JP2001336109A - 改良型ニート工法 - Google Patents

改良型ニート工法

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JP2001336109A
JP2001336109A JP2000155483A JP2000155483A JP2001336109A JP 2001336109 A JP2001336109 A JP 2001336109A JP 2000155483 A JP2000155483 A JP 2000155483A JP 2000155483 A JP2000155483 A JP 2000155483A JP 2001336109 A JP2001336109 A JP 2001336109A
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aggregate
asphalt
pavement
spraying
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Akira Ito
亮 伊藤
Makoto Saito
誠 斉藤
Takaji Ozaki
尊二 尾崎
Hidetoshi Suzuki
秀敏 鈴木
Takatsugu Takano
登次 高野
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Original Assignee
Nichireki Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 老化ないしは劣化によって表面に荒れやヘア
クラックが発生している舗装体や、粘性流動や轍掘れ等
によって表面に凹凸の生じている舗装体などに適用して
好適な耐久性のあるすべり止め舗装ないしはカラー舗装
を構築することができる改良型ニート工法と、そのよう
な改良型ニート工法によって得られる耐久性のある舗装
体を提供するすることを課題とする。 【解決手段】 路面上に樹脂結合材層を形成し、その上
から硬質及び/又は有色骨材を散布して路面上にすべり
止め舗装ないしはカラー舗装を構築するニート工法にお
いて、樹脂結合材層の下に、アスファルト乳剤と骨材と
を散布して構築される下引き層を設ける工程を含む改良
型ニート工法を提供すると共に、そのような改良型ニー
ト工法によって得られる表面処理層を備えた舗装体を提
供することによって上記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、改良型ニート工法
に関し、詳しくは、老化ないしは劣化によって表面に荒
れやヘアクラックが発生している舗装体や、粘性流動や
轍掘れ等によって表面に凹凸の生じている舗装体などに
適用して好適な改良型ニート工法と、そのような改良型
ニート工法によって得られる舗装体に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】ニート工法は、既設または新設のアスフ
ァルト舗装やコンクリート舗装面上に、結合材として可
撓性エポキシ樹脂などの樹脂を薄く均一に塗布し、その
上に通常最大粒径が3.5mm以下程度の耐摩耗性の硬
質骨材を散布して路面に固着させ、更には必要に応じて
樹脂のトップコート層を設けることによって、舗装面上
にすべり抵抗性のある耐久性に優れた薄い表面処理層を
構築する工法であり、特に湿潤時でも高いすべり抵抗性
を期待することのできると共に、硬質骨材として有色の
ものを使用すれば、すべり抵抗性の他にカラー舗装が併
せて得られる工法である。
【0003】しかしながら、施工対象となる舗装体表面
に、老化ないしは劣化によって骨材が部分的に飛散して
いる荒れた部分や、ヘアクラックが存在したり、或いは
粘性流動や轍掘れ等による凹凸の生じている場合には、
このような舗装体にニート工法をそのまま施工すると、
ニート工法自体によって構築される表面処理層が比較的
薄いものであるため、ニート工法によって構築される表
面処理層によって施工前の舗装体表面に存在していた荒
れやヘアクラック、更には凹凸などを十分にカバーする
ことができないという問題がある。このためニート工法
によって構築されたすべり止め機能や有色性を備えた表
面処理層にその下の舗装面の荒れや凹凸がそのまま現
れ、雨水が滞留したり、更には、構築される表面処理層
の寿命が短くなるなどといった問題点があった。
【0004】この問題を解決するために、従来のニート
工法においては、荒れやヘアクラック、更には凹凸など
が存在する舗装体表面にニート工法を施工する場合に
は、施工に先立ち、樹脂と骨材とを予め混合してモルタ
ル状とした材料を用いて荒れやヘアクラックを補修した
り凹部を埋めたりすることが提案されている。しかしな
がら、樹脂と骨材とを予め混合したモルタル状材料を製
造することは煩瑣である上に、使用する樹脂が一般に高
価であるので、このようなモルタル状材料を用いて荒れ
やヘアクラックを補修したり凹部を埋めたりすることは
実際には行われていないのが実情である。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】本発明は、以上のよう
な従来のニート工法の欠点を解消するために為されたも
ので、老化ないしは劣化によって表面に荒れやヘアクラ
ックが発生している舗装体や、粘性流動や轍掘れ等によ
って表面に凹凸の生じている舗装体などに適用して好適
な耐久性のあるすべり止め舗装ないしはカラー舗装を構
築することができる改良型ニート工法と、そのような改
良型ニート工法によって得られる耐久性のある舗装体を
提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ニート工
法の前処理について研究を重ねた結果、ニート工法にお
いて結合材として塗布される樹脂層の下に、アスファル
ト乳剤と骨材とを散布して構築される下引き層を設ける
ことによって、更には、その下引き層を構築する前に、
施工面の凹凸を小さくするレベリング作業を施すことに
よって、施工面が荒れていたり施工面上にヘアクラック
などが存在する場合でも、また施工面上に轍掘れや粘性
流動や摩耗などによる凹凸が存在する場合でも、ニート
工法の施工に先立って、施工面を若返らせ、滑らかなも
のとすることができ、結果的に凹凸がなく滑らかで雨水
の滞留もなく、かつ、耐久性に富む表面処理層を構築で
きることを見出して、本発明を完成した。
【0007】すなわち、本発明は、路面上に樹脂結合材
層を形成し、その上から硬質及び/又は有色骨材を散布
して路面上にすべり止め舗装ないしはカラー舗装を構築
するニート工法において、樹脂結合材層の下に、アスフ
ァルト乳剤と骨材とを散布して構築される下引き層を設
ける工程を含む改良型ニート工法を提供すると共に、そ
のような改良型ニート工法によって得られる表面処理層
を備えた舗装体を提供することによって上記課題を解決
するものである。
【0008】本発明の改良型ニート工法においては、樹
脂結合材層の下に、アスファルト乳剤と骨材とを散布し
て構築される下引き層が設けられるので、施工面上に存
在する荒れやヘアクラックなどの微細な凹凸は全て下引
き層に覆われてしまい、ニート工法によって構築される
表面処理層が薄くても、構築されたすべり抵抗性や有色
性を備えた表面処理層上に、施工面上に存在した荒れや
ヘアクラックが現れることはない。また、滑らかな下引
き層上にニート工法を施工することができるので、樹脂
結合材を均一に塗布することが容易となり、滑らかで均
一性に富み、かつ、耐久性に優れた表面処理層を構築す
ることが可能となる。
【0009】また、本発明の改良型ニート工法において
は、下引き層を構築するアスファルト乳剤と骨材の散布
に先立って、施工面の凹部にアスファルト乳剤と骨材と
を交互に散布することによって施工面の凹部を埋めるレ
ベリング工程を行うのが望ましく、これによって、施工
面上に轍掘れや粘性流動や摩耗などによって凹凸が存在
する場合でも、凹凸がなく滑らかで雨水の滞留などのな
い表面処理層を構築することが可能となるものである。
下引き層及び/又はレベリング工程に使用する骨材の粒
径は、荒れやヘアクラック、更には凹部の大きさなどに
応じて適宜選択することが可能である。
【0010】下引き層の構築及び/又はレベリング工程
におけるアスファルト乳剤の散布と骨材の散布とは、ア
スファルトディストリビューターや骨材散布車などを用
いてそれぞれ別個の工程として行っても良いが、例え
ば、同じ出願人による特開平11−350413号公
報、特開平11−350414号公報、特開平11−3
50415号公報、特開2000−45217号公報、
特開2000−45218号公報に開示されたような、
結合材の散布装置と骨材の散布装置とを搭載した作業車
を用いて、一連の工程として行う方がより効率的で好ま
しい。このように結合材の散布装置と骨材の散布装置と
を搭載した作業車を用いてアスファルト乳剤の散布と骨
材の散布とを行えば、結合材としてのアスファルト乳剤
の散布後ほぼ一定の時間間隔をおいて骨材の散布が行わ
れるので、より均一で安定した表面処理層を構築するこ
とが可能となる。なお、本発明の改良型ニート工法にお
いては、アスファルト乳剤は、上述のように散布される
のが望ましいが、場合によっては、例えば樹脂と同様
に、塗布によって舗装面上に適用しても良い。
【0011】このように本発明の改良型ニート工法は、
樹脂結合材層の下にアスファルト乳剤と骨材とによって
構築される下引き層やレベリング層を設けるものである
が、アスファルト乳剤は硬化して結合材としての強度を
発現するには分解と水分の逃散を必要とするので、樹脂
結合材層の下に使用することは、樹脂結合材層がアスフ
ァルト乳剤層からの水分の逃散の障害となりアスファル
ト乳剤の硬化を妨げるので、通常、好ましくないと考え
られていた。ところが、本発明者らが確認したところに
よれば、意外にも、樹脂結合材層を設けるニート工法に
おいて、樹脂結合材層の下にアスファルト乳剤を使用し
ても、アスファルト乳剤の硬化は妨げられず、アスファ
ルト乳剤及び樹脂ともに硬化して骨材を路面上に強固に
つなぎ止め、耐久性に優れた表面処理層が構築されるこ
とが見出された。本発明は、本発明者らが見出したこの
予想外の知見に基づくものである。
【0012】アスファルト乳剤は、路面が湿っていたり
濡れていたりしても散布施工することができるので、樹
脂結合材層よりも下の層の構築にアスファルト乳剤を使
用する本発明の改良型ニート工法は、施工面上に直接樹
脂結合材を塗布する従来のニート工法に比べて施工時の
制約がないという利点がある。また、本発明の改良型ニ
ート工法において使用するアスファルト乳剤及び樹脂
は、共に常温で施工できる材料であるので、加熱の必要
がなく、危険性が少ないと共に炭酸ガスの発生もないの
で、地球環境的な観点からも好ましいものである。な
お、本明細書でいうアスファルト乳剤とは、特に断らな
い限り、ゴムや熱可塑性高分子重合物などを添加して改
質した改質アスファルト乳剤も含むものとする。また、
樹脂をラテックスにして使用する場合には、樹脂をアス
ファルト乳剤と同様に散布することが容易となり、施工
性が更に向上するという利点がある。
【0013】本発明の改良型ニート工法において、下引
き層の構築及び/又はレベリング工程におけるアスファ
ルト乳剤として、アスファルト乳剤中の蒸発残留物が以
下のa)〜d)に示す特性、すなわち、 a)針入度が50〜150(1/10mm)、 b)軟化点が50〜120℃、 c)25℃におけるタフネスが70〜320kgf・c
m、 d)25℃におけるテナシティが30〜300kgf・
cm、 という特性をもったアスファルト乳剤が使用される場合
には、骨材の路面に対する付着力が一層向上し、結果的
により耐久性に優れた表面処理層を構築することが可能
となる。
【0014】更には、アスファルト乳剤として、20℃
における粘度が約40センチポアズ以上のアスファルト
乳剤を使用する場合には、凹凸や変形の激しい路面上に
アスファルト乳剤を散布してレベリング層や下引き層を
構築する場合でも、散布されたアスファルト乳剤が散布
直後から路面の傾斜に沿って流動して路面上におけるア
スファルト乳剤の膜厚が不均一になることがなく、均一
で安定した結合力を備えたレベリング層や下引き層を構
築することができる。ここで、粘度は、「舗装試験法便
覧別冊(暫定試験方法)」、社団法人日本道路協会編
集、丸善株式会社、平成8年10月20日発行、第69
〜74頁に記載された粘度試験方法に準じて測定される
値である。
【0015】本発明の改良型ニート工法において、アス
ファルト乳剤の分解を促進する分解補助剤を、アスファ
ルト乳剤と同時期に又は相前後して散布する場合には、
アスファルト乳剤の分解、硬化が一層早められ、より早
期の交通開放が可能となるという利点がある。アスファ
ルト乳剤と分解補助剤とを相前後して路面上に散布する
とは、路面上の施工箇所にアスファルト乳剤または分解
補助剤のどちらかを先に散布した後に、分解補助剤また
はアスファルト乳剤を、先に散布したものの上から散布
することをいうものである。また、アスファルト乳剤と
分解補助剤とを同時期に路面上に散布するとは、路面上
の同じ施工箇所に散布されるべきアスファルト乳剤と分
解補助剤とを、両者の散布時間を少なくとも一部重複さ
せて散布することをいうものである。いずれにせよ、ア
スファルト乳剤と分解補助剤とが同時期に又は相前後し
て散布される結果、アスファルト乳剤と分解補助剤とは
路面上若しくは空中で出会い、接触、混合することとな
る。分解補助剤の散布は、上述のような作業車の結合材
散布装置の近傍に分解補助剤の散布装置を搭載し、その
ような作業車を用いて行うのが好ましい。
【0016】本発明の改良型ニート工法は、すべり止め
舗装やカラー舗装を必要とする全ての場所を対象とし、
例えば、一般道路、自動車専用道路、構内道路、公園内
道路、散策路、自転車道、運動場、駐車場、飛行場、港
湾施設、公会堂等に付帯する広場、歩道等の舗装はもと
より、工場内道路、建物間の連絡通路、工事現場の覆工
板、作業場等の床面や通路、駅構内、建物や店舗等に付
帯する階段や踊り場、船舶内の通路や甲板等にも適用さ
れるものである。特に、本発明の改良型ニート工法によ
って構築された表面処理層は耐久性に優れているので、
一般道路における交差点やその近隣、登坂坂路における
傾斜部や、山岳路における曲線部等、すべり止めが必要
とされ、かつ、通行車両などによって過酷な条件に晒さ
れる場所において、その効果を顕著に発揮するものであ
る。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。
【0018】まず、使用材料について説明する。 〈アスファルト乳剤〉本発明の改良型ニート工法に使用
するアスファルト乳剤とは、レーキアスファルト等の天
然アスファルト、ストレートアスファルト、ブローンア
スファルト、セミブローンアスファルト、溶剤脱瀝アス
ファルト(例えば、プロパン脱瀝アスファルト)等の石
油アスファルト、重油、タール、ピッチ等の1種、また
は2種以上を混合した瀝青物を、各種界面活性剤やクレ
ー(例えばベントナイト)などの乳化剤を用い、さらに
は、アルカリ、酸、塩、分散剤、保護コロイドなどを必
要に応じて添加して、コロイドミル、ホモジナイザー、
ホモミキサーなどの適当な乳化機によって、水中に乳化
させたものである。
【0019】乳化剤としては、カチオン系、アニオン
系、ノニオン系のいずれをも用いることができ、本発明
で使用できるカチオン系の乳化剤としては、長鎖アルキ
ル基を有する脂肪族あるいは脂環族のモノアミン、ジア
ミン、トリアミン、アミドアミン、ポリアミノエチルイ
ミダゾリン、長鎖ヒドロキシアルキルジアミン、ロジン
アミン、これらアミン類の酸化エチレン付加物、アミン
オキサイド、または、これらのアミン系界面活性剤に塩
酸、スルファミン酸、酢酸などの酸を作用させた水溶性
ないし水分散性の塩、さらには、これらのアミン系界面
活性剤の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。また、
これらの界面活性剤と共に、ポリオキシエチレンアルキ
ルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテ
ル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコーポ
リマーなどのノニオン系界面活性剤を併用することもで
きる。
【0020】本発明で使用できるアニオン系の乳化剤と
しては、高級アルコール硫酸エステル、アルキルアリル
スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、αオレ
フィンスルホン酸塩、高級アルコールエトオキシレー
ト、高級アルコールエトオキシレートサルフェート、石
鹸、ナフタリンスルホン酸塩およびホルマリン変性物、
アルカリリグニン塩、リグニンスルホン酸塩、カゼイン
のアルカリ塩、ポリアクリル酸塩等が挙げられる。
【0021】本発明で使用できるノニオン系の乳化剤と
しては、アルキルフェノール、モノおよび多価アルコー
ル酸、脂肪族類、脂肪族アミン類、脂肪族アミド類、エ
タノールアミン類等のアルキレンオキシドの付加物、な
どが挙げられる。
【0022】また、アスファルト乳剤に用いられる分散
剤や保護コロイドとしては、ナフタリンスルホン酸ソー
ダ、カゼイン、アルギン酸、ゼラチン、カルボキシメチ
ルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセ
ルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソー
ダ、リグニンスルホン酸塩、ニトロフミン酸塩等が挙げ
られる。
【0023】本発明に使用するアスファルト乳剤は、上
記乳化分散される瀝青物に、ゴム及び熱可塑性高分子重
合物から選ばれる1種もしくは2種以上を加えて改質し
た改質アスファルト乳剤として使用するのが望ましい。
なお、改質アスファルト乳剤は、アスファルト乳剤にゴ
ム及び熱可塑性高分子重合物から選ばれる1種もしくは
2種以上を加えて改質することによって調製しても良い
し、アスファルトにゴム及び熱可塑性高分子重合物から
選ばれる1種もしくは2種以上を加えて改質した後に、
これを乳化して改質アスファルト乳剤とすることによっ
て調製しても良い。
【0024】改質に使用するゴム及び熱可塑性高分子重
合物としては、天然ゴム、ガタバーチャ、環化ゴム、ス
チレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンゴム、
イソプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブタジエンゴ
ム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル
ゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチ
レン、エチレンプロピレンゴム、EPTゴム、アルフィ
ンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合ゴム、ス
チレン・ブタジエン・スチレン共重合ゴム、スチレン・
イソプレンブロック共重合ゴムなどのゴム、及び、エチ
レン・酢酸ビニール共重合物、エチレン・エチルアクリ
レート共重合物、ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポ
リ酢酸ビニール、塩化ビニール・酢酸ビニール共重合
物、酢酸ビニール・アクリレート共重合物等の熱可塑性
高分子重合物が挙げられる。これらのゴムまたは熱可塑
性高分子重合物は、1種または2種以上を併用して用い
ることができる。これらのゴム及び熱可塑性高分子重合
物は、例えば、粉末状、ラテックス状、エマルジョン
状、水性状のものであり、ラテックス状、エマルジョン
状、水性状のものは、主として、ポストミックスタイプ
の方法による改質アスファルト乳剤に専ら使用される
が、プレミックスタイプの方法による改質アスファルト
乳剤に使用しても良い。
【0025】本発明で使用するアスファルト乳剤は、上
記のように改質アスファルト乳剤を含むものであるが、
これらのアスファルト乳剤には、更に、粘着付与剤とし
て、熱可塑性固形樹脂や固形状ゴム、液状樹脂、軟化
剤、可塑剤などを添加することができる。添加される粘
着付与剤としては、例えば、ロヂンとその誘導体、テル
ペン樹脂、石油樹脂とその誘導体、アルキッド樹脂、ア
ルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマ
ロンインデン樹脂、合成テルペン樹脂、アルキレン樹
脂、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリブデン、
イソブチレンとブタジエンの共重合物、鉱油、プロセス
オイル、パイン油、アントラセン油、松根油、動植物
油、重合油、可塑剤等が挙げられる。また、老化防止剤
や酸化防止剤、硫黄等も添加することができる。さらに
また、改質アスファルト乳剤の粘度調整の目的で、M
C、CMC、HEC、PVA、ゼラチンなどの水溶性高
分子保護コロイドを添加することも可能である。
【0026】改質アスファルト乳剤中のアスファルト
と、ゴム及び熱可塑性高分子重合物との配合割合は、ア
スファルト100重量部に対してゴム及び熱可塑性高分
子重合物が、2〜20重量部、好ましくは、3〜7重量
部の範囲である。ゴム及び熱可塑性高分子重合物の量が
2重量部未満では、改質アスファルト乳剤が分解、硬化
した後における骨材に対する接着力や把握力にゴム及び
熱可塑性高分子重合物を加えた効果が余り見られないの
に対して、ゴム及び熱可塑性高分子重合物の量が20重
量部を越えると、凝集力が強過ぎて、返って骨材からの
剥離が生じ、骨材の飛散を起こし易い。また、本発明で
使用するアスファルト乳剤及び改質アスファルト乳剤中
のアスファルトとしては、分解、硬化した後の特性を考
慮して、針入度(25℃)が50〜150(1/10m
m)程度のものを使用するのが好ましい。
【0027】本発明で結合材として使用するアスファル
ト乳剤及び改質アスファルト乳剤の蒸発残留分(固形
物)は、通常、30〜70重量%程度が好ましく、特
に、50〜68重量%のものが更に好ましい。蒸発残留
分が30重量%未満では、決して使用できないという訳
ではないが、結合材として必要な程度の粘弾性を得るこ
とが難しく、一方、蒸発残留分が70重量%を越える
と、これも決して使用できないという訳ではないが、良
好な施工性を確保しづらい傾向がある。
【0028】また、これらのアスファルト乳剤または改
質アスファルト乳剤には、耐熱性向上や、紫外線等によ
る劣化防止、作業性向上、並びに接着性向上等の目的
で、紫外線吸収剤や、各種添加剤、粘度調整剤などを添
加しても良い。
【0029】本発明の改良型ニート工法に使用されるア
スファルト乳剤は、アスファルト乳剤中の蒸発残留物
が、以下のa)〜d)に示す特性、即ち、 a)針入度が50〜150(1/10mm)、 b)軟化点が50〜120℃、 c)25℃におけるタフネスが70〜320kgf・c
m、 d)25℃におけるテナシティが30〜300kgf・
cm、 を有するものが良く、望ましくは、以下のa’)〜
d’)に示す特性、即ち、 a’)針入度が70〜125(1/10mm)、 b’)軟化点が55〜100℃、 c’)25℃におけるタフネスが90〜250kgf・
cm、 d’)25℃におけるテナシティが50〜220kgf
・cm、 を有するものであり、更に望ましくは、以下のa’’)
〜d’’)に示す特性、即ち、 a’’)針入度が90〜120(1/10mm)、 b’’)軟化点が60〜80℃、 c’’)25℃におけるタフネスが100〜200kg
f・cm、 d’’)25℃におけるテナシティが70〜180kg
f・cm、 を有するものである。
【0030】アスファルト乳剤中の蒸発残留物の針入度
が50(1/10mm)未満では、アスファルト乳剤の
分解後のアスファルトが硬くなりすぎてしまうので好ま
しくなく、逆に、針入度が150(1/10mm)超で
は、アスファルト乳剤の分解後のアスファルトが軟らか
くなりすぎてしまうので好ましくない。
【0031】アスファルト乳剤中の蒸発残留物の軟化点
が50℃未満では、アスファルト乳剤の分解後のアスフ
ァルトが、夏季等の高温下の路面においてフラッシュ現
象を起こし易く、べたつき易いので好ましくなく、逆
に、軟化点が120℃超では、アスファルト乳剤の分解
後のアスファルトに柔軟性が不足し、好ましくない。
【0032】また、アスファルト乳剤中の蒸発残留物の
25℃におけるタフネスが70kgf・cm未満では、
アスファルト乳剤の分解後のアスファルトに粘りが不足
し、腰が弱くなりすぎるので好ましくなく、逆に、タフ
ネスが320kgf・cm超では、アスファルト乳剤の
分解後のアスファルトが、粘りがありすぎ、腰が強くな
りすぎるので、交通荷重に対してもろくなる傾向が出て
くるので好ましくない。
【0033】更には、アスファルト乳剤中の蒸発残留物
の25℃におけるテナシティが30kgf・cm未満で
は、アスファルト乳剤の分解後のアスファルトに伸びが
なくなってしまうので好ましくなく、逆に、テナシティ
が300kgf・cm超では、アスファルト乳剤の分解
後のアスファルトの伸びが大きくなりすぎてしまうので
好ましくない。
【0034】ここで、針入度及び軟化点はJISK22
07に規定されるものであり、タフネス及びテナシティ
は「舗装試験法便覧」、社団法人日本道路協会、平成7
年6月10日発行、第456〜461頁の「タフネス・
テナシティ試験方法」に基づいて測定されるものであ
る。
【0035】〈樹脂〉本発明で結合材として使用する樹
脂としては、通常、ニート工法に使用される樹脂ならば
どのようなものを使用しても良いが、例えば、エポキシ
樹脂、ポリウレタン樹脂、変性エポキシ樹脂、変性ポリ
ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタアクリレート樹
脂、ポリウレタン変性アクリレート樹脂、ポリアクリレ
ート樹脂等を用いることができる。
【0036】変性エポキシ樹脂とは、例えば、アスファ
ルト、タール、重質油、プロセスオイル、液状樹脂、液
状ポリブタジエンなどで変性したエポキシ樹脂である。
この変性エポキシ樹脂は2液型であって、ポリアミン、
ポリアミド、無水有機酸などの硬化剤を必要とし、エポ
キシ樹脂の変性剤は、樹脂側、硬化剤側、或いはその双
方に入れても良い。
【0037】変性ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分
とポリイソシアネート成分との2液型のものであって、
変性は、ポリオール成分にアスファルト、タール、重質
油、プロセスオイル、液性樹脂等を添加することによっ
て行う。このように、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂
と同じく、変性エポキシ樹脂や変性ポリウレタン樹脂も
2液型のものであり、2液を一定比率にて混合すると2
成分が反応硬化して強靱な結合力を発揮することとな
る。
【0038】各種樹脂成分と硬化剤との配合割合は、エ
ポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、変性エポキシ樹脂、及
び、変性ポリウレタン樹脂の場合についていえば、樹脂
成分100重量部に対して、硬化剤は50〜100重量
部の割合が好ましい。また、ポリエステル樹脂やアクリ
レート樹脂の場合には、樹脂成分100重量部に対して
硬化剤は1〜5重量部程度が好ましい。
【0039】上記のような樹脂は、乳化剤の作用によっ
てコロイド状に水中に分散したラテックスとして使用す
ることも可能である。上記のような樹脂のラテックス
は、例えば相当するモノマーを乳化重合させることによ
って製造することができる。樹脂をラテックスとして使
用する場合には、樹脂をアスファルト乳剤などと同様に
散布することが容易となり、施工性が向上するという利
点がある。
【0040】また、上記のような樹脂ないしは樹脂ラテ
ックスには、有機系及び/又は無機系の顔料を適宜加え
て着色することも可能である。例えば、使用する骨材と
同系統に着色した樹脂或いは樹脂ラテックスを使用する
ことによって、骨材の明色性を一層高めることも可能で
ある。使用する無機系顔料としては、例えば、以下に示
す顔料、即ち、 白色:二酸化チタン、酸化亜鉛、鉛白 黒色:鉄黒、黒鉛、カーボンブラック 赤色:カドミウムレッド 橙色:モリブデンオレンジ 黄色:水酸化第二鉄、酸化黄、黄鉛 緑色:酸化クロム、クロムグリーン 青色:群青、紺青、コバルトブルー 紫色:マンガンバイオレット などが挙げられる。
【0041】また、有機系の顔料としては、 赤色:ウオッチングレッド、キナクリドンレッド 橙色:パーマネントオレンジ 黄色:ファストイエロー 緑色:フタロシアニングリーン 青色:フタロシアニンブルー 紫色:ジオキサジンバイオレット などが挙げられる。
【0042】これらの顔料は、1種又は2種以上を組み
合わせて併用しても良い。また、これら顔料の使用量
は、樹脂或いは樹脂ラテックス100重量部に対して、
1〜20重量部、好ましくは、3〜8重量部である。
【0043】〈分解補助剤〉本発明で使用する分解補助
剤としては、使用するアスファルト乳剤の分解を促進す
ることができるものであればどのようなものを使用して
も良く、アスファルト乳剤がカチオン系アスファルト乳
剤である場合には、アニオン系乳化剤、アルカリ性無機
塩、アニオン系高分子凝集剤、アニオン系アスファルト
乳剤、及び、アニオン系ラテックスからなる群から選ば
れる1種若しくは2種以上の分解補助剤を使用すること
ができる。
【0044】使用できるアニオン系乳化剤としては、石
鹸などのカルボン酸塩系のもの;高級アルコール硫酸エ
ステル塩、高級アルコールエトキシレートサルフェート
等の高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、
硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィンなどの硫酸エ
ステル塩系のもの;アルキルアリルスルホン酸塩、α−
オレフィンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、ナ
フタリンスルホン酸塩のホルマリン変性物、リグニンス
ルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム
やアルキルベンゼンスルホン酸ソーダやアルキルベンゼ
ンスルホン酸カリ等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、
ジ・オクチル・スルホ・コハク酸ソーダ等のジ・オクチ
ル・スルホ・コハク酸の金属塩、アルキルメチルタウリ
ン酸ナトリウム等のアルキルメチルタウリン酸の金属塩
などのスルホン酸塩系のもの;リン酸エステル塩系のも
のなどの合成脂肪酸塩や、リグニンなどのスルホン酸塩
系並びにロジン及びトール油などのカルボン酸塩系など
の天然脂肪酸塩が挙げられる。
【0045】使用できるアルカリ性無機塩としては、苛
性ソーダなどのソーダ塩、尿素、重炭酸アンモニウム、
硝酸アンモニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、塩
化アンモニウム、リン酸アンモニウムなどのアンモニウ
ム塩などが挙げられ、その他、高級アルコールエトオキ
シレート、アルカリリグニン酸、カゼインのアルカリ
塩、ポリアクリル酸なども本発明において分解補助剤と
して使用できる。
【0046】以上のような分解補助剤は、そのうちの1
種または2種以上を使用することができるが、中でも、
アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキルベンゼン
スルホン酸アンモニウム、アルキルベンゼンスルホン酸
カリなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、又は、アル
キルメチルタウリン酸ナトリウム、ジ・オクチル・スル
ホ・コハク酸ソーダを使用するのが、硬化速度が早く、
しかも強度及び耐久性に優れた表面処理層が得られるの
で好ましく、更には、これらの中でも、アルキルベンゼ
ンスルホン酸ソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸アン
モニウム、アルキルベンゼンスルホン酸カリなどのアル
キルベンゼンスルホン酸塩を用いるのが更に好ましく、
アルキルベンゼンスルホン酸塩の中では、アルキルベン
ゼンスルホン酸ソーダを用いるのが最も好ましい。
【0047】以上のようなカチオン系アスファルト乳剤
に対する分解補助剤は水溶液の状態で使用するのが望ま
しく、その濃度は、通常、1.5〜30w/w%の範囲
が良い。分解補助剤の水溶液濃度が1.5w/w%未満
では、カチオン系アスファルト乳剤の分解を促進する効
果が期待できず、また、分解補助剤の水溶液濃度が30
w/w%を超えると、カチオン系アスファルト乳剤の分
解速度が速くなり過ぎて施工作業に支障を来すようにな
る。
【0048】本発明において、カチオン系アスファルト
乳剤に対して接触、混合せしめられる分解補助剤の割合
は、カチオン系アスファルト乳剤中の蒸発残留分100
重量部に対して、分解補助剤の水溶液中の有効成分量と
して、0.4〜4.0重量部の範囲が好ましい。分解補
助剤の水溶液中の有効成分量が0.4重量部未満では、
アスファルト乳剤の分解を促進する効果が期待できず、
4.0重量部を超えるとアスファルト乳剤の分解速度が
速くなり過ぎて施工作業に支障を来すようになる。
【0049】一方、アスファルト乳剤としてアニオン系
アスファルト乳剤を使用する場合には、分解補助剤とし
ては、塩化カルシウムなどの二価の無機塩;塩酸、蟻
酸、燐酸などの無機酸;酢酸、クエン酸などの有機酸;
ロジンアミン、アミン類の酸化エチレン付加物、アルキ
ルモノアミン塩酸塩又は酢酸塩、アルキルジアミン塩酸
塩又は酢酸塩、アルキルトリアミン塩酸塩又は酢酸塩な
どのアルキルアミン類;ジアミド、アミドアミンなどの
アミドアミン類の塩酸塩又は酢酸塩;ポリアミノエチル
イミダゾリンなどのイミダゾリン類の塩酸塩又は酢酸
塩;長鎖アルキル基を有する脂肪環族のモノアミンやジ
アミンやトリアミンの塩酸塩又は酢酸塩、ポリオキシエ
チレンアルキルアミン類の塩酸塩又は酢酸塩;アミン化
リグニン類の塩酸塩又は酢酸塩;アミン系カチオン界面
活性剤に塩酸、スルファミン酸、酢酸などの酸を作用さ
せた水溶性ないし水分散性の塩;アミンオキサイド類の
塩酸塩又は酢酸塩;更には、アミン系カチオン界面活性
剤の第4級アンモニウム塩類などが挙げられ、これらの
うちの1種または2種以上を分解補助剤として使用する
ことができる。中でも、アルキルモノアミン塩酸塩又は
酢酸塩、アルキルジアミン塩酸塩又は酢酸塩、アルキル
トリアミン塩酸塩又は酢酸塩などのアミン系カチオン界
面活性剤の水溶性の塩を使用するのが好ましい。また、
これらの分解補助剤と共に、エキシエチレン・オキシプ
ロピレンブロックコーポリマーなどのノニオン系界面活
性剤を併用することもできる。
【0050】また、アスファルト乳剤としてノニオン系
アスファルト乳剤を使用する場合には、分解補助剤とし
ては、高分子凝集剤を使用するのが望ましく、高分子凝
集剤としては、分子量が約1000〜数万である低重合
度のものとして、アルギン酸ナトリウムなどの陰イオン
性の高分子凝集剤;水溶性アニリン樹脂塩酸塩、ポリチ
オ尿素酢酸塩、ポリエチレンアミノトリアゾール、ポリ
ビリルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、キ
トサンなどの陽イオン性の高分子凝集剤;でんぷん、水
溶性尿素樹脂などの非イオン性の高分子凝集剤;ゼラチ
ンなどの両性の高分子凝集剤などが挙げられ、分子量が
数十万〜数百万の高重合度のものとして、ポリアクリル
酸ナトリウム、マレイン酸共重合物塩、ポリアクリルア
ミド部分加水分解塩などの陰イオン性の高分子凝集剤;
ポリエチレンアミン、ビニルビニルピリジン共重合物塩
などの陽イオン性の高分子凝集剤;ポリアクリルアミ
ド、ポリオキシエチレンなどの非イオン性の高分子凝集
剤などが挙げられる。以上のような高分子凝集剤は、そ
のうちの1種もしくは2種以上が使用される。
【0051】以上のようなアニオン系又はノニオン系ア
スファルト乳剤に対する分解補助剤は水溶液の状態で使
用するのが望ましく、その濃度は、通常、1.5〜20
w/w%の範囲が良い。分解補助剤の水溶液濃度が1.
5w/w%未満では、アニオン系又はノニオン系アスフ
ァルト乳剤の分解を促進する効果が期待できず、また、
分解補助剤の水溶液濃度が20w/w%を超えると、ア
ニオン系又はノニオン系アスファルト乳剤の分解速度が
速くなり過ぎて施工作業に支障を来すようになる。
【0052】本発明において、アニオン系またはノニオ
ン系アスファルト乳剤に対して接触、混合せしめられる
分解補助剤の割合は、アニオン系またはノニオン系アス
ファルト乳剤中の蒸発残留分100重量部に対して、分
解補助剤の水溶液中の有効成分量として、0.05〜
0.5重量部の範囲が好ましい。分解補助剤の水溶液中
の有効成分量が0.05重量部未満では、アスファルト
乳剤の分解を促進する効果が期待できず、0.5重量部
を超えるとアスファルト乳剤の分解速度が速くなり過ぎ
て施工作業に支障を来すようになる。
【0053】〈骨材〉本発明で下引き層及びレベリング
層に使用される骨材とは、社団法人日本道路協会発行の
「アスファルト舗装要綱」に記載されている舗装用の骨
材であればどのようなものでも使用でき、例えば、砕
石、玉石、砂利、鉄鋼スラグ等である。また、これらの
骨材にアスファルトを被覆したアスファルト被覆骨材お
よび再生骨材なども使用できる。その他、これに類似す
る粒状材料で、人工焼成骨材、焼成発泡骨材、人工軽量
骨材、陶磁器粒、ルクソバイト、アルミニウム粒、プラ
スチック粒、セラミックス、エメリー等も使用すること
ができる。
【0054】本発明で使用する骨材にアスファルト等を
被覆する場合には、被覆するに必要なアスファルトの量
は、0.1〜1.5重量%程度の範囲である。鉄鋼スラ
グのようなポーラスな骨材の場合には、上記範囲の中で
も多い方の量となり、硬質砂岩のような非ポーラスな骨
材においては、上記範囲の中でも少ない方の量となる。
被覆に使用するアスファルト等としては、アスファル
ト、アスファルト乳剤、及び、これらをゴムやポリマー
などで改質した改質アスファルト、改質アスファルト乳
剤なども使用される。また、ケロシン等で噴霧被覆され
た骨材を使用しても良い。
【0055】一方、本発明において、樹脂結合層上に散
布される硬質骨材としては、ある程度硬質ですべり抵抗
性を有するものであればどのような骨材を用いても良い
が、例えば、エメリー、フェロクロム・スラグや電融ア
ルミナなどの人工黒色硬質骨材、炭化珪素質硬質骨材、
セラミックス、シリカサンド、硬質砂岩などが挙げら
れ、これらの硬質骨材はその1種又は2種以上を併用し
ても良い。また、カラー舗装を実現するには、種々の色
を持った有色の骨材を使用すれば良く、例えば、天然有
色骨材や、人工焼成骨材、焼成発泡骨材、人工軽量骨
材、陶磁器粒、ルクソバイト、アルミニウム粒、プラス
チック粒、セラミックス、エメリー等の中でも有色のも
のなどが挙げられる。これらの有色骨材を使用すれば、
強固で耐久性、安定性に優れたカラー舗装を容易に実現
することが可能である。さらに、異なる石質、種類、色
調の1種又は2種以上の骨材を混合して併用しても良
い。なお、これらの有色骨材は、通常はプレコートなし
に使用されるが、プレコートして使用する場合には、そ
れら骨材が本来有している有色性を損なわない材料を使
用することは勿論である。
【0056】本発明において樹脂結合材層の上に散布さ
れる骨材の粒径は、本発明によって構築される表面処理
層に居眠防止などの特殊な機能を持たせる場合には、5
−3.3mm程度であり、最大粒径が5mm以下のもの
であるが、好ましくは、最大粒径が3.5mm以下であ
り、車道用としては、通常3.5−1.5mm、歩道用
としては通常2−1mmの範囲のものを使用するのが、
より薄くて均一なすべり止め層ないしはカラー舗装を構
築する上で望ましい。
【0057】次に、図面を用いて本発明の改良型ニート
工法について説明する。
【0058】まず、図1に示すように、施工路面1を図
示しないロードスイーパーで清掃した後、例えば、路面
1上に轍掘れAが存在する場合には、轍掘れAの部分に
アスファルト乳剤2aが散布され続いて骨材3aを散布
して第1のレベリング層が構築される。アスファルト乳
剤2aを散布するに先立って、水を散布するようにして
も良い。水は、アスファルト乳剤2aと路面1との接着
性やなじみ性を増強する効果があり、また、夏季には上
昇した路面温度を下げる効果もある。骨材3aの散布
後、竹箒などで不均一な面を修正し、また、余剰の骨材
を除去し、骨材3aの散布面を小型の振動ローラーやバ
イブレーターなどを用いて転圧した後に、アスファルト
乳剤2bの散布と骨材3bの散布とが行われ第2のレベ
リング層が構築される。骨材3bを散布後、竹箒などで
不均一な面を修正し、また、余剰の骨材を除去し、骨材
3bの散布面を小型の振動ローラーやバイブレーターな
どを用いて転圧する。
【0059】このようにアスファルト乳剤2a、2bの
散布と骨材3a、3bの散布とを交互に繰り返して行い
レベリング層を必要な厚さに構築することによって、轍
掘れAが埋められる。アスファルト乳剤2a、2bと骨
材3a、3bとの散布の回数、すなわちレベリング層の
層数は、図示の2層に限られず、轍掘れAの深さや使用
する骨材の粒径によって適宜選択可能であり、轍掘れA
が浅い場合には1層でも良いし、深い場合には3層以上
に構築しても良い。アスファルト乳剤2a、2bの散布
量は、1層当たり、60〜250(リットル/100m
)の範囲が好ましく、骨材の散布量は、使用する骨材
の粒径にも依るが、例えば使用する骨材が粗目砂の場合
には、0.4(m/100m)程度、5号砕石の場
合には2.0(m/100m)程度である。
【0060】アスファルト乳剤2aと2bは同じであっ
ても異なっていても良いが、施工効率的には同じアスフ
ァルト乳剤を使用するのが望ましい。また、骨材3aと
3bとは同じであっても異なっていても良いが、凹部を
効率良く埋めてレベリングを行うという観点からは、下
層に用いられる骨材ほど粒径の大きなものを使用するの
が望ましい。なお、骨材は、通常、常温で散布される
が、100〜170℃に加熱した状態で散布するように
しても良い。
【0061】以上のようなレベリング工程は、施工面上
に轍掘れや粘性流動による凹凸が存在しない場合には特
に行う必要はない。また、凹凸が極めて深い場合には、
加熱アスファルト混合物などを使用して凹部を埋めるよ
うにしても良い。
【0062】以上のようにしてレベリング工程が完了す
ると、続いて、図2に示すように、路面1及び骨材3b
の転圧面上にアスファルト乳剤4を散布し、直ちに骨材
5を散布して、下引き層を構築する。この下引き層に使
用するアスファルト乳剤4としては、レベリング層の構
築に使用したのと同じアスファルト乳剤を使用しても、
また、異なるアスファルト乳剤を使用しても良い。下引
き層の構築に使用するアスファルト乳剤4の散布量は、
60〜150(リットル/100m)の範囲が好まし
い。また、骨材5の散布量は、使用する骨材の粒径にも
依るが、通常、粗目砂の場合には0.4〜0.6(m
/100m)程度である。下引き層に使用する骨材5
の粒径に特に制限はないけれども、後続するニート工法
に滑らかな施工面を提供するという観点からは、ニート
工法に使用される硬質ないしは有色骨材よりも小径のも
のが好ましい。骨材5の散布面は、タイヤローラーやマ
カダムローラーなどを用いて十分に転圧するのが好まし
い。
【0063】以上のような、アスファルト乳剤2a、2
b或いはアスファルト乳剤4と、骨材3a、3b或いは
骨材5との散布は、できるだけ、一定の短い時間間隔で
行われるのが望ましく、そのような施工を容易に可能に
する作業車としては、例えば、同じ出願人による特開平
11−350413号公報、特開平11−350414
号公報、特開平11−350415号公報、特開200
0−45217号公報、特開2000−45218号公
報に開示されたような作業車が挙げられる。これら公報
に開示された作業車においては、結合材の散布装置と骨
材の散布位置とが、共に、作業車の前輪より前、前輪と
後輪の間、或いは、後輪よりも後ろになるように配置さ
れており、結合材としてのアスファルト乳剤が散布され
た上に直ちに骨材が散布されるので、作業車のタイヤ若
しくはクローラーが散布された結合材としてのアスファ
ルト乳剤上を踏むことがなく、一旦散布された結合材と
してのアスファルト乳剤が剥離したり、タイヤ等に付着
して他の路面等を汚す恐れがない。しかも、上記明細書
に開示されたような作業車にあっては、結合材の散布装
置と骨材の散布装置とが共に単一の作業車上に搭載さ
れ、それぞれの散布が行われるので、結合材としてのア
スファルト乳剤の散布から骨材の散布までを一貫した作
業として管理、施工することができ、また、アスファル
ト乳剤と骨材の散布幅を連動させて調節することができ
るので、作業車を進行させながら、路面1の所定の部分
にのみアスファルト乳剤と骨材の散布を行うことができ
るので、非常に効率的である。
【0064】以上のようにして下引き層の構築が終了す
ると、続いて、下引き層を構成する骨材5の散布面上
に、樹脂6が図2に示されるように塗布又は散布され
る。樹脂6の塗布は、例えばローラー刷毛などを用いて
行うことができる。また、樹脂ラテックスを用いる場合
には、エンジンスプレーヤーやデストリビューターなど
を用いて散布することもできる。樹脂6の塗布量或いは
散布量は100m当たり30〜120kgが好まし
い。下引き層の骨材5の散布から樹脂6の塗布又は散布
までの間には20〜60分程度の時間を開けるのが望ま
しい。樹脂6の塗布または散布後、骨材7が散布され
る。骨材7としてはすべり抵抗性を与える硬質骨材や、
カラー舗装を実現する有色骨材などが選ばれる。骨材7
の散布量は、100m当たり0.3〜0.5mの範
囲が好ましい。続いて、骨材7の散布面をマカダムロー
ラー等で転圧し、仕上げとする。転圧後、30〜90分
程度の養生時間を経た後に、施工面は交通開放すること
ができる。場合によっては、骨材7の表面に例えばアク
リル樹脂等によるトップコートを施しても良い。
【0065】本発明の改良型ニート工法の好ましい一例
においては、レベリング工程及び/又は下引き層の構築
に使用するアスファルト乳剤の散布と同時期に或いは相
前後して分解補助剤が散布される。アスファルト乳剤と
分解補助剤とを相前後して路面上に散布する場合、アス
ファルト乳剤をまず路面上に散布した後に、その散布面
上に分解補助剤を散布するようにしてもよいし、また逆
に、分解補助剤をまず路面上に散布した後に、その散布
面上にアスファルト乳剤を散布しても良い。また、更に
は、アスファルト乳剤、分解補助剤とを、この順に散布
した後に、再度、アスファルト乳剤を散布するようにし
ても良いし、分解補助剤とアスファルト乳剤とをこの順
に散布した後に、再度、分解補助剤を散布するようにし
ても良いが、好ましくは、アスファルト乳剤と分解補助
剤とを同時期に路面上に散布し、両者を路面上で衝突、
接触させることによって、更に好ましくは、アスファル
ト乳剤と分解補助剤とを同時期に散布し、両者を空中で
衝突、接触させることによって、アスファルト乳剤と分
解補助剤とを接触、混合させるのが良い。これにより、
分解補助剤によるアスファルト乳剤の分解促進作用が開
始され、アスファルト乳剤は、アスファルト乳剤単独の
ときよりも短時間で分解、硬化するので、より短い養生
時間で強固で耐久性に富み且つ安定性に優れたレベリン
グ層や下引き層を構築することができるものである。
【0066】アスファルト乳剤と分解補助剤とを空中で
衝突、接触させ、両者を衝撃的に混合・攪拌させるに
は、アスファルト乳剤を散布するスプレーノズルと分解
補助剤を散布するスプレーノズルとを、例えば作業車の
近接した位置に、1のスプレーノズルから噴射されたア
スファルト乳剤と、対応する1のスプレーノズルから噴
射された分解補助剤とが空中で衝突するような角度で設
けた作業車を使用するのが良い。このとき、個々のスプ
レーノズルから噴射される分解補助剤の、アスファルト
乳剤との衝突位置における広がり幅が、衝突相手である
アスファルト乳剤の同じく衝突位置における広がり幅と
ほぼ一致するように、アスファルト乳剤用のスプレーノ
ズルと分解補助剤用のスプレーノズルとを設けるのが好
ましい。
【0067】更には、個々のスプレーノズルから噴射さ
れる分解補助剤の、アスファルト乳剤との衝突位置にお
ける噴射密度が、衝突位置における広がり幅の全体にお
いてほぼ均一となるように、アスファルト乳剤用のスプ
レーノズルと分解補助剤用のスプレーノズルとの位置関
係を設定するのが好ましい。このようにすることによっ
て、アスファルト乳剤と分解補助剤とを均一に、かつ、
制御された割合で衝突、接触、混合させることが可能と
なり、アスファルト乳剤の分解・硬化時間がより短縮さ
れると共に、結果として得られる表面処理層の耐久性や
強度にも良い影響がもたらされる。
【0068】以下、実験例を用いて本発明を更に詳細に
説明する。
【0069】〈実験1〉アスファルト乳剤中の蒸発残留
物の特性が路面との結合力に及ぼす影響 アスファルト乳剤中の蒸発残留物の特性が骨材を路面に
つなぎ止める結合力に及ぼす影響を調べるため、以下に
述べる付着性試験をビアリット(Vialit)付着試
験方法に準じて行った。
【0070】即ち、蒸発残留物が表1に示すような種々
の特性を有する10種類のアニオン系アスファルト乳剤
を調製し、併行して、粒径8−5mmの汎用骨材(砕
石、栃木県葛尾産)を用意し、ビアリット付着試験方法
に規定する条件で乾燥、静置した。分解補助剤として
は、アルキルジアミン酢酸塩(商品名「カチオンDT
A」、日本油脂株式会社製)の10w/w%水溶液を用
意し、重量比で、(分解補助剤水溶液中の有効成分量)
/(アスファルト乳剤中の蒸発残留分)=0.3/10
0とした。
【0071】一方、厚さ2mm、大きさ200×200
mmの金属板を所定枚数用意し、水平に載置した各金属
板表面に結合材として別途調製した上記10種類のアニ
オン系アスファルト乳剤の各々と上記分解補助剤とをフ
ラット形のスプレーノズルを用いて空中で衝突させなが
ら1.1(リットル/m)の割合で散布した。なお、
アスファルト乳剤の散布高さHは50cm、アスファル
ト乳剤と分解補助剤の衝突位置は、散布面から30cm
とした。次いで、このアスファルト乳剤と分解補助剤の
散布面上に上記骨材を金属板1枚当たり90粒ずつ散布
し、実験用ハンドローラーで線圧7kgf/cmの負荷
をかけて、相反する方向にそれぞれ15回ずつ、合計3
0回転圧した。これを所定時間静置した後、骨材の付着
面を下にして水平に保持した状態で、その上から、直径
50mm、重さ500gの鉄球を10秒以内に3回、金
属板中央に落下させた。鉄球の落下によって金属板から
はがれ落ちた骨材粒の内、結合材が付着していない骨材
粒の数を数えてaとした。また、金属板に残った骨材を
手で剥がし、結合材が付着していない骨材粒の数を数え
てdとした。付着率(%)は、付着率(%)={(90
−a−d)/90}×100として計算した。各々の試
料について3回試験を行い、結果はその平均とし、付着
率80%以上のものを満足できるもの、付着率85%以
上のものをより満足できるもの、付着率90%以上のも
のを更に満足できるものと評価した。更に、分解補助剤
を散布しない点を除いては同じ手順で、10種類のアニ
オン系アスファルト乳剤上に骨材を散布した試料を作成
し、同様に試験して付着率を求めた。結果を併せて表1
に示す。
【0072】
【表1】
【0073】表1から明らかなように、アスファルト乳
剤と分解補助剤とを空中で衝突させた場合には、アスフ
ァルト乳剤中の蒸発残留物の物性が、針入度が50(1
/10mm)以上、150(1/10mm)以下、軟化
点が50℃以上、120℃以下、25℃におけるタフネ
スが70kgf・cm以上、320kgf・cm以下、
25℃におけるテナシティが30kgf・cm以上、3
00kgf・cm以下で、付着率80%以上の満足でき
る結果が得られた。また、針入度が70〜125(1/
10mm)、軟化点が55〜100℃、タフネスが90
〜250kgf・cm、テナシティが50〜220kg
f・cmの範囲で、付着率85%以上の満足できる結果
が得られ、更には、針入度が90〜120(1/10m
m)、軟化点が60〜80℃、タフネスが100〜20
0kgf・cm、テナシティが70〜180kgf・c
mのアスファルト乳剤D及びEにおいて、付着率90%
以上の結果が得られた。しかしながら、軟化点が120
℃の乳剤Iとなると、アスファルト乳剤が分解して得ら
れるアスファルト分は柔軟性に欠け、付着率においても
若干低下する傾向が見られた。更に軟化点が高くなっ
て、アスファルト乳剤中の蒸発残留物の軟化点が150
℃、針入度が40(1/10mm)、タフネスが360
kgf・cm、テナシティが350kgf・cmのアス
ファルト乳剤Jは、アスファルト乳剤が分解して得られ
るアスファルト分は一層柔軟性に欠けて、付着率は更に
減少した。一方、分解補助剤を使用しない場合において
もほぼ同様の結果が得られたが、付着率は全体的に分解
補助剤を使用する場合に比べて低い値が得られた。
【0074】〈実験2〉アスファルト乳剤の粘度が構築
される表面処理層の均一性に及ぼす影響 アスファルト乳剤の粘度が構築される表面処理層の均一
性に及ぼす影響を調べるため、20℃における粘度が種
々の値を示すアニオン系アスファルト乳剤を用意し、轍
掘れの出来た路面から舗装打ち替えのために切り出した
表面に凹凸のある実験用舗装体上に、1.2(リットル
/m)の割合で散布した。なお、凹部と凸部の差は、
平均で約20mmであった。次いで、直ちに、実験1で
用いたのと同じ骨材を9(リットル/m)の割合で上
から散布し、軽く転圧した後、結合材が硬化するまで養
生した。養生後、実験用舗装体をカッターで切断し、凹
部の底部及び凸部の頂部における結合材の厚さを測定し
た。結果を、使用した結合材の種類と共に表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】表2の結果から明らかなように、20℃に
おける粘度が19センチポアズ及び32センチポアズの
アスファルト乳剤は、散布後、重力の作用によって路面
の凹部に流れ込み滞留する傾向があり、路面の凸部の頂
部ではアスファルト乳剤の分解によって形成された結合
材層の厚さは平均して約0.7mmないしは0.8mm
と薄く、逆に、路面の凹部の底部では、平均して1.5
mmないしは1.2mmと厚い結合材層が形成された。
凸部における骨材粒は、スパチュラの先で剥がすことを
試みると、比較的簡単に剥がすことができた。また、凹
部にあっては、結合材の量が多過ぎて、このままでは実
際に車両の通行に供用された場合にはフラッシュ現象を
起こす危険性がある。
【0077】一方、20℃における粘度が約40センチ
ポアズ以上となると、アスファルト乳剤の流動は抑えら
れ、路面凹部の底部及び凸部の頂部におけるアスファル
ト乳剤の分解によって形成された結合材層の厚さにはさ
ほど違いが見られない。凸部、凹部における骨材粒をス
パチュラ先端で剥がすことを試みたが、容易には剥がす
ことができないほど強固に結合していた。以上のことか
ら、アスファルト乳剤として20℃における粘度が約4
0センチポアズ以上のものを使用すれば、路面に凹凸が
あっても結合材が路面上で流動することなく、均一な表
面処理層が構築できることが分かった。
【0078】以下、実施例を用いて、本発明を更に説明
するが、本発明がこれら実施例に限られるものでないこ
とは勿論である。
【0079】〈実施例1〉轍部に約25mmの凹部のあ
る工場敷地内の1車線の運搬道路に、以下の材料を使用
し、単一の作業車に水又はプライマーの散布装置、結合
材散布装置、分解補助剤散布装置、及び、骨材散布装置
が搭載された作業車を用いて、試験的に本発明の改良型
ニート工法を施工した。すなわち、施工面上をロードス
イーパーで清掃した後、作業車を約5km/hの進行速
度で施工面上に進行させ、まず、2本の轍部のみに、第
1のレベリング層としてアスファルト乳剤の散布と骨材
の散布とをこの順に行い、次いで、余剰の骨材を除去
し、骨材の散布面を振動ローラーを用いて転圧した。続
いて、同じ作業車を約5km/hの進行速度で再度施工
面上に進行させ、第2のレベリング層として、アスファ
ルト乳剤の散布と骨材の散布とをこの順に行い、次い
で、余剰の骨材を除去し、骨材の散布面を振動ローラー
を用いて転圧して、レベリング工程を完了した。
【0080】続いて、同じ作業車を作業車を約5km/
hの進行速度で施工面上に進行させ、施工面の全幅員に
わたってアスファルト乳剤の散布と骨材の散布とを行
い、骨材の散布後、マカダムローラーで散布面を十分に
転圧し、浮き石を除去した後、再度マカダムローラーで
転圧して、下引き層とした。
【0081】下引き層の構築後、30分の養生時間をお
いて、ローラー刷毛で樹脂を塗布した後、樹脂の塗布面
上に有色骨材を散布し、散布面をマカダムローラーで転
圧し、浮き石を除去してカラー舗装としての表面処理層
を構築した。構築されたカラー舗装としての表面処理層
は、施工面に約20mmの轍掘れが存在したにも拘わら
ず、凹凸のない滑らかな表面を有しており、使用した有
色骨材の色彩を鮮やかに感じさせるものであった。
【0082】使用した材料は以下のとおりである。 第1のレベリング層 アスファルト乳剤:アニオン系アスファルト乳剤(商品
名「サンピーゾールA」、ニチレキ株式会社製) 蒸発残留分:68(%) 蒸発残留物の針入度:103(1/10mm) 蒸発残留物の軟化点:65(℃) 蒸発残留物の25℃におけるタフネス:160(kgf
・cm) 蒸発残留物の25℃におけるテナシティ:145(kg
f・cm) 蒸発残留物の60℃における絶対粘度:16000(ポ
アズ) 20℃における粘度:42(センチポアズ) 散布量:120(リットル/100m) 骨材:汎用5号砕石(粒径20−13mm、栃木県葛尾
産) 散布量:2(m/100m
【0083】第2のレベリング層 アスファルト乳剤:第1のレベリング層に使用したのと
同じアニオン系アスファルト乳剤 散布量:220(リットル/100m) 骨材:汎用6号砕石(粒径13−5mm、栃木県葛尾
産) 散布量:1.2(m/100m
【0084】下引き層 アスファルト乳剤:第1のレベリング層に使用したのと
同じアニオン系アスファルト乳剤 散布量:100(リットル/100m) 骨材:汎用粗目砂(粒径2.5−0mm、栃木県鬼怒川
産) 散布量:0.6(m/100m
【0085】有色表面処理層 樹脂:エポキシ樹脂(商品名「コールカットR−1」、
ニチレキ株式会社製) 塗布量:90(kg/100m) 骨材:有色骨材(商品名「ロードセラムG」、粒径1−
0mm、色調:緑、内外セラミックス株式会社製) 散布量:0.4(m/100m
【0086】〈実施例2〉レベリング層及び下引き層を
構築する際に、分解補助剤として「カチオンDTA」
(日本油脂株式会社製)を、アスファルト乳剤の蒸発残
留分100重量部に対して、有効成分量で0.3重量
部、アスファルト乳剤と同時に散布して、アスファルト
乳剤と分解補助剤とを空中で衝突させた点、及び、樹脂
結合材層上に散布する骨材として、「ロードセラムG」
に代えて、エメリー(粒径3.5−1.5mmの硬質骨
材、木浦エメリー株式会社製)を用いた他は実施例1と
同様にして、実施例1と同様に轍掘れのある工場内運搬
道路に本発明の改良型ニート工法を施工した。構築され
たすべり止め舗装としての表面処理層は、施工面に約2
5mmの轍掘れが存在したにも拘わらず、凹凸のない滑
らかな表面を有しており、施工1ヶ月後、ポータブルテ
スタを用いて表面処理層のすべり抵抗値(BPN)を測
定したところ、約83と高いすべり抵抗性を維持してい
た。
【0087】〈実施例3〉樹脂としてアクリル樹脂ラテ
ックス(商品名「カラーコート#1001」、ニチレキ
株式会社製)を一本撒きのエンジンスプレーヤーで散布
した以外は実施例2と同様にして、実施例1と同様に轍
掘れのある工場内運搬道路に本発明の改良型ニート工法
を施工した。構築されたすべり止め舗装としての表面処
理層は、施工面に約25mmの轍掘れが存在したにも拘
わらず、凹凸のない滑らかな表面を有しており、施工1
ヶ月後、ポータブルテスタを用いて表面処理層のすべり
抵抗値(BPN)を測定したところ、約82と高いすべ
り抵抗性を維持していた。
【0088】
【発明の効果】以上のように、本発明の改良型ニート工
法においては、樹脂結合材層の下にアスファルト乳剤と
骨材とを散布して構築される下引き層を設ける工程を含
んでいるので、老化や劣化によって荒れたり、ヘアクラ
ックなどの微細な凹凸の存在する舗装面上に施工して
も、舗装面の荒れやヘアクラックがニート工法によって
構築される表面処理層上に現れることがなく、滑らかで
耐久性に富むすべり止め舗装やカラー舗装を構築するこ
とができる。
【0089】また、本発明の改良型ニート工法において
は、下引き層を構築する前に、アスファルト乳剤と骨材
とを散布して施工面上の凹部を埋めるレベリング工程を
行うので、轍掘れや粘性流動による凹凸が存在する舗装
面上に施工しても、舗装面上に存在した凹凸がニート工
法によって構築される表面処理層上に現れることがな
く、滑らかで凹凸がなく、雨水等が滞留する恐れのない
すべり止め舗装やカラー舗装を構築することができるも
のである。
【0090】しかも、本発明においてレベリング工程や
下引き層の構築に使用されるアスファルト乳剤は、施工
面が濡れていたり多少の水分が残存した状態でも十分に
施工が可能であり、施工に際しての制約が少ないという
利点がある。更には、本発明において結合材として使用
するアスファルト乳剤及び樹脂は、共に常温で施工でき
る材料であるので、加熱の必要がなく、危険性が少ない
と共に炭酸ガスの発生もないので、地球環境的な観点か
らも好ましいものである。
【0091】また、本発明の改良型ニート工法におい
て、蒸発残留物の特性が規制されたアスファルト乳剤を
使用する場合には、骨材の路面に対する付着力が一層向
上し、より耐久性に優れた表面処理層を構築することが
可能となるものである。更には、アスファルト乳剤とし
て、20℃における粘度が約40センチポアズ以上のア
スファルト乳剤を使用する場合には、凹凸や変形の激し
い路面上にアスファルト乳剤を散布してレベリング層や
下引き層を構築する場合でも、散布されたアスファルト
乳剤が散布直後から路面の傾斜に沿って流動して路面上
におけるアスファルト乳剤の膜厚が不均一になることが
なく、均一で安定した結合力を備えたレベリング層や下
引き層を構築することができる。
【0092】また、本発明の改良型ニート工法におい
て、アスファルト乳剤の分解を促進する分解補助剤を、
アスファルト乳剤と同時期に又は相前後して散布する場
合には、アスファルト乳剤の分解、硬化が一層早めら
れ、より早期の交通開放が可能となるという利点があ
る。
【0093】更に、本発明の改良型ニート工法は、レベ
リング工程や下引き層の構築に使用されるアスファルト
乳剤と骨材の散布とを、結合材の散布装置と骨材の散布
装置とを搭載した作業車を用いて行うことによって、更
に効率良く施工することが可能となるものである。ま
た、上記のような本発明の改良型ニート工法によって構
築された表面処理層を有する舗装体は、滑らかで凹凸が
ない上に、骨材の剥離が極めて少なく、すべり抵抗性な
いしは有色性を長期間にわたって保持する耐久性に優れ
た舗装体である。このように本発明は、極めて有用、か
つ、優れた効果を奏するものであ。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の改良型ニート工法の工程を説明する
ための図である。
【図2】 本発明の改良型ニート工法の工程を説明する
ための図である。
【符号の説明】
1 路面 2a、2b アスファルト乳剤 3a、3b 骨材 4 アスファルト乳剤 5 骨材 6 樹脂 7 硬質又は有色骨材 A 轍掘れ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 秀敏 栃木県小山市稲葉郷42番地3号 (72)発明者 高野 登次 愛知県名古屋市緑区若田2番地613号 Fターム(参考) 2D051 AA07 AD01 AE01 AE05 AG01 AG11 AH01 EA01

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 路面上に樹脂結合材層を形成し、その上
    から硬質及び/又は有色骨材を散布して路面上にすべり
    止め舗装ないしはカラー舗装を構築するニート工法にお
    いて、樹脂結合材層の下に、アスファルト乳剤と骨材と
    を散布して構築される下引き層を設ける工程を含む改良
    型ニート工法。
  2. 【請求項2】 硬質及び/又は有色骨材の最大粒径が5
    mm以下、望ましくは3.5mm以下である請求項1記
    載の改良型ニート工法。
  3. 【請求項3】 下引き層を構築するアスファルト乳剤と
    骨材の散布に先立って、施工面の凹部にアスファルト乳
    剤と骨材とを交互に散布することによって施工面の凹部
    を埋めるレベリング工程を行う請求項1又は2記載の改
    良型ニート工法。
  4. 【請求項4】 下引き層の構築及び/又はレベリング工
    程に使用されるアスファルト乳剤が、アスファルト乳剤
    中の蒸発残留物が以下のa)〜d)に示す特性を有する
    ものである請求項1、2又は3記載の改良型ニート工
    法; a)針入度が50〜150(1/10mm)、 b)軟化点が50〜120℃、 c)25℃におけるタフネスが70〜320kgf・c
    m、 d)25℃におけるテナシティが30〜300kgf・
    cm。
  5. 【請求項5】 下引き層の構築及び/又はレベリング工
    程に使用されるアスファルト乳剤の20℃における粘度
    が約40センチポアズ以上である請求項1、2、3又は
    4記載の改良型ニート工法。
  6. 【請求項6】 下引き層の構築及び/又はレベリング工
    程におけるアスファルト乳剤の散布と骨材の散布とが、
    少なくとも結合材の散布装置と骨材の散布装置とを車両
    前方からこの順に備えた作業車を用いて、アスファルト
    乳剤の散布後ほぼ一定の時間間隔をおいて骨材の散布が
    行われる請求項1ないし5のいずれかに記載の改良型ニ
    ート工法。
  7. 【請求項7】 下引き層の構築及び/又はレベリング工
    程におけるアスファルト乳剤の散布と同時期に又は相前
    後して、アスファルト乳剤の分解を促進する分解補助剤
    が散布される請求項1ないし6のいずれかに記載の改良
    型ニート工法。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれかに記載の改
    良型ニート工法によって構築された表面処理層を有する
    舗装体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101666064B (zh) * 2009-08-06 2011-01-12 中铁四局集团有限公司 沥青裂纹路面的施工方法
JP2012225145A (ja) * 2011-04-07 2012-11-15 Gecoss Corp 覆工板

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