JP2002100021A - 磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体および磁気記録媒体の製造方法

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JP2002100021A
JP2002100021A JP2000292606A JP2000292606A JP2002100021A JP 2002100021 A JP2002100021 A JP 2002100021A JP 2000292606 A JP2000292606 A JP 2000292606A JP 2000292606 A JP2000292606 A JP 2000292606A JP 2002100021 A JP2002100021 A JP 2002100021A
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Takahiro Takayama
貴広 高山
Hiroyuki Sato
宏之 佐藤
Fumiko Koike
扶美子 小池
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁気記録媒体の耐久性および電磁変換特性の
向上を図る。 【解決手段】 非磁性支持体1上に、磁性塗料の塗布に
より形成された磁性層2を有する磁気記録媒体10にお
いて、磁性層2表層における結合剤を構成するカーボン
の、磁性粉末元素に対する含有比率を90〔vol/
%〕以上とし、磁性層2の表面から50〔Å〕以上の深
さにおいては、70〔vol/%〕以下であるものとす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオテープ、オ
ーディオテープ、フロッピー(登録商標)ディスク、デ
ータストレージ等の各種磁気記録媒体およびその製造方
法に係わる。
【0002】
【従来の技術】オーディオ装置やビデオ装置、コンピュ
ータ装置等において用いられている磁気記録媒体であっ
て、磁性層が磁性粉末と結合剤とを含有する磁性塗料を
塗布することによって形成されるいわゆる塗布型の磁気
記録媒体においては、デジタル記録等により情報量が増
大化しているため、さらなる高密度記録化、短波長記録
化が進められ、磁気記録媒体の特性向上への要求が高ま
って来ている。
【0003】従来の磁気記録媒体は、磁性層を単層構造
としたり、多層構造としたり、あるいは所定の材料から
なる非磁性層上に磁性層を積層形成したり、目的に応じ
て種々の構造が採られている。
【0004】上述したような磁気記録媒体においては、
静磁気特性、および電磁変換特性等、各種特性の向上を
図るためには、磁性層中の磁性粉末の高充填化、および
結合剤中における磁性粉末の分散性を向上させて磁性層
表面の鏡面化を図られている。
【0005】磁性粉末の高充填化を図るためには、磁性
塗料中の磁性粉末以外の材料、すなわち結合剤、顔料、
研磨剤、分散剤、潤滑剤、硬化剤等の添加量を極力減少
させることが有効である。特に、結合剤は、磁性粉末比
で15〜20〔重量部〕添加することが一般的に行われ
ているが、磁性粉末の高充填化を図るためには、結合剤
の添加量を低減化させる必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、磁性塗
料中の結合剤の添加量を低減化させると、磁性塗料中に
おける磁性粉末の露出面積が増加するため、耐候性の低
下、記録再生ヘッド及びガイドロールへの磁性粉末の脱
落、いわゆる粉落ちが増加するという不都合が生じる。
また、塗布型の磁気記録媒体において磁性層の鏡面化を
図るためには、磁性塗料の分散性を向上させる必要があ
り、結合剤の添加量を削減すると、磁性粉末を充分に分
散させることが困難になる。
【0007】磁性粉末と結合剤の特性にもよるが、磁性
塗料中における結合剤の多くは磁性粉末へ吸着した状態
にある。この吸着状態においては、1次吸着が磁性粉末
の高充填化を実現するためには有効である。磁性塗料中
の吸着状態が全て1次吸着であると仮定すると、結合剤
は磁性粉末の比表面積を覆った段階で飽和し、その他の
結合剤は未吸着状態となって磁性塗料中に存在すること
なる。
【0008】理論的に、塗布型の磁気記録媒体の磁性層
を形成する場合には、磁性塗料は、結合剤の吸着量と、
添加量とが同一であることが、磁性粉末の高充填化を実
現するために理想的であるが、結合剤が全て磁性粉末に
吸着してしまうと、塗料状態にならなくなってしまう。
すなわち塗料状態を保持するためには、磁性粉末に未吸
着の結合剤が適度に存在することが必要であり、磁性塗
料を作製するために最低限必要な結合剤の量は塗料状態
を得るために必要な結合剤量によって決定される。
【0009】また、磁気記録媒体の耐久性を表す指標と
して一般的なのは、磁性層からの磁性粉末の粉落ちであ
る。この粉落ちを改善するためには、磁性粉末と結合剤
との吸着状態を向上させたり、結合剤と硬化剤との架橋
性を向上させたり、磁性層表面と磁気ヘッドとの摩擦を
低減させたりすることが一般的に必要とされているが、
磁性塗料中において磁性粉末に吸着していない結合剤、
すなわち未吸着状態の結合剤が存在することも必要であ
る。
【0010】しかし、一方においては、未吸着状態の結
合剤の量が多すぎると、磁性層中における磁性粉末の高
充填化を妨げることになる。
【0011】そこで、本発明者等は上述した事情に鑑み
て、磁性塗料の良好な分散性を保持しつつ、磁性層の電
磁変換特性等の諸特性の向上を図り、同時に耐久性の向
上を図った磁気記録媒体を提供するために、結合剤添加
量、および磁性層中の結合剤の存在比率についての検討
を行い、かつ、磁性層中における磁性粉末の高充填化を
図った。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体
は、非磁性支持体上に、少なくとも、磁性粉末および結
合剤を含有する磁性塗料の塗布により形成された磁性層
を有するいわゆる塗布型の磁気記録媒体において、磁性
層は、深さ方向において構成元素が変化する構成とし、
磁性層表層における結合剤構成元素のカーボンの磁性粉
末構成元素に対する含有比率を、90〔vol%〕以上
として、結合剤成分が多い領域が形成されて成り、磁性
層表面から、50Å以上の深さにおけるカーボンの磁性
粉末構成元素に対する含有比率を70〔vol%〕以下
として、磁性成分が多く存在する領域を有する構成とす
る。
【0013】本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁
性支持体上に、少なくとも、磁性粉末および結合剤を含
有する磁性塗料を塗布することにより形成された磁性層
を有する磁気記録媒体の製造方法において、非磁性支持
体の一主面に、磁性塗料を塗布する工程と、磁性塗料を
塗布した非磁性支持体を、磁性塗料塗布面側とは反対側
の主面を対向させて、磁場発生体上を非接触により走行
させる工程を有するものとする。これにより磁性塗膜中
の磁性成分を、非磁性支持体の他の一主面方向に引きつ
けて、磁性層表層におけるカーボンの磁性粉末、特にF
eに対する含有比率を、90〔vol%〕以上とし、磁
性層表面から、50Å以上の深さにおけるカーボンの磁
性粉末構成元素に対する含有比率を70〔vol%〕以
下にするものである。
【0014】本発明によれば、磁性層の表層付近で結合
剤構成元素の磁性粉末構成元素に対する存在比率を多く
したことによって、耐久性および走行性の向上が図られ
た。また、磁性層表面から50〔Å〕以上の深さにおい
ては磁性粉末成分の存在比率を高くしたことによって、
電磁変換特性等の諸特性の向上が図られた。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の磁気記録媒体は、例えば
ポリエチレンテレフタレートフィルムより成る非磁性支
持体上に、少なくとも、Fe、Co等の磁性粉末、各種
樹脂よりなる結合剤を含有する磁性塗料の塗布により形
成された磁性層を有するいわゆる塗布型の磁気記録媒体
において、磁性層は、深さ方向において構成元素が変化
する構成とし、磁性層表層における結合剤構成元素の、
磁性粉末構成元素に対する含有比率を、90〔vol
%〕以上とし、磁性層表面から、50Å以上の深さにお
ける結合剤の磁性粉末に対する含有比率を、70〔vo
l%〕以下としたものである。
【0016】以下、図1にその一例の磁気記録媒体10
の概略構造を示して、本発明の磁気記録媒体10および
その製造方法についても説明する。本発明の磁気記録媒
体は以下に示す例に限定されるものではない。
【0017】図1に示す磁気記録媒体10は、非磁性支
持体1上に、例えば0.01〜0.3〔μm〕の厚さの
磁性層2を形成した構成の、いわゆる薄層型の磁気記録
媒体である。非磁性支持体1上の磁性層2形成面側とは
反対側の主面には、走行安定性、耐久性の向上を図るた
め、バックコート層3が形成されて成るものとする。
【0018】非磁性支持体1を構成する材料としては、
一般的に磁気記録媒体に使用されるものをいずれも適用
することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポ
リエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セ
ルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セ
ルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体、
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹
脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミ
ド、その他のプラスチック、アルミニウム、銅等の金
属、アルミニウム合金、チタン合金等の軽合金、セラミ
ックス、単結晶シリコン等についても、同様に適用する
ことができる。
【0019】また、非磁性支持体1は、各種表面処理や
各種装飾を施してもよい。例えば、適宜微細な凹凸形状
を形成したり、表面に、コロナ放電処理や電子線照射処
理等の、前処理を施したりしてもよい。またカオリン等
の無機フィラーや有機フィラーを非磁性支持体表面に配
置することにより、表面の粗度を制御することもでき
る。
【0020】次に、非磁性支持体1上に形成する磁性層
2について説明する。塗布型の磁気記録媒体において
は、磁性層2は、磁性粉末、結合剤(バインダー)、帯
電防止剤、硬化剤、潤滑剤、分散剤、研磨剤、防錆剤、
有機溶剤等を用いて、これらを従来公知の方法により、
調整することにより磁性塗料を作製し、この磁性塗料を
非磁性支持体1上に所定の厚さに塗布し、本発明の磁気
記録媒体10においては、特に、後述する工程により、
磁性層2の厚さ方向における構成元素比を変化させたも
のとする。また、磁性塗料の原料物質は、原料同士がそ
れぞれ化学反応を起こさないように、所定の工程で添加
される。また、個々の原料を複数回に分けて添加するこ
ともできる。
【0021】本発明の磁気記録媒体10の磁性層2を形
成する磁性粉末は、例えばγ−FeOX (x=1.33
〜1.5)、Co変性γ−FeOX (x=1.33〜
1.5)、FeまたはNiまたはCoを主成分(75%
以上)とする強磁性合金、バリウムフェライト、ストロ
ンチウムフェライト等の公知の材料を適用できる。ま
た、磁性粉末には、用途により、Al,I,Sc,T
i,V,Cr,Mn,Cu,Y,Mo,Rh,Pd,A
g,Sn,Se,Te,Ba,Ni,Ta,W,Re,
Au,Hg,Pd,Bi,La,Ce,P,Mn,Z
n,Co,Sr,B等の原子を含有させることもでき
る。
【0022】磁性塗料中の結合剤には、従来用いられて
いる公知の高分子樹脂をいずれも適用することができ
る。例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニ
ル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニ
ル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニ
トリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸
共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合
体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、
メタクリル酸−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸
エステル−スチレン共重合体、熱可塑ポリウレタン樹
脂、フェノキシ樹脂、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデ
ン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロ
ニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メ
タクリル酸共重合体、ポリビニルブチラール、スチレン
−ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、フェノール
樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、尿素
樹脂、メラニン樹脂、アルキド樹脂、尿素−ホルムアル
デヒド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロース誘
導体、またはこれらの混合物等を適用することができ
る。
【0023】また、柔軟性を付与する効果を有するポリ
ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−
ブタジエン共重合体と、剛性を付与する効果を有するセ
ルロース誘導体、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が望
ましい。また、結合剤樹脂には、イソシアネート化合物
を架橋させることによって耐久性を向上させたり、ある
いは適当な極性基を導入してもよい。結合剤樹脂は、ガ
ラス転移温度(Tg)が50〜80℃程度のものが好適
である。
【0024】また、硬化剤としては、芳香族ポリイソシ
アネート及び脂肪族ポリイソシアネート等と、活性水素
化合物との付加体が好適である。芳香族ポリイソシアネ
ートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、
1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレン
ジイソシアネート、4,4' −ジフェニルメタンジイソ
シアネート、p−フェニルジイソシアネート、m−フェ
ニルジイソシアネート、1,5−ナフチルジイソシアネ
ートとう挙げることができる。脂肪族ポリイソシアネー
トっとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、シク
ロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。
これらと付加体を形成する活性水素化合物としては、エ
チレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−
ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレン
グリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が
あり、平均分子量は100〜5000程度のものが好適
である。
【0025】結合剤の具体的な商品名としては、コロネ
ート−L、コロネート−HL、コロネート−2030
(以上、日本ポリウレタン社製商品名)、タケネートD
−200、タケネートD−202(以上、武田薬品社製
商品名)等が挙げられ、これらを単独、あるいは複数組
み合わせて用いることができる。
【0026】潤滑剤としては、シリコーンオイル、脂肪
酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、またはその
他のフッ素系潤滑剤、ポリオレフィン、ポリグリコー
ル、アルキル燐酸エステルおよび金属塩、ポリフェニル
エーテル、炭素数12〜24のアルコール類、あるいは
これらの不飽和化合物や分子鎖に分岐を有するもの、炭
素数12〜24の高級脂肪酸および脂肪酸エステル、あ
るいはこれらの不飽和化合物や分子鎖に分岐を有するも
の、アルキルカルボン酸アミン塩、およびフッ化アルキ
ルカルボン酸アミン塩等のアミン系潤滑剤等を適用する
ことができる。
【0027】高級脂肪酸および脂肪酸エステルの具体的
な例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン
酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、オ
レイン酸、エイコ酸、エライジン酸、ヘベン酸、リノー
ル酸、リノレイン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリ
ン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ミリスチン
酸イソオクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、ステア
リン酸ブチル、ステアリン酸ヘプチル等が挙げられる。
【0028】また、これらの潤滑剤は、単独で用いても
あるいは二種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】研磨剤としては、例えば、α−アルミナ、
β−アルミナ、溶融アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロ
ム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、ダイヤモ
ンド、ケイ石、ザクロ石、ガーネット、窒化ケイ素、窒
化ホウ素、炭化モリブデン、炭化ホウ素、炭化タングス
テン、酸化チタン等を主成分にして、モース硬度6いじ
ょぷの公知の材料を単独または二種類以上を組み合わせ
て適用することができる。また、これらの研磨剤の平均
粒径は0.01〜2〔μm〕程度が好適であるが、用途
に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、
単独の研磨剤中の粒度分布を拡大したりして適用するこ
ともできる。
【0030】また、その他、防錆剤、抗菌(防黴)剤、
有機溶剤等や、特に塗布型の磁気記録媒体において用い
られる磁性分散液、磁性分散液を調整するための溶剤等
は、従来公知の材料をいずれも適用することができる。
【0031】磁性塗料を調整するための溶剤としては、
例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチ
ルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メ
チル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸グリコールモノエ
チルエステル等のエステル系溶剤、グリコールモノエチ
ルエーテル、ジオキサン等のグリコールエーテル系溶
剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素
系溶剤、メチレンクロリド、四塩化炭素、クロロホル
ム、エチレンクロロヒドリン、ジクロロベンゼン等の塩
素含有系溶媒等が挙げられる。
【0032】上述した磁性粉末と、結合剤等により作製
される磁性塗料の調整は、従来公知の方法により行うこ
とができるが、例えば、ロールミル、ボールミル、サン
ドミル、高速ストーンミル、バスケットミル、ディスパ
ー、ホモミキサー、ニーダー、連続ニーダー、エクスト
ルーダー、ホモジナイザー、および超音波分散機等を用
いて行うことができる。また、磁性塗料を調整する場合
には、磁性粉末とその他の添加剤粒子とを別々に分散し
た後、これらを混合してもよい。
【0033】非磁性支持体1上に、磁性塗料を塗布し、
磁性層2を形成する手法としては、エアドクターコー
ト、ブレードコート、ロッドコート、押し出しコート、
エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバ
ースロールコート、グラビアコート、トランスファーロ
ールコート、キャストコート等の従来公知の方法をいず
れも適用することができる。
【0034】なお、本発明の磁気記録媒体10の磁性層
2は、深さ方向において、構成元素が変化する構成とす
る。具体的には、結合剤を構成する元素としてカーボン
(C:炭素)を代表させ、磁性粉末を構成する元素とし
て鉄(Fe)を代表させ、磁性層2の表面における炭素
元素の、磁性粉末構成元素に対する含有比率、すなわち
(C/Fe)×100〔vol%〕が、90〔vol
%〕以上であり、磁性層表面から、50Å以上の深さに
おいては、70〔vol%〕以下であるものとする。
【0035】次に、本発明の磁気記録媒体10の製造方
法について、磁性層2を形成する装置の一例を図2に示
して説明する。
【0036】先ず、本発明の磁気記録媒体10を構成す
る非磁性支持体1を用意する。図2に示すように、非磁
性支持体1は、供給ロール101から供給され、巻き取
りロール102に巻き取られ、図2に示す矢印方向に走
行するようになされている。
【0037】図2に示すように、供給ロール101と巻
き取りロール102との途中には、非磁性支持体1上に
磁性塗料を塗布する塗布装置110、磁性塗料に磁場を
かける磁場発生体115、所定の配向性を付与する配向
機111、磁性塗料を乾燥させるドライヤーシステム1
12が配置されて成り、ガイドロール120および12
1によって、非磁性支持体1が円滑に走行するようにな
されている。
【0038】磁場発生体115は、磁性塗料の塗布部の
下流側に設置されて成り、図3に示すように非磁性支持
体1に対し、その非塗布面側に非磁性支持体1と非接触
でかつほぼ平行な面内に配置されている。磁場発生体1
15は、例えばS極とN極の平板状の永久磁石が走行方
向に沿って交互に20〜100段、例えば50段積層さ
れた積層体に構成されている。
【0039】図2に示すように、供給ロール101から
走行する非磁性支持体1は、塗布装置110によって、
磁性塗料を塗布された後、磁場発生体115上を非接触
にて近接して走行する。塗布された直後の液状態の磁性
塗料は、磁場発生体115の磁気的吸引作用によって、
図3中の矢印に示すように、磁性粉末成分が、非磁性支
持体1側に移動し、磁性層2の厚さ方向における結合剤
成分および磁性粉末成分の含有比率が変化する。
【0040】本発明の磁気記録媒体10においては、磁
性層2表面における結合剤を構成する元素の磁性粉末構
成元素に対する含有比率が、90〔vol%〕以上とな
るようにし、図1に示すように、磁性層2表面から深さ
d以上、例えばd=50Å以上の深さにおいては、70
〔vol%〕以下となるようにする。すなわち、磁性粉
末に未吸着のいわゆるフリーな結合剤成分が磁性層の表
面付近に多く存在するようにし、いわゆる結合剤層を形
成するようにする。
【0041】一方、磁性層2表面における結合剤層が厚
くなり過ぎると、磁気記録媒体10の信号記録に寄与す
る磁性粉末成分と、磁気ヘッドとの間に空間ができ、電
磁変換特性の劣化の原因になる。この磁性層2の表面の
結合剤層の必要な厚さは、各フォーマットの記録波長に
よって異なるものであり、以下において、VHSフォー
マットの場合を検証する。
【0042】VHSの記録波長(λ)は次の式で表され
る。 λ=v(記録速度)/f(周波数)=5.8〔m/s〕
/4〔MHz〕=1.45×10-6〔m〕 また、一般的に、磁性層の信号記録に寄与する部分の厚
さ、いわゆる記録有効厚さは(1/4)λとされている
ので、下記の厚さになる。 (1/4)λ×1.45×10-6〔m〕=36〔Å〕 よって、記録波長を鑑みて、磁気記録媒体10の磁性層
の表面の結合剤層の厚さの限界は、36〔Å〕程度であ
る。
【0043】また、磁気記録媒体10の磁性層表面は平
滑であることが必要であるが、塗布型の磁気記録媒体に
おいては、磁性層表面の微細突起やうねりによるスペー
シングロス(Ls)が発生する。一般的にスペーシング
ロス(Ls)は、54.6D/λにより表されるので、
次式が成立する。 Ls=68.97×106 D (D:スペーシング)
【0044】本発明の磁気記録媒体10においては、上
述したことに鑑みて結合剤層を形成することとする。す
なわち、耐久性、電磁変換特性の双方に優れた磁気記録
媒体を作製するべく、結合剤層の厚さを調整するものと
する。
【0045】その後、配向機111により所要の配向を
付与し、ドライヤーシステム112により乾燥処理を行
い、平滑化処理を経て巻き取りロール102に巻き取
る。なお、磁気記録媒体10は、従来公知のバックコー
ト層3形成用の材料を用いて、磁性層形成面側とは反対
側の主面にバックコート層3を形成してもよい。その
後、所定の幅に裁断して、潤滑剤を塗布する等の所定の
表面処理を行い、最終的に目的とする磁気記録媒体10
が得られる。
【0046】上述のようにして、磁場発生体115によ
って磁性成分を非磁性支持体1側に引き寄せて磁性層2
の表層付近に結合剤がリッチな層、すなわち結合剤層を
形成し、磁性層2の表面から50〔Å〕の深さにおいて
は磁性粉末が高い充填率で有する構成としたことによ
り、耐久性の向上を図ることができ、かつ電磁変換特性
に優れた磁気記録媒体10が低コストで得られる。
【0047】なお、磁性粉末と結合剤の含有比率、磁性
塗料の粘度、磁場発生体115からの磁力の強さの各特
性により、結合剤層の形成状態が変化するが、本発明の
磁気記録媒体は、具体的な例に限定されるものではな
い。
【0048】次に、本発明の磁気記録媒体10に好適な
磁気ヘッドおよびこの磁気ヘッドを備えた磁気記録シス
テムについて説明する。
【0049】本発明の磁気記録媒体10は、磁性層3を
0.01〜0.3〔μm〕程度の薄層に形成したいわゆ
る薄型の磁気記録媒体であり、高感度の再生ヘッドを用
いた磁気記録システムに対して好適なものである。この
場合、高感度の磁気ヘッドとしては、磁気抵抗効果型の
MRヘッド、GMRヘッド等が挙げられる。但し、これ
らに限定されるものではなく、高感度で、充分なS/N
が得られるものであれば、薄膜インダクティブヘッドの
ような再生ヘッドでも有効である。
【0050】MR再生ヘッドには、MR素子をシールド
で挟み込んだシールド型のMRヘッド、高透磁率材で挟
み込んだヨーク型MRヘッド等がある。これらのヘッド
を固定したリニア記録システムに使用しても良いし、ビ
デオシステムのような回転ドラムに搭載したヘリカルス
キャン記録システムに応用しても良い。
【0051】以下、一例として、MR再生ヘッドを用い
たヘリカルスキャン磁気記録システムについて説明す
る。
【0052】この場合、MR再生ヘッドとしては、MR
素子をシールドで挟み込んだシールド型のMRヘッドを
用い、これを回転ドラムに搭載して、記録再生装置を構
成するものとする。
【0053】上記ヘリカルスキャン磁気記録システムの
磁気記録再生装置は、回転ドラムを用いて記録再生を行
うヘリカルスキャン方式の磁気記録再生装置であり、回
転ドラムに搭載された再生用磁気ヘッドとして、MRヘ
ッドを使用する。
【0054】この磁気記録再生装置に搭載される回転ド
ラム装置の一例について、図を参照して説明する。図4
は、回転ドラム装置11の概略斜視図を示し、図5に、
回転ドラム装置11を含む磁気記録媒体送り機構30の
概略平面図を示す。
【0055】図4に示すように、回転ドラム装置11
は、円筒状の固定ドラム12と、円筒状の回転ドラム1
3と、回転ドラム13を回転駆動するモータ14と、回
転ドラム13に搭載された一対のインダクティブ型磁気
ヘッド15a,15bと、回転ドラム13に搭載された
一対のMRヘッド16a,16bとを具備している。
【0056】固定ドラム12は、回転することなく保持
されるドラムである。この固定ドラム12の側面には、
テープ状の磁気記録媒体10の走行方向に沿ってリード
ガイド部18が形成されている。後述するように、記録
再生時に磁気記録媒体10は、このリードガイド部18
に沿って走行する。そして、この固定ドラム12と中心
軸が一致するように、回転ドラム13が配置されてい
る。
【0057】回転ドラム13は、磁気記録媒体10に対
する記録再生時に、モータ14によって所定の回転速度
で回転駆動されるドラムである。この回転ドラム13
は、固定ドラム12と略同径の円筒状に形成されてな
り、固定ドラム12と中心軸が一致するように配置され
ている。そして、この回転ドラム13の固定ドラム12
に対向する側には、一対のインダクティブ型磁気ヘッド
15a,15bおよび一対のMRヘッド16a,16b
が搭載されている。
【0058】インダクティブ型磁気ヘッド15a,15
bは、一対の磁気コアが磁気ギャップを介して接合され
るとともに、磁気コアにコイルが巻装されてなる記録用
磁気ヘッドであり、磁気記録媒体10に対して信号を記
録する際に使用される。そして、これらのインダクティ
ブ型磁気ヘッド15a,15bは、回転ドラム13の中
心に対して互いに成す角度が180°となり、それらの
磁気ギャップ部分が回転ドラム13の外周から突き出す
ように、回転ドラム13に搭載されている。なお、これ
らのインダクティブ型磁気ヘッド15a,15bは、磁
気記録媒体10に対してアジマス記録を行うように、ア
ジマス角が互いに逆となるように設定されている。
【0059】一方、MRヘッド16a,16bは、磁気
記録媒体10からの信号を検出する感磁素子としてMR
素子を備えた再生用磁気ヘッドであり、磁気記録媒体1
0から信号を再生する際に使用される。そして、これら
のMRヘッド16a,16bは、回転ドラム13の中心
に対して互いに成す角度が180°となり、磁気ギャッ
プ部分が回転ドラムの外周から突き出すように、回転ド
ラム13に搭載されている。なお、これらのMRヘッド
16a,16bは、磁気記録媒体10に対してアジマス
記録された信号を再生できるように、アジマス角が互い
に逆になるように設定されている。
【0060】そして、磁気記録再生装置は、このような
回転ドラム装置11に磁気記録媒体10を摺動させて、
磁気記録媒体10に対する信号の記録や、磁気記録媒体
10からの信号の再生を行う。
【0061】すなわち、記録再生時に磁気記録媒体10
は、図5に示すように、供給リール21からガイドロー
ラ22、23を経て、回転ドラム装置11に巻き付くよ
うに送られ、この回転ドラム装置11で記録再生がなさ
れる。そして、回転ドラム装置11で記録再生がなされ
た磁気記録媒体10は、ガイドローラ24、25、キャ
プスタン26、ガイドローラ27を経て、巻き取りロー
ル28へと送られる。すなわち、磁気記録媒体10は、
キャプスタンモータ29により回転駆動されるキャプス
タン26によって所定の張力および速度にて送られ、ガ
イドローラ27を経て巻き取りロール28に巻き取られ
る。
【0062】このとき、回転ドラム13は、図4中の矢
印Aに示すように、モータ14によって回転駆動され
る。一方、磁気記録媒体10は、固定ドラム12のリー
ルガイド部18に沿って、固定ドラム12および回転ド
ラム13に対して斜めに摺動するように送られる。すな
わち、磁気記録媒体10は、走行方向に沿って、図4中
の矢印Bに示すように、テープ入口側から固定ドラム1
2および回転ドラム13に摺接するようにリードガイド
部18に沿って送られ、その後、図4中矢印Cに示すよ
うに、テープ出口側へと送られる。
【0063】次に、上記回転ドラム装置11の内部構造
について、図6を参照して説明する。図6に示すよう
に、固定ドラム12および回転ドラム13の中心には、
回転軸31が挿通されている。なお、固定ドラム12、
回転ドラム13、および回転軸31は、導電材料からな
り、これらは電気的に導通しており、固定ドラム12が
接地されている。
【0064】そして、固定ドラム12のスリーブの内側
には、2つの軸受け32、33が設けられており、これ
により、固定ドラム12に対して回転軸31が回転可能
に支持されている。すなわち、回転軸31は、軸受け3
2、33により、固定ドラム12に対して回転可能に支
持されている。一方、回転ドラム13には、その内周部
にフランジ34が形成されており、このフランジ34が
回転軸31の上端部に固定されている。これにより、回
転ドラム13は、回転軸31の回転に伴って回転するよ
うになされている。
【0065】また、回転ドラム装置11の内部12と回
転ドラム13との間で信号の伝送を行うために、非接触
型の信号伝送装置であるロータリトランス35が配され
ている。このロータリトランス35は、固定ドラム12
に取り付けられたステータコア36と、回転ドラム13
に取り付けられたロータコア37とを有している。
【0066】ステータコア36及びロータコア37は、
フェライト等のような磁性材料が回転軸31を中心とす
る円環状に形成されてなる。また、ステータコア36に
は、一対のインダクティブ型磁気ヘッド15a,15b
に対応した一対の信号伝送用リング36a、36bと、
一対のMRヘッド16a,16bに対応した信号伝送用
リング36cと一対のMRヘッド16a,16bの駆動
に必要な電力を供給するための電力電送用リング36d
とが、同心円状に配置されている。同様に、ロータコア
37にも、一対のインダクティブ型磁気ヘッド15a,
15bに対応した一対の信号伝送用リング37a,37
bと、一対のMRヘッド16a,16bに対応した信号
伝送用リング37cと、一対のMRヘッド16a,16
bの駆動に必要な電力を供給するための電力電送用リン
グ37dとが、同心円状に配置されている。
【0067】これらのリング36a,36b,36c,
36d,37a,37b,37c,37dは、回転軸3
1を中心として円環状に巻回されたコイルからなり、ス
テータコア36の各リング36a,36b,36c,3
6dとロータコア37の各リング37a,37b,37
c,37dとがそれぞれ対向するように配されている。
そして、このロータトランス35は、ステータコア36
の各リング36a,36b,36c,36dとロータコ
ア37の各リング37a,37b,37c,37dとの
間で非接触にて信号や電力の伝送を行うようになってい
る。
【0068】また、回転ドラム装置11には、回転ドラ
ム13を回転摺動させるモータ14が取り付けられてい
る。このモータ14は、回転部分であるロータ38と、
固定部分であるステータ39とを有している。ロータ3
8は、回転軸31の下端部に取り付けられており、駆動
用マグネット40を備えている。一方、ステータ39
は、固定ドラム12の下端部に取り付けられており、駆
動用コイルを備えている。そして、駆動用コイル41に
電流を供給することにより、ロータ38に取り付けられ
ている回転軸31が回転し、それに伴って、回転軸31
が固定されている回転ドラム13が回転駆動されること
となる。
【0069】次に、上述したような回転ドラム装置11
による記録再生について、この回転ドラム装置11なら
びにその周辺回路についての回路構成の概略を示す図7
を参照して説明する。
【0070】上記回転ドラム装置11を用いて磁気記録
媒体10に信号を記録する際は、先ず、モータ14の駆
動用コイル41に電流が供給され、これより、回転ドラ
ム13が回転駆動される。そして、回転ドラム13が回
転している状態にて、図7に示すように、外部回路50
からの記録信号が記録用アンプ51に供給される。
【0071】記録用アンプ51は、外部回路50からの
記録信号を増幅し、一方のインダクティブ型磁気ヘッド
15aによって信号を記録するタイミングの時、当該イ
ンダクティブ型磁気ヘッド15aに対応したステータコ
ア36の信号伝送用リング36aに記録信号を供給し、
また、他方のインダクティブ型磁気ヘッド15bによっ
て信号を記録するタイミングの時、当該インダクティブ
型磁気ヘッド15bに対応したステータコア36の信号
伝送用リング36bに記録信号を供給する。
【0072】ここで、一対のインダクティブ型磁気ヘッ
ド15a,15bは、上述したように、回転ドラム13
の中心に対して互いに成す角度が180°となるように
配されているので、これらのインダクティブ型磁気ヘッ
ド15b,15bは、180°の位相差をもって交互に
記録することとなる。すなわち、記録用アンプ51は、
一方のインダクティブ型磁気ヘッド15aに記録信号を
供給するタイミングと、他方のインダクティブ型磁気ヘ
ッド15bに記録信号を供給するタイミングとを、18
0°の位相差をもって交互に切り換える。
【0073】そして、一方のインダクティブ型磁気ヘッ
ド15aに対応したステータコア36の信号伝送用リン
グ36aに供給された記録信号は、非接触にてロータコ
ア37の信号伝送用リング37aに伝送される。そし
て、ロータコア37の信号伝送用リング37aに伝送さ
れた記録信号は、インダクティブ型磁気ヘッド15aに
供給され、当該インダクティブ型磁気ヘッド15aによ
り、磁気記録媒体10に対して信号の記録がなされる。
【0074】同様に、他方のインダクティブ型磁気ヘッ
ド15bに対応したステータコア36に信号伝送用リン
グ36bに供給された記録信号は、非接触にてロータコ
ア37の信号伝送用リング37bに伝送される。そし
て、ロータコア37の信号伝送用リング37bに伝送さ
れた記録信号は、インダクティブ型磁気ヘッド15bに
供給され、当該インダクティブ型磁気ヘッド15bによ
り、磁気記録媒体10に対して信号の記録がなされる。
【0075】また、上記回転ドラム装置11を用いて、
磁気記録媒体10からの信号を再生する際は、先ず、モ
ータ14の駆動用コイルに電流が供給され、これによ
り、回転ドラム13が回転駆動される。そして、回転ド
ラム13が回転している状態にて、図7に示すように、
オシレータ52から高周波の電流がパワードライブ53
に供給される。
【0076】オシレータ52からの高周波の電流は、パ
ワードライブ53によって所定の交流電流に変換された
上で、ステータコア36の電力伝送用リング36dに供
給される。そして、ステータコア36の電力伝送用リン
グ36dに供給された交流電流は、非接触にてロータコ
ア37の電力伝送用リング37dに伝送される。そし
て、ロータコア37の電力伝送用リング37dに伝送さ
れた交流電流は、整流器54により整流されて直流電流
とされレギュレータ55に供給され、当該直流電流はレ
ギュレータ55により所定の電圧に設定される。
【0077】そして、レギュレータ55によって所定の
電圧に設定された電流は、一対のMRヘッド16a,1
6bにセンス電流として供給される。なお、一対のMR
ヘッド16a,16bには、当該MRヘッド16a,1
6bからの信号を検出する再生用アンプ56が接続され
ており、レギュレータ55からの電流は、この再生用ア
ンプ56にも供給される。
【0078】ここで、MRヘッド16a,16bは、外
部磁界の大きさによって抵抗値が変化するMR素子を備
えている。そして、MRヘッド16a,16bは磁気記
録媒体10から信号磁界によりMR素子の抵抗値が変化
し、これにより、センス電流に電圧変化が現れるように
なされている。
【0079】そして、再生用アンプ56は、この電圧変
化を検出し、当該電圧変化に応じた信号を再生信号とし
て出力する。なお、再生用アンプ56は、一方のMRヘ
ッド16aによって信号を再生するタイミングの時、当
該MRヘッド16aによって検出した信号を出力し、ま
た、他方のMRヘッド16bによって信号を再生するタ
イミングの時、MRヘッド16bによって検出した再生
信号を出力する。
【0080】ここで、一対のMRヘッド16a,16b
は、上述したように、回転ドラム13の中心に対して互
いに成す角度が180°となるように配されているの
で、これらのMRヘッド16a,16bは、180°の
位相差をもって交互に再生することとなる。すなわち、
再生用アンプ56は、一方のMRヘッド16aからの再
生信号を出力するタイミングと他方のMRヘッド16b
からの再生信号を出力するタイミングとを、180°の
位相差をもって交互に切り替える。
【0081】そして、再生用アンプ56から再生信号
は、ロータコア37の信号伝送用リード37cに供給さ
れ、この再生信号は、非接触にてステータコア36の信
号伝送用リング36cに伝送される。ステータコア36
の信号伝送用リング36cに伝送された再生信号は、再
生用アンプ57によって増幅された上で、補正回路58
に供給される。そして、再生信号は、補正回路58によ
り所定の補正処理が施された後、外部回路50へと出力
される。
【0082】なお、図7に示したような回路構成とした
場合、一対のインダクティブ型磁気ヘッド15a,15
b、一対のMRヘッド16a,16b、整流器54、レ
ギュレータ55及び再生用アンプ56は、回転ドラム1
3に搭載され、回転ドラム13と共に回転する。一方、
記録用アンプ51、オシレータ52、パワードライブ5
3、再生用アンプ57及び補正回路58については、回
転ドラム装置11の固定部分に配するか、或いは、回転
ドラム装置11とは別に構成された外部回路とする。
【0083】つぎに、上記回転ドラム13に搭載される
MRヘッド16a,16bについて、図8を参照して詳
細に説明する。なお、MRヘッド16aおよび16b
は、アジマス角が互いに逆になるように設定されている
他は、同一の構成を有している。そこで、以下の説明で
は、これらのMRヘッド16a,16bをまとめてMR
ヘッド16と呼称する。
【0084】MRヘッド16は、回転ドラム13に搭載
され、ヘリカルスキャン方式によって磁気記録媒体10
からの信号を磁気抵抗効果を利用して検出する再生専用
の磁気ヘッドである。一般にMRヘッドは、電磁誘導を
利用して記録再生を行うインダクティブ型磁気ヘッドよ
りも感度が高く再生出力が大きくなるので、高密度記録
に適している。したがって、再生用磁気ヘッドとしてM
Rヘッド16を用いることで、より高密度記録化を図る
ことができる。
【0085】そして、MRヘッド16は、図8に示すよ
うに、Ni−Zn多結晶フェライト等のような軟磁性材
料からなる一対の磁気シールド61、62と、絶縁体6
3を介して介して一対の磁気シールド61、62によっ
て挟持された略矩形状のMR素子部64とを備えてい
る。なお、MR素子部64の両端からは、一対の端子が
導出されており、これらの端子を介して、MR素子部6
4にセンス電流を供給できるようになされている。
【0086】MR素子部64は、磁気抵抗効果を有する
MR素子と、SAL(Soft AdjacentLayer) 膜と、MR
素子とSAL膜との間に配された絶縁体膜とが積層され
てなる。MR素子は、異方性磁気抵抗効果(AMR)に
より、外部磁界の大きさによって抵抗値が変化するNi
−Fe等のような軟磁性材料からなる。SAL膜は、い
わゆるSALバイアス方式により、MR素子にバイアス
磁界を印加するためのものであり、パーマロイ等のよう
に低保磁力で高透磁率の磁性材料からなる。絶縁体膜
は、MR素子とSAL膜との間を絶縁し、電子的な分流
損を防ぐためのものであり、Ta等のような絶縁材料か
らなる。
【0087】このMR素子部64は、略矩形状に形成さ
れてなり、一側面が磁気記録媒体摺動面65に露呈する
ように、一対の磁気シールド61、62によって絶縁体
63を介して支持されている。詳細には、このMR素子
部64は、短軸方向が磁気記録媒体摺動面65に対して
略垂直となり、長軸方向が磁気記録媒体の摺動方向に対
して略直交するように、一対の磁気シールド61、62
によって絶縁体63を介して挟持されている。
【0088】このMRヘッド16の磁気記録媒体摺動面
65は、当該磁気記録媒体摺動面65にMR素子部64
の一側面が露呈するように、磁気記録媒体10の摺動方
向に沿って円筒研磨されているとともに、磁気記録媒体
10の摺動方向に対して直交する方向に沿って円筒研磨
されている。これにより、このMRヘッド16は、MR
素子部64あるいはその近傍部分が最も突出するように
なされ、MR素子部64の磁気記録媒体10に対する当
たり特性を良好なものとすることができる。
【0089】そして、以上のようなMRヘッド16を用
いて、磁気記録媒体10からの信号を再生する際には、
図9に示すように、磁気記録媒体10をMR素子部64
に摺動させる。なお、図9中に示した矢印は、磁気記録
媒体10が磁化されている様子を模式的に示している。
【0090】そして、このように磁気記録媒体10をM
R素子部64に摺動させた状態で、MR素子部64の両
端に接続された端子64a、64bを介して、MR素子
部64にセンス電流を供給し、当該センス電流の電圧変
化を検出する。具体的には、MR素子部64の一端に接
続された端子64aから、所定の電圧Vcを印加すると
ともに、MR素子部64の他端に接続された端子64b
を、回転ドラム13に接続しておく。ここで、回転ドラ
ム13は、回転軸31を介して固定ドラム12に電気的
に導通しており、また、固定ドラム12は接地されてい
る。したがって、MR素子部64に接続された一方の端
子64bは、回転ドラム13、回転軸31及び固定ドラ
ム12を介して接地されている。
【0091】そして、磁気記録媒体10を摺動させた状
態で、MR素子部64にセンス電流を供給すると、磁気
記録媒体10からの磁界に応じて、MR素子部64に形
成されたMR素子の抵抗値が変化し、その結果、センス
電流に電圧変化が生じる。そこで、このセンス電流の電
圧変化を検出することにより、磁気記録媒体10からの
信号磁界が検出され、磁気記録媒体10に記録されてい
る信号が再生される。
【0092】なお、用いるMRヘッド16において、M
R素子部64に形成されるMR素子は、磁気抵抗効果を
示す素子であればよく、例えば、複数の薄膜を積層する
ことにより、より多くの磁気抵抗効果を得られるように
した、いわゆる巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)も
使用可能である。
【0093】また、MR素子にバイアス磁界を印加する
手法は、SALバイアス方式でなくてもよく、例えば永
久磁石バイアス方式、シャント電流バイアス方式、自己
バイアス方式、交換バイアス方式、バーバーポール方
式、分割素子方式、サーボバイアス方式等、種々の手法
が適用可能である。なお、巨大磁気抵抗効果並びに各種
のバイアス方式については、例えば丸善株式会社の「磁
気抵抗ヘッド基礎と応用林和彦訳」に詳細に記載されて
いる。
【0094】以下に、本発明の磁気記録媒体10につい
て、具体的に〔実施例〕および〔比較例〕の磁気記録媒
体を挙げて説明するが、本発明の磁気記録媒体は、以下
に示す例に限定されるものではない。
【0095】〔実施例1〕先ず、磁気記録媒体10を構
成する磁性層2を形成するために用いる磁性分散液組成
物を調整した磁性塗料について以下に示す。 〔磁性塗料〕 強磁性粉末:Co変性γ−Fe3 4 :100〔重量部〕 (BET法比表面積 32〔m2 /g〕) 結合剤:塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体:10〔重量部〕 (日本ゼオン社製 商品名 MR−110) ポリウレタン樹脂 :10〔重量部〕 (日本ポリウレタン社製 商品名 N−2304) 研磨剤 :α−Al2 3 : 5〔重量部〕 (住友化学社製 商品名 AKP−30) 硬化剤 :ポリイソシアネート : 4〔重量部〕 (日本ポリウレタン社製 商品名 コロネートL) 潤滑剤 :ミリスチン酸 :1〔重量部〕 :ステアリン酸ブチル :1〔重量部〕 調整溶剤:メチルエチルケトン :100〔重量部〕 :トルエン : 60〔重量部〕 :シクロヘキサノン : 40〔重量部〕
【0096】上記の材料を、ニーダーで混練処理を施
し、サンドミル処理を行い分散し、ポリイソシアネート
を4〔重量部〕とミリスチン酸を1〔重量部〕を添加
し、1〔μm〕の平均口径を有するフィルターで濾過
し、磁性塗料を調整した。
【0097】上述のようにして調整した磁性塗料を、押
し出しコートにより、厚さ15.0〔μm〕のポリエチ
レンテレフタレートフィルム上に3.0〔μm〕の厚さ
にコーティングした。なお、磁性塗料の塗布厚は、TE
SA社製 Moduleユニット403、372を用い
て、全厚を測定した後、非磁性支持体1の厚さを差し引
いて算出した。測定の誤差を考慮して、3点測定し平均
値を塗布厚とした。
【0098】その後、図2および図3に示した磁場発生
体115である3000〔ガウス〕のマグネット上を、
磁性層形成面側とは反対側の面、すなわち非磁性支持体
1側を対向させて、100〔m/分〕の速度で通過させ
た。
【0099】その後、配向、乾燥、カレンダー処理、硬
化、の各工程を経て1/2〔インチ〕幅に裁断してサン
プルの磁気テープを作製した。
【0100】次に、X−MA解析を行い、磁性層2の所
定の厚さにおける構成元素の存在比率の分析を行った。
この場合、磁性層2を構成する結合剤成分元素として、
C(カーボン)を代表させ、磁性粉末成分元素としてF
eを代表させて、磁性層2の表層から10〔Å〕の厚さ
の位置、および50〔Å〕の位置の、それぞれ位置にお
けるC(カーボン)のFeに対する存在比率(C/F
e)を求め、これから体積比〔vol%〕を算出した。
〔実施例1〕の磁気テープにおいては、以下のようにな
った。 10〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:95.
1〔vol%〕 50〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:66.
1〔vol%〕
【0101】上述のX−MA解析においては、作製した
磁気テープを日立製−2380Nを用いてSEM観察を
行い、HORIBA製EMAX−5770Wを用いて処
理電圧を5〜30〔kV〕として、表面から深さ50
〔Å〕までの元素分析を行い、FeとCについての定量
を行った。その元素存在量から体積比を算出した。
【0102】〔実施例2〕〜〔実施例4〕においては、
磁性塗料の塗布速度を変化させて磁場発生体である30
00〔ガウス〕のマグネット上を通過させる時間を変え
た。その他の条件は、上記〔実施例1〕と同様にして磁
気テープを作製した。
【0103】〔実施例2〕上記〔実施例1〕と同様に、
磁性塗料を押し出しコートにより3.0〔μm〕の厚さ
にコーティングする。その後、磁場発生体115のマグ
ネット上を、200〔m/分〕の速度で通過させた。
〔実施例2〕の磁気テープにおいては、カーボンのFe
に対する存在比率は、下記のようになった。 10〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:93.
7〔vol%〕 50〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:67.
7〔vol%〕
【0104】〔実施例3〕上記〔実施例1〕と同様に、
磁性塗料を押し出しコートにより3.0〔μm〕の厚さ
にコーティングする。その後、磁場発生体115のマグ
ネット上を、400〔m/分〕の速度で通過させた。
〔実施例3〕の磁気テープにおいては、カーボンのFe
に対する存在比率は、下記のようになった。 10〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:92.
4〔vol%〕 50〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:68.
4〔vol%〕
【0105】〔実施例4〕上記〔実施例1〕と同様に、
磁性塗料を押し出しコートにより3.0〔μm〕の厚さ
にコーティングする。その後、磁場発生体115のマグ
ネット上を、600〔m/分〕の速度で通過させた。
〔実施例4〕の磁気テープにおいては、カーボンのFe
に対する存在比率は、下記のようになった。 10〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:90.
8〔vol%〕 50〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:69.
7〔vol%〕
【0106】〔比較例1〕上記〔実施例1〕と同様に、
磁性塗料を押し出しコートにより3.0〔μm〕の厚さ
にコーティングする。その後、磁場発生体115上を通
過することなく、配向、乾燥、カレンダー処理、硬化、
の各工程を経てサンプルの磁気テープを作製した。〔比
較例1〕の磁気テープにおいては、カーボンのFeに対
する存在比率は、下記のようになった。 10〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:86.
2〔vol%〕 50〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:85.
7〔vol%〕
【0107】〔比較例2〕上記〔実施例1〕と同様に、
磁性塗料を押し出しコートにより3.0〔μm〕の厚さ
にコーティングする。その後、磁場発生体115のマグ
ネット上を、50〔m/分〕の速度で通過させた。〔比
較例2〕の磁気テープにおいては、カーボンのFeに対
する存在比率は、下記のようになった。 10〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:97.
5〔vol%〕 50〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:73.
4〔vol%〕
【0108】〔比較例3〕上記〔実施例1〕と同様に、
磁性塗料を押し出しコートにより3.0〔μm〕の厚さ
にコーティングする。その後、磁場発生体115のマグ
ネット上を、800〔m/分〕の速度で通過させた。
〔比較例3〕の磁気テープにおいては、カーボンのFe
に対する存在比率は、下記のようになった。 10〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:88.
4〔vol%〕 50〔Å〕の位置のCのFeに対する存在比率:71.
2〔vol%〕
【0109】上記のようにして作製した〔実施例1〕〜
〔実施例4〕および〔比較例1〕〜〔比較例3〕の各サ
ンプルの磁気テープについて、静磁気特性(残留磁束密
度Br、角形比Rs、保磁力Hc)、および電磁変換特
性について測定した。電磁変換特性は、RF−OUT
(ビデオ出力)、Y−S/N(ビデオS/N)、C−O
UT(クロマ出力)、C−S/N(クロマS/N)につ
いて測定した。
【0110】RF−OUT(ビデオ出力)は、VTR
AG−6200(松下電気産業社製)を用いてビデオ信
号を記録し、〔比較例1〕の再生レベルを基準値とし、
これを0.0〔dB〕としたときの相対値として表す。
Y−S/N(ビデオS/N)は、ビデオ信号のS/N
を、〔比較例1〕を基準値とし、これを0.0〔dB〕
としたときの相対値として表す。C−OUT(クロマ出
力)は、クロマ出力を記録再生し、その出力レベルを
〔比較例1〕を基準値とし、これを0.0〔dB〕とし
たときの相対値として表す。C−S/N(クロマS/
N)は、クロマ信号のS/Nを、〔比較例1〕を基準値
とし、これを0.0〔dB〕としたときの相対値として
表す。
【0111】上記〔実施例1〕〜〔実施例4〕および
〔比較例1〕〜〔比較例3〕のサンプルの磁気テープに
ついて、スチル特性を測定した。スチル特性は、松下電
気産業社製 VTR AG−6200を用いて、出力再
生中の一次停止状態での塗膜耐久性を評価した。なお、
評価基準を以下に示す。 ◎:耐久時間 600〔分〕以上 ○:耐久時間 300〔分〕以上600〔分〕未満 △:耐久時間 120〔分〕以上300〔分〕未満 □:耐久時間 60〔分〕以上120〔分〕未満 ×:耐久時間 60〔分〕未満
【0112】上記〔実施例1〕〜〔実施例4〕および
〔比較例1〕〜〔比較例3〕のサンプルの磁気テープに
ついて、ヘッドクロッグ特性を測定した。ヘッドクロッ
グ特性は、松下電気産業社製 VTR AG−6200
を用いて、再生走行中の粉落ちの影響によるヘッドギャ
ップの目詰まり状態を評価した。各々のヘッド状態を以
下の評価基準にて表した。 ◎:耐久時間 目詰まり、粉落ち全く無し ○:耐久時間 目詰まり、粉落ち若干有り △:耐久時間 粉落ちは見られるが記録再生に問題なし □:耐久時間 粉落ちによりヘッドクロッグが発生する
が短時間で回復する ×:耐久時間 粉落ちによりヘッドクロッグが発生し記
録再生が不可能
【0113】上記〔実施例1〕〜〔実施例4〕および
〔比較例1〕〜〔比較例3〕のサンプルの磁気テープの
各評価の測定結果を下記〔表1〕に示す。
【0114】
【表1】
【0115】上記〔表1〕に示すように、〔実施例1〕
〜〔実施例4〕の磁気テープは、磁性層表層すなわち1
0〔Å〕の深さにおける、結合剤構成元素であるカーボ
ンの、磁性粉末構成元素であるFeに対する含有比率
が、90〔vol%〕以上であるので、磁性層2の耐久
性の向上が図られ、スチル特性、およびヘッドクロッグ
特性の各評価について良好な結果が得られた。また、5
0〔Å〕以上の深さにおいてはカーボンのFeに対する
含有比率を、70〔vol%〕以下とし、相対的に磁性
成分が多く存在するようにしたことによって、充分な電
磁変換特性が得られた。
【0116】〔比較例1〕は、上述した磁場発生体11
5による処理を行わずに作製した磁気テープであるが、
この例においては、磁性層2中のFe、カーボンの含有
比率が磁性層2の深さに依存せずに、磁性層2中に均等
に存在することとなり、磁性層2の表層付近においても
磁性成分比が高くなった。このため、電磁変換特性につ
いては良好な結果が得られたが、磁性層2の表層付近に
おいて結合剤成分量が不足しているので、スチル特性、
およびヘッドクロッグ特性の各評価については充分な評
価が得られず、走行耐久性が劣化した。
【0117】〔比較例2〕は、磁性塗料を塗布した非磁
性支持体1の、磁場発生体115上を走行させる速度
を、50〔m/分〕とし、磁性層表層すなわち10
〔Å〕の深さにおけるカーボンのFeに対する含有比率
を、97.5〔vol%〕、50〔Å〕の深さにおける
カーボンのFeに対する含有比率を、73.4〔vol
%〕とした例であるが、この例においては、磁性塗料内
の磁性成分が上記〔実施例1〕〜〔実施例4〕の各例よ
りもさらに非磁性支持体1側に引き寄せられるので、結
合剤層が厚く形成されることとなる。このため、スチル
特性、およびヘッドクロッグ特性の各評価について良好
な結果が得られ、耐久性が高くなった。しかし、磁性層
2の表層に、結合剤成分のリッチな層が厚く形成された
ことにより、磁性塗膜中の磁性粉末と磁気ヘッドとの間
に空間が発生し、電磁変換特性の悪化を招来した。
【0118】〔比較例3〕は、磁性塗料を塗布した非磁
性支持体1の、磁場発生体115上を走行させる速度
を、800〔m/分〕とし、磁性層表層すなわち10
〔Å〕の深さにおけるカーボンのFeに対する含有比率
を、88.4〔vol%〕、50〔Å〕の深さにおける
カーボンのFeに対する含有比率を、71.2〔vol
%〕とした例であるが、この例においては、磁性塗膜中
の磁性成分が非磁性支持体1側に充分に引き寄せられ
ず、磁性層2の表層付近においても磁性成分比が高くな
った。このため、電磁変換特性については良好な結果が
得られたが、磁性層2の表層付近において結合剤成分量
が不足するので、スチル特性、およびヘッドクロッグ特
性の各評価については充分な評価が得られず、耐久性が
劣化した。
【0119】本発明の磁気記録媒体は、上述した例に限
定されるものではなく、磁性塗料を塗布した非磁性支持
体1を、磁場発生体115上を通過させる速度を制御す
ることによって、磁性層2の表層の、結合剤成分がリッ
チな領域、すなわち結合剤層の厚さを調整することがで
きる。
【0120】
【発明の効果】本発明の磁気記録媒体によれば、磁性層
2表層における結合剤を構成するカーボン元素のFeに
対する含有比率を、90〔vol%〕以上としたことに
よって、磁性層2の表層に結合剤リッチな層を形成で
き、これによりスチル特性、およびヘッドクロッグ特性
の向上、すなわち耐久性の向上が図られた。
【0121】また、磁性層2の表面から50〔Å〕以上
の深さにおいては、カーボンのFeに対する含有比率
を、70〔vol%〕以下としたことによって、磁性粉
末を高い充填率で存在させることができ、電磁変換特性
の向上が図られた。
【0122】また、本発明の磁気記録媒体の製造方法に
よれば、磁性層2と結合剤層とを別々の工程により作製
せずに、磁性塗料を塗布した後の非磁性支持体1を、磁
場発生体115上において走行させることによって、磁
性層形成工程において、同時に結合剤成分がリッチな層
を磁性層2の表層に形成することができるので、磁気記
録媒体の製造工程を簡略化でき、走行耐久性、走行安定
性、および電磁変換特性に優れた磁気記録媒体を低コス
トで作製することができた。
【0123】また、本発明の磁気記録媒体によれば、磁
性層2の厚さを0.3μm以下の薄層としたことによっ
て、短波長成分の再生時の厚さ損失や、記録時の自己減
磁損失の低減化が図られた。
【0124】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の一例の概略断面図を示
す。
【図2】磁性層形成装置の概略図を示す。
【図3】本発明の磁気記録媒体の製造方法の一工程図を
示す。
【図4】ヘリカルスキャン磁気記録方式の磁気記録再生
装置に搭載される回転ドラム装置の一構成例の概略斜視
図を示す。
【図5】回転ドラム装置を含む磁気記録媒体送り機構の
一例の概略構成図を示す。
【図6】回転ドラム装置の内部構造の概略断面図を示
す。
【図7】回転ドラム装置並びにその周辺回路について、
回路構成の概略図を示す。
【図8】回転ドラムに搭載されるMRヘッドの一例につ
いて、一部を切り欠いた概略斜視図を示す。
【図9】MRヘッドを用いて磁気記録媒体からの信号を
再生する様子の模式図を示す。
【符号の説明】
1 非磁性支持体、2 磁性層、3 バックコート層、
10,11 回転ドラム装置、12 固定ドラム、13
回転ドラム、14 モータ、15a インダクティブ
型磁気ヘッド、15b インダクティブ型磁気ヘッド、
16 MRヘッド、16a MRヘッド、16b MR
ヘッド、18 リードガイド部、21供給リール、22
〜25,27 ガイドローラ、26 キャプスタン、2
8 巻き取りロール、29 キャプスタンモータ、30
磁気記録媒体送り機構、31回転軸、32,33 軸
受け、34 フランジ、35 ロータリトランス、36
ステータコア、37 ロータコア、38 ロータ、3
9 ステータ、40マグネット、41 駆動用コイル、
50 外部回路、51 記録用アンプ、52オシレー
タ、53 パワードライブ、54 整流器、55 レギ
ュレータ、56 再生用アンプ、57 再生用アンプ、
58 補正回路、61 磁気シールド、62 磁気シー
ルド、63 絶縁体、64 MR素子部、65 磁気記
録媒体摺動面、101 供給ロール、102 巻き取り
ロール、110 塗布装置、111 配向機、112
ドライヤーシステム、115 磁場発生体、120,1
21 ガイドロール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小池 扶美子 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 5D006 BA02 BA11 BA16 BA19 FA02 FA09 5D112 AA05 AA22 BB02 BB08 CC06 DD01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に、少なくとも、磁性粉
    末および結合剤を含有する磁性塗料の塗布により形成さ
    れた磁性層を有する磁気記録媒体であって、 上記磁性層は、該磁性層の深さ方向において、構成元素
    が変化するようになされ、 上記磁性層表層における上記結合剤を構成するカーボン
    の、上記磁性粉末を構成する元素に対する含有比率が、
    90〔vol%〕以上であり、 上記磁性層表面から、50Å以上の深さにおける上記結
    合剤を構成するカーボンの、上記磁性粉末を構成する元
    素に対する含有比率が、70〔vol%〕以下であるこ
    とを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 磁性層表面から10〔Å〕以下の深さに
    おけるカーボンの鉄に対する含有比率が90〔vol
    %〕以上であり、 上記磁性層表面から、50Å以上の深さにおけるカーボ
    ンの鉄に対する含有比率が70〔vol%〕以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 磁気抵抗効果型の磁気ヘッドが用いられ
    た磁気記録システムによって記録あるいは再生の少なく
    ともいずれかがなされることを特徴とする請求項1に記
    載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 非磁性支持体上に、少なくとも、磁性粉
    末および結合剤を含有する磁性塗料を塗布することによ
    り形成された磁性層を有する磁気記録媒体の製造方法で
    あって、 上記非磁性支持体の一主面に、磁性塗料を塗布する工程
    と、 上記磁性塗料を塗布した上記非磁性支持体を、磁性塗料
    塗布面側とは反対側の主面を対向させて、磁場発生体上
    を非接触により走行させる工程とを有し、 上記磁性塗料中の磁性成分を、上記非磁性支持体の他の
    一主面側に引きつけ、 上記磁性層表層におけるカーボンの磁性粉末を構成する
    元素に対する含有比率を、90〔vol%〕以上とし、 上記磁性層表面から、50Å以上の深さにおけるカーボ
    ンの磁性粉末を構成する元素に対する含有比率を、70
    〔vol%〕以下にすることを特徴とする磁気記録媒体
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 磁性層表面から10〔Å〕以下の深さに
    おけるカーボンの鉄に対する含有比率が90〔vol
    %〕以上とし、 上記磁性層表面から、50Å以上の深さにおけるカーボ
    ンの鉄に対する含有比率が70〔vol%〕以下とする
    ことを特徴とする請求項4に記載の磁気記録媒体の製造
    方法。
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