JP2019052706A - 円すいころ軸受用保持器および円すいころ軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】円すいころ軸受に組み付ける際に、割れや白化が生じにくく、かつ耐熱性、耐油性に優れている円すいころ軸受用保持器を提供することを目的とする。【解決手段】保持器5は、円すいころ軸受に用いられ、大径リング部6と、小径リング部7と、これらを連結する複数の柱部8とを備え、保持器5は、樹脂組成物の射出成形体であり、この樹脂組成物は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに繊維状補強材を配合してなる組成物であり、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、ジアミン成分が1,10−デカンジアミンを主成分とし、繊維状補強材として、樹脂組成物全体に対して、ガラス繊維を15〜50質量%、または、炭素繊維を10〜35質量%含む。【選択図】図2

Description

本発明は、円すいころ軸受用保持器および円すいころ軸受に関し、特に、トランスミッション装置やディファレンシャル装置、産業機械、鉄道車両に用いられる樹脂製の円すいころ軸受用保持器および該保持器を用いた円すいころ軸受に関する。
従来、円すいころ軸受の保持器としては金属材質が用いられてきた。しかし、円すいころ軸受の軽量化等の観点から、樹脂製の保持器を用いることが有効と考えられる。ただし、樹脂製の円すいころ軸受用保持器を用いるためには、様々な問題がある。
例えば、樹脂製の円すいころ軸受用保持器は、円すいころ軸受に組み付ける際に、保持器を大きく変形させる必要がある。そのため、樹脂製の円すいころ軸受用保持器には、他の軸受用保持器では要求されない、大きな変形が可能な高い柔軟性が要求される。また、円すいころ軸受は、自動車のトランスミッション等の油潤滑環境下で使用されることが多いため、樹脂製の円すいころ軸受用保持器には、耐油性も要求される。
保持器の合成樹脂としては、一般的には、ポリアミド66樹脂やポリアミド46樹脂などが用いられ、必要に応じてこれらにガラス繊維を含有させたものが用いられる(特許文献1参照)。また、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性をより向上させる目的でポリアミド9T樹脂を使用した保持器も提案されている(特許文献2、3参照)。また、主鎖中に芳香族環を有するポリアミドにエラストマーを配合した樹脂製の円すいころ軸受用保持器も提案されている(特許文献4参照)。さらに近年では、スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)の中でも耐油性が高いポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を用いた保持器(特許文献5参照)や、テレフタル酸と1,10−デカンジアミンを主成分としたポリアミド樹脂を用いた保持器(特許文献6参照)が提案されている。
特開2000−227120号公報 特開2001−317554号公報 特開2006−207684号公報 特開2006−57694号公報 特開2016−196944号公報 特開2016−121735号公報
上述したように、樹脂製の円すいころ軸受用保持器は組み付け時に、他の軸受用保持器に比べて大きな変形が必要となる。そのため、該保持器には組み付けの際に割れることがないよう、さらに樹脂が白化しないように、高い柔軟性と強度が必要になる。また、射出成形で製造される樹脂製の保持器には、成形時に樹脂組成物が合流する領域にウエルド部が形成されるため、組み付けの際に該ウエルド部で割れることがないよう、ウエルド部の強度も求められる。
特許文献1に記載される一般的な保持器材質であるポリアミド66樹脂やポリアミド46樹脂は、吸水率が高く、それに伴って保持器寸法が変化するため、吸湿された状態で寸法管理して使用する必要がある。また、吸湿後の強度および弾性率は吸湿前に比較して大きく低下する。さらに、ポリアミド66樹脂などの脂肪族ポリアミドは、耐油性や耐熱性が不十分であり、例えば自動車のトランスミッション用軸受等の潤滑油中で使用する場合には、120〜130℃程度が限界である。
特許文献2、3に記載されるポリアミド9T樹脂は、芳香族ポリアミドであることから、ポリアミド66樹脂(融点267℃)、ポリアミド46樹脂(融点295℃)と比較して、高い耐熱性を備えている(融点300℃)。また、脂肪族ポリアミドと比較して吸水性は低くなる。しかし、弾性率が高く、靱性が低くなることから、組み付け時にウエルド部への応力集中が発生し、ウエルド部での割れが発生しやすくなる。その結果、保持器としての強度が低下するおそれがある。また、特許文献4には、ウエルド部の強度に関する記載はないが、エラストマーは高コストな材料であるため、エラストマーを使用することで保持器のコストアップにつながるおそれがある。
特許文献5に記載されるPPS樹脂を含む樹脂組成物を用いた場合には、ウエルド部の強度が低く軸受に組み付ける際にウエルド部で割れたり、変形した箇所で樹脂が白化したりするおそれがある。また、特許文献6では、該特許文献6記載の樹脂組成物をアンギュラ玉軸受に適用し、該軸受を高速回転させた条件下での温度上昇を評価している。しかしながら、該樹脂組成物を円すいころ軸受に適用し、円すいころ軸受に要求される特性に着目して評価はされていない。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、円すいころ軸受に組み付ける際に、割れや白化が生じにくく、かつ耐熱性、耐油性に優れた円すいころ軸受用保持器、および該保持器を用いた円すいころ軸受を提供することを目的とする。
本発明の円すいころ軸受用保持器は、円すいころ軸受に用いられ、大径リング部と、小径リング部と、これらを連結する複数の柱部とを備えてなる円すいころ軸受用保持器であって、上記円すいころ軸受用保持器は、樹脂組成物の射出成形体であり、該樹脂組成物は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに繊維状補強材を配合してなる組成物であり、上記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、上記ジアミン成分が1,10−デカンジアミンを主成分とし、上記繊維状補強材として、上記樹脂組成物全体に対して、ガラス繊維を15〜50質量%、または、炭素繊維を10〜35質量%含むことを特徴とする。
上記ポリアミド樹脂は、融点が310℃以上であることを特徴とする。
上記円すいころ軸受用保持器は、上記円すいころ軸受に組み付ける際に、弾性変形を経て組み込まれることを特徴とする。また、150℃以上の高温の油中で使用されることを特徴とする。
本発明の円すいころ軸受は、外周面にテーパ状の軌道面を有する内輪と、内周面にテーパ状の軌道面を有する外輪と、上記内輪の軌道面と上記外輪の軌道面との間を転動する複数の円すいころと、上記円すいころをポケット部で転動自在に保持する保持器とを備える円すいころ軸受であって、上記保持器が、本発明の円すいころ軸受用保持器であることを特徴とする。
本発明の円すいころ軸受用保持器は、大径リング部と、小径リング部と、これらを連結する複数の柱部とを備えてなり、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を、ジアミン成分が1,10−デカンジアミンを、それぞれ主成分とする所定のポリアミド樹脂に、ガラス繊維を15〜50質量%または炭素繊維を10〜35質量%配合してなる樹脂組成物を射出成形してなるので、剛性(弾性率)が高く、適度な靱性を有する。そのため、ウエルド部での割れや変形部における樹脂の白化が生じることなく、円すいころ軸受に組み付けることができる。また、ジカルボン酸成分がテレフタル酸をジアミン成分が1,10−デカンジアミンをそれぞれ主成分とするポリアミド樹脂をベース樹脂とするので、非常に結晶化速度が速く、成形時のサイクルタイムを短くすることができ、生産性を向上できる。
ベース樹脂とする上記ポリアミド樹脂は、融点が310℃以上であるので、保持器材料として最も多く用いられているポリアミド66樹脂(融点267℃)、ポリアミド46樹脂(融点295℃)と比較して、非常に高い耐熱性を備える。また、ポリアミド9T樹脂(融点300℃)と比較しても、同等以上の耐熱性を備える。このため、高温高速回転となる条件下でも変形を小さくできる。
また、耐油性、耐薬品性において、上記他のポリアミド樹脂よりも優れており、150℃以上の高温の油中で使用されるので、従来よりも厳しい使用条件でも使用可能となる。さらに、吸水率も、ポリアミド9T樹脂と同等程度であり、ポリアミド66樹脂やポリアミド46樹脂と比較して非常に少なく、吸水による寸法変化、物性低下を極力抑制できる。
円すいころ軸受用保持器は、円すいころ軸受に組み付ける際に弾性変形を経て組み込まれる。この際、変形に伴いウエルド部での割れや樹脂の白化が生じることが懸念されるが、本発明の円すいころ軸受用保持器は、剛性が高く、適度な靱性を有しているので、割れや白化を防止することができる。
本発明の円すいころ軸受は、内輪と、外輪と、この内・外輪間を転動する複数の円すいころと、この円すいころを保持する本発明の保持器とを備えるので、該円すいころ軸受を組み立てる際においても、保持器に割れや白化が発生しない。また、高温の潤滑油の環境下でも長期間使用することができる。
本発明の円すいころ軸受の軸方向断面図である。 本発明の円すいころ軸受用保持器を示す斜視図である。 保持器引張試験の概要を説明するための図である。
本発明の円すいころ軸受用保持器は、樹脂組成物を射出成形してなる樹脂製の保持器である。樹脂材料とする樹脂組成物は、所定のポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに所定量の繊維状補強材(ガラス繊維または炭素繊維)を配合してなる。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなり、各成分を構成するジカルボン酸とジアミンとを重縮合して得られる。上記ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分とする。テレフタル酸を主成分とすることで、ポリアミド樹脂の高温剛性などに優れる。また、上記ポリアミド樹脂を構成するジアミン成分は、1,10−デカンジアミンを主成分とする。1,10−デカンジアミンは 直鎖状の脂肪族ジアミンである。テレフタル酸および1,10−デカンジアミンは、いずれも化学構造の対称性が高いため、これらを主成分とすることで、高い結晶性のポリアミド樹脂が得られる。
本発明では、上記ポリアミド樹脂を構成するジアミン成分について、上述のとおり、炭素数が10である直鎖状の1,10−デカンジアミンを主成分として用いている。主成分とするジアミン成分のモノマー単位の炭素数が10であり、偶数であるので、奇数である場合と比較して、より安定な結晶構造をとり、結晶性が向上する(偶奇効果)。また、主成分とするジアミン成分の炭素数が8以下の場合には、上記ポリアミド樹脂の融点が分解温度を上回るおそれがある。ジアミン成分の炭素数が12以上の場合には、上記ポリアミド樹脂の融点が低くなり、高温、高速条件下で使用する場合に保持器が変形する等のおそれがある。なお、炭素数9、11のジアミンでは、ポリアミド樹脂の上記偶奇効果により、結晶性が不足するおそれがある。
上記ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分であるテレフタル酸およびジアミン成分である1,10−デカンジアミンの一部を、他の共重合成分で置き換えたものとしてもよい。ただし、他の共重合成分が多くなると、融点および結晶性が低下することから、主成分となるテレフタル酸および1,10−デカンジアミンの総量は、原料モノマーの総モル数(100モル%)に対して、95モル%以上とすることが好ましい。また、実質的にテレフタル酸および1,10−デカンジアミンのみから構成し、他の共重合成分を実質的に含まないことが特に好ましい。
他の共重合成分として用いる、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、他の共重合成分として用いる、1,10−デカンジアミン以外のジアミン成分としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミンなどの脂環族ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。また、上記ポリアミド樹脂には、カプロラクタムなどのラクタム類を共重合させてもよい。
上記ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、好ましくは15000〜50000であり、より好ましくは26000〜50000である。上記ポリアミド樹脂の重量平均分子量が15000未満であると、該樹脂の剛性が低下し、高速回転時に保持器が変形するおそれがある。一方、上記ポリアミド樹脂の重量平均分子量が50000をこえると、結晶化が遅くなり射出成形時の流動性が低下する。また、上記ポリアミド樹脂の相対粘度は、特に限定されないが、保持器の成形を容易にするためには、96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定される相対粘度を2.0以上とすることが好ましい。
上記ポリアミド樹脂は、その融点が310℃以上であることが好ましい。また、上限は特に限定されないが、成形加工性などを考慮して320〜340℃程度とすることが好ましい。保持器材料として一般に使用される他のポリアミド樹脂(ポリアミド66樹脂(同267℃)、ポリアミド46樹脂(同295℃)、ポリアミド9T樹脂(同300℃))よりも融点が高く、耐熱性に優れるので、高温、高速回転で使用されても、保持器の変形、焼付き、破損などを防止できる。なお、融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、不活性ガス雰囲気下で、上記ポリアミド樹脂を溶融状態から20℃/分の降温速度で25℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度(Tm)として測定できる。
上記ポリアミド樹脂は、そのガラス転移温度が130℃以上であることが好ましい。より好ましくは150℃以上である。保持器材料として一般に使用される他のポリアミド樹脂(ポリアミド66樹脂(同49℃)、ポリアミド46樹脂(同78℃)、ポリアミド9T樹脂(同125℃)よりもガラス転移温度が高いので、高温、高速回転で使用されても、保持器の変形を抑制でき、転動体と保持器の滑り摩擦による発熱を小さくできる。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、不活性ガス雰囲気下で、上記ポリアミド樹脂を急冷した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる階段状の吸熱ピークの中点の温度(Tg)として測定できる(JIS K7121)。
ベース樹脂とする上記ポリアミド樹脂に配合する繊維状補強材としては、ガラス繊維または炭素繊維を用いる。ガラス繊維は、SiO2、B23、Al23、CaO、MgO、Na2O、K2O、Fe23などを主成分とする無機ガラスから紡糸して得られる。一般に、無アルカリガラス(Eガラス)、含アルカリガラス(Cガラス、Aガラス)などを使用できる。上記ポリアミド樹脂への影響を考慮すれば無アルカリガラスが好ましい。無アルカリガラスは、組成物中にアルカリ成分をほとんど含んでいないホウケイ酸ガラスである。アルカリ成分がほとんど入っていないので、ポリアミド樹脂への影響がほとんどなく樹脂組成物の特性が変化しない。ガラス繊維としては、例えば、旭ファイバーグラス社製:03JAFT692、MF03MB120、MF06MB120などが挙げられる。
炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系(PAN系)、ピッチ系、レーヨン系、リグニン−ポバール系混合物など原料の種類によらないで使用できる。ピッチ系炭素繊維としては、例えば、クレハ社製:クレカ M−101S、同M−107S、同M−101F、同M−201S、同M−207S、同M−2007S、同C−103S、同C−106S、同C−203Sなどが挙げられる。また、PAN系炭素繊維としては、例えば、東邦テナックス社製:ベスファイトHTA−CMF0160−0H、同HTA−CMF0040−0H、同HTA−C6、同HTA−C6−S、または、東レ社製:トレカMLD−30、同MLD−300、同T008、同T010などが挙げられる。
繊維状補強材としてガラス繊維を用いる場合、その配合量は、樹脂組成物全体に対して15〜50質量%とする。繊維状補強材として炭素繊維を用いる場合、その配合量は、樹脂組成物全体に対して10〜35質量%とする。ガラス繊維または炭素繊維を上記範囲とすることで、保持器の剛性を高め、高温、高速回転となる条件下でも保持器の変形を小さくし、発熱量を小さくできる。さらに、円すいころ軸受保持器の形状を射出成形時に無理抜きする形状とする場合や、円すいころ軸受に組み付ける際のウエルド部の十分な強度(引張強度)を確保することを考慮すれば、ガラス繊維を用いる場合は樹脂組成物全体に対して30〜50質量%が好ましく、炭素繊維を用いる場合は樹脂組成物全体に対して20〜35質量%が好ましい。
本発明における樹脂組成物には、保持器機能や射出成形性を損なわない範囲であれば、必要に応じて、上記繊維状補強材以外の添加剤を配合してもよい。他の添加剤として、例えば、固体潤滑剤、無機充填材、酸化防止剤、帯電防止剤、離型材などを配合できる。
上記樹脂組成物を構成する各材料を、必要に応じて、ヘンシェルミキサー、ボールミキサー、リボンブレンダーなどにて混合した後、二軸混練押出し機などの溶融押出し機にて溶融混練し、成形用ペレットを得ることができる。なお、充填材の投入は、二軸押出し機などで溶融混練する際にサイドフィードを採用してもよい。この成形用ペレットを用いて射出成形により保持器を成形する。射出成形時は、樹脂温度を上述のポリアミド樹脂の融点以上とし、金型温度を該ポリアミド樹脂のガラス転移温度未満に保持して行なう。
本発明の転がり軸受用保持器の樹脂材料とする樹脂組成物は、上述のとおり、所定のポリアミド樹脂に所定量の繊維状補強材(ガラス繊維または炭素繊維)を配合してなるので、融点およびガラス転移温度が高く、優れた耐熱性、耐油性、耐薬品性、寸法安定性、靱性を示すとともに高い機械的性質を有する。このため、本発明の円すいころ軸受用保持器は、高速回転域などの過酷な環境条件(高温雰囲気、油や薬品と接触する条件、高速回転条件、高負荷条件、多湿環境など)で長時間の使用に耐え得る保持器となる。
また、上記樹脂組成物は、吸水性が小さいため、吸水・吸湿による膨潤、膨張に伴う寸法変化や物性低下を抑制できる。本発明の円すいころ軸受用保持器は、寸法安定性に優れ、精度の要求される用途の保持器として安価に提供できる。
本発明で用いるポリアミド樹脂において、ジカルボン酸成分またはジアミン成分として、植物由来の原料を用いてもよい。例えば、ひまし油を出発原料とした1,10−デカンジアミンを使用できる。植物のようなバイオマス由来原料を採用することで、樹脂製保持器の焼却処分に伴う二酸化炭素の実質的な排出量を、バイオマス由来原料を用いない場合よりも低減できる。ここで、バイオマス由来原料を用いた植物性プラスチックであるかどうかは、樹脂を構成している炭素について、放射性同位元素である14Cの濃度を測定することで判別できる。14Cの半減期は5730年であることから、1千万年以上の歳月を経て生成されるとされる化石資源由来の炭素には14Cが全く含まれない。このことから樹脂中に14Cが含まれていれば、少なくともバイオマス由来の原料を用いていると判断できる。
本発明の円すいころ軸受用保持器および円すいころ軸受を図1および図2に基づいて説明する。図1は、本発明の円すいころ軸受の軸方向断面図であり、図2は、図1の円すいころ軸受における保持器の斜視図である。図1に示すように、円すいころ軸受1は、外周面にテーパ状の軌道面2aを有する内輪2と、内周面にテーパ状の軌道面3aを有する外輪3と、内輪2の軌道面2aと外輪3の軌道面3aとの間を転動する複数の円すいころ4と、円すいころ4を周方向一定間隔で転動自在に保持する保持器5とを備えている。各軌道面は、軸方向に沿って該軌道面を構成する径が増加・減少するテーパ状である。内輪2の大径側端部には大鍔2bが、小径側端部には小鍔2cがそれぞれ一体形成されている。円すいころ軸受における内輪は、テーパ状の軌道面を有することから軸方向に見て小径側と大径側とがあり、「小鍔」は小径側端部に設けられた鍔であり、「大鍔」は大径側端部に設けられた鍔である。
図2には、本発明の円すいころ軸受用保持器の一例を示す。保持器5は、大径リング部6と、小径リング部7と、これらを連結する複数の柱部8とを備えてなり、隣接する柱部8同士の間にポケット部9が形成されている。このポケット部9に円すいころが収納される。保持器5は射出成形体であるため、成形時に樹脂組成物が合流する領域にウエルド部が形成される。ウエルド部は、保持器円環において応力集中により破断しやすい箇所である。ウエルド部の位置は、ゲート位置によって異なるが、例えば、各ポケット部の小径リング部の中央付近に形成される。
本発明の円すいころ軸受の組立方法は、まず、内輪、保持器、および円すいころを組み付けて一体品とし、さらに、この一体品と外輪とを組み付けることで組み立てられる。上記一体品は、例えば、保持器の各ポケット部に円すいころをそれぞれ配置(仮入れ)した後、この状態で内輪を内輪の小鍔部側(小径側端部側)から軸方向に沿って圧入することで組み付けられる。また、上記一体品は、内輪に円すいころをそれぞれ等間隔で配置した後、この状態で保持器を内径側から軸方向に沿って圧入することでも組み付けられる。一体品の組み付け時には、保持器を弾性変形させながら、円すいころを保持器のポケット部に組み込む(かち込む)。また、一体品と外輪とを組み付ける際にも、円すいころに応力が加わることで保持器は弾性変形させられる。
円すいころ軸受用保持器は、上記のような円すいころ軸受に組み付ける際の弾性変形に伴って、ウエルド部が割れたり、ポケット部(ポケット部を構成する柱部などの変形する箇所)が白化したりすることが懸念される。これに対し、本発明の円すいころ軸受用保持器は、高い剛性と適度な靭性を有しているので、ウエルド部が割れたり、ポケット部が白化したりすることを防ぐことができる。そのため、ウエルド部の割れや、ポケット部の白化がない保持器となる。なお、白化とは、樹脂を屈曲させたときに樹脂が白く変色する現象であり、白化した部分は機械的特性など各種特性が低下する。
さらに、本発明の円すいころ軸受用保持器は、耐熱性や耐油性に優れるため、高温の油中においても長期間使用することができる。そのため、本発明の円すいころ軸受は、トランスミッション装置やディファレンシャル装置、産業機械、鉄道車両の円すいころ軸受として好適である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
実施例および比較例に用いる原材料を一括して以下に示す。
(1)樹脂材料
ポリアミド樹脂A:テレフタル酸と1,10−デカンジアミンを主原料に使用した樹脂(ユニチカ社製XecoT XN500)
ポリアミド66樹脂:東レ社製アミランCM3001
ポリアミド46樹脂:DSM社製スタニールTW300
ポリアミド9T樹脂:クラレ社製ジェネスタN1000
PPS樹脂:DIC製FZ2100
(2)繊維状補強材
ガラス繊維:旭ファイバーグラス社製03JAFT692(平均繊維径10μm、平均繊維長3mm)
炭素繊維:東邦テナックス社製HTA−C6(平均繊維径7μm、平均繊維長6mm)
実施例1〜6、比較例1〜4これらの原材料を表1に示す割合で配合した樹脂組成物を用いて、実施例と比較例の円すいころ軸受用保持器を作製し、各種の試験を実施した。樹脂組成物の製造には二軸押出機を用いた。ガラス繊維、炭素繊維は折損を防止するために定量サイドフィーダーを用いて供給し、押し出して造粒した。得られた成形用ペレットを用い、インラインスクリュー式射出成形機にて成形し、所望の保持器形状(大外径50mm、小内径30mm、幅18mm)とした。成形後、80℃、95%相対湿度の雰囲気にて調湿処理を実施し、吸水させたものについて各試験を実施した。得られた保持器の調湿前後の質量から以下に示す算出式により吸水率を測定した。結果を表1に示す。
[吸水率の算出式]吸水率(質量%)=(調湿後の質量−調湿前の質量)× 100/調湿前の質量
[保持器引張試験]
本発明の保持器における破壊強さ(ウエルド部の引張強度)を確認するため、作製した保持器を用いて保持器引張試験を実施した。保持器引張試験には、保持器からポケット部3つ分だけを切断した試験用切片を用いた。図3に示すように、室温下において、試験用切片10の真ん中のポケット部に一対の治具11の突起を挿入した状態で、治具11の突起を互いに離間する方向に引っ張った際の引張破壊強さを測定した。測定は島津製作所社製の引張試験機(オートグラフAG50KNX)を用いて10mm/minの引張速度で行なった。結果を表1に示す。また、保持器の高温での引張破壊強さを確認するため、150℃の雰囲気下で、上記と同様にして保持器引張試験を実施した。結果を表1に併記する。
また、上記保持器引張試験と同様に、保持器を150℃のギヤ油中に1000時間浸漬した後の室温下における引張破壊強さを測定した。測定した1000時間浸漬した後の引張破壊強さと、1000時間浸漬する前の引張破壊強さ(初期値:上記保持器引張試験の室温下における引張破壊強さ)とから以下に示す算出式により保持率を測定した。結果を表1に示す。
[保持率の算出式]保持率(%)=1000時間浸漬後の引張破壊強さ/1000時間浸漬前の引張破壊強さ×100
[軸受への組み付け試験]
作製した保持器を円すいころ軸受に組み付け、その際における保持器の破損や白化を観察した。具体的には、保持器のポケット部に複数の円すいころをそれぞれ仮入れし、この状態で内輪を小径側端部側から軸方向に沿って圧入することによって、保持器を内輪に組み付けた。この組み付け時におけるウエルド部での割れやポケット部の白化の有無を評価した。結果を表1に示す。
Figure 2019052706
表1に示すように、実施例1〜6の室温における引張破壊強さは、耐油性に優れたスーパーエンプラであるPPS樹脂を用いた場合(比較例4)や耐熱性のあるポリアミド9T樹脂を用いた場合(比較例3)よりも優れていた。一方、ポリアミド66樹脂(比較例1)およびポリアミド46樹脂(比較例2)を用いた場合は、室温における引張破壊強さは実施例1〜6よりも高い結果を示したが、150℃における引張破壊強さは実施例1〜6の方が良好な結果を示した。
長期の耐油性および耐熱性に関して、実施例1〜6は、150℃の油中で1000時間浸漬した後であっても破壊強さが保持されており、PPS樹脂を用いた場合(比較例4)と同等の保持率を示した。
また、円すいころ軸受への組み付けに関して、実施例1〜6のすべてにおいてウエルド部での割れや、ポケット部での白化が見られなかった。一方、PPS樹脂を用いた場合(比較例4)には、割れや白化が見られた。
上記の結果より、本発明の円すいころ軸受用保持器は、機械的特性が優れるとともに、柔軟性と耐熱性に優れることが判明した。つまり、円すいころ軸受に要求される特性に優れており、円すいころ軸受用保持器として使用されることが好ましいといえる。
本発明の円すいころ軸受用保持器は、円すいころ軸受に組み付ける際に、割れや白化が生じにくく、かつ耐熱性、耐油性に優れているので、種々の円すいころ軸受の保持器として利用できる。該保持器を用いた本発明の円すいころ軸受は、特に、高温の潤滑油環境下で使用される自動車等のトランスミッション装置やディファレンシャル装置、産業機械、鉄道車両に使用される円すいころ軸受として好適である。
1 円すいころ軸受
2 内輪
3 外輪
4 円すいころ
5 保持器
6 大径リング部
7 小径リング部
8 柱部
9 ポケット部
10 試験用切片
11 治具

Claims (5)

  1. 円すいころ軸受に用いられ、大径リング部と、小径リング部と、これらを連結する複数の柱部とを備えてなる円すいころ軸受用保持器であって、
    前記円すいころ軸受用保持器は、樹脂組成物の射出成形体であり、該樹脂組成物は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに繊維状補強材を配合してなる組成物であり、
    前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、前記ジアミン成分が1,10−デカンジアミンを主成分とし、前記繊維状補強材として、前記樹脂組成物全体に対して、ガラス繊維を15〜50質量%、または、炭素繊維を10〜35質量%含むことを特徴とする円すいころ軸受用保持器。
  2. 前記ポリアミド樹脂は、融点が310℃以上であることを特徴とする請求項1記載の円すいころ軸受用保持器。
  3. 前記円すいころ軸受用保持器は、前記円すいころ軸受に組み付ける際に、弾性変形を経て組み込まれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の円すいころ軸受用保持器。
  4. 150℃以上の高温の油中で使用されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の円すいころ軸受用保持器
  5. 外周面にテーパ状の軌道面を有する内輪と、内周面にテーパ状の軌道面を有する外輪と前記内輪の軌道面と前記外輪の軌道面との間を転動する複数の円すいころと、前記円すいころをポケット部で転動自在に保持する保持器とを備える円すいころ軸受であって、
    前記保持器が、請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の円すいころ軸受用保持器であることを特徴とする円すいころ軸受。
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