JP3582770B2 - 積層板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層板の製造方法に関し、特に電気機器、電子機器、通信機器等に使用される印刷回路板用として好適な積層板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント回路板については小型化、高機能化の要求が強くなる反面、価格競争が激しく、特にプリント回路板に用いられる多層積層板やガラス布基材エポキシ樹脂積層板、あるいはガラス不織布を中間層基材としガラス織布を表面層基材とした積層板は、いずれも価格の低減が大きな課題となっている。従来これらに用いられるプリプレグや積層板の製造工程では、多量の溶剤が用いられてきた。これは、樹脂ワニスの調製が容易で、基材への樹脂の塗布・含浸が均一で容易なためである。この溶剤は塗布後の乾燥工程で蒸発して製品中に存在せず、多くは、燃焼装置等で処理され、あるいはそのまま大気中に放出されてきた。この為地球温暖化や大気汚染の一因となることが指摘されるようになってきた。一方では、溶剤使用量の削減が種々検討されているが、基材への樹脂塗布・含浸などの製造上の問題からこの削減は困難であった。
【0003】
溶剤を使用しない積層板の製造のために、低融点の樹脂や液状の樹脂を加熱混合して均一化して基材へ塗布する研究が以前からなされているが、均一混合が十分に出来ない、連続生産時加熱温度の低下による設備への樹脂固結、加熱中の熱硬化性樹脂のゲル化、これによる設備の掃除等の問題があり、連続的な生産が困難であった。一方粉末状樹脂をその
まま塗布する方法も提案されている(特開昭50−143870号公報)が、均一な混合及び塗布が困難であり、部分的な硬化が生じたり、基材への含浸が不十分であり、ボイドの多い積層板しか得られないなどの問題があり、実用化には至っていない。
【0004】
従来、繊維材からなるシート状基材に樹脂液を含浸させる場合、シート状基材を樹脂液中に浸漬・通過させて樹脂液をシート状基材に含浸させる操作がおこなわれるが、この時シート状基材の繊維間にある気泡が抜けず、プリプレグ内に気泡が残存したままであるのが普通であるため、このプリプレグを積層して得られる積層板にボイドが生じていることが多い。ボイドがなく、電気特性や外観が損われないようにするためには30〜150kg/cm2 という高い圧力で積層成形することが必要である。しかしながら、このように高い圧力で積層成形して得られた電気絶縁板、化粧板等の積層板は寸法安定性が悪くなったり、積層板に反りやねじれを発生させるという問題がある。
【0005】
寸法安定性に優れ、反りやねじれの小さい積層板を得るには低い圧力で積層成形する必要があるが、このように低い圧力で積層成形するには積層板にボイドが生じないように気泡の残存がほとんどないプリプレグを用いることが必要である。このようなプリプレグを得る方法としては、シート状基材を樹脂液中に長時間(約10分間以上)浸漬させて樹脂液がシート状基材の繊維材内まで含浸させる方法があるが、生産能率が悪く、設備も長大化する等、非実用的である。特に高粘度樹脂液の場合には不可能に近い。また、樹脂液を満たした樹脂含浸槽に超音波発振装置を付設し、樹脂液を超音波振動させることにより基材と樹脂液の振動によってシート状基材に対する樹脂液の含浸性を高める方法が提案されているが、超音波振動により樹脂液が高温となり、樹脂液中の溶剤が気化するため、樹脂液の粘度が上昇し、含浸性を低下させてしまうこととなる。これを防ぐために、常時溶剤を添加して樹脂液を一定の濃度に保つ必要が生ずるが、粘度調整装置が必要であること、更には溶剤添加によりコストが高くなる問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の積層成形では、成形内部に気泡が存在しないように30〜150kg/cm2 という高い圧力で成形を行っているために、内部応力が残留し、積層板の寸法安定性の低下が避けられなかった。また、低圧成形するためのプリプレグを作製する場合、設備コストが高いあるいは生産性に問題があり、また、成形時に気泡が抜けきれないという問題があった。本発明は、従来の高圧成形の問題点を解消し、積層成形における内部残存応力をなくし、積層板の寸法安定性を向上させ、さらに気泡がなく成形性が良好で、かつ安価な積層板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シート状基材に樹脂粉体を付着させたプリプレグの1枚または複数枚及びその片面または両面に配置した金属箔またはフィルムを、予め100〜250℃に加熱したロール間または熱盤間に挿入し、0.1〜15kg/cm2 の低圧において積層成形することを特徴とする積層板の製造方法に関するものである。
【0008】
更には、使用される樹脂粉体が、粉末状熱硬化性樹脂及び硬化剤を必須成分とする場合、これら成分の混合物に機械的エネルギーを与えてメカノケミカルな反応を起こさせて得られたものに、一次粒子の平均粒径が0.01〜1μmの微粉末添加剤を配合して得られた粉末状樹脂組成物、又は、熱硬化性樹脂及び硬化剤を加熱混練ないし溶融混合し、微粉砕して得られたものに、一次粒子の平均粒径が0.01〜1μmの微粉末添加剤を配合して得られた粉末状樹脂組成物からなることを特徴とした積層板の製造方法に関するものである。即ち、本発明は、樹脂粉体を用いて作製したプリプレグを使用して低圧成形する工程が主要な特徴である。樹脂粉体を用いて作製したプリプレグは、プリプレグ表面や内部に微小な連続気泡が形成され、さらに塗布時の含浸が従来の液状に比べてクロス等の繊維
内部に連続気泡を作成しやすい特長があり、この連続気泡が、従来の樹脂ワニスを含浸してプリプレグを得る場合に存在する気泡(独立気泡)に比べて、低圧成形時に気泡を抜けやすいものとしている。
【0009】
本発明において、かかる方法を実施するためのプリプレグの製造装置は、シート状基材に樹脂粉体を片面または両面から、好ましくは片面側から付着させる装置を必須とし、必要に応じて樹脂粉体が含浸したシート状基材を樹脂粉体が付着された面の反対面側を粉体が存在する面より高く加温する装置、及び又は樹脂が含浸したシート状基材を加熱する装置を設置する。また、使用するシート状基材及び含浸させる樹脂粉体の種類、性状等によっては、加熱装置の前に樹脂量調整装置を設置することが好ましい。これらの装置を順次通過するように構成してプリプレグを製造する。これらの装置は、シート状基材の移送方向により横型ないし縦型等、各種形式の装置を使用することができる。
【0010】
本発明において、繊維材よりなるシート状基材としては、ガラスクロス、ガラス不繊布、ガラスペーパー等のガラス繊維基材の他、紙、合成繊維等からなる織布や不織布、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる織布、不織布、マット類等が挙げられ、これらの基材の原料は単独又は混合して使用してもよい。プリプレグを製造するためにこれらのシート状基材に付着される樹脂粉体としては、一般的に、熱硬化性樹脂であり、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂およびこれらの変性樹脂が好ましく使用されるが、その他、熱可塑性樹脂、天然樹脂等の樹脂も使用され、それらに限定されるものではない。熱硬化性樹脂の場合、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤を配合する。また、充填材、着色剤、補強材を配合することができる。充填材として無機充填材を加えると耐トラッキング性、耐熱性、熱膨張率の低下等の特性を付与することが出来る。かかる無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、アルミナ、シリカ、未焼成クレー、焼成クレー、硫酸バリウム等がある。充填材として無機充填材の粒径としては通常1000μm以下であり、好ましくは0.1〜500μmであり、更に好ましくは0.1〜200μmである。
【0011】
樹脂粉体としてはまず、熱硬化性樹脂と硬化剤を含む樹脂組成物の場合、粉末状熱硬化性樹脂及び硬化剤の混合物に機械的エネルギーを与えてメカノケミカル反応を起こさせて得られたもの、又は、熱硬化性樹脂及び硬化剤を加熱混練ないし溶融混合し、微粉砕したものを用いることが、樹脂と硬化剤等の他の成分とが均一に混合分散され、微粒末化しているので、好ましい。
【0012】
粉末状熱硬化性樹脂及び硬化剤の混合物に機械的エネルギーを与えてメカノケミカル反応を起こさせて得られたものを用いるの場合、硬化剤は粉末状であることが好ましいが、配合量が少ない場合は液状でもよく、樹脂との混合物に機械的エネルギーを与えた後に粉末化できれば使用可能である。また、好ましくは、硬化促進剤を使用する。硬化促進剤も粉末状のものが好ましいが、上記と同様に液状のものも使用可能である。かかる硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、第3級アミン等を用いることができる。これらの各成分は上記のものに限定されるものではない。
【0013】
これらの粉体材料の粒径としては、通常1000μm以下であり、好ましくは0.1〜500μmであり、更に好ましくは0.1〜200μmである。これは、1000μmを越えると粒子重量に対しての表面積が小さくなり、熱硬化性樹脂、硬化剤や硬化促進剤等各成分の互いの接点が少なくなり、均一分散が困難となるため、反応の目標比率とは異なった比率で反応したり、均一な反応が行われないおそれがある。メカノケミカル反応のためには、硬化剤及び又は硬化促進剤が粉末状の場合、熱硬化性樹脂の粒径は、硬化剤及び又は硬化促進剤の粒径に対して5〜15倍が好ましい。これは、この範囲では熱硬化性樹脂に硬化剤及び又は硬化促進剤が融合しやすいためである。更に必要により無機充填材等
の添加剤を配合することができる。
【0014】
これは、メカノケミカル反応による化学的改質を利用したものであるが、固体と液体が機械的エネルギーにより化学的に改質される場合をも含むものである。メカノケミカル反応のために機械的エネルギーを与える粉体処理方法としては、ライカイ機、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ジェットミル、オングミル、多段石臼型混練押し出し機等による混合乃至混練がある。この中でオングミル(ホソカワミクロン(株)製 メカノフュージョン方式等)、多段石臼型混練押し出し機((株)KCK製:メカノケミカルディスパージョン方式等)、ジェットミル((株)奈良機械製作所製:ハイブリタイザー方式等)、ボールミル(三井鉱山(株)製:ダイナミックミル)による混合乃至混練が好ましく、特に、メカノケミカル反応を効率よく行うためには、多段石臼型混練押し出し機((株)KCK製:メカノケミカルディスパージョン方式)またはボールミル(三井鉱山(株)製:ダイナミックミル)が好ましい。
【0015】
メカノケミカル反応を行うためには、熱硬化性樹脂の軟化点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。これは、上記処理時に粉体材料間あるいは粉体材料と処理装置との間で摩擦、粉砕、融合により20〜50℃程度の熱が発生するため、この影響を最小限にとどめるためである。一方、軟化点が高すぎても有効なメカノケミカル反応が行われにくく、かつ、後の工程である樹脂組成物の基材への含浸が困難となるので、150℃以下の軟化点が好ましい。粉末状熱硬化性樹脂及び硬化剤等の各成分は、メカノケミカル反応のための粉体処理の前に、予め、上記粒径まで粉砕した後ヘンシェルミキサー等にてできるだけ均一に混合することが好ましい。
【0016】
メカノケミカル反応されたものの粒径は、通常1000μm以下であり、好ましくは0.1〜500μmであり、更に好ましくは0.1〜200μmである。かかる粒径は、樹脂粉末の散布ないし塗布時の流動性、及び加熱溶融時の流れや表面の滑らかさを改良すること、基材への樹脂の含浸性を改良すること、基材中での樹脂粉体の分布を安定化させること等のために適している。
【0017】
熱硬化性樹脂及び硬化剤を加熱混練ないし溶融混合し、微粉砕したものを用いる場合、熱硬化性樹脂及び硬化剤、その他必要により添加される無機充填材等の添加剤とともに、加熱ロール等により加熱混練ないし溶融混合され、次いで、粉砕機により微粉砕される。熱硬化性樹脂及び硬化剤は、通常、固形のものが使用されるが、熱硬化性樹脂、無機充填材以外の成分(例えば、硬化剤、硬化促進剤)は液状のものも使用可能である。
【0018】
加熱混練ないし溶融混合するために装置は、加熱ロール、1軸又は2軸押出機、コニーダー等の加熱混練機、あるいはヘンシェルミキサー等の加熱装置の付いた攪拌容器、反応装置等があり、実用上は加熱ロール、1軸又は2軸押出機、ヘンシェルミキサーが好ましい。また、粉砕機は、加熱混練ないし溶融混合された樹脂組成物を微粉砕可能なものであればいかなるものでもよく、例えば、ハンマーミル、アトマイザー、ジェットミル等がある。
【0019】
微粉砕されたものの粒径は、通常1000μm以下であり、好ましくは0.1〜500μmであり、更に好ましくは0.1〜200μmである。かかる粒径は、樹脂粉体の散布ないし塗布時の流動性、及び加熱溶融時の流れや表面の滑らかさを改良すること、基材への樹脂の含浸性を改良すること、基材中での樹脂粉体の分布を安定化させること等のために適している。
【0020】
以上のようにして得られたものに、微粉末添加剤を配合することにより、粉体の流動特性を大きく向上させた樹脂粉体を得ることができる。従って、この樹脂粉体を基材へ塗布
・含浸する際、該樹脂粉体の均一な散布ないし塗布を行うことができ、基材上での樹脂粉体の均一な分布及び樹脂粉体塗布面の平滑性を得ることができる。これにより基材への均一な塗布が可能となる。微粉末添加剤としては、無機系微粉末が望ましいが、有機系微粉末も用いることができる。また、微粉末添加剤の一次粒子径は平均粒径で0.01〜1μmのものを用いるが、好ましくは0.01〜0.1μm(比表面積:50〜500m2 /g程度)のものを用いる。かかる微粉末添加剤としては、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末等がある。平均粒径が1μmを越えると比表面積が小さくなり単位重量当たりの粒子数が減少すること、及び、上記メカノケミカル処理されたもの、あるいは、加熱混練ないし溶融混合し、微粉砕したものとの粒径差が小さくなることにより、流動性向上のためのベアリング効果が十分に得られないおそれがある。粉体中のベアリング効果とは、比較的粒径の大きな粒子同士間に微粒子を存在させることにより、粒径の大きな粒子の移動をより自由にし、粉体全体としての流動性を向上させるものである。
【0021】
次に、得られた樹脂粉体は、シート状繊維基材上に均一に塗布ないし散布し付着する。この付着量は、シート状繊維基材の繊維材質、性状、重量(単位面積当たり)により異なるが、通常、シート状繊維基材の重量の40〜60%程度である。ただし、基材の両面に付着させる場合は、片面に前記量のおおよそ半量ずつを付着させるのが好ましい。樹脂粉体をシート状基材に付着させる方法は、シート状繊維基材上面から振りかける方法、各種コーターによる塗布方法、静電塗装法、流動浸漬法、スプレーによる吹き付け法等、樹脂粉末が良好に付着する方法であれば特に限定されない。更に、シート状繊維基材は予め加熱されているので、シート状繊維基材に樹脂粉末を存在させるとき、この基材は、水平であっても垂直であってもよい。従って、シート状繊維基材の上面又は下面、あるいは垂直面に塗布ないし散布等により付着させることができる。その後の加熱によりプリプレグが得られる。
【0022】
以上のようにして得られたプリプレグは、ロールによるプレスの場合は、通常巻き取り機等により巻き取られたのち、あるいは、そのまま1枚または複数枚に重ねられ、必要により銅箔等の金属箔あるいはフィルムを重ね合わせ、低圧で加熱して積層板に成形される。ロールプレスの場合、裁断されたプリプレグを使用することも可能であるが巻き取ったものを使用し、連続的に成形する方が好ましい。この場合は、1対あるいは数対のロール間を通して成形する。ロールの材質は金属、ゴム等がある。熱盤によるプレスの場合は、通常プリプレグを所定の長さに裁断し低圧で加熱成形する。ロールまたは熱盤の温度は、100〜250℃で、樹脂の軟化点、硬化度、粘度等により適宜調整する。成形圧力としては、0.1〜15kg/cm2 の範囲である。15kg/cm2 を越えると積層板内に残留応力が残り歪みとなって積層板の加工工程中での寸法変化が低下する。0.1kg/cm2 未満では良好な成形が困難である。好ましくは0.1〜8kg/cm2 である。
【0023】
本発明による積層板の製造方法は、得られた積層板の性能を実質的に変えることなく、良好な成形性を有して寸法変化の少ない積層板を得ることができる。また、樹脂粉体を使用することにより無溶剤による省資源化及び大気汚染の低減化が図られ、溶剤を蒸発させ、燃焼させるための熱エネルギーも不要となる。そして、積層板製造時において、溶剤がもともと存在しないため反応が速く、成形時間が短縮され、さらに原材料及び設備の低コスト化をも達成することができる。
【0024】
以下、本発明の積層板の製造方法に関し、プリプレグの製造工程を代表的な例について各工程毎に図面に基づいて順次説明する。
【0025】
(樹脂粉体混合工程)
粉末状熱硬化性樹脂及び硬化剤を必須成分とし、これら成分の混合物に機械的エネルギ
ーを与えてメカノケミカルな反応を起こさせて得られたもの、あるいは、熱硬化性樹脂及び硬化剤を必須成分とし、これら成分を加熱混練ないし溶融混合し微粉砕して得られたものに、一次粒子の平均粒径が0.01〜1μmの微粉末添加剤を配合して得られた粉末状樹脂組成物からなる樹脂粉体2を調製し、定量供給装置3に投入する。
【0026】
(樹脂粉体の付着工程)
調製した樹脂粉体2の所定量を、定量供給装置3から篩い4(又はコーター)を経て片面側よりシート状基材1に付着させる。同時に両面側より付着しても良いが、片面側より付着させることにより、粉体中あるいは繊維間に存在する空気を反対面側から抜けやすくすることが出来る。シート状基材1は予め予熱することにより樹脂粉体2のシート状基材1への付着が容易となる。
【0027】
(加温工程)
樹脂粉体が付着されたシート状基材をパネルヒータ5、熱風加熱機等により加温することにより、樹脂粉体を液状化させ、繊維材中の空気との置換を容易に行わせる工程である。樹脂粉体を片面側から付着した場合、その面の反対面側のみを加熱するか、又は両面側から加熱する場合には反対面側の温度をより高温に加温すると、溶融樹脂と基材との温度差によるドライビングフォースによる含浸性を向上させることとなるので、好ましい。樹脂粉体が付着した面より加温するとシート状基材より先に樹脂液の温度が上昇するため、樹脂液が低粘度化してもシート状基材の方が低温のために、樹脂液の温度を下げ、低粘度化を妨げることとなり、含浸性を低下させることとなるので好ましくない。
【0028】
(加熱工程)
必要により、樹脂粉体が付着され、加温されたシート状基材を加熱装置6により加熱して、シート状基材のより内部まで樹脂を含浸させる。
【0029】
(樹脂量調整工程)
シート状基材への樹脂の付着量が所望の量に満たない場合、あるいは、基材の両面側に均等に樹脂を付着させる場合、加温又は加熱工程後に樹脂付着量を多くする為の樹脂量調整工程を加える。この樹脂付着は最初に樹脂粉体を含浸するために付着した面とは反対側の面だけに行うのが好ましい。従って、この工程のために、片面に樹脂が付着され加温された基材7は反転され、樹脂粉体8の付着、パネルヒータ11、熱風加熱機等による加温の工程を行う。なお、静電塗装法、流動槽法等を使用した場合は反転しなくても樹脂粉体8を付着することは可能である。シート状基材の性質により樹脂粉体を含浸するために付着した面又は両面に付着させる場合もある。
【0030】
(加熱工程)
この工程は通常樹脂粉体を加熱装置12により加熱することにより、樹脂をシート状基材により十分に含浸させ、必要により樹脂を半硬化の状態にしたプリプレグを得ることができる。加熱方式は従来より実施されている方式を用いればよく、特に限定されるものではない。
【0031】
(裁断または巻き取り工程)
積層板を成形するために、プリプレグ13は必要な長さに裁断機14により裁断されるか、または巻き取り機により巻き取られる。
【0032】
(成形工程:図面は省略)
ロールプレスの場合は、通常巻き取られたプリプレグをまたは巻き取らないでそのまま1枚または複数枚重ね、必要により金属箔あるいはフィルムを重ね合わせ、低圧で連続的に加熱成形する。熱盤によるプレスの場合は、通常必要な長さに裁断されたプリプレグを
1枚または複数枚に重ね、必要により金属箔あるいはフィルムを重ね合わせ、低圧で加熱成形する。
【0033】
【実施例】
以下、本発明について、実施例及び比較例により説明する。
【0034】
【0035】
〔実施例1〕
平均粒径150μmの粉末状のエポキシ樹脂(油化シェル製臭素化エポキシEp5048,エポキシ当量675)100重量部、平均粒子径15μmの粉末状の硬化剤(ジシアンジアミド)5重量部、及び平均粒径15μmの粉末状の硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)1重量部を予備混合し、次いで、多段石臼型混練押し出し機((株)KCK製 メカノケミカルディスパージョンシステム KCK−80X2−V(6))を用い、回転数200rpmにて1分間処理し、平均粒径150μmの粉末樹脂組成物を得た。この粉体100重量部に、平均一次粒子径0.05μmの微粉末シリカ(日本アエロジル製アエロジル#200)1重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで回転数500rpm、5分間混合処理した。こうして得られた粉末樹脂組成物を使用し100g/m2 のガラスクロスの片面上に前記処理した粉末樹脂組成物をナイフコーターで間隙0.3mmにして100g/m2 になるように均一に塗布した。その後下面側より雰囲気温度120℃の熱風加熱機によって約1分間加温した。続いて、雰囲気温度170℃の箱形加熱機によって約2分間ガラスクロス両面から加熱してプリプレグを得た。このプリプレグは所定長さに裁断機14により裁断した。このプリプレグの上下に厚さ18μmの銅箔を重ね合わせ、熱盤プレスにより温度165℃、圧力8kg/cm2 で90分間加熱加圧成形して、厚さ0.12mmの銅張積層板を作製した。
【0036】
〔実施例2〕
実施例1と同様にして、粉末樹脂組成物を使用したプリプレグを作製した。続いて、このプリプレグの上下に厚さ18μmの銅箔を重ね合わせ、温度165℃、間隙0.12mm金属ロール間を通して連続的に加熱成形した後、所定長さに切断し、190℃、30分間ベーキング処理して、厚さ0.12mmの銅張積層板を作製した。
【0037】
〔実施例3〕
実施例1と同様にして、粉末樹脂組成物を使用したプリプレグを作製した。得られたプリプレグは巻き取り機で巻き取った。この巻き取ったプリプレグ2枚とこの上下に厚さ18μmの銅箔を重ね合わせ、温度165℃、間隙0.22mm金属ロール間を通して連続的に加熱成形した後、所定長さに切断し、190℃、30分間ベーキング処理して、厚さ0.22mmの銅張積層板を作製した。
【0038】
〔実施例4〕
粉末状のエポキシ樹脂(油化シェル製臭素化エポキシ樹脂Ep5048,エポキシ当量675)100重量部、粉末状の硬化剤(ジシアンジアミド)5重量部、粉末状の硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)1重量部の比率で混合し直径12インチの2本ロールを用い、高速側回転数20rpm、高速側ロール温度60℃、低速側ロール温度30℃、回転比1.5:1にて30回処理し、シート状で取りだし冷風にて冷却後、微粉砕機にて平均粒径200μmに粉砕した。この粉体100重量部に、平均一次粒子径0.05μmの微粉末シリカ(日本アエロジル製アエロジル#200)1重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで回転数500rpm、5分間混合処理した。この処理した粉末状樹脂組成物を使用し、実施例1と同様にして、粉末樹脂組成物を使用したプリプレグを作製し、次いで、厚さ0.12mmの銅張積層板を作製した。
【0039】
〔実施例5〕
実施例4と同様にして、粉末樹脂組成物を使用したプリプレグを作製した。得られたプリプレグは巻き取り機で巻き取り、以下、実施例3と同様にして、厚さ0.22mmの銅張積層板を作製した。
【0040】
〔比較例1〕
平均粒径150μmの粉末状のエポキシ樹脂(油化シェル製臭素化エポキシEp5048)100重量部、平均粒子径15μmの粉末状の硬化剤(ジシアンジアミド)5重量部、平均粒径15μmの粉末状の硬化促進剤1重量部の比率で混合したものをメチルセルソルブ100重量部に溶かした。このワニスを樹脂固形分で100g/m2 になるように100g/m2 のガラスクロスを浸けて含浸させた後、170℃の乾燥機で3分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグを2枚重ね合わせ、さらにその上下に厚さ18μmの銅箔を重ね合わせ、温度165℃、圧力60kg/cm2 で90分間加熱加圧成形して、厚さ0.22mmの銅張積層板を作製した。
【0041】
【0042】
【0043】
以上の実施例及び比較例で得られたプリプレグについては、ガラスクロスへの樹脂の含浸性を測定し、銅張積層板については、成形性、寸法変化率、引張り強さ、銅箔引剥し強さ、半田耐熱性及び絶縁抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
(測定方法)
1.含浸性:ガラス繊維間のボイドの有無を、プリプレグを実体顕微鏡にて確認した。
2.成形性:銅張積層板の銅箔をエッチングして、目視により硬化剤等の析出の有無を観察し、分散性の評価をする。
3.寸法変化率:穴間隔が250mmの銅張積層板のテストピースを170℃、30分間加熱した後の穴間隔の寸法変化率を測定した。
4.引張り強さ:銅張積層板の銅箔をエッチングして、10×100mmに切断後テンシロンにて引張り強度を測定した。
5.銅箔引剥し強さ:JIS C 6481により測定した。
6.半田耐熱性:50×50mm角の積層板を、260℃の半田浴に3分間フロートさせ、ふくれの有無を測定した。
7.絶縁抵抗:JIS C 6481により測定した。
なお、製造コストについては、実施例の方法は溶剤を使用しないので、実施例で得られた積層板は比較例1で得られたものに比べ30〜40%程度低コスト化することができた。
【0046】
【発明の効果】
本発明の方法は、有機溶剤を使用しないので、大気汚染が無く、省資源化することができ、溶剤を蒸発させ、燃焼させるための熱エネルギーも不要となる。プリフレグ及び積層板製造時において、溶剤がもともと存在しないため、反応が速く、プリプレグへの加熱時間、積層板への成形時間が短縮される。そして低圧成形加圧が可能となるため、積層板の寸法変化、板厚精度が良好となる。さらにロールプレス等の連続成形等により任意の長さに裁断できるため従来発生していた耳等の廃棄部分が減り歩留まりの向上になる。得られたプリプレグ及び積層板は品質も安定しており、良好な特性を有している。特に銅箔等の金属との接着については濡れ性が向上することにより接着性も向上する。そして、原材料及び設備、工程の低コスト化の点で優れており、工業的な積層板の製造方法として好適である。
Claims (1)
- シート状基材に樹脂粉体を付着させたプリプレグの1枚または複数枚及びその片面または両面に配置した金属箔またはフィルムを、予め100〜250℃に加熱したロール間または熱盤間に挿入し、0.1〜15kg/cm2 の低圧において積層成形する積層板の製造方法であって、
前記樹脂粉体は、粉末状熱硬化性樹脂及び硬化剤を必須成分とし、これら成分の混合物に機械的エネルギーを与えてメカノケミカルな反応を起こさせて得られたもの、あるいは、熱硬化性樹脂及び硬化剤を必須成分とし、これら成分を加熱混練ないし溶融混合し微粉砕して得られたものに、一次粒子の平均粒径が0.01〜1μmの微粉末添加剤を配合して得られた粉末状樹脂組成物からなることを特徴とする積層板の製造方法。
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