JP2010229466A - ナノ結晶軟磁性合金ならびに磁心 - Google Patents

ナノ結晶軟磁性合金ならびに磁心 Download PDF

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Abstract

【課題】 非晶質合金を熱処理してナノ結晶化させたナノ結晶軟磁性合金であって、熱による影響を受けにくく良好な磁気特性が安定して得られるナノ結晶軟磁性合金およびそれを用いた磁心を提供する。
【解決手段】 Cu元素を含み平均粒径が50nm以下の結晶粒が少なくとも一部に存在するナノ結晶軟磁性合金において、前記合金の表面から2nmよりも深い位置にCu元素が偏析するCu偏析部が存在し、前記Cu偏析部のCu濃度の最大値が6原子%以下であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、各種トランス、各種リアクトル・チョークコイル、ノイズ対策部品、レーザ電源や加速器などに用いられるパルスパワー磁性部品、通信用パルストランス、各種モータ磁心、各種発電機、各種磁気センサ、アンテナ磁心、各種電流センサ、磁気シールド等に用いる、優れた磁気特性を示すナノ結晶軟磁性合金ならび磁心に関する。
各種トランス、各種リアクトル、チョ−クコイル、ノイズ対策部品、レーザ電源、加速器用パルスパワー磁性部品等に用いられる軟磁性材料としては、ケイ素鋼、フェライト、非晶質合金やナノ結晶合金等が知られている。フェライト材料は、飽和磁束密度が低く、温度特性が悪い問題があり、大容量インバータ・電源のコイル部品や配電用トランスなどハイパワーで使用される用途には、磁気的に飽和しやすく不向きである。ケイ素鋼板は、材料が安価で磁束密度は高いが、高周波の用途に対しては磁心損失が大きいという問題がある。非晶質合金は、通常液相や気相から急冷し製造される。Fe基やCo基の非晶質合金は結晶粒が存在しないために本質的に結晶磁気異方性が存在せず、優れた軟磁気特性を示すことが知られている。このため、Fe基やCo基の非晶質合金は電力用変圧器鉄心、チョークコイル、磁気ヘッドや電流センサなどに使用されている。
ナノ結晶合金は、Co基非晶質合金に匹敵する優れた軟磁気特性と、Fe基非晶質合金に匹敵する高い飽和磁束密度を示すことが知られており、コモンモ−ドチョ−クコイル、高周波トランス、パルストランス等の磁心に使用されている。代表的組成系は特公平4−4393号公報や特開平1−242755号公報に記載のFe−Cu−(Nb,Ti,Zr,Hf,Mo,W,Ta)−Si−B系合金やFe−Cu−(Nb,Ti,Zr,Hf,Mo,W,Ta)−B系合金等が知られている。これらのFe基ナノ結晶合金は、通常液相や気相から急冷して非晶質合金とした後、これを熱処理により微結晶化することにより作製されている。液相から急冷する方法としては単ロ−ル法、双ロ−ル法、遠心急冷法、回転液中紡糸法、アトマイズ法やキャビテーション法等が知られている。また、気相から急冷する方法としては、スパッタ法、蒸着法、イオンプレ−ティング法等が知られている。Fe基ナノ結晶合金はこれらの方法により作製した非晶質合金を微結晶化したもので、Fe系非晶質合金と同程度の高い飽和磁束密度と低磁歪で優れた軟磁気特性を示すことが知られている。更にナノ結晶合金は経時変化が小さく、温度特性にも優れていることが知られている。
また、特許文献3では上記に示すようなFe基ナノ結晶合金について調べており、例えば、SiO2換算で表面から10nmよりも深い位置で、酸素よりFeの原子濃度が高く、表面から5nmよりも深い位置でCuの原子濃度が極部的に高まった軟磁性薄板が開示されている。
また、非晶質合金薄帯を加工するための技術として,特許文献4のように、合金組成にC,P,S元素などを添加して加工性をあげることが記載されている。
特公平4−4393号公報 特開平1−242755号公報 特開2002−75718号公報 特開2006−316348号公報
ナノ結晶化する前の非晶質合金薄帯は通常単ロール法などの超急冷法により製造される。ナノ結晶軟磁性合金は、この非晶質合金薄帯を熱処理し結晶化することにより製造される。この非晶質合金を熱処理してナノ結晶化させたナノ結晶合金の軟磁気特性は、薄帯製造時の薄帯の熱履歴による影響を受けやすい。
特にナノ結晶材用の広幅の非晶質合金薄帯は、量産時のロール温度上昇により薄帯表面の変質などが起こりやすく、表面の元素濃度分布が量産時の製造条件の違いによって影響を受ける。熱処理を行いナノ結晶化した後の合金表面の元素濃度分布にも影響を与える。この元素分布は磁気特性に影響を与えるため、優れた軟磁気特性を得るにはナノ結晶化熱処理後の合金表面の元素分布を制御することが重要である。
そこで、本発明は、各種トランス、各種リアクトル・チョークコイル、ノイズ対策部品、レーザ電源や加速器などに用いられるパルスパワー磁性部品、通信用パルストランス、各種モータ磁心、各種発電機、各種磁気センサ、アンテナ磁心、各種電流センサ、磁気シールド等に用いられる、良好な磁気特性が安定して得られるナノ結晶軟磁性合金およびそれを用いた磁心を提供することを目的とする。
本発明では、所定の合金組成からなる非晶質合金を熱処理によりナノ結晶化する際に、結晶化後のナノ結晶軟磁性合金の表面近傍での元素の偏析を制御することにより優れた軟磁気特性を示し特性のばらつきが小さいナノ結晶軟磁性合金ならびにこのナノ結晶軟磁性合金からなる磁心を実現した。
本発明のナノ結晶軟磁性合金は、Cu元素を含み平均粒径が50nm以下の結晶粒が少なくとも一部に存在するナノ結晶軟磁性合金において、前記合金の表面から2nmよりも深い位置にCu元素が偏析するCu偏析部が存在し、前記Cu偏析部のCu濃度の最大値が6原子%以下であることを特徴とする。
合金の表面から12nmの位置の酸素濃度がFe濃度よりも高いことが好ましい。
前記Cu偏析部より深い位置に母相よりもCu濃度が低い領域が存在し、この位置でのCu濃度の最小値は母相のCu濃度の40%未満であることが好ましい。ここで元素の母相での濃度とは、薄帯表面から500nm以上深い場所で測定される各元素の平均的な濃度を指すものとする。
また、前記Cu偏析部のCu濃度の最大値が母相のCu濃度の2倍以上であることが好ましい。
本発明のナノ結晶軟磁性合金は、合金組成がFe100−a−b−c−dSiCu(原子%)で表され、0≦a≦10、0≦b≦20、4≦c≦20、0<d≦3、9≦a+b+c≦35および不可避不純物からなる非晶質合金であり、ここでMはTi、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれた少なくとも1種の元素であるものが好ましい。
本発明のナノ結晶軟磁性合金は、表面から2nmよりも深い位置にCu元素濃度の高いCu偏析部が存在し、かつ、このCu偏析部でのCu濃度の最大値が4原子%以下である非晶質合金薄帯を作製し、その後この非晶質合金薄帯に熱処理を行いナノ結晶化させて製造することが好ましい。
この非晶質合金薄帯は、Cu偏析部でのCu濃度の最大値が母相のCu濃度よりも高く、かつ、Cu偏析部より表面側の位置にSi元素の偏析部が存在することが好ましい。
本発明のナノ結晶軟磁性合金は、Cu元素の偏析や酸素の偏析を制御することで、特性のばらつきが少ない優れた軟磁気特性を示すものが得られる。
また、ナノ結晶化熱処理を行う前の非晶質合金薄帯の方でもCu偏析部の制御を行うことで、靭性に優れた非晶質合金薄帯とすることができる。これによりナノ結晶化前に打ち抜き、スリットや切断加工が容易となり、熱処理前の靭性に優れた状態で加工ができるのでナノ結晶軟磁性合金からなる磁心を加工しなくても済み、磁心の形状を自由に設定できるようになる。
本発明に係わるナノ結晶軟磁性合金の自由面側の表面から内部に向かってGDOESにより測定したFe,Si,O,Cuの表面から深さ方向の濃度分布の一例を示した図である。 本発明に係わるナノ結晶軟磁性合金の自由面側の表面から内部に向かってGDOESにより測定したFe,Si,O,Cuの表面から深さ方向の濃度分布の測定結果の一例を拡大して示した図である。 本発明に係わるナノ結晶軟磁性合金の自由面側の表面から内部に向かってGDOESにより測定したFe,Si,O,Cuの表面から深さ方向の濃度分布の一例を示した図である。 本発明に係わるナノ結晶軟磁性合金の自由面側の表面から内部に向かってGDOESにより測定したFe,Si,O,Cuの表面から深さ方向の濃度分布の測定結果の一例を拡大して示した図である。 本発明に係わる非晶質合金薄帯の自由面(自由凝固した面)の表面から内部に向かってGDOESにより測定した元素の濃度分布の測定結果の一例を示した図である。 本発明に係わる非晶質合金薄帯の自由面(自由凝固した面)の表面から内部に向かって表面から100nmの範囲のFe,Si,O,Cuの濃度分布をGDOESにより測定した測定結果の一例を拡大して示した図である。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
本発明は、Cu元素を含み平均粒径が50nm以下の結晶粒が少なくとも一部に存在するナノ結晶軟磁性合金において、前記合金の表面から2nmよりも深い位置にCu元素が偏析するCu偏析部が存在し、前記Cu偏析部のCu濃度の最大値が6原子%以下であることを特徴とするナノ結晶軟磁性合金である。
Cuを含む非晶質合金薄帯を熱処理しナノ結晶化させる際に、表面のCu濃度を制御することにより、熱処理の際に合金薄帯表面に形成する結晶粒の粗大化を抑制し、微細化することで軟磁気特性の劣化を防ぐことができる。このため、粗大結晶粒の形成による軟磁気特性の劣化を抑制することができる。熱処理前の非晶質合金薄帯にCu偏析部がないと粗大な結晶粒が形成しやすく適正な熱処理条件の範囲が狭まり、軟磁気特性が劣化し易くなる。ただし、Cu濃度が高すぎると鉄損が増加してしまい、磁気特性が低下する。
このCu元素の偏析と併せて合金の表面から12nmの位置の酸素濃度がFe濃度よりも高くなるように制御することが好ましい。Cu元素の偏析と合金の表面から12nmの位置の酸素濃度がFe濃度よりも高くなる元素分布があることで、鉄損が改善される相乗効果が得られる。
特に、Cu偏析部のCu濃度の最大値が母相のCu濃度の2倍以上であり、Cu偏析部よりも深い位置に存在するCu濃度の最小値が母相のCu濃度の40%未満となるように熱処理を行うと熱処理時に粗大な結晶粒の形成を抑制でき、軟磁気特性が劣化しにくくなるためより好ましい結果が得られる。
本発明においてFeは必須の元素である。MはTi、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれた少なくとも1種の元素であり、非晶質化を助ける効果と熱処理により結晶化する際に結晶粒を微細化する効果を有する。また、Ti、Nb、Taなどの元素は耐蝕性を向上する効果も有している。M量aは10原子%以下である必要がある。これはM量aが10原子%を超えると磁束密度の著しい低下を招くためである。但し、M量aが0原子%でも非晶質合金薄帯は得られ、Cu偏析部のCu濃度の最大値を下げればM元素を含むものと同様に加工性は向上する。Siは非晶質化を助ける効果があり、ナノ結晶軟磁性材料においては軟磁気特性を向上させたり磁歪を低減させたりする効果を有する。また、表面に酸化物の形で偏析することにより、耐環境性を改善したり、磁心に使用する場合の層間絶縁性を向上する効果がある。Si量bは20原子%以下である必要がある。これはSi量が20原子%を超えると飽和磁束密度の著しい低下を招き好ましくないためである。特に好ましいSi量bの範囲は8≦b≦17であり、優れた軟磁気特性が得られる。但し、Si量bが0原子%でも非晶質合金薄帯は得られ、Cu偏析部のCu濃度の最大値を下げればM元素を含むものと同様に加工性は向上する。Bは非晶質形成能を高める元素であり、B量cは4原子%以上20原子%以下である必要がある。これは、B量cが4原子%未満では非晶質形成が困難となって好ましくなく、20原子%を超えると飽和磁束密度の著しい低下を招くためである。特に好ましいB量cの範囲は5≦c≦10であり、ナノ結晶化後に特に優れた軟磁気特性が得られ、磁歪も比較的低くすることができる。Cuはナノ結晶化の際に結晶粒を微細化・結晶粒組織を均一化する効果を有する。Cuが0.1原子%未満であるとこの効果が不十分である。一方、Cu量dは3原子%以下である必要がある。これは、Cu量dが3原子%を超えると連続的な非晶質合金薄帯製造が困難となるためである。特に好ましいCu量dの範囲は0.4≦d≦2、さらには0.5≦d≦1.5であり、この範囲で非晶質合金薄帯製造が容易でかつナノ結晶化後のナノ結晶合金において得に優れた軟磁気特性を実現できる。M量a、Si量b、B量cの総和a+b+cは9≦a+b+c≦35である必要がある。これは、M量a、Si量b、B量cの総和a+b+cが9原子%未満では非晶質化が困難であり、35原子%を超えると飽和磁束密度の著しい低下を招き好ましくないためである。
本発明非晶質合金の不可避不純物としてはN、O、Sなどがあり、これらの元素を微量含む場合も本発明に含まれるのはもちろんである。
本発明非晶質合金薄帯においてFe量の50%以下をCo、Niから選ばれた少なくとも1種の元素で置換することができる。Co、NiをFeと置換することにより、ナノ結晶軟磁性材料の誘導磁気異方性を制御することが可能である。また、Coの場合は飽和磁束密度を向上する効果も有する。
本発明に係わる非晶質合金薄帯およびナノ結晶合金において、SiとBの総量の50%以下をC、Al、P、Ga、Geから選ばれた少なくとも1種の元素で置換することができる。これらの元素を置換することにより、熱処理しナノ結晶化させたナノ結晶合金の磁歪や磁気特性を調整することができる。Pは非晶質形成元素であり、非晶質化を助ける働きもある。
Mの50%以下をCr、Mn、Zn、As、Se、Sb、Sn、In、Cd、Ag、Bi、Mg、Sc、Re、Au、白金族元素、Y、希土類元素から選ばれた少なくとも1種の元素で置換することができる。
本発明ナノ結晶軟磁性合金において、均質な微細組織を得るためには、原材料を溶解後、液体急冷法によって合金薄帯を作製した時点でアモルファス相を主相とする組織が得られることが重要である。本発明において、液体急冷法によって作製されたアモルファス合金薄帯中に結晶粒が存在しても良いが、できる限りアルファス単相であることが望ましい。その後、結晶化温度以上の温度領域まで加熱し熱処理を施し、結晶粒径50nm以下の体心立方構造の結晶粒が非晶質母相中に分散した組織とする。ナノ結晶粒相が体積分率で50%以上を占めることにより、軟磁性を更に改善させることや磁歪の低減が図れる。
結晶粒の体積比は、線分法により求められる。すなわち結晶粒の体積比は、顕微鏡組織写真中に任意の直線を想定しそのテストラインの長さをL、結晶相により占められる線の長さLを測定し、結晶粒により占められる線の長さの割合L=L/Lを求めることにより得られる。熱処理後の合金中に存在する結晶粒の結晶粒径は、50nm以下が望ましい。これは、結晶粒径が50nmを超えると軟磁気特性の著しい劣化が起こり好ましくないためである。特に好ましい結晶粒径は5nm〜20nmであり、特に優れた軟磁性が得られる。
本発明のナノ結晶軟磁性合金は、前記組成の溶湯を単ロール法等の超急冷技術によって、一旦アモルファス相を主相とする合金を作製後、熱処理を施して平均粒径が50nm以下の極微結晶組織を形成することによって得られる。単ロール法等の急冷技術による薄帯の作製および熱処理はAr、He、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素の雰囲気中や大気中あるいは減圧下の酸素濃度をコントロ−ルする。
単ロール法などの液体急冷法によりCuを含む非晶質合金薄帯を作製する際、製造時のロール上の薄帯温度を制御することが重要である。広幅の非晶質合金薄帯を製造する場合、非晶質合金薄帯は冷却ロールに固化後も密着し冷却される。このロール上の非晶質合金薄帯の熱履歴が合金薄帯表面のCu濃度分布に大きな影響を与え、熱処理後の表面のミクロ組織や磁気特性に影響を与えることが判明した。Cuを含む本発明の非晶質合金薄帯は、薄帯製造の際、出湯位置からロール周方向で250mmの位置の合金薄帯の温度が200℃以上400℃以下の条件で製造する。250mmの位置の合金薄帯温度が200℃未満ではCu偏析部とCu濃度の少ない領域が十分形成されないため、熱処理後表面に粗大な結晶が形成しやすくなる。400℃を超えると熱処理前の段階で非晶質合金薄帯が脆化しやすくなるため好ましくない。
また、本発明の非晶質合金薄帯を製造する際に、薄帯がロールに密着している付近のガス中に5%以上の酸素が含まれる雰囲気の下で製造することによりCu偏析部より表面側の浅い位置のSi偏析部を制御でき、表面のSiO系の酸化皮膜の厚さを制御することができる。また、後述するナノ化のための熱処理でも炉中の酸素濃度(真空度)を制御することでこの表面のSiO系の酸化皮膜厚さを制御することができる。
これらの技術により、本発明のナノ結晶合金は絶縁性が向上し、積層磁心や巻磁心を作製した場合に高周波磁気特性が改善される。本発明ナノ結晶軟磁性合金において合金表面から12nmの位置の酸素濃度(原子%)がFe濃度(原子%)よりも高い場合、より表面の絶縁がやぶれにくく巻磁心や積層磁心として使用した場合に、高周波特性の劣化やばらつきを抑制できる。
本発明に係わる非晶質合金薄帯は、結晶化温度以上で熱処理することで、前述したナノ結晶軟磁性合金となる。この熱処理を磁界中熱処理とすることにより、誘導磁気異方性によってナノ結晶軟磁性合金の軟磁気特性が改善される。誘導磁気異方性を付与する磁界中熱処理は、熱処理中の一部の期間あるいは全期間磁界を印加しながら熱処理を行う。印加する磁界は、直流、交流、繰り返しのパルス磁界のいずれでも良い。印加磁界は、合金が磁気的に飽和する程度以上の強さとすると、好ましい結果が得られる。磁界中熱処理により角形性の良好なB−Hループや直線性の良いB−Hループの材料が得られる。回転磁界中熱処理により軟磁気特性を改善することもできる。熱処理は大気中、真空中、Ar、窒素等の不活性ガス中で行うことができるが、特に不活性ガス中で行うことが望ましい。熱処理は、通常350℃から650℃の範囲で行なう。一定温度で保持する時間は量産性の観点から通常は24時間以下であり、好ましくは4時間以下である。特に望ましくは1時間以下である。熱処理の平均昇温速度は0.1℃/minから10000℃/minが好ましく、より好ましくは100℃/min以上であり、低保磁力を得ることができる。熱処理は1段処理でなく、多段処理、複数回処理を行っても良い。さらに、合金に直接電流を流して、ジュール熱によって熱処理を施す、高周波励磁して発熱させて熱処理を施すこともできる。また、応力下で熱処理し、誘導磁気異方性を付与しB−Hループ形状を制御することも可能である。
本発明のナノ結晶軟磁性合金は、必要に応じてSiO、MgO、Al等の粉末あるいは膜で合金薄帯表面を被覆する、化成処理により表面処理し絶縁層を形成する、アノード酸化処理により表面に酸化物絶縁層を形成し層間絶縁を行う等の処理を行い、更に絶縁性を高めることができる。これは特に高周波励磁される場合において層間を渡る渦電流をより一層低減し、高周波における磁心損失を更に改善する効果がある。表面状態が良好でかつ広幅の薄帯から構成された磁心に層間絶縁を適用すると更に著しい高周波磁気特性改善効果が得られる。更に、本発明合金から磁心を作製する際に必要に応じて含浸やコーティング等を行うことも可能である。本発明合金は高周波の用途として特にパルス状電流が流れるような応用品に最も性能を発揮するが、センサや低周波の磁性部品の用途にも使用可能である。特に、磁気飽和が問題となる用途において優れた特性を発揮可能で、ハイパワーのパワーエレクトロニクスの用途に特に適している。
更に本発明のナノ結晶軟磁性合金は粉末状にしても優れた特性を得ることができるため、圧粉磁心やノイズ吸収シートなどにも利用できる。
本発明のナノ結晶軟磁性合金の少なくとも一部または全部には平均粒径50nm以下の結晶粒が形成している。前記結晶粒は組織の30%以上の割合であることが望ましく、より好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。特に望ましい平均結晶粒径は20nm以下であり、この範囲において特に低い保磁力および低い磁心損失が得られる。
前述のナノ結晶軟磁性合金中に形成する微結晶粒は主にFeを主体とする体心立方構造(bcc)の結晶相であり、Co、Ni、Si,B,GeやZr等が固溶しても良い。また、規則格子を含んでも良い。前記結晶相以外の残部は主にアモルファス相であるが、実質的に結晶相だけからなる合金も本発明に含まれる。また、Cuを含む面心立方構造の相(fcc相)が存在しても良い。
アモルファス母相中にナノスケールのbcc結晶粒が分散した組織の合金は、抵抗率が高く、結晶粒成長が抑制され、高周波の磁気特性が改善されるためより好ましい結果が得られる。
本発明合金において化合物相が存在しない場合により低い保磁力、低い磁心損失を示すが一部に化合物相を含んでも良い。
このナノ結晶軟磁性合金からなる磁心も本発明に属する。本発明磁心は主として巻磁心や積層磁心で使用されるが、粉砕して粉末とし圧粉磁心や樹脂との複合シート・複合磁心としても使用できる。本発明の磁心は優れた軟磁気特性を示すナノ結晶軟磁性合金から構成されているため、磁心の低損失化や小型化などが可能である。
表面から2nmよりも深い位置にCu元素が偏析しているCu偏析部が存在し、かつ、このCu偏析部でのCu濃度の最大値が4原子%以下である非晶質合金薄帯とすることが好ましい。このCu偏析部は薄帯の両面で観察される。Cu偏析部はCuの濃度が極部的に高い部分を指し、主に表面から2nmから20nmの深さの範囲で観察される。Cu偏析部のCu濃度の最大値は、薄帯中央部の母相でのCu濃度より高くなることが多い。
Cu偏析部でのCu濃度の最大値が4原子%を超えると、薄帯の加工性が著しく劣化して打ち抜き、スリットや切断などの加工が困難となる。このため、Cu濃度の最大値が4原子%以下となるように制御する。このCu濃度分布を制御するためには、非晶質合金薄帯を製造する際の冷却速度(薄帯の温度)を制御する必要がある。Cu濃度の最大値を4原子%以下とすることで、靭性に優れた非晶質合金薄帯が製造でき好ましい結果が得られる。
ナノ結晶化前の非晶質軟磁性薄帯のCu偏析部はCu濃度の最大値が母相のCu濃度よりも高く、Cu偏析部より表面側の位置にSiの偏析部が存在するものが好ましい。絶縁性に優れたSi酸化物が表面に存在すると、磁心に使用した場合に層間絶縁抵抗が高まり優れた高周波磁気特性を実現することが可能である。非晶質軟磁性薄帯のCu濃度は薄帯の表面から500nmの位置でほぼ合金組成のCu量と同じになる。また、Si偏析部が存在する位置よりも表面側の浅い位置にFe濃度が極小となる領域を存在させることにより、絶縁性が更に向上する。
具体的な製造方法は、前記の組成の溶湯を単ロール法等の超急冷技術によって、一旦アモルファス相を主相とする合金を作製後、これを加工し、熱処理を施し平均粒径が50nm以下の極微結晶組織を形成することによって得られる。単ロール法等の急冷技術による薄帯の作製および熱処理はAr、He、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素の雰囲気中や大気中あるいは減圧下の酸素濃度をコントロ−ルする。本発明非晶質合金薄帯を実現するためには、単ロール法などの液体急冷法によりCuを含む非晶質合金薄帯を作製する際、製造時のロール上の薄帯温度を制御することが重要である。広幅の非晶質合金薄帯を製造する場合、非晶質合金薄帯は冷却ロールに固化後も密着し冷却される。このロール上の非晶質合金薄帯の熱履歴が合金薄帯表面のCu濃度分布に大きな影響を与え、熱処理後の表面のミクロ組織や磁気特性に影響を与えることが判明した。Cuを含む本発明非晶質合金薄帯は、薄帯製造の際、出湯位置からロール周方向で250mmの位置での合金薄帯の温度が200℃以上400℃以下の条件で製造する。250mmの位置の合金薄帯温度が200℃未満ではCu偏析部とCu濃度の少ない領域が十分形成されないため、熱処理後表面に粗大な結晶が形成しやすくなる。400℃以上では熱処理前の段階で非晶質合金薄帯が脆化しやすくなるため好ましくない。また、本発明非晶質合金薄帯製造の際に、薄帯がロールに密着している付近のガス中に5%以上の酸素が含まれる雰囲気の下で製造することによりCu偏析部より表面側の浅い位置のSiの濃度ピークを制御でき、表面のSiO系の酸化皮膜の厚さを制御することができる。これにより絶縁性が向上し、積層磁心や巻磁心とした場合の高周波磁気特性が改善される。本発明ナノ結晶軟磁性合金において合金表面から12nmの位置の酸素濃度(原子%)がFe濃度(原子%)よりも高い場合、より表面の絶縁がやぶれにくく巻磁心や積層磁心として使用した場合に、高周波特性の劣化やばらつきを抑制できる。
(実施例1)
原子%でFebal.Cu0.98Nb3.1Si13.49.3の合金組成で、幅50mm厚さ19μmの非晶質合金薄帯を作製した。Cu−Be系の銅合金製のロールを用い、酸素濃度20%の雰囲気中で作製した。出湯位置(ノズル位置)から250mmの位置での合金薄帯の温度を放射温度計により測定しながら、その薄帯の温度が270℃になるよう冷却水量と水温を調整し作製した。作製した非晶質合金薄帯のX線回折を自由面側とロール面側で測定した結果、非晶質合金特有のハローパターンが観察され非晶質単相であることが確認された。
次にこの合金薄帯を外径38mm、内径30mmに巻き回して巻磁心を作製し、露点が−61℃の窒素ガス雰囲気中で550℃1時間保持し熱処理を行った。この巻磁心の磁気特性は、800A/mにおける磁束密度B800が1.24T、保磁力Hが0.35A/m、最大比透磁率μが1100000、1kHzにおける比初透磁率が129000である。
熱処理後の合金のX線回折を行った結果、体心立方(bcc)構造のFe-Si結晶相が形成していることが確認された。TEMによる組織観察の結果では合金表面に大きな結晶は存在せず、粒径約12nmのbccFe−Si結晶粒がアモルファス母相中に形成していることが確認された。
また、熱処理後の合金薄帯について同様にGDOESによる分析を行った。自由面側の表面から内部に向かってGDOESにより測定したFe,Si,O,Cuの表面から深さ方向の濃度分布を図1に示す。また、図2に同じ試料の表面から100nmの範囲のFe,Si,O,Cuの濃度分布を拡大して示す。合金の表面はSiとOが多くSiOなどの酸化物が主として形成している。表面から15.6nmの位置にCu偏析部のCu濃度が最大となる部分が存在している。Cu濃度の最大値は6原子%程度あり熱処理前よりもこの最大値は大きくなっている。更にそれより深い位置にCu濃度の低い領域が存在し、この領域のCu濃度は低下している。この最小のCu濃度は0.07原子%であり、表面から500nmの位置のCu濃度(1.1原子%)の40%未満であった。このCu濃度が最小となる領域は、表面から36nmの位置であった。表面から12nmの位置のO濃度は44.6原子%、Fe濃度は3.4原子%であり、O濃度はFe濃度より高かった。12nmの位置のFe濃度が低いと表面に形成されるSi酸化物層の絶縁性が高めるため、高周波磁気特性が向上したりばらつきを低減できたりするため好ましい。また、ロール面側も同様のGDOESによる分析を行った結果、類似した濃度依存性を示すことが確認された。
(実施例2)
実施例1で作製した非晶質合金を切断して加工性を調査したところ、割れが発生せず加工性に優れていることが確認された。作製した非晶質合金薄帯の自由面(自由凝固した面)の表面から内部に向かって元素の濃度分布をグロー放電発光分光分析[GDOES(Glow Discharge Optical Emission Spectroscopy)]により測定した。深さ500nmまでFe,Si,B,Nb,Cuを分析して得られた結果を図5に示す。また図6に同じ試料の表面から100nmの範囲のFe,Si,O,Cuの濃度分布を拡大して示す。合金の表面はSiとOが多くSiOなどの酸化物が主として形成している。表面から7.4nmの位置にCuの濃度が最大となる部分が存在している。Cu濃度の最大値は1.7原子%程度あり、更にそれより深い表面から18.2nmの位置にCu濃度の低い領域が存在する。この領域のCu濃度は表面から500nmの位置のCu濃度よりも低い。ロール面側も同様のGDOESによる分析を行った結果、類似した濃度依存性を示すことが確認された。
比較のために、アルゴンガス雰囲気中でCu−Cr系の銅合金製のロールを用いて同組成の非晶質合金薄帯を作製した。出湯位置(ノズル位置)から250mmの位置での合金薄帯の温度を放射温度計により測定しながら、その薄帯の温度が350℃になるよう冷却水量と水温を調整し作製した。作製した非晶質合金薄帯のX線回折を自由面側とロール面側で行った結果、非晶質合金特有のハローパターンが認められ非晶質相が形成されていることが確認されたが、作製した合金薄帯を切断すると割れが発生し加工性に劣ることが確認された。作製した合金薄帯の自由面(自由凝固した面)の表面から内部に向かって元素の濃度分布をGDOESにより測定した結果、表面から14.2nmの位置にCu偏析部が存在していた。Cu偏析部のCu濃度の最大値は4.5原子%であり、Cuの高濃度の偏析が非晶質合金薄帯の加工性を劣化させる原因であると考えられる。
(実施例3)
原子%でFebal.Cu0.95Nb3.0Si15.56.8の合金組成で、幅25mm厚さ18μmの非晶質合金薄帯を酸素濃度21%の雰囲気中でCu−Cr系の銅合金製のロールを用いて作製した。出湯位置(ノズル位置)から250mmの位置での合金薄帯の温度を放射温度計により測定しながら、その薄帯の温度が250℃の温度になるよう冷却水量と水温を調整し作製した。作製した非晶質合金薄帯のX線回折を自由面側とロール面側で行った結果、非晶質合金特有のハローパターンであり非晶質単相であることが確認された。
次に打ち抜いたリング状の合金試料を、露点が−70℃のアルゴンガス雰囲気中で550℃1時間の熱処理を行い、本発明のナノ結晶軟磁性合金磁心を作製し、このリング試料を重ねてフェノール樹脂製のコアケースに入れ、磁気特性を測定した。B800は1.23T、Hは0.4A/m、1kHzにおける比初透磁率μ1kは168000、100kHzにおける比初透磁率μ100kは16500、20kHz,0.2Tにおける磁心損失Pcmは2.0W/kgであった。熱処理後の合金薄帯のX線回折およびTEM観察を行った結果、組織の73%が粒径約14nmのbccFe−Si結晶粒からなることが確認された。規則相による回折ピークも確認されたことから規則相が存在していることも確認された。次にロール面(ロールと接触した面)の表面から内部に向かってCuの濃度分布を深さ500nmまでGDOESにより測定した。図3にCuの濃度分布を示す。また図4に同じ試料の表面から100nmの範囲でのCuの濃度分布を拡大して示す。合金の表面はSiとOが多くSiOなどの酸化物が主として形成している。表面から15.8nmの位置にCu偏析部が存在している。Cu偏析部のCu濃度の最大値は5.0原子%であり熱処理前よりもCu濃度の最大値は大きい。更にそれより深い位置にCu濃度の低い領域が存在し、この領域のCu濃度は低下している。最小のCu濃度は0.0152原子%であり、表面から500nmの位置でのCu濃度1.0原子%の40%未満であった。このCu濃度が最小となる領域は、表面から36.7nmの位置であった。表面から12nmの位置のO濃度は42.1原子%、Fe濃度は5.6原子%であり、O濃度はFe濃度より高かった。
次に作製した磁心に巻線を行ないトランスを作製した。損失が低く良好な特性を示すことが確認された。
(実施例4)
表1に示す組成の合金薄帯を単ロール法により作製した。Cu−Be系の銅合金製のロールを用い、酸素濃度20%の雰囲気中で作製した。出湯位置(ノズル位置)から250mmの位置での合金薄帯の温度を放射温度計により測定しながら、その薄帯の温度が270℃になるよう冷却水量と水温を調整し作製した。作製した非晶質合金薄帯のX線回折を自由面側とロール面側で行った結果、非晶質合金特有のハローパターンであり非晶質単相であることが確認された。
次に、表1の非晶質合金薄帯を巻き回して巻磁心とし、露点が−61℃の窒素ガス雰囲気中で熱処理を行い、本発明のナノ結晶軟磁性合金の磁心を作製した。この磁心の20kHz,0.2Tにおける鉄損Pcmを測定した。得られた結果を表2に示す。また、熱処理後の合金薄帯のX線回折を行った結果、体心立方構造(bcc)構造のFe-Si結晶相が形成していることが確認された。透過電子顕微鏡(TEM)とX線回折からシェラーの式により平均粒径を見積もった結果、粒径粒径50nmのbccFe−Si結晶粒が形成し、その体積分率は50%以上であることが確認された。次に、熱処理後の合金薄帯について同様にGDOESによる分析を行った。表面からのCu偏析部のCu濃度が最大となる位置とCu濃度、Cu濃度の低い領域の最小値と母相のCu濃度、および表面から12nmの位置の酸素原子%濃度CC(O)とFe原子%濃度CC(Fe)の比CC(O)/CC(Fe)、鉄損Pcmの測定結果を表2に示す。また、真空度1.3×10−3Paの高真空度の雰囲気中で熱処理した場合の測定結果を示す。本発明ナノ結晶軟磁性合金磁心は優れた磁気特性を示すことが確認された。これに対して、高真空度の雰囲気で熱処理した試料では鉄損が3.0W/kgよりも大きくなる傾向が見られた。表面から12nmの位置の酸素原子%濃度がFe原子%濃度よりも大きい方が高周波における鉄損が低い傾向があることが確認された。
Figure 2010229466
Figure 2010229466
(実施例5)
表1に示す合金組成の非晶質合金薄帯から金型によりリング状の試料を打ち抜き、きれいに試料が打ち抜けるかにより靭性を調査した。表面からのCu偏析部とCu濃度と母相のCu濃度を表1に併記する。Cu偏析部のCu濃度が4原子%以下の非晶質合金薄帯は、靭性に優れており、打ち抜きなどの加工が可能であった。これに対して、Cu偏析部のCu濃度が4原子%を超える非晶質合金薄帯は打ち抜きの際に割れが発生した。
本発明は、各種トランス、各種リアクトル・チョークコイル、ノイズ対策部品、レーザ電源や加速器などに用いられるパルスパワー磁性部品、通信用パルストランス、各種モータ磁心、各種発電機、各種磁気センサ、アンテナ磁心、各種電流センサ、磁気シールド等に用いられるナノ結晶軟磁性合金用の加工性に優れた非晶質合金、優れた磁気特性を示すナノ結晶軟磁性合金ならびにナノ結晶軟磁性合金からなる磁心として利用できる。

Claims (8)

  1. Cu元素を含み平均粒径が50nm以下の結晶粒が少なくとも一部に存在するナノ結晶軟磁性合金において、前記合金の表面から2nmよりも深い位置にCu元素が偏析するCu偏析部が存在し、前記Cu偏析部のCu濃度の最大値が6原子%以下であることを特徴とするナノ結晶軟磁性合金。
  2. 前記合金の表面から12nmの位置の酸素濃度がFe濃度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のナノ結晶軟磁性合金。
  3. 前記Cu偏析部より深い位置に母相よりもCu濃度が低い領域が存在し、この位置でのCu濃度の最小値は母相のCu濃度の40%未満であることを特徴とする請求項1に記載のナノ結晶軟磁性合金。することを特徴とするナノ結晶軟磁性合金。
  4. 前記Cu偏析部のCu濃度の最大値が母相のCu濃度の2倍以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のナノ結晶軟磁性合金。
  5. 合金組成がFe100−a−b−c−dSiCu(原子%)で表され、0≦a≦10、0≦b≦20、4≦c≦20、0<d≦3、9≦a+b+c≦35および不可避不純物からなる非晶質合金であり、ここでMはTi、V、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選ばれた少なくとも1種の元素である請求項1乃至請求項4に記載のナノ結晶軟磁性合金。
  6. 表面から2nmよりも深い位置にCu元素が偏析しているCu偏析部が存在し、かつ、このCu偏析部でのCu濃度の最大値が4原子%以下である非晶質合金薄帯を作成し、その後この非晶質合金薄帯に熱処理を行いナノ結晶化させて製造したことを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載のナノ結晶軟磁性合金。
  7. 前記非晶質合金薄帯は、Cu偏析部でのCu濃度の最大値が母相のCu濃度よりも高く、かつ、Cu偏析部より表面側の位置にSi元素の偏析部が存在することを特徴とする請求項6に記載のナノ結晶軟磁性合金。
  8. 請求項1乃至請求項7のナノ結晶軟磁性合金を用いたことを特徴とする磁心。
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