JP2002033018A - 導電性ペースト及びその調製方法 - Google Patents

導電性ペースト及びその調製方法

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JP2002033018A JP2000217466A JP2000217466A JP2002033018A JP 2002033018 A JP2002033018 A JP 2002033018A JP 2000217466 A JP2000217466 A JP 2000217466A JP 2000217466 A JP2000217466 A JP 2000217466A JP 2002033018 A JP2002033018 A JP 2002033018A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱硬化性樹脂に可撓性に富むアルコキシ基含
有変性シリコーン樹脂を添加し、硬化形状の更なる安定
化を達成しつつ、調製直後の性能を室温付近で長期間保
管した際にも維持することができる銅粉を用いる導電性
ペーストの提供。 【解決手段】 主成分の銅粉と熱硬化性樹脂に、さら
に、キレート形成物質と下記一般式(I): 【化1】 (式中、Rは、炭素数1〜4の直鎖または分枝のアルキ
ル基を示し、mは、2〜4を示す)で表されるアルコキ
シ基含有変性シリコーン樹脂を必須な成分として含有
し、前記キレート形成物質と付加塩形成可能な酸素酸あ
るいはその部分エステルまたはアミドを、キレート形成
物質1分子当たり、0.1〜0.9分子に相当する量の
範囲で添加している導電性ペースト。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱硬化型の導電性
ペーストとその調製方法に関し、より具体的には、プリ
ント配線基板のスルーホール導通形成に利用され、熱硬
化後のスルーホール埋め込み形状に優れ、また、良好な
導通性能を示す導電性ペーストとその調製方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】プリント配線基板のスルーホールの導通
を図る手段としては、スルーホール部分について、例え
ば、1)無電解メッキを施した後、さらに電解メッキを
行い、このメッキ膜を利用して導通を図る方法、また
は、2)導電性ペースト、例えば銀ペーストをスクリー
ン印刷を用いて塗布し、加熱硬化させることにより、導
電性被膜層を形成し、導通を確保する方法があり、通
常、前記の二つの手段のいずれかが利用されている。
【0003】このうち、1)の無電解メッキ−電解メッ
キ膜を利用する方法では、メッキ廃液の処理とそれに要
するコストの問題がある。また、2)導電性ペーストを
用いる方法では、銀ペーストを用いると、銀相場が不安
定であること、さらには、電流密度が高くなると、銀の
マイグレーションが発生し易い等の課題を有している。
そのため、銀ペーストに代えて、銅ペーストを利用し
て、スルーホールの導通を図る方法が、近年脚光を浴び
ている。
【0004】しかしながら、銀ペーストに代えて、銅ペ
ーストを利用する際、安定した導通抵抗を得る上では、
いくつか克服すべき課題が挙げられる。第一に、銀ペー
ストと同様に銅ペーストも、その導電メカニズムは、主
バインダーである熱硬化性樹脂の硬化収縮により、金属
粉同士が密に接触し、この接触を介してその導通が達成
される。その際、銀と比較し、銅は延伸性が若干劣るこ
ともあって、熱硬化性樹脂の収縮率の変動に伴い、導電
性も変動する。第二に、銅粉は、大気中で、その表面は
酸化を受け易く、また、生成する銅の酸化物は、絶縁性
であるため、ハンドリングの過程で自然酸化などを受
け、ペーストが変性しやすい。第三に、ペーストの硬化
形状がその導通性に大きく影響する。これらの理由か
ら、従来の銅ペーストを用いた場合、得られるスルーホ
ールにおける導通性は、工程によるバラツキが大きく、
また、個々の要素は微妙に影響するものである。
【0005】具体的には、銅粉と熱硬化性樹脂の配合割
合の僅かな変動(いわゆる仕込み公差)、また、加熱硬
化条件の僅かな変動に伴う収縮率の差異などの影響を受
け、導電性に違いを生ずる。特に、スルーホールのよう
に、狭い部分の導通に適用する際には、加熱硬化後の銅
ペーストの形状のバラツキは、初期導通抵抗のみなら
ず、長期の導通信頼性にも影響を持っている。従って、
いかにこれらの変動を抑えるかが、銅ペースト開発にお
ける最も重要な課題である。
【0006】これらの課題の解決を目標として、すなわ
ち、銅ペーストの導通性能向上に関する研究は、従来よ
り数多くなされている。例えば、特開昭61−3154
号公報や特開昭63−286477号公報は、銅粉の表
面酸化を抑えるために、還元作用を有する物質を配合す
る技術についての開示している。また、特開平8−73
780号公報には、バインダー樹脂に特定のイミダゾー
ル化合物を配合することにより、クラックの発生を抑え
つつ、同時に十分な硬化収縮を達成でき、その結果、良
好な導通性能を有する銅ペーストについての開示がなさ
れている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、これら
の銅ペースト硬化物の導通性能向上を目標とする一連の
研究成果を踏まえた上で、特に、スルーホールのように
狭い部分の導通に適用する際、最終的な導通特性に一層
大きな影響を及ぼす、硬化形状の更なる安定化を図ると
いう観点から、新規な組成を持つ銅を用いた導電性ペー
ストを開発し、既に特許出願を行った(特願平11−0
22472号)。既に特許出願がなされている、この導
電性ペーストは、具体的には、銅粉、熱硬化性樹脂、キ
レート形成物質、及び下記一般式(I):
【0008】
【化4】
【0009】(式中、Rは、炭素数1〜4の直鎖または
分枝したアルキル基を示し、mは、2〜4を示す)で示
されるアルコキシ基含有変性シリコーン樹脂とを必須成
分として含む導電性ペーストである。主に、添加されて
いるアルコキシ基含有変性シリコーン樹脂の作用によ
り、硬化形状の更なる安定化を達成している。本発明者
ら開発した、かかるアルコキシ基含有変性シリコーン樹
脂を添加した銅ペーストは、スルーホールのように狭い
部分の導通に適用する際、得られる導電層は、その導通
性、長期信頼性に優れている。また、塗布ならびに熱硬
化における作業性も優れた銅ペーストである。
【0010】熱硬化性樹脂を利用する導電性ペーストに
おいては、多かれ少なかれ、内在している課題ではある
が、調製後、この導電性ペーストを、室温付近において
放置すると、僅かずつではあるが、含まれる熱硬化性樹
脂の部分的な重合・縮合が進行し、当初の特性が損なわ
れることが判明した。特に、硬化形状の安定化という効
果は、アルコキシ基含有変性シリコーン樹脂を添加する
ことにより、熱硬化工程初期におけるペーストの流動性
を確保する作用によるが、含まれる熱硬化性樹脂の部分
的な重合・縮合が起こると、当然のことながら、全体の
液粘度が上昇してゆき、本来の効果を相殺してしまう。
【0011】この導電性ペーストを構成している熱硬化
性樹脂部分の品質低下は、熱的な反応であり、保管温度
を下げると実用上全く問題とならない程度に抑制され
る。しかしながら、この種の導電性ペーストは、商業的
には、調製後、容器詰めされた後、購入者の下に輸送さ
れる間、また、購入者の下でも、実際に使用されるまで
の間、相当の期間、室温で放置されることが少なくな
い。その間に、徐々にではあるが、前記の品質低下が進
むと、その本来有しいる効果が損なわれるため、より長
期、室温保管が可能なように、改善することが望まし
い。
【0012】本発明は前記の課題を解決するもので、本
発明の目的は、先に本発明者らが開発した、上記の銅
粉、熱硬化性樹脂、キレート形成物質、及びアルコキシ
基含有変性シリコーン樹脂を含んでなる銅ペーストの特
質を維持しつつ、その熱硬化性樹脂部分に由来する経時
的な品質劣化を抑制した、新規な組成の導電性ペースト
を提供することにある。より具体的には、上記の銅粉、
熱硬化性樹脂、キレート形成物質、及びアルコキシ基含
有変性シリコーン樹脂の四種の成分自体は、同じく含有
し、それに前記の熱硬化性樹脂部分に由来する経時的な
品質劣化の抑制を可能とする第5の成分を加え、アルコ
キシ基含有変性シリコーン樹脂の添加に伴う効果は実質
的に維持しつつ、室温下で長期保管が可能な新規な組成
の導電性ペーストを提供することにある。加えて、かか
る新規な組成の導電性ペーストを高い再現性で調製可能
な、その調製方法の提供をも本発明は、その目的とす
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課
題を解決すべく、鋭意検討を進める過程において、先
ず、上記の銅粉、熱硬化性樹脂、キレート形成物質、及
びアルコキシ基含有変性シリコーン樹脂を含んでなる銅
ペーストにおいて、室温付近において放置した際、僅か
ずつではあるが、含まれる熱硬化性樹脂の部分的な重合
・縮合が進行し、当初の特性が損なわれる現象の要因の
解明をおこなった結果、添加されているキレート形成物
質が、熱硬化性樹脂の重合・縮合反応を触媒する機能を
も持ち、室温付近においても、この重合・縮合反応が一
旦誘起されると、それに続く、連鎖的な重合・縮合鎖の
伸長は無触媒的にも進行するため、加速度的に液粘度の
上昇が起こることが主な原因であることが判明した。こ
のキレート形成物質が触媒する熱硬化性樹脂の重合・縮
合反応の誘起を抑制しつつ、一方では、キレート形成物
質を添加する本来の目的である銅粉表面を被覆する酸化
膜層の排除を両立させる手段を探索することを目的とし
て、さらに検討を進めた結果、前記キレート形成物質
は、銅に対して配位する際、例えば、窒素原子上の孤立
電子対を利用するが、重合・縮合反応の誘起も、この孤
立電子対の作用に由来しているという結論を得た。すな
わち、保管がなされる室温程度の温度領域では、熱硬化
性樹脂に作用する自由なキレート形成物質の実効的濃度
は低下させることができ、ただし、その際、銅に対する
キレート形成物質の配位効率自体には本質的に影響を及
ぼさないような手段を用いると、好ましくない、室温程
度の温度領域における、重合・縮合反応の誘起のみを抑
制できるという着想を得た。この着想を現実のものとす
るため、更なる考察と実験を加え、キレート形成物質と
比較的に安定な複合体を形成する、具体的には、そのル
イス塩基性を与える孤立電子対を持つ窒素原子などと付
加塩を形成可能な酸素酸やその部分エステルまたはアミ
ドを少量共存させると、銅に対して配位するキレート形
成物質には本質的に影響を与えず、一方、余剰なキレー
ト形成物質は、系内に添加されている酸素酸により選択
的に付加塩の形成に関わり、その触媒としての機能は、
実質的に発揮されない程度に低減できることを見出し
た。より具体的には、添加されるキレート形成物質と付
加塩を形成可能な酸素酸やその部分エステルまたはアミ
ドを、キレート形成物質1分子当たり、0.1〜0.9
分子に相当する量の範囲に選択する含有量で、キレート
形成物質と合わせて添加すると、室温程度の温度領域に
おける、重合・縮合反応の誘起は効果的に抑制されるも
のの、キレート形成物質の添加による作用自体は、概ね
維持され、また、熱硬化過程におけるアルコキシ基含有
変性シリコーン樹脂の添加に伴う効果も実質的に維持さ
れることを本発明者らは確認し、本発明を完成するに至
った。
【0014】すなわち、本発明の導電性ペーストは、銅
粉と熱硬化性樹脂とを主成分として含有してなる導電性
ペーストであって、さらに、キレート形成物質と下記一
般式(I):
【0015】
【化5】
【0016】(式中、Rは、炭素数1〜4の直鎖または
分枝のアルキル基を示し、mは、2〜4を示す)で表さ
れるアルコキシ基含有変性シリコーン樹脂を必須な成分
として含有し、前記キレート形成物質と付加塩形成可能
な酸素酸あるいはその部分エステルまたはアミドを、前
記キレート形成物質1分子当たり、0.1〜0.9分子
に相当する量の範囲に選択する含有量で添加してなるこ
とを特徴とする導電性ペーストである。好ましくは、前
記組成中、キレート形成物質は、下記一般式(II):
【0017】
【化6】
【0018】(式中、nは、2〜8を示す)で表される
ポリピリジンならびに1,10−フェナントロリンから
なる含窒素複素芳香環化合物の群から選択される多座配
位子化合物であることを特徴とする導電性ペーストに構
成する。その際、銅粉100質量部当たり、前記多座配
位子となるキレート形成物質を0.1質量部〜0.8質
量部の範囲で含む組成を選択することがより好ましい。
【0019】なお、熱硬化性樹脂は、フェノールまたは
フェノール誘導体をアルカリ触媒下でホルムアルデヒド
と反応して得られるレゾール型フェノール樹脂であるこ
とが好ましい。
【0020】加えて、キレート形成物質と付加塩形成可
能な酸素酸あるいはその部分エステルまたはアミドは、
炭素数2以上の飽和または不飽和な一塩基カルボン酸、
ならびに飽和または不飽和な多塩基カルボン酸あるいは
その部分エステルまたはアミドからなる有機カルボン酸
またはその誘導体の群から選択されることが好ましい。
【0021】また、本発明の導電性ペーストの調製方法
は、上にその組成を記載した導電性ペーストを調製する
方法であって、前記キレート形成物質と、前記酸素酸あ
るいはその部分エステルまたはアミドとを溶解可能な溶
剤に、銅粉と前記キレート形成物質、ならびに、所定量
の前記酸素酸あるいはその部分エステルまたはアミドと
を加え、均一に攪拌混合して、銅粉分散液を調製する第
1の工程と、前記銅粉分散液に、熱硬化性樹脂と前記一
般式(I)で表されるアルコキシ基含有変性シリコーン
樹脂とを加え混練する第2の工程とを含むことを特徴と
する導電性ペーストの調製方法である。
【0022】かかる本発明の導電性ペーストの調製方法
は、導電性ペーストに含有されるキレート形成物質が、
下記一般式(II):
【0023】
【化7】
【0024】(式中、nは、2〜8を示す)で表される
ポリピリジンならびに1,10−フェナントロリンから
なる含窒素複素芳香環化合物の群から選択される多座配
位子化合物であることを特徴とする前記の導電性ペース
トの調製に際して、好ましい方法である。さらに、導電
性ペーストは、銅粉100質量部当たり、前記多座配位
子となるキレート形成物質を0.1質量部〜0.8質量
部の範囲で含むことを特徴とする調製方法とすると、上
記の導電性ペーストの調製に際して、より好適な方法と
なる。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の導電性ペーストは、一旦
溶剤除去などの目的で、低温での加熱乾燥後、高温で熱
硬化のための処理を行うタイプの熱硬化型の導電性ペー
ストである。詳しくは、銅ペーストをプリント配線板に
設けられたスルーホールに埋め込んだ後に、ボックス型
加熱炉等を用いて加熱を開始し、50〜70℃の比較的
低温で、1時間〜4時間程度保持し、さらに140〜1
60℃の温度に昇温し、0.5〜2時間程度で硬化を完
了させるプロファイルを想定する導電性ペーストとなっ
ている。従って、先に本発明者らが特許出願(特願平1
1−022472号)した導電性ペーストと調製直後に
おいて、その性能は実質的に同じになるように、設計さ
れているものである。
【0026】従って、本発明の導電性ペーストの特徴
も、主成分と熱硬化性樹脂に加えて、熱硬化性樹脂と相
溶性に富み、また、可撓性をも有する一般式(I)で表
されるアルコキシ基含有変性シリコーン樹脂を添加し、
一方、銅粉に対して作用して、その表面に存在する自然
酸化に伴う銅酸化膜に由来する銅イオンをキレート化可
能なキレート形成物質を添加することによる効果、具体
的には、アルコキシ基含有変性シリコーン樹脂を添加す
ることで、熱硬化の初期、例えば、温度70〜80℃に
おいて、導電性ペースト中に含まれる揮発成分、あるい
は、塗布の際、取り込まれた気泡、塗布されるプリント
基板の表面、スルーホール断面に由来する気泡の離脱が
可能は液流動性、液の可撓性をある時期維持することに
ある。ただし、キレート形成物質が余剰に存在する際、
このキレート形成物質は、熱硬化性樹脂の重合・縮合反
応を室温付近でも誘起する触媒機能を有するため、従前
の導電性ペーストを調製後、室温付近で長期に保管する
間に、前記の触媒作用に伴い、熱硬化性樹脂分子の部分
的な重合・縮合が進行し、液粘性の上昇が引き起こさ
れ、本来の目的、一般式(I)で表されるアルコキシ基
含有変性シリコーン樹脂の添加による、熱硬化の初期、
例えば、温度70〜80℃における液流動性の維持する
効果が大幅に減ぜられる。このキレート形成物質の副次
的な機能に由来する不具合に対する本質的な解消法とし
て、室温付近では、余剰のキレート形成物質を不活性化
する目的で、キレート形成物質と付加塩形成可能な酸素
酸あるいはその部分エステルまたはアミドを適量添加す
る点が、本発明の導電性ペーストにおける最も特徴的な
構成上の改善点である。
【0027】本発明の導電性ペーストに添加するアルコ
キシ基含有変性シリコーン樹脂は、熱硬化性樹脂と直接
に反応する官能基を有しないこと、また、極性基である
アルコキシ基の存在によって熱硬化性樹脂との相溶性が
非常に高いこと、さらには、シロキサン主鎖が可撓性を
有する特徴を持っている。これらの性質を利用して、熱
硬化性樹脂に添加して、熱硬化の際、特にその初期に、
プリント基板表面に吸着している揮発性物質、気体、な
らびに、導電性ペースト自体に含まれる溶剤の蒸発・気
化により発生する気泡が離脱する際、ペーストの流動性
を維持する効果を有している。また、スルーホール内に
導電性ペーストを流し込む際、たまたま、気泡を含むこ
ともあるが、これも、流動性を維持する間に、膨張しつ
つ、孔内部から離脱し、所望の貫通孔が形成される。同
程度の可撓性を有する樹脂化合物として、ポリブタジエ
ン、ニトリル系のゴム等を挙げることができるが、本発
明の導電性ペーストで用いるアルコキシ基含有変性シリ
コーン樹脂と比較すると、熱硬化性樹脂との相溶性に劣
り、上記の目的は達成されない。また、硬化過程で相分
離すると、寧ろ逆効果となる。
【0028】なお、アルコキシ基含有変性シリコーン樹
脂は、アルコキシ基が加水分解すると、水酸基を生成す
る。仮に、水酸基に変化した場合、さらに銅粉から溶出
した銅イオンが存在すると、その作用で高分子化するこ
とが予想される。この高分子化は、ペースト全体を増粘
させる結果となり、アルコキシ基含有変性シリコーン樹
脂の添加目的に反するものである。キレート形成物質を
加え、予め銅イオンをキレート化して捕獲することによ
り、銅イオンが反応助長作用を示す、この高分子化反応
の抑制を図っている。更には、銅イオンのキレート化に
よる捕獲は、硬化過程を含めて、安定化させる効果も有
する。
【0029】以下に本発明の導電性ペーストに関して、
より詳しく説明を加える。
【0030】本発明の導電性ペーストで用いる銅粉は、
特に種類を問わないが、電解銅粉、アトマイズ銅粉等を
挙げることができる。銅粉形状としては、樹枝状粉、フ
レーク状銅粉、球状粉等を挙げることができるが、その
粒径、配合量は、得られる導電性ペーストの粘度など、
塗布の際における作業性を考慮して、適宜選択される。
また、銅粉は水素還元されていてもよく、また高級脂肪
酸や各種カップリング剤により、表面処理が施されてい
ても良い。例えば、T−22、T−33(いずれも三井
金属鉱業(株)製)、FCC−SP−99F(福田金属
箔粉工業(株)製)等を挙げることができる。なお、用
いる銅粉は、酸化防止のため、少量の亜鉛粉末を添加し
たものを用いることもできる。
【0031】粒径や粒子形状など、更には、用いる熱硬
化樹脂の収縮率にも依るが、十分な導通性能を得るため
には、通常、銅粉の配合量として、硬化後の硬化物に占
める銅粉の割合が、70〜90質量%、好ましくは75
〜83質量%になるように、導電性ペースト中における
含有率を選択することが好ましい。導電性ペースト中に
は、必要に応じて、溶媒が含有されるが、硬化後の硬化
物は、本質的にかかる溶媒は含有されない。従って、導
電性ペースト中における銅粉の含有率は、含まれる溶剤
を除く、導電性ペーストの構成成分総和に対して、前記
の比率で配合することが望ましい。
【0032】本発明の導電性ペーストを構成する主成分
である熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ
樹脂などを挙げることができる。通常、熱硬化性樹脂は
単一種類を用いることが多いが、室温付近において、相
互の反応がない限り、複数種類の樹脂を併用することも
できる。例えば、フェノール樹脂のうち、フェノールま
たはフェノール誘導体とホルムアルデヒドを酸触媒のも
とで反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂で
は、その硬化剤として、ヘキサメチレンテトラミンを混
在させたものが好適な例として挙げることができる。さ
らに、フェノールまたはフェノール誘導体とホルムアル
デヒドをアルカリ触媒のもとで反応させて得られるレゾ
ール型フェノール樹脂は、熱硬化収縮が大きく、また、
プリント配線基板の基板材料や銅箔などとの密着性も高
いことから、本発明の導電性ペーストの用途に一層適し
ている。これらのフェノール樹脂の原料に用いるフェノ
ール誘導体としては、クレゾール、キシレノール、t−
ブチルフェノールなどのアルキルフェノール、さらに
は、フェニルフェノール、レゾルシノール等が挙げられ
る。本発明の導電性ペーストは、その使用目的は、スル
ーホールにおける導通をとることであり、対象となるプ
リント配線基板の基板材料、スルーホールの穴径、なら
びにそのアスペクト比などを考慮して、その接着性、熱
硬化収縮率などの要求特性が定まり、それに応じて、用
いる熱硬化性樹脂の種類は適宜選択される。
【0033】この熱硬化樹脂には、その種類に応じて、
必要ならば、適合する硬化剤を添加する。硬化後の硬化
物において、その樹脂成分の大半は、熱硬化樹脂とその
硬化剤に由来し、その重合・縮合生成物中に前記一般式
(I)の構造を有するアルコキシ基含有変性シリコーン
樹脂が均一に混合される形態が望ましい。熱硬化樹脂自
体の含有率は、配合される銅粉との比率が一定の範囲と
なるように選択すべきものであり、その熱硬化後の収縮
率に依るが、通常、銅粉100質量部に対して、熱硬化
樹脂の配合量を5〜25質量部、特には、10〜20質
量部の範囲に選択することが好ましい。
【0034】本発明の導電性ペーストでは、樹脂成分中
に前記一般式(I)の構造を有するアルコキシ基含有変
性シリコーン樹脂を添加するが、この化合物は、公知の
手法に従い、例えば、フェニルトリアルコキシシランと
メチルトリアルコキシシランとを縮合反応することによ
り得ることができる。
【0035】前記一般式(I)の構造において、アルコ
キシ基を構成するアルキル基Rは、炭素数1〜4の直鎖
または分枝のアルキル基を示す。特に、炭素数2以下の
直鎖のアルキル基を選択すると、フェノール樹脂、エポ
キシ樹脂などの熱硬化性樹脂との相溶性がより高く、本
発明の導電性ペーストにおいては、一層好ましい。
【0036】一般式(I)に示す繰り返しユニットの繰
り返し数mは、2〜4の範囲が好ましい。なお、実際に
は、幾つかのmを持つ化合物の混合物を利用することが
多く、その際には、このmは、分子量分布から求めた平
均値を意味する。当然のことながら、繰り返し数mが小
さいと、揮発性が高くなるものである。
【0037】本発明の導電性ペーストでは、熱硬化工程
において、例えば、導電性ペースト自体に含まれる溶剤
などの揮発性成分が蒸散する際、気泡を形成するが、熱
硬化樹脂が重合・縮合が進み、次第に液粘性が増し、そ
の気泡の離脱が阻害されるのを回避する目的で、可撓性
に富むアルコキシ基含有変性シリコーン樹脂を加えるこ
とで、流動性の維持を図っている。従って、前記の溶剤
などの揮発性成分の蒸散が進む温度、具体的には、50
〜70℃の初期加熱の段階では、添加したアルコキシ基
含有変性シリコーン樹脂は十分に残留していることが望
ましい。従って、繰り返し数mは、分子量分布から求め
た平均値を2以上とすることが望ましい。一方、繰り返
し数mが増すにつれ、熱硬化樹脂との相溶性は低下して
いく。熱硬化樹脂との相溶性が低下すると、その添加す
る目的、すなわち、その可撓性を利用した流動性の維
持、液粘性増加の遅延効果が十分に発揮されなくなる。
この観点からは、繰り返し数mは、その平均値を4以下
とすることが望ましい。
【0038】すなわち、繰り返し数mを2〜4の範囲に
選択すると、熱硬化樹脂との相溶性が良好な範囲であ
り、また、アルコキシ基含有変性シリコーン樹脂自体が
相分離する結果、スクリーン印刷の作業性悪化の要因と
なることもなく、加えて、50〜70℃の初期加熱の段
階で揮発して失われることもないので、導電性ペースト
の流動性、変形の容易さを一定の温度範囲で保持する作
用を十分に発揮し、気泡の抜けを効率的に行う効果が達
成される。このようなアルコキシ基含有変性シリコーン
樹脂の例としては、例えばKR213(信越化学工業
(株)製)を挙げることができる。
【0039】このアルコキシ基含有変性シリコーン樹脂
の配合量としては、熱硬化樹脂100質量部に対して、
アルコキシ基含有変性シリコーン樹脂を3〜30質量
部、好ましくは、5〜20質量部の範囲に選択すること
が好ましい。通常、銅粉100質量部に対して、アルコ
キシ基含有変性シリコーン樹脂の添加量を0.5〜8質
量部、特には、1〜5質量部の範囲に選択することが好
ましい。
【0040】本発明の導電性ペーストに添加されるキレ
ート形成物質は、銅に対してキレート結合が可能な配位
子化合物が利用でき、特に、導電性ペーストの調製に際
し、銅粉に作用させる工程では、有機溶媒中に溶解でき
ることが望ましい。この要件を満たすキレート形成物質
として、二座配位が可能なジアミン類、例えば、エチレ
ンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジ
アミン、トリメチレンジアミン、1,2−ジアミノシク
ロヘキサン、トリエチレンテトラミンなど、芳香環窒素
とアミノ窒素を利用する二座配位子、例えば、2−アミ
ノメチルピリジン、プリン、アデニン、ヒスタミンな
ど、さらには、アセチルアセトナト型の二座配位子を生
成する1,3−ジオン類とその類似化合物、例えば、ア
セチルアセトン、4,4,4−トリフルオロ−1−フェ
ニル−1,3−ブタンジオン、ヘキサフルオロアセチル
アセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、
5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、オ
キシン、2−メチルオキシン、オキシン−5−スルホン
酸、ジメチルグリオキシム、1−ニトロソ−2−ナフト
ール、2−ニトロソ−1−ナフトール、サリチルアルデ
ヒドなどをも挙げることができる。なお、前記アセチル
アセトナト型の二座配位子を生成する1,3−ジオン類
とその類似化合物は、ケト体自体は、キレート化剤では
ないものの、ケト・エノール互変異性をし、エノール体
は酸として機能する結果、プロトンを放出し生成するア
ニオン種はアセチルアセトナト型の二座配位子として機
能が可能となる。
【0041】加えて、芳香環窒素原子二以上を利用する
多座配位子である、上記一般式(II)の構造を有するポ
リピリジン類や1,10−フェナントロリンを好適なキ
レート形成物質の一例として挙げることができる。この
ポリピリジン類や1,10−フェナントロリンは、二座
配位子として、銅イオンを効率的にキレート化でき、生
成したキレート錯体も室温近くでは、比較的に安定であ
る。
【0042】以上に述べた二座配位子あるいは多座配位
子は、効率よく銅イオンを捕捉することができるため、
仮に、これらキレート形成物質と複合体を形成する酸素
酸あるいはその部分エステルまたはアミドを添加しない
際には、キレート形成物質の含有量は、銅粉表面の銅酸
化物に由来する銅イオンを捕獲するためには、少量でよ
い。銅粉の粒径、すなわちその表面積にも依るものの、
銅粉100質量部に対して、通常、キレート形成物質の
含有量は、0.03〜0.5質量部程度の範囲に選択す
ることが好ましい。一般的な自然酸化に伴う銅粉表面の
銅酸化物量であれば、キレート形成物質の含有量が0.
03質量部より少ない場合、添加の効果が少なく、また
0.5質量部以上加えても、性能の向上がそれほど期待
できない。
【0043】しかしながら、本発明の導電性ペーストに
おいては、このキレート形成物質の好ましからざる副次
的な機能、具体的には、熱硬化樹脂の重合・縮合反応を
誘起する触媒作用を抑える目的で、酸素酸あるいはその
部分エステルまたはアミドを添加するため、銅イオンに
対するキレート化の効率も若干低下を被る。従って、前
記の低下を補償する目的で、銅粉100質量部に対し
て、キレート形成物質の含有量は、0.1〜0.8質量
部、好ましくは、0.2〜0.6質量部の範囲に選択す
ることが好ましい。自然酸化に伴う銅粉表面の銅酸化物
量が少ない場合には、キレート形成物質の含有量は比較
的低い範囲に選択することが望ましいことは勿論のこと
である。
【0044】なお、発明者らの検討によると、キレート
形成物質として、特に一般式(II)のポリピリジンまた
は1,10−フェナントロリンを選択すると、得られる
熱硬化物は、高い導通性を示すことを見出した。上記一
般式(II)の構造を有するポリピリジン類と1,10−
フェナントロリンは、ともに芳香環窒素原子二以上を利
用する多座配位子であり、二つの芳香環窒素原子が、中
心の銅原子に対して、互いに隣接する位置に等価な配位
をする。四配位の銅イオンに対して、二分子が配位した
形状をとることができ、そのまま比較的高温領域までキ
レート状態を保つ傾向がある。一旦銅をキレート化した
一般式(II)の構造を有するポリピリジン類や1,10
−フェナントロリンは、熱硬化が活発に進行する温度領
域、例えば、150℃前後に達するとキレート結合を解
消し、その結果、銅粉相互の接触においては、一般式
(II)の構造を有するポリピリジン類や1,10−フェ
ナントロリンのキレート層は阻害要因とはならないと、
推測される。
【0045】一般式(II)で表されるポリピリジンの合
成方法の一例を以下に示す。出発原料をアジ化ナトリウ
ムと加熱混合することによりピリジン骨格の窒素に対し
オルソの位置をアジ化する。続いて、これを臭化酸素酸
中、亜硝酸ナトリウムで処理して臭化ジアゾニウムと
し、引き続きこれに臭素を加えることによりブロモ化す
る。このブロモ化ピリジンを、例えば、DMF(N,N
−ジメチルホルムアミド)中、60℃で、0価ニッケル
錯体により脱ハロゲン化縮重合させると、黄から黄橙色
の沈澱を得る。沈澱を熱トルエン、水、熱トルエンの順
に洗浄し、乾燥することにより目的のポリピリジンを得
る。重合度nの調製は、出発原料の選択、含まれるブロ
モ化ピリジンのブロモ化の度合いによって調整する。な
お、0価ニッケル錯体については、ニッケル−1,5−
オクタジエン錯体と1,5−オクタジエン及びトリアリ
ルホスフィンの等モル混合物を用いる。なお、nが、2
または3のものは、試薬として、精製された単体の化合
物が市販されている。nが4以上の化合物については、
このnが、2または3のものを出発原料として合成する
ことも可能である。
【0046】一般に合成された一般式(II)で表される
ポリピリジンは、再結晶程度の精製では、そのピリジン
骨格の繰り返し数nは、若干の分布を有しており、分子
量分布から求めた平均値を示す。ただし、上記の合成方
法に従うと、n=1のピリジン自体は、沈澱中に混入す
ることはまれであり、nが2以上のもののみを含有する
ことになる。nが2以上のときに、十分なキレート形成
能を発揮する。一方、nが増すにつれ、溶媒への溶解性
は低下して、nが8を超えると溶媒への溶解性が乏しく
なり、所望のキレート形成に要する溶液の調製が次第に
困難となる。従って、本発明の導電性ペーストに添加さ
れるキレート形成物質として、一般式(II)で表される
ポリピリジンを用いる場合には、ピリジン骨格の繰り返
し数nは、2〜8の範囲に選択し、好ましくは、nが2
〜3の範囲のものを利用する。
【0047】本発明の導電性ペーストにおいては、前記
のキレート形成物質は、過剰な量が添加されるが、余剰
なキレート形成物質に由来する好ましくない作用、すな
わち、室温付近での熱硬化性樹脂の部分的重合・縮合を
誘起する機能を抑える目的で、前記キレート形成物質と
付加塩形成可能な酸素酸あるいはその部分エステルまた
はアミドを添加する。例えば、前記の一般式(II)で表
されるポリピリジンや1,10−フェナントロリンは、
芳香環窒素原子は、キレート形成に利用されるが、一方
では、芳香族塩基としての機能を持ち、熱硬化性樹脂の
重合・縮合反応を誘起する作用をも有する。室温では、
その誘起作用は僅かであるが、保管期間が長くになるに
従って、部分的に重合・縮合した熱硬化性樹脂が蓄積し
てゆく。酸素酸あるいはその部分エステルまたはアミド
を添加すると、この芳香族塩基として機能する芳香環窒
素原子に対して、水素原子を付与する付加塩型の複合体
を形成する。その結果、複合体を形成したキレート形成
物質は、熱硬化性樹脂の重合・縮合反応を誘起する作用
が大幅に低減する。この低減効果は、前記の付加塩型の
複合体形成は、最も、塩基の高い芳香環窒素原子におい
てより優先的に起こるため、それ以外の芳香環窒素原子
は、元来芳香族塩基としての機能は格段に劣るため、最
早、熱硬化性樹脂の重合・縮合反応を誘起する作用は示
さないものとなることに拠っている。すなわち、キレー
ト形成に利用されていないキレート形成物質が、二座配
位子または多座配位子であっても、その内の、最も塩基
性に富む部位に付加塩型の複合体形成がなされると、あ
る場合には、立体障害を形成して、熱硬化性樹脂への作
用が起こせなくなる。少なくとも、キレート形成物質中
には、より塩基性に劣る部位しか残っておらず、熱硬化
性樹脂の重合・縮合反応を誘起する作用は極度に低下す
る。何れにしても、キレート形成物質が、二座配位子ま
たは多座配位子であっても、酸素酸あるいはその部分エ
ステルまたはアミドが一分子が複合体形成するのみで、
その触媒機能やキレート形成能をほとんど阻害すること
になる。
【0048】塩基性を示す窒素原子を有するキレート形
成物質のみでなく、前記アセチルアセトナト型の二座配
位子を生成する1,3−ジオン類とその類似化合物に対
しても、酸素酸あるいはその部分エステルまたはアミド
はそのキレート形成能を阻害し、また、触媒機能をも阻
害する。アセチルアセトナト型の二座配位子を生成する
1,3−ジオン類は、先ず、ケト型からエノール型に互
変異性を起こす必要があるが、酸素酸あるいはその部分
エステルまたはアミドは、そのプロトンの転位が生じ易
いカルボニル酸素に対して、その水素を供与する形態で
複合体形成を行う。この複合体を、広い意味では、酸塩
基型の複合体であり、付加塩を形成するものに相当す
る。すなわち、ケト型からエノール型に互変異性を阻害
するため、前記アセチルアセトナト型の二座配位子を生
成する1,3−ジオン類とその類似化合物に対しても、
そのキレート形成能を阻害し、また、触媒機能をも阻害
する。この際にも、最もフロトンを受容され易いカルボ
ニル酸素に対して、複合体形成がより優先的に起こるた
め、キレート形成物質が、二座配位子または多座配位子
であっても、酸素酸あるいはその部分エステルまたはア
ミドが一分子が複合体形成するのみで、その触媒機能や
キレート形成能をほとんど阻害することになる。
【0049】本発明の導電性ペーストに添加される、前
記の機能を有する酸素酸あるいはその部分エステルまた
はアミドは、予め、前記キレート形成物質を銅粉に作用
させた後、余剰なキレート形成物質と複合体を形成でき
ることが必要であり、従って、キレート形成物質を溶解
させる溶媒に溶解するものが好ましい。また、導電性ペ
ーストを室温で保管する間に、容易に蒸散してしまうも
のは、本来の目的に合致せず、従って、有機酸のうちで
も、炭素数2以上の飽和または不飽和な一塩基カルボン
酸、ならびに飽和または不飽和な多塩基カルボン酸ある
いはその部分エステルまたはアミド、さらには、対応す
る有機スルホン酸、有機溶媒に可溶である酸性リン酸エ
ステル類、例えば、ブチル・アシッドホスフェート、オ
クチル・アシッドホスフェートなどが利用できる。なか
でも、炭素数2以上の飽和または不飽和な一塩基カルボ
ン酸、ならびに飽和または不飽和な多塩基カルボン酸あ
るいはその部分エステルまたはアミドなどの、有機カル
ボン酸またはその誘導体の群から選択することが好まし
い。なかでも、有機カルボン酸、具体的には、酢酸、プ
ロピオン酸、ステアリン酸、オレイン酸、コハク酸、セ
バシン酸、各種のダイマー酸など、炭素数2以上の飽和
または不飽和な一塩基カルボン酸、ならびに飽和または
不飽和な多塩基カルボン酸であって、室温付近でも液状
を示すものが望ましい。加えて、本発明の導電性ペース
トは、熱硬化の工程において、比較的に低い温度域、例
えば、70〜80℃前後に相当時間、例えば、1〜3時
間程度維持することも予想され、その際にも、蒸散し
て、含有量が著しく減少しないものがより望ましい。従
って、2−エチルヘキサン酸のような液状モノカルボン
酸であって、炭素数が5以上の蒸散性に劣るものは、よ
り好ましく利用できる。さらには、分岐を有すると、付
加体を形成した際、立体障害を形成する効果も期待で
き、一般に一層好ましい。
【0050】このキレート形成物質と付加塩形成可能な
酸素酸あるいはその部分エステルまたはアミドは、本
来、余剰のキレート形成物質の不活性化を果たす目的で
添加するものであり、キレート形成物質の添加量に応じ
て、その添加量を適宜選択するものである。一般に、キ
レート形成物質1分子当たり、酸素酸あるいはその部分
エステルまたはアミドは、0.1〜0.9分子に相当す
る量を添加するが、銅酸化物の量が少なく、それに伴
い、キレート形成物質の添加量自体を減少させる際に
は、酸素酸あるいはその部分エステルまたはアミドは、
0.15〜0.5分子の範囲に選択すると好ましい。な
お、銅酸化物の量自体は変動を生じ易く、それを考慮し
て、キレート形成物質の添加量を若干多めに設定し、そ
の際、キレート形成物質1分子当たり、酸素酸あるいは
その部分エステルまたはアミドを、0.2〜0.8分
子、より好ましくは、0.2〜0.5分子の範囲で添加
し、十分に高いキレート化効率と、一方、長期保管時の
安定性の向上を図るのがより、現実的である。
【0051】以上、本発明の導電性ペーストの主な構成
成分について説明を行ったが、必要に応じて、また、慣
用の範囲内で、溶剤、消泡剤、沈降防止剤、分散剤、カ
ップリング剤などを適宜加えることができる。
【0052】本発明の導電性ペーストに添加することが
できる溶剤としては、熱硬化樹脂とは反応をぜす、キレ
ート形成物質やそれと複合体を形成する酸素酸あるいは
その部分エステルまたはアミドを溶解可能な溶剤を選択
することができる。例えば、エチルセロソルブ、メチル
セロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブアセ
テート、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソル
ブアセテート、エチルカルビトール、メチルカルビトー
ル、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテー
ト、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトー
ルアセテート等が挙げられる。
【0053】また、カップリング剤として、導電性ペー
ストのポットライフを悪化させない範囲で、銅に対して
有効なカップリング剤、例えば、シラン系カップリング
剤を適宜添加することもできる。本発明の導電性ペース
トにおいて、好ましいカップリング剤種は、例えば、γ
−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリ
シドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−
アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメ
チルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘ
キシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピ
ルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロ
ピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。こ
れらは、揮発性が低く、熱硬化性樹脂との反応性が低い
という要件を満足するものである。カップリング剤の添
加量も、導電性ペーストに含有する銅粉の量に応じて、
適宜選択すべきものであり、銅粉100質量部に対し
て、1〜10質量部の範囲で密着性等を考慮して決めら
れる。
【0054】次に、本発明の導電性ペーストの調製方法
について説明する。
【0055】銅粉、熱硬化性樹脂、アルコキシ基含有変
性シリコーン樹脂、キレート形成物質、ならびに、酸素
酸またはその部分エステルあるいは部分アミドの主構成
成分、さらには、その他必要に応じて、カップリング
剤、溶剤等の添加剤を配合し、せん断応力を付加するこ
とにより、均一混練し、導電性ペーストを調製すること
ができる。せん断応力を付加する方法としては、例え
ば、ニーダー、三本ロール等の通常用いられる混練装置
の他、特に、密閉系で混練可能な自転−公転併用のライ
カイ器あるいは撹拌脱泡器(例えば、MS−SNB−2
000:松尾産業(株)製)などを好適に用いることが
できる。また、混練の際、銅粉の酸化が過度に進行しな
いようにすることが好ましい。
【0056】各種構成成分の配合の仕方としては、全成
分を一度に配合することも可能であるが、銅粉に対する
キレート形成物質による処理をより確実にするため、先
ず、銅粉をキレート形成物質を溶媒に溶解した溶液中に
投じて、予めキレート形成物質による処理を施す工程
と、熱硬化性樹脂、アルコキシ基含有変性シリコーン樹
脂など、樹脂成分、その他の添加物を加え、ペーストに
混練する工程とに分けて導電性ペーストを調製すること
が好ましい。なお、酸素酸またはその部分エステルある
いは部分アミドは、前記のキレート形成物質による処理
を施す工程の際、余剰のキレート形成物質を不活性化す
るため、添加することがより好ましい。このように、二
段階の混合工程を用いることにより、それぞれ目的とす
る処理がなされ、得られる導電性ペーストの導通性能、
その保管特性は、一層の安定化がなされる。
【0057】まず、第1工程を以下に示す方法により行
う。銅粉、キレート形成物質(例えば、2,2’−ビピ
リジル(一般式(II)のポリピリジンにおいてn=2に
相当))に溶剤を加え、高速撹拌する。このとき、溶出
した銅イオンが、キレート形成物質とキレートを形成す
るために、分散液の色は青く変色する。この第1工程に
おいて、銅粉に作用してキレート形成を行った後にも、
残余しているキレート形成物質を不活性化する、酸素酸
またはその部分エステルあるいは部分アミドも所定量を
加え、均一に混合する。得られる液は、銅粉表面の自然
酸化膜に由来する銅イオンはキレート形成され、溶媒中
に溶解し、銅粉自体は、分散した分散液がとなる。この
際、前記のキレート形成過程を阻害せず、溶媒に溶解す
ることが好ましいその他の添加物、例えば、沈降防止
剤、分散剤なども同時に添加することもできる。
【0058】次いで第2工程を以下に示す方法により行
う。熱硬化性樹脂(例えば、レゾール型フェノール樹
脂)ならびにアルコキシ基含有変性シリコーン樹脂を添
加し撹拌する。この際に、熱硬化性樹脂として用いるフ
ェノール樹脂中に銅キレートが取り込まれ、黒く変色す
る。さらに、必要に応じてシランカップリング剤、消泡
剤、追加の溶剤等の添加剤を加え、先に示した混練装置
を用いて混練することにより銅ペーストを完成させる。
【0059】以上の2つの工程に分けることにより、確
実に銅粉をキレート形成物質で処理でき、導通性能がよ
り安定化し、さらには、ポットライフ、シェルフライフ
等をのばすことが可能である。なお、完成した導電性ペ
ーストの粘度調整、または揮発分調整等の目的で、さら
に溶剤等を添加することも可能である。
【0060】調製される導電性ペーストの粘度は、塗布
方法により若干異なるものの、多用されるスクリーン印
刷法用には、例えば、市販の粘度計(Viscometer PC
−1TL(株)マルコム製)において、1000〜50
00cpsの範囲に選択することが適当である。
【0061】
【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的
に説明する。実施例は、本発明の最良の実施の形態の一
例を示すものの、本発明は、かかる実施例に限定される
ものではない。
【0062】(実施例1)キレート形成物質に用いる
2,2’−ビピリジル1分子に対して、有機カルボン酸
として、一塩基酸の2−エチルヘキサン酸を0.15分
子を用いて、下記の導電性ペーストを調製した。
【0063】銅粉(T−22三井金属鉱業(株)製)1
00質量部に対して、キレート形成物質として、2,
2’−ビピリジルを0.5質量部、その溶剤として、エ
チルセロソルブアセテートを10質量部、さらに、2−
エチルヘキサン酸を0.07質量部を加え、自転−公転
撹拌脱泡器(松尾産業(株)製)を用いて撹拌を行っ
た。この時に、攪拌に従って、分散液の色は、青色とな
った。
【0064】次いで、この分散液に、熱硬化性樹脂とし
て、フェノールとホルムアルデヒドをアルカリ触媒下で
反応して得られる分子量約20,000のレゾール型フ
ェノール樹脂20質量部、ならびに、アルコキシ基含有
変性シリコーン樹脂として、KR213(信越化学工業
(株))3質量部を加え、撹拌子の自転、公転による撹
拌を、約5分間行い、導電性ペーストを調製した。
【0065】(実施例2)キレート形成物質に用いる
2,2’−ビピリジル1分子に対して、有機カルボン酸
として、一塩基酸の2−エチルヘキサン酸を0.22分
子を用いて、下記の導電性ペーストを調製した。
【0066】銅粉(T−22三井金属鉱業(株)製)1
00質量部に対して、キレート形成物質として、2,
2’−ビピリジルを0.5質量部、その溶剤として、エ
チルセロソルブアセテートを10質量部、さらに、2−
エチルヘキサン酸を0.1質量部を加え、自転−公転撹
拌脱泡器(松尾産業(株)製)を用いて撹拌を行った。
この時に、攪拌に従って、分散液の色は、青色となっ
た。
【0067】次いで、この分散液に、熱硬化性樹脂とし
て、フェノールとホルムアルデヒドをアルカリ触媒下で
反応して得られる分子量約20,000のレゾール型フ
ェノール樹脂20質量部、ならびに、アルコキシ基含有
変性シリコーン樹脂として、KR213(信越化学工業
(株))3質量部を加え、撹拌子の自転、公転による撹
拌を、約5分間行い、導電性ペーストを調製した。
【0068】(実施例3)キレート形成物質に用いる
2,2’−ビピリジル1分子に対して、有機カルボン酸
として、一塩基酸の2−エチルヘキサン酸を0.50分
子を用いて、下記の導電性ペーストを調製した。
【0069】銅粉(T−22三井金属鉱業(株)製)1
00質量部に対して、キレート形成物質として、2,
2’−ビピリジルを0.5質量部、その溶剤として、エ
チルセロソルブアセテートを10質量部、さらに、2−
エチルヘキサン酸を0.23質量部を加え、自転−公転
撹拌脱泡器(松尾産業(株)製)を用いて撹拌を行っ
た。この時に、攪拌に従って、分散液の色は、青色とな
った。
【0070】次いで、この分散液に、熱硬化性樹脂とし
て、フェノールとホルムアルデヒドをアルカリ触媒下で
反応して得られる分子量約20,000のレゾール型フ
ェノール樹脂20質量部、ならびに、アルコキシ基含有
変性シリコーン樹脂として、KR213(信越化学工業
(株))3質量部を加え、撹拌子の自転、公転による撹
拌を、約5分間行い、導電性ペーストを調製した。
【0071】(参照例1)本発明の導電性ペーストにお
ける改善の基礎となる、先に本発明者らが提案した導電
性ペーストの一例を参照のために示す。この参照例の導
電性ペーストは、室温付近で長期保管に伴い、調製当初
の性能を失うものの、その当初の導電性ペーストの性能
は、他の導電性ペーストの性能を評価する上の基準とな
るものである。具体的には、調製直後において、目標と
する性能が発揮されるように、キレート形成物質に用い
る2,2’−ビピリジルの添加量を調整し、下記の導電
性ペーストを調製した。
【0072】銅粉(T−22)100質量部に対して、
キレート形成物質として、2,2’−ビピリジルを0.
13質量部、その溶剤として、エチルセロソルブアセテ
ートを10質量部を加え、自転−公転撹拌脱泡器(松尾
産業(株)製)を用いて撹拌を行った。この時に、攪拌
に従って、分散液の色は、青色となった。
【0073】次いで、この分散液に、熱硬化性樹脂とし
て、実施例1と同じ分子量約20,000のレゾール型
フェノール樹脂20質量部、ならびに、アルコキシ基含
有変性シリコーン樹脂として、KR213(前出)3質
量部を加え、撹拌子の自転、公転による撹拌を、約5分
間行い、導電性ペーストを調製した。
【0074】(比較例1)キレート形成物質に用いる
2,2’−ビピリジル1分子に対して、有機カルボン酸
として、一塩基酸の2−エチルヘキサン酸を0.02分
子を用いて、下記の導電性ペーストを調製した。
【0075】銅粉(T−22)100質量部に対して、
キレート形成物質として、2,2’−ビピリジルを0.
5質量部、その溶剤として、エチルセロソルブアセテー
トを10質量部、さらに、2−エチルヘキサン酸を0.
01質量部を加え、自転−公転撹拌脱泡器(松尾産業
(株)製)を用いて撹拌を行った。この時に、攪拌に従
って、分散液の色は、青色となった。
【0076】次いで、この分散液に、熱硬化性樹脂とし
て、実施例1と同じ分子量約20,000のレゾール型
フェノール樹脂20質量部、ならびに、アルコキシ基含
有変性シリコーン樹脂として、KR213(前出)3質
量部を加え、撹拌子の自転、公転による撹拌を、約5分
間行い、導電性ペーストを調製した。
【0077】(比較例2)キレート形成物質に用いる
2,2’−ビピリジル1分子に対して、有機カルボン酸
として、一塩基酸の2−エチルヘキサン酸を1.08分
子を用いて、下記の導電性ペーストを調製した。
【0078】銅粉(T−22)100質量部に対して、
キレート形成物質として、2,2’−ビピリジルを0.
5質量部、その溶剤として、エチルセロソルブアセテー
トを10質量部、さらに、2−エチルヘキサン酸を0.
5質量部を加え、自転−公転撹拌脱泡器(松尾産業
(株)製)を用いて撹拌を行った。この時に、攪拌に従
って、分散液の色は、一旦青色となった。
【0079】次いで、この分散液に、熱硬化性樹脂とし
て、実施例1と同じ分子量約20,000のレゾール型
フェノール樹脂20質量部、ならびに、アルコキシ基含
有変性シリコーン樹脂として、KR213(前出)3質
量部を加え、撹拌子の自転、公転による撹拌を、約5分
間行い、導電性ペーストを調製した。
【0080】上記の6種の導電性ペーストについて、調
製直後に、スルーホール抵抗、硬化後の形状の評価を行
った。加えて、夏季における長期保管に相当する、30
℃20日間、さらに、極めて過酷な条件である、40℃
20日間の高温放置後、同じく、スルーホール抵抗、硬
化後の形状、ならびに保存安定性を評価した。なお、併
せて、室温(約23℃)3日間の保管後において、スル
ーホール抵抗、硬化後の形状、ならびに保存安定性を評
価した。表1に評価結果を併せて示す。なお、各評価の
評価方法については、以下に示す。
【0081】スルーホール抵抗の評価方法:1.6mm
厚銀スルーホール対応紙フェノール基材に、ドリル加工
により、0.5mmφの孔を100穴あけ、スクリーン
印刷により、導電性ペーストの埋め込みを行った。50
℃、2時間の予備加熱を行った後、150℃、1時間の
硬化を行った。なお、この基板は、100穴のスルーホ
ールが、基板表裏の回路により直列に結線されており、
末端スルーホール間の導通抵抗を測定することにより、
100穴の直列のスルーホール抵抗の測定が可能であ
る。この100穴スルーホールの抵抗値を1穴あたりに
換算したものをスルーホール抵抗とした。
【0082】硬化後の形状の評価方法:スルーホール抵
抗を評価した基板を、スルーホールの位置で断面カット
し、ペースト硬化後、貫通孔内部の形状、特に、孔を塞
ぐような蓋状のフクレ部位の有無について観察を行っ
た。
【0083】保存安定性の評価方法:導電性ペースト調
製直後の粘度と、所定の温度条件・期間保管した後の粘
度とを粘度計(Viscometer PC−1TL(株)マルコ
ム製)で測定し、保管中に生じた粘度の上昇率を算定し
た。
【0084】
【表1】
【0085】表1に示す評価結果から、実施例1〜3と
参照例1の導電性ペーストとを比較すると、調製直後に
おける性能は全く遜色のないことが判る。一方、比較例
2の導電性ペーストでは、調製直後においても、スルー
ホール抵抗は、参照例1の導電性ペーストの値より、有
意に高いものとなっている。実施例1〜3の導電性ペー
ストにおいては、キレート形成物質である2,2’−ビ
ピリジルの0.5質量部に対して、2−エチルヘキサン
酸を0.07〜0.23重量部添加し、キレート形成物
質1分子当たり、一塩基カルボン酸を0.15〜0.5
0分子と、少なくとも等モル量に満たない、0.9分子
以下の範囲、好ましくは0.5分子以下の範囲とする
が、比較例2の導電性ペーストでは、2−エチルヘキサ
ン酸の添加量は、キレート形成物質1分子当たり、一塩
基カルボン酸を1.08分子と、等モル量を超える値と
なっている。従って、前記の差異は、銅粉表面の自然酸
化による銅酸化物に由来する銅イオンのキレート化に係
わるキレート形成物質の実効的な濃度が比較例2では、
有意に減少していることを反映している。
【0086】すなわち、キレート形成物質である2,
2’−ビピリジルに対して作用し、それと付加塩型の複
合体形成が可能な、一塩基カルボン酸の2−エチルヘキ
サン酸を添加すると、キレート形成物質の不活性化を起
こさせ、キレート形成ならびに熱硬化樹脂の重合・縮合
を誘起する触媒的機能を低下するが、キレート形成物質
1分子当たり、酸素酸などを0.9分子以下、好ましく
は、0.5分子以下に選択すると、十分なキレート形成
は維持されることが確認される。
【0087】長期保管時の性能安定性に関しては、参照
例1と比較例1の導電性ペーストは、有意な差はない。
勿論、キレート形成物質と付加塩型の複合体形成が可能
な酸素酸など、この場合、一塩基カルボン酸の2−エチ
ルヘキサン酸を添加すると、キレート形成物質が示す、
室温付近において熱硬化樹脂の重合・縮合を誘起する触
媒的機能を低下させるものの、キレート形成物質1分子
当たり、酸素酸などが0.1分子に満たない際には、そ
の調整効果は、目的を達成するには十分でないと判断さ
れる。勿論、当初添加されるキレート形成物質の量、ま
た、キレート形成物質が主に消費されるキレート化反応
の対象、すなわち、銅粉表面の自然酸化による銅酸化物
に由来する銅イオン量にも依存するものの、キレート形
成物質1分子当たり、酸素酸などを0.1分子〜0.9
分子の範囲、好ましくは、0.15分子〜0.5分子の
範囲で添加すると、所望のキレート化反応には実質的な
影響を及ぼさず、しかしながら、不用な室温付近におい
て熱硬化樹脂の重合・縮合を誘起する触媒的機能のみ
は、本質的に排除が可能となることが確認される。
【0088】例えば、実施例2の導電性ペーストは、参
照例1の導電性ペーストとを比較すると、添加されてい
るキレート形成物質の2,2’−ビピリジルは0.5質
量部と、約4倍量に増しているものの、2−エチルヘキ
サン酸を0.1重量部、キレート形成物質1分子当た
り、一塩基カルボン酸を0.22分子に相当する量を添
加することにより、当初の性能は同じであるが、30
℃、20日間と、高温で長期に保管した際にも、当初の
性能をほぼ維持することが可能となることが判る。
【0089】なお、当初、添加するキレート形成物質の
添加量が少なくなると、余剰のキレート形成物質の量も
少なくなり、それに併せて、添加される酸素酸などの添
加量比率も低くすると望ましい。具体的には、前記参照
例1の導電性ペーストの組成に、2−エチルヘキサン酸
を少量加えると、実施例2の導電性ペーストのように、
長期保管時の性能安定化がなされるが、その際には、実
施例2の導電性ペーストにおけるキレート形成物質と添
加される酸素酸などの添加量比率よりも、低い比率にお
いて、より好ましい結果が得られるものである。
【0090】上記の評価においては、極めて過酷な保管
条件、40℃、20日間についても、評価を行ったが、
最終的には、実施例1の導電性ペーストならびに比較例
2の導電性ペーストであっても、明らかな性能の低下を
引き起こしている。しかしながら、その途中過程におい
ては、例えば、1週間程度であれば、40℃において保
管しても、30℃、20日間の保管による性能低下を超
えない程度の性能低下であることが判明している。
【0091】
【発明の効果】本発明の導電性ペーストは、熱硬化性樹
脂に上記一般式(I)に示されるアルコキシ基含有変性
シリコーン樹脂少量を配合して、硬化過程において、例
えば、スルーホール内部に気泡を形成して溜まりやすい
揮発分が容易に脱離し、良好な硬化形状が安定して形成
することを可能しつつ、同時に、キレート形成物質を添
加し、銅粉表面の酸化膜に由来する銅イオンをキレート
化して分離し、一方で、このキレート形成物質の添加に
起因する熱硬化性樹脂などの室温付近での部分的な重合
・縮合を、有機カルボン酸などの酸素酸やその酸性誘導
体を補足的に添加して、長期の性能安定性を格段に向上
させる利点を有する。本発明の導電性ペーストは、調製
当初の性能を、室温付近に長期に保管した際にも、維持
できるため、商業的に生産した後、遠方への輸送の際、
品質の変化が起こらずより商品性が高いものとなる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 5/3437 C08K 5/3437 5/5419 5/5419 C08L 61/10 C08L 61/10 79/04 79/04 Z 83/06 83/06 101/00 101/00 H05K 1/09 H05K 1/09 D Fターム(参考) 4E351 BB01 BB24 BB31 CC11 DD04 DD52 EE02 EE03 EE11 EE15 EE17 GG11 4J002 CC051 CD001 CM022 CP052 DA076 EF038 EF048 EF058 EH038 EH088 EP018 EU047 EU067 EX037 FD116 GQ00 GQ02 HA08 5G301 DA06 DA42 DA55 DD01 DE01

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅粉と熱硬化性樹脂とを主成分として含
    有してなる導電性ペーストであって、 さらに、キレート形成物質と下記一般式(I): 【化1】 (式中、Rは、炭素数1〜4の直鎖または分枝のアルキ
    ル基を示し、mは、2〜4を示す)で表されるアルコキ
    シ基含有変性シリコーン樹脂を必須な成分として含有
    し、 前記キレート形成物質と付加塩形成可能な酸素酸あるい
    はその部分エステルまたはアミドを、前記キレート形成
    物質1分子当たり、0.1〜0.9分子に相当する量の
    範囲に選択する含有量で添加してなることを特徴とする
    導電性ペースト。
  2. 【請求項2】 キレート形成物質は、下記一般式(I
    I): 【化2】 (式中、nは、2〜8を示す)で表されるポリピリジン
    ならびに1,10−フェナントロリンからなる含窒素複
    素芳香環化合物の群から選択される多座配位子化合物で
    あることを特徴とする請求項1記載の導電性ペースト。
  3. 【請求項3】 銅粉100質量部当たり、前記多座配位
    子となるキレート形成物質を0.1質量部〜0.8質量
    部の範囲で含むことを特徴とする請求項2記載の導電性
    ペースト。
  4. 【請求項4】 熱硬化性樹脂は、フェノールまたはフェ
    ノール誘導体をアルカリ触媒下でホルムアルデヒドと反
    応して得られるレゾール型フェノール樹脂であることを
    特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペー
    スト。
  5. 【請求項5】 キレート形成物質と付加塩形成可能な酸
    素酸あるいはその部分エステルまたはアミドは、炭素数
    2以上の飽和または不飽和な一塩基カルボン酸、ならび
    に飽和または不飽和な多塩基カルボン酸あるいはその部
    分エステルまたはアミドからなる有機カルボン酸または
    その誘導体の群から選択されることを特徴とする請求項
    1記載の導電性ペースト。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載される導電性ペーストを
    調製する方法であって、 前記キレート形成物質と、前記酸素酸あるいはその部分
    エステルまたはアミドとを溶解可能な溶剤に、銅粉と前
    記キレート形成物質、ならびに、所定量の前記酸素酸あ
    るいはその部分エステルまたはアミドとを加え、均一に
    攪拌混合して、銅粉分散液を調製する第1の工程と、 前記銅粉分散液に、熱硬化性樹脂と前記一般式(I)で
    表されるアルコキシ基含有変性シリコーン樹脂とを加え
    混練する第2の工程とを含むことを特徴とする導電性ペ
    ーストの調製方法。
  7. 【請求項7】 導電性ペーストに含有されるキレート形
    成物質が、下記一般式(II): 【化3】 (式中、nは、2〜8を示す)で表されるポリピリジン
    ならびに1,10−フェナントロリンからなる含窒素複
    素芳香環化合物の群から選択される多座配位子化合物で
    あることを特徴とする請求項6記載の導電性ペーストの
    調製方法。
  8. 【請求項8】 導電性ペーストは、銅粉100質量部当
    たり、前記多座配位子となるキレート形成物質を0.1
    質量部〜0.8質量部の範囲で含むことを特徴とする請
    求項7記載の導電性ペーストの調製方法。
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