JP3395134B2 - 機能性複層型散布式表面処理工法 - Google Patents

機能性複層型散布式表面処理工法

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JP3395134B2
JP3395134B2 JP2000155242A JP2000155242A JP3395134B2 JP 3395134 B2 JP3395134 B2 JP 3395134B2 JP 2000155242 A JP2000155242 A JP 2000155242A JP 2000155242 A JP2000155242 A JP 2000155242A JP 3395134 B2 JP3395134 B2 JP 3395134B2
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    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機能性複層型散布
式表面処理工法に関し、詳しくは、有色性や滑り止め効
果、ないしは光輝性或いは光り反射性等の機能を備え、
かつ、浮き石の発生を極力少なくし、強固で耐久性に優
れた表面処理層を構築することができる機能性複層型散
布式表面処理工法に関する。
【0002】
【従来の技術】道路舗装は、交通に供されるにつれて、
次第に老化、劣化が進み、路面が摩耗して凹凸を生じた
り、舗装表面にひび割れ等が発生したりすることがあ
る。凹凸やひび割れを放置すると、通行車両の安全を脅
かしたり、雨水等がひび割れ部から舗装体内部に浸透し
て舗装体そのものの破損、破壊を引き起こす恐れがあ
る。
【0003】従来、このような老化、劣化した道路舗装
を補修する方法として、散布式表面処理工法や混合式表
面処理工法、更にはオーバーレイ工法などが提案されて
いた。この中で散布式表面処理工法を例えば複層型のも
のについて説明すれば、図1に示すように、老化ないし
は劣化して凹凸やひび割れの発生した路面1上に、アス
ファルト等の瀝青材料からなる1層目の結合材2aを膜
状に散布し続いてその上に1層目の骨材3aを散布す
る。次いで、骨材3aの上に、更に2層目の結合材2b
を散布し、続いてその上に2層目の骨材3b(通常は1
層目の骨材3aよりも粒径の小さいもの)を散布する。
このように結合材と骨材とを散布する工程を少なくとも
2回以上繰り返して、各回毎に骨材の散布面、すなわ
ち、図1の例では1層目の骨材3aの散布面及び2層目
の骨材3bの散布面をマカダムローラー等の転圧機で転
圧することによって、結合材2a、2bによって骨材3
a、3bを路面1に結合し、図2に示すように、路面1
上に結合材2a、2bと骨材3a、3bとからなる層を
複層に構築するという工法である。
【0004】この散布式表面処理工法は、比較的簡単に
舗装体表面を補修できるので、老化、劣化した舗装体の
補修工法としては極めて有効なものであるが、アスファ
ルト混合物を用いる補修工法とは違って、単に結合材に
よって骨材を路面に結合しているだけであるので、転圧
が十分でなかったり、施工後の養生時間が不足する場合
などにおいては、通行車両のタイヤ等から受ける引掻力
や衝撃力によって、結合材上に散布された骨材、特に最
上層に散布された骨材が路面から剥離し、これらが浮き
石となって路面上に散乱するという問題があった。この
ような現象は、カーブや交差点、坂道など、通行車両の
タイヤなどによって路面が過酷な条件に晒される箇所で
著しく、このため、これらの場所での施工には散布式表
面処理工法は適さないものと考えられていた。
【0005】一方、生活様式の多様化とモータリゼーシ
ョンのますますの進展に伴い、人や車両が日常的に通行
する路面には、多様な機能が求められつつある。例え
ば、路面に任意の色彩を持たせることが可能となれば、
路面は周囲のどのような環境にも違和感なく調和し、歩
行者や車両運転者などの気持を引き立たせ、或いはくつ
ろがせて、豊かな色彩のある生活への夢を開くことがで
きるし、例えばカーブや交差点などの路面に目立つよう
な色彩を施したり、高い摩擦抵抗や、光輝性ないしは反
射性などを付与することができれば、その色彩や輝き、
更には滑り止め効果などによって車両運転者や歩行者な
どの注意を喚起したり、車両のスリップを防止するなど
して事故を未然に防ぐことも可能である。
【0006】しかしながら、路面に上記のような色彩や
光輝性や高い摩擦抵抗などの機能を付与するには、その
ような機能を持った機能性骨材を混合した舗装用混合物
を用いて舗装体を構築するか、或いは表面処理工法など
によって路面に機能性骨材を付着させることが考えられ
るが、機能性骨材を混合した舗装用混合物においては、
機能性骨材の機能、特に色彩などが、ややもすれば共に
混合される結合材の色に覆われて十分に発揮されない恐
れがあると同時に、機能性骨材が舗装体の表層だけでな
く舗装体全体に分散されてしまうため、機能性骨材を多
量に使用しなければならず不経済であるという問題があ
り、また、表面処理工法などによって路面に機能性骨材
を付着させると、路面と機能性骨材との付着力が十分で
はなく、特にカーブや交差点、坂道など、通行車両のタ
イヤ等によって路面が過酷な条件に晒される箇所におい
ては、機能性骨材が剥離しやすく、浮き石となって、機
能を十分に発揮できなくなるという問題があった。しか
るに、これら路面が過酷な条件に晒される箇所こそ、上
記のように機能性骨材を用いた機能性舗装が必要とされ
る場所なのである。
【0007】
【発明の解決しようとする課題】本発明は、以上のよう
な従来の散布式表面処理工法や機能性舗装の欠点を解消
し、カーブや交差点、坂道など過酷な条件に晒される場
所においても十分に耐えることのできる機能性を有する
複層の表面処理層を構築することができる機能性複層型
散布式表面処理工法と、それによって得られる機能性を
有する複層の表面処理層を持った舗装体を提供すること
を課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、散布式表
面処理工法、特に、結合材と骨材との層を2層以上路面
上に構築する複層型の散布式表面処理工法によって路面
に機能性を付与する方法ついて研究を重ねた結果、最上
層以外の結合材としてはアスファルト乳剤を使用し、か
つ、最上層の結合材としては樹脂を用い、この樹脂の上
に機能性骨材を散布することによって、機能性骨材の剥
離を防止し、耐久性に優れた機能性を有する複層の表面
処理層を構築することができることを見出して、本発明
を完成した。
【0009】即ち、本発明は、施工面上に結合材を散布
又は塗布しその上から骨材を散布する作業を少なくとも
2回以上繰り返して路面上に複層の表面処理層を構築す
る複層型散布式表面処理工法において、最上層以外の層
の結合材としてはアスファルト乳剤を使用し、最上層の
結合材としては樹脂を使用し、最上層の骨材としては機
能性骨材を使用する機能性複層型散布式表面処理工法、
及び、そのような機能性複層型散布式表面処理工法によ
って構築された表面処理層を備えた舗装体を提供するこ
とによって上記課題を解決するものである。
【0010】ここで機能性骨材とは、例えば、路面に種
々の色彩を与えることができる有色の骨材、路面にすべ
り抵抗性を付与し滑り止め効果を与えたり、路面に耐摩
耗性を与えたりする硬質の骨材、路面に凍結防止効果を
与える弾性を有する骨材、及び、路面に光を与える光反
射性、光輝性、蛍光性及び/又は蓄光性の骨材、更に
は、路面に消音性を与える骨材などが挙げられる。この
ような機能性骨材は、異なる機能を持った骨材を複数併
用して使用しても良いし、同じ機能を有し粒径のみ異な
る複数の骨材を併用しても良い。例えば、有色の骨材と
光反射性の骨材とを併用し、昼間は有色の骨材によって
明色性を保ち、夜間には光反射性の骨材によって路面を
明るくし、昼夜共に歩行者並びに車両運転者の注意を喚
起することも可能である。また、本発明においては、本
発明の機能性骨材を、上に挙げる以外の他の機能性骨材
と併用しても良く、例えば、有色の骨材と耐摩耗性効果
を有する骨材とを併用し、両機能を持たせることも可能
である。また、異なる色調を有する骨材を混合して使用
しても良い。このように1種ないしは2種以上の機能性
骨材を併用することによって、1回の施工で複数の機能
をもった表面処理層を一挙に構築することが可能とな
る。更には、上記のような機能性骨材と通常の骨材を併
用しても良く、例えば機能は優れているが強度に欠ける
ような機能性骨材も通常骨材と併用し、強度は、強度に
優れた通常骨材に分担させることによって使用可能とす
ることができる。
【0011】本発明の機能性複層型散布式表面処理工法
においては、アスファルト乳剤と骨材とによって路面上
に構築された表面処理層上に、機能性骨材が樹脂によっ
て強固に結合され、カーブや交差点或いは坂道など通行
車両のタイヤによる摩擦などによって過酷な条件に晒さ
れる場所に施工しても、最上層の機能性骨材が飛散し、
浮き石となることが少なく、耐久性のある機能性表面処
理層を構築することができるものである。
【0012】本発明においては、最上層以外の層の結合
材としてはアスファルト乳剤が使用されるが、アスファ
ルト乳剤は、路面が湿っていたり濡れていたりしても散
布施工することができるので、路面上に直接散布する結
合材としては、水分や湿気を嫌う樹脂よりも施工性に優
れたものである。しかしながら、アスファルト乳剤は硬
化して結合材としての強度を発現するには分解と水分の
逃散を必要とするものであるので、散布式表面処理工法
として、先に散布されたアスファルト乳剤層よりも上層
に樹脂を結合材とする層を形成することは、形成された
樹脂層が水分の逃散を妨げるので、通常、好ましくない
と考えられていた。ところが、本発明者らが確認したと
ころによれば、意外にも、散布式表面処理工法として、
先に散布されたアスファルト乳剤層よりも上層に樹脂層
を形成しても、アスファルト乳剤の硬化は妨げられず、
アスファルト乳剤及び樹脂ともに硬化して骨材ないしは
機能性骨材を路面上或いは下層の表面処理層上に強固に
つなぎ止め、耐久性に優れた表面処理層が構築されるこ
とが見出された。本発明は、本発明者らが見出したこの
予想外の知見に基づくものである。
【0013】しかも、本発明において使用するアスファ
ルト乳剤及び樹脂は、共に常温で施工できる材料である
ので、加熱の必要がなく、危険性が少ないと共に炭酸ガ
スの発生もないので、地球環境的な観点からも好ましい
ものである。なお、本明細書でいうアスファルト乳剤と
は、特に断らない限り、ゴムや熱可塑性高分子重合物な
どを添加して改質した改質アスファルト乳剤も含むもの
とする。また、樹脂をラテックスにして使用する場合に
は、樹脂をアスファルト乳剤と同様に散布することが容
易となり、施工性が更に向上するという利点がある。
【0014】本発明の機能性複層型散布式表面処理工法
において、最下層に使用する骨材として、骨材の最小粒
径がふるいの目開きの呼び寸法で10mm未満の場合に
は、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び
寸法で2mm以上、5mm未満の骨材を、また、最小粒
径がふるいの目開きの呼び寸法で10mm以上の場合に
は、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び
寸法で3mm超、6mm以下の骨材が使用される場合に
は、骨材の路面に対する付着力が一層向上し、より耐久
性に優れた表面処理層を構築することが可能となる。ま
た、アスファルト乳剤として、アスファルト乳剤中の蒸
発残留物が以下のa)〜d)に示す特性、すなわち、 a)針入度が50〜150(1/10mm)、 b)軟化点が50〜120℃、 c)25℃におけるタフネスが70〜320kgf・c
m、 d)25℃におけるテナシティが30〜300kgf・
cm、 という特性をもったアスファルト乳剤が使用される場合
には、骨材の路面に対する付着力が一層向上し、より耐
久性に優れた表面処理層を構築することが可能となる。
【0015】更には、アスファルト乳剤として、20℃
における粘度が約40センチポアズ以上のアスファルト
乳剤を使用する場合には、凹凸や変形の激しい路面上に
アスファルト乳剤を散布して表面処理層を構築する場合
でも、散布されたアスファルト乳剤が散布直後から路面
の傾斜に沿って流動して路面上におけるアスファルト乳
剤の膜厚が不均一になることがなく、均一で安定した結
合力を備えた表面処理層を構築することができる。ここ
で、粘度は、「舗装試験法便覧別冊(暫定試験方
法)」、社団法人日本道路協会編集、丸善株式会社、平
成8年10月20日発行、第69〜74頁に記載された
粘度試験方法に準じて測定される値である。
【0016】本発明の機能性複層型散布式表面処理工法
において、アスファルト乳剤の分解を促進する分解補助
剤を、アスファルト乳剤と同時期に又は相前後して散布
する場合には、アスファルト乳剤の分解、硬化が一層早
められ、より早期の交通開放が可能となるという利点が
ある。アスファルト乳剤と分解補助剤とを相前後して散
布するとは、路面上の施工箇所にアスファルト乳剤また
は分解補助剤のどちらかを先に散布した後に、分解補助
剤またはアスファルト乳剤を、先に散布したものの上か
ら散布することをいうものである。また、アスファルト
乳剤と分解補助剤とを同時期に路面上に散布するとは、
路面上の同じ施工箇所に散布されるべきアスファルト乳
剤と分解補助剤とを、両者の散布時間を少なくとも一部
重複させて散布することをいうものである。いずれにせ
よ、アスファルト乳剤と分解補助剤とが同時期に又は相
前後して散布される結果、アスファルト乳剤と分解補助
剤とは路面上若しくは空中で出会い、接触、混合して、
アスファルト乳剤の分解、硬化が促進させることとな
る。なお、分解補助剤は、最上層以外の各層の構築時に
アスファルト乳剤と同時期に、或いは、アスファルト乳
剤と相前後して散布されるのが望ましいが、必ずしもア
スファルト乳剤を結合材として使用する全ての層の構築
時に散布されなくても良いことは勿論である。
【0017】また、本発明の機能性複層型散布式表面処
理工法において、繊維材料が、アスファルト乳剤と同時
又はアスファルト乳剤と相前後して散布若しくは敷き均
される場合には、繊維材料とアスファルト乳剤とが混じ
り合い、より強力に骨材を路面に結合するだけでなく、
耐久性や、更には防水性に優れた散布式表面処理層を構
築することが可能となる。なお、繊維材料は、各層の構
築時にアスファルト乳剤と同時又はアスファルト乳剤と
相前後して散布若しくは敷き均されても良いが、必ずし
もアスファルト乳剤を結合材として使用する全ての層の
構築時に散布若しくは敷き均す必要はなく、例えば、最
下層を構築する際にのみ、散布若しくは敷き均されても
良い。
【0018】本発明の機能性複層型散布式表面処理工法
においては、アスファルト乳剤又はアスファルト乳剤と
分解補助剤の散布から骨材の散布までの時間は、比較的
短い一定の時間間隔であるのが望ましい。アスファルト
乳剤は、路面に散布された直後から分解が進行するもの
であるが、アスファルト乳剤の散布から骨材の散布まで
の時間が不規則に変化すると、骨材が散布される時点で
のアスファルト乳剤の状態も不規則に変化することにな
り、結果として、均一で耐久性に優れた表面処理層が得
られない。アスファルト乳剤の散布から骨材の散布まで
の時間を比較的短い一定の時間間隔に維持するには、少
なくとも結合材の散布装置と骨材の散布装置とを搭載し
た作業車を用いて施工するのが望ましい。そのような作
業車としては、例えば、同じ出願人による特開平11−
350413号公報、特開平11−350414号公
報、特開平11−350415号公報、特開2000−
45217号公報、特開2000−45218号公報に
開示されたような作業車が挙げられる。また、そのよう
な作業車に、更に、分解補助剤の散布装置及び/又は繊
維材料の散布装置若しくは敷き均し装置を搭載すること
により、アスファルト乳剤と同時又は相前後して分解補
助剤及び/又は繊維材料を散布若しくは敷き均し、続い
て、比較的短い一定の時間間隔をおいて骨材を散布する
ことが容易に可能となる。
【0019】本発明の機能性複層型散布式表面処理工法
は、以上のように、構築された最上層直下の層における
骨材は、その上に形成される樹脂層によって完全に覆わ
れ、剥離ないしは飛散が防止されると共に、最上層に使
用される機能性骨材も樹脂によってその下の表面処理層
に強固に結合され、飛散が防止されるので、極めて耐久
性に富む機能性を有する複層の表面処理層を構築するこ
とができるものである。従って、本発明の機能性複層型
散布式表面処理工法は、特に、一般道路のカーブや交差
点、坂道など過酷な条件に晒されると同時に車両運転者
や歩行者の注意を喚起すべき場所に施工されてその効果
を十分に発揮するものであるが、その適用範囲は、一般
道路に限らず、自動車専用道路、構内道路、公園内道
路、散策路、自転車道、運動場、駐車場、飛行場、港湾
施設、公会堂等に付帯する広場、歩道等の舗装にも及ぶ
ものである。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。
【0021】まず、使用材料について説明する。〈アス
ファルト乳剤〉本発明の複層型散布式表面処理工法に使
用するアスファルト乳剤とは、レーキアスファルト等の
天然アスファルト、ストレートアスファルト、ブローン
アスファルト、セミブローンアスファルト、溶剤脱瀝ア
スファルト(例えば、プロパン脱瀝アスファルト)等の
石油アスファルト、人工アスファルト、重油、タール、
ピッチ等の1種、または2種以上を混合した瀝青物を、
各種界面活性剤やクレー(例えばベントナイト)などの
乳化剤を用い、さらには、アルカリ、酸、塩、分散剤、
保護コロイドなどを必要に応じて添加して、コロイドミ
ル、ホモジナイザー、ホモミキサーなどの適当な乳化機
によって、水中に乳化させたものである。
【0022】ここで、人工アスファルトとは、人為的に
調製された結合材であって、アスファルトと同じように
使用することができ、実質的に無色のものである。「実
質的に無色」とは、併用される骨材などが本来有してい
る色彩や光反射性、光輝性、蛍光性、蓄光性などの特性
や、必要に応じて混合される顔料の色彩を損なわない程
度に無色ということであって、必ずしも、完全に透明で
ある必要はなく、半透明であっても、若干の飴色を有し
ていても良い。
【0023】上記のような人工アスファルトは、どのよ
うな原料を用いて調製されたものであっても良いが、例
えば、石油系配合油と粘着付与剤樹脂とを、重量百分率
で、石油系配合油:粘着付与剤樹脂=(60〜85
%):(40〜15%)の割合で配合することによって
得ることができる。石油系配合油の割合が、60重量%
未満であると、得られる結合材の粘度が高くなりすぎて
作業性が低下する。一方、石油系配合油の割合が85重
量%を越えると、粘度は低下するものの接着性及び粘着
性が低下して好ましくない。このような配合で得られる
人工アスファルトは、実質的に無色であって、例えば有
色の骨材などと共に使用しても骨材本来の色調を損なう
ことがなく、骨材本来の色調が十分に発揮されるもので
ある。
【0024】上記の人工アスファルトに使用する石油系
配合油とは、プロセスオイルとも呼ばれ、芳香族炭素数
が全炭素数の35%以上である芳香族系、ナフテン環炭
素数が全炭素数の30〜45%であるナフテン系、及
び、パラフィン側鎖炭素数が全炭素数の50%以上であ
るパラフィン系などがあり、本発明で使用する人工アス
ファルトにおいては、これらのうちの1種若しくは2種
以上が適宜使用される。
【0025】上記の人工アスファルトに使用する粘着付
与剤樹脂としては、天然系樹脂及び合成系樹脂のいずれ
をも使用することができるが、天然系樹脂ではテルペン
樹脂を、また、合成系樹脂では石油樹脂、クマロン・イ
ンデン樹脂、スチレン系樹脂などの重合系樹脂を使用す
るのが好ましく、更に好ましくは、合成系樹脂の1種で
ある石油樹脂を使用するのが良い。石油樹脂としては、
ナフサ分解生成物の蒸留により分離される沸点が20〜
60℃の留分(C5留分)を主成分とする脂肪族系(C
5系)石油樹脂、同じくナフサ分解生成物の蒸留により
分離される沸点が160〜260℃の留分(C9留分)
を主成分とする芳香族系(C9系)石油樹脂、これらC
5系及びC9系石油樹脂を共重合させた脂肪族/芳香族
共重合系(C5/C9系)石油樹脂、及び、主としてナ
フサ分解生成物の蒸留により分離される高純度のジシク
ロペンタジエンを主成分とする脂環族系(DCPD系)
石油樹脂などがあり、本発明で使用する人工アスファル
トにおいては、好ましくは、上述した石油樹脂のうちの
1種若しくは2種以上を混合して使用する。
【0026】上記のような人工アスファルトを含めた瀝
青物を乳化してアスファルト乳剤とするために使用され
る乳化剤としては、カチオン系、アニオン系、両性系の
いずれをも用いることができ、本発明で使用できるカチ
オン系の乳化剤としては、長鎖アルキル基を有する脂肪
族あるいは脂環族のモノアミン、ジアミン、トリアミ
ン、アミドアミン、ポリアミノエチルイミダゾリン、長
鎖ヒドロキシアルキルジアミン、ロジンアミン、これら
アミン類の酸化エチレン付加物、アミンオキサイド、ま
たは、これらのアミン系界面活性剤に塩酸、スルファミ
ン酸、酢酸などの酸を作用させた水溶性ないし水分散性
の塩、さらには、これらのアミン系界面活性剤の第四級
アンモニウム塩等が挙げられる。また、これらの界面活
性剤と共に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポ
リオキシエチレンアルキルアリルエーテル、オキシエチ
レン・オキシプロピレンブロックコーポリマーなどのノ
ニオン系界面活性剤を併用することもできる。
【0027】本発明で使用できるアニオン系の乳化剤と
しては、高級アルコール硫酸エステル、アルキルアリル
スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、αオレ
フィンスルホン酸塩、高級アルコールエトオキシレー
ト、高級アルコールエトオキシレートサルフェート、石
鹸、ナフタリンスルホン酸塩およびホルマリン変性物、
アルカリリグニン塩、リグニンスルホン酸塩、カゼイン
のアルカリ塩、ポリアクリル酸塩等が挙げられる。
【0028】本発明で使用できる両性系の乳化剤として
は、アルキルフェノール、モノおよび多価アルコール
酸、脂肪族類、脂肪族アミン類、脂肪族アミド類、エタ
ノールアミン類等のアルキレンオキシドの付加物、など
が挙げられる。
【0029】また、アスファルト乳剤に用いられる分散
剤や保護コロイドとしては、ナフタリンスルホン酸ソー
ダ、カゼイン、アルギン酸、ゼラチン、カルボキシメチ
ルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセ
ルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソー
ダ、リグニンスルホン酸塩、ニトロフミン酸塩等が挙げ
られる。
【0030】本発明に使用するアスファルト乳剤は、上
記乳化分散される瀝青物に、ゴム及び熱可塑性高分子重
合物から選ばれる1種もしくは2種以上を加えて改質し
た改質アスファルト乳剤として使用するのが望ましい。
なお、改質アスファルト乳剤は、アスファルト乳剤にゴ
ム及び熱可塑性高分子重合物から選ばれる1種もしくは
2種以上を加えて改質することによって調製しても良い
し、アスファルトにゴム及び熱可塑性高分子重合物から
選ばれる1種もしくは2種以上を加えて改質した後に、
これを乳化して改質アスファルト乳剤とすることによっ
て調製しても良い。
【0031】改質に使用するゴム及び熱可塑性高分子重
合物としては、天然ゴム、ガタバーチャ、環化ゴム、ス
チレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンゴム、
イソプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブタジエンゴ
ム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル
ゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチ
レン、エチレンプロピレンゴム、EPTゴム、アルフィ
ンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合ゴム、ス
チレン・ブタジエン・スチレン共重合ゴム、スチレン・
イソプレンブロック共重合ゴムなどのゴム、及び、エチ
レン・酢酸ビニール共重合物、エチレン・エチルアクリ
レート共重合物、ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポ
リ酢酸ビニール、塩化ビニール・酢酸ビニール共重合
物、酢酸ビニール・アクリレート共重合物等の熱可塑性
高分子重合物が挙げられる。これらのゴムまたは熱可塑
性高分子重合物は、1種または2種以上を併用して用い
ることができる。これらのゴム及び熱可塑性高分子重合
物は、例えば、粉末状、ラテックス状、エマルジョン
状、水性状のものであり、ラテックス状、エマルジョン
状、水性状のものは、主として、ポストミックスタイプ
の方法による改質アスファルト乳剤に専ら使用される
が、プレミックスタイプの方法による改質アスファルト
乳剤に使用しても良い。
【0032】本発明で使用するアスファルト乳剤は、上
記のように改質アスファルト乳剤を含むものであるが、
これらのアスファルト乳剤には、更に、粘着付与剤とし
て、熱可塑性固形樹脂や固形状ゴム、液状樹脂、軟化
剤、可塑剤などを添加することができる。添加される粘
着付与剤としては、例えば、ロヂンとその誘導体、テル
ペン樹脂、石油樹脂とその誘導体、アルキッド樹脂、ア
ルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマ
ロンインデン樹脂、合成テルペン樹脂、アルキレン樹
脂、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリブデン、
イソブチレンとブタジエンの共重合物、鉱油、プロセス
オイル、パイン油、アントラセン油、松根油、動植物
油、重合油、可塑剤等が挙げられる。また、老化防止剤
や酸化防止剤、硫黄等も添加することができる。さらに
また、改質アスファルト乳剤の粘度調整の目的で、M
C、CMC、HEC、PVA、ゼラチンなどの水溶性高
分子保護コロイドを添加することも可能である。
【0033】改質アスファルト乳剤中のアスファルト
と、ゴム及び熱可塑性高分子重合物との配合割合は、ア
スファルト100重量部に対してゴム及び熱可塑性高分
子重合物が、2〜20重量部、好ましくは、3〜7重量
部の範囲である。ゴム及び熱可塑性高分子重合物の量が
2重量部未満では、改質アスファルト乳剤が分解、硬化
した後における骨材に対する接着力や把握力にゴム及び
熱可塑性高分子重合物を加えた効果が余り見られないの
に対して、ゴム及び熱可塑性高分子重合物の量が20重
量部を越えると、凝集力が強過ぎて、返って骨材からの
剥離が生じ、骨材の飛散を起こし易い。また、本発明で
使用するアスファルト乳剤及び改質アスファルト乳剤中
のアスファルトとしては、分解、硬化した後の特性を考
慮して、針入度(25℃)が50〜150(1/10m
m)程度のものを使用するのが好ましい。
【0034】本発明で結合材として使用するアスファル
ト乳剤及び改質アスファルト乳剤の蒸発残留分(固形
物)は、通常、30〜70重量%程度が好ましく、特
に、50〜68重量%のものが更に好ましい。蒸発残留
分が30重量%未満では、決して使用できないという訳
ではないが、結合材として必要な程度の粘弾性を得るこ
とが難しく、一方、蒸発残留分が70重量%を越える
と、これも決して使用できないという訳ではないが、良
好な施工性を確保しづらい傾向がある。
【0035】また、これらのアスファルト乳剤または改
質アスファルト乳剤には、耐熱性向上や、紫外線等によ
る劣化防止、作業性向上、並びに接着性向上等の目的
で、紫外線吸収剤や、各種添加剤、粘度調整剤などを添
加しても良い。
【0036】本発明の機能性複層型散布式表面処理工法
に使用されるアスファルト乳剤は、アスファルト乳剤中
の蒸発残留物が、以下のa)〜d)に示す特性、即ち、 a)針入度が50〜150(1/10mm)、 b)軟化点が50〜120℃、 c)25℃におけるタフネスが70〜320kgf・c
m、 d)25℃におけるテナシティが30〜300kgf・
cm、 を有するものが良く、望ましくは、以下のa’)〜
d’)に示す特性、即ち、 a’)針入度が70〜125(1/10mm)、 b’)軟化点が55〜100℃、 c’)25℃におけるタフネスが90〜250kgf・
cm、 d’)25℃におけるテナシティが50〜220kgf
・cm、 を有するものであり、更に望ましくは、以下のa’’)
〜d’’)に示す特性、即ち、 a’’)針入度が90〜120(1/10mm)、 b’’)軟化点が60〜80℃、 c’’)25℃におけるタフネスが100〜200kg
f・cm、 d’’)25℃におけるテナシティが70〜180kg
f・cm、 を有するものである。
【0037】アスファルト乳剤中の蒸発残留物の針入度
が50(1/10mm)未満では、アスファルト乳剤の
分解後のアスファルトが硬くなりすぎてしまうので好ま
しくなく、逆に、針入度が150(1/10mm)超で
は、アスファルト乳剤の分解後のアスファルトが軟らか
くなりすぎてしまうので好ましくない。
【0038】アスファルト乳剤中の蒸発残留物の軟化点
が50℃未満では、アスファルト乳剤の分解後のアスフ
ァルトが、夏季等の高温下の路面においてフラッシュ現
象を起こし易く、べたつき易いので好ましくなく、逆
に、軟化点が120℃超では、アスファルト乳剤の分解
後のアスファルトに柔軟性が不足し、好ましくない。
【0039】また、アスファルト乳剤中の蒸発残留物の
25℃におけるタフネスが70kgf・cm未満では、
アスファルト乳剤の分解後のアスファルトに粘りが不足
し、腰が弱くなりすぎるので好ましくなく、逆に、タフ
ネスが320kgf・cm超では、アスファルト乳剤の
分解後のアスファルトが、粘りがありすぎ、腰が強くな
りすぎるので、交通荷重に対してもろくなる傾向が出て
くるので好ましくない。
【0040】更には、アスファルト乳剤中の蒸発残留物
の25℃におけるテナシティが30kgf・cm未満で
は、アスファルト乳剤の分解後のアスファルトに伸びが
なくなってしまうので好ましくなく、逆に、テナシティ
が300kgf・cm超では、アスファルト乳剤の分解
後のアスファルトの伸びが大きくなりすぎてしまうので
好ましくない。ここで、針入度及び軟化点はJISK2
207に規定されるものであり、タフネス及びテナシテ
ィは「舗装試験法便覧」、社団法人日本道路協会、平成
7年6月10日発行、第456〜461頁の「タフネス
・テナシティ試験方法」に基づいて測定されるものであ
る。なお、本発明の複層型散布式表面処理工法において
は、各層に使用されるアスファルト乳剤は全て同じもの
であっても良いし、各層毎に異なるものであっても良
い。
【0041】〈樹脂〉本発明で使用する樹脂としては、
例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、変性エポキ
シ樹脂、変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メ
タアクリレート樹脂、ポリウレタン変性アクリレート樹
脂、ポリアクリレート樹脂等を用いることができる。
【0042】変性エポキシ樹脂とは、例えば、アスファ
ルト、タール、重質油、プロセスオイル、液状樹脂、液
状ポリブタジエンなどで変性したエポキシ樹脂である。
この変性エポキシ樹脂は2液型であって、ポリアミン、
ポリアミド、無水有機酸などの硬化剤を必要とし、エポ
キシ樹脂の変性剤は、樹脂側、硬化剤側、或いはその双
方に入れても良い。
【0043】変性ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分
とポリイソシアネート成分との2液型のものであって、
変性は、ポリオール成分にアスファルト、タール、重質
油、プロセスオイル、液性樹脂等を添加することによっ
て行う。このように、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂
と同じく、変性エポキシ樹脂や変性ポリウレタン樹脂も
2液型のものであり、2液を一定比率にて混合すると2
成分が反応硬化して強靱な結合力を発揮することとな
る。
【0044】各種樹脂成分と硬化剤との配合割合は、エ
ポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、変性エポキシ樹脂、及
び、変性ポリウレタン樹脂の場合についていえば、樹脂
成分100重量部に対して、硬化剤は50〜100重量
部の割合が好ましい。また、ポリエステル樹脂やアクリ
レート樹脂の場合には、樹脂成分100重量部に対して
硬化剤は1〜5重量部程度が好ましい。
【0045】上記のような樹脂は、乳化剤の作用によっ
てコロイド状に水中に分散したラテックスとして使用す
ることも可能である。上記のような樹脂のラテックス
は、例えば相当するモノマーを乳化重合させることによ
って製造することができる。樹脂をラテックスとして使
用する場合には、樹脂をアスファルト乳剤などと同様に
散布することが容易となり、施工性が向上するという利
点がある。
【0046】また、上記のような樹脂には、有機系及び
/又は無機系の顔料を適宜加えて着色することも可能で
ある。例えば、使用する骨材と同系統に着色した樹脂を
使用することによって、骨材の明色性を一層高めること
も可能である。使用する無機系顔料としては、例えば、
以下に示す顔料、即ち、 白色:二酸化チタン、酸化亜鉛、鉛白 黒色:鉄黒、黒鉛、カーボンブラック 赤色:カドミウムレッド 橙色:モリブデンオレンジ 黄色:水酸化第二鉄、酸化黄、黄鉛 緑色:酸化クロム、クロムグリーン 青色:群青、紺青、コバルトブルー 紫色:マンガンバイオレット などが挙げられる。
【0047】また、有機系の顔料としては、 赤色:ウオッチングレッド、キナクリドンレッド 橙色:パーマネントオレンジ 黄色:ファストイエロー 緑色:フタロシアニングリーン 青色:フタロシアニンブルー 紫色:ジオキサジンバイオレット などが挙げられる。
【0048】これらの顔料は、1種又は2種以上を組み
合わせて併用しても良い。また、これら顔料の使用量
は、樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、好ま
しくは、3〜8重量部である。
【0049】〈分解補助剤〉本発明で使用する分解補助
剤としては、結合材として使用するアスファルト乳剤の
分解を促進することができるものであればどのようなも
のを使用しても良く、アスファルト乳剤がカチオン系ア
スファルト乳剤である場合には、アニオン系乳化剤、ア
ルカリ性無機塩、アニオン系高分子凝集剤、アニオン系
アスファルト乳剤、及び、アニオン系ラテックスからな
る群から選ばれる1種若しくは2種以上の分解補助剤を
使用することができる。
【0050】使用できるアニオン系乳化剤としては、石
鹸などのカルボン酸塩系のもの;高級アルコール硫酸エ
ステル塩、高級アルコールエトキシレートサルフェート
等の高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、
硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィンなどの硫酸エ
ステル塩系のもの;アルキルアリルスルホン酸塩、α−
オレフィンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、ナ
フタリンスルホン酸塩のホルマリン変性物、リグニンス
ルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム
やアルキルベンゼンスルホン酸ソーダやアルキルベンゼ
ンスルホン酸カリ等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、
ジ・オクチル・スルホ・コハク酸ソーダ等のジ・オクチ
ル・スルホ・コハク酸の金属塩、アルキルメチルタウリ
ン酸ナトリウム等のアルキルメチルタウリン酸の金属塩
などのスルホン酸塩系のもの;リン酸エステル塩系のも
のなどの合成脂肪酸塩や、リグニンなどのスルホン酸塩
系並びにロジン及びトール油などのカルボン酸塩系など
の天然脂肪酸塩が挙げられる。
【0051】使用できるアルカリ性無機塩としては、苛
性ソーダなどのソーダ塩、尿素、重炭酸アンモニウム、
硝酸アンモニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、塩
化アンモニウム、リン酸アンモニウムなどのアンモニウ
ム塩などが挙げられ、その他、高級アルコールエトオキ
シレート、アルカリリグニン酸、カゼインのアルカリ
塩、ポリクリル酸なども本発明において分解補助剤とし
て使用できる。
【0052】以上のような分解補助剤は、そのうちの1
種または2種以上を使用することができるが、中でも、
アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキルベンゼン
スルホン酸アンモニウム、アルキルベンゼンスルホン酸
カリなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、又は、アル
キルメチルタウリン酸ナトリウム、ジ・オクチル・スル
ホ・コハク酸ソーダを使用するのが、硬化速度が早く、
しかも強度及び耐久性に優れた表面処理層が得られるの
で好ましく、更には、これらの中でも、アルキルベンゼ
ンスルホン酸ソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸アン
モニウム、アルキルベンゼンスルホン酸カリなどのアル
キルベンゼンスルホン酸塩を用いるのが更に好ましく、
アルキルベンゼンスルホン酸塩の中では、アルキルベン
ゼンスルホン酸ソーダを用いるのが最も好ましい。
【0053】以上のようなカチオン系アスファルト乳剤
に対する分解補助剤は水溶液の状態で使用するのが望ま
しく、その濃度は、通常、1.5〜30w/w%の範囲
が良い。分解補助剤の水溶液濃度が1.5w/w%未満
では、カチオン系アスファルト乳剤の分解を促進する効
果が期待できず、また、分解補助剤の水溶液濃度が30
w/w%を超えると、カチオン系アスファルト乳剤の分
解速度が速くなり過ぎて施工作業に支障を来すようにな
る。
【0054】本発明において、結合材であるカチオン系
アスファルト乳剤に対して接触、混合せしめられる分解
補助剤の割合は、カチオン系アスファルト乳剤中の蒸発
残留分100重量部に対して、分解補助剤の水溶液中の
有効成分量として、0.4〜4.0重量部の範囲が好ま
しい。分解補助剤の水溶液中の有効成分量が0.4重量
部未満では、アスファルト乳剤の分解を促進する効果が
期待できず、4.0重量部を超えるとアスファルト乳剤
の分解速度が速くなり過ぎて施工作業に支障を来すよう
になる。
【0055】一方、結合材としてアニオン系アスファル
ト乳剤を使用する場合には、分解補助剤としては、塩化
カルシウムなどの二価の無機塩;塩酸、蟻酸、燐酸など
の無機酸;酢酸、クエン酸などの有機酸;ロジンアミ
ン、アミン類の酸化エチレン付加物、アルキルモノアミ
ン塩酸塩又は酢酸塩、アルキルジアミン塩酸塩又は酢酸
塩、アルキルトリアミン塩酸塩又は酢酸塩などのアルキ
ルアミン類;ジアミド、アミドアミンなどのアミドアミ
ン類の塩酸塩又は酢酸塩;ポリアミノエチルイミダゾリ
ンなどのイミダゾリン類の塩酸塩又は酢酸塩;長鎖アル
キル基を有する脂肪環族のモノアミンやジアミンやトリ
アミンの塩酸塩又は酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキ
ルアミン類の塩酸塩又は酢酸塩;アミン化リグニン類の
塩酸塩又は酢酸塩;アミン系カチオン界面活性剤に塩
酸、スルファミン酸、酢酸などの酸を作用させた水溶性
ないし水分散性の塩;アミンオキサイド類の塩酸塩又は
酢酸塩;更には、アミン系カチオン界面活性剤の第4級
アンモニウム塩類などが挙げられ、これらのうちの1種
または2種以上を分解補助剤として使用することができ
る。中でも、アルキルモノアミン塩酸塩又は酢酸塩、ア
ルキルジアミン塩酸塩又は酢酸塩、アルキルトリアミン
塩酸塩又は酢酸塩などのアミン系カチオン界面活性剤の
水溶性の塩を使用するのが好ましい。また、これらの分
解補助剤と共に、エキシエチレン・オキシプロピレンブ
ロックコーポリマーなどのノニオン系界面活性剤を併用
することもできる。
【0056】また、結合材としてノニオン系アスファル
ト乳剤を使用する場合には、分解補助剤としては、高分
子凝集剤を使用するのが望ましく、高分子凝集剤として
は、分子量が約1000〜数万である低重合度のものと
して、アルギン酸ナトリウムなどの陰イオン性の高分子
凝集剤;水溶性アニリン樹脂塩酸塩、ポリチオ尿素酢酸
塩、ポリエチレンアミノトリアゾール、ポリビリルベン
ジルトリメチルアンモニウムクロライド、キトサンなど
の陽イオン性の高分子凝集剤;でんぷん、水溶性尿素樹
脂などの非イオン性の高分子凝集剤;ゼラチンなどの両
性の高分子凝集剤などが挙げられ、分子量が数十万〜数
百万の高重合度のものとして、ポリアクリル酸ナトリウ
ム、マレイン酸共重合物塩、ポリアクリルアミド部分加
水分解塩などの陰イオン性の高分子凝集剤;ポリエチレ
ンアミン、ビニルビニルピリジン共重合物塩などの陽イ
オン性の高分子凝集剤;ポリアクリルアミド、ポリオキ
シエチレンなどの非イオン性の高分子凝集剤などが挙げ
られる。以上のような高分子凝集剤は、そのうちの1種
もしくは2種以上が使用される。
【0057】以上のようなアニオン系又はノニオン系ア
スファルト乳剤に対する分解補助剤は水溶液の状態で使
用するのが望ましく、その濃度は、通常、1.5〜20
w/w%の範囲が良い。分解補助剤の水溶液濃度が1.
5w/w%未満では、アニオン系又はノニオン系アスフ
ァルト乳剤の分解を促進する効果が期待できず、また、
分解補助剤の水溶液濃度が20w/w%を超えると、ア
ニオン系又はノニオン系アスファルト乳剤の分解速度が
速くなり過ぎて施工作業に支障を来すようになる。
【0058】本発明において、結合材であるアニオン系
またはノニオン系アスファルト乳剤に対して接触、混合
せしめられる分解補助剤の割合は、アニオン系またはノ
ニオン系アスファルト乳剤中の蒸発残留分100重量部
に対して、分解補助剤の水溶液中の有効成分量として、
0.05〜0.5重量部の範囲が好ましい。分解補助剤
の水溶液中の有効成分量が0.05重量部未満では、ア
スファルト乳剤の分解を促進する効果が期待できず、
0.5重量部を超えるとアスファルト乳剤の分解速度が
速くなり過ぎて施工作業に支障を来すようになる。
【0059】〈骨材〉本発明で使用される骨材とは、社
団法人日本道路協会発行の「アスファルト舗装要綱」に
記載されている舗装用の骨材であればどのようなもので
も使用でき、例えば、砕石、玉石、砂利、鉄鋼スラグ等
である。また、これらの骨材にアスファルトないしは上
記人工アスファルトを被覆したアスファルト被覆骨材お
よび再生骨材なども使用できる。その他、これに類似す
る粒状材料で、人工焼成骨材、焼成発泡骨材、人工軽量
骨材、陶磁器粒、ルクソバイト、アルミニウム粒、プラ
スチック粒、セラミックス、エメリー、建設廃材、繊維
等も使用することができる。
【0060】本発明で使用する骨材にアスファルト若し
くは人工アスファルト等を被覆する場合には、被覆する
に必要なアスファルト若しくは人工アスファルトの量
は、骨材に対して、0.1〜1.5重量%程度の範囲で
ある。鉄鋼スラグのようなポーラスな骨材の場合には、
上記範囲の中でも多い方の量となり、硬質砂岩のような
非ポーラスな骨材においては、上記範囲の中でも少ない
方の量となる。被覆に使用するアスファルト若しくは人
工アスファルト等としては、アスファルト、アスファル
ト乳剤、及び、これらをゴムやポリマーなどで改質した
改質アスファルト、改質アスファルト乳剤、更には、上
記した人工アスファルト、改質人工アスファルト、人工
アスファルト乳剤、改質人工アスファルト乳剤なども使
用される。また、ケロシン等で噴霧被覆された骨材を使
用しても良い。
【0061】なお、本発明で使用する機能性骨材として
は、種々の色を持った有色の骨材や、硬質の骨材、弾性
を有する骨材、多孔性の骨材、耐摩耗性に優れた骨材、
光反射性、光輝性、蛍光性及び/又は蓄光性の骨材の中
から選ばれる1種もしくは2種以上の骨材を使用するこ
とが可能である。例えば、有色の骨材としては、天然有
色骨材や、人工焼成骨材、焼成発泡骨材、人工軽量骨
材、陶磁器粒、ルクソバイト、アルミニウム粒、プラス
チック粒、セラミックス、エメリー等の中でも有色のも
のなどが挙げられる。なお、これら有色の骨材は、通常
はプレコートなしに使用されるが、プレコートして使用
する場合には、それら骨材が本来有している有色性を損
なわない材料を使用することは勿論である。
【0062】また、硬質の骨材又は耐摩耗性に優れた骨
材としては例えば硬質砂岩などが、弾性を有する骨材と
しては例えばゴムチップなどが、更には、多孔性の骨材
としては例えば人工多孔質骨材などが挙げられる。光反
射性、光輝性、蛍光性、及び/又は、蓄光性の骨材とし
ては、ガラスビーズ、炭化珪素粒、溶融アルミナ系人工
骨材、石灰石系人工骨材、正長石、石英、珪弗化アルミ
ニウム粒、蛍光性人工骨材、ガラス瓶破砕片などのガラ
ス屑、蓄光骨材などが挙げられる。また、通常の骨材に
有色アスファルトや蛍光塗料ないしは蓄光塗料による被
覆を施して、有色骨材又は蛍光骨材ないしは蓄光骨材と
して使用することも可能である。
【0063】以上のような骨材のうち、最下層に使用さ
れる骨材は、後述するように、骨材の最小粒径がふるい
の目開きの呼び寸法で10mm未満の場合には、最小粒
径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び寸法で2m
m以上、5mm未満の骨材を、また、最小粒径がふるい
の目開きの呼び寸法で10mm以上の場合には、最小粒
径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び寸法で3m
m超、6mm以下であるのが望ましい。アスファルト要
綱等に示される汎用単粒骨材であっても良いことは勿論
である。なお、本明細書で言う「ふるいの目開きの呼び
寸法」とは、ふるいを呼び表すときに慣用されている呼
び寸法であって、JIS Z8801に定められている
網ふるいの目開きの基準寸法とは、表1に示すような対
応関係にある。
【0064】
【表1】
【0065】即ち、本明細書で、骨材の最小粒径がふる
いの目開きの呼び寸法で10mm未満とは、その骨材が
JIS Z8801で規定する網ふるいの目開きの基準
寸法が9.5mmのふるいを通過する骨材粒を含んでい
ることを意味し、骨材の最小粒径がふるいの目開きの呼
び寸法で10mm以上とは、その骨材がJIS Z88
01で規定する網ふるいの目開きの基準寸法が9.5m
mのふるいを通過する骨材粒を含んでいないことを意味
する。また、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開
きの呼び寸法で2mm以上とは、最小粒径がふるいの目
開きの呼び寸法で5mmの場合、その骨材の集団の最大
粒径のものは、5mmよりも2mm以上大きな呼び寸法
をもつふるい、即ち、7mmの呼び寸法をもつふるいを
少なくとも通過する一方で、それよりも小さな6mmの
呼び寸法をもつふるいを通過しなことを意味し、また、
最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び寸法
で5mm未満とは、最小粒径がふるいの目開きの呼び寸
法で5mmの場合、その骨材の集団の最大粒径のもの
は、5mmよりも5mm未満の呼び寸法をもつふるい、
即ち、8mmの呼び寸法をもつふるいを通過するという
ことを意味する。同様に、最小粒径と最大粒径との差が
ふるいの目開きの呼び寸法で3mm超、6mm以下と
は、最小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で10mmの
場合、その骨材の集団の最大粒径のものは、少なくと
も、10mmよりも3mm大きな呼び寸法のふるい、即
ち、呼び寸法13mmのふるいを通過せず、10mmよ
りも6mm大きな呼び寸法をもつふるい、即ち、呼び寸
法16mmのふるいを通過するということを意味する。
なお、ここで、ふるいを通過するとか、通過しないとか
言うのは、いずれも実質的かつ常識的なレベルでの判断
であり、部分的にダストのようなものがふるいを通過し
たり、特異的な粒がふるい上に残ったとしても、骨材の
集団全体から見て無視できる場合には、それらのものは
ふるいを通過するしないの判断には影響を与えないもの
とする。以下、本明細書では、特に断りのない限り、骨
材の粒径や粒度は、ふるいの目開きの呼び寸法によるも
のとする。
【0066】なお、本発明で最下層に使用する骨材は、
上記のような粒度の条件を満たしさえすれば、粒径の上
限値及び下限値に特に制限はないが、できれば最小粒径
が5mm以上、最大粒径が20mm以下のものが好まし
い。最小粒径が5mm未満では、骨材の粒径が小さ過
ぎ、路面の凹凸やひび割れ等が有効にカバーされない恐
れがある。また、散布した結合材が路面上に形成する結
合材散布層の層厚に、骨材自身の敷き均し厚さが限りな
く近づき、場合によると結合材の層厚よりも骨材の敷き
均し厚が小さくなって、フラッシュの原因の一つともな
る。一方、最大粒径が20mmを越えると、施工後の路
面が粗面になるばかりでなく、車両が表面処理層の上を
走行することによって、車両の走行により発生する交通
騒音の増大や、骨材の飛散が生じる場合があり、好まし
くない。
【0067】また、最下層以外の層に使用される骨材と
しては、その粒度に特に制限がある訳ではないが、通
常、その下の層に使用される骨材よりも小径の骨材を使
用するのが望ましく、最上層に用いられる骨材として
は、機能性骨材及び通常骨材共に、細目砂、中目砂、そ
して粗目砂や粒径2.5〜5mmの7号砕石程度の粒径
のものなども用いられる。
【0068】本発明で使用する細骨材とは、2.36m
mふるいを通過するものをいい、例えば、川砂、丘砂、
山砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、
人工骨材、再生骨材、人工焼成骨材、焼成発泡骨材、人
工軽量骨材、陶磁器粒、ルクソバイト、シノパール、ア
ルミニウム粒、プラスチック粒、セラミックス、エメリ
ー、ゴム粉粒、コルク粉粒、木質粉粒、樹脂粉粒、パル
プ等の1種若しくは2種以上が使用可能である。
【0069】〈繊維材料〉本発明で使用される繊維材料
としては、ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミ
ド、ポリプロピレン、ビニロン、アクリル、ポリ塩化ビ
ニリデン等の合成繊維、または半合成繊維、天然繊維、
ガラス繊維、再生繊維、炭素繊維、金属繊維等、種々の
ものが用いられるが、中でも、ポリエステル繊維が好ま
しい。
【0070】これらの繊維は、適当な長さに切断された
短繊維として用いることもできるが、モノフィラメント
や、モノフィラメントを多数集束させたマルチフィラメ
ントとしても、あるいは、紡績糸や撚糸としても用いる
ことが可能であり、さらには、不織布、織布、編布とし
てシート状にして用いることも可能である。
【0071】短繊維の長さに特に制限はないが、あまり
短いと表面処理層の繊維による強度維持や防水性能、お
よび、ひび割れ防止等に効果がないので、3mm以上の
もの、好ましくは5mm〜70mm程度のものが好まし
い。
【0072】次に、本発明の機能性複層型散布式表面処
理工法を2層型のものを例にとって説明する。
【0073】まず、施工路面をロードスイーパーで清掃
した後、図3に示すように、1層目の結合材としてアス
ファルト乳剤4を散布する。アスファルト乳剤4を散布
するに先立って、路面1上に水を散布するようにしても
良い。水は、アスファルト乳剤4と路面1との接着性や
なじみ性を増強する効果があり、また、夏季には上昇し
た路面温度を下げる効果もある。アスファルト乳剤の散
布量は、骨材が路面に結合される限り特に制限はない
が、通常、1層当たり、100m当り60〜250リ
ットルの範囲が好ましい。100m当りのアスファル
ト乳剤量が60リットル未満では、路面と骨材及び骨材
と骨材間の結合力、接着力が不足する可能性があり、逆
に、250リットルを越えると、フラッシュ現象の原因
となる。また、このアスファルト乳剤の散布量は、骨材
の粒径に応じて変化し、一般には、粒径の大きな骨材を
使用する場合ほど散布量は多くなる。
【0074】1層目の結合材としてアスファルト乳剤4
を散布した後、散布されたアスファルト乳剤4の上に1
層目の骨材5を散布する。最上層以外の骨材は、特に機
能性骨材である必要はなく通常の骨材で良いが、機能性
骨材を使用しても良いことは勿論である。骨材の散布量
は、通常、1層当たり、100m当り0.4〜2.5
の範囲が好ましい。100m当りの骨材の散布量
が0.4m未満であると、フラッシュ現象の原因とな
り、逆に、100m当りの骨材量が2.5m を越え
ると、余剰の骨材が浮石となって車両の通行を妨げるば
かりでなく、歩行者にとっても歩行しづらい路面とな
る。また、骨材の散布量は、粒径の大きい骨材ほど多目
に散布するのが望ましい。なお、骨材は、通常、常温で
散布されるが、100〜170℃に加熱した状態で散布
するようにしても良い。骨材の散布後、散布面を十分転
圧するのが望ましいが、転圧しなくても良い。
【0075】以上のようなアスファルト乳剤の散布と骨
材の散布とを、必要とされる回数だけ繰り返し、施工面
上に1層又は2層以上の表面処理層を構築するのである
が、このような結合材としてのアスファルト乳剤の散布
と骨材の散布とは、できるだけ、一定の短い時間間隔で
行われるのが望ましく、そのような施工を容易に可能に
する作業車としては、例えば、同じ出願人による特開平
11−350413号公報、特開平11−350414
号公報、特開平11−350415号公報、特開200
0−45217号公報、特開2000−45218号公
報に開示されたような作業車が挙げられる。これら公報
に開示された作業車においては、結合材の散布装置と骨
材の散布位置とが、共に、作業車の前輪より前、前輪と
後輪の間、或いは、後輪よりも後ろになるように配置さ
れており、結合材としてのアスファルト乳剤が散布され
た上に直ちに骨材が散布されるので、作業車のタイヤ若
しくはクローラーが散布された結合材としてのアスファ
ルト乳剤上を踏むことがなく、一旦散布された結合材と
してのアスファルト乳剤が剥離したり、タイヤ等に付着
して他の路面等を汚す恐れがない。しかも、上記明細書
に開示されたような作業車にあっては、結合材の散布装
置と骨材の散布装置とが共に単一の作業車上に搭載さ
れ、それぞれの散布が行われるので、結合材としてのア
スファルト乳剤の散布から骨材の散布までを一貫した作
業として管理、施工することができ、均一で耐久性に富
む安定した表面処理層を構築することが可能である。ま
た、これらの作業車には水の散布装置を搭載したり、分
解補助剤の散布装置や、繊維材料の散布或いは敷き均し
装置を搭載することも可能である。
【0076】以上のようにアスファルト乳剤4の散布と
骨材5の散布とが行われ、転圧が施された後、図4に示
すように、骨材5の散布面の上に、最上層の結合材とし
て樹脂6が塗布又は散布される。骨材5の散布から樹脂
6の塗布又は散布までの間には20〜60分程度の時間
を開けるのが望ましい。樹脂6の塗布はローラー刷毛な
どを用いて塗布ムラがないように行い、散布は一本撒き
のエンジンスプレヤーや場合によってはディストリビュ
ーターなどを用いて行うことができる。塗布又は散布さ
れる樹脂の量は、100m当たり30〜200kgが
好ましく、より好ましくは、100m当たり60〜1
50kg、更に好ましくは100m当たり80〜12
0kgである。
【0077】続いて、樹脂6の塗布面或いは散布面上に
最上層の骨材として機能性骨材7が散布される。ここで
散布される機能性骨材7は、一般には、その下の通常骨
材5よりも粒径の小さなものを使用するのが良いが、通
常骨材5と同程度或いは大きな粒径を有するものであっ
ても良い。機能性骨材と他の通常骨材とを混合した骨材
を散布しても良いことは前述のとおりである。機能性骨
材7の散布後、散布面から余剰に散布された骨材を除去
し、続いてマカダムローラーやタンデムローラーなどを
用いて機能性骨材7の散布面を転圧し、図5に示すよう
に機能性表面処理層を構築する。機能性骨材7の散布
後、30〜90分程度の養生時間を経た後に、施工面は
交通開放することができる。構築された機能性表面処理
層は、使用された機能性骨材7の機能に応じて、例え
ば、滑り止め舗装、凍結防止舗装、有色舗装、光輝性舗
装等、種々の機能を有するものとなる。
【0078】また、本発明の機能性複層型散布式表面処
理工法においては、最上層以外の層の結合材として使用
されるアスファルト乳剤の散布と同時に、又は、アスフ
ァルト乳剤の散布と相前後して、繊維材料を散布若しく
は敷き均すようにしても良い。アスファルト乳剤の散布
と同時に、又は、アスファルト乳剤の散布と相前後し
て、繊維材料を散布若しくは敷き均すには、例えば、前
述したような作業車において結合材の散布装置の後方に
繊維材料の散布装置及び/又は繊維材料の敷き均し装置
を搭載した作業車を用いて、アスファルト乳剤の散布や
骨材の散布などと共に一貫した作業として行うのが好ま
しい。このような作業車としては、例えば、同じ出願人
が特願平11−275158号明細書に開示したような
作業車が挙げられる。このように、アスファルト乳剤と
同時又は相前後して繊維材料を散布若しくは敷き均すこ
とによって、アスファルト乳剤と繊維材料とは互いに混
じり合い、含浸し合って、骨材を強固に結合し、耐久性
や安定性に優れるばかりでなく、ひび割れ追従性や防水
性に優れた機能性表面処理層を構築することとなる。ア
スファルト乳剤と同時或いは相前後して繊維材料を散布
或いは敷き均す層に特に制限はなく、いずれの層の構築
時に散布或いは敷き均しても良いが、構築される表面処
理層のひび割れ追従性や防水性の観点からは最下層の構
築時に散布或いは敷き均すのが好ましい。
【0079】また、本発明の機能性複層型散布式表面処
理工法の好ましい一例においては、最上層以外の層の結
合材として使用されるアスファルト乳剤と同時期に又は
相前後して分解補助剤が路面上に散布される。アスファ
ルト乳剤と分解補助剤とを相前後して路面上に散布する
場合、アスファルト乳剤をまず路面上或いは先の骨材の
散布面上に散布した後に、その上に分解補助剤を散布す
るようにしてもよいし、また逆に、分解補助剤をまず路
面上或いは先の骨材の散布面上に散布した後に、その上
にアスファルト乳剤を散布しても良い。また、更には、
アスファルト乳剤、分解補助剤とを、この順に散布した
後に、再度、アスファルト乳剤を散布するようにしても
良いし、分解補助剤とアスファルト乳剤とをこの順に散
布した後に、再度、分解補助剤を散布するようにしても
良いが、好ましくは、アスファルト乳剤と分解補助剤と
を同時期に路面上或いは先の骨材の散布面上に散布し、
両者を路面上或いは先の骨材の散布面上で衝突、接触さ
せることによって、更に好ましくは、アスファルト乳剤
と分解補助剤とを同時期に散布し、両者を空中で衝突、
接触させることによって、アスファルト乳剤と分解補助
剤とを接触、混合させるのが良い。これにより、分解補
助剤によるアスファルト乳剤の分解促進作用が開始さ
れ、アスファルト乳剤は、アスファルト乳剤単独のとき
よりも短時間で分解、硬化するので、より短い養生時間
で強固で耐久性に富み且つ安定性に優れた散布式表面処
理層を構築することができるものである。なお、分解補
助剤の散布は各層の構築時にその都度行うようにしても
良いし、また、適宜の層の構築時にのみ行うようにして
も良い。
【0080】アスファルト乳剤と分解補助剤とを空中で
衝突、接触させ、両者を衝撃的に混合・攪拌させるに
は、アスファルト乳剤を散布するスプレーノズルと分解
補助剤を散布するスプレーノズルとを、例えば作業車の
近接した位置に、1のスプレーノズルから噴射されたア
スファルト乳剤と、対応する1のスプレーノズルから噴
射された分解補助剤とが空中で衝突するような角度で設
けるのが良い。このとき、個々のスプレーノズルから噴
射される分解補助剤の、アスファルト乳剤との衝突位置
における広がり幅が、衝突相手であるアスファルト乳剤
の同じく衝突位置における広がり幅とほぼ一致するよう
に、アスファルト乳剤用のスプレーノズルと分解補助剤
用のスプレーノズルとを設けるのが好ましい。更には、
個々のスプレーノズルから噴射される分解補助剤の、ア
スファルト乳剤との衝突位置における噴射密度が、衝突
位置における広がり幅の全体においてほぼ均一となるよ
うに、アスファルト乳剤用のスプレーノズルと分解補助
剤用のスプレーノズルとの位置関係を設定するのが好ま
しい。このようにすることによって、アスファルト乳剤
と分解補助剤とを均一に、かつ、制御された割合で衝
突、接触、混合させることが可能となり、アスファルト
乳剤の分解・硬化時間がより短縮されると共に、得られ
る表面処理層の耐久性や強度にも良い影響がもたらされ
る。
【0081】以下、実験例を用いて本発明を更に詳細に
説明する。
【0082】〈実験1〉骨材の粒度が路面との結合力に
及ぼす影響 使用する骨材の粒度が、構築される散布式表面処理層の
耐久性に及ぼす影響を調べるため、以下に述べる付着性
試験をビアリット(Vialit)付着試験方法に準じ
て行った。
【0083】即ち、表2に示すような種々の最小粒径と
最大粒径を持つ骨材試料を用意した。例えば、表2にお
いてNo.1で示される骨材試料は、呼び寸法で5mm
のふるいと6mmのふるいとの間に、ほぼ100重量%
の骨材粒が分布する骨材試料である。このような種々の
骨材試料を各90粒ずつ用意し、ビアリット付着試験方
法に規定する条件で乾燥、静置した。
【0084】一方、厚さ2mm、大きさ200×200
mmの金属板を骨材試料数だけ用意し、これに結合材と
してアスファルト乳剤(商品名「サーフェイスゾー
ル」、ニチレキ株式会社製)を、最小粒径が10mm未
満の骨材試料に対しては、1.15(リットル/m
となるように、また、最小粒径が10mm以上の骨材試
料に対しては、1.50(リットル/m)となるよう
塗布し、これに各種骨材試料をまぶした後、実験用ロー
ラーで線圧7kgf/cmの負荷をかけて、相反する方
向にそれぞれ15回ずつ、合計30回転圧した。これを
所定時間静置した後、骨材の付着面を下にして水平に保
持した状態で、その上から、直径50mm、重さ500
gの鉄球を10秒以内に3回、金属板中央に落下させ
た。鉄球の落下によって金属板からはがれ落ちた骨材粒
の内、結合材が付着していない骨材粒の数を数えてaと
した。また、金属板に残った骨材を手で剥がし、結合材
が付着していない骨材粒の数を数えてdとした。付着率
(%)は、付着率(%)={(90−a−d)/90}
×100として計算した。各々の試料について3回試験
を行い、結果はその平均とし、付着率80%以上のもの
を良好な満足できるものと評価した。結果を表2に示
す。
【0085】
【表2】
【0086】表2から明らかなように、最小粒径が10
mm未満の骨材試料の場合には、最小粒径と最大粒径と
の差が、ふるいの目開きの呼び寸法で2mm以上、5m
m未満のものが、また、最小粒径が10mm以上の骨材
試料の場合には、最小粒径と最大粒径との差が、ふるい
の目開きの呼び寸法で3mm超、6mm以下のものが、
付着率80%以上となり、本発明の散布式表面処理工法
に使用した場合に優れた結合性を示すことが分かった。
なお、このような結果が得られた理由については定かで
はないが、最小粒径と最大粒径との差が余りに少ない
と、骨材同士の咬み合わせによる結合力の増加がそれほ
ど見込めず、また、逆に最小粒径と最大粒径との差が余
りに大きいと、粒径の差に応じて不均等な力が作用する
からではないかと推測される。
【0087】〈実験2〉アスファルト乳剤中の蒸発残留
物の特性が路面との結合力に及ぼす影響 アスファルト乳剤中の蒸発残留物の特性が、構築される
散布式表面処理層の耐久性に及ぼす影響を調べるため、
蒸発残留物が表3に示すような種々の特性を有する10
種類のアニオン系アスファルト乳剤を調製し、以下に述
べる付着性試験をビアリット(Vialit)付着試験
方法に準じて行った。骨材としては、実験1で用いたN
o.3の骨材試料を用意し、これをビアリット付着試験
方法に準ずる条件で乾燥、静置した。一方、分解補助剤
としては、アルキルジアミン酢酸塩(商品名「カチオン
DTA」、日本油脂株式会社製)の10w/w%水溶液
を用意し、重量比で、(分解補助剤水溶液中の有効成分
量)/(アスファルト乳剤中の蒸発残留分)=0.3/
100とした。
【0088】一方、厚さ2mm、大きさ200×200
mmの金属板を試料数だけ用意し、これに、結合材とし
て別途調製した上記10種類のアニオン系アスファルト
乳剤の各々と上記分解補助剤とをフラット形のスプレー
ノズルを用いて空中で衝突させながら1.1(リットル
/m)の割合で散布した。なお、アスファルト乳剤の
散布高さHは50cm、アスファルト乳剤と分解補助剤
の衝突位置は、散布面から30cmとした。次いで、こ
のアスファルト乳剤と分解補助剤の散布面上に骨材を散
布し、実験1と同様の手順で付着率を求めた。付着率
(%)は、付着率(%)={(90−a−d)/90}
×100として計算した。付着率80%以上のものを満
足できるもの、付着率85%以上のものをより満足でき
るもの、付着率90%以上のものを更に満足できるもの
と評価した。更に、分解補助剤を散布しない点を除いて
は同じ手順で、10種類のアニオン系アスファルト乳剤
上に骨材を散布した試料を作成し、同様に試験して付着
率を求めた。結果を併せて表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】表3から明らかなように、アスファルト乳
剤と分解補助剤とを空中で衝突させた場合には、アスフ
ァルト乳剤中の蒸発残留物の物性が、針入度が50(1
/10mm)以上、150(1/10mm)以下、軟化
点が50℃以上、120℃以下、25℃におけるタフネ
スが70kgf・cm以上、320kgf・cm以下、
25℃におけるテナシティが30kgf・cm以上、3
00kgf・cm以下で、付着率80%以上の満足でき
る結果が得られた。また、針入度が70〜125(1/
10mm)、軟化点が55〜100℃、タフネスが90
〜250kgf・cm、テナシティが50〜220kg
f・cmの範囲で、付着率85%以上の満足できる結果
が得られ、更には、針入度が90〜120(1/10m
m)、軟化点が60〜80℃、タフネスが100〜20
0kgf・cm、テナシティが70〜180kgf・c
mのアスファルト乳剤D及びEにおいて、付着率90%
以上の結果が得られた。しかしながら、軟化点が120
℃の乳剤Iとなると、アスファルト乳剤が分解して得ら
れるアスファルト分は柔軟性に欠け、付着率においても
若干低下する傾向が見られた。更に軟化点が高くなっ
て、アスファルト乳剤中の蒸発残留物の軟化点が150
℃、針入度が40(1/10mm)、タフネスが360
kgf・cm、テナシティが350kgf・cmのアス
ファルト乳剤Jは、アスファルト乳剤が分解して得られ
るアスファルト分は一層柔軟性に欠けて、付着率は更に
減少した。一方、分解補助剤を使用しない場合において
もほぼ同様の結果が得られたが、付着率は全体的に分解
補助剤を使用する場合に比べて低い値が得られた。
【0091】〈実験3〉アスファルト乳剤の粘度が表面
処理層の均一性に及ぼす影響 アスファルト乳剤の粘度が表面処理層の均一性に及ぼす
影響を調べるため、20℃における粘度が種々の値を示
すアニオン系アスファルト乳剤を用意し、轍掘れの出来
た路面から舗装打ち替えのために切り出した表面に凹凸
のある実験用舗装体上に、1.2(リットル/m)の
割合で散布した。なお、凹部と凸部の差は、平均で約2
0mmであった。次いで、直ちに、実験2で用いたのと
同じ骨材を9(リットル/m)の割合で上から散布
し、軽く転圧した後、結合材が硬化するまで養生した。
養生後、実験用舗装体をカッターで切断し、凹部の底部
及び凸部の頂部における結合材の厚さを測定した。結果
を、使用した結合材の種類と共に表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】表4の結果から明らかなように、20℃に
おける粘度が19センチポアズ及び32センチポアズの
アスファルト乳剤は、散布後、重力の作用によって路面
の凹部に流れ込み滞留する傾向があり、路面の凸部の頂
部ではアスファルト乳剤の分解によって形成された結合
材層の厚さは平均して約0.7mmないしは0.8mm
と薄く、逆に、路面の凹部の底部では、平均して1.5
mmないしは1.2mmと厚い結合材層が形成された。
凸部における骨材粒は、スパチュラの先で剥がすことを
試みると、比較的簡単に剥がすことができた。また、凹
部にあっては、結合材の量が多過ぎて、このままでは実
際に車両の通行に供用された場合にはフラッシュ現象を
起こす危険性がある。
【0094】一方、20℃における粘度が約40センチ
ポアズ以上となると、アスファルト乳剤の流動は抑えら
れ、路面凹部の底部及び凸部の頂部におけるアスファル
ト乳剤の分解によって形成された結合材層の厚さにはさ
ほど違いが見られない。凸部、凹部における骨材粒をス
パチュラ先端で剥がすことを試みたが、容易には剥がす
ことができないほど強固に結合していた。以上のことか
ら、アスファルト乳剤として20℃における粘度が約4
0センチポアズ以上のものを使用すれば、路面に凹凸が
あっても結合材が路面上で流動することなく、均一な表
面処理層が構築できることが分かった。
【0095】〈実験4〉最上層に使用する結合材の種類
が骨材の結合力に及ぼす影響 最上層に使用する結合材の種類が骨材の結合力に及ぼす
影響を調べるため、アスファルト乳剤として、以下に示
す特性を有するアニオン系アスファルト乳剤(商品名
「サンピーゾールA」、ニチレキ株式会社製)を用意
し、骨材として、粒径8−5mmの汎用骨材(栃木県葛
生産砕石)を用いて、実験1と同様にして、厚さ2m
m、大きさ200×200mmの金属板上に、アスファ
ルト乳剤を1.15(リットル/m)散布し、その上
に、上記汎用骨材を密に散布し、浮き石を除去した後、
実験用ローラーで線圧7kgf/cmの負荷をかけて実
験1と同様に転圧し、1層目の表面処理層を構築した。
この表面処理層を1週間養生した。
【0096】使用したアニオン系アスファルト乳剤(商
品名「サンピーゾールA」、ニチレキ株式会社製)の特
性は以下のとおりであった。 蒸発残留分:68(%) 蒸発残留物の針入度:103(1/10mm) 蒸発残留物の軟化点:65(℃) 蒸発残留物の25℃におけるタフネス:160(kgf
・cm) 蒸発残留物の25℃におけるテナシティ:145(kg
f・cm) 蒸発残留物の60℃における絶対粘度:16000(ポ
アズ) 20℃における粘度:42(センチポアズ)
【0097】一方、樹脂として以下に示す4種類の樹脂
を用意し、骨材としては、緑色有色骨材(商品名「ロー
ドセラムG」、粒径5−2.5mm、内外セラミックス
株式会社製)を用意して、先に構築され、養生された各
表面処理層上に、4種類の樹脂をそれぞれ0.8(kg
/m)の割合でローラー刷毛で塗布し、塗布後直ち
に、緑色骨材を各金属板1枚当たり90粒ずつ散布し
た。散布後、実験1と同様に、実験用ローラーで線圧7
kgf/cmの負荷をかけて転圧し、2層目、即ち、最
上層の表面処理層を構築した。併行して、2層目の結合
材として1層目に使用したのと同じアスファルト乳剤を
使用した以外は、同様にして、対照用の表面処理層を構
築した。構築した表面処理層を所定時間静置した後、実
験1と同様に、骨材の付着面を下にして水平に保持した
状態で、その上から、直径50mm、重さ500gの鉄
球を10秒以内に3回、金属板中央に落下させた。鉄球
の落下によって金属板からはがれ落ちた骨材粒の数を数
えてaとした。付着率(%)は、付着率(%)={(9
0−a)/90}×100として計算した。各々の試料
について3回試験を行い、結果はその平均とした。結果
を表5に示す。
【0098】使用した樹脂 1)アクリル樹脂(商品名「コールカットR−2」、ニ
チレキ株式会社製) 2)ポリウレタン樹脂(商品名「カラファルトDA」、
ニチレキ株式会社製) 3)エポキシ樹脂(商品名「コールカットR−1」、ニ
チレキ株式会社製) 4)アクリル樹脂ラテックス(商品名「カラーコート#
1001」、ニチレキ株式会社製)
【0099】
【表5】
【0100】表5の結果から明らかなように、2層目、
即ち、最上層の結合材として樹脂を使用したものは、樹
脂の種類に関わりなく、2層目の結合材として樹脂に代
えてアスファルト乳剤を使用したものに比べて高い付着
率が得られた。このことから、最上層の結合材として樹
脂を使用することにより、高い骨材付着率をもった機能
性表面処理層を構築することができることが分かる。な
お、鉄球の落下による衝撃によって落下した骨材の中に
は、1層目に使用した粒径8−5mmの骨材は見当たら
なかった。
【0101】以下、実施例を用いて、本発明を更に説明
するが、本発明がこれら実施例に限られるものでないこ
とは勿論である。
【0102】〈実施例1〉以下の材料を使用し、単一の
作業車に水又はプライマーの散布装置、結合材散布装
置、分解補助剤散布装置、及び、骨材散布装置が搭載さ
れた作業車を用いて、試験的に本発明の機能性複層型散
布式表面処理工法を施工した。すなわち、施工面上をロ
ードスイーパーで清掃した後、作業車を約5km/hの
進行速度で施工面上に進行させ、以下に示すような材料
を用いて、まず第1層目の散布式表面処理層を構築し
た。路面から結合材としてのアスファルト乳剤のスプレ
ーノズルまでの高さは50cmとし、第2層目の構築に
際しては、その結合材に対して路面から30cmの位置
で分解補助剤が衝突するように分解補助剤用のスプレー
ノズルの位置及び角度を調整した。第1層目の構築に際
しては、結合材の散布後、直ちに骨材を散布し、骨材の
散布後、振動ローラーで骨材散布面を十分転圧した。
【0103】続いて、第1層目の骨材層上に樹脂をロー
ラー刷毛で塗布し、塗布後、直ちに機能性骨材を散布
し、最上層として第2層目の表面処理層を構築した。構
築後、余剰の浮き石を除去し、マカダムローラーを用い
て散布面を十分に転圧し、光輝性を有する本発明の機能
性複層型散布式表面処理層を得た。施工路面には最大深
さ10mm程度の轍掘れがあったが、アスファルト乳剤
が流動することなく、均一な表面処理層を構築すること
ができた。半日の養生後、重荷重積載車を試験的に30
回通過させ、構築された表面処理層上で停止、発進を繰
り返させたが、いずれの骨材の飛散も見られなかった。
構築された表面処理層は、太陽光及び夜間の車両のヘッ
ドライト等によって、きらきらと輝き、運転者及び歩行
者の注意を喚起するものであった。
【0104】骨材(第1層) 砕石(栃木県葛生産) 粒径:5−8mm 0.5重量%のストレートアスファルトによりプレコー
ト 散布量:90(m/100m) アスファルト乳剤(第1層) アニオン系アスファルト乳剤(商品名「サンピーゾール
A」、ニチレキ株式会社製)(実験4で使用したのと同
じアスファルト乳剤) 散布量:100(リットル/100m) 分解補助剤(第1層) 「カチオンDTA」(日本油脂株式会社製) 散布量:アスファルト乳剤の蒸発残留分100重量部に
対して、有効成分量で0.3重量部
【0105】骨材(第2層) 光輝性骨材(商品名「トゥンクレッド」、内外セラミッ
クス株式会社製) 粒径:2.5−5mm 散布量:0.4(m/100m) 樹脂(第2層) アクリル樹脂(商品名「コールカットR−2」、色調:
赤、ニチレキ株式会社製) 塗布量:90(kg/100m
【0106】〈実施例2〉以下の材料を使用し、表面処
理層を3層に構築した以外は、実施例1と同様にして、
試験的に本発明の機能性複層型散布式表面処理工法を施
工した。施工路面には、幅10mm以下のひび割れが何
本か存在していたが、構築された表面処理層によって完
全に覆われた。構築された表面処理層は均一で、鮮やか
な緑色をしており、美観を与えるものであった。表面の
骨材粒をドライバーの先端で剥がすことを試みたが困難
であった。構築後、1時間の養生時間をおいて重荷重積
載車を試験的に30回通過させ、構築された表面処理層
上で停止、発進を繰り返させたが、いずれの骨材の飛散
も見られなかった。
【0107】骨材(第1層) 砕石(栃木県葛生産) 粒径:13−20mm 散布量:1.7(m/100m) アスファルト乳剤(第1層) アニオン系アスファルト乳剤(商品名「サンピーゾール
A」、ニチレキ株式会社製)(実施例1で使用したのと
同じアスファルト乳剤) 散布量:110(リットル/100m
【0108】骨材(第2層) 砕石(栃木県葛生産) 粒径:5−8mm 散布量:0.8(m/100m) アスファルト乳剤(第2層) アニオン系アスファルト乳剤(商品名「サンピーゾール
A」、ニチレキ株式会社製)(第1層に使用したのと同
じアスファルト乳剤) 散布量:140(リットル/100m
【0109】骨材(第3層) 緑色有色骨材(商品名「ロードセラムG」、内外セラミ
ックス株式会社製) 粒径:2.5−5mm 散布量:0.5(m/100m) 樹脂(第3層) エポキシ樹脂(商品名「コールカットR−1」、ニチレ
キ株式会社製) 塗布量:80(kg/100m
【0110】〈実施例3〉第1層のアスファルト乳剤散
布直後に以下に示す繊維材料を敷き均した以外は実施例
1と同様にして、機能性複層型散布式表面処理層を構築
した。構築された表面処理層は均一で、太陽光及び夜間
の車両のヘッドライト等によって、きらきらと輝き、運
転者及び歩行者の注意を喚起するものであった。ドライ
バーの先端で最上層の骨材粒を剥がすことを試みたが困
難であった。構築後、1時間の養生時間をおいて重荷重
積載車を試験的に30回通過させ構築させた表面処理層
上で停止、発進を繰り返させたが、骨材の飛散は見られ
なかった。この表面処理層は最下層に繊維材料の層を有
し、ひび割れ追従性に優れると共に、防水性も兼ね備え
た表面処理層である。
【0111】繊維材料 ポリエステル繊維(100デニール、48フィラメント
東洋紡績株式会社製) 繊維長:20mm 散布量:90(g/m
【0112】
【発明の効果】以上のように、本発明の機能性複層型散
布式表面処理工法は、最上層以外の層における結合材と
してアスファルト乳剤を使用し、最上層の結合材として
樹脂を使用し、最上層の骨材として、機能性骨材を使用
するものであるので、散布された機能性骨材の路面から
の剥離が有効に防止され、骨材が飛散し、浮き石となる
ことが少ない耐久性に富む機能性表面処理層を構築する
ことができるものである。従って、従来施工が困難であ
った、カーブや交差点、坂道など過酷な条件に晒される
場所での施工にも十分に耐え得るものであり、本来機能
性舗装が必要とされる場所に耐久性のある機能性舗装を
構築することを可能にするものである。しかも、本発明
において使用するアスファルト乳剤及び樹脂は、共に常
温で施工できる材料であるので、加熱の必要がなく、危
険性が少ないと共に炭酸ガスの発生もないので、地球環
境的な観点からも好ましいものである。
【0113】また、本発明の機能性複層型散布式表面処
理工法において、最下層に使用される骨材として粒径の
規制されたものを使用する場合や最上層以外の層の結合
材として蒸発残留物の特性が規制されたアスファルト乳
剤を使用する場合には、骨材の路面に対する付着力が一
層向上し、より耐久性に優れた機能性表面処理層を構築
することが可能となるものである。更には、アスファル
ト乳剤として、20℃における粘度が約40センチポア
ズ以上のアスファルト乳剤を使用する場合には、凹凸や
変形の激しい路面上にアスファルト乳剤を散布して表面
処理層を構築する場合でも、散布されたアスファルト乳
剤が散布直後から路面の傾斜に沿って流動して路面上に
おけるアスファルト乳剤の膜厚が不均一になることがな
く、均一で安定した結合力を備えた機能性を有する表面
処理層を構築することができる。
【0114】また、本発明の機能性複層型散布式表面処
理工法において、アスファルト乳剤の分解を促進する分
解補助剤を、アスファルト乳剤と同時期に又は相前後し
て散布する場合には、アスファルト乳剤の分解、硬化が
一層早められ、より早期の交通開放が可能となるという
利点があり、繊維材料が、アスファルト乳剤と同時又は
アスファルト乳剤と相前後して散布若しくは敷き均され
る場合には、繊維材料とアスファルト乳剤とが混じり合
い、より強力に骨材を路面に結合するだけでなく、耐久
性や、更には防水性に優れた機能性散布式表面処理層を
構築することが可能となるものである。
【0115】このように、本発明は極めて有用、かつ、
優れたものであり、当該技術分野に新たな可能性をもた
らすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 路面上にアスファルト乳剤と骨材とを2層に
散布した状態を示す図である。
【図2】 骨材の散布面を転圧した状態を示す図であ
る。
【図3】 本発明の機能性複層型散布式表面処理工法を
説明する図である。
【図4】 本発明の機能性複層型散布式表面処理工法を
説明する図である。
【図5】 本発明の機能性複層型散布式表面処理工法を
説明する図である。
【符号の説明】
1 路面 2a、2b 結合材 3a、3b 骨材 4 アスファルト乳剤 5 骨材 6 樹脂 7 機能性骨材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開2000−104208(JP,A) 特開2000−104209(JP,A) 特開 平6−294104(JP,A) 特開 平11−247114(JP,A) 特開 平10−219618(JP,A) 特開 平11−303004(JP,A) 特開2000−27114(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E01C 5/00 - 15/00 E01C 19/21

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 施工面上に結合材を散布又は塗布しその
    上から骨材を散布する作業を少なくとも2回以上繰り返
    して路面上に複層の表面処理層を構築する複層型散布式
    表面処理工法において、最上層以外の層の結合材として
    蒸発残留物が以下のa)〜d)に示す特性を有する
    スファルト乳剤を使用し、最上層の結合材としては樹脂
    を使用し、最上層の骨材としては機能性骨材又は機能性
    骨材を含んだ骨材を使用する機能性複層型散布式表面処
    理工法 a)針入度が70〜125(1/10mm)、 b)軟化点が55〜100℃、 c)25℃におけるタフネスが90〜250kgf・c
    m、 d)25℃におけるテナシティが50〜220kgf・
    cm
  2. 【請求項2】 機能性骨材が、有色の骨材、硬質の骨
    材、弾性を有する骨材、及び、光反射性、光輝性、蛍光
    性及び/又は蓄光性の骨材の中から選ばれる1種もしく
    は2種以上の骨材である請求項1記載の機能性複層型散
    布式表面処理工法。
  3. 【請求項3】 最下層に使用する骨材として、骨材の最
    小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で10mm未満の場
    合には、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの
    呼び寸法で2mm以上、5mm未満の骨材を、また、最
    小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で10mm以上の場
    合には、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの
    呼び寸法で3mm超、6mm以下の骨材を使用する請求
    項1又は2記載の機能性複層型散布式表面処理工法。
  4. 【請求項4】 使用するアスファルト乳剤の20℃にお
    ける粘度が約40センチポアズ以上である請求項1、2
    又は3記載の機能性複層型散布式表面処理工法。
  5. 【請求項5】 アスファルト乳剤の分解を促進する分解
    補助剤を、アスファルト乳剤と同時期に又は相前後して
    散布する工程を含む請求項1、2、3又は4記載の機能
    性複層型散布式表面処理工法。
  6. 【請求項6】 アスファルト乳剤と同時又は相前後して
    繊維材料を散布又は敷き均す工程を含む請求項1ないし
    のいずれかに記載の機能性複層型散布式表面処理工
    法。
  7. 【請求項7】 少なくとも結合材の散布装置と骨材の散
    布装置とを車両前方からこの順に備えた作業車を用い
    て、結合材の散布後ほぼ一定の時間間隔をおいて骨材の
    散布を行う工程を含む請求項1ないしのいずれかに記
    載の機能性複層型散布式表面処理工法。
  8. 【請求項8】 最上層の結合材として使用される樹脂が
    ラテックスである請求項1ないしのいずれかに記載の
    機能性複層型散布式表面処理工法。
  9. 【請求項9】 請求項1ないしのいずれかに記載の機
    能性複層型散布式表面処理工法によって構築された表面
    処理層を有する舗装体。
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