JP6517054B2 - スラストワッシャ - Google Patents

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本発明は、自動車や建設機械のトランスミッションに使用するスラストワッシャに関する。
自動車、建設機械などのトランスミッションやエンジンのクランク部に使用するスラストワッシャは、円環平板状の摺動部材である。オートマチックトランスミッション(AT)のスラスト摺動部に使用されていた従来のスラストニードル軸受に代えて、小型軽量化などの目的でスラストワッシャが使用されている。この種のスラストワッシャでは、近年における燃費改善や高速化に伴い、耐熱性、靱性、低摩擦性、耐摩耗性への改善要求が強くなっている。
従来、このような用途に使用されるスラストワッシャとしては、円環の内部に、内周側から半径方向外側へ延びる潤滑油の環状導入空間が形成され、かつ、射出成形による一体形状として成形されて、内部に接合部分を有さずに成形されてなる樹脂製スラストワッシャが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、スラストワッシャの樹脂材料として、ガラス繊維や炭素繊維が充填されたポリアミド樹脂(ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂)などが例示されている。
また、溶融摩耗を起こすことなく、生産性を向上できるものとして、射出成形可能なフェノール樹脂にガラス繊維や炭素繊維を配合し、フィルムゲート方式を用いて射出成形した樹脂製スラストワッシャが提案されている(特許文献2参照)。
特開2013−204770号公報 特開2002−139027号公報
しかしながら、自動車、建設機械などの高馬力化、高速化に伴いスラストワッシャに対する上記諸特性向上の要求が一層強まっており、通常のポリアミド6樹脂やポリアミド66樹脂を材料とする場合は、耐摩耗性や耐熱性が満足できないおそれがある。また、フェノール樹脂の場合も靱性の面で満足できないおそれがある。さらに、燃費向上の面から低摩擦係数材料への期待がより一層強くなっている。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、耐熱性、靱性、低摩擦性、および耐摩耗性に優れ、製造コストも低減できるスラストワッシャを提供することを目的とする。
本発明のスラストワッシャは、樹脂組成物を成形してなり、上記樹脂組成物は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに繊維状補強材を配合してなる組成物であり、上記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、上記ジアミン成分が1,10−デカンジアミンを主成分とし、上記繊維状補強材は、ガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1つであり、上記樹脂組成物全体に対して10質量%以上60質量%未満含まれることを特徴とする。また、必要に応じて、上記樹脂組成物は、フッ素樹脂が上記樹脂組成物全体に対して5〜25質量%含まれることを特徴とする。
上記ポリアミド樹脂が、放射性同位元素である炭素14を含むことを特徴とする。また、上記スラストワッシャは、トランスミッション用のスラストワッシャであることを特徴とする。
本発明のスラストワッシャは、ジカルボン酸成分がテレフタル酸を、ジアミン成分が1,10−デカンジアミンを、それぞれ主成分とする所定のポリアミド樹脂に、ガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1つの繊維状補強材を所定量含む樹脂組成物を成形してなるので、耐熱性、靱性、低摩擦性、および耐摩耗性に優れ、高耐久性かつ低トルクなスラストワッシャとなる。また、高温、高速回転となる条件下でも、溶融摩耗や変形を抑制でき、スラストワッシャが原因でトランスミッションが焼付きロックすることを防止できる。さらに、ジカルボン酸成分がテレフタル酸をジアミン成分が1,10−デカンジアミンをそれぞれ主成分とするポリアミド樹脂をベース樹脂とするので、非常に結晶化速度が速く、成形時のサイクルタイムを短くすることができ、生産性を向上でき、製造コストの低減が図れる。これらの結果、自動車や建設機械のトランスミッションに使用するスラストワッシャとして好適に利用できる。
ベース樹脂とする上記ポリアミド樹脂は、融点が高く、従来のスラストワッシャ材料として用いられているポリアミド66樹脂などと比較して、非常に高い耐熱性を備え、より厳しい条件下(高温、高速回転)でも溶融摩耗や変形を抑制できる。また、耐油性も優れており、油潤滑条件下でも問題なく使用できる。
上記樹脂組成物は、フッ素樹脂が上記樹脂組成物全体に対して5〜25質量%含まれるので、より低摩擦となる。
ポリアミド樹脂を構成する成分の一部(例えば1,10−デカンジアミン)が植物より合成されるものであり、該ポリアミド樹脂に放射性同位元素である炭素14を含むので、石油由来の合成樹脂に比べて燃焼時の実質的な二酸化炭素排出量を低減できる。
本発明のスラストワッシャの一例を示す図である。 リング状試験片を示す図である。
本発明のスラストワッシャは、樹脂組成物を円環平板状に成形してなる樹脂製のスラストワッシャである。樹脂材料とする樹脂組成物は、所定のポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに所定量の繊維状補強材を配合してなる。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなり、各成分を構成するジカルボン酸とジアミンとを重縮合して得られる。上記ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分とする。テレフタル酸を主成分とすることで、ポリアミド樹脂の高温剛性などに優れる。また、上記ポリアミド樹脂を構成するジアミン成分は、1,10−デカンジアミンを主成分とする。1,10−デカンジアミンは直鎖状の脂肪族ジアミンである。テレフタル酸および1,10−デカンジアミンは、いずれも化学構造の対称性が高いため、これらを主成分とすることで、高い結晶性のポリアミド樹脂が得られる。
本発明では、上記ポリアミド樹脂を構成するジアミン成分について、上述のとおり、炭素数が10である直鎖状の1,10−デカンジアミンを主成分として用いている。主成分とするジアミン成分のモノマー単位の炭素数が10であり、偶数であるので、奇数である場合と比較して、より安定な結晶構造をとり、結晶性が向上する(偶奇効果)。また、主成分とするジアミン成分の炭素数が8以下の場合には、上記ポリアミド樹脂の融点が分解温度を上回るおそれがある。ジアミン成分の炭素数が12以上の場合には、上記ポリアミド樹脂の融点が低くなり、高温使用時にスラストワッシャが変形する等のおそれがある。なお、炭素数9、11のジアミンでは、ポリアミド樹脂の上記偶奇効果により、結晶性が不足するおそれがある。
上記ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分であるテレフタル酸およびジアミン成分である1,10−デカンジアミンの一部を、他の共重合成分で置き換えたものとしてもよい。ただし、他の共重合成分が多くなると、融点および結晶性が低下することから、主成分となるテレフタル酸および1,10−デカンジアミンの総量は、原料モノマーの総モル数(100モル%)に対して、95モル%以上とすることが好ましい。また、実質的にテレフタル酸および1,10−デカンジアミンのみから構成し、他の共重合成分を実質的に含まないことが特に好ましい。
他の共重合成分として用いる、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、他の共重合成分として用いる、1,10−デカンジアミン以外のジアミン成分としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミンなどの脂環族ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。また、上記ポリアミド樹脂には、カプロラクタムなどのラクタム類を共重合させてもよい。
上記ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、好ましくは15000〜50000であり、より好ましくは26000〜50000である。上記ポリアミド樹脂の重量平均分子量が15000未満であると、該樹脂の剛性が低下するおそれがある。一方、上記ポリアミド樹脂の重量平均分子量が50000をこえると、結晶化が遅くなり、射出成形時における樹脂の流動性が低下する。また、上記ポリアミド樹脂の相対粘度は、特に限定されないが、スラストワッシャの成形を容易にするためには、96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定される相対粘度を2.0以上とすることが好ましい。
上記ポリアミド樹脂は、その融点が310℃以上であることが好ましい。また、上限は特に限定されないが、成形加工性などを考慮して320〜340℃程度とすることが好ましい。融点範囲としては、310〜340℃が好ましく、310〜330℃がより好ましく、310〜320℃が特に好ましい。スラストワッシャ材料として一般に使用される他のポリアミド樹脂(ポリアミド66樹脂(同267℃))よりも融点が高く、耐熱性に優れるので、高温、高速回転で使用されても、スラストワッシャの溶融摩耗や変形を防止できる。なお、融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、不活性ガス雰囲気下で、上記ポリアミド樹脂を溶融状態から20℃/分の降温速度で25℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度(Tm)として測定できる。
上記ポリアミド樹脂は、そのガラス転移温度が130℃以上であることが好ましい。より好ましくは150℃以上である。スラストワッシャ材料として一般に使用される他のポリアミド樹脂(ポリアミド66樹脂(同49℃))よりもガラス転移温度が高いので、高温、高速回転で使用されても、スラストワッシャの溶融摩耗や変形を抑制できる。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、不活性ガス雰囲気下で、上記ポリアミド樹脂を急冷した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる階段状の吸熱ピークの中点の温度(Tg)として測定できる(JIS K7121)。
ベース樹脂とする上記ポリアミド樹脂に配合する繊維状補強材としては、ガラス繊維、炭素繊維、またはこれらの混合物を用いる。ガラス繊維は、SiO、B、Al、CaO、MgO、NaO、KO、Feなどを主成分とする無機ガラスから紡糸して得られる。一般に、無アルカリガラス(Eガラス)、含アルカリガラス(Cガラス、Aガラス)などを使用できる。上記ポリアミド樹脂への影響を考慮すれば無アルカリガラスが好ましい。無アルカリガラスは、組成物中にアルカリ成分をほとんど含んでいないホウケイ酸ガラスである。アルカリ成分がほとんど入っていないので、ポリアミド樹脂への影響がほとんどなく樹脂組成物の特性が変化しない。ガラス繊維としては、例えば、旭ファイバーグラス社製:03JAFT692、MF03MB120、MF06MB120などが挙げられる。
炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系(PAN系)、ピッチ系、レーヨン系、リグニン−ポバール系混合物など原料の種類によらないで使用できる。ピッチ系炭素繊維としては、例えば、クレハ社製:クレカ M−101S、同M−107S、同M−101F、同M−201S、同M−207S、同M−2007S、同C−103S、同C−106S、同C−203Sなどが挙げられる。また、PAN系炭素繊維としては、例えば、東邦テナックス社製:ベスファイト HTA−CMF0160−0H、同HTA−CMF0040−0H、同HTA−C6、同HTA−C6−S、または、東レ社製:トレカ MLD−30、同MLD−300、同T008、同T010などが挙げられる。
繊維状補強材の配合量は、樹脂組成物全体に対して10質量%以上60質量%未満とする。好ましくは20〜50質量%である。なお、繊維状補強材としてガラス繊維と炭素繊維との混合物を用いる場合は、合計量を上記範囲内とする。繊維状補強材が10質量%未満であると、スラストワッシャ(特にトランスミッション用)としての剛性や耐摩耗性などの機械的強度が得られないおそれがある。また、繊維状補強材が60質量%以上であると、成形性に劣るおそれがある。
上記樹脂組成物には、より低摩擦化を図るため、フッ素樹脂を配合できる。フッ素樹脂としては、スラストワッシャの使用温度に耐える耐熱性を有するものであれば使用できる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン(FEP)共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン(ETFE)共重合体樹脂などが挙げられる。これらの中でも、低摩擦性に優れることからPTFE樹脂が好ましい。
PTFE樹脂は、上記樹脂組成物中に均一に混和するために粉状の形態のものが好ましく、例えば、モールディングパウダー、ファインパウダー、または成形焼成後にγ線などの電子線照射をして粉砕したものなどであってよい。
フッ素樹脂の配合量は、樹脂組成物全体に対して5〜25質量%とすることが好ましい。フッ素樹脂が5質量%未満であると、スラストワッシャに十分な低摩擦性が付与されないおそれがある。また、フッ素樹脂が25質量%をこえると、上記所定のポリアミド樹脂本来の機械的強度が損なわれるおそれや、成形性が著しく悪くなるおそれがある。
また、上記樹脂組成物には、スラストワッシャの機能や成形性を損なわない範囲であれば、必要に応じて、他の添加剤を配合してもよい。このような添加剤として、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、ウォラストナイト、ガラスフレーク、クレーなどの無機添加剤が挙げられる。
上記樹脂組成物を構成する各材料を混合する手段は、特に限定されるものではなく、原料を個別に溶融混合機に供給してもよく、または予めヘンシェルミキサー、ボールミキサー、リボンブレンダーなどの汎用の混合機を用いて2種以上のものを同時に混合してもよい。その場合の混合温度は、通常300〜340℃、好ましくは300〜320℃である。また、成形方法は、圧縮成形、押出し成形、射出成形などを採用でき、均一溶融ブレンド体を形成して、射出成形または押出し成形を行なうこともできる。この中でも、生産性に優れ、後述の溝などを高精度で容易に形成できることから、射出成形を採用することが好ましい。射出成形時は、樹脂温度を上述のポリアミド樹脂の融点以上とし、金型温度は130〜150℃に保持して行なう。
本発明で用いるポリアミド樹脂において、ジカルボン酸成分またはジアミン成分として、植物由来の原料を用いてもよい。例えば、ひまし油を出発原料とした1,10−デカンジアミンを使用できる。植物のようなバイオマス由来原料を採用することで、スラストワッシャの焼却処分に伴う二酸化炭素の実質的な排出量を、バイオマス由来原料を用いない場合よりも低減できる。ここで、バイオマス由来原料を用いた植物性プラスチックであるかどうかは、樹脂を構成している炭素について、放射性同位元素である14Cの濃度を測定することで判別できる。14Cの半減期は5730年であることから、1千万年以上の歳月を経て生成されるとされる化石資源由来の炭素には 14Cが全く含まれない。このことから樹脂中に 14Cが含まれていれば、少なくともバイオマス由来の原料を用いていると判断できる。
本発明のスラストワッシャの一例を図1に基づいて説明する。図1(a)は本発明のスラストワッシャの斜視図であり、図1(b)はその平面図であり、図1(c)はその断面図である。図1に示すように、スラストワッシャ1は、円環平板状であり、その平面(スラストワッシャのスラスト滑り面)に溝2と、スラストワッシャの両平面を貫通する孔3が形成されている。また、スラストワッシャ1を固定するための突起4が形成されている。
オートマチックトランスミッション用のスラストワッシャ1は、相手材となるアルミニウム合金や炭素鋼との滑り接触(摺接)時にスラストワッシャまたは相手材の摩耗を抑えるために油潤滑条件下にて使用される。溝2や孔3は、この油通路となる。溝2は、スラストワッシャの少なくとも一方の面に通常2〜8本形成する。溝は、環状のスラストワッシャの軸を中心として放射状に略均等角度に配置され、内周側から外周側へかけて一様に配置されていることが好ましい。溝の断面形状としては、断面略矩形状(正方形、長方形、台形など)、スラスト滑り面を基準として溝側面が鈍角な傾斜面を有する断面溝形状、円弧状を有する断面溝形状などが挙げられる。
本発明ではスラストワッシャ1として、ガラス転移温度が高く、剛性に優れ、耐油性にも優れる上述のポリアミド樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物の成形体を用いているため、油通路となる溝の総面積が大きくなるような場合でも、高温、高速回転条件下での変形などを抑制できる。また、靱性、低摩擦性、耐摩耗性などにも優れ、近年におけるスラストワッシャ(特にトランスミッション用)への要求に十分に対応することができる。
また、スラストワッシャ1を射出成形で成形する場合、ゲートの位置および個数は適宜設定できるが、ゲート痕や、成形時に樹脂組成物が合流する領域に形成されるウエルド部が、スラストワッシャの肉厚の薄い部分(溝や孔の部分)を回避するように設計することが好ましい。例えば、図1に示すように、ゲート位置5を、溝とその溝と隣り合うもう一方との溝との略中間部分のスラストワッシャの外周面部に1箇所設ける。このゲート位置で成形することで、ウエルド部は、スラストワッシャの中心部分を基準として、ゲート位置から相対する反対側部分の周辺近傍部分に形成される。また、外周面部に形成することで、スラスト滑り面のゲート痕による悪影響などを回避できる。さらに、本発明のスラストワッシャでは、上述のポリアミド樹脂をベース樹脂とする樹脂組成物を用いて射出成形された成形体とすることで、靱性に優れ、上記ウエルド部での割れを防止できる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
実施例および比較例に用いる原材料を一括して以下に示す。
(1)樹脂材料
ポリアミド樹脂A:テレフタル酸と1,10−デカンジアミンを主原料に使用した樹脂(ユニチカ社製XecoT XN500)
ポリアミド66樹脂:東レ社製アミランCM3001
(2)繊維状補強材
ガラス繊維:旭ファイバーグラス社製03JAFT692(平均繊維径10μm、平均繊維長3mm)
炭素繊維:東邦テナックス社製HTA−C6(平均繊維径7μm、平均繊維長6mm)
(3)フッ素樹脂
PTFE樹脂粉末:喜多村社製KTL−610(再生PTFE)
実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例3
これらの原材料を表1に示す割合で配合し乾式混合した後、二軸溶融押出し機を用いて330〜340℃の条件で押出して造粒し、得られたペレットを射出成形機に供給して、シリンダー温度325〜340℃、射出圧力1000kg/cm 、金型温度100〜150℃の条件で射出成形し試験片を成形した。摩擦摩耗試験の試験片は、図2に示すリング状試験片6とし、その寸法は外径21mm、内径17mm、肉厚10mmである。なお、図2(a)はリング状試験片の平面図であり、図2(b)はその断面図である。
得られた試験片について、下記に示す(1)摩擦摩耗試験、(2)引張り試験を行ない、得られた結果を表1に示した。また、上記の試験片成形時の成形性について、問題なく成形できたものは「○」、流動性が悪く均一な成形品が得られなかったものは「×」とし、表1に併記した。
(1)摩擦摩耗試験
スラスト型摩耗試験機(自社製)を用い、面圧2MPa、滑り速度毎分128m、相手材:SUJ2、Mobil VELOCITE NO.3(VG2)中にて運転時間50時間で、50時間後の摩擦係数および比摩耗量(×10−8(mm/N・mm)を求めた。
(2)引張り試験
上記表に示す組成かつ成形条件で各実施例および比較例に対応するダンベル試験片を成形し、成形後に80℃95%RH下で3〜5時間調湿した。調湿後の試験片について、ISO527−1(JIS K 7161)に準拠し、引張速度5mm/minの条件で引張り強さ(MPa)を測定した。
Figure 0006517054
各実施例では、低摩擦で耐摩耗性に優れているが、比較例では、摩擦係数が高く、比摩耗量も大きな値を示した。
本発明のスラストワッシャは、耐熱性、靱性、低摩擦性、および耐摩耗性に優れるので、自動車や建設機械のトランスミッションに使用するスラストワッシャとして好適に利用できる。
1 スラストワッシャ
2 溝
3 孔
4 突起
5 ゲート位置
6 リング状試験片

Claims (4)

  1. 樹脂組成物を成形してなるスラストワッシャであって、
    前記樹脂組成物は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに繊維状補強材を配合してなる組成物であり、
    前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸を主成分とし、前記ジアミン成分が1,10−デカンジアミンを主成分とし、
    前記繊維状補強材は、ガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1つであり、前記樹脂組成物全体に対して10質量%以上60質量%未満含まれることを特徴とするスラストワッシャ。
  2. 前記樹脂組成物は、フッ素樹脂が前記樹脂組成物全体に対して5〜25質量%含まれることを特徴とする請求項1記載のスラストワッシャ。
  3. 前記ポリアミド樹脂が、放射性同位元素である炭素14を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載のスラストワッシャ。
  4. 前記スラストワッシャは、トランスミッション用のスラストワッシャであることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のスラストワッシャ。
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