JP2018169021A - 樹脂プーリ付き軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性、高温時強度、吸水後強度、耐熱性、耐塩化カルシウム性に優れ、寸法変化やクリープを抑制できる樹脂プーリ付き軸受を提供する。【解決手段】樹脂プーリ付き軸受1は、内輪12、外輪13、および、複数の転動体14を有する転がり軸受11と、外輪13に固定された樹脂製のプーリ2とを備えてなり、プーリ2が、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,10−デカンジアミンを主成分とするジアミン成分とからなるポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに繊維状補強材を配合してなる樹脂組成物の射出成形体であり、この樹脂組成物は、繊維状補強材としてガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1つを該組成物全体に対して10〜50質量%含む。【選択図】図2
Description
本発明は、樹脂製のプーリと転がり軸受からなる樹脂プーリ付き軸受に関する。特に、自動車の補機にエンジンの回転動力を伝達するための補機駆動用ベルトを案内するプーリや、アイドラプーリ、テンションプーリとして使用される樹脂プーリ付き軸受に関する。
従来、自動車の補機にエンジンの回転動力を伝達するための補機駆動用ベルトなどで使用されるプーリには、その重量軽減ならびにコスト削減の目的で、転がり軸受の外輪の外周に樹脂プーリを一体成形した樹脂プーリ付き軸受が用いられている。自動車におけるこれらのプーリは、高温や高衝撃、雨水、道路に散布された凍結防止剤(塩化カルシウム)などに曝される環境下で使用される。このため、樹脂プーリでは、ベルト張力に対応した機械的特性、ベルトを掛け渡して案内する案内部の形状精度、連続負荷使用時における耐熱性と耐塩化カルシウム性に優れることや、軸受との密着性を維持するために低吸水で寸法変化が少ないことが要求される。
このような特性を考慮し、従来、樹脂プーリの成形材料として、ガラス繊維などの強化繊維を所定量配合した強化ナイロン(ポリアミド)、例えば、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド612樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂などのガラス繊維強化材を用いることが知られている(特許文献1、2参照)。また、プーリの機械的強度および耐熱性を保持しながら塩化カルシウム耐性を高くするものとして、ポリアミド66樹脂とポリアミド612樹脂との混合ポリマーに、ガラス繊維を配合してなる樹脂材料が提案されている(特許文献3参照)。
ポリアミド66樹脂とポリアミド612樹脂との混合ポリマーのガラス繊維強化材による樹脂製プーリは、ガラス繊維強化ポリアミド66樹脂よりも耐塩化カルシウム性に優れる。しかし、ポリアミド612樹脂が、いわゆる海島構造で存在しており、ポリアミド612樹脂はポリアミド66樹脂よりも耐熱性に劣るため、全体として耐熱性や機械的強度に劣る。また、耐塩化カルシウム性についても、ポリアミド樹脂612単独と比較すれば劣る。
また昨今では、居住空間を確保するため、エンジンルーム内がコンパクトになり、各部品に求められる耐熱性がより厳しくなっている。ポリアミド612樹脂ではガラス転移温度(Tg)や融点が低く、吸水した状態での高温時の物性低下も大きいため、吸水時での高い高温物性が必要となっている。
Tgが低いことから、Tgをこえての線膨張係数が大きいため、転がり軸受と樹脂プーリ材との線膨張係数の違いから、締め代が小さくなり、高温時に転がり軸受外輪と樹脂プーリとの間で、剥がれ、すべり、フレッチングの発生といったおそれがある。また、耐熱性が低いため、使用条件によっては高温時にプーリのクリープが発生し、ベルトを適切に案内することができなくなるおそれがある。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、耐摩耗性、高温時強度、吸水後強度、耐熱性、耐塩化カルシウム性に優れ、寸法変化やクリープを抑制できる樹脂プーリ付き軸受を提供することを目的とする。
本発明の樹脂プーリ付き軸受は、内輪、外輪、および、上記内輪と上記外輪との間に介在する複数の転動体を有する転がり軸受と、上記外輪に固定された樹脂製のプーリとを備えてなる樹脂プーリ付き軸受であって、上記樹脂製のプーリが、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,10−デカンジアミンを主成分とするジアミン成分とからなるポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに繊維状補強材を配合してなる樹脂組成物の射出成形体であり、上記樹脂組成物は、上記繊維状補強材としてガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1つを該組成物全体に対して10〜50質量%含むことを特徴とする。
上記樹脂組成物は、上記繊維状補強材として、上記ガラス繊維を該組成物全体に対して10〜50質量%含む、または、上記炭素繊維を該組成物全体に対して10〜40質量%含むことを特徴とする。
上記ポリアミド樹脂のガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする。また、上記ポリアミド樹脂が、放射性同位元素である炭素14を含むことを特徴とする。
本発明の樹脂プーリ付き軸受は、その樹脂製のプーリが、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,10−デカンジアミンを主成分とするジアミン成分とからなるポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに繊維状補強材を配合してなる樹脂組成物の射出成形体であり、この組成物は繊維状補強材としてガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1つを該組成物全体に対して10〜50質量%含むので、耐熱性が高く、高温時かつ吸水後の強度低下やクリープが小さく、耐塩化カルシウム性や耐疲労性、耐摩耗性に優れる樹脂製プーリとなる。このため、樹脂プーリ付き軸受の信頼性が向上する。
ベース樹脂とする上記ポリアミド樹脂は、ガラス転移温度が120℃以上であるで、高温時に転がり軸受外輪と樹脂プーリとの間における、剥がれ、すべり、フレッチングの発生などを防止できる。
ポリアミド樹脂を構成する成分の一部(例えば1,10−デカンジアミン)が植物より合成されるものであり、該ポリアミド樹脂に放射性同位元素である炭素14を含むので、石油由来の合成樹脂に比べて燃焼時の実質的な二酸化炭素排出量を低減できる。
本発明の樹脂プーリ付き軸受の一例を図1および図2に基づいて説明する。図1は樹脂プーリ付き軸受を示す側面図であり、図2は図1の樹脂プーリ付き軸受の軸方向断面図である。図1および図2に示すように、樹脂プーリ付き軸受1は、ラジアル荷重を受ける転がり軸受11と、樹脂製のプーリ2とを備えてなる。転がり軸受11は、内輪12と、外輪13と、内輪12と外輪13との間に介在する複数の転動体14と、この転動体14を周方向に一定間隔で保持する保持器15とを備えている。樹脂製のプーリ2は、転がり軸受11の外輪13に固定されている。この形態のプーリ2は、外輪13に固定される内径円筒部3と、ベルト案内面を有する外径円筒部4と、内径円筒部3と外径円筒部4との間に設けられた円板部5と、円板部5の両面に放射状に設けられた複数のリブ6とを有する。プーリ2におけるベルト案内面の形状は、フラット形状である。
転がり軸受11では、内外輪間の軸方向両端開口部にシール部材16を設けており、転動体14の周囲にグリース17が封入されて潤滑がなされる。グリース17としては、プーリの使用温度を考慮して、例えば、ポリ−α−オレフィン油、アルキルジフェニルエーテル油、エステル油などを基油とし、ジウレア化合物などを増ちょう剤とするグリースが使用される。
プーリ2は所定の樹脂組成物の射出成形体である。プーリ2を転がり軸受11の外輪13に固定する方法は特に限定されないが、製造工程の簡略化が図れ、係合部不良の発生を防止できることから、射出成形により外輪13に重ねて一体に成形(インサート成形)することが好ましい。インサート成形では、金型内に予め転がり軸受を配置し、これに後述の所定の樹脂材料を充填してプーリを外輪の外径側に一体成形する。射出成形時のゲート位置は、形成されるウェルドなどを考慮して適宜設定できる。例えば、内径円筒部3の端面に所定円周間隔で複数のゲートを設けることができる。
図2に示すように、プーリ2の内径円筒部3は、外輪13の外径面から端面までを覆うように形成されている。これにより、外輪13の外径部を、プーリ2の内径円筒部3で抱え込む形となり、プーリ2が転がり軸受から外れることを防止できる。
本発明の樹脂プーリ付き軸受の他の例を図3に基づいて説明する。図3は樹脂プーリ付き軸受の軸方向断面図である。図3に示すように、樹脂プーリ付き軸受1’は、ラジアル荷重を受ける転がり軸受11と、樹脂製のプーリ2とを備えてなる。転がり軸受11の構成は、上記図2の場合と概ね同じである。この形態のプーリ2は、内周部に形成されるボス部7と、Vリブドベルト(図示省略)が掛け渡されるプーリ溝を有する外周部8とが一体に形成されている。ボス部7は、外輪13の外径面の溝13aに係合することで外輪13に固定されている。外径面に溝13aを有する外輪13に対して、プーリ2をインサート成形することで該溝に入り込んだ樹脂により係合形状が形成される。
転がり軸受11の形式としては、各図に示す深溝玉軸受に限定されず、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受など、公知の転がり軸受を適用できる。また、プーリ2のベルト案内面の形状は、図2のフラット形状、図3のVリブド形状の他、タイミング歯車形状などの任意の形状とできる。その他、プーリと転がり軸受とをインサート成形で一体とすることが、コスト的に優位で好ましいが、プーリのみを樹脂組成物で成形した後、これに必要に応じて転がり軸受を嵌合する形態であってもよい。
本発明の樹脂プーリ付き軸受は、その樹脂製のプーリが、所定のポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに所定量の繊維状補強材(ガラス繊維または炭素繊維)を配合してなる樹脂組成物の射出成形体であることを特徴としている。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とからなり、各成分を構成するジカルボン酸とジアミンとを重縮合して得られる。上記ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分とする。テレフタル酸を主成分とすることで、ポリアミド樹脂の高温剛性などに優れる。また、上記ポリアミド樹脂を構成するジアミン成分は、1,10−デカンジアミンを主成分とする。1,10−デカンジアミンは直鎖状の脂肪族ジアミンである。テレフタル酸および1,10−デカンジアミンは、いずれも化学構造の対称性が高いため、これらを主成分とすることで、高い結晶性のポリアミド樹脂が得られる。
本発明では、上記ポリアミド樹脂を構成するジアミン成分について、上述のとおり、炭素数が10である直鎖状の1,10−デカンジアミンを主成分として用いている。主成分とするジアミン成分のモノマー単位の炭素数が10であり、偶数であるので、奇数である場合と比較して、より安定な結晶構造をとり、結晶性が向上する(偶奇効果)。また、主成分とするジアミン成分の炭素数が8以下の場合には、上記ポリアミド樹脂の融点が分解温度を上回るおそれがある。ジアミン成分の炭素数が12以上の場合には、上記ポリアミド樹脂の融点が低くなり、高温条件下で使用する場合にプーリが変形する等のおそれがある。
上記ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分であるテレフタル酸およびジアミン成分である1,10−デカンジアミンの一部を、他の共重合成分で置き換えたものとしてもよい。ただし、他の共重合成分が多くなると、融点および結晶性が低下することから、主成分となるテレフタル酸および1,10−デカンジアミンの総量は、原料モノマーの総モル数(100モル%)に対して、95モル%以上とすることが好ましい。また、実質的にテレフタル酸および1,10−デカンジアミンのみから構成し、他の共重合成分を実質的に含まないことが特に好ましい。
他の共重合成分として用いる、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、他の共重合成分として用いる、1,10−デカンジアミン以外のジアミン成分としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミンなどの脂環族ジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。また、上記ポリアミド樹脂には、カプロラクタムなどのラクタム類を共重合させてもよい。
上記ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、好ましくは15000〜50000であり、より好ましくは26000〜50000である。上記ポリアミド樹脂の重量平均分子量が15000未満であると、該樹脂の剛性が低下し、ベルト案内時にプーリが変形するおそれがある。一方、上記ポリアミド樹脂の重量平均分子量が50000をこえると、結晶化が遅くなり射出成形時の流動性が低下する。また、上記ポリアミド樹脂の相対粘度は、特に限定されないが、プーリの成形を容易にするためには、96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定される相対粘度を2.0以上とすることが好ましい。
上記ポリアミド樹脂は、その融点が310℃以上であることが好ましい。また、上限は特に限定されないが、成形加工性などを考慮して320〜340℃程度とすることが好ましい。融点範囲としては、310〜340℃が好ましく、310〜330℃がより好ましく、310〜320℃が特に好ましい。プーリ材料として一般に使用される他のポリアミド樹脂(例えば、ポリアミド66樹脂(同267℃))よりも融点が高く、耐熱性に優れるので、高温時の強度低下、寸法変化、クリープなどを抑制できる。なお、融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、不活性ガス雰囲気下で、上記ポリアミド樹脂を溶融状態から20℃/分の降温速度で25℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度(Tm)として測定できる。
上記ポリアミド樹脂は、そのガラス転移温度が120℃以上であることが好ましい。より好ましくは150℃以上である。プーリ材料として一般に使用される他のポリアミド樹脂(例えば、ポリアミド66樹脂(同49℃))よりもガラス転移温度が高いので、高温時の強度低下、寸法変化、クリープなどを抑制できる。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、不活性ガス雰囲気下で、上記ポリアミド樹脂を急冷した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる階段状の吸熱ピークの中点の温度(Tg)として測定できる(JIS K7121)。
本発明における樹脂組成物には、上記のようなテレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,10−デカンジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる上記所定のポリアミド10T樹脂のみを樹脂成分とし、これ以外のポリアミド樹脂や他の樹脂との共重合や、ポリマーブレンドとはしないことが好ましい。これにより、ポリアミド66樹脂とポリアミド612樹脂との混合ポリマーとする場合のような、部分的な特性低下などを防止できる。
本発明で用いるポリアミド樹脂において、ジカルボン酸成分またはジアミン成分として、植物由来の原料を用いてもよい。例えば、ひまし油を出発原料とした1,10−デカンジアミンを使用できる。植物のようなバイオマス由来原料を採用することで、プーリの焼却処分に伴う二酸化炭素の実質的な排出量を、バイオマス由来原料を用いない場合よりも低減できる。ここで、バイオマス由来原料を用いた植物性プラスチックであるかどうかは、樹脂を構成している炭素について、放射性同位元素である14Cの濃度を測定することで判別できる。14Cの半減期は5730年であることから、1千万年以上の歳月を経て生成されるとされる化石資源由来の炭素には 14Cが全く含まれない。このことから樹脂中に 14Cが含まれていれば、少なくともバイオマス由来の原料を用いていると判断できる。
ベース樹脂とする上記ポリアミド樹脂に配合する繊維状補強材としては、ガラス繊維または炭素繊維を用いる。ガラス繊維は、SiO2、B2O3、Al2O3、CaO、MgO、Na2O、K2O、Fe2O3などを主成分とする無機ガラスから紡糸して得られる。一般に、無アルカリガラス(Eガラス)、含アルカリガラス(Cガラス、Aガラス)などを使用できる。上記ポリアミド樹脂への影響を考慮すれば無アルカリガラスが好ましい。無アルカリガラスは、組成物中にアルカリ成分をほとんど含んでいないホウケイ酸ガラスである。アルカリ成分がほとんど入っていないので、ポリアミド樹脂への影響がほとんどなく樹脂組成物の特性が変化しない。また、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系(PAN系)、ピッチ系、レーヨン系、リグニン−ポバール系混合物など原料の種類によらないで使用できる。なお、これら繊維状補強材は、ポリアミド樹脂との接着性を向上できるため、エポキシ系、アミノ系などのシランカップリング剤を用いて表面処理されていることが好ましい。
上記繊維状補強材は、ガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1つを該組成物全体に対して10〜50質量%含むように配合する。好ましくは、いずれか一方のみを配合する。繊維状補強材としてガラス繊維のみを用いる場合、その配合量は、樹脂組成物全体に対して10〜50質量%とすることが好ましく、20〜50質量%がより好ましく、20〜35質量%がさらに好ましい。ガラス繊維の配合量が10質量%未満である場合、補強効果が少なく、50質量%をこえる場合は、射出成形に適した流動性が得られないおそれがある。
繊維状補強材として炭素繊維のみを用いる場合、その配合量は、樹脂組成物全体に対して10〜40質量%とすることが好ましく、15〜30質量%がより好ましい。炭素繊維の配合量が10質量%未満である場合、補強効果が少なく、40質量%をこえる場合は、射出成形に適した流動性が得られないおそれがある。
成形品のウェルド強度も考慮した場合、樹脂組成物全体に対して、ガラス繊維であれば20〜30質量%が最も好ましく、また、炭素繊維であれば15〜20質量%が最も好ましい。
本発明における樹脂組成物には、プーリに必要とされる特性や射出成形性を損なわない範囲であれば、必要に応じて、上記繊維状補強材以外の添加剤を配合してもよい。他の添加剤として、例えば、固体潤滑剤、粒子状充填材(無機充填材)、酸化防止剤、帯電防止剤、離型材、着色剤などを配合できる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、グラファイト、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、ウェラストナイト、エラストマーなどを配合できる。
上記樹脂組成物を構成する各材料を、必要に応じて、ヘンシェルミキサー、ボールミキサー、リボンブレンダーなどにて混合した後、二軸混練押出し機などの溶融押出し機にて溶融混練し、成形用ペレットを得ることができる。なお、充填材の投入は、二軸押出し機などで溶融混練する際にサイドフィードを採用してもよい。この成形用ペレットを用いて、上述のとおりインサート成形(射出成形)などによりプーリを転がり軸受の外輪と一体に成形する。射出成形時は、樹脂温度を上述のポリアミド樹脂の融点以上とし、金型温度を該ポリアミド樹脂のガラス転移温度未満に保持して行なう。その他、プーリの使用温度が金型温度以上の場合、成形応力の緩和により寸法変化を起こすおそれがあるため、該使用温度以上でのアニール処理(熱処理)を施すことが好ましい。
本発明の樹脂プーリ付き軸受における樹脂製プーリは、上述のとおり、所定のポリアミド樹脂に所定量の繊維状補強材(ガラス繊維または炭素繊維)を配合してなるので、高温強度、吸水時強度、耐熱性、耐塩化カルシウム性に優れ、寸法変化やクリープを抑制できる。このため、高温時でもベルトを適切に案内でき、転がり軸受外輪と樹脂プーリとの固定部における剥がれやすべりを防止できる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
実施例および比較例に用いる原材料を一括して以下に示す。
(1)樹脂材料
ポリアミド10T樹脂:テレフタル酸と1,10−デカンジアミンを主原料に使用した樹脂(ユニチカ社製XecoT XN500)
ポリアミド66樹脂:東レ社製アミランCM3001
ポリアミド6樹脂:東レ社製アミランCM1001
ポリアミド612樹脂:デュポン社製ザイテル151L
(2)繊維状補強材
ガラス繊維:旭ファイバーグラス社製03JAFT692(平均繊維径10μm、平均繊維長3mm)
炭素繊維:東邦テナックス社製HTA−C6(平均繊維径7μm、平均繊維長6mm)
(1)樹脂材料
ポリアミド10T樹脂:テレフタル酸と1,10−デカンジアミンを主原料に使用した樹脂(ユニチカ社製XecoT XN500)
ポリアミド66樹脂:東レ社製アミランCM3001
ポリアミド6樹脂:東レ社製アミランCM1001
ポリアミド612樹脂:デュポン社製ザイテル151L
(2)繊維状補強材
ガラス繊維:旭ファイバーグラス社製03JAFT692(平均繊維径10μm、平均繊維長3mm)
炭素繊維:東邦テナックス社製HTA−C6(平均繊維径7μm、平均繊維長6mm)
実施例1〜2、比較例1〜3
これらの原材料を表1に示す割合で配合した樹脂組成物を用いて、実施例と比較例の組成にて作製し、各種の試験を実施した。組成物の製造には二軸押出機を用いた。ガラス繊維、炭素繊維は折損を防止するために定量サイドフィーダーを用いて供給し、押し出して造粒した。得られた成形用ペレットを用い、インラインスクリュー式射出成形機にて各評価用のダンベル試験片等を成形した。
これらの原材料を表1に示す割合で配合した樹脂組成物を用いて、実施例と比較例の組成にて作製し、各種の試験を実施した。組成物の製造には二軸押出機を用いた。ガラス繊維、炭素繊維は折損を防止するために定量サイドフィーダーを用いて供給し、押し出して造粒した。得られた成形用ペレットを用い、インラインスクリュー式射出成形機にて各評価用のダンベル試験片等を成形した。
上記樹脂組成物について、下記の(1)吸水率、(2)引張強度評価、(3)吸水引張強度評価、(4)高温引張強度評価、(5)耐塩化カルシウム性評価を行なった。それぞれの結果を表1に示す。
(1)吸水率は、ISO62(23℃で50%相対湿度)に準拠して測定した。
(2)引張強度評価は、ASTM D638に準拠して引張強度を測定した。
(3)吸水引張強さは、80℃で95%相対湿度の雰囲気で3時間吸水させた後、(2)と同様に引張強度を測定した。
(4)高温引張強度評価は、120℃雰囲気中で(2)と同様の引張強度を測定した。
(5)耐塩化カルシウム性評価は、ダンベル試験片を95℃の熱水に48時間浸漬して吸水させた後、塩化カルシウム5wt%水溶液に噴霧し、その後100℃で1時間乾燥する。これを1サイクルとして3サイクル繰り返し引張強度と外観を確認した。引張強度は、(2)と同様に測定し、塩化カルシウム噴霧前のものとの比較で引張強度の保持率として評価した。外観は、光学顕微鏡にて試験片の表面を観察し、表面あれやクラックが発生しているかを確認した。
(2)引張強度評価は、ASTM D638に準拠して引張強度を測定した。
(3)吸水引張強さは、80℃で95%相対湿度の雰囲気で3時間吸水させた後、(2)と同様に引張強度を測定した。
(4)高温引張強度評価は、120℃雰囲気中で(2)と同様の引張強度を測定した。
(5)耐塩化カルシウム性評価は、ダンベル試験片を95℃の熱水に48時間浸漬して吸水させた後、塩化カルシウム5wt%水溶液に噴霧し、その後100℃で1時間乾燥する。これを1サイクルとして3サイクル繰り返し引張強度と外観を確認した。引張強度は、(2)と同様に測定し、塩化カルシウム噴霧前のものとの比較で引張強度の保持率として評価した。外観は、光学顕微鏡にて試験片の表面を観察し、表面あれやクラックが発生しているかを確認した。
表1に示すように、各実施例は、吸水後および高温時においても引張強度に優れ、また、耐塩化カルシウム性にも優れていた。一方、他のポリアミド樹脂を用いた各比較例は、吸水後の引張強度や耐塩化カルシウム性に劣る結果となった。
本発明の樹脂プーリ付き軸受は、耐摩耗性、高温時強度、吸水後強度、耐熱性、耐塩化カルシウム性に優れ、寸法変化やクリープを抑制できるので、自動車における補機駆動用ベルトを案内するプーリや、アイドラプーリ、テンションプーリとして好適に利用できる。
1 樹脂プーリ付き軸受
2 プーリ
3 内径円筒部
4 外径円筒部
5 円板部
6 リブ
7 ボス部
8 外周部
11 転がり軸受
12 内輪
13 外輪
14 転動体
15 保持器
16 シール部材
17 グリース
2 プーリ
3 内径円筒部
4 外径円筒部
5 円板部
6 リブ
7 ボス部
8 外周部
11 転がり軸受
12 内輪
13 外輪
14 転動体
15 保持器
16 シール部材
17 グリース
Claims (4)
- 内輪、外輪、および、前記内輪と前記外輪との間に介在する複数の転動体を有する転がり軸受と、前記外輪に固定された樹脂製のプーリとを備えてなる樹脂プーリ付き軸受であって、
前記樹脂製のプーリが、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,10−デカンジアミンを主成分とするジアミン成分とからなるポリアミド樹脂をベース樹脂とし、これに繊維状補強材を配合してなる樹脂組成物の射出成形体であり、
前記樹脂組成物は、前記繊維状補強材としてガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1つを該組成物全体に対して10〜50質量%含むことを特徴とする樹脂プーリ付き軸受。 - 前記樹脂組成物は、前記繊維状補強材として、前記ガラス繊維を該組成物全体に対して10〜50質量%含む、または、前記炭素繊維を該組成物全体に対して10〜40質量%含むことを特徴とする請求項1記載の樹脂プーリ付き軸受。
- 前記ポリアミド樹脂のガラス転移温度が120℃以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の樹脂プーリ付き軸受。
- 前記ポリアミド樹脂が、放射性同位元素である炭素14を含むことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の樹脂プーリ付き軸受。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017068820A JP2018169021A (ja) | 2017-03-30 | 2017-03-30 | 樹脂プーリ付き軸受 |
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Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017068820A JP2018169021A (ja) | 2017-03-30 | 2017-03-30 | 樹脂プーリ付き軸受 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2018169021A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020105122A1 (ja) * | 2018-11-20 | 2020-05-28 | 株式会社日立製作所 | エレベーターのプーリ |
-
2017
- 2017-03-30 JP JP2017068820A patent/JP2018169021A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020105122A1 (ja) * | 2018-11-20 | 2020-05-28 | 株式会社日立製作所 | エレベーターのプーリ |
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