JP2002004418A - Rc系構造物の自己免震構法及び自己免震構造 - Google Patents

Rc系構造物の自己免震構法及び自己免震構造

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 RC系構造物の固有周期を、免震装置、制震
装置を使用しないで長周期化することのできる自己免震
構法及び自己免震構造を提供する。 【解決手段】 プレキャストコンクリート梁2の長手方
向にアンボンドPC鋼材3を貫通させ、該アンボンドP
C鋼材3の両端部をプレキャストコンクリート柱1へ定
着して、地震等の水平力にしたがい前記アンボンドPC
鋼材3の弾性伸び変形に伴う柱梁接合界面の浮き上がり
を許容する構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アンボンドPC
鋼材を利用してプレストレスを導入し、プレキャストコ
ンクリート梁(以下、梁と略す場合がある。)をプレキ
ャストコンクリート柱(以下、柱と略す場合がある。)
へ圧着接合したRC系構造物の自己免震構法及び自己免
震構造の技術分野に属し、更に云えば、前記柱梁接合界
面の浮き上がりを許容することによりRC系構造物の固
有周期を長周期化する自己免震構法及び自己免震構造に
関する。
【0002】
【従来の技術】RC系構造物は、比較的安価で剛性が高
く居住性に優れることから、中小のオフィスビルや集合
住宅に多く採用されている。しかしながら、RC系構造
物はその剛性が高いため固有周期が短く、地震等の外乱
によって大きな応答が建物に生ずるので、何らかの免震
技術を導入する必要性があった。
【0003】その代表的な免震技術として、鋼板とゴム
を交互に積層して一体化した免震ゴムを設置して免震化
を図る技術がある。この免震ゴムを使用した免震化技術
は、RC系構造物の固有周期を長周期化して地震波との
共振を避けRC系構造物への入力エネルギーを小さくす
るので、効果的ではある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、免震ゴ
ムを使用した免震化技術は下記する問題がある。 1) 免震ゴムは、その性能は認められつつも非常に高額
であるため敬遠され易く、広く普及するまでには至って
いない。 2) 免震ゴムは、有機系材料で構成されているため比較
的短いサイクルでの定期的な点検やメンテナンスが必要
となりコストが嵩む。 3) 建物に生じるほとんどの水平変形は免震ゴムが設置
されている免震層で発生するため変形量が免震層に集中
することになる。よって、免震層での設備配管・配線あ
るいは二次部材については高い変形追随性能が要求さ
れ、設計施工上困難で手間が掛かり、コストも嵩む。 4) 免震ゴムは圧縮力やせん断力に対して強いが引っ張
り力には弱い。よって、ロッキング振動が支配的となる
高層建物等のアスペクト比が大きい建物には破損し易く
適応できない。
【0005】したがって、本発明の目的は、RC系構造
物の固有周期を、免震装置、制震装置を使用しないで長
周期化することのできる自己免震構法及び自己免震構造
を提供することである。
【0006】本発明の次の目的は、免震装置、制震装
置、及びそれらに伴うメンテナンスを不要とし、コスト
削減に大きく貢献すると共に居住性に非常に優れたRC
系構造物の自己免震構法及び自己免震構造を提供するこ
とである。
【0007】本発明の次の目的は、地震等の水平変形を
建物全体に分散させることができ、よって設備配管や二
次部材の変形追随性能の検討を不要とするRC系構造物
の自己免震構法及び自己免震構造を提供することであ
る。本発明の次の目的は、高層建物等のアスペクト比が
大きい建物にも好適に実施できるRC系構造物の自己免
震構法及び自己免震構造を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ための手段として、請求項1に記載した発明に係るRC
系構造物の自己免震構法は、プレキャストコンクリート
梁を、アンボンドPC鋼材を利用してプレストレスを導
入し、プレキャストコンクリート柱へ圧着接合するRC
系構造物の自己免震構法であって、前記プレキャストコ
ンクリート梁の長手方向に前記アンボンドPC鋼材を貫
通させ、該アンボンドPC鋼材の両端部を前記プレキャ
ストコンクリート柱へ定着して、地震等の水平力にした
がい前記アンボンドPC鋼材の弾性伸び変形に伴う柱梁
接合界面の浮き上がりを許容する構成とすることを特徴
とする。
【0009】請求項2に記載した発明に係るRC系構造
物の自己免震構造は、プレキャストコンクリート梁を、
アンボンドPC鋼材を利用してプレストレスを導入し、
プレキャストコンクリート柱へ圧着接合したRC系構造
物の自己免震構造であって、前記プレキャストコンクリ
ート梁の長手方向に前記アンボンドPC鋼材が貫通さ
れ、該アンボンドPC鋼材の両端部が前記プレキャスト
コンクリート柱へ定着され、地震等の水平力にしたがい
前記アンボンドPC鋼材の弾性伸び変形に伴う柱梁接合
界面の浮き上がりを許容する構成とされていることを特
徴とする。
【0010】請求項3に記載した発明は、請求項2に記
載したRC系構造物の自己免震構造において、プレキャ
ストコンクリート柱に、プレキャストコンクリート梁端
部の圧壊防止措置が施されていることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施形態、及び実施例】図1は、請求項1及び
2に記載した発明に係るRC系構造物の自己免震構法及
び自己免震構造の実施形態を示している。このRC系構
造物の自己免震構法は、プレキャストコンクリート梁2
を、アンボンドPC鋼材3を利用してプレストレスを導
入し、プレキャストコンクリート柱1へ圧着接合する構
法である。
【0012】即ち、前記プレキャストコンクリート梁2
の長手方向に前記アンボンドPC鋼材3を貫通させ、該
アンボンドPC鋼材3の両端部3a、3aを前記プレキ
ャストコンクリート柱1、1へ定着して、地震等の水平
力にしたがい、図4に示したように、前記アンボンドP
C鋼材3の弾性伸び変形に伴う柱梁接合界面の浮き上が
りを許容する構成とすることを特徴とする(請求項1記
載の発明)。
【0013】前記自己免震構法により構築されたRC系
構造物の自己免震構造は、プレキャストコンクリート梁
2を、アンボンドPC鋼材3を利用してプレストレスを
導入し、プレキャストコンクリート柱1へ圧着接合した
構造である。
【0014】即ち、前記プレキャストコンクリート梁2
の長手方向に前記アンボンドPC鋼材3が貫通され、該
アンボンドPC鋼材3の両端部3a、3aが前記プレキ
ャストコンクリート柱1、1へ定着され、地震等の水平
力にしたがい、図4に示したように、前記アンボンドP
C鋼材3の弾性伸び変形に伴う柱梁接合界面の浮き上が
りを許容する構成とされていることを特徴とする(請求
項2記載の発明)。
【0015】本実施形態では、1スパンに1本のPC鋼
材3を使用して実施しているが、多スパンに1本のPC
鋼材3を使用して実施することもできる。本実施形態で
は、前記アンボンドPC鋼材3としてPC鋼棒3が使用
されているがこれに限定されない。該PC鋼棒3の代わ
りにPC鋼線、PC鋼より線、多層PC鋼より線を使用
しても略同様に実施できる。
【0016】前記アンボンドPC鋼材(PC鋼棒)3
は、図1、2に示したように、プレキャストコンクリー
ト梁2の略中央に1本設けて実施しているが、配置及び
本数はこれに限定されない。前記梁2に複数本のPC鋼
材(PC鋼棒)3をバランス良く多段に配設して実施す
ることもできる。例えば、PC鋼材3をPC鋼線、PC
鋼より線で実施する場合には、前記梁2の略中央に集中
させて実施しても良いし、バランス良く分散させて実施
しても良い。また、PC鋼線、PC鋼より線等で実施す
る場合には、図1で示したように、PC鋼材3を直線状
で実施する必要はなく、アーチ状に屈曲させて実施する
こともできる。要するに、前記アンボンドPC鋼材3
は、その両端部3a、3aが前記プレキャストコンクリ
ート梁2の両端面から突き出る形態であれば良く、当該
梁2に内蔵された部分の形状はフレキシブルな形態で実
施することができる。
【0017】前記アンボンドPC鋼材3の端部3aをプ
レキャストコンクリート柱1へ定着させる手法は格別新
規なものではなく、建築学会のPC規準に示されている
手法等で実施される。本実施形態では、前記アンボンド
PC鋼材3としてPC鋼棒3が使用されているので、図
3に示したように、ナット5と支圧板6を用いて定着さ
せる手法が一般的である。図示は省略したが、前記柱1
の側面を欠き込み、ナット5と支圧板6でPC鋼棒3を
定着させた後モルタル等で埋めて柱1の側面と面一に形
成することもできる。また、前記PC鋼材3は、定着さ
せる前に油圧ジャッキで緊張して予め張力が与えられて
いるので、ボタンヘッドやくさびで定着させても十分に
機能を発揮することができる。因みに、図中の符号4
は、シースを示している。
【0018】なお、前記アンボンドPC鋼材3の両端部
3a、3aは、図1に示したように、向かい合うプレキ
ャストコンクリート柱1の側面を貫通して、その背面側
で定着されているがこれに限定されない。前記柱1に非
貫通孔を設け、同柱1の中間位置で定着させて実施する
こともできる。
【0019】上述したように、アンボンドPC鋼材3は
その全長に渡って、前記柱梁1、2と一体化されておら
ず、その両端部3a、3aでのみ前記柱1、1に緊結さ
れている。よって、アンボンドPC鋼材3は、前記梁2
の任意の位置での自由な伸び変形が許容され、降伏させ
ないようにする設計が容易になる。したがって、本発明
に係るRC系構造物の自己免震構造は、非常に安全で耐
震性に優れたプレキャストコンクリートラーメン構造を
提供することができるのである。
【0020】前記RC系構造物の自己免震構造によれ
ば、前記柱梁接合部界面での梁2の浮き上がり(図4)
によって梁2の見かけの曲げ剛性が浮き上がらない場合
に比較して小さくなり、その結果、RC系構造物の固有
周期が長周期化して地震時の水平力の入力が小さくな
る、いわゆる半鋼接接合となる。このメカニズムを以下
に説明する。
【0021】図5に示す1スパンの門型ラーメンの1次
固有周期Tは[数1]で表される。因みに図中の符号B
は連結バネを示している。
【数1】 上記[数1]について、 m :質量 k :ばね定数 E:コンクリートのヤング係数 I:柱の断面二次モーメント I:梁の断面二次モーメント h :フレーム高さ l :スパン長
【0022】次に、接合部界面で梁2が浮き上がった場
合の門型ラーメンの固有周期について、図6を参照する
と、[数1]のIは次の[数2]のIeffで置き換
えたものとなる。
【数2】 上記[数2]について、 Ieff:接合部界面が浮き上がったときの等価断面二
次モーメント Mθ :接合部界面の回転角がθのときのモーメント
(図6参照) D :梁せい A :PC鋼材の断面積 E :PC鋼材のヤング係数 L :PC鋼材の接合界面1カ所あたりのアンボンド
長さ P :PC鋼材の初期緊張力
【0023】上記[数1][数2]を具体的な数値で示
すと以下のようになる。 <検討モデル>(単位:cm、ton) 柱:50×50、梁:80×40、l=700、m=2
0、E=350、E=2000、A=3.71
6、L=350、P=24.15、θ=0.02
【0024】上記検討モデルの具体的数値を[数1]に
代入すると、浮き上がりのない門型ラーメンの固有周期
が求められる。その結果は、T=0.081(se
c)、I =1.7×10となる。
【0025】一方、上記検討モデルの具体的数値を[数
2]に代入すると、浮き上がりが発生した場合の門型ラ
ーメンの固有周期が求められる。その結果は、T=0.
137(sec)、Ieff=1.8×10となる。
【0026】よって、梁2の浮き上がり効果によって、
門型ラーメンの固有周期は、1.7倍程度、長周期化す
ることが分かる。多層構造物ではこの効果は更に顕著と
なるため、RC系構造物の固有周期の長周期化をより確
実なものとすることができる。本発明は、このメカニズ
ムをバックボーンとしたものである。
【0027】したがって、本発明に係るRC系構造物の
自己免震構法及び自己免震構造によれば、RC系構造物
の固有周期を、免震装置、制震装置を使用しないで長周
期化することができる。また、免震装置、制震装置、及
びそれらに伴うメンテナンスをも不要とするので、コス
ト削減に大きく貢献すると共に居住性に非常に優れる。
【0028】更に、免震ゴムを使用する場合と比して、
地震等の水平変形を建物全体に分散させることができ、
よって設備配管や二次部材の変形追随性能の検討を不要
とする。免震ゴムでは適用できない高層建物等のアスペ
クト比が大きい建物にも好適に実施することができる。
もちろん、免震装置や制震装置と併用して実施すること
もできる。
【0029】前記RC系構造物の自己免震構造はさら
に、図3に示したように、プレキャストコンクリート柱
1に、プレキャストコンクリート梁2の端部の圧壊防止
措置を施して実施しても良い(請求項3)。この圧壊防
止措置は、プレキャストコンクリート柱1の側面1aで
あって、プレキャストコンクリート梁2の浮き上がりに
よる回転変形によって圧縮を受ける部位Xに、圧縮変形
を吸収して当該プレキャストコンクリート梁2の端部の
圧壊を防止する弾性体、緩衝材等の部材(図示省略)を
設けて実施される。この弾性体等の部材の働きにより、
プレキャストコンクリート梁の破損を極力防止すること
ができ、自己免震機能を恒久的に保持できるRC系構造
物の自己免震構造を提供することができる。
【0030】
【本発明の奏する効果】請求項1、2に記載したRC系
構造物の自己免震構法及び自己免震構造によれば、RC
系構造物の固有周期を、免震装置、制震装置を使用しな
いで長周期化することができる。また、免震装置、制震
装置、及びそれらに伴うメンテナンスをも不要とするの
で、コスト削減に大きく貢献すると共に居住性に非常に
優れる。
【0031】更に、免震ゴムを使用する場合と比して地
震等の水平変形を建物全体に分散させることができ、よ
って、設備配管や二次部材の変形追随性能の検討を不要
とする。免震ゴムでは適用できない高層建物等のアスペ
クト比が大きい建物にも好適に実施することができる。
請求項3に記載したRC系構造物の自己免震構造によれ
ば、自己免震機能を恒久的に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るRC系構造物の自己免震構造を示
した立面図である。
【図2】プレキャストコンクリート梁の横断面図であ
る。
【図3】アンボンドPC鋼材の端部と柱との定着部を示
した断面図である。
【図4】本発明に係るRC系構造物の自己免震構造の浮
き上がり状態を示した立面図である。
【図5】本発明に係るRC系構造物の自己免震機能のメ
カニズムを説明するために示した門型ラーメンのモデル
図である。
【図6】図5の門型ラーメンに地震等の水平力が発生し
た場合の柱梁接合部を示したモデル図である。
【符号の説明】
1 プレキャストコンクリート柱 2 プレキャストコンクリート梁 3 アンボンドPC鋼材 4 シース
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 太田 義弘 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 Fターム(参考) 2E125 AA04 AA14 AB12 AC02 AG02 AG04 AG12 AG41 BB01 BB08 BB22 BB30 BC09 BD01 BE07 BE08 BF06 CA05 CA13 CA14 EA00 EB00

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プレキャストコンクリート梁を、アンボン
    ドPC鋼材を利用してプレストレスを導入し、プレキャ
    ストコンクリート柱へ圧着接合するRC系構造物の自己
    免震構法であって、 前記プレキャストコンクリート梁の長手方向に前記アン
    ボンドPC鋼材を貫通させ、該アンボンドPC鋼材の両
    端部を前記プレキャストコンクリート柱へ定着して、地
    震等の水平力にしたがい前記アンボンドPC鋼材の弾性
    伸び変形に伴う柱梁接合界面の浮き上がりを許容する構
    成とすることを特徴とする、RC系構造物の自己免震構
    法。
  2. 【請求項2】プレキャストコンクリート梁を、アンボン
    ドPC鋼材を利用してプレストレスを導入し、プレキャ
    ストコンクリート柱へ圧着接合したRC系構造物の自己
    免震構造であって、 前記プレキャストコンクリート梁の長手方向に前記アン
    ボンドPC鋼材が貫通され、該アンボンドPC鋼材の両
    端部が前記プレキャストコンクリート柱へ定着され、地
    震等の水平力にしたがい前記アンボンドPC鋼材の弾性
    伸び変形に伴う柱梁接合界面の浮き上がりを許容する構
    成とされていることを特徴とする、RC系構造物の自己
    免震構造。
  3. 【請求項3】プレキャストコンクリート柱に、プレキャ
    ストコンクリート梁端部の圧壊防止措置が施されている
    ことを特徴とする、請求項2に記載したRC系構造物の
    自己免震構造。
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