JP2001317554A - 転がり軸受用保持器 - Google Patents

転がり軸受用保持器

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JP2001317554A JP2000138945A JP2000138945A JP2001317554A JP 2001317554 A JP2001317554 A JP 2001317554A JP 2000138945 A JP2000138945 A JP 2000138945A JP 2000138945 A JP2000138945 A JP 2000138945A JP 2001317554 A JP2001317554 A JP 2001317554A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 寸法安定性、柔軟性、耐熱性、耐薬品性を向
上させた安価な転がり軸受用プラスチック保持器を提供
する。 【解決手段】 重合度60〜120のポリアミド9T樹
脂からなる転がり軸受用保持器。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高機能を要求され
る各種転がり軸受用のプラスチック保持器に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、転がり軸受は転動体の種類によ
って玉軸受ところ軸受に分けられ、それぞれが形状や用
途によっていくつかの種類に分類される。そして、各種
の軸受に使用される保持器にも各種タイプがある。
【0003】玉軸受用保持器には、図1に示す一般型保
持器、図2の冠型保持器、図3のアンギュラ玉軸受用保
持器、図示しないスラスト玉軸受用保持器等がある。一
方、ころ軸受用保持器には、図4に示す円錐ころ軸受用
保持器、図5に示す球面ころ軸受用保持器、図6に示す
円筒ころ軸受用保持器、図示しないスラスト軸受用保持
器、図示しないスラスト玉球面ころ軸受用保持器等の保
持器がある。
【0004】例えば、図2に示す冠型保持器を組み込ん
だ転がり軸受は、図7に示すように、外周面に内輪軌道
1を有する内輪2と、内周面に外輪軌道3を有する外輪
4と、複数個の転動体5と、この複数個の転動体5を保
持して案内するために内輪軌道1と外輪軌道3との間に
回転自在に設けられた保持器6とから構成される。
【0005】この種の保持器としては、金属保持器、プ
ラスチック保持器があり、プラスチック保持器の材料と
しては、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール、ポ
リブチレンテレフタレート、フッ素樹脂等のいわゆるエ
ンジニアリングプラスチックが単体のままで、あるいは
ガラス繊維、炭素繊維等の短繊維を混入して強化した複
合材の形態で使用されてきた。中でも、ポリアミドは材
料コストと性能のバランスが良好なことから、プラスチ
ック保持器の材料として多用され、一般的な環境条件で
は卓越した性能が確認されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ポリア
ミドは、その分子構造中にアミド結合を有しているため
に、水の影響を受け易く、高温多湿時の吸水、乾燥時の
脱水による寸法変化及び靱性の変化が大きい。ポリアミ
ドは、吸水により靱性がきわめて向上するために、あら
かじめ適度の水分を含有させることにより、軸受組立工
程での保持器の破損を防止することができるが、反面、
軸受使用環境で特に、高温多湿雰囲気では、吸水により
膨潤するという問題がある。
【0007】また、ポリアミドは、乾燥雰囲気中では脱
水し、収縮するという問題がある。したがって、ポリア
ミドは、寸法精度を要求される軸受の保持器には適用で
きないという問題がある。また、ポリアミドは、120
℃以上の連続使用条件下や、極圧添加剤、添加油等の油
類と常時あるいは間欠的に接触する条件下では、経時的
に材料が劣化してしまい、市場で要求される性能を満た
せなくなることがある。
【0008】一方、ポリアセタール、ポリブチレンテレ
フタレートは吸水による寸法変化は少ないが、保持器と
して要求される物理的特性が劣っている。例えば、ポリ
アセタールは強度特性及び耐熱性に劣り、ポリブチレン
テレフタレートは成型時や軸受組立時に必要な柔軟性に
劣り、保持器が破損する恐れがある。
【0009】また、近年、150℃を超える高温環境下
で使用される軸受用のプラスチック保持器材料として、
ポリエーテルスルホン酸(PES)、ポリエーテルイミ
ド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエー
テルエーテルケトン(PEEK)等のいわゆるスーパー
エンジニアリングプラスチック樹脂が提案されている。
【0010】しかし、これらの材料は非常に高価であ
り、また耐熱性や耐薬品性には優れているものの、保持
器として必要な適度な柔軟性に劣るという問題があるた
め、未だ汎用されるに至っていない。
【0011】そこで本発明の目的は、寸法安定性、柔軟
性、耐熱性、耐薬品性を向上させた安価な転がり軸受用
プラスチック保持器を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、重
合度60〜120のポリアミド9T樹脂からなる転がり
軸受用保持器により達成される。
【0013】本発明に用いられる重合度60〜120の
ポリアミド9T樹脂には、保持器の剛性を増加させる目
的、及び保持器の寸法精度安定化の目的で、繊維状充填
材が含有されることが好ましい。繊維状充填材としては
ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、チタ
ン酸カリウムウィスカー等を用いることができる。中で
も、ガラス繊維、炭素繊維は補強性が良好であり好まし
い。
【0014】繊維状充填材の含有率は、組成物全量に対
して、0〜50wt%が好ましい。特に、玉軸受用冠型
保持器及び円錐ころ軸受用保持器の場合、繊維状充填材
の含有率は0〜30wt%が好ましく、特に10wt%
〜25wt%が好ましい。また、球面ころ軸受用保持器
の場合、繊維状充填材の含有率は0〜50wt%が好ま
しい。また、円筒ころ軸受用保持器の場合、繊維状充填
材の含有率は20wt%〜40wt%が好ましい。
【0015】繊維の形態としては、アスペクト比が5〜
200が好適である。アスペクト比が5未満では保持器
の補強効果が十分に発揮されず脆弱となってしまい、ア
スペクト比が200超では混合時の均一分散がきわめて
困難となる。また、繊維径は特に限定されないが、平均
径が0.5μm〜20μmのものが好ましく、より好ま
しくは3μm〜15μmのものである。
【0016】
【作用】本発明によれば、重合度60〜120のポリア
ミド9T樹脂組成物からなる保持器は、耐熱性、耐薬品
性を有するとともに、高い機械的特性を有する。また、
この材料は適度な柔軟性を有しており、保持器に必要な
スナップヒット性を有している。更に、この材料は、低
吸水性であるので優れた寸法安定性を有する。
【0017】また、本発明の保持器は、高温剛性が高
く、高温時、高速回転時、高負荷条件等の過酷な使用条
件下で長期間の使用に耐えることができる。
【0018】ポリアミド9T樹脂の重合度が60〜12
0の範囲で、保持器としての機械的特性、組み込み性に
必要な靱性、耐熱性、寸法安定性等を有していることか
ら、各種軸受用保持器として使用することができる。し
かし、特に150℃を超しての、長期耐熱性が要求され
る使用環境においては、ポリアミド9T樹脂の重合度が
80以上がより好ましく、また、重合度が120超の場
合は成型性が低下する。したがって、重合度は80〜1
20が好適である。
【0019】
【発明の実施の形態】以下図示実施形態により、本発明
を説明する。本発明における重合度60〜120のポリ
アミド9T樹脂は、テレフタル酸とノナンジアミンの重
合ポリマーで、芳香環と高級脂肪族鎖からなる半芳香族
ポリアミドである。このようなポリアミド9T樹脂とし
ては、下記一般式1で表されるものを用いることができ
る。
【0020】
【化1】
【0021】上記一般式1の具体的な材料としては、
(株)クラレ製「ジェネスター(商品名)」を用いるこ
とができる。
【0022】本発明のプラスチック保持器の組成物は、
保持器のタイプ及び使用目的により、ポリアミド9T樹
脂組成物の全質量に対して0〜50wt%、好ましくは
10wt%〜50wt%の繊維状充填材を含有させるこ
とができる。この繊維状充填材は、保持器の剛性を増加
させる目的及び寸法精度を向上させる目的で、必要に応
じて適宜添加される。例えば、玉軸受の冠型保持器は、
製造工程での離型時の無理抜き及び玉組み込み時に比較
的変形し易いように、繊維状充填材が0〜30wt%含
有されることが好ましく、更に10wt%〜30wt%
含有されることが好ましく、特に10wt%〜25wt
%含有されることが好ましい。
【0023】また、製造工程で離型時に大きく変形させ
ずにすみ、転動体をより広い面で受けてその姿勢をより
強く拘束することにより、軸受回転動作時に転動体の姿
勢を正しく保持するタイプの円筒ころ軸受用保持器にお
いては、変形能よりも動作時に発生する転動体からの比
較的大きな力を支持する必要がある。したがって、この
種の保持器は、耐熱性と剛性の向上を目的として、繊維
状充填材が20〜40wt%含有されることが好まし
い。
【0024】繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊
維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、チタン酸カリ
ウムウィスカー等を用いることができる。
【0025】繊維状充填材の含有率が50wt%超だ
と、樹脂組成物の溶融流動性が著しく低下して成型性が
悪くなるばかりでなく、材料の変形能がきわめて小さく
なり、保持器成型時の無理抜きが困難になり、また軸受
組み込み時に保持器が破損する恐れがある。また、繊維
状充填材の含有率が10wt%未満だと、機械的特性の
補強効果が小さく、また耐熱性も不足する。
【0026】これらのことから、より強い機械的強度と
変形能を必要とする玉軸受用冠型保持器及び円錐ころ軸
受用保持器の繊維状充填材の含有率は、0〜30wt%
が好ましく、10wt%〜30wt%が更に好ましく、
10wt%〜25wt%が特に好ましい。
【0027】本発明の保持器に用いられる重合度60〜
120のポリアミド9T樹脂と繊維状充填材との親和性
を持たせて樹脂と充填材との密着性を向上させるため、
及び充填材の分散性を向上させるために、繊維状充填材
を、シラン系カップリング剤やチタネートカップリング
剤等のカップリング剤や、その他目的に応じた表面処理
剤で処理することができるが、これらに限定されるもの
ではない。
【0028】なお、本発明の保持器に使用される樹脂組
成物に、本発明の目的を損なわない範囲で、熱安定剤、
固体潤滑剤、潤滑油、着色剤、帯電防止剤、離型剤、流
動性改良剤、結晶化促進剤等を適宜添加してもよい。
【0029】本発明の保持器に使用される樹脂組成物を
混合する手段は特に限定されない。各成分を別々に溶融
混合機に供給してもよく、また各成分をヘンシェルミキ
サー、リボンブレンダー等の混合機であらかじめ混合し
てから溶融混合機に供給してもよい。溶融混合機として
は、短軸又は二軸押し出し機、混合ロール、加圧ニーダ
ー、ブラベンダーブラストグラフ等の任意の装置が使用
できる。
【0030】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、本発明
はこれに限定されるものではない。 (1)試料保持器の製作 実施例及び比較例に使用した保持器の原材料は以下の通
りである。 PA9T樹脂 (株)クラレ製ジェネスター重合度
60の未強化グレード PA9T樹脂 (株)クラレ製ジェネスター重合度
80の未強化グレード PA9T樹脂 (株)クラレ製ジェネスター重合度
120の未強化グレード PA66樹脂 宇部興産(株)製宇部ナイロン20
20U PA46樹脂 DSM社製スタニールTW300 ガラス繊維 富士ファイバーガラス(株)製FES
S−015−0413(平均繊維長500μm、繊維径
10μm)
【0031】これらの原料を、表1に示す割合に配合し
た組成物を用いて、実施例と比較例の単列深溝玉軸受用
保持器を作成し、各種の試験を実施した。
【0032】組成物の製造には二軸押出機を用いた。ガ
ラス繊維は折損を防止するために定量サイドフィーダー
を用いて供給し、押し出して造粒した。得られたペレッ
トを用い、インラインスクリュー式射出成形機にて成型
し、所望の保持器形状(外径46mm、内径39mm)
とした。なお、保持器の形状は図2に示す冠型保持器と
した。前記保持器の各種材料の配合割合を表1に示す。
【0033】(2)寸法安定試験 最初に、本発明のプラスチック保持器の寸法安定性を確
認するために、(1)で得られた絶乾状態の保持器の外
形寸法を工具顕微鏡にて測定し、次に、その保持器を温
度60℃、相対湿度70%の恒温恒湿槽ないに入れて1
20時間吸水処理を実施した。そして、吸水処理した後
の保持器の外径寸法を前記測定器にて測定し、外径寸法
の変化率を求めた。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】表1から明らかなように、組成物のマトリ
ックスとしてPA9T樹脂を用いた実施例1,2の保持
器は、寸法変化率が0.20%以下であり、いずれも精
度の要求される用途の保持器として使用するに充分な寸
法安定性を有することが分かる。特にガラス繊維を30
wt%配合した実施例2の保持器は、寸法変化率が0.
07%ときわめて小さく、寸法安定性がより向上してい
ることが分かる。
【0036】一方、従来用いられていたポリアミド66
(PA66)及びポリアミド46(PA46)を組成物
のマトリックスとして用いた比較例1〜4の保持器は、
繊維状充填剤を配合することにより寸法変化率が向上す
るが、寸法変化率は0.2超であり、精度を要求される
用途の保持器としては許容範囲外であった。
【0037】(3)保持器組み込み性試験 次に、本発明のプラスチック保持器への転動体組み込み
試験を実施するために、図8に示す構成の、日本精工
(株)製の空気駆動型自動玉組み込み装置を使用して組
み込み試験を行った。
【0038】空気駆動型玉組み込み装置は図8(a)、
(b)に示すように、保持器11のポケット上に玉12
を等配した後、空気圧駆動のシリンダーロッド17に固
定された加圧板18を介して押すことにより、瞬間的に
全玉を保持器11のポケット部に組み込むことができる
装置である。
【0039】図8(b)において、基板13上にフレー
ム14、保持器支持板15を固定し、その保持器支持板
15上に玉12を等配した保持器11を載せ、フレーム
14に固定された空気圧シリンダー16から上下作動す
るシリンダーロッド17に固定された加圧板18を保持
器支持板15方向(下方向)に作動させ、玉12を押す
ことにより瞬間的に全玉を同時に保持器11のポケット
部に組み込む。このときのシリンダーロッド17の移動
速度は0.2m/sec、荷重は147N(15kg
f)、雰囲気温度は20℃であった。
【0040】組み込み試験用の保持器11は、前記実施
例1,2、比較例1〜4と同様の方法で作成し、寸法は
外径40mm、内径39mmで冠型保持器とした。この
場合の実施例3〜5及び比較例5〜9の各材料の配合割
合を表2に示す。組み込み試験用保持器はいずれも絶乾
品を使用した。
【0041】
【表2】
【0042】組み込み性の評価は、保持器の爪部に折損
及び白化現象が認められるか否化で行った。前記白化現
象が認められない場合を組み込み性良好とし、その成功
率を求めて表2に付記した。
【0043】表2から明らかなように、組成物のマトリ
ックスとしてPA9Tを用い、これに適量のガラス繊維
を配合した実施例3〜5の保持器は、いずれも爪部の折
損及び白化現象が認められなかった。一方、比較例5の
ように、ガラス繊維を40wt%と多量に配合した組成
物で作成した保持器は、すべての爪部に白化が認めら
れ、一部クラックの発生があった。
【0044】比較例6及び8のPA66及びPA46の
マトリックスにガラス繊維を各々20wt%配合した組
成物で作成した保持器は、組み込み性が良好であったが
比較例7,9のようにガラス繊維を40wt%と多量に
配合した組成物で作成した保持器は、爪部に白化が認め
られ、クラックの発生も多かった。本組み込み試験の結
果から明らかなように、PA9T樹脂からなる保持器
は、ガラス繊維配合量30wt%まで良好な組み込み性
を示した。
【0045】(4)保持器円環引張試験 本発明のプラスチック保持器における繊維状充填剤の配
合量が保持器に及ぼす影響を確認するために、実施例
3,4,5と比較例5の組成物で作成した保持器を用い
て円環引張試験を実施した。円環引張試験は図9に示す
円環引張治具に試験用保持器11を、そのゲート部11
gとウエルド11wが水平位置になるようにセットし、
島津製作所(株)製引張試験機(オートグラフAG−1
0KNG)を用いて10mm/minの引張速度で円環
引張試験を行った。結果を図10に示す。図10から明
らかなように、PA9T樹脂からなる保持器は、ガラス
繊維配合量0〜30wt%の範囲で良好な強度を示し
た。
【0046】(5)耐熱性試験 次に、本発明のプラスチック保持器の環境耐久性を評価
するために、熱劣化試験を実施した。まず、表3に示す
材料組成物で前記の寸法安定性及び玉軸受組み込み試験
と同じ寸法形状の冠型保持器を作成した。そして、熱劣
化試験は保持器を170℃の熱風循環式恒温槽中に10
00時間までの所定時間放置した。
【0047】
【表3】
【0048】試験後の保持器を試料として、前記保持器
円環引張試験と同じ島津製作所(株)製の引張試験機を
用い、図9に示すように、保持器を治具にセットして、
円環引張破断荷重を測定し、未処理の測定値を100%
として、強度保持率を求めた。伸びについても同様に未
処理を100%として伸び(内径基準)保持率を求め
た。試験結果を図11、図12に示す。
【0049】図11から明らかなように、実施例6及び
実施例7の重合度120のPA9T樹脂からなる保持器
の熱劣化は少なく、1000時間経過後においても約7
5%の強度を保持している。また、実施例8の重合度8
0のPA9T樹脂からなる保持器の劣化は少なく、10
00時間経過後で約65%の強度を保持している。一
方、比較例10,11のように重合度60のPA9T樹
脂からなる保持器は熱劣化が進行し、1000時間経過
後の強度は初期値の40%に低下している。
【0050】比較例13の耐熱性を有するPA46樹脂
からなる保持器も良好な耐熱性を示した。しかし、多用
されているPA66樹脂からなる保持器は本試験のよう
な170℃高温領域では劣化が進行し、1000時間経
過後では初期値の40%以下に低下している。
【0051】図12から明らかなように、伸びについて
も強度保持率と同様な傾向を示し、実施例6,7の重合
度120のPA9T樹脂からなる保持器の熱劣化は少な
く良好である。また、実施例8の重合度80のPA9T
樹脂からなる保持器の劣化は比較的少なく、1000時
間経過後で約61%の伸びを保持している。一方、比較
例10,11のように重合度60のPA9T樹脂からな
る保持器は熱劣化が進行し、1000時間経過後の伸び
は初期値の43%に低下している。
【0052】この結果から明らかなように、重合度80
〜120のPA9T樹脂からなる保持器は十分な耐熱性
を有することが分かる。
【0053】(6)玉軸受用保持器以外の各種保持器の
組み込み性試験 次に、玉軸受用保持器以外の各種の保持器について実施
した組み込み性評価試験について説明する。本組み込み
性試験では、特に繊維充填量と組み込み性との関係を中
心に説明する。
【0054】(a)円錐ころ軸受用保持器の場合 PA9T樹脂にガラス繊維を各種の割合で配合した円錐
ころ軸受用保持器を前記と略同様の方法で作成して組み
込み性試験を実施した。試験装置として、前記図8
(b)に示したものと同様の装置を用いた。
【0055】図13(a)に示すように、試験用保持器
21の内径側ポケット面にころ22を等配したものを、
図13(b)に示すように保持器支持板15上に載せ、
これに円錐ころ軸受の内輪24を軽く挿入した後、空気
圧シリンダーロッド17を下方向に作動させ、加圧板1
8を介し内輪24の大径側平面を押し込むことによって
瞬間的に全ころを同時に保持器21のポケット部に組み
込んだ。このときの、シリンダー作動速度は0.2m/
sec、荷重は245N(25kgf)、雰囲気温度は
20℃であった。
【0056】試験結果を図14に示す。この図から明ら
かなように、PA9T樹脂からなる円錐ころ軸受用保持
器は、ガラス繊維配合量が20wt%までは良好な組み
込み性を有することが分かる。
【0057】(b)球面ころ軸受用保持器の場合 前記同様にPA9T樹脂にガラス繊維を各種の割合で配
合した保持器を作成し、図8(b)に示したものと同様
の装置を用いて組み込み性試験を実施した。ただし、こ
の場合は、図15に示す特殊治具30を使用し、保持器
31のポケット部32に1個ずつころ33を組み込ん
だ。
【0058】すなわち、保持器31の大径フランジ面と
斜面とのなす角βと同一の角度αを持つ斜面を有する支
持台34に、高さが保持器31と同一で且つ直径が保持
器の小径側フランジ内径と同一の円盤35を固定し、こ
れに保持器31を挿入して保持器の大径側フランジ面を
支持台34の傾斜面に当てるとともに、保持器の任意の
ポケット32が真上に位置するように押さえ板36及び
ボルト37を用いて保持器31を固定した。
【0059】その最上部ポケット32に1個のころ33
を宛い、その長軸に対して垂直方向からシリンダーロッ
ド17により圧力Pを負荷することにより、ころ33を
保持器のポケット32に組み込んだ。いか、順次、他の
ポケットについても同様の操作を繰り返し、最終的に全
ポケット32にころ33を組み込んだ。このときのシリ
ンダー作動速度、荷重及び雰囲気温度は、円錐ころ軸受
用保持器の場合と同じとした。試験結果を図16に示
す。図16から明らかなように、PA9T樹脂からなる
球面ころ軸受用保持器は、ガラス繊維配合量50wt%
まで良好な組み込み性を有することが分かる。
【0060】(c)円筒ころ軸受用保持器の場合 同じくPA9T樹脂にガラス繊維を各種の割合で配合し
た円筒ころ軸受用保持器を作成して、前記同様の装置を
用いて組み込み性試験を実施した。ただし、この場合は
図17に示す特殊治具40を使用して、ころを1個ずつ
組み込んだ。すなわち、この特殊治具40の支持台44
は、その上部に、保持器支持部44aを有する。その保
持器支持部44aは、保持器41の外周と同一の曲率及
び保持器厚みと同一の幅を有する矩形断面の凹部40a
と、該凹部40aの中央部に設けられ、保持器のポケッ
ト42の高さと同一の幅を有する矩形断面の溝40bと
からなっている。その保持器支持部44aに、任意のポ
ケット42が水平に位置するように保持器41を挿入
し、保持器41の内径側よりポケット42にころ43を
1個宛う。そして、支柱45の上部に支点45aを介し
て回動自在に取り付けたアーム46に固定したパンチ4
7を、図示のように上述のころ43に接するようにセッ
トする。
【0061】このようにセットした治具40を、前記同
様の空気圧駆動型自動ころ組み込み装置に組み付けて、
アーム46の他端48に空気圧シリンダーロッド17に
より圧力Pを負荷することにより、ころ43を保持器の
ポケット42に組み込んだ。以下、順次他のポケットに
ついても同様の操作を繰り返し、最終的には全ポケット
42にころ43を組み込んだ。このときのシリンダー作
動速度、荷重及び雰囲気温度は前記円錐ころ軸受用保持
器の場合と同じとした。
【0062】試験結果を図18に示す。図18から明ら
かなように、PA9T樹脂からなる円筒ころ軸受用保持
器は、ガラス繊維配合量が40wt%まで良好な組み込
み性を有することが分かる。
【0063】なお、上記実施例では、形状の点から転動
体組み込み(保持器組み込み)に対し最も不利と思われ
る冠型玉軸受用保持器、円錐ころ軸受用保持器、球面こ
ろ軸受用保持器、円筒ころ軸受用保持器に対して実装試
験を行ったが、その他の種類の保持器でも、PA9T樹
脂を使用して製造した場合は、十分な性能を示すこと
は、上記各実施例の結果より明らかである。
【0064】すなわち、本発明の保持器は、冠型玉軸受
用保持器、円錐ころ軸受用保持器、球面ころ軸受用保持
器、円筒ころ軸受用保持器に限らず、図1に示す一般玉
軸受用保持器、図3に示すアンギュラ玉軸受用保持器、
その他、ニードル軸受用保持器、ローラクラッチ用保持
器等の他の保持器にも適用できる。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、使用する組成物のベー
スとなるマトリックス樹脂として、優れた耐熱性、対油
性、耐薬品性、寸法安定性、靱性を示すとともに、高い
機械的性質を有しているポリアミド9T樹脂を使用した
ので、過酷な環境条件(高温雰囲気、油や薬品と接触す
る条件、高速回転条件、高負荷条件、多湿環境等)で長
時間の使用に耐え得る保持器を提供できる。また、本発
明の保持器は、吸水性、寸法安定性並びに組み込み性を
大きく向上させることができ、かつ精度の要求される用
途の保持器を安価に提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】玉軸受用保持器の斜視図である。
【図2】冠型保持器の斜視図である。
【図3】アンギュラ玉軸受用保持器の斜視図である。
【図4】円錐ころ軸受用保持器の斜視図である。
【図5】球面ころ軸受用保持器の斜視図である。
【図6】円筒ころ軸受用保持器の斜視図である。
【図7】冠型保持器を組み込んだ転がり軸受用保持器の
半断面図である。
【図8】冠型保持器組み込み性試験の説明図で、(a)
は保持器平面図、(b)は同試験装置の概略図である。
【図9】円環引張試験治具を用いた保持器引張強度試験
の説明図である。
【図10】冠型保持器の繊維状充填材の配合量と保持器
強度との試験結果を示したグラフである。
【図11】冠型保持器の耐熱性試験結果で円環引張強度
保持率を示したグラフである。
【図12】冠型保持器の耐熱性試験結果で円環引張伸び
保持率を示したグラフである。
【図13】円錐ころ軸受用保持器の組み込み性試験の説
明図で、(a)は保持器平面図、(b)は同装置の概略
図である。
【図14】円錐ころ軸受用保持器の繊維状充填材の配合
量と保持器組み込み性の関係を示したグラフである。
【図15】球面ころ軸受用保持器の組み込み性試験に用
いたころ組み付け治具の側面図である。
【図16】球面ころ軸受用保持器の繊維状充填材の配合
量と保持器組み込み性の関係を示したグラフである。
【図17】円筒ころ軸受用保持器の組み込み性試験に用
いたころ組み付け治具の側面図である。
【図18】円筒ころ軸受用保持器の繊維状充填材の配合
量と保持器組み込み性の関係を示したグラフである。
【符号の説明】
11 玉軸受用冠型保持器 21 円錐ころ軸受用保持器 31 球面ころ軸受用保持器 41 円筒ころ軸受用保持器

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重合度60〜120のポリアミド9T樹
    脂からなる転がり軸受用保持器。
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