JP4199386B2 - 凍結抑制表面処理層の構築方法 - Google Patents

凍結抑制表面処理層の構築方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、凍結抑制表面処理層の構築方法に関し、詳しくは、硬質の主骨材と軟質の副骨材とを組み合わせた凍結抑制表面処理層の構築方法と、その構築方法によって得られる凍結抑制表面処理層に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、交通安全に対する要請はますます厳しくなる状況にあるが、特に、スパイクタイヤの禁止に伴う冬季路面のスリップ対策の一つとして、ゴム片を舗装体中に混入させこの弾性を利用して路面の結氷を剥離除去するタイプの凍結抑制舗装(以下、「弾性体凍結抑制舗装」という)が注目され、種々の試みが為されている。
【0003】
弾性体凍結抑制舗装には、▲1▼加熱アスファルト混合物の舗設直後にゴム片を散布しローラーで圧入するホットロールドタイプ、▲2▼単粒度のゴム片とフィラー及びアスファルトを混合したマスチックを流し込むマスチックタイプ、▲3▼混合物中の骨材の一部をゴム片に置き換える骨材置換タイプなどがあり、いずれのタイプも、ロードヒーティングや温泉湯、人工温水或いは地下水散布などの熱融解方式に比べ、初期投資額が少なく運転費が不要である点、また、塩化物の溶出による氷点降下を利用した方式に比べ塩の溶出による弊害がなく凍結抑制効果が持続的である点で優れており、更には、ゴム片の弾性により、舗装面と車両タイヤとの間に発生する摩擦音が低減され、騒音抑制効果が得られることも大きな特徴である。
【0004】
しかしながら、このような弾性体凍結抑制舗装には、車両重量載荷時にゴム片の変形に伴って舗装体に大きな歪みが生じ、この歪みによって、ゴム片と結合材であるアスファルトとの接着性が十分でないと、両者の界面に剥離が発生し、舗装体の耐流動性や耐剥離性が損なわれ易いという問題があった。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来技術の欠点を解決するために為されたもので、ゴム片と結合材との剥離が発生し難く、耐久性に優れた弾性体凍結抑制舗装体を構築することができる構築方法と、そのような構築方法によって得られる、耐久性に優れた弾性体凍結抑制舗装体を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、弾性体凍結抑制舗装体の構築方法を種々検討した結果、表面処理工法の一つとしての散布式表面処理工法に着目し、散布式表面処理工法において、硬質の主骨材と軟質の副骨材とをうまく組み合わせることによって、骨材と結合材との剥離が少なく、耐久性に富む凍結抑制表面処理層が得られることを見出して、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、路面上に、結合材を散布し若しくは散布せずに、硬質の主骨材を散布し、散布された主骨材の上から、結合材と軟質の副骨材とを散布する工程を1回又は2回以上繰り返す凍結抑制表面処理層の構築方法を提供すると共に、そのような凍結抑制表面処理層の構築方法によって構築される凍結抑制表面処理層を提供することによって上記課題を解決するものである。
【0008】
本発明者らが注目した散布式表面処理工法とは、老化、劣化した道路舗装を補修する方法として、混合式表面処理工法やオーバーレイ工法などと共に従来から提案されている工法の1つであるが、この散布式表面処理工法は、老化ないしは劣化して凹凸やひび割れの発生した路面上に、例えば、アスファルト等の瀝青材料からなる結合材を膜状に散布し続いてその上に骨材を散布する作業を、1回若しくは複数回繰り返して、結合材によって骨材を路面に接着結合し、路面上に結合材と骨材とからなる層を一層若しくは複数層構築して路面を若返らせるという工法である。
【0009】
この散布式表面処理工法は、比較的簡単に舗装体表面を補修できるので、老化、劣化した舗装体の補修工法としては極めて有効なものであるが、アスファルト混合物を用いる補修工法とは違って、単に結合材によって骨材を路面に結合しているだけであるので、通行車両のタイヤ等から受ける引掻力や衝撃力によって、結合材上に散布された骨材が、ややもすると飛散してしまう現象が見られることがあった。骨材が飛散してしまうと、結合材が直接路面表面に現れてきてしまうため、路面がフラッシュし、著しく滑り易くなって、通行車両のスリップ等を引き起こし、ひいては交通事故の原因ともなる危険性があった。
【0010】
このようなことから、従来、散布式表面処理工法は、老化ないしは劣化した路面の一時的な補修工法としてしか考えられておらず、そのような散布式表面処理工法によって新たな路面を構築したり、ましてや、凍結抑制機能を持った舗装体を構築することなど、全く考えられていなかった。即ち、これまでの弾性体凍結抑制舗装は、走行車両からの荷重によって舗装体内部の弾性体を変形させ、その変形歪みによって舗装体表面に付着した結氷層を破壊、除去するものであるため、弾性体凍結抑制舗装体には、結氷層を破壊するだけの歪みを生じるに足る厚みが不可欠であると考えられていた。ところが、本発明者らが研究を重ねた結果、意外にも、硬質の主骨材と軟質の副骨材とを組み合わせて散布式表面処理層を構築することによって、従来の弾性体凍結抑制舗装に比べて凍結抑制能の点で遜色がなく、しかも骨材と結合材との剥離がない凍結抑制表面処理層が、簡単かつ安価に構築できることが見出された。通常の凍結抑制用の混合物を使用して構築される弾性体凍結抑制舗装体に比べて遙かに薄い表面処理層によって、優れた凍結抑制能を備え、しかも、骨材と結合材との剥離がなく、また、骨材と路面との接着・結合が良好な凍結抑制表面処理層が得られるということは、本発明らによって始めてもたらされた知見である。また、本発明の構築方法によって構築される凍結抑制表面処理層は、従来の弾性体凍結抑制舗装体と同じく、騒音抑制効果も備えている。
【0011】
本発明の凍結抑制表面処理層の構築方法によれば、既存の舗装体を打ち替えることなく、舗装体補修の一環として凍結抑制表面処理層を構築することが可能である。構築された凍結抑制表面処理層は、期待される凍結抑制能や騒音抑制効果を発揮するばかりでなく、既存舗装の、例えばひび割れや轍掘れ等の欠陥を強固に封じ、舗装体の長寿命化にも極めて優れた効果を発揮するものである。また、結合材や骨材を実質的に単層に1回若しくは2回以上散布するだけであるので、材料の使用量も少なくて済み、非常に経済的である。
【0012】
本発明の凍結抑制表面処理層においては、硬質の主骨材を散布した後に、主骨材よりも粒度の小さな軟質の第1の副骨材を散布するので、主骨材同士の間隙や、主骨材と路面との間隙に、第1の副骨材が入り込み、骨材同士の咬み合わせを強固に維持するものである。また、必要に応じて、より粒度の小さな第2、第3の副骨材を散布することによって、主骨材と副骨材との間隙、更には副骨材同士の間隙、更には主骨材と路面との間隙を埋め、より緻密で強固な表面処理層を形成する。特に、最上層に散布される副骨材は、表面処理層表面を保護層のように覆い、下部の骨材が飛散するのを防止する。副骨材を何回散布するかは、計画する仕上がり厚さや周辺の環境等、或いは、主骨材の粒度や副骨材の粒度に応じて選択され、一般には、主骨材の粒度が大きい程、必要となる副骨材の大きさは複数の種類を必要とし、副骨材を多数回に渡って散布することが必要である。逆に、主骨材の粒度がさほど大きくない場合には、副骨材は例えば1回のみ散布すれば良く、1回散布された副骨材によって、主骨材同士の間隙を埋めると同時に、表面処理層の緻密な表面を形成することも可能である。なお、以上の説明は、副骨材として単粒度のものを使用する場合であるが、連続粒度の副骨材を使用する場合には、副骨材は1回散布するだけでも良い。
【0013】
以上のように、本発明の凍結抑制表面処理層においては、硬質の主骨材と軟質の副骨材とが、結合材を介して結合し、緻密で強固な表面処理層を形成する。走行車両の荷重は、主として硬質の主骨材によって支持され、路面や基盤に伝達される。一方、走行車両の荷重の一部は、硬質の主骨材の間隙を埋める軟質の副骨材によって受け止められ、軟質の副骨材は変形して、付着している結氷層を破壊する。なお、本発明で言う「硬質」「軟質」とは相対的なものであって、凍結抑制表面処理層に使用された場合に、載荷荷重によって実質的に若しくは比較的に変形しないものを硬質といい、実質的に若しくは比較的に変形するものを軟質という。これは、例えば、大型車輌が多数走行する路面にあっては、主骨材としては極めて硬質のものを使用して荷重を支持する必要があり、副骨材としては比較的硬質度に劣るものであっても荷重が大きいため十分に変形できるのに対して、例えば、軽車両ないしは歩行者が通行する路面にあっては、副骨材としては十分に軟質のものを使用する必要があり、主骨材としてもそれほど硬質のものを使用する必要がないことからも窺えることである。
【0014】
また、有色性の骨材、及び、光反射性、光輝性、蛍光性、及び/又は蓄光性を有する骨材から選ばれる1種若しくは2種以上の骨材を、主骨材及び/又は副骨材として、或いは、主骨材及び/又は副骨材と混合して使用する場合には、有色性や光反射性ないしは発光性を備えた凍結抑制表面処理層を構築することが可能であるし、更には、構築される表面処理層を補強するために、天然繊維、化学繊維、金属繊維、炭素繊維等の繊維材料を併用しても良いことは当然である。
【0015】
また、本発明において使用する結合材は、結合材若しくは結合材中の蒸発残留物の60℃における絶対粘度が約15000ポアズ(poise)以上のものが好ましい。このような絶対粘度を持った結合材を使用すれば、凹凸や変形の激しい路面上に散布する場合でも、散布された結合材が路面の傾斜に沿って流れて路面上における結合材の膜厚が無闇に不均一になることがなく、均一で安定した結合力で骨材を路面に結合することができる。ここで、絶対粘度は、「舗装試験法便覧」、社団法人日本道路協会、平成7年6月10日発行、第398〜402頁に記載された粘度試験方法に基づいて測定される値である。
【0016】
本発明において、結合材として、結合材若しくは結合材中の蒸発残留物が以下のa)〜d)に示す特性、即ち、
a)針入度が50〜150(1/10mm)、
b)軟化点が50〜120℃、
c)25℃におけるタフネスが70〜320kgf・cm、
d)25℃におけるテナシティが30〜300kgf・cm、
を有する結合材を使用する場合には、骨材と路面、或いは、骨材と骨材との結合力が一層高まり、より耐久性に優れた複層型散布式表面処理層を構築することが可能となる。結合材としては、常温で施工できるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用するのが、加熱の必要がなく、危険性が少ないと共に炭酸ガスの発生もないので、地球環境的な観点からも望ましく、結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤中の蒸発残留物が上記a)〜d)の特性を有していることとなる。なお、本明細書でいうアスファルト乳剤及び人工アスファルト乳剤とは、特に断らない限り、ゴムや熱可塑性高分子重合物などを添加して改質した改質アスファルト乳剤や改質人工アスファルト乳剤も含むものとする。
【0017】
本発明において、結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、そのアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の20℃における粘度が約40センチポアズ以上であることが望ましい。結合材として20℃における粘度が約40センチポアズ以上のアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用すれば、凹凸や変形の激しい路面上に結合材を散布して表面処理層を構築する場合でも、散布された結合材が散布直後から路面の傾斜に沿って流動して路面上における結合材の膜厚が不均一になることがなく、均一で安定した結合力を備えた表面処理層を構築することができる。ここで、粘度は、「舗装試験法便覧別冊(暫定試験方法)」、社団法人日本道路協会編集、丸善株式会社、平成8年10月20日発行、第69〜74頁に記載された粘度試験方法に準じて測定される値である。
【0018】
結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、結合材であるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解を促進する分解補助剤を、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と同時期に又は相前後して散布するのが好ましい。このような本発明の表面処理工法によれば、施工に際して特段の加熱を必要としないアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を結合材として使用することに加えて、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解を促進する分解補助剤を使用しているので、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解が促進され、強固で耐久性に富み且つ安定性に優れた散布式表面処理層を常温施工で、しかも、短い養生時間で構築することができるという利点がある。
【0019】
本発明において使用する分解補助剤としては、結合材であるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解を促進することができるものであればどのようなものを使用しても良く、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤としてカチオン系アスファルト乳剤若しくはカチオン系人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アニオン系乳化剤、アルカリ性無機塩、アニオン系高分子凝集剤、アニオン系アスファルト乳剤、及び、アニオン系ラテックスからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上の分解補助剤を使用することができるが、できれば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸の金属塩、ジ・オクチル・スルホ・コハク酸の金属塩などのアニオン系乳化剤の1種または2種以上を使用するのが望ましく、中でも、アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩が最も好ましい。
【0020】
アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤としてアニオン系アスファルト乳剤若しくはアニオン系人工アスファルト乳剤を使用する場合には、二価無機塩、無機酸、有機酸、及び、アミン系カチオン界面活性剤からなる群から選ばれる1種若しくは2種以上の分解補助剤、中でも、アミン系カチオン界面活性剤から選ばれる1種若しくは2種以上の分解補助剤を使用するのが望ましい。また、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤としてノニオン系アスファルト乳剤若しくはノニオン系人工アスファルト乳剤を使用する場合には、高分子凝集剤から選ばれる1種若しくは2種以上の分解補助剤を使用するのが望ましい。
【0021】
本発明において、結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用し、更に、分解補助剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とが、同時期に又は相前後して路面上又は表面処理層上に散布される。アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを相前後して路面上又は表面処理層上に散布するとは、路面上又は表面処理層上の施工箇所にアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤または分解補助剤のどちらかを先に散布した後に、分解補助剤またはアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を、先に散布したものの上から散布することをいうものである。相前後して散布された結果、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とは路面上又は表面処理層上で出会い、接触することとなる。また、常温型結合材としてのアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを同時期に路面上又は表面処理層上に散布するとは、同じ施工箇所に散布されるべきアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを、両者の散布時間を少なくとも一部重複させて散布することをいい、同時期に散布された結果、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とは同時に路面上又は表面処理層上の同一箇所に到達してそこで出会うか、若しくは空中で出会い、接触、混合することとなる。
【0022】
本発明の凍結抑制表面処理工法においては、結合材としてのアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とが相前後して若しくは同時期に散布されるので、散布されたアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とは路面上又は表面処理層上若しくは空中で出会い、接触、混合し、分解補助剤の作用によって結合材であるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解は促進され、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤による製膜時間、硬化時間は短縮される。本発明の凍結抑制表面処理工法においては、結合材としてのアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを相前後して散布しても、又は、同時期に散布しても良いが、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の硬化時間を短縮し、しかも強度や耐久性に優れた表面処理層を構築するという観点からは、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを同時期に散布するのが良く、更には、同時期に散布して、両者を空中で衝突させるのが最も好ましい。
【0023】
アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを同時期に散布して両者を空中で衝突させる場合、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤の散布を、それぞれ1又は2以上のスプレーノズルを用いて行い、1のスプレーノズルから噴射されるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と、1のスプレーノズルから噴射される分解補助剤とを、空中で衝突させるのが好ましい。また、個々のスプレーノズルから噴射される分解補助剤の衝突位置における広がり幅が、衝突相手である対応するスプレーノズルから噴射されるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の衝突位置における広がり幅とほぼ一致しているのが望ましく、更には、個々のスプレーノズルから噴射される分解補助剤のアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤との衝突位置上での噴射密度が、衝突位置における広がり幅の全体において、ほぼ均一であるのが良い。このようにすることによって、結合材であるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを均一に、かつ制御された割合で衝突、接触、混合させることが可能となり、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解・硬化時間がより短縮されると共に、得られる表面処理層の耐久性や強度にも良い影響がもたらされる。
【0024】
また、本発明においては、主骨材としては、骨材の最小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で10mm未満の場合には、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び寸法で2mm以上、5mm未満の骨材を、また、最小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で10mm以上の場合には、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び寸法で3mm超、6mm以下の骨材を使用するのが好ましい。このような規制された粒度を持った骨材を主骨材として使用すれば、更に強固で耐摩耗性や耐久性に富み且つ安定性に優れた凍結抑制表面処理層を構築することができる。しかしながら、路面の状況等によっては、このような粒度の規制に拘わらず、種々の粒度分布をもった骨材を主骨材として使用できることは言うまでもない。
【0025】
本発明の構築方法においては、結合材の散布から骨材の散布までの時間は、比較的短い一定の時間間隔であるのが望ましい。結合材は、路面に散布された直後から、温度が下がったり、分解が進行したりするものであるが、結合材の散布から骨材の散布までの時間が不規則に変化すると、骨材が散布される時点での結合材の状態も不規則に変化することになり、結果として、均一で耐久性に優れた表面処理層が得られない。結合材の散布から骨材の散布までの時間を比較的短い一定の時間間隔に維持するには、少なくとも結合材の散布装置と骨材の散布装置とを搭載した作業車を用いて施工するのが望ましい。そのような作業車としては、例えば、同じ出願人による特願平11−145614号明細書、特願平11−145612号明細書、特願平10−172107号明細書、特願平10−172119号明細書、及び、特願平10−177986号明細書に開示したような作業車が挙げられる。また、そのような作業車に、更に、分解補助剤の散布装置を搭載することにより、結合材と同時又は相前後して分解補助剤を散布し、続いて、比較的短い一定の時間間隔をおいて骨材を散布することが容易に可能となる。
【0026】
本発明の構築方法は、一般道路に限らず、自動車専用道路、構内道路、公園内道路、散策路、自転車道、運動場、駐車場、飛行場、港湾施設、公会堂等に付帯する広場、広幅員の歩道等の舗装にも適用されるものであり、その用途も凍結抑制能の付与と補修とを兼ねるのみならず、新設工事における凍結抑制表面処理層の構築にも使用することが可能である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0028】
まず、使用材料について説明する。
〈結合材〉
本発明で使用する散布式表面処理工法に使用する結合材としては、アスファルトやその乳剤、実質的に無色の人工アスファルトやその乳剤、樹脂、塗料、舗装タール、カットバックアスファルト等が挙げられる。
【0029】
使用されるアスファルトとしては、レーキアスファルト等の天然アスファルト、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、溶剤脱瀝アスファルト(例えば、プロパン脱瀝アスファルト)等の石油アスファルトが挙げられ、これらのアスファルトは単独で使用しても、2種以上を混合して使用しても良い。なお、本明細書で、改質されたアスファルトや乳化されたアスファルト乳剤、更には、改質乳化された改質アスファルト乳剤などとの対比でアスファルトという場合を除いて、単に「アスファルト」という場合には、改質された改質アスファルト、乳化されたアスファルト乳剤、改質及び乳化された改質アスファルト乳剤を含むものとする。
【0030】
本発明で使用する実質的に無色の人工アスファルトとは、人為的に調製された結合材であって、アスファルトと同じように使用することができ、実質的に無色のものである。なお、「実質的に無色」とは、併用される骨材が本来有している色彩や光反射性、光輝性、蛍光性、蓄光性などの特性や、必要に応じて混合される顔料の色彩を損なわない程度に無色ということであって、必ずしも、完全に透明である必要はなく、半透明であっても、若干の飴色を有していても良い。また、本発明で使用する実質的に無色の人工アスファルトは、反応や分解が進んで結合材としての所定の強度を発現する段階で実質的に無色であれば良く、例えば乳化剤によって乳化して人工アスファルト乳剤として存在するときに白色や飴色等の色を有していても、分解して結合材としての強度を発現する段階で実質的に無色になるものであれば、当然に本発明の範囲内のものである。そして、以上のような条件が満たされさえすれば、実質的に無色の人工アスファルトはどのようなものであっても、また、どのように調製されたものであっても良いが、本発明で使用する人工アスファルトの一例としては、例えば、石油系配合油及び/又は潤滑油と粘着付与剤樹脂とを、重量百分率で、石油系配合油及び/又は潤滑油:粘着付与剤樹脂=(60〜85%):(40〜15%)の割合で配合したものがある。石油系配合油と潤滑油とは、どちらか一方だけを用いても良く、また、両者を併用しても良い。従って、石油系配合油及び/又は潤滑油の量は、どちらか一方だけを使用する場合にはその使用するどちらか一方の量を、また、両者を併用する場合には両者の合計量を表すこととなる。石油系配合油及び/又は潤滑油の割合が、60重量%未満であると、得られる結合材の粘度が高くなりすぎて作業性が低下する。一方、石油系配合油及び/又は潤滑油の割合が85重量%を越えると、粘度は低下するものの接着性及び粘着性が低下して好ましくない。このような配合で得られる人工アスファルトは実質的に無色であって、例えば有色の骨材などと共に使用しても骨材本来の色調を損なうことがなく、骨材本来の色調が十分に発揮されるものであり、本発明において使用するのに好適である。
【0031】
この人工アスファルトは、上記成分以外に、接着性や結合性を高めるために種々のゴムや熱可塑性高分子重合物を添加したり、その他、一般に使用されている粘着付与剤を添加して改質することも可能である。また、従来のアスファルトと同様に乳化することも可能である。本明細書で、改質された改質人工アスファルトや乳化された人工アスファルト乳剤、更には、改質人工アスファルト乳剤などとの対比で人工アスファルトという場合を除いて、単に「人工アスファルト」という場合には、改質されたものや乳化されたもの、更には改質及び乳化されたものを含むものとする。なお、本発明で使用する人工アスファルトは、種々の有機系及び無機系の顔料を添加、混合して、着色して使用することも好適である。
【0032】
本発明で使用する人工アスファルトに使用する石油系配合油とは、プロセスオイルとも呼ばれ、芳香族炭素数が全炭素数の35%以上である芳香族系、ナフテン環炭素数が全炭素数の30〜45%であるナフテン系、及び、パラフィン側鎖炭素数が全炭素数の50%以上であるパラフィン系などがあり、本発明においては、これらのうちの1種若しくは2種以上が適宜使用される。
【0033】
本発明で使用する潤滑油としては、石油系潤滑油、合成潤滑油、脂肪油などが挙げられ、これらはそのうちの1種又は2種以上が適宜使用できるが、合成潤滑油を用いるのが最も好ましい。
【0034】
石油系潤滑油とは、原油の常圧蒸留の蒸留残油として得られる沸点およそ300℃以上の重油を、真空蒸留によって各種流出油と残油に分け、それぞれに、例えば、脱ロウ、硫酸処理、溶剤抽出、脱アスファルト、白土処理などの適当な精製処理を行い、最終製品に仕上げたものである。
【0035】
合成潤滑油とは、有機合成法によって製造される潤滑油で、一般に用途によって区分けされ、例えば、スピンドル油、コンプレッサ油、ダイナモ油、タービン油、マシン油、エンジン油、シリンダー油、ジェットエンジン油、作動油などが挙げられる。
【0036】
脂肪油とは、主として石油系潤滑油に混合し、混成潤滑油として油性あるいは乳化性を必要とする用途に使用されるものである。
【0037】
本発明で使用する粘着付与剤樹脂としては、天然系樹脂及び合成系樹脂のいずれをも使用することができるが、天然系樹脂ではテルペン樹脂を、また、合成系樹脂では石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂などの重合系樹脂を使用するのが好ましく、更に好ましくは、合成系樹脂の1種である石油樹脂を使用するのが良い。石油樹脂としては、ナフサ分解生成物の蒸留により分離される沸点が20〜60℃の留分(C5留分)を主成分とする脂肪族系(C5系)石油樹脂、同じくナフサ分解生成物の蒸留により分離される沸点が160〜260℃の留分(C9留分)を主成分とする芳香族系(C9系)石油樹脂、これらC5系及びC9系石油樹脂を共重合させた脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、及び、主としてナフサ分解生成物の蒸留により分離される高純度のジシクロペンタジエンを主成分とする脂環族系(DCPD系)石油樹脂、テルペン類とフェノール類を共重合させたテルペンフェノール樹脂などがあり、本発明においてはこれらのうちの1種若しくは2種以上が混合して使用される。
【0038】
上記アスファルト及び人工アスファルトは、ゴム又は熱可塑性高分子重合物などで改質して、結合力ないしは付着力を増すのが望ましい。改質に使用するゴム及び熱可塑性高分子重合物としては、天然ゴム、ガタバーチャ、環化ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンゴム、イソプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、EPTゴム、アルフィンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合ゴム、スチレン・イソプレンブロック共重合ゴムなどのゴム、及び、エチレン・酢酸ビニール共重合物、エチレン・エチルアクリレート共重合物、ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリ酢酸ビニール、塩化ビニール・酢酸ビニール共重合物、酢酸ビニール・アクリレート共重合物等の熱可塑性高分子重合物が挙げられる。これらのゴムまたは熱可塑性高分子重合物は、1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0039】
改質アスファルト中のアスファルト、若しくは、改質人工アスファルト中の人工アスファルトと、ゴム及び熱可塑性高分子重合物との配合割合は、アスファルト又は人工アスファルト100重量部に対してゴム及び熱可塑性高分子重合物が、通常、2〜20重量部の範囲が好ましい。ゴム及び熱可塑性高分子重合物の量が2重量部未満では、改質アスファルトないしは改質人工アスファルトとしての性能を発揮することができず、骨材間、骨材と路面間の接着力や把握力が一般のアスファルトないしは人工アスファルトと余り変わらないのに対して、ゴム及び熱可塑性高分子重合物の量が20重量部を越えると、凝集力が強過ぎて、返って骨材からの剥離が生じ、骨材の飛散を起こし易い。なお、本発明の結合材として使用されるアスファルト、人工アスファルト、改質アスファルト中のアスファルト、ないしは改質人工アスファルト中の人工アスファルトとしては、使用後の特性を考慮して、針入度(25℃)が50〜150(1/10mm)程度のものを使用するのが好ましい。
【0040】
本発明の結合材として使用される上記のアスファルト、人工アスファルト、改質アスファルト、ないしは改質人工アスファルトには、更に、粘着付与剤として、熱可塑性固形樹脂や固形状ゴム、液状樹脂、軟化剤、可塑剤などを添加することができる。添加される粘着付与剤としては、例えば、ロヂンとその誘導体、テルペン樹脂、石油樹脂とその誘導体、アルキッド樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、合成テルペン樹脂、アルキレン樹脂、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリブデン、イソブチレンとブタジエンの共重合物、鉱油、プロセスオイル、パイン油、アントラセン油、松根油、動植物油、重合油、可塑剤等が挙げられる。また、老化防止剤や酸化防止剤、硫黄等も添加することができる。
【0041】
本発明の結合材として使用されるアスファルト乳剤或いは人工アスファルト乳剤とは、レーキアスファルト等の天然アスファルト、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、溶剤脱瀝アスファルト(例えば、プロパン脱瀝アスファルト)等の石油アスファルト、重油、タール、ピッチ等の1種、または2種以上を混合した瀝青物、或いは人工アスファルトを、各種界面活性剤やクレー(例えばベントナイト)などの乳化剤を用い、さらには、アルカリ、酸、塩、分散剤、保護コロイドなどを必要に応じて添加して、コロイドミル、ホモジナイザー、ホモミキサーなどの適当な乳化機によって、水中に乳化させたものである。
【0042】
乳化剤としては、カチオン系、アニオン系、両性系のいずれをも用いることができる。
【0043】
本発明で使用できるカチオン系の乳化剤としては、長鎖アルキル基を有する脂肪族あるいは脂環族のモノアミン、ジアミン、トリアミン、アミドアミン、ポリアミノエチルイミダゾリン、長鎖ヒドロキシアルキルジアミン、ロジンアミン、これらアミン類の酸化エチレン付加物、アミンオキサイド、または、これらのアミン系界面活性剤に塩酸、スルファミン酸、酢酸などの酸を作用させた水溶性ないし水分散性の塩、さらには、これらのアミン系界面活性剤の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。また、これらの界面活性剤と共に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコーポリマーなどのノニオン系界面活性剤を併用することもできる。
【0044】
本発明で使用できるアニオン系の乳化剤としては、高級アルコール硫酸エステル、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、αオレフィンスルホン酸塩、高級アルコールエトオキシレート、高級アルコールエトオキシレートサルフェート、石鹸、ナフタリンスルホン酸塩およびホルマリン変性物、アルカリリグニン塩、リグニンスルホン酸塩、カゼインのアルカリ塩、ポリアクリル酸塩等が挙げられる。
【0045】
本発明で使用できる両性系の乳化剤としては、アルキルフェノール、モノおよび多価アルコール酸、脂肪族類、脂肪族アミン類、脂肪族アミド類、エタノールアミン類等のアルキレンオキシドの付加物、などが挙げられる。
【0046】
また、アスファルト乳剤に用いられる分散剤や保護コロイドとしては、ナフタリンスルホン酸ソーダ、カゼイン、アルギン酸、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、リグニンスルホン酸塩、ニトロフミン酸塩等が挙げられる。
【0047】
本発明の結合材として使用されるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤は、上記乳化分散される瀝青物に、ゴム及び熱可塑性高分子重合物から選ばれる1種もしくは2種以上を加えて改質した改質アスファルト乳剤若しくは改質人工アスファルトとして使用するのが望ましい。
【0048】
改質に使用するゴム及び熱可塑性高分子重合物としては、天然ゴム、ガタバーチャ、環化ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンゴム、イソプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、EPTゴム、アルフィンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合ゴム、スチレン・イソプレンブロック共重合ゴムなどのゴム、及び、エチレン・酢酸ビニール共重合物、エチレン・エチルアクリレート共重合物、ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリ酢酸ビニール、塩化ビニール・酢酸ビニール共重合物、酢酸ビニール・アクリレート共重合物等の熱可塑性高分子重合物が挙げられる。これらのゴムまたは熱可塑性高分子重合物は、1種または2種以上を併用して用いることができる。これらのゴム及び熱可塑性高分子重合物は、例えば、粉末状、ラテックス状、エマルジョン状、水性状のものであり、ラテックス状、エマルジョン状、水性状のものは、主として、ポストミックスタイプの方法によるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤に専ら使用されるが、プレミックスタイプの方法によるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤に使用しても良い。
【0049】
本発明の結合材として使用される上記のアスファルト乳剤、改質アスファルト乳剤、人工アスファルト乳剤、改質人工アスファルト乳剤には、更に、粘着付与剤として、熱可塑性固形樹脂や固形状ゴム、液状樹脂、軟化剤、可塑剤などを添加することができる。添加される粘着付与剤としては、例えば、ロヂンとその誘導体、テルペン樹脂、石油樹脂とその誘導体、アルキッド樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、合成テルペン樹脂、アルキレン樹脂、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリブデン、イソブチレンとブタジエンの共重合物、鉱油、プロセスオイル、パイン油、アントラセン油、松根油、動植物油、重合油、可塑剤等が挙げられる。また、老化防止剤や酸化防止剤、硫黄等も添加することができる。さらにまた、粘度調整の目的で、MC、CMC、HEC、PVA、ゼラチンなどの水溶性高分子保護コロイドを添加することも可能である。
【0050】
改質アスファルト乳剤中のアスファルト、若しくは、改質人工アスファルト乳剤中の人工アスファルトと、ゴム及び熱可塑性高分子重合物との配合割合は、アスファルト若しくは人工アスファルト100重量部に対してゴム及び熱可塑性高分子重合物が、2〜20重量部、好ましくは、3〜7重量部の範囲である。ゴム及び熱可塑性高分子重合物の量が2重量部未満では、改質アスファルト乳剤若しくは改質人工アスファルト乳剤が分解、硬化した後における骨材に対する接着力や把握力にゴム及び熱可塑性高分子重合物を加えた効果が余り見られないのに対して、ゴム及び熱可塑性高分子重合物の量が20重量部を越えると、凝集力が強過ぎて、返って骨材からの剥離が生じ、骨材の飛散を起こし易い。また、本発明で結合材として使用されるアスファルト乳剤及び改質アスファルト乳剤中のアスファルト、又は、人工アスファルト乳剤及び改質人工アスファルト乳剤中の人工アスファルトとしては、分解、硬化した後の特性を考慮して、針入度(25℃)が50〜150(1/10mm)程度のものを使用するのが好ましい。
【0051】
本発明で結合材として使用されるアスファルト乳剤、改質アスファルト乳剤、人工アスファルト乳剤及び改質人工アスファルト乳剤の蒸発残留分(固形物)は、通常、30〜70重量%程度が好ましく、特に、50〜68重量%のものが更に好ましい。蒸発残留分が30重量%未満では、決して使用できないという訳ではないが、結合材として必要な程度の粘弾性を得ることが難しく、一方、蒸発残留分が70重量%を越えると、これも決して使用できないという訳ではないが、良好な施工性を確保しづらい傾向がある。
【0052】
また、これらのアスファルト乳剤、改質アスファルト乳剤、人工アスファルト乳剤及び改質人工アスファルト乳剤には、耐熱性向上や、紫外線等による劣化防止、作業性向上、並びに接着性向上等の目的で、紫外線吸収剤や、各種添加剤、粘度調整剤などを添加しても良い。
【0053】
なお、上記のような人工アスファルトには、有機系及び/又は無機系の顔料を適宜加えて着色することも可能である。例えば、使用する骨材と同系統に着色した人工アスファルトを使用することによって、骨材の明色性を一層高めることも可能である。使用する無機系顔料としては、例えば、以下に示す顔料、即ち、
白色:二酸化チタン、酸化亜鉛、鉛白
黒色:鉄黒、黒鉛、カーボンブラック
赤色:カドミウムレッド
橙色:モリブデンオレンジ
黄色:水酸化第二鉄、酸化黄、黄鉛
緑色:酸化クロム、クロムグリーン
青色:群青、紺青、コバルトブルー
紫色:マンガンバイオレット
などが挙げられる。
【0054】
また、有機系の顔料としては、
赤色:ウオッチングレッド、キナクリドンレッド
橙色:パーマネントオレンジ
黄色:ファストイエロー
緑色:フタロシアニングリーン
青色:フタロシアニンブルー
紫色:ジオキサジンバイオレット
などが挙げられる。
【0055】
これらの顔料は、1種又は2種以上を組み合わせて併用しても良い。また、これら顔料の使用量は、人工アスファルト100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは、3〜100重量部である。
【0056】
本発明で結合材として使用する樹脂や塗料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、瀝青変性エポキシ樹脂、瀝青変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタアクリレート樹脂等の反応性結合材を用いることができる。また、これらの樹脂を使用した塗料や、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、アルキッド樹脂(メラミン樹脂やフェノール樹脂で変性したものを含む)等の樹脂を使用した塗料、更には、合成ゴムと合成樹脂とを主成分とする塗料等も使用できる。
【0057】
以上のような結合材は、結合材若しくは結合材中の蒸発残留物が、以下のa)〜d)に示す特性、即ち、
a)針入度が50〜150(1/10mm)、
b)軟化点が50〜120℃、
c)25℃におけるタフネスが70〜320kgf・cm、
d)25℃におけるテナシティが30〜300kgf・cm、
を有するものが良く、望ましくは、以下のa’)〜d’)に示す特性、即ち、
a’)針入度が70〜125(1/10mm)、
b’)軟化点が55〜100℃、
c’)25℃におけるタフネスが90〜250kgf・cm、
d’)25℃におけるテナシティが50〜220kgf・cm、
を有するものであり、更に望ましくは、以下のa’’)〜d’’)に示す特性、即ち、
a’’)針入度が90〜120(1/10mm)、
b’’)軟化点が60〜80℃、
c’’)25℃におけるタフネスが100〜200kgf・cm、
d’’)25℃におけるテナシティが70〜180kgf・cm、
を有するものである。なお、結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤中の蒸発残留物が上記の特性を有することが望ましいこととなる。
【0058】
結合材若しくは結合材中の蒸発残留物の針入度が50(1/10mm)未満では、結合材(結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解後のアスファルト若しくは人工アスファルト)が硬くなりすぎてしまうので好ましくなく、逆に、針入度が150(1/10mm)超では、結合材(結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解後のアスファルト若しくは人工アスファルト)が軟らかくなりすぎてしまうので好ましくない。
【0059】
結合材若しくは結合材中の蒸発残留物の軟化点が50℃未満では、結合材(結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解後のアスファルト若しくは人工アスファルト)が、夏季等の高温下の路面においてフラッシュ現象を起こし易く、べたつき易いので好ましくなく、逆に、軟化点が120℃超では、結合材(結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解後のアスファルト若しくは人工アスファルト)に柔軟性が不足し、好ましくない。
【0060】
また、結合材若しくは結合材中の蒸発残留物の25℃におけるタフネスが70kgf・cm未満では、結合材(結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解後のアスファルト若しくは人工アスファルト)に粘りが不足し、腰が弱くなりすぎるので好ましくなく、逆に、タフネスが320kgf・cm超では、結合材(結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解後のアスファルト若しくは人工アスファルト)が、粘りがありすぎ、腰が強くなりすぎるので、交通荷重に対してもろくなる傾向が出てくるので好ましくない。
【0061】
更には、結合材若しくは結合材中の蒸発残留物の25℃におけるテナシティが30kgf・cm未満では、結合材(結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解後のアスファルト若しくは人工アスファルト)に伸びがなくなってしまうので好ましくなく、逆に、テナシティが300kgf・cm超では、結合材(結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解後のアスファルト若しくは人工アスファルト)の伸びが大きくなりすぎてしまうので好ましくない。
【0062】
ここで、針入度及び軟化点はJISK2207に規定されるものであり、タフネス及びテナシティは「舗装試験法便覧」、社団法人日本道路協会、平成7年6月10日発行、第456〜461頁の「タフネス・テナシティ試験方法」に基づいて測定されるものである。
【0063】
〈分解補助剤〉
本発明で使用する分解補助剤としては、結合材として使用するアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解を促進することができるものであればどのようなものを使用しても良く、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤がカチオン系のものである場合には、アニオン系乳化剤、アルカリ性無機塩、アニオン系高分子凝集剤、アニオン系アスファルト乳剤、及び、アニオン系ラテックスからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上の分解補助剤を使用することができる。
【0064】
使用できるアニオン系乳化剤としては、石鹸などのカルボン酸塩系のもの;高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエトキシレートサルフェート等の高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィンなどの硫酸エステル塩系のもの;アルキルアリルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩のホルマリン変性物、リグニンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウムやアルキルベンゼンスルホン酸ソーダやアルキルベンゼンスルホン酸カリ等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ジ・オクチル・スルホ・コハク酸ソーダ等のジ・オクチル・スルホ・コハク酸の金属塩、アルキルメチルタウリン酸ナトリウム等のアルキルメチルタウリン酸の金属塩などのスルホン酸塩系のもの;リン酸エステル塩系のものなどの合成脂肪酸塩や、リグニンなどのスルホン酸塩系並びにロジン及びトール油などのカルボン酸塩系などの天然脂肪酸塩が挙げられる。
【0065】
使用できるアルカリ性無機塩としては、苛性ソーダなどのソーダ塩、尿素、重炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩などが挙げられ、その他、高級アルコールエトオキシレート、アルカリリグニン酸、カゼインのアルカリ塩、ポリクリル酸なども本発明において分解補助剤として使用できる。
【0066】
以上のような分解補助剤は、そのうちの1種または2種以上を使用することができるが、中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム、アルキルベンゼンスルホン酸カリなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、又は、アルキルメチルタウリン酸ナトリウム、ジ・オクチル・スルホ・コハク酸ソーダを使用するのが、硬化速度が早く、しかも強度及び耐久性に優れた表面処理層が得られるので好ましく、更には、これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム、アルキルベンゼンスルホン酸カリなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩を用いるのが更に好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩の中では、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダを用いるのが最も好ましい。
【0067】
以上のようなカチオン系のアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤に対する分解補助剤は水溶液の状態で使用するのが望ましく、その濃度は、通常、1.5〜30w/w%の範囲が良い。分解補助剤の水溶液濃度が1.5w/w%未満では、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解を促進する効果が期待できず、また、分解補助剤の水溶液濃度が30w/w%を超えると、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解速度が速くなり過ぎて施工作業に支障を来すようになる。
【0068】
本発明において、結合材であるカチオン系のアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤に対して接触、混合せしめられる分解補助剤の割合は、カチオン系のアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤中の蒸発残留分100重量部に対して、分解補助剤の水溶液中の有効成分量として、0.4〜4.0重量部の範囲が好ましい。分解補助剤の水溶液中の有効成分量が0.4重量部未満では、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解を促進する効果が期待できず、4.0重量部を超えるとアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解速度が速くなり過ぎて施工作業に支障を来すようになる。
【0069】
一方、結合材としてアニオン系アスファルト乳剤若しくはアニオン系人工アスファルト乳剤を使用する場合には、分解補助剤としては、塩化カルシウムなどの二価の無機塩;塩酸、蟻酸、燐酸などの無機酸;酢酸、クエン酸などの有機酸;ロジンアミン、アミン類の酸化エチレン付加物、アルキルモノアミン塩酸塩又は酢酸塩、アルキルジアミン塩酸塩又は酢酸塩、アルキルトリアミン塩酸塩又は酢酸塩などのアルキルアミン類;ジアミド、アミドアミンなどのアミドアミン類の塩酸塩又は酢酸塩;ポリアミノエチルイミダゾリンなどのイミダゾリン類の塩酸塩又は酢酸塩;長鎖アルキル基を有する脂肪環族のモノアミンやジアミンやトリアミンの塩酸塩又は酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン類の塩酸塩又は酢酸塩;アミン化リグニン類の塩酸塩又は酢酸塩;アミン系カチオン界面活性剤に塩酸、スルファミン酸、酢酸などの酸を作用させた水溶性ないし水分散性の塩;アミンオキサイド類の塩酸塩又は酢酸塩;更には、アミン系カチオン界面活性剤の第4級アンモニウム塩類などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を分解補助剤として使用することができる。中でも、アルキルモノアミン塩酸塩又は酢酸塩、アルキルジアミン塩酸塩又は酢酸塩、アルキルトリアミン塩酸塩又は酢酸塩などのアミン系カチオン界面活性剤の水溶性の塩を使用するのが好ましい。また、これらの分解補助剤と共に、エキシエチレン・オキシプロピレンブロックコーポリマーなどのノニオン系界面活性剤を併用することもできる。
【0070】
また、結合材としてノニオン系のアスファルト乳剤若しくはノニオン系の人工アスファルト乳剤を使用する場合には、分解補助剤としては、高分子凝集剤を使用するのが望ましく、高分子凝集剤としては、分子量が約1000〜数万である低重合度のものとして、アルギン酸ナトリウムなどの陰イオン性の高分子凝集剤;水溶性アニリン樹脂塩酸塩、ポリチオ尿素酢酸塩、ポリエチレンアミノトリアゾール、ポリビリルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、キトサンなどの陽イオン性の高分子凝集剤;でんぷん、水溶性尿素樹脂などの非イオン性の高分子凝集剤;ゼラチンなどの両性の高分子凝集剤などが挙げられ、分子量が数十万〜数百万の高重合度のものとして、ポリアクリル酸ナトリウム、マレイン酸共重合物塩、ポリアクリルアミド部分加水分解塩などの陰イオン性の高分子凝集剤;ポリエチレンアミン、ビニルビニルピリジン共重合物塩などの陽イオン性の高分子凝集剤;ポリアクリルアミド、ポリオキシエチンなどの非イオン性の高分子凝集剤などが挙げられる。以上のような高分子凝集剤は、そのうちの1種もしくは2種以上が使用される。
【0071】
以上のようなアニオン系又はノニオン系のアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤に対する分解補助剤は水溶液の状態で使用するのが望ましく、その濃度は、通常、1.5〜20w/w%の範囲が良い。分解補助剤の水溶液濃度が1.5w/w%未満では、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解を促進する効果が期待できず、また、分解補助剤の水溶液濃度が20w/w%を超えると、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解速度が速くなり過ぎて施工作業に支障を来すようになる。
【0072】
本発明において、結合材であるアニオン系またはノニオン系のアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤に対して接触、混合せしめられる分解補助剤の割合は、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤中の蒸発残留分100重量部に対して、分解補助剤の水溶液中の有効成分量として、0.05〜0.5重量部の範囲が好ましい。分解補助剤の水溶液中の有効成分量が0.05重量部未満では、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解を促進する効果が期待できず、0.5重量部を超えるとアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解速度が速くなり過ぎて施工作業に支障を来すようになる。
【0073】
〈主骨材〉
本発明で使用する硬質の主骨材とは、いずれも硬質のゴム片、ゴム粒、コルク片、コルク粒、合成樹脂粒等であって、材質的には、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴムや、廃タイヤゴムなどが挙げられる。更には、社団法人日本道路協会発行の「アスファルト舗装要綱」に記載されている、砕石、玉石、砂利、鉄鋼スラグ、人工焼成骨材、焼成発泡骨材、人工軽量骨材、陶磁器粒、ルクソバイト、アルミニウム粒、プラスチック粒、セラミックス、エメリー、建設廃材等も、硬質のものであれば主骨材として使用することができる。
【0074】
主骨材は、後述するように、骨材の最小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で10mm未満の場合には、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び寸法で2mm以上、5mm未満の骨材を、また、最小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で10mm以上の場合には、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び寸法で3mm超、6mm以下であるのが望ましい。なお、本明細書で言う「ふるいの目開きの呼び寸法」とは、ふるいを呼び表すときに慣用されている呼び寸法であって、JIS Z8801に定められている網ふるいの目開きの基準寸法とは、表1に示すような対応関係にある。
【0075】
【表1】
Figure 0004199386
【0076】
即ち、本明細書で、骨材の最小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で10mm未満とは、その骨材がJIS Z8801で規定する網ふるいの目開きの基準寸法が9.5mmのふるいを通過する骨材粒を含んでいることを意味し、骨材の最小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で10mm以上とは、その骨材がJIS Z8801で規定する網ふるいの目開きの基準寸法が9.5mmのふるいを通過する骨材粒を含んでいないことを意味する。また、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び寸法で2mm以上とは、最小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で5mmの場合、その骨材の集団の最大粒径のものは、5mmよりも2mm以上大きな呼び寸法をもつふるい、即ち、7mmの呼び寸法をもつふるいを少なくとも通過する一方で、それよりも小さな6mmの呼び寸法をもつふるいを通過しなことを意味し、また、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び寸法で5mm未満とは、最小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で5mmの場合、その骨材の集団の最大粒径のものは、5mmよりも5mm未満の呼び寸法をもつふるい、即ち、8mmの呼び寸法をもつふるいを通過するということを意味する。同様に、最小粒径と最大粒径との差がふるいの目開きの呼び寸法で3mm超、6mm以下とは、最小粒径がふるいの目開きの呼び寸法で10mmの場合、その骨材の集団の最大粒径のものは、少なくとも、10mmよりも3mm大きな呼び寸法のふるい、即ち、呼び寸法13mmのふるいを通過せず、10mmよりも6mm大きな呼び寸法をもつふるい、即ち、呼び寸法16mmのふるいを通過するということを意味する。なお、ここで、ふるいを通過するとか、通過しないとか言うのは、いずれも実質的かつ常識的なレベルでの判断であり、部分的にダストのようなものがふるいを通過したり、特異的な粒がふるい上に残ったとしても、骨材の集団全体から見て無視できる場合には、それらのものはふるいを通過するしないの判断には影響を与えないものとする。以下、本明細書では、特に断りのない限り、骨材の粒径や粒度は、ふるいの目開きの呼び寸法によるものとする。
【0077】
なお、本発明で使用する主骨材には、粒径の上限値及び下限値に特に制限はないが、できれば最小粒径が5mm以上、最大粒径が20mm以下のものが好ましい。最小粒径が5mm未満では、骨材の粒径が小さ過ぎ、有効な凍結抑制表面処理層が構築されない恐れがある。また、散布した結合材が路面上に形成する結合材散布層の層厚に、主骨材自身の敷き均し厚さが限りなく近づき、場合によると結合材の層厚よりも主骨材の敷き均し厚が小さくなって、フラッシュの原因の一つともなる。一方、最大粒径が20mmを越えると、施工後の路面が粗面になるばかりでなく、車両が表面処理層の上を走行することによって、骨材の飛散が生じる場合があり、好ましくない。
【0078】
〈副骨材〉
本発明で使用する軟質の副骨材とは、いずれも軟質のゴム片、ゴム粒、コルク片、コルク粒、合成樹脂粒等であって、材質的には、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴムや、廃タイヤゴムなどが挙げられる。
【0079】
副骨材の粒度に特に制限はないが、主骨材の間隙や主骨材と路面との間隙を埋める関係上、通常、主骨材よりも小径のものを使用するのが望ましく、また、既に散布されている主骨材と副骨材との間隙や副骨材同士の間隙を埋める関係上、後に散布されるものほど小さな粒径であることが望ましい。そして、最後に最上層として散布される副骨材としては、細目砂、中目砂、そして粗目砂や粒径2.5〜5mmの7号砕石程度の粒径のものを使用するのが好ましい。また、通常、副骨材は比較的単粒度のものを1回又は2回以上散布するのが好ましいが、場合によっては、連続粒度のものを1回に散布するようにしても良い。
【0080】
次に、本発明の凍結抑制表面処理層の構築方法について図を用いて説明する。
【0081】
図1に示すように、まず、施工路面1を図示しないロードスイーパーで清掃した後、結合材2を散布する。結合材2を散布するに先立って、水又はプライマーを散布するようにしても良い。水は、例えば、結合材2としてアスファルト乳剤を使用する場合などに、アスファルト乳剤と路面との接着性やなじみ性を増強するために散布され、夏季には上昇した路面温度を下げる効果もある。一方、プライマーは、結合材2として例えば加熱アスファルトを使用する場合に用いられ、加熱アスファルトと路面との接着性やなじみ性などを増強する効果がある。結合材2の散布量は、骨材が路面に結合される限り特に制限はないが、通常、一層当たり、60〜250(リットル/100m)の範囲が好ましい。結合材量が60(リットル/100m)未満では、路面と骨材及び骨材と骨材間の結合力、接着力が不足する可能性があり、逆に、250(リットル/100m)を越えると、フラッシュ現象の原因となる。また、結合材の散布量は、骨材の粒径に応じて変化し、一般には、粒径の大きな骨材を使用する場合ほど結合材の散布量は多くなる。結合材がアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤である場合には、結合材の散布と同時又は相前後して分解補助剤を散布するのが望ましい。
【0082】
結合材2の散布後、散布された結合材上に主骨材3を散布する。なお、結合材2を散布せずに、直接、主骨材3を散布するようにしても良い。主骨材3の一層当たりの散布量は、0.4〜2.5(m/100m)の範囲が好ましい。主骨材3の散布量が0.4(m/100m)未満であると、フラッシュ現象の原因となり、逆に、2.5(m/100m)を越えると、余剰の主骨材が浮石となって車両の通行を妨げるばかりでなく、歩行者にとっても歩行しづらい路面となる。また、主骨材の散布量は、粒径の大きい主骨材ほど多目に散布するのが望ましい。なお、主骨材は、通常、常温で散布されるが、使用する骨材の種類によっては、100〜170℃に加熱した状態で散布するようにしても良い。
【0083】
続いて、結合材2を散布して、その上から、主骨材よりも小径の第1の副骨材4−1を散布する。結合材2を散布する前に、主骨材3の散布面を軽く転圧しても良い。結合材2及び副骨材4−1の散布量は、最初の工程における結合材2及び主骨材3とそれぞれ同じであっても良いが、通常は、使用する骨材の粒径及び/又は既設路面の損傷程度に応じて適宜変更される。続いて、必要に応じて散布面を軽く転圧した後、更に結合材2を散布し、第1の副骨材4−1よりも小径の第2の副骨材4−2を散布する。第1の副骨材4−1によって、十分に緻密な表面処理層が構築できると判断される場合には、この第2の副骨材4−2とそれを結合するための結合材2の散布は不要である。この工程における結合材2及び副骨材4−2の散布量は、最初の工程における結合材2及び主骨材3と、それぞれ同じであっても良いが、通常は、使用する骨材の粒径及び/又は既設路面の損傷程度に応じて適宜変更される。以降、同様にして、結合材の散布と副骨材の散布とを必要な回数だけ繰り返して、凍結抑制表面処理層を構築する。最後に、散布面を転圧し、ロードスイーパーによって浮石を除去して交通に開放する。
【0084】
図2は、交通供用後、しばらく経過した後の凍結抑制表面処理層の状態を模式的に示したもので、図1と同じものには同じ符号を付してある。図2に示すように、主骨材3同士の間隙、及び、主骨材3と路面1との間隙に、第1の副骨材4−1が入り込み、骨材相互の咬み合わせを強固なものとしている。一方、第2の副骨材4−2は、第1の副骨材4−1同士の間隙や第1の副骨材4−1と主骨材3との間隙、更には、その一部は主骨材3と路面1との間隙などに入り込み、構築された表面処理層をより緻密なものとし、また、主として表面処理層の表面に多く分布して、保護層としても機能している。車両が走行することによって、主骨材3間の副骨材部分が車両荷重によって変形し、もしもその上部に結氷層が存在する場合には、それを破壊する。また、結氷層が存在しない場合には、主骨材3間の副骨材部分の弾性によってタイヤとの摩擦音が低減され、騒音抑制効果が得られることとなる。
【0085】
なお、以上のような結合材の散布と主骨材ないしは副骨材の散布とは、できるだけ、一定の短い時間間隔で行われるのが望ましく、そのような施工を容易に可能にする作業車としては、例えば、同じ出願人による特願平11−145614号明細書、特願平11−145612号明細書、特願平10−172107号明細書、特願平10−172119号明細書、及び、特願平10−177986号明細書に開示したような作業車を用いるのが望ましい。これら明細書に開示された作業車においては、結合材の散布装置と骨材の散布位置とが、共に、作業車の前輪より前、前輪と後輪の間、或いは、後輪よりも後ろになるように配置されており、結合材が散布された上に直ちに骨材が散布されるので、作業車のタイヤ若しくはクローラーが散布された結合材上を踏むことがなく、一旦散布された結合材が剥離したり、タイヤ等に付着して他の路面等を汚す恐れがない。しかも、上記明細書に開示されたような作業車にあっては、結合材の散布装置と骨材の散布装置とが共に単一の作業車上に搭載され、それぞれの散布が行われるので、結合材の散布から骨材の散布までを一貫した作業として管理、施工することができ、均一で耐久性に富む安定した表面処理層を構築することが可能である。そのような作業車の例を図3〜図5に示す。
【0086】
図3は、結合材の散布装置と骨材の散布装置とが、共に、作業車前輪よりも前に配置された作業車の例であって、図3において、符号5は作業車、6a、6bは、それぞれ、作業車5の前輪及び後輪、7は結合材の散布装置としてのスプレーノズル、8は骨材の散布装置としての骨材ビン(bin )である。骨材ビンとしては、例えば、同じ出願人による前記特願平11−145614号明細書、特願平11−145612号明細書、特願平10−172107号明細書、特願平10−172119号明細書、及び、特願平10−177986号明細書に開示した作業車に搭載されたようなものを使用する。結合材は、図示しない供給車から符号9で示される搬入ソケットを介して搬入され、搬送ポンプ10によってスプレーバー11へと圧送されて、スプレーノズル7から路面に向かって散布される。結合材用のスプレーノズル7に近接して、分解補助剤用のスプレーノズルを設けたり、結合材用スプレーノズル7に近接して、水又はプライマー用のスプレーノズルを設けることも随時可能である。
【0087】
一方、骨材は、骨材搬送車12から骨材ビン8へ導入され、骨材散布幅調節扉13と骨材搬送ロール14との間から、結合材上に、例えば主骨材3として散布される。なお、15は支持腕、16は骨材搬送車12の後輪を押すプッシュローラー、17はエンジンである。
【0088】
図4は、結合材の散布装置と骨材の散布装置とが、共に、作業車前輪と後輪の間に配置された作業車の例であって、図3と同じものには同じ符号が付してある。図4に示される作業車5は、保温・加熱装置付きの結合材の貯蔵タンク18を備えており、貯蔵タンク18には、図示しない供給車から搬入ソケット9を介して結合材が導入され、例えば、所定の温度に維持された状態で保持される。19は水タンクであり、21はプライマータンクである。結合材は、搬送ポンプ10によってスプレーバー11へと圧送され、スプレーノズル7から路面上に散布される。主骨材などの骨材は、図3の例と同じく、骨材ビン8から、路面上に散布された結合材の層上に散布される。なお、20は骨材搬送車12の後輪を乗せる載置台であり、22は水又はプライマー用のスプレーバー、23はスプレーノズルである。また、24は作業ステップ、25は路面加熱用の加熱装置であり、26は加熱装置25用のエネルギー源である。結合材用のスプレーノズル7に近接して、分解補助剤用のスプレーノズルを設けることも随時可能である。
【0089】
図5は、結合材の散布装置と骨材の散布装置とが、共に、作業車後輪よりも後方に配置された作業車の例であって、図3、図4と同じものには同じ符号が付してある。結合材は、図示しない供給車から搬入ソケット9を介して搬入された後、作業車5内の図示しない保温・加熱装置の付いたタンクに一時貯蔵され、スプレーノズル7から路面上に散布される。一方、骨材は、図示しない骨材搬送車から骨材ポッパー27に搬入され、搬送コンベア28に運ばれ、骨材ビン8から散布される。なお、図5の例においては、結合材の散布装置と骨材の散布装置の位置関係は逆にしても良く、骨材を散布した後に結合材を散布することができるようにしても良い。結合材用のスプレーノズル7に近接して、分解補助剤用のスプレーノズルを設けることも随時可能である。
【0090】
また、以上の図3ないし図5に示した作業車において、結合材や分解補助剤、更にはプライマー用のポンプ、配管、スプレーバー、スプレーノズル、及び、骨材ビンなどにも、保温、加熱装置を随時装着しておくことも無論可能である。
【0091】
結合材として二液型の樹脂を使用する場合には、散布直前に両者を混合したものを散布するようにしても良いし、上記のような作業車において、結合材のスプレーノズルから主剤を、水又はプライマー用のスプレーノズルから硬化剤等を散布して、両者を空中乃至は路面上で接触混合するようにしても良い。また、別途、硬化剤用のノズルを設けても良いことは勿論である。
【0092】
骨材の散布後、散布面を転圧する事が望ましく、転圧機としては、例えば、タイヤローラー、鉄輪ローラー、振動ローラーなどの自走式転圧機を使用することができる。最後の層が終了したら、これらの転圧機を用いて当該最終層の散布面を軽く転圧し、最後に、ロードスイーパーによって浮石を除去して交通に開放する。
【0093】
また、本発明の凍結抑制表面処理工法の好ましい一例においては、結合材としてアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と同時期に又は相前後して分解補助剤が路面上に散布される。アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを相前後して路面上に散布する場合、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤をまず路面上又は表面処理層上に散布した後に、その散布面上に分解補助剤を散布するようにしてもよいし、また逆に、分解補助剤をまず路面上又は表面処理層上に散布した後に、その散布面上にアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を散布しても良い。また、更には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを、この順に散布した後に、再度、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を散布するようにしても良いし、分解補助剤とアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤とをこの順に散布した後に、再度、分解補助剤を散布するようにしても良い。
【0094】
いずれにせよ、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とが相前後して路面上又は表面処理層上に散布される結果、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とは路面上又は表面処理層上で出会い、互いに接触して、分解補助剤によるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解促進作用が開始され、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤は、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤単独のときよりも短時間で分解、硬化する。このように本発明の凍結抑制表面処理工法の好ましい一例においては、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを相前後して路面上に散布する工程を含んでいるので、従来の散布式表面処理工法に比べて、より短い養生時間で強固で耐久性に富み且つ安定性に優れた凍結抑制表面処理層を構築することができるものである。
【0095】
しかしながら、後述するように、本発明の凍結抑制表面処理工法においては、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを同時期に路面上又は表面処理層上に散布し、両者を路面上又は表面処理層上で衝突、接触させることによって、より好ましくは、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを同時期に散布し、両者を空中で衝突、接触させることによって、更に短い養生時間で強固で耐久性に富み且つ安定性に優れた凍結抑制表面処理層を構築することができるものである。
【0096】
この理由は、次のように考えられる。即ち、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを相前後して散布する例として、例えば、図6に示すように、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤29をまず路面1上に散布した後に、その散布面上に分解補助剤30を散布する場合を考えると、散布直後には、路面1上にアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤29の層と分解補助剤30の層とが形成される。アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤29と分解補助剤30とは、両者の層の界面で互いに接触し、混合し合って、分解補助剤30によるアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤29の分解促進作用が開始される。その結果、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤29の層と分解補助剤30の層との境界には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤29が分解、硬化しつつある層31が形成されるが、この層31が形成されることによって、今度は逆に、未分解のアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤29と分解補助剤30とのそれ以上の接触、混合が妨げられ、更には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤29の層からの水分の散逸が妨げられる結果となる。このため、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤29と分解補助剤30とを短時間に十分に混合させることが困難となるものと考えられる。このことは、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤29と分解補助剤30との散布順序を逆にした場合も同様であって、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを相前後して路面上に散布する場合には、分解補助剤が存在することによって或る程度の養生時間の短縮化が実現できるが、分解補助剤を使用することの利点が必ずしも十分に生かされているとは言えないものである。
【0097】
これに対し、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを、同時期に散布して、両者を路面上又は表面処理層上で、より好ましくは、両者を空中で衝突、接触させるようにすると、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤との混合はより均一で完全なものとなり、分解補助剤を使用することの利点を十分に生かすことが可能となる。しかしながら、この場合でも、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを同時期に散布して、両者を路面上又は表面処理層上で衝突、接触させるよりは、両者を空中で衝突、接触させるようにするのが好ましい。この理由は次のように考えられる。即ち、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを同時期に散布して、両者を路面上又は表面処理層上で衝突、接触させる場合でも、或る程度の均一な混合状態が実現できるが、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤及び分解補助剤は路面又は表面処理層に到達した途端に運動量を失い静止してしまうので、両者の均一な混合状態が実現できるといっても、それには自ずと限界がある。ところが、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤と分解補助剤とを空中で衝突、接触させると、衝突、接触した後にも両者は未だ運動状態にあり、路面又は表面処理層に到達するまでの間に、更に他のアスファルト乳剤粒子若しくは人工アスファルト乳剤粒子、分解補助剤粒子、或いは、アスファルト乳剤粒子若しくは人工アスファルト乳剤粒子と分解補助剤粒子との結合体粒子などと衝突、接触を繰り返し、極めて均一な混合状態が実現されると考えられる。
【0098】
以下、アスファルト乳剤と分解補助剤とを空中で衝突、接触させ、両者を衝撃的に混合・攪拌する場合について、図面を用いて更に詳細に説明するが、アスファルト乳剤の代わりに人工アスファルト乳剤を使用する場合も同様である。
【0099】
図7は、本発明の凍結抑制表面処理工法に使用する結合材の散布装置のみを取り出して示した図であって、1は路面であり、11は結合材散布用のスプレーバー、7−1、7−2、7−3、・・・は、スプレーバー11に取り付けられた結合材散布用のスプレーノズルである。また、29−1、29−2、29−3、・・・は、各々のスプレーノズルから噴射された結合材としてのアスファルト乳剤である。スプレーノズル7−1、7−2、7−3、・・・としては、どのような形式のスプレーノズルを使用しても良く、例えば、円形全面形の噴射パターンを有するスプレーノズルや、四角形全面形の噴射パターン、円環形の噴射パターン、その他の噴射パターンを有するものであっても良いが、均一な散布を実現する観点からは、図7に示すようなフラット形の噴射パターンを有するスプレーノズルを使用するのが望ましい。フラット形の噴射パターンとは、スプレーノズルからある噴射角度αをもって扇形に噴射される、噴射方向に垂直な断面が細長いほぼ線状の噴射パターンであって、本明細書においてフラット形の噴射パターンのフラット面とは扇形の噴射パターンの扇の面を指すものとする。
【0100】
図8は、図7を上から見た平面図であって、図8に示すように、フラット形のスプレーノズル7−1、7−2、7−3、・・・は、通常、その噴射された結合材としてのアスファルト乳剤29−1、29−2、29−3、・・・の噴射パターンのフラット面がスプレーノズル列の列方向とある角度β(スプレーノズルの取付角度)を持つように配置される。角度βに特に制限はなく、0〜90度の範囲であれば何度でも良いが、各スプレーノズルからの噴射パターンを重複させて不均一性を打ち消すという観点からは、通常、5〜45度、好ましくは、10〜40度、更に好ましくは15〜35度の範囲である。スプレーノズルの取付角度βは、1本のスプレーバーにおいては同一であるのが好ましい。
【0101】
図7、図8に示すように、各スプレーノズル7−1、7−2、7−3、・・・からの噴射されたアスファルト乳剤29−1、29−2、29−3、・・・は、スプレーバー11の長手方向と直交する水平方向から見た場合、互いにその一部が重複している。例えば、図7、図8の場合には、各噴射されたアスファルト乳剤29−1、29−2、29−3、・・・は、路面1上で互いに2/3ずつ重複している。このようなスプレーバー11とスプレーノズル7−1、7−2、7−3、・・・からなる結合材の散布装置は、通常、作業車に搭載され、作業車の進行と共に路面1に対してスプレーバー11の長手方向と直交する水平方向に移動するので、路面1上のある箇所、例えばA点から見ると、スプレーノズル7−4、7−3、7−2から噴射されたアスファルト乳剤29−4、29−3、29−2の下を順次通過することになる。従ってA点は、都合3回、即ち、三重の散布を受けることになる。重複散布の重複数は三重に限らず、二重であっても四重以上であってもよいが、散布される結合材の均一性を求めるのであれば、三重ないしは四重以上、少なくとも二重以上に散布するのが好ましい。この散布の重複数が、スプレーノズルの路面からの高さ、スプレーノズルからの噴射角度α、各スプレーノズル間の間隔などを調整することによって適宜調整可能であることは言うまでもない。
【0102】
さて、以上のような結合材の散布装置に対して、本発明の凍結抑制表面処理工法に使用する装置の一例においては、分解補助剤の散布装置を併設する。図9は、結合材の散布装置と分解補助剤の散布装置との併設状態を示す側面図であって、分解補助剤用のスプレーバー32に取り付けられた分解補助剤用のスプレーノズル33は、先端が曲げられていて、噴射された分解補助剤34がスプレーノズル7から噴射された結合材としてのアスファルト乳剤29と空中で衝突するように配置されている。
【0103】
図10は、図9の装置を上から見た図であって、図10に示すように、結合材としてのアスファルト乳剤用のスプレーノズル1個に対して、分解補助剤のスプレーノズル1個が対応しており、例えば、アスファルト乳剤用のスプレーノズル7−1から噴射されたアスファルト乳剤29−1には、分解補助剤用のスプレーノズル33−1から噴射された分解補助剤34−1が空中で衝突し、アスファルト乳剤用のスプレーノズル7−2から噴射されたアスファルト乳剤29−2には、分解補助剤用のスプレーノズル33−2から噴射された分解補助剤34−2が空中で衝突するようになっている。噴射されたアスファルト乳剤又は分解補助剤が互いに空中で衝突するアスファルト乳剤用のスプレーノズル7−1、7−2、・・・と分解補助剤用のスプレーノズル33−1、33−2、・・・との間の対応関係は極めて厳密であって、両者は1対1に対応し、例えば、分解補助剤用のスプレーノズル33−2から噴射された分解補助剤34−2は、対応するアスファルト乳剤用のスプレーノズル7−2から噴射されたアスファルト乳剤29−2とのみ空中で衝突し、アスファルト乳剤用の他のスプレーノズルから噴射されたアスファルト乳剤と衝突することはない。
【0104】
噴射されたアスファルト乳剤又は分解補助剤が互いに空中で衝突するアスファルト乳剤用のスプレーノズル7−1、7−2、・・・と分解補助剤用のスプレーノズル33−1、33−2、・・・との間のこのような1対1の対応関係は次のようにして実現される。例えば、図10において、分解補助剤用のスプレーノズル33−1から噴射される分解補助剤34−1を例にとると、噴射された分解補助剤34−1と対応するアスファルト乳剤29−1との間には、対応しないアスファルト乳剤用のスプレーノズル7−2から噴射されたアスファルト乳剤29−2が存在するが、噴射されたアスファルト乳剤29−2は、例えば図7に示すように、裾広がりの扇形をしているので、噴射された分解補助剤34−1が、手前にあるアスファルト乳剤29−2の傾斜する裾広がりの肩部分よりも上を通過してアスファルト乳剤29−1に衝突するようにすれば良い。即ち、図7において、スプレーバー11の長手方向と直交する水平方向から見て、噴射されたアスファルト乳剤29−1の右肩と、噴射されたアスファルト乳剤29−2の左肩との交点xから水平に引いた線分を線分Xとして示したが、図10における分解補助剤用のスプレーノズル33−1から噴射された分解補助剤34−1が、アスファルト乳剤29−2の上を、図7における線分Xよりも高い位置で通過するようにすれば、アスファルト乳剤用のスプレーノズルと分解補助剤用のスプレーノズルとを1対1に対応させることができる。噴射されたアスファルト乳剤と分解補助剤とがこのような位置関係になるように、アスファルト乳剤用のスプレーノズル7−1、7−2、7−3、・・・と分解補助剤用のスプレーノズル33−1、33−2、33−3・・・とを配置することによって、例えば、分解補助剤用のスプレーノズル33−3から噴射された分解補助剤34−3は、アスファルト乳剤用のスプレーノズル7−3から噴射されたアスファルト乳剤29−3とだけ衝突し、隣接する他のアスファルト乳剤用のスプレーノズル7−2又は7−4から噴射されたアスファルト乳剤29−2又は29−4と衝突することがないようになる。
【0105】
なお、分解補助剤用のスプレーノズル33−1からの分解補助剤34−1の噴射方向は、通常斜め下向きであるので、分解補助剤34−1が手前にあるアスファルト乳剤29−2の上を通過する位置を線分Xよりも若干高い位置とした場合でも、アスファルト乳剤29−1上でのアスファルト乳剤29−1と分解補助剤34−1との衝突位置は、図7に線分Yで示すように、線分Xよりもやや低い位置まで下げることが可能である。しかしながら、狭い範囲に多数のスプレーノズルが共存することになるので、装置設計上の観点からは、アスファルト乳剤29−1上でのアスファルト乳剤29−1と分解補助剤34−1との衝突位置は、線分Xよりもやや上になるようにするのが好ましい。
【0106】
アスファルト乳剤と分解補助剤との衝突位置Yは、余りに低いと、アスファルト乳剤と分解補助剤とが衝突してから路面上に落下して運動量を失うまでの時間が短すぎて、均一な混合が実現できなくなり、また、余りに高いと、噴射されたアスファルト乳剤と分解補助剤とが両者とも未だ濃く固まった状態で衝突することになるので好ましくない。従って、衝突位置Yの高さは、路面1からアスファルト乳剤用のスプレーノズル7−1までの高さをHとして、(1/4)H〜(3/4)Hの範囲が好ましく、より好ましくは、(2/4)H〜(3/4)Hの範囲である。
【0107】
以上のようにして、アスファルト乳剤用のスプレーノズル7−1、7−2、7−3・・・と分解補助剤用のスプレーノズル33−1、33−2、33−3・・・とを1対1に対応させることによって、衝突するアスファルト乳剤と分解補助剤の量的割合や、衝突速度、衝突位置などの衝突条件をコントロールすることが容易となり、アスファルト乳剤と分解補助剤とを最適の割合で、かつ、最適の衝突条件で衝突させることが可能になる。その結果、両者の極めて均一な混合が実現され、より短い養生時間が実現できることは言うまでもない。
【0108】
また、本発明の凍結抑制表面処理工法に使用する装置の一例においては、図10に示すように、分解補助剤34−1、34−2、34−3、・・・は、それぞれ対応するアスファルト乳剤29−1、29−2、29−3、・・・に向かって、各々の衝突位置Y1、Y2、Y3、・・・上での噴射密度が均一になるように噴射される。即ち、分解補助剤34−1、34−2、34−3、・・・は、図10の平面図において、その扇形の噴射パターンが、アスファルト乳剤29−1、29−2、29−3、・・・の扇形の噴射パターンのフラット面に対する垂直面Z1、Z2、Z3、・・・に関して左右対称となるような角度で、アスファルト乳剤29−1、29−2、29−3、・・・に向かって噴射される。これにより、各々の衝突位置Y1、Y2、Y3、・・・上での分解補助剤34−1、34−2、34−3、・・・の噴射密度は、衝突位置Y1、Y2、Y3、・・・の幅方向の全体に亘って均一となり、アスファルト乳剤と分解補助剤とのより均一な混合が実現される。
【0109】
なお、以上の例においては、路面に対してほぼ垂直に噴射されるアスファルト乳剤に分解補助剤を斜めに衝突させるようにしたが、逆に、分解補助剤を路面に対して垂直に噴射して、その分解補助剤に対してアスファルト乳剤を斜めに衝突させるようにしても良く、更には、アスファルト乳剤及び分解補助剤共に斜めに噴射して衝突させるようにしても良い。しかしながら、アスファルト乳剤の方が量的に多く、主材であるということを考えると、以上に述べた例のように路面に対してほぼ垂直に噴射されるアスファルト乳剤に分解補助剤を斜めに衝突させるのが好ましい。
【0110】
各々のスプレーノズルからの噴射圧力は、アスファルト乳剤及び分解補助剤共に、0.6〜5.0kgf/cmの範囲が好ましく、望ましくは1.0〜2.5kgf/cmの範囲である。噴射圧力が0.6kgf/cm未満の場合には、噴射パターンが良好な扇形となり難く、また、噴射圧力が5kgf/cmを超えると、被噴射物が霧状になってしまい、良好な散布膜が路面上に形成され難くなる。また、アスファルト乳剤と分解補助剤の噴射圧力は同じであっても良いが、分解補助剤の噴射圧力の方をアスファルト乳剤の噴射圧力よりも若干高目に設定するのが望ましい。
【0111】
以下、実験例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【0112】
〈実験1〉骨材の粒度が路面との結合力に及ぼす影響
使用する骨材の粒度が、構築される散布式表面処理層の耐久性に及ぼす影響を調べるため、以下に述べる付着性試験をビアリット(Vialit)付着試験方法に準じて行った。
【0113】
即ち、表2に示すような種々の最小粒径と最大粒径を持つ骨材試料を用意した。例えば、表2においてNo.1で示される骨材試料は、呼び寸法で5mmのふるいと6mmのふるいとの間に、ほぼ100重量%の骨材粒が分布する骨材試料である。このような種々の骨材試料を各90粒ずつ用意し、ビアリット付着試験方法に規定する条件で乾燥、静置した。
【0114】
一方、厚さ2mm、大きさ200×200mmの金属板を骨材試料数だけ用意し、これに結合材として改質アスファルト(商品名「ガムファルトS−SP」、ニチレキ株式会社製)を、最小粒径が10mm未満の骨材試料に対しては、1.15kg/cmとなるように、また、最小粒径が10mm以上の骨材試料に対しては、1.50kg/cmとなるよう塗布し、この上に各種骨材試料を90粒散布した後、線圧7kgf/cmの負荷をかけて、相反する方向にそれぞれ15回ずつ、合計30回転圧した。これを所定時間静置した後、骨材の付着面を下にして水平に保持した状態で、その上から、直径50mm、重さ500gの鉄球を10秒以内に3回、金属板中央に落下させた。鉄球の落下によって金属板からはがれ落ちた骨材粒の内、結合材が付着していない骨材粒の数を数えてaとした。また、金属板に残った骨材を手で剥がし、結合材が付着していない骨材粒の数を数えてdとした。付着率(%)は、付着率(%)={(90−a−d)/90}×100として計算した。各々の試料について3回試験を行い、結果はその平均とし、付着率80%以上のものを満足できるものと評価した。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】
Figure 0004199386
【0116】
表2から明らかなように、最小粒径が10mm未満の骨材試料の場合には、最小粒径と最大粒径との差が、ふるいの目開きの呼び寸法で2mm以上、5mm未満のものが、また、最小粒径が10mm以上の骨材試料の場合には、最小粒径と最大粒径との差が、ふるいの目開きの呼び寸法で3mm超、6mm以下のものが、付着率80%以上となり、本発明の散布式表面処理工法に使用した場合に優れた結合性を示すことが分かった。なお、このような結果が得られた理由については定かではないが、最小粒径と最大粒径との差が余りに少ないと、骨材同士の咬み合わせによる結合力の増加がそれほど見込めず、また、逆に最小粒径と最大粒径との差が余りに大きいと、粒径の差に応じて不均等な力が作用するからではないかと推測される。
【0117】
〈実験2〉結合材の粘度が表面処理層の均一性に及ぼす影響−その1
結合材の粘度が表面処理層の均一性に及ぼす影響を調べるため、60℃における絶対粘度が種々の値を示す結合材を用意し、轍掘れの出来た路面から舗装打ち替えのために切り出した表面に凹凸のある実験用舗装体上に、1.2(リットル/m)の割合で散布した。なお、凹部と凸部の差は、平均で約20mmであった。次いで、直ちに、実験1で用いたNo.3の骨材試料を9(リットル/m)の割合で上から散布し、軽く転圧した後、結合材が硬化するまで養生した。養生後、実験用舗装体をカッターで切断し、凹部の底部及び凸部の頂部における結合材の厚さを測定した。結果を、使用した結合材の種類と共に表3に示す。
【0118】
【表3】
Figure 0004199386
【0119】
表3の結果から明らかなように、60℃における絶対粘度が約8000ポアズ及び約13000ポアズの結合材は、散布後、重力の作用によって路面の凹部に流れ込み滞留する傾向があり、路面の凸部の頂部では結合材の厚さは約1mmないしは1.5mmと薄く、逆に、路面の凹部の底部では、約4mmないしは約3.5mmと厚い結合材層が形成された。凸部における骨材粒は、スパチュラの先で剥がすことを試みると、力を入れて幾度も引っ掻くことによって剥がすことができた。また、凹部にあっては、結合材の量が多過ぎて、このままでは実際に車両の通行に供用された場合にはフラッシュ現象を起こす危険性がある。
【0120】
一方、60℃における絶対粘度が約15000ポアズ以上となると、結合材の流動は抑えられ、路面凹部の底部及び凸部の頂部における結合材層の厚さにはさほど違いが見られない。凸部、凹部における骨材粒をスパチュラ先端で剥がすことを試みたが、容易には剥がすことができないほど強固に結合していた。以上のことから、結合材として60℃における絶対粘度が約15000ポアズ以上のものを使用すれば、路面に凹凸があっても結合材が路面上で流動することなく、均一な表面処理層が構築できることが分かった。
【0121】
〈実験3〉結合材の粘度が表面処理層の均一性に及ぼす影響−その2
結合材中の蒸発残留物の粘度が表面処理層の均一性に及ぼす影響を調べるため、蒸発残留物の60℃における絶対粘度が種々の値を示す結合材を用意し、轍掘れの出来た路面から舗装打ち替えのために切り出した表面に凹凸のある実験用舗装体上に、1.2(リットル/m)の割合で散布した。なお、凹部と凸部の差は、平均で約20mmであった。次いで、直ちに、実験1で用いたNo.3の骨材試料を9(リットル/m)の割合で上から散布し、軽く転圧した後、結合材が硬化するまで養生した。養生後、実験用舗装体をカッターで切断し、凹部の底部及び凸部の頂部における結合材の厚さを測定した。結果を、使用した結合材の種類と共に表4に示す。
【0122】
【表4】
Figure 0004199386
【0123】
表4の結果から明らかなように、結合材中の蒸発残留物の60℃における絶対粘度が約8000ポアズ及び約13000ポアズの結合材は、散布後、重力の作用によって路面の凹部に流れ込み滞留する傾向があり、路面の凸部の頂部では結合材の厚さは約1mmないしは1.5mmと薄く、逆に、路面の凹部の底部では、約4mmないしは約3.7mmと厚い結合材層が形成された。凸部における骨材粒は、スパチュラの先で剥がすことを試みると、力を入れて幾度も引っ掻くことによって剥がすことができた。また、凹部にあっては、結合材の量が多過ぎて、このままでは実際に車両の通行に供用された場合にはフラッシュ現象を起こす危険性がある。
【0124】
一方、結合材中の蒸発残留物の60℃における絶対粘度が約15000ポアズ以上となると、結合材の流動は抑えられ、路面凹部の底部及び凸部の頂部における結合材層の厚さにはさほど違いが見られない。凸部、凹部における骨材粒をスパチュラ先端で剥がすことを試みたが、容易には剥がすことができないほど強固に結合していた。以上のことから、結合材として結合材若しくは結合材中の蒸発残留物の60℃における絶対粘度が約15000ポアズ以上のものを使用すれば、路面に凹凸があっても結合材が路面上で流動することなく、均一な表面処理層が構築できることが分かった。
【0125】
〈実験4〉結合材の特性が路面との結合力に及ぼす影響
結合材若しくは結合材中の蒸発残留物の特性が、構築される表面処理層の耐久性に及ぼす影響を調べるため、結合材中の蒸発残留物が表5に示すような種々の特性を有する10種類のアニオン系アスファルト乳剤を調製し、以下に述べる付着性試験をビアリット(Vialit)付着試験方法に準じて行った。骨材としては、実験1で用いたNo.3の骨材試料を用意し、これをビアリット付着試験方法に規定する条件で乾燥、静置した。一方、分解補助剤としては、アルキルジアミン酢酸塩(商品名「カチオンDTA」、日本油脂株式会社製)の10w/w%水溶液を用意し、重量比で、(分解補助剤水溶液中の有効成分量)/(アスファルト乳剤中の蒸発残留分)=0.3/100とした。
【0126】
一方、厚さ2mm、大きさ200×200mmの金属板を試料数だけ用意し、これに、結合材として別途調製した上記10種類のアニオン系アスファルト乳剤の各々と上記分解補助剤とをフラット形のスプレーノズルを用いて空中で衝突させながら1.1(リットル/m)の割合で散布した。なお、結合材の散布高さHは50cm、結合材と分解補助剤の衝突位置は、散布面から30cm、即ち、(3/5)Hとした。次いで、この結合材と分解補助剤の散布面上に骨材を散布し、実験1と同様の手順で付着率を求めた。付着率(%)は、付着率(%)={(90−a−d)/90}×100として計算した。付着率80%以上のものを満足できるもの、付着率85%以上のものをより満足できるもの、付着率90%以上のものを更に満足できるものと評価した。更に、分解補助剤を散布しない点を除いては同じ手順で、10種類のアニオン系アスファルト乳剤上に骨材を散布した試料を作成し、同様に試験して付着率を求めた。結果を併せて表5に示す。
【0127】
【表5】
Figure 0004199386
【0128】
表5から明らかなように、結合材としてのアスファルト乳剤と分解補助剤とを空中で衝突させた場合には、結合材としてのアニオン系またはノニオン系アスファルト乳剤中の蒸発残留物の物性が、針入度が50(1/10mm)以上、150(1/10mm)以下、軟化点が50℃以上、120℃以下、25℃におけるタフネスが70kgf・cm以上、320kgf・cm以下、25℃におけるテナシティが30kgf・cm以上、300kgf・m以下で、付着率80%以上の満足できる結果が得られた。また、アスファルト乳剤中の蒸発残留物の針入度が70〜125(1/10mm)、軟化点が55〜100℃、タフネスが90〜250kgf・cm、テナシティが50〜220kgf・cmの範囲で、付着率85%以上の満足できる結果が得られ、更には、蒸発残留物の針入度が90〜120(1/10mm)、軟化点が60〜80℃、タフネスが100〜200kgf・cm、テナシティが70〜180kgf・cmのアスファルト乳剤D及びEにおいて、付着率90%以上の結果が得られた。しかしながら、蒸発残留物の軟化点が120℃の乳剤Iとなると、アスファルト乳剤が分解して得られるアスファルト分が幾分軟らか目となり、腰が幾分減少し、付着率においても若干低下する傾向が見られた。更に軟化点が高くなって、蒸発残留物の軟化点が150℃、針入度が40(1/10mm)、タフネスが360kgf・cm、テナシティが350kgf・cmのアスファルト乳剤Jは、アスファルト乳剤が分解して得られるアスファルト分が軟らかくなり、腰も弱くなって、付着率は更に減少した。一方、分解補助剤を使用しない場合においてもほぼ同様の結果が得られたが、付着率は全体的に分解補助剤を使用する場合に比べて低い値が得られた。
【0129】
〈実験5〉結合材であるアスファルト乳剤の粘度が表面処理層の均一性に及ぼす影響
結合材であるアスファルト乳剤の粘度が表面処理層の均一性に及ぼす影響を調べるため、20℃における粘度が種々の値を示すアニオン系アスファルト乳剤を用意し、轍掘れの出来た路面から舗装打ち替えのために切り出した表面に凹凸のある実験用舗装体上に、1.2(リットル/m)の割合で散布した。なお、凹部と凸部の差は、平均で約20mmであった。次いで、直ちに、実験4で用いたのを同じ骨材を9(リットル/m)の割合で上から散布し、軽く転圧した後、結合材が硬化するまで養生した。養生後、実験用舗装体をカッターで切断し、凹部の底部及び凸部の頂部におけるアスファルト乳剤が分解して形成された結合材の厚さを測定した。結果を、使用した結合材の種類と共に表6に示す。
【0130】
【表6】
Figure 0004199386
【0131】
表6の結果から明らかなように、20℃における粘度が19センチポアズ及び32センチポアズのアスファルト乳剤は、散布後、重力の作用によって路面の凹部に流れ込み滞留する傾向があり、路面の凸部の頂部ではアスファルト乳剤の分解によって形成された結合材層の厚さは平均して約0.7mmないしは0.8mmと薄く、逆に、路面の凹部の底部では、平均して1.4mmないしは1.2mmと厚い結合材層が形成された。凸部における骨材粒は、スパチュラの先で剥がすことを試みると、力を入れて幾度も引っ掻くことによって剥がすことができた。また、凹部にあっては、結合材の量が多過ぎて、このままでは実際に車両の通行に供用された場合にはフラッシュ現象を起こす危険性がある。
【0132】
一方、20℃における粘度が約40センチポアズ以上となると、アスファルト乳剤の流動は抑えられ、路面凹部の底部及び凸部の頂部におけるアスファルト乳剤の分解によって形成された結合材層の厚さにはさほど違いが見られない。凸部、凹部における骨材粒をスパチュラ先端で剥がすことを試みたが、容易には剥がすことができないほど強固に結合していた。以上のことから、アスファルト乳剤として20℃における粘度が約40センチポアズ以上のものを使用すれば、路面に凹凸があっても結合材が路面上で流動することなく、均一な表面処理層が構築できることが分かった。
【0133】
〈実験6〉結合材の種類及び分解補助剤の使用量が造膜時間に及ぼす影響
結合材としてアニオン系アスファルト乳剤(商品名「サンピーゾールA」、ニチレキ株式会社製)、分解補助剤としては実験4で使用したものを同じものを使用し、アニオン系アスファルト乳剤の蒸発残留分100重量部に対する分解補助剤水溶液中の有効成分量を種々の割合に変化させながら、両者を実験4におけると同じく空中で衝突させて、30cm×30cm×5cmのアスファルトコンクリート板上に散布した。散布後、種々の養生時間において、散布面が褐色から黒色に変化してアニオン系アスファルト乳剤の分解膜が形成されているか否かを観察した。また、結合材として、タックコート用の汎用アスファルト乳剤pk−4(ニチレキ株式会社製)を使用し、分解補助剤を使用しない以外は、同様にして、散布面上での分解膜の造膜の有無を観察して対照とした。なお、試験温度は20℃であった。
【0134】
使用した結合材の物性は、それぞれ以下のとおりである。
アニオン系アスファルト乳剤(商品名「サンピーゾールA」、ニチレキ株式会社製)
蒸発残留分:68(%)
蒸発残留物の針入度:103(1/10mm)
蒸発残留物の軟化点:65(℃)
蒸発残留物の25℃におけるタフネス:160(kgf・cm)
蒸発残留物の25℃におけるテナシティ:145(kgf・cm)
蒸発残留物の60℃における絶対粘度:16000(ポアズ)
20℃における粘度:42(センチポアズ)
タックコート用の汎用アスファルト乳剤pk−4(ニチレキ株式会社製)
蒸発残留分:51(%)
蒸発残留物の針入度:62(1/10mm)
蒸発残留物の軟化点:46(℃)
蒸発残留物の25℃におけるタフネス:35(kgf・cm)
蒸発残留物の25℃におけるテナシティ:5(kgf・cm)
蒸発残留物の60℃における絶対粘度:2000(ポアズ)
【0135】
結果を表7に示す。なお、表7中、○印は造膜が観察されたものを、×印は造膜が観察されなかったものを示す。
【0136】
【表7】
Figure 0004199386
【0137】
表7の結果から明かなように、分解補助剤を、水溶液中の有効成分量で、アニオン系アスファルト乳剤の蒸発残留分100重量部に対して0.05重量部以上使用する場合には、造膜までの時間が著しく短縮され、アスファルト乳剤の分解、硬化が顕著に促進されていることが分かる。また、蒸発残留分が本発明で規定するa)〜d)の特性を満たすアニオン系アスファルト乳剤は、対照としての従来のタックコート用アスファルト乳剤に比べて、分解補助剤を使用しない場合においてすら、分解、硬化時間が短かった。
【0138】
〈実験7〉分解補助剤の種類の造膜時間及び付着性に及ぼす影響
結合材として、実験6で使用したのと同じアニオン系アスファルト乳剤(商品名「サンピーゾールA」、ニチレキ株式会社製)を使用し、分解補助剤の種類を種々変えて、実験6と同様にして両者を空中で衝突させながら、30cm×30cm×5cmのアスファルトコンクリート板上に散布した。散布後、実験6と同様に、種々の養生時間において、散布面が褐色から黒色に変化してアスファルト乳剤の分解膜が形成されているか否かを観察した。ただし、使用したアスファルト乳剤の蒸発残留分100重量部に対する分解補助剤水溶液中の有効成分量は、0.3重量部に固定して実験を行った。なお、分解補助剤を使用せず、アスファルト乳剤だけを使用して同様の試験を行い対照とした。
【0139】
併行して、結合材としてのアスファルト乳剤と分解補助剤とを上記と同じ組み合わせとし、養生時間を種々に変えた以外は実験4と同様にして、分解補助剤の違いが付着率に及ぼす影響を調べた。ただし、使用したアスファルト乳剤の蒸発残留分100重量部に対する分解補助剤水溶液中の有効成分量は、0.3重量部に固定して実験を行った。また、分解補助剤を使用せず、アスファルト乳剤だけを使用して同様の試験を行い対照とした。造膜の有無の観察結果及び付着率の判定結果を併せて表8に示す。
【0140】
【表8】
Figure 0004199386
【0141】
表8の結果から明らかなように、試験した種々の分解補助剤の中では、アルキルモノアミン酢酸塩、アルキルジアミン酢酸塩などのアルキルアミン系界面活性剤の酢酸塩や、アルキル四級アンモニウム塩が、造膜時間及び付着性のいずれにおいても優れており、中でも、アルキルジアミン酢酸塩が最も優れていた。
【0142】
なお、同様の試験をカチオン系アスファルト乳剤(商品名「サンピーゾールK」、ニチレキ株式会社製)を用いて行ったところ、試験した種々の分解補助剤の中では、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、又は、アルキルメチルタウリン酸ナトリウム、ジ・オクチル・スルホ・コハク酸ソーダが、造膜時間及び付着性のいずれにおいても優れており、中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩が良く、更には、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダが最も優れていたという結果が得られた。使用したカチオン系アスファルト乳剤の物性は以下のとおりである。
カチオン系アスファルト乳剤(商品名「サンピーゾールK」、ニチレキ株式会社製)
蒸発残留分:68(%)
蒸発残留物の針入度:98(1/10mm)
蒸発残留物の軟化点:67(℃)
蒸発残留物の25℃におけるタフネス:180(kgf・cm)
蒸発残留物の25℃におけるテナシティ:160(kgf・cm)
蒸発残留物の60℃における絶対粘度:18500(ポアズ)
20℃における粘度:41(センチポアズ)
【0143】
〈実験8〉結合材と分解補助剤の散布形態の造膜時間及び付着率に及ぼす影響結合材として、実験6で使用したのと同じアニオン系アスファルト乳剤(商品名「サンピーゾールA」、ニチレキ株式会社製)を使用し、分解補助剤としては、実験4で使用したのと同じアルキルジアミン酢酸塩(商品名「カチオンDTA」、日本油脂株式会社製)の10w/w%水溶液を用い、散布形態を、種々変化させた以外は、実験7と同様にして、種々の養生時間における造膜の有無及び付着率を調べた。ただし、アニオン系アスファルト乳剤の蒸発残留分100重量部に対する分解補助剤水溶液中の有効成分量は、0.3重量部に固定して実験を行った。
【0144】
散布形態は以下のように変化させた。なお、結合材の散布高さHは実験4と同じく散布面から50cmとした。
(1)アスファルト乳剤を散布後、その散布面上に分解補助剤を散布
(2)分解補助剤を散布後、その散布面上にアスファルト乳剤を散布
(3)アスファルト乳剤と分解補助剤とが散布面上で衝突するように両者を同時に散布(衝突高さH=0)
(4)アスファルト乳剤と分解補助剤とが散布面上の空中で衝突するように両者を同時に散布(衝突高さH=(1/5)H)
(5)アスファルト乳剤と分解補助剤とが散布面上の空中で衝突するように両者を同時に散布(衝突高さH=(2/5)H)
(6)アスファルト乳剤と分解補助剤とが散布面上の空中で衝突するように両者を同時に散布(衝突高さH=(3/5)H)
(7)アスファルト乳剤と分解補助剤とが散布面上の空中で衝突するように両者を同時に散布(衝突高さH=(4/5)H)
【0145】
結果を表9に示す。
【0146】
【表9】
Figure 0004199386
【0147】
表9の結果から明らかなように、アスファルト乳剤と分解補助剤とを相前後して散布する(1)及び(2)の散布形態に比べて、アスファルト乳剤と分解補助剤とを同時期に散布する(3)〜(7)の散布形態の方が、造膜時間及び付着率のいずれにおいても優れていたが、アスファルト乳剤と分解補助剤とを散布面上で衝突させる(3)の散布形態よりも、アスファルト乳剤と分解補助剤とを空中で衝突させる(4)ないし(7)の散布形態の方が良い結果が得られた。また、アスファルト乳剤と分解補助剤とを空中で衝突させる(4)ないし(7)の散布形態の中でも、衝突高さHが、(1/5)Hである(4)の場合や(4/5)Hである(7)の場合よりも、(2/5)Hや(3/5)Hである(5)及び(6)の場合の方が特に優れており、空中衝突させる場合においても、衝突高さは(1/4)H〜(3/4)Hの範囲が良いことが分かる。
【0148】
また、造膜が観察された養生時間30分の各試料について、スパチュラの先端で造膜層を一部破壊し、内部状態を調べたところ、(1)の散布形態の試料では、アスファルト乳剤と分解補助剤との境界面は造膜していたが、アスファルト乳剤の路面側部分は依然として造膜前の状態であった。同様に、(2)の散布形態の試料では、アスファルト乳剤と分解補助剤との境界面は造膜していたが、分解補助剤の路面側部分には依然として水分が残っていた。これに対して、(3)〜(7)の散布形態の試料では、均一な造膜が観察された。
【0149】
なお、同様の試験をカチオン系アスファルト乳剤(商品名「サンピーゾールK」、ニチレキ株式会社製)を用いて行ったところ、同様の結果が得られた。
【0150】
以下、実施例を用いて、本発明を更に説明するが、本発明がこれら実施例に限られるものでないことは勿論である。
【0151】
〈実施例1〉
図5に示すような作業車において結合材の散布装置の近傍に分解補助剤の散布装置を設けた作業車を用いて、試験的に本発明の構築方法を施工した。作業車の施工速度は約5km/hであった。まず、施工路面をロードスイーパーで清掃した後、結合材及び分解補助剤を散布した。分解補助剤の散布は、路面から結合材のスプレーノズルまでの高さは50cmとし、その結合材に対して路面から30cmの位置の空中で分解補助剤が衝突するように分解補助剤用のスプレーノズルの位置及び角度を調整して行った。続いて、直ちに、主骨材を散布した。主骨材の散布面をマカダムローラーで軽く転圧した後、結合材及び分解補助剤の散布と副骨材の散布とを繰り返した。ただし、最上層の構築に際しては分解補助剤は使用しなかった。副骨材の散布毎に、散布面をマカダムローラーで転圧した。最後に、施工路面をロードスイーパーで清掃した後、交通に開放した。施工後三ヶ月経過した厳冬期に施工区間を挟んで前後5mに渡って散水し、一夜おいて路面に結氷層を形成させた。結氷層の厚さは3〜5mmであった。積載量4トンのトラックに荷を満載させて結氷層のある路面上を10往復させたところ、本発明によって構築された凍結抑制表面処理層の存在する区間では、結氷層がモザイク状に割れていたのに対し、その前後の通常舗装の区間では凍結した路面に何等の変化も見られなかった。続いて、同じトラックを時速30kmで、本発明の施工区間とその前後5mの区間を含む区間を走行させ、走行中に、本発明によって構築された凍結抑制表面処理層の存在する区間と、それ以外の区間において急ブレーキを掛けさせたところ、本発明によって構築された凍結抑制表面処理層の存在する区間では、スリップすることなく停止することができたのに対し、本発明によって構築された凍結抑制表面処理層の存在する区間に前後する長さ5mの密粒度アスファルトコンクリート舗装の凍結区間では、スリップして進行方向に対して斜めに停止した。また、本発明によって構築された凍結抑制表面処理層の存在する区間では、骨材と結合材との剥離現象は観察されず、骨材の飛散跡も見られなかった。
【0152】
使用した材料を散布順に示すと次のとおりである。
結合材1
実験用調製アスファルト乳剤C
蒸発残留分:67.7(%)
蒸発残留物の針入度:83(1/10mm)
蒸発残留分の軟化点:72(℃)
蒸発残留分の25℃におけるタフネス:180(kgf・cm)
蒸発残留分の25℃におけるテナシティ:175(kgf・cm)
蒸発残留分の60℃における絶対粘度:18000(ポアズ)
20℃における粘度:73(センチポアズ)
散布温度:加温(70℃)
散布量:110(l/100m
分解補助剤1:「カチオンDTA」(日本油脂株式会社製)
分解補助剤の使用量 アスファルト乳剤の蒸発残留分100重量部に対して、有効成分量で0.4重量部
主骨材
5号砕(栃木県葛生産)
粒径:13−20mm
散布温度:加熱(140℃)
散布量:2.0(m/100m
【0153】
結合材2
実験用調製アスファルト乳剤C
蒸発残留分:67.7(%)
蒸発残留物の針入度:83(1/10mm)
蒸発残留物の軟化点:72(℃)
蒸発残留物の25℃におけるタフネス:180(kgf・cm)
蒸発残留物の25℃におけるテナシティ:175(kgf・cm)
蒸発残留物の60℃における絶対粘度:18000(ポアズ)
20℃における粘度:73(センチポアズ)
散布温度:加温(70℃)
散布量:180(l/100m
分解補助剤2:種類及び使用量共に分解補助剤1と同じ
副骨材1
軟質ゴム片(RC5080、株式会社ジャパンリサイクル製)
粒径:5−8mm
散布温度:常温(8℃)
散布量:1.0(m/100m
【0154】
結合材3
実験用調製アスファルト乳剤C
蒸発残留分:67.7(%)
蒸発残留物の針入度:83(1/10mm)
蒸発残留物の軟化点:72(℃)
蒸発残留物の25℃におけるタフネス:180(kgf・cm)
蒸発残留物の25℃におけるテナシティ:175(kgf・cm)
蒸発残留物の60℃における絶対粘度:18000(ポアズ)
20℃における粘度:73(センチポアズ)
散布温度:加温(70℃)
散布量:140(l/100m
分解補助剤3:種類及び使用量共に分解補助剤1と同じ
副骨材2
軟質ゴム片(RC3050、株式会社ジャパンリサイクル製)
粒径:3−5mm
散布温度:常温(8℃)
散布量:0.6(m/100m
【0155】
結合材4
実験用調製アスファルト乳剤C
蒸発残留分:67.7(%)
蒸発残留物の針入度:83(1/10mm)
蒸発残留物の軟化点:72(℃)
蒸発残留物の25℃におけるタフネス:180(kgf・cm)
蒸発残留物の25℃におけるテナシティ:175(kgf・cm)
蒸発残留物の60℃における絶対粘度:18000(ポアズ)
20℃における粘度:73(センチポアズ)
散布温度:加温(70℃)
散布量:100(l/100m
副骨材3
軟質ゴム片(RC1030、株式会社ジャパンリサイクル製)
粒径:1−3mm
散布温度:常温(8℃)
散布量:0.4(m/100m
【0156】
〈実施例2〉
使用材料と散布順を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の凍結抑制表面処理層を構築した。構築後、実施例1と同様にして、凍結抑制効果を調べたところ、実施例1におけると同様の効果が得られた。また、非結氷状態で凍結抑制効果を調べた際に使用したのと同じトラックを走行させ、騒音計で計5回の騒音を測定したところ、本発明の凍結抑制表面処理層が構築された区間では、その平均値で約69デシベルであったのに対し、本発明の凍結抑制表面処理層が構築された区間に前後する密粒度アスファルトコンクリート舗装の区間では、平均値で約73デシベルもあり、本発明の凍結抑制表面処理層が騒音抑制にも効果があることが確認された。また、本発明によって構築された凍結抑制表面処理層の存在する区間では、骨材と結合材との剥離現象は観察されず、骨材の飛散跡も見られなかった。
【0157】
使用した材料を散布順に示すと以下のとおり。
結合材1
改質アスファルト(ガムファルトS−SP、ニチレキ株式会社製)
針入度:55(1/10mm)
軟化点:67(℃)
25℃におけるタフネス:172(kgf・cm)
25℃におけるテナシティ:156(kgf・cm)
60℃における絶対粘度:19500ポアズ
散布温度:加熱(170℃)
散布量:110(リットル/100m
主骨材
硬質ゴム片(HC8050、株式会社ジャパンリサイクル製)
粒径:5−8mm
散布温度:常温(8℃)
散布量:0.9(m/100m
【0158】
結合材2
改質アスファルト(ガムファルトS−SP、ニチレキ株式会社製)
針入度:55(1/10mm)
軟化点:67(℃)
25℃におけるタフネス:172(kgf・cm)
25℃におけるテナシティ:156(kgf・cm)
60℃における絶対粘度:19500ポアズ
散布温度:加熱(170℃)
散布量:100(リットル/100m
副骨材
軟質ゴム片(RC1030、株式会社ジャパンリサイクル製)
粒径:1−3mm
散布温度:常温(8℃)
散布量:0.4(m/100m
【0159】
【発明の効果】
以上のように、本発明の凍結抑制表面処理層の構築方法によれば、硬質の主骨材と軟質の副骨材とを組み合わせて散布式表面処理層を構築することによって、従来の弾性体凍結抑制舗装に劣らない凍結抑制効果並びに騒音低減効果をもった凍結抑制表面処理層を得ることができ、しかも、得られた凍結抑制表面処理層においては車両荷重によって骨材と結合材とが剥離することがない。また、本発明の構築方法は、結合材と骨材とを散布するようにしているので、既存路面を補修するような簡単な作業によって凍結抑制効果及び騒音低減効果を持った表面処理層ないしは舗装体を簡便にかつ安価に構築することができる。また、結合材として、結合材若しくは結合材中の蒸発残留物の60℃における絶対粘度が約15000ポアズ以上のものを使用する場合には、施工路面に凹凸や傾斜が存在する場合でも、散布された結合材が無闇に流動することがなく、場所によって結合材が過剰となったり、不足したりするような現象が生じることがなく、均一で耐久性に優れた凍結抑制表面処理層を構築することができる。
【0160】
また、結合材として、結合材若しくは結合材中の蒸発残留分が所定の特性を有する結合材を使用する場合には、骨材の路面に対する付着力が増大し、強固で耐久性に富む安定した表面処理層を構築することができる。更には、結合材としてのアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤を使用する場合には、結合材を加熱する必要がなく、常温で施工できるので、作業が安全に行えると共に、炭酸ガスの発生がなく地球環境的にも優れた散布式表面処理工法を実現することができる。また、結合材としてのアスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤とともに、その分解を促進する分解補助剤を使用する場合には、アスファルト乳剤若しくは人工アスファルト乳剤の分解、固化が早まり、強固で耐久性に富む安定した表面処理層をより短時間で構築することが可能となる。
【0161】
更には、主骨材として粒度を規制した骨材を使用することによって、路面と骨材との結合性が一層増し、より安定で耐久性に優れた機能性表面処理層を構築することができる。本発明は既存路面の補修だけでなく、新設路面においても、優れた効果を発揮し、極めて有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の構築方法の一例を示す図である。
【図2】 構築された凍結抑制表面処理層の状態を示す図である。
【図3】 本発明に使用する作業車の一例を示す図である。
【図4】 本発明に使用する作業車の他の例を示す図である。
【図5】 本発明に使用する作業車の更に他の例を示す図である。
【図6】 アスファルト乳剤と分解補助剤とを相前後して散布した場合の状態を示す図である。
【図7】 本発明に使用する結合材の散布装置の一例を示す正面図である。
【図8】 本発明に使用する結合材の散布装置の一例を示す平面図である。
【図9】 本発明に使用する結合材の散布装置と分解補助剤の散布装置の位置関係を示す側面図である。
【図10】 本発明に使用する結合材の散布装置と分解補助剤の散布装置の位置関係を示す平面図である。
【符号の説明】
1 路面
2 結合材
3 骨材
4−1 第1の副骨材
4−2 第2の副骨材
5 作業車
6a、6b 作業車の前輪、後輪
7、23 スプレーノズル
8 骨材ビン
9 搬入ソケット
10 搬送ポンプ
11、22 スプレーバー
12 骨材搬送車
13 骨材散布幅調節扉
14 骨材排出ロール
15 支持腕
16 プッシュローラー
17 エンジン
18 結合材貯蔵タンク
19 水タンク
20 載置台
21 プライマータンク
24 作業ステップ
25 加熱装置
26 エネルギー源
27 骨材ホッパー
28 搬送コンベア
29 アスファルト乳剤
30、34 分解補助剤
31 硬化しつつある層
32 分解補助剤用のスプレーバー
33 分解補助剤用のスプレーノズル
α スプレーノズルの噴射角度
β スプレーノズルの取付角度

Claims (11)

  1. 路面上に硬質の主骨材を散布し、散布された主骨材の上から、結合材と軟質の副骨材とをこの順で散布する工程を1回又は2回以上繰り返し、副骨材の散布面を転圧して、硬質の主骨材の間隙に軟質の副骨材が入り込んだ凍結抑制表面処理層を構築する、凍結抑制表面処理層の構築方法。
  2. 硬質の主骨材を散布する前に、路面上に結合材を散布する工程を含む請求項1記載の凍結抑制表面処理層の構築方法。
  3. 結合材として、結合材若しくは結合材中の蒸発残留物の60℃における絶対粘度が15000ポアズ以上のものを使用する請求項1又は2記載の凍結抑制表面処理層の構築方法。
  4. 結合材として、結合材若しくは結合材中の蒸発残留物が、以下のa)〜d)に示す特性を有するものを使用する請求項1、2又は3記載の凍結抑制表面処理層の構築方法
    a)針入度が50〜150(1/10mm)、
    b)軟化点が50〜120℃、
    c)25℃におけるタフネスが70〜320kgf・cm、
    d)25℃におけるテナシティが30〜300kgf・cm。
  5. 結合材が実質的に無色の人工アスファルトである請求項1ないしのいずれかに記載の凍結抑制表面処理層の構築方法
  6. 結合材として使用される実質的に無色の人工アスファルトが、石油系配合油及び/又は潤滑油と粘着付与剤樹脂とを、重量百分率で、石油系配合油及び/又は潤滑油:粘着付与剤樹脂=(60〜85%):(40〜15%)の割合で含むものである請求項記載の凍結抑制表面処理層の構築方法
  7. 結合材が、20℃における粘度が40センチポアズ以上の人工アスファルト乳剤である請求項5又は6記載の凍結抑制表面処理層の構築方法
  8. 結合材である人工アスファルト乳剤の分解を促進する分解補助剤を、人工アスファルト乳剤と同時期に又は相前後して散布する工程を含む請求項記載の凍結抑制表面処理層の構築方法
  9. 結合材が、20℃における粘度が約40センチポアズ以上のアスファルト乳剤である請求項1ないしのいずれかに記載の凍結抑制表面処理層の構築方法
  10. 結合材であるアスファルト乳剤の分解を促進する分解補助剤を、アスファルト乳剤と同時期に又は相前後して散布する工程を含む請求項記載の凍結抑制表面処理層の構築方法
  11. 請求項1ないし10のいずれかに記載の凍結抑制表面処理層の構築方法によって構築された、硬質の主骨材の間隙に軟質の副骨材が入り込んだ凍結抑制表面処理層。
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