JP2002053939A - Fe基軟磁性合金磁心の製造方法 - Google Patents

Fe基軟磁性合金磁心の製造方法

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JP2002053939A JP2000237551A JP2000237551A JP2002053939A JP 2002053939 A JP2002053939 A JP 2002053939A JP 2000237551 A JP2000237551 A JP 2000237551A JP 2000237551 A JP2000237551 A JP 2000237551A JP 2002053939 A JP2002053939 A JP 2002053939A
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Akinobu Kojima
章伸 小島
Akihisa Inoue
明久 井上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、打ち抜き加工、切断加工、砥石加
工等の機械加工を施した場合、加工工具に負担をかける
ことなく磁心までの加工ができる製造方法の提供を目的
とする。 【解決手段】 本発明は、Fe基合金溶湯を急冷するこ
とにより板厚1〜1000μmの非晶質合金薄帯を形成
し、構造緩和を引き起こす温度にて熱処理を行った後、
磁心の形状に加工を行い、結晶化温度より高い温度にて
熱処理することで、少なくとも50%以上の組織中に平
均結晶粒径50nm以下である結晶質相を生成させ、残
部非晶質相とすることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、磁気コア等の磁
気部品に好適なFe基軟磁性合金磁心の製造方法に関す
る。 【0002】 【従来の技術】従来、トランスやチョークコイルなどの
磁心材料として、50%Ni-Feパーマロイ磁心や8
0%Ni-Feパーマロイ磁心が用いられている。しか
し、これらの磁性材料からなる磁心は高周波域における
コアロスが大きく、数10kHz以上の周波数帯域では
磁心の温度上昇が激しく、使用が困難であった。そこで
近年、高周波域におけるコアロスが低く、高角形性が良
好な特徴を生かし、Co基の非晶質磁性材料からなる磁
心がスイッチング電源用磁心などとして用いられるよう
になってきている。しかしながら、Co基非晶質磁心
は、原料費が高く、高価格であるばかりか、飽和磁束密
度が通常10kG以下であり、数10kHz〜100k
Hzの周波数域においては、飽和磁束密度が低いために
動作磁束密度の制約を受けやすく、十分に磁心を小型化
できない問題があった。 【0003】一方、Fe基非晶質磁性材料からなる磁心
は、飽和磁束密度が高く、例えば、特公昭58ー118
3号公報に記載されているように、直流BーHカーブの
角形比が高く、最大透磁率が高いものが得られることが
知られている。しかしながら、このFe基非晶質合金を
用いた磁心はコアロスが大きい欠点があるために、添加
元素の調整によりコアロスの改善が試みられているが、
前記のCo基非晶質合金に比べて未だにコアロスが大き
いという問題があった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らは、
前記種々の従来合金の発展型の合金として、特公平7−
65145号明細書、特開平5−93249号明細書等
において、非晶質合金とbccFeの微結晶粒を主体と
する組織を有し、飽和磁束密度が高いとともに、透磁率
に優れ、耐熱性にも優れたFe系軟磁性合金を提供し
た。 【0005】この特許出願に係る合金の1つは、次式で
示される組成からなることを特徴とする高飽和磁束密度
合金であった。(Fe1-aabx1y 但しQはCo、Niのいずれかまたは両方であり、M1
はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wからな
る群から選ばれた1種または2種以上の元素であり、且
つZr,Hfのいずれか又は両方を含み、a≦0.05、b
≦93原子%、x=5.0〜8原子 %、 y=4〜9原子%
である。 【0006】また、前記特許出願に係る合金の他の1つ
は、次式で示される組成からなることを特徴とする高飽
和磁束密度合金であった。Fe bx1y 但し、 b≦93原子%、x=5.0〜8原子%、y=4〜
9原子%である。そして、本発明者らは、前記組成系の
合金について更に研究を進めた結果、これらの系の軟磁
性合金を製造するには、急冷処理が必須であるがため
に、得られるものは薄帯(リボン)の状態が一般的であ
り、この薄帯から磁心などの磁気部品を得るためには、
打ち抜き加工、切断加工等の機械加工が必要であり、こ
の薄帯を打ち抜き加工する際、あるいは切断加工する
際、加工工具の寿命が短いという知見を得た。また、薄
帯から磁心の形状に加工する場合、砥石加工を施すこと
も考えられるが、前述の薄帯を砥石加工する場合に砥石
がへたり易いという問題がある。更に本発明者らは、前
記組成系のFe系軟磁性合金を製造する場合、結晶化の
ための熱処理ではなく、それよりも低い温度で特殊な熱
処理を施すことによって得られる軟磁性合金の加工性を
大幅に改良できることを見い出し、本願発明に到達し
た。本発明は前述の背景に基づいてなされたもので、打
ち抜き加工、切断加工、砥石加工等の機械加工を施した
場合、加工工具に負担をかけることなく磁心までの加工
ができるFe基軟磁性合金磁心の製造方法を提供するこ
とを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明の製造方法は、Fe基合金溶湯を急冷すること
により板厚1〜1000μmの非晶質合金薄帯を形成
し、構造緩和を引き起こす温度にて熱処理を行った後、
磁心の形状に加工を行い、結晶化温度より高い温度にて
熱処理することで、少なくとも50%以上の組織中に平
均結晶粒径50nm以下である結晶質相を生成させ、残
部非晶質相とすることを特徴とする。微結晶を析出させ
る熱処理温度よりも低い温度範囲で行う構造緩和を引き
起こすための熱処理を施すことで、材料のねばさを減少
させ、材料として適度に脆くすることで機械加工工具の
摩擦を減少させる。これにより機械加工性、例えば、打
ち抜き性を向上させて打ち抜き加工工具の寿命を延ば
し、切断加工時の切断工具の寿命を延ばし、砥石加工時
の砥石の寿命を長くすることができ、生産性を向上させ
ることができる。本発明の製造方法において、前記結晶
相としてbccFe、Fe3Bのうちから選択される少
なくとも1種以上であるものを採用することができる。
これらの結晶相が析出することで軟磁気特性が著しく向
上する。 【0008】本発明の製造方法において、前記板厚とし
て1μm以上、100μm以下であるものを採用するこ
とができる。この範囲の厚さであるならば、非晶質単相
のものを容易に得ることができ、この非晶質単相のもの
に構造緩和を引き起こす熱処理を施すことで機械加工
性、例えば、打ち抜き性を向上させ打ち抜き加工工具の
寿命を延ばし、切断加工時の切断工具の寿命を延ばし、
砥石加工時の砥石の寿命を長くすることができ、生産性
を向上できる。更に、このような厚さ範囲において、厚
い薄帯であるならば、後述するようにトロイダル巻して
磁心とする場合において、あるいは積層磁心とする場合
において、磁性体部分の占有率を向上させることできる
特徴を有するが、逆に薄い薄帯であれば、高周波域にお
けるうず電流損失を低減させるというように、用途に応
じて厚いものと薄いものを使い分けすることができる。 【0009】本発明の製造方法は、Fe基軟磁性合金溶
湯を急冷することにより、板厚1μm以上、100μm
以下の非晶質合金薄帯を形成し、構造緩和を引き起こす
温度であって、かつ、結晶が析出する温度よりも高い温
度にて熱処理を行い、少なくとも50%以上の組織中に
平均結晶粒径50nm以下である結晶相を形成させ、磁
心の形状に加工することを特徴とする。 【0010】一部結晶相が析出した状態のものでも構造
緩和を引き起こす熱処理を施すことで材料のねばさを減
少させ、材料として適度に脆くすることで機械加工工具
の摩擦を減少させる。これにより機械加工性、例えば、
打ち抜き性を向上させ、切断加工時の切断工具の寿命を
延ばし、砥石加工時の砥石の寿命を長くすることができ
る。本発明の製造方法において、前記結晶相として、b
ccFe、Fe3Bのうちから選ばれる少なくとも1種
以上であるものを採用することができる。これらの結晶
相が析出することで軟磁気特性が著しく向上する。 【0011】本発明の製造方法において、前記板厚とし
て1μm以上、100μm以下であるものを採用するこ
とができる。この範囲の厚さであるならば、非晶質単相
のものを容易に得ることができ、この非晶質単相のもの
に構造緩和を引き起こす熱処理を施すことで機械加工
性、例えば、打ち抜き性を向上させ打ち抜き加工工具の
寿命を延ばし、切断加工時の切断工具の寿命を延ばし、
砥石加工時の砥石の寿命を長くすることができ、生産性
を向上できる。更に、このような厚さ範囲において、厚
い薄帯であるならば、後述するようにトロイダル巻して
磁心とする場合において、あるいは積層磁心とする場合
において、磁性体部分の占有率を向上させることできる
特徴を有するが、逆に薄い薄帯であれば、高周波域にお
けるうず電流損失を低減させるというように、用途に応
じて厚いものと薄いものを使い分けすることがができ
る。 【0012】本発明の製造方法において、前記急冷が不
活性ガスフロー中、または、大気中のいずれか1つで行
われ、前記Fe基合金の溶湯を回転する金属ロール上に
ノズルから噴出させて行うものであることを特徴とす
る。前述の合金において、組成に応じて不活性ガスフロ
ー中の雰囲気において、あるいは、大気中において、製
造しても良好な磁気特性を発揮できるものを得ることが
可能であり、不活性ガスフロー中あるいは大気中で製造
することで、雰囲気を制御した大規模の装置で製造しな
くとも製造が可能となることで、製造が容易となり得
る。 【0013】本発明の製造方法において、前記Fe基合
金溶湯として、下記組成式を満足するものを適用するこ
とができる。 (Fe1-aCoa100-X-Y-ZXM’YM’’Ztw ただし、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,M
o,W,Mnのうち1種または2種以上、M’はAl、
Ge、Ga、Cu、Yを含む希土類元素のうち1種また
は2種以上、M’’はCr、Ru、Rh、Ir、Pd、
Os、Prのうち1種または2種以上、XはP、C、S
iのうち1種または2種以上であり、組成比を示すa、
x、y、z、t、wは、0≦a≦0.05、1原子%≦x≦30
原子%、0≦y≦10原子%、0≦z≦5原子%、0≦t
≦10原子%、0.5≦w≦20原子%である。ここでの
希土類元素としてはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、S
m、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、
Lu)のうちから選択して用いられる。本発明の製造方
法において、組成比を示すa、x、y、z、t、wとして、a
=0、t=0、3原子%≦x≦10原子%、0.01原子
%≦y≦1原子%、5原子%≦w≦15原子%とすること
ができる。本発明の製造方法において。組成比を示す
a、x、y、z、t、wとして、a=0、y=0、t=0、3原
子%≦x≦10原子%、5原子%≦w≦15原子%とする
ことができる。これらの組成を有する合金薄帯から磁心
を製造することで、飽和磁束密度が高く、透磁率に優
れ、磁心の形状に種々の加工を施しても加工工具を傷め
るおそれの少ないものを提供できる。また、加工工具の
寿命を長くすることが確実にできることで生産性が向上
し、磁心を大量に生産する場合に有利となる。 【0014】 【発明の実施の形態】以下に本発明を更に詳細に説明す
る。本発明に係る磁心を形成するために好ましいFe基
合金の一形態は、Feを主成分として含み、Bを必ず含
み、更にTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,
W,Mnのうち1種または2種以上を必ず含み、組織の
少なくとも50%以上が平均結晶粒径50nm以下のb
ccFeの微細結晶粒からなり、残部は非晶質合金相か
らなることを特徴とするものである。 【0015】先に記載の軟磁性合金の具体的な一形態
は、次式で示される組成からなり、組織の少なくとも5
0%以上が平均結晶粒径50nm以下のbccFeの微
細結晶粒からなり、残部が非晶質合金相からなり、前記
bccFeの微細結晶粒は後述する組成の合金(溶湯)
を急冷し、ほぼ非晶質相の単相組織あるいは一部結晶相
を析出させた後、構造緩和を引き起こす温度にて熱処理
を施した後、前記非晶質相を結晶化温度以上に加熱後に
冷却されて析出されたものである。 【0016】 (Fe1-aCoa100-X-Y-ZXM’YM’’Ztw ただし、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,M
o,W,Mnのうち1種または2種以上、M’はAl、
Ge、Ga、Cu、Yを含む希土類元素のうち1種また
は2種以上、M’’はCr、Ru、Rh、Ir、Pd、
Os、Prのうち1種または2種以上、XはP、C、S
iのうち1種または2種以上であり、組成比を示すa、
x、y、z、t、wは、0≦a≦0.05、1原子%≦x≦30
原子%、0≦y≦10原子%、0≦z≦5原子%、0≦t
≦10原子%、0.5原子%≦w≦20原子%である。以
上の組成において、組成比を示すa、x、y、z、t、wが、
a=0、t=0、3原子%≦x≦10原子%、0.01原子
%≦y≦1原子%、5原子%≦w≦15原子%の範囲とす
ることができる。更に以上の組成において、組成比を示
すa、x、y、z、t、wが、a=0、y=0、t=0、3原子
%≦x≦10原子%、5原子%≦w≦15原子%の範囲と
することができる。 【0017】前述の組成の軟磁性合金は、前記組成の合
金を溶湯から急冷することにより非晶質相あるいは一部
に結晶質を含む非晶質合金薄帯あるいは非晶質合金粉
末、非晶質合金塊として得る工程と、これらの工程で得
られたものを構造緩和を引き起こす温度にて熱処理を施
した後、前記非晶質相を結晶化温度以上に加熱後に冷却
する工程とによって通常得ることが出来る。あるいは、
前記薄帯に対し、構造緩和を引き起こす熱処理温度であ
って、結晶化を開始する温度よりも高い温度で熱処理さ
れて非晶質相中に微結晶粒が析出されたものでも良い。
なお、前記の急冷法で得られたものは、薄帯状であって
も粉末状であっても良く、得られたものを構造緩和を引
き起こす熱処理後に所望の形状に成形加工あるいは機械
加工した後に結晶化のための熱処理を施しても良いのは
勿論である。 【0018】次に、前記各組成の軟磁性合金において、
前記の組成とすることが好ましい理由を説明する。前記
組成の軟磁性合金にはBが必ず添加されている。Bには
軟磁性合金の非晶質形成能を高める効果、Fe-M(=
Zr,Hf,Nb等)系微細結晶合金の熱的安定性を高
め、結晶粒成長の障壁となり得る効果、および熱処理工
程において磁気特性に悪影響を及ぼす化合物相の生成を
抑制する効果があると考えられ、熱的に安定な非晶質相
を粒界に残存させる効果がある。この結果、前記後述す
る結晶化の熱処理工程において400〜750℃の広い
熱処理条件で磁気特性に悪影響を及ぼさない粒径50n
m以下(具体的には30nm以下)の微細な体心立方構
造(bcc構造)のFeの結晶粒を主体とする組織を得
ることができる。 【0019】こ のBの含有量は、0.5原子%以上2
0原子%以下が良好であり、より好ましくは5原子%以
上15原子%以下の範囲である。B量のwが、0.5原子
%より小さい場合、粒界の非晶質相が不安定となるため
に十分な添加効果が得られない。また、wが20原子%
を超えるとB-M系およびFe-B系のほう化物の生成傾
向が強くなり、この結果、微細結晶組織を得るための熱
処理条件が制約され、良好な軟磁気特性が得られ難くな
る。このBの含有量は、1.5T以上の高飽和磁束密度
を得るためには10原子%以下であることが好ましい。
また、B含有量として8原子%以上、10原子%以下の
範囲が30000以上の高透磁率と1.5T以上の高飽
和磁束密度と低い保磁力(6A/m以下)を全て満足で
きる上で好ましい。 【0020】このように適切な量のBを添加することで
析出する微細結晶相の平均結晶粒径を50nm以下に確
実に調整することができるようになる。前記組成の軟磁
性合金の組成式において、非晶質相を得やすくするため
には、非晶質形成能の特に高いZr、Hf、Nbのいず
れかを含む必要がある。また、Zr、Hf、Nbはそれ
らの一部を他の4A〜6A族元素のうち、Ti、V、T
a、Mo、W、Mnと置換することができる。更に、上
記組成式の中のNbは、α-Feに対してほとんど固溶
しないとされているが、合金溶湯を急冷して合金の組織
が非晶質相を有するようにすることで、Nbを過飽和に
固溶させ、この後に施す熱処理によりNbの固溶量を調
節して一部結晶化し、微細結晶相として析出させること
で、得られる軟磁性合金の軟磁気特性を向上させる作用
がある。また、微細結晶相を析出させ、その微細結晶相
の結晶粒の粗大化を抑制するには、結晶粒成長の障害と
なり得る非晶質相を粒界に残存させることが必要である
と考えられる。さらに、この粒界非晶質相は、熱処理温
度の上昇によってα-Feから排出されるNbを固溶す
ることで軟磁気特性を劣化させるFe-Nb系化合物の
生成を抑制すると考えられる。 【0021】よって、Fe-Nb系の合金に元素Xとし
てBを添加することが好ましい。また、本発明の軟磁性
合金では、材料を酸化させることなく、非晶質相を得や
すくするためには、酸化しにくく、かつ非晶質形成能の
特に高いNbを含むようにすることが好ましい。Nb
は、比較的遅い拡散種であり、Nbの添加は、微細結晶
核の成長速度を小さくする効果、非晶質形成能を持つと
考えられ、組織の微細化に有効である。また、Nbは、
酸化物の生成自由エネルギーの絶対値が比較的小さく、
熱的に安定であり、酸化物を生成しにくいため、合金溶
湯を急冷する際に材料の酸化を防止するものとして有効
である。 【0022】本発明の合金において、M元素は、比較的
遅い拡散種であり、M元素の添加は微細結晶核の成長速
度を小さくする効果を持つと考えられ、組織の微細化に
不可欠である。しかし、M元素の添加量xが1原子%よ
り小さくになると、核成長速度を小さくする効果が失わ
れ、この結果、結晶粒径が粗大化し良好な軟磁性が得ら
れない。x量が30原子%を超えると、M-B系またはF
e-M系の化合物の生成傾向が大きくなり、良好な特性
が得られないほか、液体急冷後のテープ状合金が脆化
し、所定のコア形状に加工することが困難となる。よっ
て、xの範囲を1〜30原子%としたが、このような範
囲において3〜10原子%の範囲がより好ましい。 【0023】前記組成の軟磁性合金において、Fe、C
o、Ni量の合計量(100−x−y−z−t−w)は、9
3原子%以下である。これは、合計量が93原子%を超
えると液体急冷法によって非晶質単相を得ることが困難
になり、この結果、熱処理してから得られる合金の組織
が不均一になるため高い透磁率が得られないためであ
る。また、飽和磁束密度10kG以上を得るためには、
合計量が75原子%以上であることがより好ましいので
合計量を75〜93原子%の範囲とすることが好まし
い。 【0024】前記組成の軟磁性合金においては、添加す
る元素として、Al、Ge、Ga、CuおよびYを含む
希土類元素のうち、1種または2種以上を10原子%以
下含有することが好ましい。これらのうちGe、Gaは
半金属元素として知られるものであるが、本発明の軟磁
性合金においてはこれらの半金属元素がFeを主成分と
するbcc相(体心立方晶の相)に固溶している。それ
らの元素の含有量が10原子%を超えると磁歪が大きく
なるか、飽和磁束密度が低下するか、透磁率が低下する
ので好ましくない。 【0025】上記元素ZのうちY、希土類元素(La、
Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、D
y、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)は非晶質形成能を有
する元素であり、また、選択する元素の種類は添加量を
調整することにより、軟磁性合金中の非晶質相の体積分
率をコントロールできる。それは、Yや上記希土類元素
は、Feを主成分とするbcc相(体心立方の相)に固
溶せず、非晶質相に残留し、また、用いる元素を変更す
ることにより、磁歪を制御して、磁気特性を向上させる
ことができる。 【0026】前記組成の軟磁性合金において耐食性を改
善するために、Cr、Ru、Rh、Ir、Pd、Os、
Prなどの白金族元素を添加することも可能である。こ
れらの元素は、5原子%よりも多く添加すると、飽和磁
束密度の劣化が著しくなるため、添加量は5原子%以下
に抑える必要があるが、耐食性の面で問題がなければ添
加を略しても良い。前記組成の軟磁性合金において、
P、C、Si等の非晶質形成能を有する元素に関し、本
願発明合金の特性を低下させない範囲で含有していても
差し支えないので、これら元素の含有量は10原子%以
下程度とすることが好ましい。 【0027】図1は、本発明に係る組成の軟磁性合金を
薄帯状として得るための製造装置の一例を示すものであ
るが、前述の組成の軟磁性合金を薄帯状として得るため
には図3を基に後に説明する不活性ガスフロー装置を用
いても良い。 【0028】図1に示す第1の例の製造装置は、真空ポ
ンプ1に排気管1aを介し接続されて真空排気可能なチ
ャンバ2の内部に、銅製または鋼製の冷却ロール3が回
転自在に設置されている。この冷却ロール3の上方に石
英製などのノズル5を有するるつぼ6が備えられ、るつ
ぼ6には、るつぼ6にArガス圧力を付加できるように
ガス供給源7がガス供給管7aを介し接続され、チャン
バ2には別途チャンバ2の内部をArガス等の非酸化性
ガス減圧雰囲気に調整するためのガス供給源8がガス供
給管8aを介し接続されている。なお、るつぼ6の上端
部には蓋部材が装着され、この蓋部材を貫通するように
ガス供給管7aの先端が接続されていて、るつぼ6の内
部をチャンバ2の内部圧力とは別個に加圧できるように
構成されている。 【0029】るつぼ6の底部外周には加熱ヒータ9が設
けられ、るつぼ6に投入される合金原料を加熱し溶融さ
せて溶湯を得ることができるように構成されるととも
に、前述のガス供給源7からArガス圧をるつぼ6の内
部に付加することでノズル5を介して回転中の冷却ロー
ル3の表面に溶湯を吹き出し、冷却ロール3の側方に図
1の符号11で示すように薄帯を得ることができるよう
に構成されている。 【0030】図1に示す装置のるつぼ6において前記組
成の各種合金原料を溶解し、冷却ロール3に吹き出すこ
とで非晶質あるいはほぼ非晶質の合金薄帯を得ることが
できる。この合金薄帯を得たならば、合金薄帯を構成す
る合金の結晶化温度よりも低い温度に加熱する構造緩和
を引き起こす加熱処理を施す。この場合の熱処理は、1
00℃以上の温度であり、結晶化温度よりも50℃以
上、下の温度とすることが好ましい。例えば結晶化温度
が500℃の合金であれば、100℃以上、450℃以
下の温度範囲が好ましく、結晶化温度が550℃の合金
であれば100℃以上、500℃以下の温度範囲が好ま
しい。 【0031】この構造緩和を引き起こす熱処理が終了し
たならば、合金薄帯を治具に仮巻取した後、切断機械で
目的の幅に裁断する。目的の幅とは、製造するべき磁心
の形状に合わせた幅であり、例えば、高さ3mmのトロ
イダルコアを製造する場合には、幅3mmに合金薄帯を
裁断する。この裁断の際に、前記構造緩和を引き起こす
熱処理を施していると、切断機械の切断刃の寿命を長く
することができる。即ち、合金薄帯に構造緩和を引き起
こす熱処理を施すことで、即ち、微結晶を析出させる熱
処理温度よりも低い温度範囲で行う構造緩和を引き起こ
すための熱処理を施すことで、材料のねばさを減少さ
せ、材料として適度に脆くすることで加工工具の摩擦を
減少させる。これにより加工性、例えば、切断刃の寿命
を延ばすことができる。 【0032】次に、目的の幅に裁断した薄帯をトロイダ
ル形状になるように例えば図2Aに示すように巻回す
る。具体的には軸等の棒状体に薄帯を巻き付け、目的の
内径と外径を得たならば、終端を切断してスポット溶接
により終端を固定してトロイダル形状とする。次に、巻
き取ったコアを真空中で熱処理し、非晶質相中に微結晶
を析出させる結晶化を行う。この結晶化のための熱処理
は、合金組成に応じて異なるが、450℃〜750℃の
範囲である。 【0033】本発明に係る組成系の合金の結晶化開始温
度として、例えば、 Fe84Nb79なる組成において結晶化開始温度=49
5℃、 Fe90Zr73なる組成において結晶化開始温度=52
4℃、 Fe89Zr74なる組成において結晶化開始温度=52
5℃、 Fe85Nb69なる組成において結晶化開始温度=47
4℃、 Fe84Nb6.59.5なる組成において結晶化開始温度=
488℃、 Fe83.3Nb6.59.5La0.2Ag1の組成において結晶
化開始温度=490℃、 Fe83Nb6.59.5Ga1なる組成において結晶化開始
温度=487℃、 Fe84Nb6.39.5La0.2なる組成において結晶化開
始温度=496℃、 Fe83.55Nb6.59.5Cu0.05なる組成において結晶
化開始温度=487℃、 Fe83.9Nb6.59.5Cu0.1なる組成において結晶化
開始温度=486℃、 Fe83Nb6.59.5Cu1なる組成において結晶化開始
温度=445℃、 Fe86.7Nb3.3Zr3.26.8なる組成において結晶化
開始温度=511℃、 Fe85Nb1.75Zr4.259なる組成において結晶化開
始温度=491℃、 Fe85.5Nb4Zr28.5なる組成において結晶化開始
温度=489℃ であるので、これらの温度か、それよりも若干高い温度
で処理して結晶化させれば良い。逆に、先に説明した構
造緩和を引き起こす熱処理温度は、結晶化開始温度より
も50℃以上低い温度することが好ましいので、前記し
た結晶化温度よりも50℃以上低く、かつ、100℃以
上の温度に加熱するものとする。 【0034】従って、上述の各組成においては以下に記
述する温度範囲で先に説明した構造緩和を引き起こす熱
処理を施すことが好ましい。 組成 構造緩和熱処理温度範囲 Fe84Nb69 100℃以上、445℃以下、 Fe90Zr73 100℃以上、474℃以下、 Fe89Zr74 100℃以上、475℃以下、 Fe85Nb69 100℃以上、424℃以下、 Fe84Nb6.59.5 100℃以上、438℃以下、 Fe83.3Nb6.59.5La0.2Ag1 100℃以上、440℃以下、 Fe83Nb6.59.5Ga1 100℃以上、437℃以下、 Fe84Nb6.39.5La0.2 100℃以上、446℃以下、 Fe83.55Nb6.59.5Cu0.05 100℃以上、437℃以下、 Fe83.9Nb6.59.5Cu0.1 100℃以上、436℃以下、 Fe83Nb6.59.5Cu1 100℃以上、395℃以下、 Fe86.7Nb3.3Zr3.26.8 100℃以上、461℃以下、 Fe85Nb1.75Zr4.259 100℃以上、441℃以下、 Fe85.5Nb4Zr28.5 100℃以上、439℃以下、 【0035】次にこのトロイダルコアを樹脂含浸して固
定する。例えば、エポキシ樹脂含浸を行ってコア全体を
例えばドーナツ型に固定する。続いてギャップ付きのト
ロイダルコアを製造する場合は、ドーナツ型のコアの一
部に図2Bに示すように切込を入れてギャップGを形成
し、砥石加工を施して切込部分を加工し磁気コアCとし
て完成させる。続いて磁気コアCを樹脂製のケースKの
内部に図2Cに示すように収容し、エポキシ樹脂等の樹
脂を充填し、この後に巻線加工を施して図2Dに示すよ
うに磁気コアC1として完成品とする。また、必要に応
じて図2Eに示すように巻線mに端子Tを形成し、全体
を4角形のチップ状に樹脂モールドして面実装タイプの
磁気部品Mを得ることができる。 【0036】次に本実施形態において、構造緩和を引き
起こす温度よりも高い温度であって微結晶を析出させる
結晶化開始温度よりも高い温度に加熱して磁心を製造す
ることもできる。例えば、結晶化開始温度よりも高い温
度で熱処理すると、極めて脆くなり加工には不向きとな
るので、予め、トロイダルコア状に加工した後、このよ
うな温度に加熱して結晶化してトロイダルコアとした
後、脆いトロイダルコアに損傷を与えない程度に切込を
入れてギャップ付きのトロイダルコアを製造すれば良
い。このような工程によっても本発明に係る組成系の合
金薄帯を用いてトロイダル形状のコアを得ることができ
る。 【0037】次に、トロイダルコア型の磁心ではなく、
積層型磁心を形成する場合の製造方法の一例について説
明する。積層型磁心を前述の合金薄帯から製造するに
は、合金薄帯からドーナツ板状の板材を複数打ち抜き、
これを複数枚積層し、接着するか、樹脂モールドしてコ
ア型に加工することで得ることができる。また、ギャッ
プを有する磁心とするためには、ドーナツ板状の板材を
積層し、一体化した後、切込を入れてから砥石加工する
ことで図2Bに示す形状と同じドーナツ型のギャップ付
きの磁心を得ることができる。以上の製造工程におい
て、薄帯から打ち抜く工程を行う際、構造緩和を引き起
こす熱処理を行っておけば、打ち抜き工具の寿命を長く
することができ、例えばバリ等の欠陥部分の無い磁心を
得ることができる。また、工具寿命を長くすることがで
きるので、大量製造時の効率を向上させることができ、
生産効率を高くすることができる。 【0038】図3と図4は本発明に係る磁心を製造する
ために用いる合金薄帯を製造する装置の第2の例を示す
もので、この例の薄帯製造装置は、不活性ガスフロー中
において合金溶湯を冷却して薄帯を製造するタイプの装
置である。図3と図4において、この例の合金薄帯製造
装置は、冷却ロール21と、溶湯を保持するるつぼ23
の下端部に連接される溶湯ノズル22と、溶湯ノズル2
2及びるつぼ23の外周に捲回・配置された加熱コイル
24と、不活性ガスをフローするためのガスフロー供給
手段である第1〜第4のガスフローノズル51〜54
と、溶湯ノズル付近への大気の巻き込みを遮断すること
を目的とするロール外周大気遮断手段60と、大気滞留
部80とから基本的に構成されている。 【0039】前記冷却ロール21は、図示しないモータ
により例えば矢印(反時計)方向へ回転駆動される。冷
却ロール21の少なくとも表面は、炭素鋼、例えばJI
SS45CなどのFe基合金、または真鍮(Cu-Zn
合金)、あるいは純Cuで構成することが望ましい。冷
却ロール21の少なくとも表面が真鍮あるいは純Cuで
あると、熱伝導性が高いことから、冷却効果が高く、溶
湯の急冷に適している。冷却効果を向上させるために
は、内部に水冷構造を設けることが望ましい。図3と図
4において、るつぼ23内で溶解された溶融金属は、下
端部の溶湯ノズル22から冷却ロール21の表面に向け
て噴出される。るつぼ23の上部は、供給管27を介し
てArガスなどのガス供給源28に接続されると共に、
供給管27には、圧力調整弁29と電磁弁30とが組み
込まれ、供給管27において圧力調整弁29と電磁弁3
0との間には圧力計31が組み込まれている。また、供
給管27には補助管32が並列的に接続され、補助管3
2には圧力調整弁33、流量調整弁34、流量計35が
組み込まれている。したがって、ガス供給源28からる
つぼ23内にArガスなどのガスを供給して溶湯ノズル
22から溶湯を冷却ロール21に噴出できるように構成
されている。 【0040】この例の金属薄帯製造時には、冷却ロール
21を高速で回転させつつ、その頂部付近、もしくは、
頂部よりやや前方に近接配置したノズル22から溶湯を
噴出することにより、冷却ロール21の表面で合金溶湯
を急速冷却して固化させつつ冷却ロール21の回転方向
に帯状の薄帯となして引き出すことができる。また、図
3及び図4に示すように、冷却ロール21の回転方向前
下方には、薄帯誘導板70と図示略のスクレイパーが備
えられている。冷却ロール21の冷却面において形成さ
れた金属薄帯は、スクレイパーにより冷却ロール21か
ら剥離されて薄帯誘導板70側に案内され、更に薄帯通
過口641を通過して金属薄帯製造装置の外部に放出さ
れる。 【0041】不活性ガスの供給は、溶湯ノズル22の先
端部を基準として後方側、前方側のいずれか一方、また
は両方から行うことができる。後方側及び前方側からそ
れぞれ2系統のガスフローを供給することが望ましい。 【0042】図3と図4において、第1のガスフローノ
ズル51は、溶湯ノズル22を基準として後方側に配置
される上述の2系統のガスフロー供給を行うための手段
のうちの1つであり、この第1のガスフローノズル51
は、冷却ロール21の後方のほぼ接線方向から溶湯ノズ
ル22の先端近傍(以下、パドル側)にガスをフローす
るためのものである。第2のガスフローノズル52は、
上述の2系統のガスフロー供給を行うための手段のうち
のもう1つであり、第1のガスフローノズル51から供
給されたガスフローを大気と遮断して大気が巻き込まれ
るのを防止するガスフローを供給するために、この例で
は溶湯ノズル22と第1のガスフローノズル51との間
に設置されている。 【0043】第3のガスフローノズル53は、溶湯ノズ
ル22を基準として前方側に配置される上述の2系統の
ガスフロー供給を行うための手段のうちの1つであり、
この第3のガスフローノズル53は、冷却ロール21の
回転方向前方からの大気の巻き込みを防止することを目
的とするものである。 【0044】第4のガスフローノズル54は、溶湯ノズ
ル2の先端を囲むように設置されてガスフロー供給を行
うための手段である。この第4のガスフローノズル54
は、溶湯ノズル2の先端を囲むようにガスをフローする
ためのものである。そして、第4のガスフローノズル5
4は、例えば、外径6mmのパイプを外径57mm内径
45mmの環状に形成してなる環状パイプからなるもの
である。第4のガスフローノズル54には、その外周位
置と内周位置との中心の位置よりも若干内側の位置に、
例えば外径1.5mmの多数の孔が3.5mmのピッチで
環状に設けられている。 【0045】以上の第1〜第4のガスフローノズル51
〜54を単独で用いることは勿論、複数を組み合わせて
使用することができる。ただし、溶湯ノズル22の噴射
口側の酸素低減効果は第1および第2のガスフローノズ
ル51、52が大きい。以上の各ガスフローノズル51
〜54には、図4の第1のガスフローノズル51につい
て例示するように、圧力調整弁36が接続された接続管
37を介してガス供給源38に接続される。 【0046】この例の製造装置を用いて合金薄帯を製造
するには、冷却ロール21を回転する前からガスフロー
ノズル51〜54により不活性ガスを供給することが望
ましい。これは、冷却ロール回転後に不活性ガスを供給
する場合に比べて、冷却ロール回転前からガスフローを
行った方が、溶湯ノズル噴射口周囲の酸素濃度の低下が
速くなるからである。したがって、溶湯ノズル噴射口近
傍雰囲気の酸素濃度を測定し、所定の酸素濃度に達した
後に冷却ロール21の回転を行うようにすれば生産効率
上望ましい。この例の合金薄帯の製造方法に用いる不活
性ガスとして、N2、He、Ar、Kr、XeおよびR
nのうちの1種または2種以上のガスから適宜選択使用
されるが、ArガスN2ガスが最も望ましい。 【0047】この例の製造装置のロール外周大気遮断手
段60は、冷却ロール21の回転方向前方の正面に設け
られたロール正面大気遮蔽板64と、冷却ロール21の
回転方向前方の両側面に冷却ロール1を挟むように設け
られ、ロール正面大気遮蔽板64と当接する一対のロー
ル前方大気遮蔽板63と、冷却ロール21の回転方向前
方の上面に設けられてロール前方大気遮蔽板63の上端
縁と当接するロール上方大気遮断板62と、冷却ロール
21の回転方向後方に設けられて冷却ロール21の冷却
面と接するロール表面大気遮断板61とを少なくとも具
備してなるものである。図3と図4に示すように、ロー
ル表面大気遮断板61は、鋭角の先端部を有する板状構
造を有し、その先端部を冷却ロール21の表面に接触す
るか近接配置するよう配置されていて、冷却ロール21
を高速で回転する際に冷却ロール21の表面に付着して
溶湯ノズル22の噴射口側に巻き込まれようとする大気
を掻き取るようにして遮断する。 【0048】図3に示すように、ロール前方大気遮断板
63は、冷却ロール1の両側面前方からの大気の巻き込
みを遮断することを目的として設置するものである。前
記ロール正面大気遮断板64は、冷却ロール1の冷却面
に対向する前方からの大気の巻き込みを遮断することを
目的として設置するものであり、本例においては前記ロ
ール前方大気遮断板63の前端および略中央部の2箇所
に設置しているが、必要に応じて1ヶ所でも3ヶ所以上
設けても良い。この場合、溶湯ノズル2近傍の雰囲気の
酸素濃度を更に低減させることが期待できる。なお、ロ
ール正面大気遮断板64の中央部には、薄帯通過口64
1が設けられており、薄帯製造時には、この薄帯通過口
641を薄帯が通過する。 【0049】この例の装置を用いて大気中において不活
性ガスフローを行いながら、溶湯ノズル22の噴射口側
の酸素を低減し、合金溶湯が急冷される際の酸化を防止
しながら製造することで、酸化劣化を生じないようにし
ながら目的の組成の合金薄帯を得ることができ、この合
金薄帯を先の実施形態の場合と同様に打ち抜くか、トロ
イダル巻きして加工することで、先の実施形態の場合と
同様に磁心を製造することができる。図3と図4に示す
装置を用いて前述の組成の軟磁性合金薄帯を製造する場
合、第1ガスフロー供給手段による不活性ガスの供給条
件としては、流量200〜1800l/min.の範囲、例え
ば、1760l/min.の条件下で行うことが好ましい。そ
れは、流量が200l/min未満では、溶湯ノズル2近傍
雰囲気の酸素量低減に効果がなく、一方、1800l/mi
nを超えても、ガスフローによる周囲からの大気の巻き
込みが原因となり、酸素濃度低減効果が減じてしまい、
供給量に見合う効果が望めないからである。その場合、
第1のガスフローノズル51からのガスフローである第
1のガスフローは流量330〜530l/min、第2のガ
スフローノズル52からのガスフローである第2のガス
フローは流量180〜380l/min、第3のガスフロー
ノズル53からのガスフローである第3のガスフローは
流量150〜350l/min、第4のガスフローノズル5
4からのガスフローである第4のガスフローは流量20
0〜400l/minとすることが望ましい。 【0050】第1〜第4のガスフローのより望ましい範
囲は、各々、第1のガスフロー;流量380〜480l/
min、最も好ましくは430l/min、第2のガスフロー;
流量230〜330l/min、最も好ましくは280l/mi
n、第3のガスフロー;流量150〜350l/min、最も
好ましくは250l/min、第4のガスフロー;流量20
0〜400l/minの各流速である。 【0051】図3と図4に示した合金薄帯の製造装置を
用いて高透磁率かつ高飽和磁束密度の軟磁性合金を製造
するには、上述の合金薄帯製造装置を室温程度の大気雰
囲気中に設置し、溶湯ノズル(溶湯射出用ノズル)22
の少なくとも溶湯吹き出し部先端部分に第1〜第4のガ
スフローノズル51〜54からそれぞれ不活性ガスをフ
ローしつつ、上記のいずれかで示される組成式を示す合
金溶湯を溶湯ノズル22から冷却ロール21の冷却面に
射出して急冷し、非晶質相を主体とする合金薄帯を得
る。 【0052】この合金薄帯を得たならば、先の例の場合
と同様に構造緩和熱処理を施し、必要な幅に裁断して磁
心形状に加工し、加工した状態のままで、あるいは、ギ
ャップ付きの場合は必要に応じて切込み部を形成してギ
ャップ付きの磁心とすることで目的の磁心を得ることが
できる。まず、合金薄帯を構成する合金の結晶化温度よ
りも低い温度に加熱する構造緩和を引き起こす加熱処理
を施す合金薄帯に施す。この場合の構造緩和熱処理は、
先の例の場合と同等の条件で良い。即ち、100℃以上
の温度であって、前述した如く結晶化温度よりも50℃
程度低い温度にて構造緩和熱処理を行う。 【0053】この構造緩和を引き起こす熱処理が終了し
たならば、この合金薄帯を治具等のに仮巻取した後、切
断機械で目的の幅に裁断する。目的の幅とは、製造する
べき磁心の形状に合わせた幅であり、例えば、高さ3m
mのトロイダルコアを製造する場合には、幅3mmに合
金薄帯を裁断する。この裁断の際に、前記構造緩和を引
き起こす熱処理を予め施していると、切断機械の切断刃
の寿命を長くすることができる。即ち、合金薄帯に構造
緩和を引き起こす熱処理を施すことで、即ち、微結晶を
析出させる熱処理温度よりも低い温度範囲で行う構造緩
和を引き起こすための熱処理を施すことで、材料のねば
さを減少させ、材料として適度に脆くすることで加工工
具の摩擦を減少させる。これにより加工性、例えば、切
断刃の寿命を延ばすことができる。また、打ち抜き加工
を行ってドーナツ円盤状に打ち抜き加工を施し、打ち抜
いた円盤を複数枚積層して磁心とする場合は、打ち抜き
加工する際のパンチの寿命を長くすることができる。 【0054】次に、目的の幅に裁断した薄帯をトロイダ
ル形状になるように、例えば、図2Aに示すように巻回
する。具体的には軸等の棒状体に薄帯を巻き付け、目的
の内径と外径を得たならば、終端を切断してスポット溶
接により終端を固定してトロイダル形状とする。次に、
巻き取ったコアを真空中で熱処理し、非晶質相中に微結
晶を析出させるための結晶化の熱処理を行う。この結晶
化のための熱処理は、合金組成に応じて異なるが、45
0℃〜750℃の範囲である。この熱処理により、上記
合金薄帯の非晶質相の中の一部が結晶化し、平均粒径1
00nm以下の微細なbcc構造の結晶粒(主にFeの
結晶粒)が組織の少なくとも50%以上析出し、非晶質
相と微細結晶層との混相組織が形成され、目的とする軟
磁性合金薄帯が得られる。 【0055】熱処理により平均結晶粒径100nm以下
の微細なbcc構造の結晶粒からなる微細結晶相が組織
の少なくとも50%以上析出したものは、急冷状態の非
晶質合金薄帯では非晶質相を主体とする組織となってお
り、これを加熱すると、ある温度以上で平均結晶粒径が
100nm以下のFeを主成分とする体心立方構造の結
晶粒からなる微細結晶相が析出するからである。このb
cc構造を有するFeの結晶粒からなる微細結晶相が析
出する温度は、合金の組成によるが450〜750℃
(723K〜1023K)程度である。また、このFe
の微細結晶相が析出する温度よりも高い温度では、Fe
3B、あるいは 合金にZrが含まれる場合にはFe3
r等の軟磁気特性を悪化させる化合物相が析出する。こ
のような 化合物相が析出する温度は、合金の組成によ
るが740〜810℃(1013K〜1083K)程度
である。 【0056】従って本発明において、非晶質相を主体と
する合金の薄帯を熱処理する際の保持温度(熱処理温
度)は450℃〜810℃(753K〜1083K)の
範囲において、体心立方構造を有するFeの結晶粒を主
成分とする微細結晶相が好ましく析出し、かつ、上記化
合物相が異常に多く析出しないように、合金の組成に応
じて好ましく設定される。なお、前述の化合物相が適切
な量析出するならば、むしろ軟磁気特性を向上させるこ
とができるので、これらの化合物相が析出できるように
熱処理することも条件によっては必要となる。 【0057】本実施形態の軟磁性合金の製造方法によれ
ば、上記の各組成系の中でも不活性ガスフロー中におい
て製造を行う場合において、Nbを含有する組成系の合
金とすれば、この合金溶湯を大気雰囲気中で単ロール法
などを用いて急冷しても材料が酸化することがなく、材
料が酸化することに起因する溶融ノズル詰まりを防止で
き、また、溶融ノズル詰まりを生じないので、冷却ロー
ル21やるつぼ23を不活性ガス雰囲気としたチャンバ
内に配置にする必要がなく、チャンバ内を不活性ガス雰
囲気に保持するための付帯設備を設けなくても済み、軟
磁性合金の製造コストを低減できる。 【0058】また、上述したように上記組成において特
にNbを含有する合金溶湯は、大気雰囲気中で急冷して
も材料が酸化しないので、冷却ロール21やるつぼ23
が配置されたチャンバを大気雰囲気に開放したままの状
態で、あるいは冷却ロール21やるつぼ23をチャンバ
内に配置することなく、上記合金溶湯を急冷して非晶質
相を主体とする合金を連続的に製造することが可能で、
不活性ガス雰囲気とされたチャンバ内で合金溶湯を急冷
する場合のような1チャージ毎に不活性ガス雰囲気とさ
れていたチャンバを開放したり、再度密閉して不活性ガ
ス雰囲気に置換するという煩雑な作業を行わなくても済
み、作業性を向上でき、軟磁性合金を大量生産する場合
に好ましい。 【0059】 【実施例】「実施例1」以下の実施例に示す軟磁性合金
試料は、Fe84Nb6.59.5の組成を有するものであ
り、この組成の薄帯試料を図1に示す装置を用いた片ロ
ール液体急冷法により作成した。即ち、1つの回転して
いる銅製の冷却ロール上におかれたノズルより所定成分
の溶融金属をArガスの圧力により石英製のノズルを介
して前記冷却ロール上に噴出させ、急冷して薄帯を得
た。以上のように作成した薄帯の幅は約15mmであり、
厚さは約20μmであった。また、急冷したままの薄帯
は非晶質を主体とする合金からなることをX線回折によ
り確認することができた。次にこの薄帯を幅3mmに切
断して目的の幅に調整し、トロイダル巻きして内径15
mm、外径25mmのトロイダルコアを形成し、トロイ
ダルコアを構成する薄帯の端部をスポット溶接して固定
した。次にトロイダルコアを構成する薄帯の周囲を囲む
ようにエポキシ樹脂を含浸させ、トロイダルコアを構成
する薄帯の固定を行い、次いでトロイダルコアの端部に
切込を入れた後に砥石加工を行って幅0.2〜0.8mm
のギャップを形成し、ギャップ付きのトロイダルコアを
製造した。 【0060】以下の表1に、上記の如くトロイダルコア
を製造した場合、ギャップ部分を砥石で研磨して仕上げ
る際に、砥石交換までの回数を測定した結果を示す。砥
石交換の目安は、加工速度が急に低下した時点であり、
この状態で研磨を続行しても砥石の摩耗により加工寸法
を精度良く出すことができないものである。 【0061】 「表1」 熱処理温度 熱処理時間 ギャップ 実寸 摩耗による砥石 狙い寸法 使用限界 無し 無し 0.80mm 0.84m 100回 0.60mm 0.64mm 70回 0.40mm 0.44mm 30回 0.20mm 0.24mm 10回 100℃ 10分 0.80mm 0.84mm 100回 0.60mm 0.63mm 70回 0.40mm 0.43mm 30回 0.20mm 0.24mm 10回 200℃ 10分 0.80mm 0.83mm 300回 0.60mm 0.63mm 100回 0.40mm 0.43mm 80回 0.20mm 0.24mm 30回 300℃ 10分 0.80mm 0.83mm 700回 0.60mm 0.62mm 500回 0.40mm 0.42mm 200回 0.20mm 0.22mm 100回 500℃ 10分 0.80mm 0.82mm 1100回 0.60mm 0.62mm 1000回 0.40mm 0.42mm 750回 0.20mm 0.22mm 500回 600℃ 10分 0.80mm 0.81mm 1200回 0.60mm 0.61mm 1000回 0.40mm 0.41mm 800回 0.20mm 0.21mm 600回 【0062】以上の各種試料に対し、上述のギャップ加
工後に各々650℃に加熱後に徐冷するアニール処理を
施し、結晶化することでトロイダルコア型の磁心を得る
ことができた。 【0063】表1に示す結果から、結晶化のための熱処
理以前に、構造緩和を引き起こすための熱処理を施した
試料にあっては、砥石使用限界が大幅に伸長することが
わかる。これは、構造緩和熱処理なしの試料に対し、1
00℃、200℃、300℃、500℃、600℃で処
理した試料の方が砥石使用限界が大幅に伸びており、特
に200℃以上で処理した試料は、砥石使用限界を延ば
す効果が顕著であることが明らかである。また、ギャッ
プの寸法精度も向上していることがわかる。 【0064】「実施例2」次に、Fe84Nb6.59.5
る組成と、Fe84Nb610なる組成と、Fe84Nb6.4
9.5La0.1なる組成の合金薄帯試料を先の実施例1と
同等の方法で作成し、これらの薄帯試料をロータースピ
ードミルで粉砕する試験を行い、試験後に得られた粉末
の粒度分布を測定した。また、ロータースピードミルで
粉砕する前に、構造緩和を引き起こす熱処理を100
℃、200℃、300℃、500℃、600℃で行った
場合に得られる粉砕物の粒度分布も測定した。これらの
結果を以下の表2〜表4に示す。 「表2」 熱処理温度 時間 150μm 100μm 50μm 25μm 25μm 以上 〜150μm 〜100μm 〜50μm 以下 無し 無し 85% 10% 4% 1% 0% 100℃ 10分 82% 11% 5% 1% 0% 200℃ 10分 75% 19% 6% 1% 0% 300℃ 10分 30% 50% 15% 4% 1% 500℃ 10分 5% 30% 40% 20% 5% 600℃ 10分 1% 11% 35% 40% 13% 試料組成 Fe84Nb6.59.5 【0065】 「表3」 熱処理温度 時間 150μm 100μm 50μm 25μm 25μm 以上 〜150μm 〜100μm 〜50μm 以下 無し 無し 82% 11% 5% 2% 0% 100℃ 10分 83% 11% 5% 1% 0% 200℃ 10分 70% 20% 8 2% 0% 300℃ 10分 27% 49% 17% 6% 1% 500℃ 10分 4% 29% 38% 22% 7% 600℃ 10分 1% 8% 24% 52% 15% 試料組成 Fe84Nb610 【0066】 「表4」 熱処理温度 時間 150μm 100μm 50μm 25μm 25μm 以上 〜150μm 〜100μm 〜50μm 以下 無し 無し 60% 18% 15% 5% 2% 100℃ 10分 50% 23% 19% 6% 2% 200℃ 10分 45% 25% 20% 7% 2% 300℃ 10分 21% 45% 21% 10% 3% 500℃ 10分 1% 10% 42% 32% 15% 600℃ 10分 0% 5% 35% 42% 18% 試料組成 Fe84Nb6.49.5La0.1 【0067】前記表2〜表4において、粒径を示す数値
の単位は1μm=1×10-6mであり、150以上の欄
(粒径150×10-6m=150μm以上の粒径の欄)
あるいは、粒径100〜150×10-6mの欄の割合が
高いことは、粒径の大きなものが多く、微細粉末化が円
滑になされていないことを示し、50〜100×10 -6
m(50〜100μm)の欄、25〜50×10-6
(25〜50μm)の欄の割合が高いことは微細粉末化
が若干進行したことを意味し、25×10-6m(25μ
m)以下の欄の割合が高いことは、十分に微細粉末化で
きたことを意味する。 【0068】表2から表4に示す測定結果から、本発明
に係る構造緩和を引き起こす熱処理を施すならば、薄帯
を粉砕する際に十分に微細化が可能であり、構造緩和を
引き起こす熱処理を施して微細化することで薄帯から微
細粉末を作成することが確実にできるので、薄帯を微細
化した粉末を用いて加圧焼結するなどの方法を採用する
ことで成形体としての磁心を製造する場合、圧密度の高
い、空隙の少ない成形体を得ることができることを意味
する。 【0069】「実施例3」Fe84Nb6.59.5なる組成
を有するFe基合金(結晶化開始温度488℃)を用
い、この合金溶湯を先の実施例1の条件で急冷して薄帯
を得た。この薄帯に対し、構造緩和を引き起こす熱処理
を施した場合(熱処理温度100℃、200℃、300
℃)と、施さない場合(無し)のそれぞれの試料につい
て、パンチ(ダイス切断刃)により打ち抜き加工した場
合のパンチの耐久性を試験した。パンチの耐久性の評価
には、パンチ回数とパンチ後の薄帯にバリを発生するか
否かを調査するものとし、薄帯にバリを発生しなかった
試料の場合は〇印、1/10回以下の割合でバリを発生
したものは△印、毎回バリを発生したものは×印を以下
の表5にダイス切断刃の状況として、処理したパンチ回
数と併せて示す。「表5」 【0070】 熱処理温度 熱処理時間 パンチ回数 ダイス切断刃の状況 無し 無し 10000 〇 無し 無し 50000 △ 無し 無し 100000 × 無し 無し 500000 × 100℃ 10分 10000 〇 100℃ 10分 50000 〇 100℃ 10分 100000 △ 100℃ 10分 500000 × 200℃ 10分 10000 〇 200℃ 10分 50000 〇 200℃ 10分 100000 〇 200℃ 10分 500000 〇 300℃ 10分 10000 〇 300℃ 10分 50000 〇 300℃ 10分 100000 〇 300℃ 10分 500000 △ 500℃ 10分 1 リボン破壊 【0071】表5の結果から構造緩和を引き起こすため
の熱処理は、100℃以上の温度で行う熱処理で起きて
いるものと考えられる。即ち、100℃以上300℃未
満で熱処理した薄帯をダイス切断刃で打ち抜き加工した
場合、構造緩和を引き起こす熱処理を行っていない試料
(熱処理温度及び熱処理時間無しの試料)に比較してバ
リの発生が少なく、ダイスの耐久性が大幅に向上した。
構造緩和とは、得られた薄帯を適切な温度に熱処理する
ことで、硬度が加工に好ましい範囲で向上し、適度に脆
くなり、パンチで加工する際にバリの発生を伴うことな
く打ち抜き加工ができるものである。また、500℃で
熱処理したものは結晶化を行った薄帯試料であるが、こ
の結晶化した薄帯試料にあっては打ち抜き加工時に薄帯
試料が破壊されて打ち抜き加工不能であった。これは、
この種の合金が結晶化後は極めて脆くなるので、脆さの
面で打ち抜きに耐えられなかったためであると考えらえ
る。逆に、熱処理を施さない薄帯試料は熱処理しない薄
帯試料よりも軟質であり、ねばいので、打ち抜きの際に
だれ易く、バリが出易いものと思われる。 【0072】表5に示す試験例から、結晶化しない温度
範囲であって、構造緩和を引き起こす温度範囲で熱処理
を行うことで、打ち抜き性に優れた状態とすることがで
きることが判明した。なお、これらの組成系の試料にお
いて結晶化開始温度が488℃であるので、それより5
0℃低い温度が438℃となるので、438℃以下の温
度で構造緩和のための熱処理を行うこととなる。 【0073】「実施例4」先の実施例3と同等のダイス
切断刃による打ち抜き試験を種々の組成の薄帯試料につ
いて行い、結果を以下の表6に示す。。 【0074】 「表6」 薄帯試料の組成 熱処理温度 パンチ回数 切断刃 (回) の状況 Fe84Nb79 300℃ 100000 〇 Fe90Zr73 300℃ 100000 〇 Fe84Nb6.59.5 300℃ 100000 〇 Fe83.5Nb6.510 300℃ 100000 〇 Fe84Nb610 300℃ 100000 〇 Fe83Nb79Cu1 300℃ 100000 〇 Fe83Nb6.59.5Cu1 300℃ 100000 〇 Fe83.5Nb610Cu1 300℃ 100000 〇 Fe84Nb3.5Zr3.58Cu1 300℃、 100000 〇 Fe86Nb3.25Zr3.256.5Cu1 300℃、 100000 〇 上述の結果から、切断刃の状況については10万回のパ
ンチ回数(打ち抜き回数)においてもバリを発生するこ
となく打ち抜き加工ができたので、加工性について何ら
問題を生じなかった。 【0075】「実施例5」図5は、Fe84-x-yNb6.5
9.5GaxCuyなる組成(ただし、x=0、1、y=
0、0.1、0.5)の薄帯試料について、液体急冷によ
り薄帯製造後、300℃で熱処理したものを円環状に打
ち抜き、積層した後、更に図5に示す温度でアニール処
理(熱処理)した場合に得られる透磁率(μ’=1kH
z)と保磁力(Hc)を示すものである。構造緩和を引
き起こす温度300℃にてアニール処理した後、bcc
Feが析出する温度以上で熱処理した試料は、3000
0以上の高い透磁率と、5.6A/m以下の低い保磁力
が得られ、良好な軟磁気特性が得られていることが明ら
かである。 【0076】「実施例6」得られる合金薄帯中のFeが
83.0〜84.0原子%と、Nbが6.0〜6.5原子%
と、Bが9.5〜10.0原子%、元素M’としてPd又
はAu又はPt又はCuが0〜1.5原子%と、元素Z
としてLa又はNd又はY又はCeが0原子%〜0.0
5原子%の範囲になるように原料を調整し、それをN2
ガス雰囲気中で高周波溶解し、溶けた原料を鋳型に流し
込み母合金を得た。室温で、1.01325×105パス
カルの大気雰囲気中において、図3、図4に示す合金薄
帯製造装置のるつぼ23内で上記母合金を高周波溶解し
た合金溶湯を溶湯吹き出し用のノズル先端部より高速回
転している銅ロール21の冷却面に吹き出させて急冷す
る液体急冷法を用い、各種の合金薄帯を得た。なお、第
1〜第4のガスフローノズル51、52、53、54
は、本実験例において作動させず、ガスフローなしで合
金薄帯の作製を行った。 【0077】次に、得られた各種の合金薄帯に対し、3
00℃で10分間、構造緩和熱処理を施した後に幅3m
mに裁断し、この薄帯から内径15mm、外形25mm
のトロイダルコアを作成し、続いて昇温速度180゜C
/分(180K/分)、熱処理温度(アニール温度)6
50゜C(923K)、この熱処理温度での保持時間は
5分で熱処理を行い、次いで幅1mmの切込部を形成し
てギャップ付きのトロイダルコア磁心を得ることができ
た。このトロイダルコア磁心を製造する際、先の実施例
1の場合と同様に摩耗による砥石使用限界について試験
したが、実施例1の場合と同様に、構造緩和熱処理を施
したものが砥石使用限界が向上するという全く同等の試
験結果が得られた。次に、以下の表7、表8に、先の各
トロイダルコアの製造に用いた合金薄帯の磁気特性につ
いて測定した結果を示す(サンプルNo.1〜No.4
0)。 【0078】 【表7】【0079】 【表8】 【0080】表7、表8に、得られた各種の合金薄帯試
料(サンプルNo.1〜No.40)の1kHzにおける
実効透磁率(μ’)、保磁力(Hc)、飽和磁束密度
(Bs)について測定した結果を示す。ここでの実効透
磁率の測定は、インピーダンスアナライザーを用い、測
定条件は5mOe(400mA/m)、1kHzとし
た。保磁力及び飽和磁束密度は、直流B-Hループトレ
ーサを用いて測定した。 【0081】表7、表8に示した結果から、本発明組成
範囲内においても、Feが83.5〜84原子%と、N
bが6.0〜6.5原子%と、Bが9.5〜10.0原子%
含まれるサンプルNo.1〜3の合金薄帯は、大気雰囲気
中で製造しても、いずれも1kHzにおける実効透磁率
が31500以上、保磁力が5.04A/m以下、飽和
磁束密度が1.55T以上得られており、軟磁性合金と
して優れた磁気特性を有していることが判明した。この
ことから、Fe83.5〜84Nb6.0〜6.59.5〜1 0.0の範
囲の組成であれば、大気中において製造可能であり、し
かも大気中において製造しても優れた軟磁気特性を示す
ことがわかる。 【0082】次に、Fe84Nb610なる組成の合金に
Fe置換で元素M’として、Cuを0.05原子%添加
したサンプルNo.16の合金薄帯は、大気雰囲気中で
製造しても、Fe84Nb610なる組成のサンプルNo.
1と同等の実効透磁率と飽和磁束密度が得られており、
また、保磁力についてはサンプルNo.1のもより低い
値が得られていることがわかる。また、Fe84Nb6
10なる組成の合金にFe置換で元素M’としてCuを
0.08〜1.0原子%添加したサンプルNo.17〜1
9の合金薄帯は、大気雰囲気中で製造しても、Fe84
610なる組成のサンプルNo.1のものより1kHz
における実効透磁率が高く、かつ低保磁力であり、ま
た、飽和磁束密度については、サンプルNo.1〜40
のいずれにおいても1.5T以上得られていることがわ
かる。以上のことから、Fe83.5〜84Nb6.0〜6.5
9.5〜10.0Cu0.05〜1.0の範囲の組成であれば、大気中
において製造可能であり、しかも優れた軟磁気特性が得
られることがわかる。 【0083】また、Fe84Nb610なる組成の合金
に、Fe置換で元素M’としてCuを0.05〜0.09
原子%添加し、更に、元素M’としてLa、Nd、Y、
Ceのいずれか1種を0.05原子%添加したサンプル
No.20〜23の合金薄帯は、大気雰囲気中で製造し
ても、Fe83.95Nb610Cu0.05なる組成のサンプル
No.12のものより実効透磁率が高く、保磁力が低
く、飽和磁束密度については1.55T以上得られてい
ることがわかる。このことから、Fe83.5〜84Nb6.0
〜6.59.5〜10.0M’0.05Cu0.05〜1.0の範囲の組成
であれば、大気中において製造可能であり、しかも優れ
た軟磁特性が得られることがわかる。 【0084】以上の結果からFe84Nb610なる組成
の合金にFe置換で元素M’としてCuを0.05〜1.
0原子%添加することにより、軟磁性合金としての磁気
特性を向上でき、また、Fe84Nb610なる組成の合
金にFe置換でCuを0.05〜0.09原子%の範囲で
添加したものに、さらに元素ZとしてLa、Nd、Y、
Ceのいずれか1種を0.05原子%添加するとより高
実効透磁率とすることができ、低保磁力とすることがで
きることがわかる。 【0085】また、Fe84Nb6.59.5なる組成の合金
に、Fe置換で元素M’としてCuを0.05〜0.9原
子%添加したサンプルNo.37〜40の合金薄帯は、
大気雰囲気中で製造しても、Fe84Nb6.59.5なる組
成のサンプルNo.24のものより1kHzにおける実
効透磁率が高く、かつ低保磁力であり、また、飽和磁束
密度についてはサンプルNo.24のものより若干低下
するものの、1.5T以上の飽和磁束密度が得られてい
ることがわかる。Fe84Nb6.59.5なる組成の合金
に、Fe置換でCuに代えてPd又はAu又はPtを
0.05〜1.0原子%添加したサンプルNo.25〜2
7とサンプルNo.29〜36の合金薄帯は、1kHz
における実効透磁率(μ’)が39500以上であり、
保磁力が5.2以下であり、また飽和磁束密度が1.51
T以上得られており、サンプルNo.37〜40の合金
薄帯と同等の軟磁気特性が得られていることがわかる。 【0086】また、Fe84Nb6.59.5なる組成の合金
に、Fe置換で元素M’としてPdを1.5原子%添加
したサンプルNo.28の合金薄帯は、1kHzにおけ
る実効透磁率は高いものの、飽和磁束密度が1.45T
と低くなっている。これに対してFe84Nb6.59.5
る組成の合金に、Fe置換で元素M’としてPdを0.
05〜1.0原子%添加したサンプルNo.25〜27
の合金薄帯は、1kHzにおける実効透磁率が4100
0以上であり、1.5T以上の飽和磁束密度が得られて
いることから、元素M’の上限値を1.0原子%とすれ
ば、高実効透磁率で、高飽和磁束密度とすることができ
る。 【0087】また、サンプルNo.4〜19と、サンプ
ルNo.25〜40において、元素M’としてのPd又
はAu又はPt又はCuの添加量が0.05〜0.08原
子%のものは、これらの元素の添加量が0.08原子%
を越えるものに比べて高い飽和磁束密度が得られ、実効
透磁率については31300以上とすることができるこ
とがわかる。これらのことから大気中において製造する
場合の元素M’のより好ましい添加量は、0.05原子
%〜0.08原子%の範囲とすることができると判明し
た。よって、本発明組成の中でも、Fe83.5〜84Nb
6.0〜6.59.5〜10.0M’0.05〜1.0Cu0.05〜1.0の範
囲の組成であれば、大気中において製造可能であること
がわかる。 【0088】次に、前述のNbを多く含有し、希土類元
素を含有させた組成系の試料のX線回折試験結果を図6
に示す。試料の作成には、Fe84Nb7-e9Nde
る組成(e=0〜0.4原子%)になるように原料を調整
し、それをN2ガス雰囲気中で高周波溶解し、溶解した
原料を鋳型に流し込み母合金を得た。ついで、N2ガス
雰囲気において、合金薄帯製造装置の溶湯ノズル内で上
記母合金を高周波溶解し、得られた合金溶湯を溶湯吹き
出し部先端部分より高速回転している銅ロールの冷却面
に射出して急冷する液体急冷法により合金薄帯を作製す
る際、以下の液体急冷条件1あるいは2に変更して各種
の合金薄帯を得た。これら合金薄帯の組成は、Fe84
6.859Nd0.15であった。なお、薄帯中のNd(微
量元素)はエネルギー分散型分光法(EDS)にて分析
したものである。以降、薄帯の組成中のNd量は、ED
Sで分析した結果のものである。 【0089】ここでの液体急冷条件1は、溶湯ノズルの
溶湯吹出部先端部分のギャップ幅0.2mm、射出温度
1190℃(1463K)、射出圧力39200Pa
(0.4kgf/cm2)、背圧−53200Pa(−4
0cmHg)、銅ロール外径20cm、ロール回転数3
600rpm、ロール周速度37.7m/sである。 【0090】液体急冷条件2は、溶湯ノズルの溶湯吹出
部先端部分のギャップ幅0.25mm、射出温度135
0℃(1623K)、射出圧力83300Pa(0.8
5kgf/cm2)、背圧−79800Pa(−60c
mHg)、銅ロール外径60cm、ロール回転数140
0rpm、ロール周速度44.0m/sとしたものであ
る。 【0091】次に、得られた各合金薄帯試料に昇温速度
180゜C/分(180K/分)、処理温度300℃で
保持時間10分の構造緩和熱処理を施した後、更に前述
と同じ昇温速度で結晶化熱処理温度650゜C(923
K)、この熱処理温度での保持時間は5分で熱処理を行
い、厚さ20μm、幅15mmの各種の合金薄帯試料を
得た。液体急冷条件1で得られたものが図6に示す合金
薄帯試料の測定結果であり、液体急冷条件2で得られた
ものが図6に示す合金薄帯試料の測定結果である。これ
らの合金薄帯試料の組成は、ともにFe84Nb6.859
Nd0.15であった。 【0092】図6に示す結果から明らかなように、液体
急冷条件2で製造した合金薄帯は、非晶質に特有のハロ
ーな回折図形と、体心立方晶のFeを主成分とするbc
c相(bcc-Fe)の(110)面のピークと、(2
00)面のピークが認められることから、非晶質相中に
bcc-Fe相が析出したものであることがわかる。こ
れに対して液体急冷条件1で製造した合金薄帯は、非晶
質に特有のハローな回折図形と、FeとBの化合物相に
独特の回折図形が認められ、また、体心立方晶に独特の
回折図形が僅かに認められることから、非晶質相中にF
3Bの結晶あるいはFe3.5Bの結晶が析出し、bcc
-Fe相が僅かに析出したものであることがわかる。こ
れらのことから急冷直後の合金薄帯は、組成が同じもの
であっても、液体急冷条件が異なれば、非晶質相中に析
出する結晶が異なることがわかる。 【0093】次に、各合金薄帯試料(熱処理後の合金薄
帯試料)の保磁力(Hc)と1kHzにおける実効透磁
率(μ)を測定した結果を図6に併せて示す。 【0094】図6に示した結果から液体急冷条件1の合
金薄帯試料は、液体急冷条件2の合金薄帯試料に比べて
実効透磁率が高く、保磁力が低いことがわかる。このこ
とから、急冷により非晶質相中にFe3BあるいはFe
3.5BのようにFeとBの化合物の結晶が析出した複相
組織の合金薄帯を熱処理した実施例の合金薄帯は、急冷
後にFeとBの化合物の結晶が非晶質相中に析出されて
いない合金薄帯を熱処理した合金薄帯試料に比べて軟磁
気特性が優れることがわかる。 【0095】Fe84Nb7-e9Ndeなる組成(e=0
〜0.4at%)になるように原料を調整し、それをN2
ガス雰囲気中で高周波溶解し、溶けた原料を鋳型に流し
込み母合金を得た。 【0096】ついで、N2ガス雰囲気において、合金薄
帯製造装置の溶湯ノズル内で上記母合金を高周波溶解
し、得られた合金溶湯を溶湯吹き出し部先端部分より高
速回転している銅ロールの冷却面に射出して急冷する液
体急冷法により合金薄帯を作製する際、図7に示す以下
の液体急冷条件3〜5に変更して各種の合金薄帯試料を
得た。これら合金薄帯試料の組成はFe84Nb6.929
Nd0.08であった。 【0097】ここでの液体急冷条件3は、溶湯ノズルの
溶湯吹き出し部先端部分のギャップ幅0.2mm、射出
温度1190℃(1463K)、射出圧力39200P
a(0.4kgf/cm2)、背圧−53200Pa(−
40cmHg)、銅ロール外径20cm、ロール回転数
3600rpm、ロール周速度37.7m/sとしたも
のである。 【0098】液体急冷条件4は、溶湯ノズルの溶湯吹き
出し部先端部分のギャップ幅0.25mm、射出温度1
375℃(1468K)、射出圧力83300Pa
(0.85kgf/cm2)、背圧−79800Pa(−
60cmHg)、銅ロール外径60cm、ロール回転数
1400rpm、ロール周速度44.0m/sとしたも
のである。 【0099】液体急冷条件5は、溶湯ノズルの溶湯吹き
出し部先端部分のギャップ幅0.25mm、射出温度1
350℃(1623K)、射出圧力83300Pa
(0.85kgf/cm2)、背圧−79800Pa(−
60cmHg)、銅ロール外径60cm、ロール回転数
1400rpm、ロール周速度44.0m/sとしたも
のである。 【0100】次に得られた各種の合金薄帯試料に、昇温
速度180゜C/分(180K/分)、熱処理温度30
0℃で10分間構造緩和熱処理し、次いで熱処理温度6
50゜C(923K)、この熱処理温度での保持時間は
5分で結晶化熱処理を行い、厚さ20μm、幅15mm
の各種の合金薄帯試料を得た。図7に示す液体急冷条件
3、4、5でそれぞれ合金薄帯試料を得た。これら合金
薄帯の組成は、Fe84Nb6.929Nd0.08 であった。 【0101】図7に、上記の各液体急冷条件3、4、5
で得られた急冷直後のFe84Nb6. 929Nd0.08なる
組成の合金薄帯試料(熱処理前の合金薄帯試料)のX線
回折測定の結果を示す。図7に示す結果から明らかなよ
うに液体急冷条件4、5で製造した合金薄帯示試料は、
非晶質に特有のハローな回折図形と、体心立方晶のFe
を主成分とするbcc相(bcc-Fe)の(110)
面のピークと、(200)面のピークが認められること
から、非晶質相中にbcc-Fe相が析出したものであ
ることがわかる。 【0102】これに対して液体急冷条件3で製造した合
金薄帯試料は、非晶質に特有のハローな回折図形と、F
eとBの化合物相に独特の回折図形が認められ、また、
体心立方晶に独特の回折図形が僅かに認められることか
ら、非晶質相中にFe3Bの結晶あるいはFe3.5Bの結
晶が析出したものであることがわかる。これらのことか
ら急冷直後の合金薄帯は、組成が同じものであっても、
液体急冷条件が異なれば、非晶質相中に析出する結晶が
異なることがわかり、磁心としてより好ましい特性を得
るためには、液体急冷条件を調節して非晶質相中にFe
3Bの結晶あるいはFe3.5Bの結晶を析出させた方がよ
り有利であることがわかった。 【0103】次に、先の合金薄帯試料(熱処理後の合金
薄帯試料)の保磁力(Hc)と1kHzにおける実効透
磁率(μ)を測定した結果を図7に合わせて示す。図7
に示した結果から液体急冷条件3の合金薄帯試料は、液
体急冷条件4、5の合金薄帯試料に比べて実効透磁率が
高く、保磁力が低いことがわかる。このことから急冷に
より非晶質相中にFe3BあるいはFe3.5BのようにF
eとBの化合物の結晶が析出した複相組織の合金薄帯を
熱処理した液体急冷条件3の合金薄帯試料は、急冷後に
FeとBの化合物の結晶が非晶質相中に析出していない
合金薄帯試料を熱処理した液体急冷条件4、5の合金薄
帯に比べて軟磁気特性が優れることがわかる。また、液
体急冷条件3の合金薄帯試料は、Ndの添加量を減少さ
せたことにより、液体急冷条件1の合金薄帯より1kH
zにおける実効透磁率を高くでき、保磁力を低くできる
ことがわかる。 【0104】次に、Fe84Nb6.90.19(R=Y,
La,Ce,Nd,Sm,Gd,Dy)なる組成(投入
組成)になるように調製した原料、または、Fe84Nb
6.80.29(R=La,Ce,Pr,Nd,Sm,G
d)なる組成になるように調製した原料をN2ガス雰囲
気中で高周波溶解し、溶けた原料を鋳型に流し込み母合
金を得た。 【0105】ついで、N2ガス雰囲気において、合金薄
帯製造装置の溶湯ノズル内で上記母合金を高周波溶解
し、得られた合金溶湯を溶湯吹き出し部先端部分より高
速回転している銅ロールの冷却面に射出して急冷する液
体急冷法により合金薄帯を作製する際、下記表9に示す
液体急冷条件で作製することにより合金薄帯試料(Fe
84Nb6.90.19(R=Y,La,Ce,Nd,S
m,Gd,Dy)なる組成、Fe84Nb6.80.2
9(R=La,Ce,Pr,Nd,Gd)なる組成の合
金薄帯試料を得た。これらの合金薄帯試料については、
EDSにより分析をしておらず、投入組成で記してい
る。なお、ここで各種の合金溶湯を急冷する際は、溶湯
ノズルの溶湯吹き出し部先端部分のギャップ幅0.2m
m、射出圧力39200Pa(0.4kgf/cm2)、
背圧−53200Pa(−40cmHg)とし、銅ロー
ルとしては外径20cmのものを用いた。 【0106】 【表9】 【0107】 【表10】【0108】表10中、amor.は非晶質相を示し、
bcc(200)はbcc-Fe相の(200)面を示
す。次に得られた各種の合金薄帯に、昇温速度180゜
C/分(180K/分)、300℃で10分間の構造緩
和熱処理を施した後、更に表10に示す結晶化熱処理温
度Taまでの昇温速度180゜C/分(180K/
分)、上記熱処理温度Taでの保持時間5分で熱処理を
行い、厚さ20μm、幅15mmの各種の合金薄帯試料
を得た。 【0109】また、比較のためにFe84Nb79なる組
成になるように調製した原料を用いる以外は、先の場合
と同様の液体急冷条件で合金薄帯を得、結晶化熱処理温
度Taの675℃(948K)までの昇温速度180゜
C/分(180K/分)、上記熱処理温度Taでの保持
時間5分で結晶化熱処理を行い、厚さ20μm、幅15
mmの合金薄帯(Fe84Nb79なる組成)を得た。 【0110】図8に、上記の各液体急冷条件で得られた
急冷直後のFe84Nb6.90.19(R=Y,La,C
e,Nd,Sm)なる組成の合金薄帯試料(熱処理前の
合金薄帯試料)、Fe84Nb6.80.29(R=Pr)
なる組成の合金薄帯試料(熱処理前の合金薄帯試料)
と、Fe84Nb79なる組成の合金薄帯試料(熱処理
前)のX線回折測定の結果を示す。また、表10に、F
84Nb79なる組成の合金薄帯試料およびFe84Nb
79なる組成の合金にNb置換でYまたは希土類元素
(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Dy)を添加
した各種合金薄帯試料の組成と、急冷直後の合金薄帯試
料の構造をX線回折により調べた結果を示す。 【0111】図8から明らかなように、Fe84Nb79
なる組成の急冷直後の合金薄帯試料は、非晶質に特有の
ハローな回折図形と、体心立方晶のFeを主成分とする
bcc相(bcc-Fe)の(200)面のピークが認
められることから、非晶質相中にbcc-Fe相が析出
したものであることがわかる。これに対してFe84Nb
79なる組成の合金にNb置換でYまたは希土類元素
(La,Ce,Pr,Nd,Sm)を添加した急冷直後
の各種合金薄帯試料は、非晶質に特有のハローな回折図
形と、FeとBの化合物相に独特の回折図形(47.5
°付近から57.5°付近にかけてできたピーク形状が
左右非対称)が認められ、非晶質相中にFe3Bの結
晶、あるいはFe3.5Bの結晶が析出したものであるこ
とがわかる。また、Fe84Nb6。9Sm0.19の組成の
急冷直後の合金薄帯試料は、体心立方晶に独特の回折図
形が僅かに認められ、非晶質相中にFe3Bの結晶ある
いはFe3.5Bの結晶以外にbcc-Fe相も析出してい
ることがわかる。 【0112】さらに、表10から明らかなようにFe84
Nb79なる組成の急冷直後の合金薄帯試料は、Fe3
Bの結晶の析出は認められないが、Fe84Nb79なる
組成の合金にNb置換でYまたは希土類元素(La,C
e,Pr,Nd,Sm)を添加した急冷直後の合金薄帯
は、いずれもFe3Bの結晶の析出が認められ、非晶質
相とFe3Bの結晶の複相組織から構成されていること
がわかる。これらのことからFe-Nb-B系の合金にN
b置換でYまたは希土類元素を添加した合金溶湯は、急
冷によりFe3Bの結晶が析出し易いことがわかる。 【0113】次に、前記熱処理後の合金薄帯試料と熱処
理後の合金薄帯試料の保磁力(Hc)と1kHzにおけ
る実効透磁率(μ)を測定した結果を図8に合わせて示
す。また、表9に示す組成の熱処理後の合金薄帯試料
と、熱処理後の合金薄帯試料の保磁力(Hc)と1kH
zにおける実効透磁率(μ)を測定した結果と、B10
残留磁束密度Brを測定した結果を表10に合わせて示
す。ここでのB10は、10 Oe(800A/m)の印
加磁場中での磁束密度である。 【0114】図8と表10に示した結果からFe84Nb
79なる組成の合金薄帯試料の実効透磁率は、3460
0であり、保磁力は6.4A/mであることがわかる。
これに対して他の合金薄帯試料は、いずれも実効透磁率
が37300以上であり、保磁力は5.04A/m以下
であり、Fe84Nb79なる組成の合金薄帯試料に比べ
て実効透磁率が高く、保磁力が低いことがわかる。ま
た、Fe84Nb6.8Nd0 .29なる組成の合金薄帯試料
の保磁力は、4.32A/mであり、Fe84Nb79
る組成の合金薄帯試料に比べて保磁力が低いことがわか
る。また、各例の合金薄帯試料のB10は、1.53〜1.
56Tの範囲であり、十分大きい飽和磁束密度が得られ
ている。このことからFe-Nb-B系の合金にNb置換
でYまたは希土類元素を添加した合金溶湯を用いた合金
薄帯試料のものは、急冷により非晶質相中にFe3Bの
ようにFeとBの化合物の結晶が析出した複相組織の合
金となっており、これを構造緩和熱処理し、続いて結晶
化熱処理することにより、軟磁気特性が優れたものが得
られることがわかる。 【0115】Fe84Nb7-e9Ndeなる組成(e=0〜
0.4at%(原子%))になるように調製した原料を
2ガス雰囲気中で高周波溶解し、溶けた原料を鋳型に
流し込み母合金を得た。ついで、N2ガス雰囲気におい
て、合金薄帯製造装置の溶湯ノズル内で上記母合金を高
周波溶解し、得られた合金溶湯を溶湯吹き出し部先端部
分より高速回転している銅ロールの冷却面に射出して急
冷する液体急冷法により合金薄帯を作製する際、下記の
液体急冷条件6〜13で作製することにより各種の合金
薄帯を得た。これら合金薄帯の組成は、Fe84Nb7-e
9Nde(e=0、0.04、0.08、0.15、0.1
9原子%)であった。なお、薄帯中のNd(微量元素)
はEDSにて分析したものである。 【0116】液体急冷条件6〜9においては、溶湯ノズ
ルの溶湯吹き出し部先端部分のギャップ幅0.2mm、
銅ロール外径20cmとした。また、液体急冷条件6で
は射出温度1200℃(1473K)、射出圧力392
00Pa(0.4kgf/cm2)、背圧−53200P
a(−40cmHg)、ロール回転数3600rpm、
ロール周速度38m/sとし、液体急冷条件7では射出
温度1200℃(1473K)、射出圧力39200P
a(0.4kgf/cm2)、背圧−53200Pa(−
40cmHg)、ロール回転数3600rpm、ロール
周速度37.7m/sとし、液体急冷条件8では射出温
度1200℃(1473K)、射出圧力39200Pa
(0.4kgf/cm2)、背圧−53200Pa(−4
0cmHg)、ロール回転数3600rpm、ロール周
速度37.7m/sとし、液体急冷条件9では射出温度
1200℃(1473K)、射出圧力39200Pa
(0.4kgf/cm2)、背圧−53200Pa(−4
0cmHg)、ロール回転数3600rpm、ロール周
速度37.7m/sとしたものである。 【0117】液体急冷条件10〜13においては、溶湯
ノズルの溶湯吹き出し部先端部分のギャップ幅0.25
mm、銅ロール外径60cmとした。また、液体急冷条
件10では射出温度1350℃(1623K)、 射出
圧力68600Pa(0.7kgf/cm2)、背圧−7
9800Pa(−60cmHg)、ロール回転数120
0rpm、ロール周速度37.7m/sとし、液体急冷
条件11では射出温度1300℃(1573K)、射出
圧力83300Pa(0.85kgf/cm2)、背圧−
79800Pa(−60cmHg)、ロール回転数12
50rpm、ロール周速度39.3m/sとし、液体急
冷条件12では射出温度1350℃(1623K)、射
出圧力73500Pa(0.75kgf/cm2)、背圧
−79800Pa(−60cmHg)、ロール回転数1
300rpm、ロール周速度40.8とし、液体急冷条
件13では射出温度1350℃(1623K)、射出圧
力83300Pa(0.85kgf/cm2)、背圧−7
9800Pa(−60cmHg)ロール回転数1400
rpm、ロール周速度44.0m/sとしたものであ
る。 【0118】次に、得られた各種の合金薄帯に、300
℃で10分間の構造緩和熱処理を施し、更に下記の熱処
理温度Taまでの昇温速度180゜C/分(180K/
分)、下記の結晶化熱処理温度Taでの保持時間5分で
結晶化熱処理を行い、厚さ20μm、幅15mmの各種
の合金薄帯(Fe84Nb7-e9Ndeなる組成(e=0、
0.04、0.08、0.15原子%)を得た。ここでの
熱処理温度Taとしては、Ndの添加量が0at%のも
のは、675℃(948K)、Ndの添加量が0.04
at%のものは、700℃(973K)、Ndの添加量
が0.08at%のものは、700℃(973K)、N
dの添加量が0.15at%のものは、700℃(97
3K)とした。 【0119】図9に、液体急冷条件6〜9で得られた急
冷直後のFe84Nb7-e9Ndeなる組成(e=0、0.
04、0.08、0.15原子%)の合金薄帯試料(熱処
理前の合金薄帯試料)のX線回折測定の結果を示す。ま
た、図9に合金溶湯を上記急冷条件で急冷したときに結
晶が析出したときの結晶化温度Tx1を合わせて示す。図
10に、液体急冷条件10〜13で得られた急冷直後の
Fe84Nb7-e9Ndeなる組成(e=0、0.04、0.
08、0.15原子%)の合金薄帯試料(熱処理前の合
金薄帯試料)のX線回折測定の結果を示す。また、図1
0に合金溶湯を上記急冷条件で急冷したときに結晶が析
出したときの結晶化温度Tx1を合わせて示す。 【0120】図10から明らかなように液体急冷条件1
0〜13で得られた合金薄帯は、非晶質に特有のハロー
な回折図形と、体心立方晶のFeを主成分とするbcc
相(bcc-Fe)の(110)面のピークと(20
0)面のピークが認められることから、非晶質相中にb
cc-Fe相が析出したものであることがわかる。ま
た、液体急冷条件10〜13で得られた合金薄帯は、F
84Nb79なる組成の合金にNb置換で添加するNd
の添加量を増加させると、bcc-Fe相の(110)
面と(200)面のピークが大となっている。また、液
体急冷条件10〜13で得られた合金薄帯は、いずれも
結晶析出温度Tx1が503℃(776K)と同じ値であ
る。 【0121】一方、図9から明らかなように液体急冷条
件8〜9で得られた合金薄帯は、非晶質に特有のハロー
な回折図形と、FeとBの化合物相に独特の回折図形
(47.5°から57.5°付近にできたピーク形状が左
右非対称)が認められ、非晶質相中にFe3Bの結晶が
析出したものであることがわかる。また、急冷条件8、
9の合金薄帯試料は、体心立方晶に独特の回折図形が僅
かに認められ、非晶質相中にFe3Bの結晶以外にbc
c-Fe相の(110)面のピークや(200)面のピ
ークも析出していることがわかる。また、液体急冷条件
6〜9で得られた合金薄帯試料は、Fe84Nb79なる
組成の合金にNb置換で添加するNdの添加量を増加さ
せると、Fe3Bの結晶の析出を示すのピークが大とな
っており、また、Ndの添加量の増加に伴って結晶析出
温度Tx1が低くなっていることがわかる。これらのこと
から合金薄帯試料は、組成が同じものであっても、液体
急冷条件が異なれば、非晶質相中に析出する結晶が異な
り、また、結晶化温度も異なることがわかる。 【0122】次に、液体急冷条件6〜9で得られたFe
84Nb7-e9Ndeなる組成(e=0、0.04、0.0
8、0.15原子%)の合金薄帯の熱処理後の保磁力
(Hc)と1kHzにおける実効透磁率(μ)を測定し
た結果を図9に合わせて示すまた、液体急冷条件10〜
13で得られたFe84Nb7-e9Ndeなる組成(e=
0、0.04、0.08、0.15原子%)の合金薄帯の
熱処理後の保磁力(Hc)と1kHzにおける実効透磁
率(μ)を測定した結果を図10に合わせて示す。 【0123】図9、10に示した結果から液体急冷条件
10〜13で得られた合金薄帯に熱処理を施したもの
は、Ndの添加量が増えると、実効透磁率が低下し、保
磁力が高くなっていることがわかる。これに対して急冷
条件6〜9で得られた合金薄帯に熱処理を施したもの
は、Ndの添加量が増えると実効透磁率を高くでき、保
磁力を低くでき、急冷条件10〜13で得られた合金薄
帯に熱処理を施したものより、軟磁気特性が優れている
ことがわかる。このように急冷条件8、9の合金薄帯に
熱処理を施したものが軟磁気特性が優れるのは、Fe-
Nb-B系の合金にNb置換で添加するNdが増加する
と、急冷条件によっては非晶質相中にFe3Bのように
FeとBの化合物の結晶が析出し、このFeとBの化合
物がbcc-Feの結晶の核の生成を促進させて、bc
c-Feの結晶粒を十分微細化するために、結晶析出温
度Tx1 が下がり、熱処理により析出する微細なbcc-
Feの結晶が多くなり、軟磁気特性を向上できるものと
考えられる。 【0124】 【発明の効果】以上説明したように本発明は、Fe基合
金溶湯を急冷して非晶質合金薄帯を形成し、その後、構
造緩和を引き起こす温度にて熱処理を行った後、磁心の
形状に加工を行い、結晶化温度より高い温度にて熱処理
するので、微結晶を析出させる熱処理温度よりも低い温
度範囲で行う構造緩和を引き起こすための熱処理を施す
ことで、材料のねばさを減少させ、材料として適度に脆
くすることで機械加工工具の摩擦を減少させる。これに
より機械加工性、例えば、打ち抜き性を向上させ、切断
加工時の切断工具の寿命を延ばし、砥石加工時の砥石の
寿命を長くすることができる。 【0125】次に、本発明の製造方法において、前記結
晶相としてbcc-Fe、Fe3Si、Fe3Bのうちか
ら選択される少なくとも1種以上であるものを採用する
ことができる。これらの結晶相が析出することで軟磁気
特性が著しく向上する。 【0126】本発明の製造方法において、前記板厚とし
て1μm以上、100μm以下であるものを採用するこ
とができる。この範囲の厚さであるならば、非晶質単相
のものを容易に得ることができ、この非晶質単相のもの
に構造緩和を引き起こす熱処理を施すことで機械加工
性、例えば、打ち抜き性を向上させ、切断加工時の切断
工具の寿命を延ばし、砥石加工時の砥石の寿命を長くす
ることができる。更に、このような厚さ範囲において、
厚い薄帯であるならば、後述するようにトロイダル巻す
る場合、あるいは積層磁心とする場合に磁性体部分の占
有率を向上させることできるが、逆に薄い薄帯であれ
ば、高周波域におけるうず電流損失を低減させるという
ように、用途に応じて使い分けができる。 【0127】本発明において、急冷により得た合金薄帯
として、一部結晶相が析出した状態のものでも構造緩和
を引き起こす熱処理を施すことで材料のねばさを減少さ
せ、材料として適度に脆くすることで機械加工工具の摩
擦を減少させる。これにより機械加工性、例えば、打ち
抜き性を向上させ、切断加工時の切断工具の寿命を延ば
し、砥石加工時の砥石の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】 図1は本発明に係る磁心を製造するために用
いる薄帯を減圧雰囲気中で製造するための装置の一例を
示す構成図である。 【図2】 図2はトロイダル形状の磁心を製造するため
の工程の一例を示すもので、図2Aは薄帯を巻回した状
態を示す斜視図、図2Bはトロイダルコアに切込を形成
した状態を示す斜視図、図2Cはトロイダルコアをケー
スに収納した状態を示す斜視図、図2Dはトロイダルコ
ア入りのケースに巻線を施した状態を示す斜視図、図2
Eはチップコアとした状態を示す図である。 【図3】 図3は不活性ガスフロー中において本発明に
係る磁心を製造するために用いる装置の一例を示すもの
で、図3Aは装置の側面図、図3Bは側面図を示す図で
ある。 【図4】 図4は図3に示す製造装置の一例の要部断面
と接続配管の一例を示す図である。 【図5】 図5は実施例で得られたFe84-x-yNb6.5
9.5GaxCuyなる組成の薄帯試料の保磁力と透磁率
のアニール温度依存性を示す図である。 【図6】 図6は急冷直後のFe84Nb6.859Nd
0.15なる組成(EDS分析値)の合金薄帯試料のX線回
折結果と、これらの合金薄帯試料の熱処理後の磁気特性
を示す図である。 【図7】 図7は急冷直後のFe84Nb6.929Nd
0.08なる組成(EDS分析値)の合金薄帯試料のX線回
折測定の結果と、これらの合金薄帯試料の熱処理後の磁
気特性を示す図である。 【図8】 図8は急冷直後のFe84Nb6.90.1
9(R=Y,La,Ce,Nd,Sm)なる組成(投入
組成)の合金薄帯試料、急冷直後のFe84Nb6. 80.2
9(R=Pr)なる組成(投入組成)の合金薄帯試料
と、急冷直後のFe84Nb79なる組成の合金薄帯試料
のX線回折結果と、こらの合金薄帯試料の熱処理後の磁
気特性を示す図である。 【図9】 図9は急冷直後のFe84Nb7-e9Nde
る組成(e=0、0.04、0.08、0.15原子%)
(EDS分析値)の合金薄帯試料(熱処理前の合金薄帯
試料)のX線回折測定の結果と、これらの合金薄帯試料
の熱処理後の磁気特性を示す図である。 【図10】 図10は急冷直後のFe84Nb7-e9Nd
eなる組成(e=0、0.04、0.08、0.15原子
%)(EDS分析値)の合金薄帯試料(熱処理前の合金
薄帯試料)のX線回折測定の結果と、これらの合金薄帯
試料の熱処理後の磁気特性を示す図である。 【符号の説明】 3、21・・・冷却ロール、5、22・・・溶湯ノズル(溶湯
射出用ノズル)、6、23・・・るつぼ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01F 27/24 H01F 41/02 A 27/25 1/14 C 41/02 27/24 C B Fターム(参考) 4E004 DB02 TA01 TA02 TA03 TB04 5E041 AA11 AA19 BD03 CA02 HB11 NN01 NN06 5E062 AA02 AB01 AB15

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1 】 Fe基合金溶湯を急冷することにより
    板厚1〜1000μmの非晶質合金薄帯を形成し、構造
    緩和を引き起こす温度にて熱処理を行った後、磁心の形
    状に加工を行い、結晶化温度より高い温度にて熱処理す
    ることで、少なくとも50%以上の組織中に平均結晶粒
    径50nm以下である結晶質相を生成させ、残部非晶質
    相とすることを特徴とするFe基軟磁性合金磁心の製造
    方法。 【請求項2 】 前記結晶相がbccFe、Fe3Bのう
    ちから選択される少なくとも1種以上であることを特徴
    とする請求項1記載のFe基軟磁性合金磁心の製造方
    法。 【請求項3 】 前記板厚が1μm以上、100μm以
    下であることを特徴とする請求項1または2に記載のF
    e基軟磁性合金磁心の製造方法。 【請求項4 】 Fe基軟磁性合金溶湯を急冷すること
    により、板厚1μm以上、100μm以下の非晶質合金
    薄帯を形成し、構造緩和を引き起こす温度であって、か
    つ、結晶が析出する温度よりも高い温度にて熱処理を行
    い、少なくとも50%以上の組織中に平均結晶粒径50
    nm以下である結晶相を形成させ、磁心の形状に加工す
    ることを特徴とするFe基軟磁性合金磁心の製造方法。 【請求項5 】 前記結晶相はbccFe、Fe3Bのう
    ちから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴と
    する請求項4に記載のFe基軟磁性合金磁心の製造方
    法。 【請求項6 】 前記板厚が1μm以上、100μm以
    下であることを特徴とする請求項4または5に記載のF
    e基軟磁性合金磁心の製造方法。 【請求項7 】 前記急冷が不活性ガスフロー中、また
    は、大気中のいずれか1つで行われ、前記Fe基合金の
    溶湯を回転する金属ロール上にノズルから噴出させて行
    うものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか
    に記載のFe基軟磁性合金の製造方法。 【請求項8 】 前記Fe基合金溶湯は、下記組成式を
    満足するものであることを特徴とする請求項1〜9のい
    ずれかに記載のFe基軟磁性合金磁心の製造方法。 (Fe1-aCoa100-X-Y-ZXM’YM’’Ztw ただし、MはTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,M
    o,W,Mnのうち1種または2種以上、M’はAl、
    Ge、Ga、Cu、Yを含む希土類元素のうち1種また
    は2種以上、M’’はCr、Ru、Rh、Ir、Pd、
    Os、Prのうち1種または2種以上、XはP、C、S
    iのうち1種または2種以上であり、組成比を示すa、
    x、y、z、t、wは、0≦a≦0.05、1原子%≦x≦30
    原子%、0≦y≦10原子%、0≦z≦5原子%、0≦t
    ≦10原子%、0.5≦w≦20原子%である。 【請求項9 】 組成比を示すa、x、y、z、t、wが、a=
    0、t=0、3原子%≦x≦10原子%、0.01原子%
    ≦y≦1原子%、5原子%≦w≦15原子%であることを
    特徴とする請求項8に記載のFe基軟磁性合金の製造方
    法。 【請求項10】 組成比を示すa、x、y、z、t、wが、a
    =0、y=0、t=0、3原子%≦x≦10原子%、5原
    子%≦w≦15原子%であることを特徴とする請求項8
    に記載のFe基軟磁性合金の製造方法。。
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