エポキシ樹脂組成物の
反応が進行し過ぎてプリプレグを安定に得ることができ
ない可能性がある。
【0007】本発明は上記の点に鑑みてなされたもので
あり、ミーズリングの発生及び樹脂硬化物の特性の悪化
を低減することができると共に製造安定性に優れたプリ
プレグの製造方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る
プリプレグの製造方法は、エポキシ樹脂と、これの硬化
剤としてジシアンジアミド及び1分子内に水酸基を3個
以上有するフェノール系硬化剤とを含有する実質的に無
溶剤のエポキシ樹脂組成物1を、基材2の片面より塗布
して浸透させ、基材2に浸透したエポキシ樹脂組成物1
をBステージ化させるプリプレグの製造方法であって、
上記エポキシ樹脂として少なくとも融点が60℃以下の
ものを用いると共に、エポキシ樹脂組成物1を基材2に
塗布する治具の表面温度を60〜95℃にすることを特
徴とするものである。
【0009】また請求項2の発明は、エポキシ樹脂と、
これの硬化剤としてジシアンジアミド及び1分子内に水
酸基を3個以上有するフェノール系硬化剤とを含有する
実質的に無溶剤のエポキシ樹脂組成物1を、基材2の片
面より塗布して浸透させ、基材2に浸透したエポキシ樹
脂組成物1をBステージ化させるプリプレグの製造方法
であって、上記エポキシ樹脂として少なくとも融点が6
0℃以下のものを用いると共に、分子量が180〜60
0かつ1分子内に水酸基を平均1.5〜2.3個有する
フェノール系架橋剤を上記エポキシ樹脂組成物1中に配
合し、このエポキシ樹脂組成物1を基材2に塗布する治
具の表面温度を60〜95℃にすることを特徴とするも
のである。
【0010】また請求項3の発明は、請求項1又は2に
おいて、エポキシ樹脂の1当量に対して、0.7〜0.
2当量のジシアンジアミドと、0.7〜0.1当量のフ
ェノール系硬化剤をエポキシ樹脂組成物1に含有させる
ことを特徴とするものである。
【0011】また請求項4の発明は、請求項1乃至3の
いずれかにおいて、エポキシ樹脂組成物1の全量に対し
て5〜13質量%のフェノール系硬化剤をエポキシ樹脂
組成物1に含有させることを特徴とするものである。
【0012】また請求項5の発明は、請求項1乃至4の
いずれかにおいて、フェノール系硬化剤がフェノールノ
ボラック系化合物であることを特徴とするものである。
【0013】また請求項6の発明は、請求項5におい
て、フェノールノボラック系化合物がクレゾールノボラ
ックであることを特徴とするものである。
【0014】また請求項7の発明は、請求項5におい
て、フェノールノボラック系化合物がビスフェノールA
型ノボラックであることを特徴とするものである。
【0015】また請求項8の発明は、請求項5におい
て、フェノールノボラック系化合物がジシクロペンタジ
エン共重合型フェノールノボラックであることを特徴と
するものである。
【0016】また請求項9の発明は、請求項1乃至4の
いずれかにおいて、フェノール系硬化剤が下記の一般式
(1)で示される3官能型フェノール化合物であること
を特徴とするものである。
【0017】
【化2】
【0018】また請求項10の発明は、請求項1乃至9
のいずれかにおいて、ジシアンジアミドの平均粒径が1
5μm以下であることを特徴とするものである。
【0019】また請求項11の発明は、請求項2乃至1
0のいずれかにおいて、フェノール系架橋剤がビスフェ
ノールAであることを特徴とするものである。
【0020】また請求項12の発明は、請求項2乃至1
0のいずれかにおいて、フェノール系架橋剤がテトラブ
ロモビスフェノールAであることを特徴とするものであ
る。
【0021】また請求項13の発明は、請求項1乃至1
2のいずれかにおいて、エポキシ樹脂組成物1と治具の
接触時間が0.1〜180秒であることを特徴とするも
のである。
【0022】また請求項14の発明は、請求項1乃至1
3のいずれかにおいて、治具が塗布ロール4であること
を特徴とするものである。
【0023】また請求項15の発明は、請求項1乃至1
3のいずれかにおいて、長尺の基材2を連続して送りな
がらエポキシ樹脂組成物を塗布、浸透させることによっ
てプリプレグ22を連続的に製造するにあたって、治具
として転写ロール6を用い、この転写ロール6の表面に
膜状に形成された実質的に無溶剤のエポキシ樹脂組成物
を溶融状態で転写ロール6から基材2の片面に転写して
塗布し、このエポキシ樹脂組成物を基材2に浸透させ、
次に基材2のエポキシ樹脂組成物が塗布された側に配置
された付回りロール7を基材2の片面に押圧してエポキ
シ樹脂組成物を基材2の塗布面と反対側に付回らせ、こ
の後に、このエポキシ樹脂組成物を塗布・浸透した基材
2を非接触タイプの加熱ユニット14で加熱してエポキ
シ樹脂組成物をBステージ化させることを特徴とするも
のである。
【0024】また請求項16の発明は、請求項1乃至1
3のいずれかにおいて、長尺の基材2を連続して送り出
す巻出しユニット8と、基材2の切り替え時に作動され
るアキュムレータユニット9と、主剤と硬化剤を混合し
て実質的に無溶剤のエポキシ樹脂組成物を送り出す樹脂
送り出しユニット10と、樹脂送り出しユニット10か
ら送られたエポキシ樹脂組成物を溶融状態で供給するレ
ジンガン11と、外周面にレジンガン11から供給され
る溶融状態のエポキシ樹脂組成物を基材2の片面に転写
して塗布する治具である転写ロール6と、転写ロール6
の外周面にレジンガン11から供給された溶融状態のエ
ポキシ樹脂組成物を均一に拡げるメータリングロール1
2と、基材2を転写ロール6の外周面に押し付けるバッ
クアップロール13と、基材2の片面に塗布されたエポ
キシ樹脂組成物を基材2に浸透されたエポキシ樹脂組成
物を加熱してBステージ化させる非接触式の加熱ユニッ
ト14とを具備して成るプリプレグ22の製造装置を用
いてプリプレグ22を製造することを特徴とするもので
ある。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
【0026】本発明においてエポキシ樹脂としては、融
点が60℃以下であり、1分子内に2個以上のエポキシ
基を有しているものであれば、特に限定されるものでは
ない。具体的には、例えばビスフェノールA型エポキシ
樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾ
ールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック
型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂で、融点が60℃以下
のものを用いることができる。このように低融点のエポ
キシ樹脂又は常温で液状のエポキシ樹脂を用いると、基
材へ均一に浸透してプリプレグを均一化することができ
るものである。そしてこのようなエポキシ樹脂は、1種
のみを用いたり2種以上のものを混合して用いたりする
ことができる。さらに融点60℃以下のエポキシ樹脂
に、融点が60℃を超えるエポキシ樹脂を混合して用い
ることもできる。この場合、融点が60℃を超えるエポ
キシ樹脂は全エポキシ樹脂に対して50質量%以下とな
るように配合することが好ましく、これによってエポキ
シ樹脂組成物の粘度を低温で低下させることができるも
のである。一方、エポキシ樹脂として、融点が60℃を
超えるもののみが用いられている場合は、エポキシ樹脂
組成物の粘度を低下させるために高温に加熱しなければ
ならなくなり、これに伴ってエポキシ樹脂組成物がゲル
化したり、反応が進行し過ぎてプリプレグを安定に得る
ことができなくなるものである。
【0027】本発明ではエポキシ樹脂の硬化剤の一つと
してジシアンジアミドを用いるものであり、このジシア
ンジアミドを用いることによって、エポキシ樹脂組成物
は高い接着力、高い耐熱性、良好な電気特性を有するも
のとなる。ジシアンジアミドはエポキシ樹脂に対して非
相溶あるいは相溶しにくいものであり、このため、エポ
キシ樹脂組成物にジシアンジアミドを含有させると、エ
ポキシ樹脂組成物を基材の片面に塗布して含浸させる際
に、ジシアンジアミドが基材の内部や塗布側と反対側の
表面側までに浸入しにくく、基材の表面に付着して偏在
化することがあり、この結果、エポキシ樹脂組成物の硬
化性が低くなってミーズリングを生じる恐れがある。そ
こで本発明ではジシアンジアミドとして平均粒径が15
μm以下のものを用いるのが好ましい。平均粒径が15
μmを超えるものを用いると、上記のような問題が生じ
る恐れがある。尚、ジシアンジアミドは基材への浸入さ
せやすさを考慮すると、その平均粒径は小さいほど好ま
しいが、エポキシ樹脂との反応の制御しやすさを考慮す
ると、ジシアンジアミドの平均粒径は0.05μm以上
であることが好ましい。
【0028】また本発明ではエポキシ樹脂の他の硬化剤
として、1分子内に3個以上の水酸基を有するフェノー
ル系硬化剤を用いるものである。このフェノール系硬化
剤は、エポキシ樹脂と反応性を有する活性水素を持つ水
酸基を1分子内に平均3個以上有しているものであっ
て、ジシアンジアミドはこのフェノール系硬化剤に加熱
溶解性を有しているものである。従って、エポキシ樹脂
にジシアンジアミドとフェノール系硬化剤を配合してエ
ポキシ樹脂組成物を調製することによって、ジシアンジ
アミドの一部又は全部を60〜95℃程度の低温でフェ
ノール系硬化剤に対して溶解させることができ、エポキ
シ樹脂組成物へのジシアンジアミドの溶解性、すなわち
エポキシ樹脂とジシアンジアミドとの相溶性を高くする
ことができる。よって、エポキシ樹脂組成物を基材に浸
透させる際に、ジシアンジアミドが基材の表面に付着し
て偏在化しないようにすることができ、ジシアンジアミ
ドがエポキシ樹脂とともに基材に均一に含浸することに
なって、エポキシ樹脂の反応性や硬化のむらが発生しな
いようにすることができ、積層板にミーズリングが生じ
ないようにすることができると共に積層板の強度などの
特性が低下しないようにすることができる。
【0029】尚、フェノール系硬化剤の水酸基が1分子
内に平均3個未満であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化
物の耐熱性などが劣るために積層板などの製造物の硬化
むらや物性むらが生じる恐れがある。またフェノール系
硬化剤の水酸基が1分子内に平均50個を超えると、エ
ポキシ樹脂組成物の硬化物の物性が硬くて脆くなる恐れ
があるが、これは特に大きな問題にはならない。従っ
て、フェノール系硬化剤の水酸基は1分子内に平均50
個以下であることが好ましい。
【0030】このような条件を満たすフェノール系硬化
剤は、フェノールノボラック系化合物を例示することが
でき、さらに具体的には、フェノールノボラック、クレ
ゾールノボラック、ビスフェノールA型ノボラック、ジ
シクロペンタジエン含有フェノールノボラック(ジシク
ロペンタジエン共重合型フェノールノボラック)などを
挙げることができる。またフェノールノボラック系化合
物の他には、上記条件を満たすフェノール系硬化剤とし
て上記(1)の式で示される3官能型フェノール化合物
などを用いることができる。
【0031】特に、フェノールノボラックを用いると、
積層板の電気絶縁性や耐熱性を高くすることができる。
またクレゾールノボラックを用いると、他のフェノール
ノボラックよりも反応性が低いために、エポキシ樹脂組
成物の含浸時などの加熱時の安定性及びBステージ化し
たプリプレグの保存安定性を高くすることができる。
【0032】またビスフェノールA型ノボラックを用い
ると、クレゾールノボラックと同様に他のフェノールノ
ボラックよりも反応性が低いために、エポキシ樹脂組成
物の含浸時などの加熱時の安定性及びBステージ化した
プリプレグの保存安定性を高くすることができ、しかも
フェノールノボラック、クレゾールノボラックに比べて
エポキシ樹脂との混合時などの加熱時に酸化されにくい
ので、エポキシ樹脂組成物及びプリプレグの着色や変色
が少なくなって外観が良好となる。
【0033】またジシクロペンタジエン含有フェノール
ノボラックを用いると、クレゾールノボラックと同様に
他のフェノールノボラックよりも反応性が低いために、
エポキシ樹脂組成物の含浸時などの加熱時の安定性及び
Bステージ化したプリプレグの保存安定性を高くするこ
とができ、しかもフェノールノボラック、クレゾールノ
ボラック、ビスフェノールA型ノボラックを用いた場合
に比べてエポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿性が低くな
ると共にエポキシ樹脂組成物の硬化物の強靱性が優れる
ようになるので、積層板の耐吸湿性や強靱性を高めるこ
とができる。
【0034】さらに上記(1)式の3官能型フェノール
系化合物を用いると、他のフェノール系化合物に比べ
て、エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(T
g)などが高くなって積層板の耐熱性を向上させること
ができるものである。
【0035】本発明では、ジシアンジアミドをエポキシ
樹脂組成物に溶解させて、ジシアンジアミドとエポキシ
樹脂とを相溶させているので、エポキシ樹脂組成物及び
これを用いたプリプレグの反応性が高くなり、エポキシ
樹脂組成物及びプリプレグの保存安定性が低下する恐れ
がある。そこで上記のような反応性の低いフェノール系
硬化剤を併用することによって、エポキシ樹脂組成物及
びプリプレグの保存安定性が低下しないようにしている
ものである。
【0036】ここで、さらに上記のようなエポキシ樹脂
及び硬化剤に加えて、分子量が180〜600かつ1分
子内に水酸基を平均1.5〜2.3個有するフェノール
系架橋剤を用いると、比較的低分子量のエポキシ樹脂を
用いることが可能となり、エポキシ樹脂組成物の粘度が
低下し、基材への含浸性が良好となるものである。すな
わち、基材への塗布時においてはエポキシ樹脂、硬化
剤、フェノール系架橋剤が未反応であるために、エポキ
シ樹脂組成物としては60〜95℃程度の低温において
も低粘度となるものであり、その後のBステージ化工程
において高分子量化が進み、適正な特性及び含浸性を有
するプリプレグを得ることができるものである。尚、フ
ェノール系架橋剤の分子量が180未満であると、架橋
剤としての効果が無くなり接着力等の特性が悪化する恐
れがあり、逆に600を超えると、基材への塗布時にお
けるエポキシ樹脂組成物の粘度を低下させることができ
なくなる恐れがある。またフェノール系架橋剤の水酸基
が平均1.5個未満であると、硬化時において十分に架
橋することができなくなり、硬化物の特性を向上させる
ことができなくなる恐れがあり、逆に平均2.3個を超
えると、耐熱性やガラス転移温度が低下する恐れがあ
る。
【0037】このような条件を満たすフェノール系架橋
剤は、特に限定されるものではないが、例えばビスフェ
ノールAや、難燃性を付与することができるテトラブロ
モビスフェノールA等を挙げることができる。特に上記
ビスフェノールAやテトラブロモビスフェノールAは、
加熱混合することによってエポキシ樹脂と相溶させるこ
とができ、相溶して得られるエポキシ樹脂組成物を低粘
度とすることができるものである。
【0038】また本発明では、必要に応じて難燃剤や品
質向上のための添加剤や硬化促進剤を加えてもよい。硬
化促進剤としては三級アミン系促進剤、イミダゾール
類、リン系促進剤などを例示することができるが、これ
らに限定されるものではない。
【0039】そして、エポキシ樹脂組成物を調製するに
あたっては、次のようにして行うことができる。まず、
上記エポキシ樹脂及びフェノール系硬化剤等を80〜1
50℃に加熱して熱溶解し、相溶させる。上記フェノー
ル系架橋剤を用いる場合は、このとき一緒に相溶させ
る。ここで、フェノール系硬化剤及びフェノール系架橋
剤は、80〜150℃で熱溶解し易いものであり、しか
も短時間の加熱であれば反応は進行し過ぎることはな
く、低粘度のまま各成分が均一に分散することができる
ものである。その後、ジシアンジアミド、必要に応じて
硬化促進剤などを添加することによって、エポキシ樹脂
組成物を調製することができるものであるが、この際に
ジシアンジアミドを分散させるにあたっては、可能な限
り低温で行うことが好ましく、例えば、加熱装置を備え
たスタティックミキサー、インラインミキサー、ニーダ
ー等を用いることによって行うことができるが、これら
に限定されるものではない。
【0040】このように調製されるエポキシ樹脂組成物
において、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂の1
エポキシ当量に対して、ジシアンジアミド由来の水酸基
当量(活性水素当量)が0.7〜0.2当量、フェノー
ル系硬化剤由来の水酸基当量が0.7〜0.1当量とな
るように、各硬化剤の配合割合を調節して含有させるの
が好ましい。ジシアンジアミド由来の水酸基当量が0.
7当量を超えると、ジシアンジアミドの活性水素の数、
すなわちジシアンジアミドの配合量が多くなって、ジシ
アンジアミドが基材の内部や塗布側と反対側の表面側ま
でに浸入しにくく、基材の表面に付着して偏在化する恐
れがある。またジシアンジアミド由来の水酸基当量が
0.2当量未満であれば、ジシアンジアミドの活性水素
の数、すなわちジシアンジアミドの配合量が少なくなっ
て、ジシアンジアミドによる積層板の電気絶縁性能の向
上やプリプレグの接着性の向上などの効果を得にくくな
る恐れがある。
【0041】またフェノール系硬化剤由来の水酸基当量
が0.7当量を超えると、相対的にジシアンジアミドの
活性水素の数、すなわちジシアンジアミドの配合量が少
なくなって、ジシアンジアミドによる積層板の電気絶縁
性能の向上やプリプレグの接着性の向上などの効果を得
にくくなる恐れがある。またフェノール系硬化剤由来の
水酸基当量が0.1当量未満であれば、相対的にジシア
ンジアミドの活性水素の数、すなわちジシアンジアミド
の配合量が多くなって、ジシアンジアミドが基材の内部
や塗布側と反対側の表面側までに浸入しにくく、基材の
表面に付着して偏在化する恐れがある。ジシアンジアミ
ド及びフェノール系硬化剤のより好ましい配合量は、エ
ポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂の1エポキシ当量
に対して、ジシアンジアミドの水酸基当量が0.5〜
0.3当量、フェノール系硬化剤の水酸基当量が0.5
〜0.2当量となるようにするものであり、上記の不都
合の解決と成形後の積層板の良好な物性を両立させるた
めに最適な配合量である。
【0042】尚、エポキシ樹脂組成物中に、分子量が1
80〜600かつ1分子内に水酸基を平均1.5〜2.
3個有するフェノール系架橋剤(例えば、反応性難燃剤
などとして配合されるテトラブロモビスフェノールA)
を含有する場合は、このフェノール系架橋剤の活性水素
と反応するエポキシ基は、上記のエポキシ樹脂の1エポ
キシ当量から除外して、ジシアンジアミドとフェノール
系硬化剤の水酸基当量を算出するようにするものであ
る。
【0043】またジシアンジアミドをフェノール系硬化
剤及びエポキシ樹脂に溶解させることを考慮すると、フ
ェノール系硬化剤の配合量はエポキシ樹脂組成物の全量
に対して5〜13質量%に設定するのが好ましい。フェ
ノール系硬化剤の配合量が5質量%未満であれば、エポ
キシ樹脂組成物を基材に塗布する前に60〜95℃に加
熱してもエポキシ樹脂組成物へのジシアンジアミドの溶
解性、すなわちエポキシ樹脂とジシアンジアミドとの相
溶性をあまり高くすることができなくなる恐れがあり、
またフェノール系硬化剤の配合量が13質量%を超える
と、相対的にジシアンジアミドの配合量が少なくなっ
て、ジシアンジアミドによる積層板の電気絶縁性能の向
上やプリプレグの接着性の向上などの効果を得にくくな
る恐れがある。
【0044】上記のようにして無溶剤のエポキシ樹脂組
成物を調製した後、ガラスクロスやガラス不織布等のよ
うに繊維からなるシート状の補強用の基材に、その片面
からエポキシ樹脂組成物を60〜260g/m2で塗布
し、この後、基材にエポキシ樹脂組成物を加熱して浸透
させると共に、基材に含浸したエポキシ樹脂組成物を半
硬化させてBステージ化することによって、本発明のプ
リプレグを製造することができる。エポキシ樹脂組成物
を基材に塗布するにあたっては、ダイコータやロールコ
ータなど、基材の表面にエポキシ樹脂組成物を均一に塗
布することができるものであれば良く、例えば図1に示
すような塗布装置を用いることができる。
【0045】すなわち図1は本発明の実施の形態の一例
を示すものであり、1はエポキシ樹脂組成物、2は基
材、3はエポキシ樹脂組成物1を保留する容器、4は基
材2にエポキシ樹脂組成物1を塗布するための治具であ
る塗布ロール、5は容器3にエポキシ樹脂組成物1を補
充する供給管である。塗布ロール4はその略下半分をエ
ポキシ樹脂組成物1に浸漬された状態で容器3内に配設
されており、矢印イの方向に回転駆動されている。そし
て塗布ロール4の上側を基材2が矢印ロの方向に向かっ
て通過する際に、基材2の下面に塗布ロール4の外周面
が接触し、この接触により塗布ロール4の表面に付着し
たエポキシ樹脂組成物1が基材2の下面に塗布されるの
である。
【0046】そして本発明では上記の塗布工程の際に、
塗布ロール4の表面を60〜95℃に加熱することによ
って、塗布ロール4の表面に付着したエポキシ樹脂組成
物1を加熱して基材2に塗布される直前のエポキシ樹脂
組成物1の温度を塗布ロール4の表面温度と同程度にす
るようにしており、この加熱によって、エポキシ樹脂組
成物1に含有されているジシアンジアミドの一部又は全
部を熱溶解させてエポキシ樹脂との相溶性を高めるよう
にしたものである。
【0047】ジシアンジアミドはエポキシ樹脂組成物に
対する溶解性、すなわちエポキシ樹脂との相溶性が低
い。そこで従来では、エポキシ樹脂とジシアンジアミド
の両方に対して溶解性の高い有機溶剤を用いてエポキシ
樹脂組成物を調製するようにしていたが、無溶剤のエポ
キシ樹脂組成物を調製する場合はエポキシ樹脂にジシア
ンジアミドを均一に溶解させて混合することが困難であ
り、このためにエポキシ樹脂組成物中にジシアンジアミ
ドが固体粒子の状態で残留することになる。そしてこの
固体粒子のジシアンジアミドが基材の内部及び基材のエ
ポキシ樹脂組成物を塗布した面と反対側の面にまで到達
しにくくなり、エポキシ樹脂の反応性の低下や硬化む
ら、樹脂硬化物の物性むら、基材への含浸むら、及びエ
ポキシ樹脂の硬化不十分による成形後の積層板の変色
(白化)が起こるものであった。
【0048】そこで本発明では、塗布ロール4の表面温
度を60〜95℃に設定し、この塗布ロール4の加熱に
より基材2に塗布される直前のエポキシ樹脂組成物1の
温度を塗布ロール4の表面温度と同程度にすることによ
って、エポキシ樹脂組成物1中のジシアンジアミドを熱
溶解させてエポキシ樹脂との相溶性を高めるようにした
ものであり、このことで、固体粒子のジシアンジアミド
がほとんどなくなって、基材2の内部及び基材2のエポ
キシ樹脂組成物1を塗布した面と反対側の面にまでエポ
キシ樹脂とジシアンジアミドが到達することになり、エ
ポキシ樹脂の反応性の低下や硬化むら、樹脂硬化物の物
性むら、基材への含浸むら、及びエポキシ樹脂の硬化不
十分による成形後の積層板の変色(白化)が起こらない
ようにすることができるものである。
【0049】ここで、塗布ロール4の表面温度が60℃
未満であれば、ジシアンジアミドを十分に熱溶解させる
ことができず、基材2の内部及び基材2のエポキシ樹脂
組成物1を塗布した面と反対側の面にまでジシアンジア
ミドを到達させることができなくなるものである。逆に
塗布ロール4の表面温度が95℃を超えると、基材2へ
の含浸性は良好になるものの、基材2に塗布する前にエ
ポキシ樹脂組成物1の反応性が高くなって硬化が進み、
粘度が上昇するものであり、プリプレグを安定に製造す
ることができなくなるものである。
【0050】また、エポキシ樹脂組成物1と塗布ロール
4の表面の接触時間、すなわちエポキシ樹脂組成物1が
塗布ロール4の表面に接触し始めてからこのエポキシ樹
脂組成物1が基材2の表面に塗布され始めるまでの時間
は、塗布ロール4の表面温度によって異なるが、0.1
〜180秒に設定するのが好ましい。エポキシ樹脂組成
物1と塗布ロール4の表面の接触時間が0.1秒未満で
あれば、ジシアンジアミドを十分に熱溶解させることが
できず、基材2の内部及び基材2のエポキシ樹脂組成物
1を塗布した面と反対側の面にまでジシアンジアミドを
到達させることができなくなる恐れがあり、エポキシ樹
脂組成物1と塗布ロール4の表面の接触時間が180秒
を超えると、基材2に塗布する前にエポキシ樹脂組成物
1の反応性が高くなって硬化が進み、粘度が上昇するも
のであり、基材2にエポキシ樹脂組成物1を浸透させに
くくなって好ましくない。
【0051】尚、塗布ロール4はその下側略半分が容器
3内のエポキシ樹脂組成物1に浸漬した状態にあるの
で、塗布ロール4の加熱によって容器3内でエポキシ樹
脂組成物1の硬化が進行するが、容器3内のエポキシ樹
脂組成物1は順次基材2に塗布されて消費されていき、
これと同時に供給管5を通じて、硬化の進んでいない新
しいエポキシ樹脂組成物1が容器3内に供給されていく
ので、エポキシ樹脂組成物1が容器3内で硬化すること
はない。
【0052】またダイコータとは、基材2にエポキシ樹
脂組成物1を塗布するための治具であるリップ部からダ
イ内部のエポキシ樹脂組成物1を吐出する構造を備える
コータであって、このようなダイコータにて基材2の片
面に上記無溶剤のエポキシ樹脂組成物1を塗布すること
によって、エポキシ樹脂組成物1を基材2に均一に一定
量塗布することが可能となるものである。すなわち、ダ
イコータを用いた塗布方法では、一定量のエポキシ樹脂
組成物1をリップ部から吐出するので、ロールコータ法
や浸漬法に比べて塗布量を一定化することを容易に行う
ことができる。そしてダイコータを用いる場合は、リッ
プ部の表面温度、すなわちエポキシ樹脂組成物1と接触
する面の温度を60〜95℃にするのである。
【0053】尚、本発明では基材2の一方の片面にエポ
キシ樹脂組成物1を塗布して含浸させるようにするが、
必要に応じて、基材2のもう一方の片面にもエポキシ樹
脂組成物1を塗布して含浸させるようにしてもよい。ま
たエポキシ樹脂組成物1を均一に加熱することができ、
加熱後の基材2へのエポキシ樹脂組成物1の塗布が容易
なロール加熱方式(図1に示すもの)を採用するのが好
ましい。すなわち、エポキシ樹脂組成物1を必要量だけ
塗布ロール4に塗り広げ、その塗布ロール4の表面のエ
ポキシ樹脂組成物1を基材2へ再転写して塗布する方法
が、エポキシ樹脂組成物1の温度及び加熱時間制御等の
点で最も優れている。しかもエポキシ樹脂組成物1を塗
布する塗布ロール4を利用してエポキシ樹脂組成物1の
加熱も行うので、エポキシ樹脂組成物1の加熱装置を別
途設ける必要がなくなって、塗布装置を簡素化すること
ができるものである。
【0054】また、上記のエポキシ樹脂組成物1を基材
2に塗布するにあたっては、図2や図3に示すような塗
布装置を用いて行うことがより好ましく、以下ではこれ
らの塗布装置を用いてプリプレグを製造する方法につい
て説明する。
【0055】図2は請求項15の発明の実施の形態の一
例を示すものである。基材2は既述したものと同様にガ
ラスクロス等の繊維からなるシート状に形成されるもの
であり、連続して矢印方向に送られている。この基材2
はバックアップロール13の外周に回して折り返すよう
に送られるものであり、基材2を介してバックアップロ
ール13と対向させて転写ロール6が配置してある。本
実施形態においては、この転写ロール6がエポキシ樹脂
組成物を基材2に塗布する治具として用いられる。この
転写ロール6は基材2の送り方向と逆方向(基材2と転
写ロール6の対向面の移動方向が逆方向)に回転駆動さ
れるものであり、またこの転写ロール6の外周には転写
ロール6の回転方向とリバース方向(転写ロール6とメ
ータリングロール12の対向面の移動方向が逆方向)に
回転駆動されるメータリングロール12が配置してあ
る。また、転写ロール6の配置位置よりも基材2の進行
方向側の位置において付回りロール7が配置してある。
この付回りロール7は基材2の送り方向と逆方向又は同
一方向(基材2と付回りロール7の対向面の移動方向が
逆方向又は順方向)に回転駆動することができるもので
ある。そしてさらに、付回りロール7の配置位置よりも
基材2の進行方向側の位置において、加熱ユニット14
が配置してある。加熱ユニット14は例えば内部に加熱
空気を循環して非接触で加熱することができるものとし
て形成してある。
【0056】エポキシ樹脂組成物としては、既述したも
のと同様に無溶剤型のエポキシ樹脂などが用いられるも
のであり、このエポキシ樹脂を主成分とする組成物(主
剤)を貯蔵するタンク20aと硬化剤を主成分とする組
成物を貯蔵するタンク20bからそれぞれ、ギアポンプ
などで形成される計量ポンプ21a,21bによって所
定量の各組成物を送り出して混合する樹脂送り出しユニ
ット10が設けてある。このように各組成物を混合して
調製される無溶剤型のエポキシ樹脂組成物は溶融状態で
転写ロール6に供給されるようにしてある。溶融状態の
エポキシ樹脂組成物が転写ロール6の外周面に供給され
ると、このエポキシ樹脂組成物はメータリングロール1
2によって転写ロール6の外周表面に均一に拡げられ、
転写ロール6の外周面で均一な膜状に形成される。この
とき転写ロール6の表面温度は60〜95℃に設定され
ており、この転写ロール6の加熱により基材2に塗布さ
れる直前のエポキシ樹脂組成物の温度が転写ロール6の
表面温度と同程度になっているものである。
【0057】このように溶融状態のエポキシ樹脂組成物
が均一な膜状に形成される転写ロール6の外周面には、
バックアップロール13によって基材2の片面が押し付
けられており、エポキシ樹脂組成物は転写ロール6から
基材2の片面の表面に転写されて均一に塗布される。こ
のように基材2の片面に塗布されたエポキシ樹脂組成物
は溶融状態にあるので、エポキシ樹脂組成物は自然に基
材2内に浸透して含浸していく。基材2へのエポキシ樹
脂組成物の塗布は、このようにして転写ロール6による
転写で行うことができ、従来のようにダイコーターを用
いる必要が無くなるものであり、ダイコーター内にエポ
キシ樹脂組成物が固着する場合のような問題が無くなる
ものである。尚、エポキシ樹脂組成物と転写ロール6の
表面の接触時間、すなわち溶融状態のエポキシ樹脂組成
物が転写ロール6の表面に接触し始めてからこのエポキ
シ樹脂組成物が基材2の表面に塗布され始めるまでの時
間は、既述の実施形態と同様の理由により、0.1〜1
80秒に設定しておくのが好ましい。
【0058】次に、溶融状態のエポキシ樹脂組成物が塗
布・含浸された基材2は付回りロール7の位置に連続し
て送られる。付回りロール7は基材2のエポキシ樹脂組
成物を塗布した側の面に押し付けられるように配置され
ているものであり、基材2が付回りロール7の外周に接
触して通過する際に、基材2に塗布・含浸された溶融状
態のエポキシ樹脂組成物は付回りロール7に押圧され
て、基材2の塗布面と反対側の面に押出されて付回るこ
とになる。このようにして、基材2の片面に転写ロール
6でエポキシ樹脂組成物を塗布するだけで、基材2には
その両面に均一にエポキシ樹脂組成物を付回らせると共
にその内部に均一にエポキシ樹脂組成物を含浸させるこ
とができるものであり、従来のように基材2の片面と他
方の片面にそれぞれダイコーターを配置して各面にエポ
キシ樹脂組成物を塗布するような必要が無くなるもので
ある。また、基材2への転写ロール6によるエポキシ樹
脂組成物の塗布や、付回りロール7による塗布面と反対
側へのエポキシ樹脂組成物の付回りの操作は、いずれも
基材2の同じ片面において行われるので、基材2内の空
気は他方の片面から容易に逃げて封じ込められることが
なく、ボイドが発生することを防ぐことができるもので
ある。
【0059】このようにしてエポキシ樹脂組成物が塗布
・含浸された基材2は加熱ユニット14に送られ、加熱
ユニット14内を非接触で通過する間にエポキシ樹脂組
成物が加熱され、エポキシ樹脂組成物をBステージ状態
に半硬化させてシート状のプリプレグ22を得ることが
できるものである。このプリプレグ22は搬送ロール2
3で送られ、巻き取るか、あるいは一定長さに切断し
て、次工程に送られるものである。
【0060】図3は請求項16の発明の実施の形態の一
例を示すものである。図3において8は巻出しユニット
であって、長尺の基材2を巻いた一対の巻出しロール2
8a,28bを設けて形成してあり、一方の巻出しロー
ル28aから繰り出した基材2がアキュムレータユニッ
ト9に送り出されるようになっている。アキュムレータ
ユニット9は上下方向に移動駆動される複数の可動ロー
ル29,29…を具備して形成されるものであり、基材
2は各可動ロール29,29…に折り返して蛇行するよ
うに懸架してある。上記の一方の巻出しロール28aか
ら他方の巻出しロール28bに基材2を切り替える際
に、アキュムレータユニット9を作動させることによっ
て装置の連続運転が可能になるものである。また、基材
2の送り方向に沿って、既述のバックアップロール1
3、転写ロール6、付回りロール7、スムージングロー
ル25、加熱ユニット14が配置してある。尚、本実施
形態においても、転写ロール6がエポキシ樹脂組成物を
基材2に塗布する治具として用いられる。さらに、樹脂
送り出しユニット10はレジンガン11に接続してあ
り、溶融したエポキシ樹脂組成物を混合しながらレジン
ガン11から転写ロール6に供給することができるよう
にしてある。そして既述のように、エポキシ樹脂組成物
が塗布・含浸された基材2を加熱ユニット14で加熱す
ることによって、エポキシ樹脂組成物をBステージ状態
に半硬化させてシート状のプリプレグ22を得ることが
できるものである。このプリプレグ22は搬送ロール2
3で送られ、コンパクションロール30でプリプレグ2
2の表面を加圧して圧縮した後、巻き取りユニット31
の巻き取りロール32にプリプレグ22を巻き取るよう
になっている。尚、このようにプリプレグ22を巻き取
る他に、カッターユニットと積載装置を具備して、プリ
プレグ22を所定の定寸にカッターユニットで切断する
と共に、切断した定寸のプリプレグ22を積載装置に積
み上げるようにしてもよい。
【0061】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。
【0062】(実施例1乃至13及び比較例1乃至3)
エポキシ樹脂と硬化剤とフェノール系架橋剤と硬化促進
剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール試薬)を表1
乃至3に示す配合割合で混合してエポキシ樹脂組成物を
調製した。使用したエポキシ樹脂、硬化剤、及びフェノ
ール系架橋剤の種類は次の通りである。
【0063】エポキシ樹脂1:エポキシ当量190のビ
スフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ
(株)製、商品名「エピコート828」、融点=約0
℃) エポキシ樹脂2:エポキシ当量210のクレゾールノボ
ラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)
製、商品名「EPICLON N680」、融点=約1
00℃) ジシアンジアミド:平均粒径40μm以上の試薬ジシア
ンジアミド(分子量84、理論活性水素当量=21g/
eq) 硬化剤1:フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化
学工業(株)製、商品名「フェノライトTD213
1」、活性水素当量=約105g/eq、軟化点=約8
0℃、1分子中の水酸基の数は10〜3個で平均5個) 硬化剤2:クレゾールノボラック樹脂(大日本インキ化
学工業(株)製、商品名「フェノライトKA116
0」、活性水素当量=約120g/eq、軟化点=約8
5℃、1分子中の水酸基の数は10〜3個で平均5個) 硬化剤3:ビスフェノールA型ノボラック樹脂(大日本
インキ化学工業(株)製、商品名「フェノライトVH4
150」、活性水素当量=約120g/eq、軟化点=
約85℃、1分子中の水酸基の数は10〜3個で平均4
個) 硬化剤4:ジシクロペンタジエン含有フェノールノボラ
ック樹脂(日本石油(株)製、商品名「DPP−600
−L」、活性水素当量=約170g/eq、軟化点=9
0℃、1分子中の水酸基の数は10〜3個で平均5個) 硬化剤5:下記(2)式を有するフェノール系硬化剤
(活性水素当量=約100g/eq、1分子中の水酸基
の数は3個)
【0064】
【化3】
【0065】硬化剤6:平均粒径7μmに微細化したジ
シアンジアミド硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製、
商品名「エピキュアDICY7」、分子量84、理論活
性水素当量=21g/eq、1分子中の水酸基の数は4
個) フェノール系架橋剤1:ビスフェノールA(試薬を使
用)(分子量228、理論活性水素当量=114g/e
q、1分子中の水酸基の数は平均2個) フェノール系架橋剤2:テトラブロモビスフェノールA
(試薬を使用)(分子量544、理論活性水素当量=2
72g/eq、1分子中の水酸基の数は平均2個) 表1乃至3に示す組成物A及びBは、次のようにして調
製した。
【0066】組成物A:エポキシ樹脂1を60質量部、
エポキシ樹脂2を10質量部、フェノール系架橋剤1
(テトラブロモビスフェノールA)を30質量部配合
し、130℃に加熱し相溶させたものを組成物Aとし
た。この組成物Aは、フェノール系架橋剤1の水酸基当
量をエポキシ当量から除去するためエポキシ当量400
g/eqとなる。
【0067】組成物B:エポキシ樹脂1を70質量部、
エポキシ樹脂2を11質量部、フェノール系架橋剤2
(ビスフェノールA)を19質量部配合し、110℃に
加熱し相溶させたものを組成物Bとした。この組成物B
は、フェノール系架橋剤2の水酸基当量をエポキシ当量
から除去するためエポキシ当量約400g/eqとな
る。
【0068】尚、表1乃至3の「配合したエポキシ基の
数」の欄には、エポキシ樹脂の配合した質量部当たりの
エポキシ基の数が示されており、質量部/エポキシ当量
の式で計算される。また「エポキシ価」の欄には、全エ
ポキシ樹脂100質量部当たりのエポキシ基の数が示さ
れており、配合したエポキシ基の数の合計で計算され
る。また「配合した活性水素の数」の欄には、硬化剤の
配合した質量部当たりの活性水素の数が示されており、
質量部/活性水素当量の式で計算される。
【0069】[プリプレグの製造]上記実施例1乃至1
3及び比較例1乃至3について、プリプレグの製造は次
の製造方法A及びBに基づいて行った。いずれの製造方
法についても基材2としては、厚さ0.18mmのガラ
スクロス(旭シュエーベル(株)製、商品名「762
8」)を使用した。
【0070】製造方法A:加熱溶融させた上記無溶剤の
エポキシ樹脂組成物1(実施例1乃至13及び比較例1
乃至3)を、図1に示す塗布装置(ロールコータ)で基
材2の片面(下面)より170g/m2塗布し、この
後、非接触タイプの加熱ユニットにより約180℃で加
熱することにより、成形に適する硬化レベルにまでBス
テージ化させてプリプレグを製造した。
【0071】そしてエポキシ樹脂組成物1の塗布工程時
の塗布ロール4の表面温度を実測した。また、塗布ロー
ル4の回転速度を調整することにより、塗布ロール4に
よるエポキシ樹脂組成物1の加熱時間(接触時間)を調
整し、エポキシ樹脂組成物1が塗布ロール4に接してか
ら基材2に塗布されるまでの時間を測定し、これをエポ
キシ樹脂組成物1の加熱時間とした。
【0072】製造方法B:加熱溶融させた上記無溶剤の
エポキシ樹脂組成物(実施例1乃至13及び比較例1乃
至3)を、図3に示す塗布装置で基材2の片面より約1
45g/m2塗布し、この後、非接触タイプの加熱ユニ
ット14により約180℃で加熱することにより、成形
に適するレベルまでBステージ化させてプリプレグを製
造した。
【0073】そしてエポキシ樹脂組成物の塗布工程時の
転写ロール6の表面温度を実測した。また、転写ロール
6の回転速度を調整することにより、転写ロール6によ
るエポキシ樹脂組成物の加熱時間(接触時間)を調整
し、エポキシ樹脂組成物が転写ロール6に接してから基
材2に転写されるまでの時間を測定し、これをエポキシ
樹脂組成物の加熱時間とした。
【0074】[積層板の製造]次に、上記のようにして
製造したプリプレグを用いて積層板を製造した。積層板
を製造するにあたっては、内層板の両側の表面に上記プ
リプレグを一枚ずつ重ねて、170℃、90分の条件で
加熱しながら、約2.94MPa(約30kgf/cm
2)で加熱して成形した。上記内層板としては、厚さ
0.8mmの内層コア両面銅張り板(松下電工(株)
製、商品名「CR1766」、銅箔厚35μm)に黒化
処理を施したものを用いた。黒化処理は、処理液として
亜塩素酸ナトリウム50g/リットルと、水酸化ナトリ
ウム10g/リットルと、リン酸三ナトリウム10g/
リットルとを含む水溶液を用い、この処理液で95℃、
60秒の条件で内層コア両面銅張り板の銅箔を酸化銅に
処理するようにして行った。
【0075】次に、上記積層板、エポキシ樹脂組成物、
及びプリプレグの性能を次の項目で評価した。
【0076】[成形後の白化]上記積層板のミーズリン
グ(交点白化)を外観検査により目視確認した。この場
合、内層板が黒化処理されているため、プリプレグを用
いて製造される積層板のミーズリングは明確に観察され
る。このレベルを5ランクに分けて次のような評価を付
した。
【0077】 ◎:ミーズリングが全く見られないもの ○:ミーズリングがほとんど見られないもの △:ミーズリングが少し見られるもの ×:ミーズリングが目立つもの ××:ミーズリングが顕著に目立つもの [エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸水率の測定]上記プ
リプレグを揉みほぐしてエポキシ樹脂組成物の粉を落と
し、その粉を所定の金型に入れて直圧成形し、断面10
×4mm、長さ40mmの曲げ物性評価用の樹脂棒を成
形した。この成形は170℃、90分の加熱条件で行っ
た。次に、樹脂棒を4時間煮沸し、この後、煮沸前後の
樹脂棒の質量から下記の式を用いて吸水率を計算した。
【0078】吸水率(%)={(煮沸後の樹脂棒の質
量)−(煮沸前の樹脂棒の質量)}÷(煮沸前の樹脂棒
の質量)×100 [エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度の測
定]樹脂棒を上記と同様にして作成し、この樹脂棒のt
anδを粘弾性スペクトロメータにより測定し、このピ
ーク温度からガラス転移温度(Tg)を評価した。
【0079】[プリプレグの保存安定性]上記プリプレ
グを40℃の恒温槽内に放置し、プリプレグに含浸され
たエポキシ樹脂組成物の130℃における溶融粘度が、
初期値(40℃の乾燥機内に放置する前の値)に対して
50%増加する時間を評価した。
【0080】[プリプレグの製造安定性]上記プリプレ
グを40時間以上連続して製造した場合の塗布ロール4
や転写ロール6等の汚れを見てプリプレグの製造安定性
を評価した。塗布ロール4等の表面でエポキシ樹脂組成
物の一部がゲル化したものを不安定なものとし、これ以
外のものを安定なものとした。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】表1乃至3にみられるように、実施例1乃
至13のものは比較例1及び3のものよりも、成形後の
白化が少ないことが確認される。これは、比較例1にお
いては塗布ロールの表面温度が低すぎるためであると考
えられ、また比較例3においては硬化剤としてジシアン
ジアミドのみが用いられているためであると考えられ
る。しかも比較例3においては、他のものより吸水率が
増加していることが確認される。
【0085】また比較例2のものは、塗布ロールの表面
温度が高すぎるため、プリプレグを安定して製造できな
いことが確認される。
【0086】尚、実施例13において、プリプレグの製
造安定性は不安定であるが、これは、塗布ロールの表面
温度は適正であるものの、エポキシ樹脂組成物の加熱時
間が長すぎるためであると考えられる。
【0087】
【発明の効果】上記のように本発明の請求項1に係るプ
リプレグの製造方法は、エポキシ樹脂と、これの硬化剤
としてジシアンジアミド及び1分子内に水酸基を3個以
上有するフェノール系硬化剤とを含有する実質的に無溶
剤のエポキシ樹脂組成物を、基材の片面より塗布して浸
透させ、基材に浸透したエポキシ樹脂組成物をBステー
ジ化させるプリプレグの製造方法であって、上記エポキ
シ樹脂として少なくとも融点が60℃以下のものを用い
ると共に、エポキシ樹脂組成物を基材に塗布する治具の
表面温度を60〜95℃にするので、フェノール系硬化
剤でジシアンジアミドを溶解させることによって、エポ
キシ樹脂組成物を調製する際に低温でフェノール系硬化
剤に対してジシアンジアミドを溶解させることができ、
エポキシ樹脂組成物へのジシアンジアミドの溶解性を高
くすることができるものであり、よって、ジシアンジア
ミドが基材の表面に付着して偏在化せずにエポキシ樹脂
とともに基材に均一に含浸することになって、ミーズリ
ングの発生及び樹脂硬化物の特性の悪化を低減すること
ができるものである。
【0088】また請求項2の発明は、エポキシ樹脂と、
これの硬化剤としてジシアンジアミド及び1分子内に水
酸基を3個以上有するフェノール系硬化剤とを含有する
実質的に無溶剤のエポキシ樹脂組成物を、基材の片面よ
り塗布して浸透させ、基材に浸透したエポキシ樹脂組成
物をBステージ化させるプリプレグの製造方法であっ
て、上記エポキシ樹脂として少なくとも融点が60℃以
下のものを用いると共に、分子量が180〜600かつ
1分子内に水酸基を平均1.5〜2.3個有するフェノ
ール系架橋剤を上記エポキシ樹脂組成物中に配合し、こ
のエポキシ樹脂組成物を基材に塗布する治具の表面温度
を60〜95℃にするので、フェノール系硬化剤でジシ
アンジアミドを溶解させることによって、エポキシ樹脂
組成物を調製する際に低温でフェノール系硬化物に対し
てジシアンジアミドを溶解させることができ、エポキシ
樹脂組成物へのジシアンジアミドの溶解性を高くするこ
とができるものであり、よって、ジシアンジアミドが基
材の表面に付着して偏在化せずにエポキシ樹脂とともに
基材に均一に含浸することになって、ミーズリングの発
生及び樹脂硬化物の特性の悪化を低減することができる
ものである。しかも、フェノール系架橋剤を用いること
で、比較的低分子量のエポキシ樹脂を用いてエポキシ樹
脂組成物を調製することが可能となり、粘度が低下し、
基材への含浸性が良好となるものである。
【0089】また請求項3の発明は、請求項1又は2に
おいて、エポキシ樹脂の1当量に対して、0.7〜0.
2当量のジシアンジアミドと、0.7〜0.1当量のフ
ェノール系硬化剤をエポキシ樹脂組成物に含有させるの
で、ジシアンジアミドによる電気絶縁性能の向上や接着
性の向上などの効果を損なうことなく、ミーズリングの
発生及び樹脂硬化物の特性の悪化を低減することができ
るものである。
【0090】また請求項4の発明は、請求項1乃至3の
いずれかにおいて、エポキシ樹脂組成物の全量に対して
5〜13質量%のフェノール系硬化剤をエポキシ樹脂組
成物に含有させるので、エポキシ樹脂組成物を調製する
際の低温でフェノール系硬化物に対してジシアンジアミ
ドを確実に溶解させることができ、ミーズリングがさら
に生じにくくなるものである。
【0091】また請求項5の発明は、請求項1乃至4の
いずれかにおいて、フェノール系硬化剤がフェノールノ
ボラック系化合物であるので、積層板の電気絶縁性や耐
熱性を高くすることができるものである。
【0092】また請求項6の発明は、請求項5におい
て、フェノールノボラック系化合物がクレゾールノボラ
ックであるので、エポキシ樹脂組成物の加熱時の安定性
及びBステージ化した後の保存安定性を高くすることが
できるものである。
【0093】また請求項7の発明は、請求項5におい
て、フェノールノボラック系化合物がビスフェノールA
型ノボラックであるので、エポキシ樹脂組成物の加熱時
の安定性及びBステージ化した後の保存安定性を高くす
ることができるものである。しかもフェノールノボラッ
ク、クレゾールノボラックに比べて加熱時に酸化されに
くいので、エポキシ樹脂組成物の着色や変色が少なくな
って外観が良好となるものである。
【0094】また請求項8の発明は、請求項5におい
て、フェノールノボラック系化合物がジシクロペンタジ
エン共重合型フェノールノボラックであるので、エポキ
シ樹脂組成物の加熱時の安定性及びBステージ化した後
の保存安定性を高くすることができるものである。しか
もフェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビス
フェノールAノボラックを用いた場合に比べてエポキシ
樹脂組成物の硬化物の吸湿性が低くなると共にエポキシ
樹脂組成物の硬化物の強靱性が優れるようになるので、
積層板の耐吸湿性や強靱性を高めることができるもので
ある。
【0095】また請求項9の発明は、請求項1乃至4の
いずれかにおいて、フェノール系硬化剤が上記の一般式
(1)で示される3官能型フェノール化合物であるの
で、エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度など
が高くなって積層板の耐熱性を向上させることができる
ものである。
【0096】また請求項10の発明は、請求項1乃至9
のいずれかにおいて、ジシアンジアミドの平均粒径が1
5μm以下であるので、基材の内部及び基材のエポキシ
樹脂組成物を塗布した面と反対側の面にまでエポキシ樹
脂とジシアンジアミドを確実に到達させることができ、
ミーズリングの発生及び樹脂硬化物の特性の悪化をさら
に低減することができるものである。
【0097】また請求項11の発明は、請求項2乃至1
0のいずれかにおいて、フェノール系架橋剤がビスフェ
ノールAであるので、加熱混合することによってエポキ
シ樹脂と相溶させることができ、相溶して得られるエポ
キシ樹脂組成物を低粘度とすることができるものであ
る。
【0098】また請求項12の発明は、請求項2乃至1
0のいずれかにおいて、フェノール系架橋剤がテトラブ
ロモビスフェノールAであるので、難燃性を付与するこ
とができると共に、加熱混合することによってエポキシ
樹脂と相溶させることができ、相溶して得られるエポキ
シ樹脂組成物を低粘度とすることができるものである。
【0099】また請求項13の発明は、請求項1乃至1
2のいずれかにおいて、エポキシ樹脂組成物と治具の接
触時間が0.1〜180秒であるので、基材に塗布する
直前のエポキシ樹脂組成物を確実に昇温させることがで
き、ジシアンジアミドの熱溶解を確実に行うことができ
るものである。
【0100】また請求項14の発明は、請求項1乃至1
3のいずれかにおいて、治具が塗布ロールであるので、
エポキシ樹脂組成物を塗布する塗布ロールを利用してエ
ポキシ樹脂組成物の加熱も行うことができ、エポキシ樹
脂組成物の加熱装置を別途設ける必要がなくなって、塗
布装置を簡素化することができるものである。
【0101】また請求項15の発明は、請求項1乃至1
3のいずれかにおいて、長尺の基材を連続して送りなが
らエポキシ樹脂組成物を塗布、浸透させることによって
プリプレグを連続的に製造するにあたって、治具として
転写ロールを用い、この転写ロールの表面に膜状に形成
された実質的に無溶剤のエポキシ樹脂組成物を溶融状態
で転写ロールから基材の片面に転写して塗布し、このエ
ポキシ樹脂組成物を基材に浸透させ、次に基材のエポキ
シ樹脂組成物が塗布された側に配置された付回りロール
を基材の片面に押圧してエポキシ樹脂組成物を基材の塗
布面と反対側に付回らせ、この後に、このエポキシ樹脂
組成物を塗布・浸透した基材を非接触タイプの加熱ユニ
ットで加熱してエポキシ樹脂組成物をBステージ化させ
るので、基材へのエポキシ樹脂組成物の塗布は転写ロー
ルによる転写で行うことができ、従来のようにダイコー
ターを用いる場合のような清掃やメンテナンスに手間を
要することがなくなると共に、ダイコーターに比較して
安価な転写ロールによって安価な設備コストで製造を行
うことができるものである。また基材に塗布・浸透され
たエポキシ樹脂組成物は付回りロールによって塗布面と
反対側の面にも付回らせられるものであり、基材の片面
に転写ロールでエポキシ樹脂組成物を塗布すると共に付
回りロールを押圧するだけで、基材の両面及び内部にエ
ポキシ樹脂組成物を浸透させることができ、従来のよう
に基材の片面と他方の片面にそれぞれダイコーターを配
置して各面にエポキシ樹脂組成物を塗布するような必要
が無くなって、設備コストをさらに安価にすることがで
きると共に、基材内の空気は他方の片面から容易に逃げ
て封じ込められることがなく、ボイドが発生することを
防ぐことができるものである。
【0102】また請求項16の発明は、請求項1乃至1
3のいずれかにおいて、長尺の基材を連続して送り出す
巻出しユニットと、基材の切り替え時に作動されるアキ
ュムレータユニットと、主剤と硬化剤を混合して実質的
に無溶剤のエポキシ樹脂組成物を送り出す樹脂送り出し
ユニットと、樹脂送り出しユニットから送られたエポキ
シ樹脂組成物を溶融状態で供給するレジンガンと、外周
面にレジンガンから供給される溶融状態のエポキシ樹脂
組成物を基材の片面に転写して塗布する治具である転写
ロールと、転写ロールの外周面にレジンガンから供給さ
れた溶融状態のエポキシ樹脂組成物を均一に拡げるメー
タリングロールと、基材を転写ロールの外周面に押し付
けるバックアップロールと、基材の片面に塗布されたエ
ポキシ樹脂組成物を基材に浸透されたエポキシ樹脂組成
物を加熱してBステージ化させる非接触式の加熱ユニッ
トとを具備して成るプリプレグの製造装置を用いてプリ
プレグを製造するので、上記と同様にミーズリングの発
生及び樹脂硬化物の特性の悪化が低減されたプリプレグ
を製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図であ
る。
【図2】本発明の実施の形態の他例を示す断面図であ
る。
【図3】本発明の実施の形態の更に他例を示す断面図で
ある。
【符号の説明】
1 エポキシ樹脂組成物 2 基材 4 塗布ロール 6 転写ロール 7 付回りロール 8 巻出しユニット 9 アキュムレータユニット 10 樹脂送り出しユニット 11 レジンガン 12 メータリングロール 13 バックアップロール 14 加熱ユニット 22 プリプレグ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F072 AA04 AA07 AB09 AB28 AB29 AD23 AE01 AE06 AE07 AF24 AF30 AG03 AH04 AH12 AH42 AJ04 AJ12 AJ22 AK05 AK14 AL13 4J036 AA01 AD01 AD08 AD09 AF06 AF07 CA08 DB05 DC31 FB07 FB08 JA08

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エポキシ樹脂と、これの硬化剤としてジ
    シアンジアミド及び1分子内に水酸基を3個以上有する
    フェノール系硬化剤とを含有する実質的に無溶剤のエポ
    キシ樹脂組成物を、基材の片面より塗布して浸透させ、
    基材に浸透したエポキシ樹脂組成物をBステージ化させ
    るプリプレグの製造方法であって、上記エポキシ樹脂と
    して少なくとも融点が60℃以下のものを用いると共
    に、エポキシ樹脂組成物を基材に塗布する治具の表面温
    度を60〜95℃にすることを特徴とするプリプレグの
    製造方法。
  2. 【請求項2】 エポキシ樹脂と、これの硬化剤としてジ
    シアンジアミド及び1分子内に水酸基を3個以上有する
    フェノール系硬化剤とを含有する実質的に無溶剤のエポ
    キシ樹脂組成物を、基材の片面より塗布して浸透させ、
    基材に浸透したエポキシ樹脂組成物をBステージ化させ
    るプリプレグの製造方法であって、上記エポキシ樹脂と
    して少なくとも融点が60℃以下のものを用いると共
    に、分子量が180〜600かつ1分子内に水酸基を平
    均1.5〜2.3個有するフェノール系架橋剤を上記エ
    ポキシ樹脂組成物中に配合し、このエポキシ樹脂組成物
    を基材に塗布する治具の表面温度を60〜95℃にする
    ことを特徴とするプリプレグの製造方法。
  3. 【請求項3】 エポキシ樹脂の1当量に対して、0.7
    〜0.2当量のジシアンジアミドと、0.7〜0.1当
    量のフェノール系硬化剤をエポキシ樹脂組成物に含有さ
    せることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレ
    グの製造方法。
  4. 【請求項4】 エポキシ樹脂組成物の全量に対して5〜
    13質量%のフェノール系硬化剤をエポキシ樹脂組成物
    に含有させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれ
    かに記載のプリプレグの製造方法。
  5. 【請求項5】 フェノール系硬化剤がフェノールノボラ
    ック系化合物であることを特徴とする請求項1乃至4の
    いずれかに記載のプリプレグの製造方法。
  6. 【請求項6】 フェノールノボラック系化合物がクレゾ
    ールノボラックであることを特徴とする請求項5に記載
    のプリプレグの製造方法。
  7. 【請求項7】 フェノールノボラック系化合物がビスフ
    ェノールA型ノボラックであることを特徴とする請求項
    5に記載のプリプレグの製造方法。
  8. 【請求項8】 フェノールノボラック系化合物がジシク
    ロペンタジエン共重合型フェノールノボラックであるこ
    とを特徴とする請求項5に記載のプリプレグの製造方
    法。
  9. 【請求項9】 フェノール系硬化剤が下記の一般式
    (1)で示される3官能型フェノール化合物であること
    を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリプ
    レグの製造方法。 【化1】
  10. 【請求項10】 ジシアンジアミドの平均粒径が15μ
    m以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれ
    かに記載のプリプレグの製造方法。
  11. 【請求項11】 フェノール系架橋剤がビスフェノール
    Aであることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか
    に記載のプリプレグの製造方法。
  12. 【請求項12】 フェノール系架橋剤がテトラブロモビ
    スフェノールAであることを特徴とする請求項2乃至1
    0のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
  13. 【請求項13】 エポキシ樹脂組成物と治具の接触時間
    が0.1〜180秒であることを特徴とする請求項1乃
    至12のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
  14. 【請求項14】 治具が塗布ロールであることを特徴と
    する請求項1乃至13のいずれかに記載のプリプレグの
    製造方法。
  15. 【請求項15】 長尺の基材を連続して送りながらエポ
    キシ樹脂組成物を塗布、浸透させることによってプリプ
    レグを連続的に製造するにあたって、治具として転写ロ
    ールを用い、この転写ロールの表面に膜状に形成された
    実質的に無溶剤のエポキシ樹脂組成物を溶融状態で転写
    ロールから基材の片面に転写して塗布し、このエポキシ
    樹脂組成物を基材に浸透させ、次に基材のエポキシ樹脂
    組成物が塗布された側に配置された付回りロールを基材
    の片面に押圧してエポキシ樹脂組成物を基材の塗布面と
    反対側に付回らせ、この後に、このエポキシ樹脂組成物
    を塗布・浸透した基材を非接触タイプの加熱ユニットで
    加熱してエポキシ樹脂組成物をBステージ化させること
    を特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のプリ
    プレグの製造方法。
  16. 【請求項16】 長尺の基材を連続して送り出す巻出し
    ユニットと、基材の切り替え時に作動されるアキュムレ
    ータユニットと、主剤と硬化剤を混合して実質的に無溶
    剤のエポキシ樹脂組成物を送り出す樹脂送り出しユニッ
    トと、樹脂送り出しユニットから送られたエポキシ樹脂
    組成物を溶融状態で供給するレジンガンと、外周面にレ
    ジンガンから供給される溶融状態のエポキシ樹脂組成物
    を基材の片面に転写して塗布する治具である転写ロール
    と、転写ロールの外周面にレジンガンから供給された溶
    融状態のエポキシ樹脂組成物を均一に拡げるメータリン
    グロールと、基材を転写ロールの外周面に押し付けるバ
    ックアップロールと、基材の片面に塗布されたエポキシ
    樹脂組成物を基材に浸透されたエポキシ樹脂組成物を加
    熱してBステージ化させる非接触式の加熱ユニットとを
    具備して成るプリプレグの製造装置を用いてプリプレグ
    を製造することを特徴とする請求項1乃至13のいずれ
    かに記載のプリプレグの製造方法。
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