JP2002027909A - 紫サツマイモ乾燥フレーク及びその製造方法、並びに、紫サツマイモ濃縮エキス及びその製造方法 - Google Patents

紫サツマイモ乾燥フレーク及びその製造方法、並びに、紫サツマイモ濃縮エキス及びその製造方法

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JP2002027909A JP2000215355A JP2000215355A JP2002027909A JP 2002027909 A JP2002027909 A JP 2002027909A JP 2000215355 A JP2000215355 A JP 2000215355A JP 2000215355 A JP2000215355 A JP 2000215355A JP 2002027909 A JP2002027909 A JP 2002027909A
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貞道 川崎
Mitsuro Uchida
充郎 内田
Noriyuki Fukuyoshi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長期の常温保存が可能であり、収穫時期に左
右されずに品質や供給量が安定化し、大量生産に適した
紫サツマイモ乾燥フレークとその製造方法を提供するこ
と、並びに風味、色調、食味、食感に優れ、栄養成分、
甘味、機能性成分に富む紫サツマイモ濃縮エキスとその
製造方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 生の紫サツマイモを擂潰した後、高速
加熱乾燥し、繊維を残したフレーク状にすることを特徴
とする紫サツマイモ乾燥フレークの製造方法、前記方
法により得られた紫サツマイモ乾燥フレーク、生の紫
サツマイモを擂潰した後、高速加熱乾燥し、繊維を残し
たフレーク状にし、次いで植物組織分離酵素及び植物組
織分解酵素を添加混合して酵素反応を行い、ろ過した
後、濃縮することを特徴とする紫サツマイモ濃縮エキス
の製造方法、前記方法により得られた紫サツマイモ濃
縮エキス、を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長期の常温保存が
可能であって、供給量や品質が収穫時期に左右されるこ
となく経済性に優れた高品質の紫サツマイモ乾燥フレー
クとその製造方法、並びに、該乾燥フレークから得られ
る、紫サツマイモ本来の風味、色調、食感もそのまま
に、さらに栄養成分、甘味、機能成分に富む紫サツマイ
モ濃縮エキスとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】果物や野菜からの搾汁分離は、プレス法
や遠心分離法などの手法を用いて工業規模で広く行なわ
れている。しかしながら、サツマイモ(甘藷)は、澱粉
質やヤニ成分が多いため、従来の搾汁分離方法では効率
や品質が著しく低く、濃縮してエキスにしても食用には
不向きであるという欠点があった。
【0003】このような欠点を解消するものとして、
品質低下の原因である甘藷中に含まれるポリフェノール
オキシダーゼを実質的に失活させると同時にアミラーゼ
を活性化する条件下で加熱処理した後、圧搾式搾汁機で
搾汁することにより、原料由来のアントシアニン含量と
糖度が高く飲用に好適な甘藷ジュースを歩留まり良く製
造する方法(特開平10−117746号公報)や、
生の甘藷を蒸気やお湯で加熱した後、粉砕し、繊維質分
解酵素及び澱粉質分解酵素を併用して分解することによ
り、美味で色調及び食感に優れた甘藷飲料を製造する方
法(特開平9−107934号公報)が提案されてい
る。これらの方法で得られたジュース等を濃縮すること
で、濃縮エキスを得ることも可能と考えられる。
【0004】しかしながら、上記した2つの方法では、
いずれも生の甘藷を用いて直接酵素処理するが、甘藷は
収穫できる時期が限られているため、原料となる甘藷の
保管場所や保存方法(冷凍・冷蔵)によってはコストが
かかったり、品質が安定しないなどの問題が生じる。ま
た、特に特開平10−117746号公報に記載の方法
では、歩留まりが50〜60重量%であり、残った搾汁
カスの処理が廃棄物処理の点などから問題となる。
【0005】一方、赤色系天然色素には、植物由来であ
る赤キャベツ、ブドウ、紫トウモロコシ等といったアン
トシアニン系色素があり、紫サツマイモも同様なアント
シアニン系色素を含有する色素原料である。最近、この
色素は他のアントシアニン系色素に比べて耐熱性、耐候
性に優れていることが分かり、色素としての製造方法も
いろいろ検討されている。
【0006】例えば、紫サツマイモを生或いは蒸煮し
たものを酸性条件下で、水又は含水アルコールで抽出
し、抽出物の精製処理を行うことにより、紫サツマイモ
色素を製造する方法(特開昭62−297363号公
報、特開昭62−297364号公報)や、原料であ
る紫サツマイモを10℃以下の温度で粉砕、特に凍結粉
砕したものから色素を抽出する方法(特開平4−103
669号公報)が挙げられる。これらは、いずれも原料
の紫サツマイモに内在する酵素の活性を抑制することを
特徴とする紫サツマイモ色素の製造方法である。
【0007】しかしながら、特開昭62−297363
号公報や特開昭62−297364号公報に記載の方法
では、色素の抽出効率の点で必ずしも満足する結果が得
られない。また、特開平4−103669号公報記載の
方法では、原料粉砕の際に温度管理を徹底する必要があ
る他、色素抽出の際にもpH調整を要することから、作
業効率の点で問題があり、さらに設備費用の点でも問題
があった。
【0008】そこで、この問題点を改良した発明とし
て、アントシアニン系色素を高含有する紫サツマイモの
改良品種を生のまま中性〜酸性条件下で含水アルコール
を用いて処理することを特徴とする紫サツマイモ色素の
製造方法、並びに、該紫サツマイモ色素と食品原料の同
時製造方法が提案されている(特開平7−227246
号公報)。この方法によれば、必要に応じて処理物を吸
着、濃縮等の処理を行うことで、紫サツマイモ濃縮エキ
スを製造することができる。しかしながら、この方法
は、抽出に含水アルコールを用いており、抽出後のエキ
スからのアルコール除去が困難であり、大量に食品へ添
加することは容易ではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、長期の常温
保存が可能であって、かつ、収穫時期に左右されずに品
質や供給量が安定化し、食品産業における大量生産に適
した紫サツマイモ乾燥フレークとその効率的な製造方法
を提供することを目的とするものである。
【0010】さらに、本発明は、繊維分を多量に含む上
記紫サツマイモ乾燥フレークから、風味、色調、食味、
食感に優れ、さらに栄養成分、甘味、機能性成分に富む
紫サツマイモ濃縮エキスとその効率的な製造方法を提供
することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、生の紫サツマイモ
を擂潰した後、高速加熱乾燥し、繊維を残したフレーク
状にすることにより、長期間常温で保存可能な紫サツマ
イモ乾燥フレークを得ることができ、これにより、保
管、保存に要するコストを削減することができ、貯蔵性
が向上すると共に、瞬間に乾燥するため、色調、栄養成
分、機能性成分などのロスが従来の熱風乾燥などに比
べ、著しく低減できることを見出した。
【0012】さらに本発明者らは、このようにして得ら
れた紫サツマイモ乾燥フレークに、植物組織分離酵素及
び植物組織分解酵素を順次添加混合して酵素分解処理を
行い、その後プレス搾汁及び遠心分離を行うと、繊維を
残した乾燥フレークを原料としているため、プレス搾汁
などのろ過工程において、ろ過速度も速く、目詰まりも
しにくい等、作業効率を格段に向上させることができ、
さらに、この結果、上記方法で得られた清澄な液を濃縮
することで、搾汁カスの排出が少なく、ざらつき感等の
食感が改善され、紫サツマイモ由来の糖類による甘味が
増強された紫サツマイモ濃縮エキスを製造することがで
きることを見出した。本発明は、このような知見に基い
て完成されたものである。
【0013】請求項1に係る本発明は、生の紫サツマイ
モを擂潰した後、高速加熱乾燥し、繊維を残したフレー
ク状にすることを特徴とする紫サツマイモ乾燥フレーク
の製造方法を提供するものである。請求項2に係る本発
明は、高速加熱乾燥をドラム式瞬間加熱乾燥機により行
う、請求項1記載の紫サツマイモ乾燥フレークの製造方
法を提供するものである。請求項3に係る本発明は、請
求項1又は2記載の方法により得られた紫サツマイモ乾
燥フレークを提供するものである。請求項4に係る本発
明は、生の紫サツマイモを擂潰した後、高速加熱乾燥
し、繊維を残したフレーク状にし、次いで植物組織分離
酵素及び植物組織分解酵素を添加混合して酵素反応を行
い、ろ過した後、さらに濃縮することを特徴とする紫サ
ツマイモ濃縮エキスの製造方法を提供するものである。
請求項5に係る本発明は、高速加熱乾燥をドラム式瞬間
加熱乾燥機により行う、請求項4記載の紫サツマイモ濃
縮エキスの製造方法を提供するものである。請求項6に
係る本発明は、植物組織分離酵素及び植物組織分解酵素
を添加混合して行う酵素反応が、先に植物組織分離酵素
を添加していったん酵素反応を行った後、改めて植物組
織分離酵素及び植物組織分解酵素を添加して改めて酵素
反応を行うものである、請求項4又は5記載の紫サツマ
イモ濃縮エキスの製造方法を提供するものである。請求
項7に係る本発明は、請求項4〜6のいずれかに記載の
方法により得られた紫サツマイモ濃縮エキスを提供する
ものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を示
す。まず、請求項1に係る本発明について説明する。請
求項1に係る本発明は、生の紫サツマイモを擂潰した
後、高速加熱乾燥し、繊維を残したフレーク状にするこ
とを特徴とする紫サツマイモ乾燥フレークの製造方法で
ある。
【0015】請求項1に係る本発明の紫サツマイモ乾燥
フレークは、生の(未加工の)紫サツマイモを原料とす
るものである。本発明において紫サツマイモとは、高ア
ントシアニン含有のサツマイモを指し、通称山川紫、ア
ヤムラサキなどが挙げられるが、これらに限定されるも
のではなく、品種、産地等を問わず用いることができ
る。本発明において用いる紫サツマイモとしては、高ア
ントシアニン含有のサツマイモであれば良いが、特に紫
サツマイモ乾燥フレークにした際に、アントシアニンを
0.25重量%(250mg%)以上、特に0.45重
量%(450mg%)以上含有するものが好ましい。
【0016】請求項1に係る本発明では、このような生
の紫サツマイモを用い、これを擂潰した後、高速加熱乾
燥し、繊維を残したフレーク状にする必要があり、これ
以外の処理を行ったものでは、目的とする繊維を残した
紫サツマイモ乾燥フレークは得られない。例えば、紫サ
ツマイモ熱風乾燥粉末を用い、これに適量加水し、ペー
スト状にした後、高速加熱乾燥したとしても、目的とす
る繊維を残した紫サツマイモ乾燥フレークは得られず、
繊維の殆ど見られないパウダーフレークとなってしま
う。このものは原料である紫サツマイモ本来の栄養成分
や機能性成分などを著しく失ったものとなっている。
【0017】即ち、請求項1に係る本発明では、上記し
た原料の生の紫サツマイモを用い、これを擂潰した後、
高速加熱乾燥し、繊維を残したフレーク状とすることが
必要である。ここで擂潰処理は、ミキサーやチョッパー
等で行うことができる。請求項1に係る本発明では、こ
の擂潰処理により、原料の生の紫サツマイモをいわゆる
ミンチ状に擂り潰しておくことが必要である。このよう
に、高速加熱乾燥に先立って擂潰処理しておくことによ
り、初めて次の高速加熱乾燥操作により繊維を残したフ
レーク状とすることが可能となる。なお、次の高速加熱
乾燥操作を行う前の原料は、生の紫サツマイモの繊維が
残るように擂り潰すことが必要であって、どろどろに細
かく繊維が全く残らない粒子状に擂り潰したようなもの
を用いた場合には、次の高速加熱乾燥操作を行ったとし
ても、繊維を残したフレーク状とすることはできない。
即ち、ここで行う擂潰処理は、原料に含まれる繊維を一
部乃至全部残した状態となるように行うべきであり、紫
サツマイモの植物組織の一部が物理的に破壊された状態
になるように処理する。
【0018】また、擂潰処理ではなく、例えば単にチッ
プ状に切断処理した紫サツマイモを用いたときには、次
の高速加熱乾燥操作により繊維を残したフレーク状とす
ることができないことは勿論のこと、請求項2に記載し
たようなドラム式瞬間加熱乾燥機、特に過熱水蒸気加熱
方式を用いたダブルドラム式瞬間加熱乾燥機による高速
加熱乾燥の場合には、ドラムとドラムの間隙を通ること
ができず、乾燥することすら不可能となる。従って、こ
の場合には、輸送力や貯蔵性の向上が図れず、また、後
述の紫サツマイモ濃縮エキスの製造に用いる場合のろ過
工程をスムーズに進めることができない。このように生
の紫サツマイモを繊維が残るように擂潰処理した後、高
速加熱乾燥し、原料に含まれる繊維を残したフレーク状
とする。
【0019】高速加熱乾燥処理は、特に請求項2に記載
したように、ドラム式瞬間加熱乾燥機によって行うこと
が好ましく、中でも特に、過熱水蒸気加熱方式を用いた
ダブルドラム式瞬間加熱乾燥機を使用することが好まし
い。かかる乾燥機を用いることにより、瞬時に乾燥処理
し、繊維を残した「フレーク状」の紫サツマイモ乾燥フ
レークを連続して大量に容易に作ることができる。
【0020】また、この高速加熱乾燥処理により、不快
な風味や褐変といった品質低下の原因であるポリフェノ
ールオキシダーゼなどのサツマイモに内在する酵素を失
活させることができると共に、高速加熱乾燥により瞬時
にフレーク状に処理することができることから、色調、
栄養成分、機能性成分等のロスを従来の熱風乾燥等と比
較して著しく低減することができる。
【0021】このようにして、目的とする紫サツマイモ
乾燥フレークを製造することができる。このようにして
得られる紫サツマイモ乾燥フレークを提供するのが、請
求項3に係る本発明である。
【0022】即ち、請求項3に係る本発明は、請求項1
又は2記載の方法により得られた紫サツマイモ乾燥フレ
ークを提供するものである。請求項3に係る本発明の紫
サツマイモ乾燥フレークは、繊維を残したフレーク状の
紫サツマイモ乾燥フレークとなっていて、生のサツマイ
モからの栄養成分、機能性成分のロスが少なく、また、
軽く、長期の保存性にも優れることから、輸送力や貯蔵
性の向上に寄与し、さらに、後記する紫サツマイモ濃縮
エキス製造時のろ過工程をスムーズに行うことができる
というメリットがある。
【0023】請求項3に係る本発明の紫サツマイモ乾燥
フレークは、上記したように、長期にわたり常温で保存
することが可能である。しかも、請求項3に係る本発明
の紫サツマイモ乾燥フレークは、実施例の結果から明ら
かな通り、アントシアニン色素の退色もほとんどない高
品質の紫サツマイモ乾燥フレークである。
【0024】次に、請求項4に係る本発明について説明
する。請求項4に係る本発明は、生の紫サツマイモを擂
潰した後、高速加熱乾燥し、繊維を残したフレーク状に
し、次いで植物組織分離酵素及び植物組織分解酵素を添
加混合して酵素反応を行い、ろ過した後、さらに濃縮す
ることを特徴とする紫サツマイモ濃縮エキスの製造方法
である。
【0025】請求項4に係る本発明の方法では、生の紫
サツマイモを擂潰した後、高速加熱乾燥し、繊維を残し
たフレーク状にするが、このような製造方法は、前記し
た請求項1、2に係る本発明の方法に従って行うことが
でき、また、そのような製造方法に従って得られた、請
求項3に係る本発明の紫サツマイモ乾燥フレークを用い
ることもできる。従って、当該処理の詳細は、請求項
1、2、3に係る本発明についての説明に委ねる。な
お、請求項5に記載したように、高速加熱乾燥は、ドラ
ム式瞬間加熱乾燥機によって行うことが好ましいこと
は、請求項2にも記載されていることである。
【0026】請求項4に係る本発明は、生の紫サツマイ
モを擂潰した後、高速加熱乾燥し、繊維を残したフレー
ク状にし、次いで植物組織分離酵素及び植物組織分解酵
素を添加混合して酵素反応を行い、ろ過した後、さらに
濃縮する。即ち、上記のように繊維を残したフレーク状
となったもの、つまり繊維を残した紫サツマイモ乾燥フ
レークに、植物組織分離酵素及び植物組織分解酵素を添
加混合して酵素反応を行い、ろ過した後、さらに濃縮す
る。
【0027】請求項4に係る本発明においては、植物組
織分離酵素及び植物組織分解酵素を添加混合して酵素反
応を行うことが必要である。請求項4に係る本発明にお
いて、酵素は、植物組織分離酵素及び植物組織分解酵素
の2種類を併用する。原料である生の紫サツマイモは、
擂潰した後、ドラム式瞬間加熱乾燥機などにより高速加
熱乾燥され、繊維を残したフレーク状とされており、原
料の植物組織の一部が物理的に破壊されているために、
酵素が作用しやすくなっているものの、それでも繊維質
はまだ多量に残っているため、上記2種類の酵素を併用
することで、より食感を滑らかにすることができる。ま
た、植物組織分離酵素及び植物組織分解酵素という、2
種類の酵素を併用することにより、ブドウ糖やオリゴ糖
などを生成させ、甘味を向上させることができると共
に、細胞質内の機能性成分でもあり、色素成分でもある
アントシアニンを効率的に溶出させることができる。
【0028】植物組織分離酵素としては、植物組織の細
胞間物質に作用するヘミセルラーゼやペクチナーゼ等が
用いられる。植物組織分解酵素としては、植物組織を構
成する繊維質を分解するセルラーゼ等の酵素が用いられ
る。
【0029】請求項4に係る本発明においては、上記植
物組織分離酵素及び植物組織分解酵素という、2種類の
酵素を併用する。ここで植物組織分離酵素と植物組織分
解酵素との併用とは、それぞれを1種類ずつ順次酵素反
応を行うことは勿論のこと、1回の酵素反応で2種類の
酵素を同時に添加作用させることもできる等、何らかの
形で上記2種類の酵素を反応させれば良いという意味で
ある。特に、請求項6に係る本発明のように、先に植物
組織分離酵素を添加していったん酵素反応を行った後、
改めて植物組織分離酵素及び植物組織分解酵素を添加し
て改めて酵素反応を行うことにより、繊維質が少なく濃
厚な甘味もあり、高アントシアニン含量の紫サツマイモ
エキスを抽出することができる。請求項6に係る本発明
では、酵素反応の順序が重要であって、上記順序で酵素
反応を行なうことにより、繊維質が少なく濃厚な甘味も
あり、高アントシアニン含量の紫サツマイモエキスを抽
出することができる。
【0030】酵素反応においては、反応に先立って適量
の水を添加することが好ましい。これにより、その後の
酵素反応を円滑に行うことができる。酵素反応は、でき
るだけ酵素活性が良い条件下で行うことが必要であるこ
とは当然であるが、通常、pH4〜6であり、温度は4
0〜60℃、好ましくは50〜60℃の範囲で行えば良
い。反応の経過と共に酵素反応による植物組織の分離や
分解は経時的に進むが、反応時間については、通常、1
〜4時間、好ましくは1〜2時間ほど反応させれば充分
である。このとき攪拌しながら行うと良い。このような
酵素反応で得られた液を、ろ過した後の清澄な液(酵素
分解液)を濃縮することにより、搾汁カスの排出が少な
く、滑らかであってざらつき感等の食感が改善され、し
かもサツマイモ由来の糖類による甘味が増強された紫サ
ツマイモ濃縮エキスが得られる。
【0031】なお、上記したように、本発明において
は、紫サツマイモ乾燥フレークに、植物組織分離酵素及
び植物組織分解酵素を添加混合して酵素反応を行い、ろ
過した後、さらに濃縮するが、請求項6に係る本発明の
場合には、ろ過は2段階で行うとよい。即ち、請求項6
に係る本発明のように、先に植物組織分離酵素を添加し
ていったん酵素反応を行った後、改めて植物組織分離酵
素及び植物組織分解酵素を添加して改めて酵素反応を行
う場合には、まず植物組織分離酵素による酵素反応終了
後にプレス搾汁によるろ過を行い、次いで、プレス搾汁
された液について、植物組織分離酵素及び植物組織分解
酵素による酵素反応終了後に、今度は清澄な酵素分解物
を得るためのろ過(遠心分離など)を行うとよい。この
ようなろ過を行った後に、さらに濃縮することで、目的
とする紫サツマイモ濃縮エキスを効率よく製造すること
ができる。
【0032】上記のように、請求項4に係る本発明にお
いては、紫サツマイモ乾燥フレークに、植物組織分離酵
素及び植物組織分解酵素を順次添加混合して酵素分解処
理を行い、その後、プレス搾汁、遠心分離などのろ過を
行っており、繊維を残した乾燥フレークを原料としてい
るため、プレス搾汁などのろ過工程において、ろ過速度
も速く、目詰まりもしにくい等、作業効率を格段に向上
させることができる。さらに、この結果、上記方法で得
られた清澄な液を濃縮することで、搾汁カスの排出が少
なく、ざらつき感等の食感が改善され、紫サツマイモ由
来の糖類による甘味が増強された紫サツマイモ濃縮エキ
スを製造することができる。
【0033】このようにして得られる紫サツマイモ濃縮
エキスが、請求項7に係る本発明である。即ち、請求項
7に係る本発明は、請求項4〜6のいずれかに記載の方
法により得られた紫サツマイモ濃縮エキスである。この
ようにして得られた紫サツマイモ濃縮エキスは、色調、
甘味、機能性成分に優れたエキスであると共に、植物組
織分離酵素及び植物組織分解酵素の2種類の酵素を併用
して、植物組織の繊維質が効率良く分解されているの
で、滑らかな食感で、不快な風味がほとんどない濃縮エ
キスとなっている。
【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳しく説明す
る。
【0035】実施例1(紫サツマイモ乾燥フレークの製
造、並びに長期保存中におけるアントシアニン含量の測
定) 生の紫サツマイモ(品種名:アヤムラサキ)3.5kg
を、ミキサーを用いて繊維が残るように擂潰した後、ダ
ブルドラム式瞬間加熱乾燥機(ジョンソンボイラ株式会
社製、商品名:ジョンミルダー JMT)を用いて30
分間、140±20℃で乾燥し、繊維を残したフレーク
状の紫サツマイモ乾燥フレーク1kgを得た。得られた
紫サツマイモ乾燥フレークについて、製造してから1年
常温にて保存後及び同じく2年保存後の該フレーク1k
g中に含まれるアントシアニン含量(mg%)を、それ
ぞれ測定した。結果を第1表に示す。なお、対照とし
て、製造してから1年常温にて保存後及び同じく2年保
存後の紫サツマイモ熱風乾燥粉末(JA都城製、紫かん
しょパウダー:1997年度産)1kg中に含まれるア
ントシアニン含量(mg%)を、それぞれ測定した。結
果を第1表に示す。なお、この紫サツマイモ熱風乾燥粉
末には、生の紫サツマイモの繊維は全く残っていなかっ
た。
【0036】
【表1】第1表
【0037】第1表の結果によれば、実施例1で得られ
た紫サツマイモ乾燥フレークは、常温において、製造し
てから1年後はもとより、2年後という長期保存後にお
いても、極めて高いアントシアニン含量を有しているこ
とが分かる。
【0038】比較例1(紫かんしょパウダーフレークの
製造、並びにアントシアニン含量の測定) 紫サツマイモ熱風乾燥粉末(JA都城製、紫かんしょパ
ウダー:1997年度産)1.2kgに、約3倍量の水
を加えペースト状とした後、実施例1と同様にしてダブ
ルドラム式瞬間加熱乾燥機を用いて乾燥し、紫かんしょ
パウダーフレーク1kgを得た。なお、この紫かんしょ
パウダーフレークにも、生の紫サツマイモの繊維は全く
残っていなかった。得られた紫かんしょパウダーフレー
クについて、該フレーク1kg中に占めるアントシアニ
ン含量(mg%)を測定したところ、187mg%と低
いものであった。
【0039】実施例2(紫サツマイモ濃縮エキスの製
造、並びに該エキス中のアントシアニン含量の測定) 水20kgを55℃に温度調節したタンクに入れ、55
℃に保温したものの中に、前記実施例1で得られた紫サ
ツマイモ乾燥フレーク1kg及びヘミセルラーゼ20g
を添加し、pH5〜5.2に調整し、混合撹拌しなが
ら、100分間酵素を作用させた。次に、セルロースを
ろ過助剤として添加して、プレス搾汁を行った。搾汁し
た液は、酵素の失活及び加熱殺菌のために98℃まで昇
温した。その後、40〜50℃まで冷却し、pH4〜
4.2に調整した後、セルラーゼ20g及びペクチナー
ゼ20gを添加し、混合撹拌しながら40分間酵素を作
用させた。遠心分離機により固形分をほぼ除去した後、
酵素を失活させるために、95℃まで昇温した。その
後、40℃まで冷却し、さらに清澄な酵素分解物を得る
ため、ろ過し、次いで濃縮することにより、紫サツマイ
モ濃縮エキス2kgを得た。
【0040】得られた紫サツマイモ濃縮エキス中のアン
トシアニン含量(mg%)を調べた結果を第2表に示
す。また、得られた紫サツマイモ濃縮エキスは、滑らか
な食感で、透明感のある濃い赤紫色を呈し、不快な風味
はほとんどなく濃厚な甘味を呈していた。
【0041】比較例2 原料として比較例1で得られたかんしょパウダーフレー
クを用いたこと以外は、実施例2と同様にして行い、紫
かんしょパウダー濃縮エキス(紫サツマイモ濃縮エキ
ス)を得、紫かんしょパウダー濃縮エキス中のアントシ
アニン含量(mg%)を調べた。結果を第2表に示す。
この方法の場合、ろ過工程中における目詰まりが多く、
しかもろ過速度が遅かった。また、得られた紫かんしょ
パウダー濃縮エキスは、透明感のある赤色で、濃厚な甘
味があるものの、風味の点で(いも臭が強く、後味が悪
い)、実施例2で得られた紫サツマイモ濃縮エキスより
劣っていた。
【0042】
【表2】第2表
【0043】第2表から、実施例2で得られた紫サツマ
イモ濃縮エキスは、アントシアニン含量が極めて高いの
に対し、比較例2で得られた紫サツマイモ濃縮エキス
は、アントシアニン含量が、その約1/4と低いもので
あることが分かる。
【0044】実施例3 実施例1で得られた紫サツマイモ乾燥フレークから、実
施例2の手法に従い紫サツマイモの濃縮エキスを製造し
た際の搾汁歩留まり(酵素処理物をプレス搾汁した場合
の歩留まり)、ろ過効率(500mlmの搾汁液をろ過
するのに要した時間)、並びにろ過液の外観(目視にて
透明か否かを判定)を第3表に示す。
【0045】比較例3 実施例1で得られた紫サツマイモ乾燥フレークの代わり
に、比較例1で得られた紫かんしょパウダーフレークを
用い、この紫かんしょパウダーフレークから、実施例2
の手法に従い紫サツマイモの濃縮エキスを製造した際の
搾汁歩留まり、ろ過効率、並びにろ過液の外観を併せて
第3表に示す。但し、紫かんしょパウダーフレークを製
造する際の水の添加量は、原料の約20倍量であった。
【0046】比較例4 実施例1で得られた紫サツマイモ乾燥フレークの代わり
に、生の紫サツマイモ(品種名:アヤムラサキ)を蒸
し、裏ごしして得られた紫サツマイモペースト(JA都
城製)を用い、この紫サツマイモペーストから、実施例
2の手法に従い紫サツマイモの濃縮エキスを製造した際
の搾汁歩留まり、ろ過効率、並びにろ過液の外観を併せ
て第3表に示す。但し、紫サツマイモペーストを製造す
る際の水の添加量は、原料の約2倍量であった。
【0047】
【表3】第3表(紫サツマイモの濃縮エキス製造時のろ
過効率等の比較)
【0048】
【発明の効果】請求項1に係る本発明によれば、原料で
ある生の紫サツマイモに豊富に含まれる栄養成分、機能
性成分のロスが低減され、かつアントシアニン含量の高
い紫サツマイモ乾燥フレークが効率良く得られる。請求
項2に係る本発明によれば、繊維を残した紫サツマイモ
乾燥フレークを連続して大量に効率良く製造することが
できる。
【0049】また、請求項1、2に係る本発明により得
られる紫サツマイモ乾燥フレーク(請求項3に係る本発
明の紫サツマイモ乾燥フレーク)は、生の紫サツマイモ
に含まれる栄養成分等のロスが低減されている他、生の
紫サツマイモのように供給量が収穫時期に左右されず、
保管場所を確保するなどの必要がない。また、生の紫サ
ツマイモほど温度や湿度に左右されずに保存可能である
ので、特別の設備を要せず、貯蔵性が向上している。従
って、請求項1、2に係る本発明により得られる紫サツ
マイモ乾燥フレーク(請求項3に係る本発明の紫サツマ
イモ乾燥フレーク)を紫サツマイモ濃縮エキスの製造用
原料として用いることにより、原料保管に関し製造コス
トを削減することができ、食品工業等における大量生産
に適している。
【0050】さらに、請求項4に係る本発明によれば、
繊維を残した紫サツマイモ乾燥フレークを用いているた
め、濃縮エキス加工工程でのプレス搾汁及び遠心分離等
のろ過作用が非常にスムーズであり、目詰まりもしにく
い等、作業効率が各段に向上し、効率の良いものとなっ
ている。請求項5に係る本発明によれば、繊維を残した
紫サツマイモ乾燥フレークを連続して大量に効率良く製
造することができるため、紫サツマイモ濃縮エキスを効
率良く製造することができる。請求項6に係る本発明に
よれば、先に植物組織分離酵素を添加していったん酵素
反応を行った後、改めて植物組織分離酵素及び植物組織
分解酵素を添加して改めて酵素反応を行うことにより、
繊維質が少なく濃厚な甘味もあり、高アントシアニン含
量の紫サツマイモエキスを抽出することができる。
【0051】請求項4、5、6に係る本発明により得ら
れる紫サツマイモ濃縮エキス(請求項7に係る本発明の
紫サツマイモ濃縮エキス)は、色調、甘味、機能性成分
に優れたエキスであると共に、植物組織分離酵素及び植
物組織分解酵素の2種類の酵素を併用して、植物組織の
繊維質が効率良く分解されているので、滑らかな食感
で、不快な風味がほとんどないものとなっている。さら
に、請求項4、5、6に係る本発明により得られる紫サ
ツマイモ濃縮エキス(請求項7に係る本発明の紫サツマ
イモ濃縮エキス)は、従来法のように含水アルコール等
で抽出するものではないので、着色目的の他に、調味目
的でも食品に安心して添加することができる。従って、
本発明は、食品産業等の分野で極めて有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川崎 貞道 熊本県熊本市花園1−25−1 熊本製粉株 式会社内 (72)発明者 内田 充郎 熊本県熊本市小山町1846 熊本県果実農業 協同組合連合会内 (72)発明者 福吉 伯之 熊本県熊本市小山町1846 熊本県果実農業 協同組合連合会内 Fターム(参考) 4B016 LC02 LC03 LC06 LC07 LE01 LE05 LG06 LK18 LP01 LP02 LP05 LP08 LP13 4B018 LB08 LB10 LE05 MA02 MC01 MD15 MD42 MD47 MD53 MF06 MF12 4B047 LB02 LB06 LE01 LG39 LP05 LP07 LP18 LP20 4B069 AA04 BA01 BA02 BA08 HA05 KA10 KC20

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生の紫サツマイモを擂潰した後、高速加
    熱乾燥し、繊維を残したフレーク状にすることを特徴と
    する紫サツマイモ乾燥フレークの製造方法。
  2. 【請求項2】 高速加熱乾燥をドラム式瞬間加熱乾燥機
    により行う、請求項1記載の紫サツマイモ乾燥フレーク
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の方法により得られ
    た紫サツマイモ乾燥フレーク。
  4. 【請求項4】 生の紫サツマイモを擂潰した後、高速加
    熱乾燥し、繊維を残したフレーク状にし、次いで植物組
    織分離酵素及び植物組織分解酵素を添加混合して酵素反
    応を行い、ろ過した後、さらに濃縮することを特徴とす
    る紫サツマイモ濃縮エキスの製造方法。
  5. 【請求項5】 高速加熱乾燥をドラム式瞬間加熱乾燥機
    により行う、請求項4記載の紫サツマイモ濃縮エキスの
    製造方法。
  6. 【請求項6】 植物組織分離酵素及び植物組織分解酵素
    を添加混合して行う酵素反応が、先に植物組織分離酵素
    を添加していったん酵素反応を行った後、改めて植物組
    織分離酵素及び植物組織分解酵素を添加して改めて酵素
    反応を行うものである、請求項4又は5記載の紫サツマ
    イモ濃縮エキスの製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項4〜6のいずれかに記載の方法に
    より得られた紫サツマイモ濃縮エキス。
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