JP2002030164A - ポリビニルアルコール系フィルムおよび偏光フィルム - Google Patents

ポリビニルアルコール系フィルムおよび偏光フィルム

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大面積においても均一な光学性能を有する幅
広なポリビニルアルコール系フィルムと、これを用いた
大画面液晶ディスプレイ用に好適な偏光フィルムを提供
する。 【解決手段】 ドラム製膜によって得られたフィルムの
MD方向の引張伸度(S M )とTD方向の引張伸度(S
T )との比(SM /ST )を0.7〜1.3とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大面積においても
均一な光学性能を有する幅広な偏光フィルム用として好
適なポリビニルアルコール系フィルムと、これを用いた
大画面液晶ディスプレイ用に好適な偏光フィルムに関す
る。
【0002】
【従来の技術】光の透過および遮蔽機能を有する偏光板
は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶
ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。こ
のLCDの適用分野も、開発初期の頃の電卓および腕時
計等の小型機器から、最近ではラップトップパソコン、
ワープロ、液晶カラープロジェクター、車載用ナビゲー
ションシステム、液晶テレビ等の広範囲に広がり、大画
面で使用されるようになってきたことから、従来品以上
に大画面における光学性能の均一性に優れた偏光板が求
められている。
【0003】通常の偏光板は、ポリビニルアルコール系
フィルム(以下、これを「PVAフィルム」と略記し、
また、これの原料であるポリビニルアルコールをポリビ
ニルアルコール系重合体と言い、これを「PVA」と略
記することがある)を一軸延伸し、染色することにより
製造した偏光フィルムの両面に、三酢酸セルロース(T
AC)膜などの保護膜を貼り合わせた構成をしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】偏光板の光学性能を均
一化させるためには、厚みの均一なPVAフィルムを用
いること、二色性染料を均一に染めること、斑なくTA
Cと貼り合わせることなど多くの注意点があるが、用い
る素材のPVAフィルムの均一性が特に重要な要素であ
る。
【0005】PVAフィルムの製造法としては、PVA
の溶液もしくは溶融状態(含水)の液をダイから、加熱
したベルトまたはドラムに吐出または押出して乾燥させ
るベルト製膜法およびドラム製膜法が工業的に多用され
ている。
【0006】しかし、ベルト製膜法では、フィルム幅が
2m以上の均一なPVAフィルムを得るのに各種の技術
的な困難を伴う。特に、用途が光学用のPVAフィルム
の場合は、ベルトとして、その継目が均一であること、
および幅2m以上でかつ長さ数十m以上にわたって鏡面
光沢であること等が要求されるため、このことが幅広で
長尺のベルトを製造する上でネックとなっている。
【0007】一方、ドラム製膜法の場合は、これに用い
るドラムとして幅2m以上の継目のない均一なものを工
業的に生産できるが、このドラム製膜法では、得られる
PVAフィルムに厚み斑が発生しやすく、またレタデー
ションの均一性も不十分であった。
【0008】そこで、本発明の目的は、ドラム製膜法を
用いて、大面積においても均一な光学性能を有する幅広
な偏光フィルム用として好適なPVAフィルムと、これ
を用いた大画面液晶ディスプレイ用に好適な偏光フィル
ムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明のPVAフィルムは、ドラム製膜によって得
られたフィルムのMD方向の引張伸度(SM )とTD方
向の引張伸度(ST )との比(SM /ST )を0.7〜
1.3とした。ここで、PVAフィルムの引張伸度は、
PVAフィルムを20℃、65%RHで4時間調湿した
後、TD方向またはMD方向の引張伸度を測定したもの
であり、このPVAフィルムのMD方向とTD方向の引
張伸度の比は、フィルムの引張伸度の異方性を表す指標
となるものである。本発明によれば、大面積においても
均一な光学性能を有する幅広な偏光フィルム用として好
適なPVAフィルムが高い収率で得られる。
【0010】前記PVAフィルムのMD方向とTD方向
の引張伸度の比(SM /ST )の斑は25%以下とし、
含水させたフィルムのMD方向の引張伸度(SWM )は
350%以上とすることが好ましい。また、PVAフィ
ルムの幅は2m以上とすることが好ましい。このPVA
フィルムは、偏光フィルムとして好適に用いられる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面
に基づいて説明する。図1は、PVA溶液または溶融物
からなる製膜原料(有機溶剤などを含んでいても良い)
を、加熱したドラム上に均一に吐出して製膜するドラム
製膜機の一例を示している。この製膜機は、Tダイ1か
ら定量の製膜原料2を、最上流側に位置されて回転する
乾燥用の第1ドラム3上に吐出し、その円周面に接触さ
せて乾燥させる。続いて、複数の乾燥ロール4-1
-2,……,4-nからなる乾燥装置4を通過させて乾燥
し、この後、剥がしロール5により剥がして、最終的に
PVAフィルム6として巻取装置7に巻き取る。このド
ラム製膜機は、モータや変速機などを用いてドラムや各
ロールの速度調整が行われる。前記第1ドラム3として
は、通常、直径1〜5mのニッケル、クロム、銅及びス
テンレススチール等からなる金属ドラムが用いられる。
また、このドラム3の表面には、必要に応じてニッケル
層やクロム層及びニッケル/クロム合金層を単層または
2層以上組み合わせてメッキが施される。また、工程の
途中にフローティング乾燥機や乾燥機内のロールを通過
する乾燥装置、あるいは調湿装置などが付設される場合
もある。
【0012】本発明におけるPVAフィルムのMD方向
の引張伸度(SM )とTD方向の引張伸度(ST )の比
(SM /ST )は、フィルムの引張伸度の異方性を表す
指標であり、フィルムの均一性を知ることができる。こ
のとき、SM /ST は0.7〜1.3とし、好ましくは
0.8〜1.2とし、さらに好ましくは0.9〜1.1
とする。このとき、SM /ST が0.7に満たないと、
延伸性が得られず、偏光性能が劣る場合がある。また、
M /ST が1.3を超えるようなフィルムを製造しよ
うとするとタルミが激しくなり、製膜できなくなる場合
がある。
【0013】また、本発明では、ドラム製膜機により得
られるフィルムのTD方向の引張伸度の比(SM
T )の斑を25%以下とすることが好ましく、より好
ましくは20%以下とする。このとき、引張伸度の比の
斑が25%を超えると、最終的に得られる偏光フィルム
に染色斑が発生したり、光学的な異方性が発生する場合
がある。
【0014】さらに、含水させたフィルムのMD方向の
引張伸度(SWM )は、20℃の水中に24時間浸漬さ
せた後、MD方向の引張伸度を測定したものであり、フ
ィルムの延伸性の尺度を判断するのに用いる簡易法であ
る。含水させたフィルムのMD方向の引張伸度は350
%以上が好ましく、より好ましくは360%以上とす
る。このとき、引張伸度が350%未満になると、偏光
フィルムを製造する際の延伸が不足し、要求される偏光
度が得られない場合がある。
【0015】前記比(SM /ST )が0.7〜1.3、
M /ST の斑が25%以下、SW M が350%以上の
範囲とされたPVAフィルムを得るための方法として
は、例えば、フィルムの揮発分が10%以下となってい
る工程に位置する前記乾燥ロール4-1〜4-nの速度Rc
と、前記巻取装置7による巻取速度Rfとの速度比(R
f/Rc)を0.9〜1.1に制御し、またフローティ
ング乾燥機や乾燥機内のロールを通過する乾燥装置等を
持つ乾燥工程の温度斑を小さくするなどして、PVAフ
ィルムの全幅にわたって均一に乾燥させることが重要で
ある。
【0016】得られるPVAフィルムの平均厚みは20
〜150μmが好ましく、40〜120μmがより好ま
しい。平均厚みが20μm未満になると、偏光フィルム
を製造する際の一軸延伸時に延伸破れが発生する場合が
ある。一方、平均厚みが150μmを超えると、一軸延
伸時に延伸斑が発生する場合がある。
【0017】本発明のPVAフィルムの幅については特
に限定はないが、LCDの大画面用に使用する場合は幅
2m以上とすることが好ましい。
【0018】本発明のPVAフィルムを構成するPVA
としては、ビニルエステル系モノマーを重合して得られ
たビニルエステル系重合体をけん化し、ビニルエステル
単位をビニルアルコール単位としたものを用いることが
できる。そのビニルエステル系モノマーとしては、例え
ば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バ
レリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニ
ル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティッ
ク酸ビニル等を挙げることができ、これらのなかでも酢
酸ビニルを用いるのが好ましい。
【0019】ビニルエステル系モノマーを共重合させる
際には、必要に応じて、共重合可能なモノマーを、発明
の効果を損なわない範囲内(好ましくは15モル%以
下、より好ましくは5モル%以下の割合)で共重合させ
ることもできる。
【0020】このようなビニルエステル系モノマーと共
重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロ
ピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数3〜30の
オレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メ
チル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、ア
クリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリ
ル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2
−エチルへキシル、アクリル酸ドデシルアクリル酸オク
タデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およ
びその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、
メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピ
ル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチ
ル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチル
へキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタ
デシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、
N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミ
ド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアク
リルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸および
その塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよび
その塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導
体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−
メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミ
ド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその
塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびそ
の塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導
体等のメタクリルアミド誘導体;N−ビニルホルムアミ
ド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等
のN−ビニルアミド類;メチルビニルエーテル、エチル
ビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プ
ロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i
−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、
ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等
のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニ
トリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、
フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル
類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイ
ン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およ
びその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラ
ン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル、N−
ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビ
ニルピロリドン等のN−ビニルアミド類を挙げることが
できる。
【0021】前記PVAフィルムを構成するPVAの平
均重合度は、フィルムの強度の点から500以上が好ま
しく、偏光性能の点からは1000以上がより好まし
く、2000以上がさらに好ましく、3500以上が特
に好ましい。一方、PVAの重合度の上限は、フィルム
の製膜性の点から8000以下が好ましく、6000以
下が特に好ましい。平均重合度が8000を超えると、
モノマー重合時の収率が上がらず、効率が低下する場合
がある。
【0022】PVAの重合度(Po )は、JIS K
6726に準じて測定される。すなわちPVAを再けん
化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度
[η](単位:デシリットル/g)から次式により求め
られる。 Po =([η]×103 /8.29)(1/0.62)
【0023】PVAフィルムを構成するPVAのけん化
度は、偏光フィルムの耐久性の点から90モル%以上が
好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%
以上がさらに好ましい。一方、フィルムの染色性の点か
らは99.99モル%以下が好ましい。前記けん化度と
は、けん化によりビニルアルコール単位に変換され得る
単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化され
ている単位の割合を示したものである。なお、PVAの
けん化度は、JIS記載の方法により測定を行った。
【0024】PVAフィルムを製造する際には、可塑剤
として多価アルコールを添加することが好ましい。多価
アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グ
リセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコー
ル、トリメチロールプロパン等を挙げることができ、こ
れらのうち1種または2種以上を使用することができ
る。これらの中でも延伸性向上効果から、エチレングリ
コールまたはグリセリンが好適に使用される。
【0025】多価アルコールの添加量は、PVA100
重量部に対して1〜30重量部が好ましく、3〜25重
量部がさらに好ましく、5〜20重量部が特に好まし
い。1重量部より少ないと、染色性や延伸性が低下する
場合があり、一方、30重量部より多いと、フィルムが
柔軟になりすぎて取り扱い性が低下する場合がある。
【0026】PVAフィルムを製造する際には、界面活
性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の種類とし
ては特に限定はないが、アニオン性またはノニオン性の
界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤として
は、例えば、ラウリン酸カリウムなどのカルボン酸型、
オクチルサルフェートなどの硫酸エステル型、ドデシル
ベンゼンスルホネートなどのスルホン酸型のアニオン性
界面活性剤が好適である。ノニオン性界面活性剤として
は、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなど
のアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンオクチルフ
ェニルエーテルなどのアルキルフェニルエーテル型、ポ
リオキシエチレンラウレートなどのアルキルエステル
型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルなどの
アルキルアミン型、ポリオキシエチレンラウリン酸アミ
ドなどのアルキルアミド型、ポリオキシエチレンポリオ
キシプロピレンエーテルなどのポリプロピレングリコー
ルエーテル型、オレイン酸ジエタノールアミドなどのア
ルカノールアミド型、ポリオキシアルキレンアリルフェ
ニルエーテルなどのアリルフェニルエーテル型などのノ
ニオン性界面活性剤が好適である。これらの界面活性剤
の1種または2種以上の組み合わせで使用することがで
きる。
【0027】界面活性剤の添加量は、PVA100重量
部に対して0.01〜1重量部が好ましく、0.02〜
0.5重量部がさらに好ましく、0.05〜0.3重量
部が特に好ましい。0.01重量部より少ないと、延伸
性向上や染色性向上の効果が現れにくく、一方、1重量
部より多いと、フィルム表面に溶出してブロッキングの
原因になり、取り扱い性が低下する場合がある。
【0028】PVAフィルムを製造する際に使用するP
VA溶液の揮発分濃度は、50〜90重量%が好まし
く、55〜80重量%がより好ましい。揮発分濃度が5
0%より小さいと、粘度が高くなるため製膜が困難とな
る場合がある。一方、揮発分濃度が90%より大きい
と、粘度が低くなり過ぎて、PVAフィルムの厚み均一
性が損なわれ易い傾向がある。
【0029】本発明のPVAフィルムから偏光フィルム
を製造するには、例えばPVAフィルムを染色、一軸延
伸、固定処理、乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を
行えば良い。各工程の順序は特に限定はなく、また染色
と一軸延伸などの二つの工程を同時に実施しても構わな
い。また、各工程を複数回繰り返しても良い。
【0030】染色は、一軸延伸前、一軸延伸時、一軸延
伸後のいずれでも可能であるが、PVAは一軸延伸によ
り結晶化度が上がりやすくて、染色性が低下することが
あるため、一軸延伸に先立つ任意の工程または一軸延伸
工程中において染色するのが好ましい。
【0031】染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ
化カリウム;ダイレクトブラック17、19、154;
ダイレクトブラウン 44、106、195、210、
223;ダイレクトレッド 2、23、28、31、3
7、39、79、81、240、242、247;ダイ
レクトブルー 1、15、22、78、90、98、1
51、168、202、236、249、270;ダイ
レクトバイオレット9、12、51、98;ダイレクト
グリーン 1、85;ダイレクトイエロー8、12、4
4、86、87;ダイレクトオレンジ 26、39、1
06、107などの二色性染料などが、1種または2種
以上の混合物で使用できる。通常、染色は、PVAフィ
ルムを前記染料を含有する溶液中に浸漬させることによ
り行うが、その処理条件や処理方法は特に制限されるも
のではない。
【0032】前記PVAフィルムの一軸延伸は、湿式延
伸法または乾熱延伸法が使用でき、温水(前記染料を含
有する溶液中や後記固定処理浴中でも良い)中または吸
水後のPVAフィルムを用いて空気中で行ってもよい。
光学性能の均一性の点から、延伸装置はロール間の速度
差等を利用したロール延伸法を用いることが最も好まし
いが、他の延伸方式に本発明の幅2m以上のPVAフィ
ルムを用いても、光学性能の均一性向上に効果が得られ
る。このときの延伸倍率は4倍以上が好ましく、5倍以
上が特に好ましい。延伸倍率が4倍より小さいと、実用
的に十分な偏光性能や耐久性能が得られにくい。また、
延伸は一段階で目的の延伸倍率まで行っても良いが、二
段階以上の多段延伸を行った方がさらにネックイン(幅
方向の収縮)が小さくなって光学性能の均一性に効果が
ある。延伸温度は特に限定されないが、フィルムを温水
中で延伸(湿式延伸)する場合は30〜90℃が、また
乾熱延伸する場合は50〜180℃が好適である。延伸
後のフィルムの厚みは、3〜75μmが好ましく、10
〜50μmがより好ましい。
【0033】PVAフィルムへの上記染料の吸着を強固
にすることを目的に、固定処理を行う。固定処理に使用
する処理浴には、通常、ホウ酸およびホウ素化合物が添
加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物
を添加しても良い。
【0034】PVAフィルムの乾燥処理(熱処理)は3
0〜150℃で行うのが好ましく、50〜150℃で行
うのがより好ましい。
【0035】以上のようにして得られた偏光フィルム
は、通常、その両面または片面に、光学的に透明で、か
つ機械的強度を有した保護膜を貼り合わせて偏光板とし
て使用される。保護膜としては、通常、セルロースアセ
テート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル
系フィルム等が使用される。
【0036】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものでは
ない。なお、実施例、比較例に記載されているMD方向
およびTD方向の引張伸度(SM とST )および含水さ
せたフィルムのMD方向の引張伸度(SWM )の測定
は、次のようにして行った。
【0037】(a)MD方向の引張伸度(SM )とTD
方向の引張伸度(ST )の測定 オートグラフ(AG−D型、株式会社島津製作所製)を
用いて、20℃、65%RHで4時間調湿したMDおよ
びTD方向の幅15mm、長さ180mmの短冊状のサ
ンプル(n=10)を、チャック間距離100mmで引
張速度100cm/minとして破断伸度を測定し、M
DおよびTD方向のそれぞれ個別に各データの最大値と
最小値を除いた8個のデータの平均値を求め、MD方向
の引張伸度の平均値をSM 、TD方向の引張伸度の平均
値をST とした。
【0038】(b)TD方向の引張伸度の比(SM /S
T )の斑の測定 SM /ST の斑は、PVAフィルムのTD方向に10c
m間隔で前記測定法により引張伸度を測定し、測定値の
最大値と最小値の差を平均値で除し、百倍した値(百分
率)を求めた。
【0039】(c)含水させたフィルムのMD方向の引
張伸度(SWM )の測定 前処理として、20℃の水中にフィルム幅15mm、長
さ180mmのフィルムを24時間浸漬させた後、調湿
を除き前述した引張伸度の測定法と同様にして測定し、
SWM を求めた。
【0040】実施例1 図1のドラム製膜機を用いて、けん化度99.9モル%
で重合度2400のPVA100重量部と、グリセリン
11重量部と、ラウリン酸ジエタノールアミド0.1重
量部および水からなる揮発分70%の製膜原料を86℃
のクロムメッキした金属ドラムに押出して、ドラム製膜
した。さらに金属ドラム表面のPVAフィルムに、温度
分布が±1.1℃の80℃の熱風を吹き付けて乾燥し
た。このとき、第7乾燥ロール4−7のPVAフィルム
6の揮発分は9.7%であり、また巻取装置7の巻取速
度Rfと第7乾燥ロール4-7の速度Rcとの速度比(R
f/Rc)は1.00である。この結果、幅2.7mの
PVAフィルムを得た。得られたフィルムを測定したと
ころ、平均厚み74.5μmであり、SM /ST は0.
95であり、フィルムのTD方向のSM /ST の斑は1
6%であった。また、SWM は390%であった。
【0041】このPVAフィルムを予備膨潤、染色、一
軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フ
ィルムを作成した。すなわち、PVAフィルムを30℃
の水中に3分間浸漬させて予備膨潤し、ヨウ素濃度0.
4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル
の40℃の水溶液中に4分間浸漬させた。続いて、ホウ
酸4%の50℃の水溶液中で5.3倍にロール方式によ
り一軸延伸を行った。さらに、ヨウ化カリウム40g/
リットル、ホウ酸40g/リットルの30℃の水溶液中
に5分間浸漬させて固定処理を行った。この後フィルム
を取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに10
0℃で5分間熱処理を行った。
【0042】得られた偏光フィルムの厚みは26μmで
あり、この偏光フィルムには染色斑は認められなかっ
た。また、得られた偏光フィルムをクロスニコル状態の
2枚の偏光板の間に45°の角度に挟んで、透過光を目
視で観察したところ、光学的なスジ斑は認められず良好
であった。
【0043】実施例2 図1のドラム製膜機を用いて、けん化度99.9モル%
で重合度4000のPVA100重量部と、グリセリン
10重量部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル
0.1重量部および水からなる揮発分75%の製膜原料
を90℃のクロムメッキした金属ドラムに押出して、ド
ラム製膜した。さらに金属ドラム表面のPVAフィルム
に、温度分布が±1.2℃の90℃の熱風を吹き付けて
乾燥した。このとき、第7乾燥ロール4-7のPVAフィ
ルム6の揮発分は9.5%であり、また巻取装置7の巻
取速度Rfと第7乾燥ロール4-7の速度Rcとの速度比
(Rf/Rc)は0.96である。この結果、幅2.4
mのPVAフィルムを得た。得られたフィルムを測定し
たところ、平均厚み75.3μmであり、SM /ST
0.92であり、フィルムのTD方向のSM /ST の斑
は18%であった。また、SWM は365%であった。
【0044】このPVAフィルムを、延伸倍率を5.0
倍とした以外は実施例1と同様に処理して、厚み27μ
mの偏光フィルムを得た。この偏光フィルムには染色斑
は認められなかった。また、得られた偏光フィルムをク
ロスニコル状態の2枚の偏光板の間に45°の角度に挟
んで、透過光を目視で観察したところ、光学的なスジ斑
は認められず良好であった。
【0045】実施例3 図1のドラム製膜機を用いて、けん化度99.9モル%
で重合度1700のPVA100重量部と、グリセリン
13重量部と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル
0.1重量部および水からなる揮発分68%の製膜原料
を88℃のクロムメッキした金属ドラムに押出して、ド
ラム製膜した。さらに金属ドラム表面のPVAフィルム
に、温度分布が±0.9℃の90℃の熱風を吹き付けて
乾燥した。このとき、第6乾燥ロール4-6のPVAフィ
ルム6の揮発分は9.8%であり、また巻取装置7の巻
取速度Rfと第6乾燥ロール4-6の速度Rcとの速度比
(Rf/Rc)は1.03である。この結果、幅2.6
mのPVAフィルムを得た。得られたフィルムを測定し
たところ、平均厚み75.8μmであり、SM /ST
0.81であり、フィルムのTD方向のSM /ST の斑
は20%であった。また、SWM は426%であった。
【0046】このPVAフィルムを、延伸倍率を4.7
倍とした以外は実施例1と同様に処理して、厚み32μ
mの偏光フィルムを得た。この偏光フィルムには染色斑
は認められなかった。また、得られた偏光フィルムをク
ロスニコル状態の2枚の偏光板の間に45°の角度に挟
んで、透過光を目視で観察したところ、光学的なスジ斑
は認められず良好であった。
【0047】比較例1 実施例1の製膜原料を用いて同様にドラム製膜した。こ
のとき、第7乾燥ロール4-7のPVAフィルム6の揮発
分は9.8%であり、また巻取装置7の巻取速度Rfと
第7乾燥ロール4-7の速度Rcとの速度比(Rf/R
c)は1.25である。この結果、幅2.6mのPVA
フィルムを得た。得られたフィルムを測定したところ、
平均厚み73.9μmであり、SM /ST は0.78で
あり、フィルムのTD方向のSM /ST の斑は26%で
あった。また、SWM は340%であった。
【0048】このPVAフィルムを、延伸倍率を4.9
倍とした以外は実施例1と同様に処理して、厚み29μ
mの偏光フィルムを得た。この偏光フィルムにはMD方
向にスジ状の薄い部分が存在する染色斑が認められた。
また、得られた偏光フィルムをクロスニコル状態の2枚
の偏光板の間に45°の角度に挟んで、透過光を目視で
観察したところ、激しい光学的なスジ斑が認められて不
良であった。
【0049】比較例2 実施例3の製膜原料を用いて同様にドラム製膜した。こ
のとき、第6乾燥ロール4-6のPVAフィルム6の揮発
分は9.7%であり、巻取装置7の巻取速度Rfと第6
乾燥ロール4-6の速度Rcの速度比(Rf/Rc)は
1.45である。この結果、幅2.4mのPVAフィル
ムを得た。得られたフィルムを測定したところ、平均厚
み74.4μmであり、SM /ST は0.69であり、
フィルムのTD方向のSM /ST の斑は28%であっ
た。また、SWM は320%であった。
【0050】このPVAフィルムを、延伸倍率を4.8
倍とした以外は実施例1と同様に処理して、厚み27μ
mの偏光フィルムを得た。この偏光フィルムにはMD方
向にスジ状の薄い部分が存在する染色斑が認められた。
また、得られた偏光フィルムをクロスニコル状態の2枚
の偏光板の間に45°の角度に挟んで、透過光を目視で
観察したところ、激しい光学的なスジ斑が認められて不
良であった。
【0051】比較例3 実施例1の製膜原料を用いて、ドラム製膜を試みた。こ
のとき、第7乾燥ロール4−7のPVAフィルム6の揮
発分は9.8%であり、SM /ST を1.3を超えるよ
うに、巻取装置7の巻取速度Rfと第7乾燥ロール4−
7の速度Rcとの速度比(Rf/Rc)を0.9以下に
しようとしたが、膜のタルミが激しく、フィルムにシワ
が発生し、製膜ができなかった。
【0052】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、ドラム製
膜法を用いて、大面積においても均一な光学性能を有す
る幅広なPVAフィルムを得ることができ、またこのフ
ィルムを用いて大画面液晶ディスプレイ用として好適な
偏光フィルムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるPVAフィルムの製造に用いる
ドラム製膜機の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
2…製膜原料、3…ドラム(第1ドラム)、6…ポリビ
ニルアルコール系フィルム(PVAフィルム)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 29:04 C08L 29:04 (72)発明者 河合 勉 大阪府大阪市北区梅田1丁目12番39号 株 式会社クラレ内 Fターム(参考) 2H049 BA02 BA27 BB43 BC03 BC09 BC22 4F071 AA29 AF15 AF15Y AF21 AF21Y AH12 AH16 BA01 BB06 BB13 BC01 4F205 AA19 AC05 AG01 AH73 GA07 GB02 GC02 GF24 GN22

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ドラム製膜によって得られたフィルムの
    MD方向の引張伸度(SM )とTD方向の引張伸度(S
    T )との比(SM /ST )が、0.7〜1.3であるこ
    とを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
  2. 【請求項2】 請求項1において、フィルムのMD方向
    とTD方向の引張伸度の比(SM /ST )の斑が25%
    以下であるポリビニルアルコール系フィルム。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、含水させた
    フィルムのMD方向の引張伸度(SWM )が350%以
    上であるポリビニルアルコール系フィルム。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかにおいて、フィ
    ルム幅が2m以上であるポリビニルアルコール系フィル
    ム。
  5. 【請求項5】 偏光フィルム用である請求項1〜4のい
    ずれかに記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  6. 【請求項6】 請求項5記載のポリビニルアルコール系
    フィルムから製造された偏光フィルム。
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