JP2001287465A - 光記録媒体 - Google Patents

光記録媒体

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JP2001287465A
JP2001287465A JP2001021523A JP2001021523A JP2001287465A JP 2001287465 A JP2001287465 A JP 2001287465A JP 2001021523 A JP2001021523 A JP 2001021523A JP 2001021523 A JP2001021523 A JP 2001021523A JP 2001287465 A JP2001287465 A JP 2001287465A
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JP2001021523A
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English (en)
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Norihiko Mihara
紀彦 三原
Shunsuke Murayama
俊介 村山
Masashi Koike
正士 小池
Ryosuke Nara
亮介 奈良
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Yamamoto Chemicals Inc
Mitsui Chemicals Inc
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Yamamoto Chemicals Inc
Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光学ビームよりも小さい細密記録ピットを形
成せねばならない高密度記録系において、青紫色レーザ
ーなどの430nm以下の短波長レーザーにより有機記
録膜への記録及び再生時の光反応、光劣化を抑え、信頼
性を向上させると共に、良質の高密度記録を可能ならし
める記録媒体を提供する。 【解決手段】 支持基板上に少なくとも有機色素を主成
分とする記録層を有してなり、該有機色素がその吸収ス
ペクトルにおいて400nm以下の波長λ1に吸収の第
1の極大値を有し、且つ該λ1よりも長波長側に吸収の
第2の極大値を有し、さらに前記第1の極大値を含む吸
収帯の長波長側の下降スロープにおいて、前記有機色素
の屈折率(n)及び吸収係数(k)が以下の関係 n≧1.90 0.03≦k≦0.30 を満足する波長帯が存在することを特徴とする光記録媒
体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光記録媒体、特に
波長430nm以下の短波長レーザーで記録を施す高密
度記録可能な記録層を有する光情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】色素を記録層とし、且つ反射率を大きく
するために、記録層の上に反射層を設けた追記可能な光
記録媒体は、例えば、Optical Data Storage 1989 Tech
nicalDigest Series Vol. 1, 45('89)に開示されて以
来、記録層にシアニン系色素やフタロシアニン系色素を
用いた追記型コンパクトディスク(Compact Disc Recor
dable: CDR)媒体として広く市場に供されている。これ
らの媒体は780nmの半導体レーザーで記録すること
ができ、且つ、780nmの半導体レーザーを搭載し、
市場に広く普及している市販のCDプレーヤーやCD−
ROMプレーヤーで再生できるという特徴を有してい
る。
【0003】又、最近では、CDよりも高密度でTV品
質並の動画の記録・再生が可能な光記録媒体としては、
発振波長635〜660nmの赤色半導体レーザーで記
録を施し、普及しつつある市販のDVDビデオプレーヤ
ーやDVD−ROMプレーヤーで再生できる、片面4.
7GB容量のDVD−R媒体が、市場に供給され始めて
いる。該DVD−R媒体も、シアニン系色素、アゾ系色
素などを記録層に用い、反射層を設けた積層構造を採用
しており、0.6mm厚の基板を2枚貼り合わせたディ
スク構造を特徴としている。
【0004】更に、1999年初頭から発振波長390
〜430nmの青紫色発光のGaN系の半導体レーザー
が試供(日亜化学工業)されるに当たり、片面15GB
以上の更なる高密度容量を有するHDTV(high defin
ition television)放送並の画質で2時間程度の動画の
記録が可能となる媒体(以下、HD−DVDR媒体と称
す)の検討が始められている。この様な高密度容量を有
するHD−DVDR媒体では、現行放送並の画質であれ
ば6時間程度の録画も可能であるため、家庭用VTRに
変わる新しい記録メディアとしても注目されている。す
でに、相変化系の無機記録膜を用いた提案として、日経
エレクトロニクス1999年9月6日号(No.75
1)の117頁に技術概要が紹介されている。
【0005】ところで、有機色素を記録層としたDVD
Rよりも高密度記録可能な媒体に関して、特開平10−
302310号公報には、発振波長680nm以下のレ
ーザーを用い、記録容量8GB以上の密度を達成したと
の開示がある。該公報の提案では、10〜177μm厚
さの光透過層越しに0.7以上の高開口数を有する対物
レンズで680nm以下のレーザー光を収束すること
で、8GB以上の大容量記録を達成している。
【0006】一方、400〜500nmの青色領域で有
機色素膜に記録を行う例として、特開平7−30425
6号公報、特開平7−304257号公報には、ポルフ
ィリン系化合物の中心金属に配位する分子構造を側鎖に
有する高分子と混合することで、該ポルフィリン系化合
物のソーレー(Soret)帯を長波長側にシフトさせて、
488nmのArレーザーに対応させると共に、スピン
コーティングによる成膜を可能ならしめて製造コストの
低減を図る提案が成されている。又、特開平4−785
76号公報、特開平4−89279号公報などには、ポ
リエン系色素化合物を記録膜に適用し、400〜500
nm付近のレーザー光での記録が可能となるとの開示が
ある。尚、本発明者らの検討によれば、これらのポリエ
ン系色素化合物は、光安定性が悪く、実用化にはクエン
チャーのブレンド等の工夫が必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一般に、記録容量の増
大を図るには、より高密度に記録を行う必要があり、そ
のため、記録に使用する光学ビームを絞るための対物レ
ンズの開口数を高め、光学系のレーザー波長をより短波
長化することが必須となる。ところが、絞り込んだ光学
ビームは回折限界でその最小のビーム径が定められる。
【0008】ところで、記録はビーム強度がある閾値を
超えたところで成されるので、図3(a)に示すよう
に、絞り込んだビームスポットよりも小さな記録ピット
が得られる。この記録ピットの周囲はビームの強度ピー
クのすそ野にあたるが、より短波長化が進む現況では、
記録ピットの周囲でも記録層の光化学反応を助長し、殊
に、前述の青紫色レーザーの波長領域では、有機化合物
の光化学反応が容易に生じる波長領域となるため、記録
時にはピットエッジが劣化し、信号特性が悪化するとい
う問題がある。すなわち、図3(b)に示すように、本
来矩形波に対応して形成せねばならない記録情報(図3
(b)の実線)が、ピットエッジの劣化によりブロード
な波形(図3(b)の波線部)となってしまう。又、記
録時と同一の青紫色レーザー波長で再生を行うと、再生
光のような微弱な光照射でも光反応が促進され、再生の
度に劣化が進むという問題もあり、前記特開平7−30
4256号公報、特開平7−304257号公報等で
も、記録光と再生光とを異なる波長、実質的には、再生
光を記録光よりも長波長とする対策を講じなければなら
なくなり、結果として、十分な高密度化の要求に応えら
れないのが現状である。又、記録波長と再生波長を異な
らしめることは、記録装置と再生装置を個別に用意する
か、1つの装置に2つの光学系及びその制御系を設けな
ければならず、光記録媒体としての用途が限定された
り、装置の大型化、コストの増大を招き、汎用性に乏し
いものとなってしまう。また、従来、CDRなどの光記
録媒体においては、有機色素膜の融点、昇華点、相転移
点或いは熱分解点などの物性上の明確な熱的閾値を境に
記録のオン・オフが成されてきたものに対し、青紫色レ
ーザー励起による光劣化モードの介在は、このコントラ
ストを曖昧にし、とりわけ光学ビームよりも小さい細密
記録ピットを形成せねばならない高密度記録系において
は、著しく記録信号品質を損なう懸念があった。
【0009】そこで、本発明では、光学ビームよりも小
さい細密記録ピットを形成せねばならない高密度記録系
において、青紫色レーザーなどの430nm以下の短波
長レーザーにより有機記録膜への記録及び再生時の光反
応、光劣化を抑え、信頼性を向上させると共に、良質の
高密度記録を可能ならしめる記録媒体を提供することを
目的とする。
【0010】
【発明を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するため鋭意検討した結果、記録膜を構成する有
機色素分子が、記録再生波長よりも長波長側に適度に鋭
い強度の吸収帯を有せば、その長波長側の吸収帯が過剰
な色素分子の励起エネルギーを緩和し得るレベルとして
機能し、結果、光劣化を促進するような光反応を抑える
ことが可能となり、媒体信頼性が著しく向上し得ること
を見出し本発明に到達した。
【0011】すなわち本発明は、支持基板上に少なくと
も有機色素を主成分とする記録層を有してなり、該有機
色素がその吸収スペクトルにおいて400nm以下の波
長λ1に吸収の第1の極大値を有し、且つ該λ1よりも
長波長側に吸収の第2の極大値を有し、さらに前記第1
の極大値を含む吸収帯の長波長側の下降スロープにおい
て、前記有機色素の屈折率(n)及び吸収係数(k)が
以下の関係 n≧1.90 0.03≦k≦0.30 を満足する波長帯が存在することを特徴とする光記録媒
体である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の光記録媒体の記録層を構
成する有機色素において、前記第2の極大値を有する吸
収波長帯は、エネルギー緩和レベルとして機能する。こ
れは、従来、特開平10−340480号公報、特開平
11−208118号公報、更には、特開平10−23
5999号公報等で開示されてきたような高励起状態の
緩和促進を長波長側に吸収もしくはエネルギー緩和準位
を有すクエンチャー等のブレンド手法、つまり分子間の
相互作用の利用とは根本的に異なり、単一分子内での高
速な励起エネルギー緩和を可能とするため、効率よく光
反応起因の劣化過程を抑制することが可能となる。又、
概して、クエンチャー等の添加により損なわれてきた記
録特性とのトレードオフに考慮する必要がなくなり、更
に記録と再生とを同一の短波長レーザーにより行うこと
が可能となることから、高密度化に寄与する効果が大き
い。
【0013】以下、本発明の実施の形態について述べ
る。尚、以下の説明では、光記録媒体として、光ディス
クであって、支持基板上に例えば案内溝と、この案内溝
上に反射膜と有機色素を主成分とする記録層を有し、波
長300〜450nmの紫外・青紫色レーザー光を照射
して信号の記録再生を行う媒体に関して説明するが、本
発明の光記録媒体は、この様な形状や構成に限定される
ものではなく、カード状、シート状等その他各種の形状
のもの、又、反射層を有さないもの、更に将来開発され
るであろうより短波長のレーザーでの記録再生にも適用
し得るものである。
【0014】本発明を光ディスクに適用した例として、
図1に示すような、基板1、記録層2、反射層3及び保
護層4がこの順で積層され、更に接着層を兼ねる保護層
4上にダミー基板5を貼り合わせたものが挙げられる。
もちろん、基板5の無い構成であっても良く、基板1と
記録層2の間、記録層2と反射層3の間、反射層3と保
護層4との間、保護層4とダミー基板5との間に、他の
層が存在していても良い。図1の光ディスクにおいて
は、基板1側から記録再生が行われる。
【0015】又、別の実施形態として、特開平10−3
02310号公報に開示の構成、例えば、図2に示すよ
うに、案内溝の形成された支持基板1’上に、反射層
3’、有機色素を主成分とする記録層2’がこの順で成
膜され、この記録層2’上に任意に形成される透明保護
層4’を介して光透過層5’が形成され、情報の記録及
び再生は、光透過層5’側から実施される。尚、逆に光
透過層5’側に案内溝を形成し、その上に透明保護層
4’、記録層2’、反射層3’を積層し、支持基板1’
と貼り合わせる構成としても良い。
【0016】支持基板の材質としては、図1に示すよう
に基板1を通じて青紫色レーザーの照射が行われる場合
も加味すると、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹
脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポ
キシ樹脂等の高分子材料やガラス等の無機材料などの透
明な材料が利用される。一方、図2に示す構成のよう
に、基板1’とは逆の光透過層5’側からレーザー照射
が行われる場合、基板の材質としては光学的諸要件を満
たす必要はなく、より広範な材料から選択することがで
きる。基板に要求される機械的特性、また基板生産性の
観点からは、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポ
リオレフィン樹脂等の射出成型或いはキャスト成型可能
な材料が好ましい。
【0017】これらの基板の表層には、サブミクロンオ
ーダーの案内溝及び/又はプレピットが螺旋状又は同心
円上に形成されていても良い。これら案内溝及びプレピ
ットは、基板形成時に付与されているのが好ましく、ス
タンパー原盤を用いての射出成型や、フォトポリマーを
用いた熱転写法により付与することができる。尚、図2
における光透過層5’に案内溝及び/又はプレピットを
形成しても良く、付与する場合も同様の方法を適用でき
る。案内溝のピッチ及び深さは、DVDよりも高密度記
録を行うHD−DVDRの場合、ピッチとして0.25
〜0.80μm、深さとして20〜150nmの範囲か
ら選択するのが好ましい。
【0018】本発明の光記録媒体における記録層の構成
材料としては、着目のレーザー波長域で十分な吸収を有
し、所定のエネルギーを有するレーザー光の照射により
光・熱変換を伴って、物理的・化学的な変化、変質、分
解して屈折率変化又は/及び形状変化が生じる材料が選
択される。特に、記録層の主成分となる有機色素として
は、記録再生波長における複素屈折率=n+ikとした
ときの屈折率(n)と吸収係数(k)との良好な光学定
数バランスを有することが、記録感度、高反射率、記録
振幅(変調度)、波形歪みの観点から重要となる。すな
わち本発明では、有機色素の光吸収スペクトルにおける
第1の極大値を含む吸収帯の長波長側の下降スロープに
おいて、前記有機色素の屈折率(n)及び吸収係数
(k)が以下の関係: n≧1.90 0.03≦k≦0.30 を満足する波長帯が存在することが好ましく、 n≧2.00、 0.03≦k≦0.30 がより好ましい。そしてこの波長帯に含まれる波長のい
ずれかをλ0として、該λ0を記録波長とすればよい。
逆に言えば、この様な波長帯が、記録光として実用的な
レーザー波長λ0を含むような光スペクトルを備えれば
よい。更にこの記録波長となるλ0は紫外域において発
光可能なレーザーの適用が想定され、300nm〜45
0nmの範囲にあることが好ましい。当該範囲における
安定光源としてはGaN系半導体レーザーや、XeCl
エキシマーレーザー、HeCdレーザー、YAGレーザ
ー(3倍波)などが適用される。レーザーの安定性とシ
ステムへの組み込み加工性を鑑みたときにはGaN系半
導体レーザーが最良であり、その安定な発光帯となる3
90nm〜430nmの範囲からλ0を選択することが
より好ましい。ここで、屈折率が小さい場合には、記録
変調度が獲得しづらくなる。一方、吸収係数が小さいと
記録感度が確保できず、逆に大きすぎると吸収が大き
く、熱の発生が大きくなりすぎて、熱干渉によるピット
形状の歪みを回避できない。更に本発明の特徴とすると
ころは、該記録(再生)に使用するレーザー波長λ0の
長波長側に、該レーザー照射時の光反応による励起時の
余剰エネルギーを緩和し得るレベルとして機能する吸収
帯を有機色素が有することである。
【0019】すなわち、記録時の記録ピットの周辺領域
(ビームスポット)及び再生時の照射領域においては、
記録層の熱変化しない閾値未満の照射エネルギーではあ
るが、使用する波長λ0のレーザーは有機色素のエネル
ギー準位を光反応が起こる励起レベルまで高めてしま
う。ところが驚くべきことに、該波長λ0の長波長側に
適度に鋭い吸収帯を有していると、この吸収帯に対応す
るエネルギーレベルにエネルギーがシフトし、有機色素
のエネルギー準位が励起レベルまで高められることを抑
制し得ることを見出した。この様な吸収帯にある第2の
極大値をとる波長(λ2)は、例えば記録波長λ0とし
て390〜430nmの青紫色レーザーの場合、波長λ
0より100nm〜400nm離れた長波長側に存在し
ていることでより良好な緩和レベルとしての作用の確保
が可能である。又その際、該第2の極大値における有機
色素の分子吸光係数(ε)が ε>10E+4 cm-1mol-1 を満足するものであることが好ましい。そして本発明の
光記録媒体は、300nm〜450nmの範囲の波長
で、更に好ましくは390〜430nmの範囲で記録す
ることが好ましい。
【0020】この様な条件を満足する最適な有機色素と
しては、フタロシアニン、ジフタロシアニン、サブフタ
ロシアニン、ポルフィリン、テトラアザポルフィリン、
トリアザポルフィリン、ジアザポルフィリン、モノアザ
ポルフィリン、低対称ポルフィラジンなどの金属錯体
や、ナフトキノン、アントラキノン、ヘテロ原子内在の
ヘテロキノイド、及びこれらの中の2種以上からなる混
合物の中から見出すことができる。光学バランス上、良
質な耐光性を有するものとして、フタロシアニン系色
素、サブフタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、
又は、テトラアザポルフィリン、ジアザポルフィリン、
モノアザポルフィリン、低対称ポルフィラジン等のアザ
ポルフィリン系色素、ナフトキノン、アントラキノン等
のキノン系色素及びこれらの中の2種以上からなる混合
物が好ましく、とりわけ、フタロシアニン系色素、テト
ラアザポルフィリン、モノアザポルフィリン、ジアザポ
ルフィリン、そして低対称ポルフィラジン及びこれらの
中の2種以上からなる混合物が好ましい。例えばテトラ
アザポルフィリンとジアザポルフィリンもしくはモノア
ザポルフィリンを混合することにより400nm近傍の
波長でn≧1.9を実現することができる。これらの化
合物群においては、特に、フタロシアニン系、アザポル
フィリン系、ポルフィリン系色素においては、通常、4
00nm以下の紫外線領域にソーレー帯を有し、このソ
ーレー帯から400nm以内の長波長側にQバンド等で
代表される明確な極大値を有する吸収帯(エネルギーレ
ベル)が見られる。このソーレー帯の裾野における吸収
係数(k)と屈折率(n)を記録波長λ0において前記
条件を満たすようにフィッティングさせ、Qバンドで代
表される長波長側の吸収帯における第2の極大値をとる
波長λ2が記録波長λ0から長波長側に100nm以上
のエネルギーギャップを有し、適度に鋭い強度、例え
ば、該第2の極大値として分子吸光係数(ε)が ε>10E+4 cm-1mol-1 を満足している化合物を選択することで、該第2の極大
値が属する吸収帯が光エネルギー緩和レベルとして機能
し、光反応による記録層の劣化を抑制し得るものであ
る。エネルギーギャップが小さいと、エネルギー緩和レ
ベルが不十分となる場合がある。エネルギーギャップが
大きい場合には、迅速なエネルギー緩和がなし得ず、光
劣化が進行してしまう場合がある。好ましくは、100
〜250nmに相当するエネルギーギャップであること
が望ましい。このとき、当該有機色素分子の励起状態の
性質に関し、第一励起1重項(この場合にはQ帯)の上
の準位(この場合にはソーレー帯)に電子的に励起して
も最低励起1重項準位への迅速な緩和がおきることは、
第一励起準位からの発光(蛍光)の存在で裏打ちされ
る。即ち、高準位への励起エネルギーは、即座に最低準
位まで緩和していることは確認することは高精度の発光
スペクトル分光法いにより可能である。特に、この種の
検証は既に溶液系では先行してなされており、例えば、
多くのフタロシアニン類はソーレー帯への光励起に対し
Q帯吸収のすぐ長波長側に蛍光が確認されているし、幾
つかのポルフィリン系化合物でも同様の観測がなされて
きている。
【0021】この様にして選択される有機色素の基本分
子の母核には、各種の置換基修飾が成されていても良
く、それにより波長フィッティング、色素の溶解性など
の加工性改善などが成される。これらの材料は、通常、
適切な溶媒に溶解又は分散させてスピンコート法、スプ
レー法等で塗布し、乾燥させることで成膜することがで
きる。又、より高密度の記録を目的に、支持基板或いは
光透過層に形成される案内溝の溝間(ランド部)、溝内
(グルーブ部)双方への記録(ランド・グルーブ記録)
に対しては、グルーブ、ランド双方への色素膜厚の均一
制御を達成する必要上、真空蒸着法、スパッタ法、分子
線ビーム(MBE)法などの方法が適用される。案内溝
内(グルーブ部)及び案内溝間(ランド部)の双方に記
録領域を備えるためには、案内溝深さの半分の深さで測
定した案内溝幅と案内溝間隔の比率を0.8〜1.2の
範囲にする、あるいは案内溝内及び案内溝間の双方に例
えばセクター管理用のプレピットを形成する、などの方
法がある。
【0022】記録層膜厚は、30〜200nmの範囲で
形成されるのが好ましい。更に好ましくは、50〜15
0nmである。熱干渉を抑えるためには、高屈折率を確
保して極力薄膜化させることが望ましい。
【0023】本発明の光記録媒体においては、前述の図
1及び図2に示したように、記録層に隣接して反射層を
設けるのが望ましい。反射層の材料としては、金、銀、
アルミニウム、白金、銅などの金属や、これらを含有す
る合金が挙げられる。尚、対応のレーザー波長が390
〜430nmの青紫色の場合には、銀、アルミニウム及
びそれらを含む合金がコスト面、光学特性面から望まし
く、とりわけ、銀及びその合金、特に耐久性も加味すれ
ば、銀とTi、Pd、Cu等との合金系が好ましい。反
射層の膜厚は、通常、20〜120nmであり、好まし
くは20〜80nmである。反射層の形成方法として
は、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法
などが適応できる。
【0024】図1の構成では、該反射層上に紫外線硬化
樹脂、熱硬化性樹脂、2液混合硬化樹脂、室温硬化型樹
脂などの有機材料を、例えばスピンコートして保護層を
形成する。更に図1に示したように、従来のDVDR同
様に、該保護層の上にダミー基板を貼り合わせても良
く、又、記録層を設けた基板を対向して貼り合わせても
良い。
【0025】又、図2に示すような構造の場合も、案内
溝(プレグルーブ)などの形成された基板上に反射層、
記録層を順次形成し、記録層の上に紫外線硬化樹脂を塗
布、延伸後、UV照射により硬化させて光透過層を形成
する。又、該光透過層を別途均一な厚みのフィルム状に
形成しておき、紫外線硬化樹脂などからなる接着層を介
して貼り合わせることもできる。光透過層、接着層を記
録層上に形成する場合、紫外線硬化樹脂中に有機色素が
溶け出すことを回避するため、有機色素とこれらの層と
の間に透明保護層を形成することが有効である。この透
明保護層は、SiO2、SiN、AlN、ZnS、Mg
2等の酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物及びこれら
の混合物から選択される透明材料により形成される。更
にこの構成の光記録媒体においては、射出成型或いはキ
ャスト法により厚さ10〜200μmのスタンパー熱転
写による案内溝が形成された、例えば、ポリカーボネー
トからなるシートを光透過層として用い、その上に有機
色素からなる記録層と反射層とをこの順で成膜し、更に
基板を貼り合わせた構成としても良い。
【0026】これらの媒体の評価には、現在入手可能な
青紫色レーザーチップ(日亜化学工業製)を有する光ヘ
ッドを搭載したシバソク製、或いはパルステック工業製
ディスクテスターを用いることができる。
【0027】
【実施例】以下、実施例を参照して本発明を具体的に説
明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるも
のではない。
【0028】実施例1 ピッチ0.55μm、溝深100nm、溝幅0.2μm
のグルーブ形状を有したスタンパー原盤から射出成型法
により厚さ0.6mm、外径120mm寸法でポリカー
ボネート基板を作製した。転写状況は原子間力顕微鏡
(AFM)で確認し、該基板上に記録層として下記式
(A)で表されるジアザポルフィリン色素を、エチルシ
クロヘキサン溶液(20g/l)からスピンコート法
で、グルーブ上に乾燥膜厚として100nmになるよう
成膜した。該化合物の成膜状態での吸収スペクトルを図
4に示す。光学解析により求めた該記録層の屈折率、及
び吸収係数は400nmにおいてn=2.11、k=
0.07であった。又、当該色素膜は、記録波長(40
3nm:λ0)よりも長波長側である590nm(λ
2)に分子吸光係数ε=1.3E+5cm-1mol-1
極大値を持つ吸収を有していた。
【0029】
【化1】
【0030】続いて、この記録層上に厚さ80nmの銀
反射層をスパッタ法により成膜し、次いで、この反射層
上にUV硬化樹脂「SD17」(大日本インキ製)をス
ピンコート法で約5μmの厚みに成膜し、その上にUV
接着剤を塗布して厚み0.6mmのダミー基板(ポリカ
ーボネート製)を貼り合わせ、DVDと同一外形の光記
録媒体を作製した。
【0031】この記録媒体をパルステック工業社製青紫
色レーザー搭載テスターで、ポリカーボネート基板を通
してグルーブに最短ピット長=0.25μmに対応させ
た単純繰り返し信号を波長403nm、NA=0.6
5、線速度=7m/sの条件で記録した。記録パワー=
7mWで2ndハーモニックレベルが極小となり、同一
ピックアップで該記録部を再生したところ(再生パワー
=0.5mW)、CN比=46dBが確認された。更に
この光ディスクを4万ルクスのXeアーク灯で50℃、
100時間照射した後の信号レベルを評価した。その結
果、試験後も良好なCN比で記録ピットが再生できるこ
とを確認した。
【0032】実施例2 基板のグルーブピッチ0.74μm、溝深100nm、
溝幅0.35μmのグルーブ形状を有したスタンパー原
盤から射出成形法により厚さ0.6mm、外径120m
m寸法でポリカーボネート基板を作製した。該基板上に
実施例1で用いた式(A)のジアザポルフィリン色素を
真空蒸着法により厚さ80nmに成膜した。その後、実
施例1と同様に銀反射層及びSD17層を形成し、厚み
0.6mmのダミー基板を貼り合わせた。
【0033】この記録媒体を実施例1で使用したテスタ
ーを用いてポリカーボネート基板を通してランド及びグ
ルーブ双方に記録を施した。線速度7m/sで線密度
0.25μmの最短ピットが、記録パワー6mWでラン
ド部=47dB、グルーブ部=47dBのCN比にて観
測された。
【0034】実施例3 ピッチ0.55μm、溝深100nm、溝幅0.27μ
mのグルーブ形状を有したスタンパー原盤から熱転写法
により形成した厚さ1.2mmのアクリル2P基板上
に、AgPdCu合金からなる反射層を50nm厚にス
パッタ法で形成し、その上に実施例1で用いた式(A)
のジアザポルフィリン色素を真空蒸着法により厚み80
nmに成膜した。その上に、SiO2透明層を厚み2n
mにスパッタ法で形成し、更にその上にUV接着剤を塗
布し、厚み100μmのポリカーネート製薄型シートを
貼り付けた。
【0035】該媒体を薄型シート側から、波長403n
m、NA=0.80の2枚組レンズで集光し、記録ピッ
トをランド及びグルーブ双方に形成した。線速度=7m
/sで、線密度0.25μmの最短ピットが、記録パワ
ー=6mWでランド部=46dB、グルーブ部=48d
BのCN比にて観測された。
【0036】実施例1と同様の耐光加速試験を実施した
が、ランド部、グルーブ部共に良好な記録品位を確保す
ることができた。
【0037】実施例4 実施例1において、記録層の有機色素を下記式(B)の
サブフタロシアニン色素に代えた以外は同様にして光デ
ィスクを作製した。該有機色素の成膜状態での吸収スペ
クトルを図5に示す。波長304nmに吸収極大:λ1
を有し、これよりも長波長側である561nm:λ2に
モル吸光係数ε=1.7E+5cm-1mol-1の極大値
を持つ吸収を有していた。当該色素膜の光学定数を求め
たところ、屈折率(n)及び減衰係数(k)は、340
nmにおいてn=1.95,k=0.17であった。こ
の記録膜に、HeCdレーザーを用いレーザー顕微鏡の
光学系を介して記録を施したところ良好なピットの形成
が確認され、紫外レーザーを用いる際に記録膜として有
望なことが示された。
【0038】
【化2】
【0039】実施例5 実施例2において、記録層の有機色素を下記式(C)の
トリ−tert−ブトキシベンゾポルフィラジン色素に
代えた以外は同様にして光ディスクを作製した。当該色
素膜は、波長355nmに吸収極大:λ1を有し、これ
よりも長波長側である波長675nmにε>10E+4
cm-1mol-1の強い吸収ピークを有していた。この記
録媒体に実施例1で用いたと同様のテスターを用いてラ
ンド及びグルーブ双方に記録を施した。ランド、グルー
ブ部ともに40dB以上の良好な記録が確認できた。
【0040】
【化3】
【0041】実施例6 実施例2において、記録層の有機色素を下記式(D)の
トリ−tert−ブトキシベンゾ−モノナフタロポルフ
ィラジン色素に代えた以外は同様にして光ディスクを作
製した。当該色素膜は、波長340nmに吸収極大:λ
1を有し、これよりも長波長側である波長690nmに
ε>10E+4cm-1mol-1の強い吸収ピークを有し
ていた。この記録媒体に実施例1で用いたと同様のテス
ターを用いてランド及びグルーブ双方に記録を施した。
ランド、グルーブ部ともに40dB以上の良好な記録が
確認できた。
【0042】
【化4】
【0043】実施例7 実施例2において、記録層の有機色素を下記式(E)の
トリ−tert−ブトキシベンゾ−モノアンソラソポル
フィラジン色素に代えた以外は同様にして光ディスクを
作製した。当該色素膜は、波長350nmに吸収極大:
λ1を有し、これよりも長波長側である波長700nm
にε>10E+4cm-1mol-1の強い吸収ピークを有
していた。この記録媒体に実施例1で用いたと同様のテ
スターを用いてランド及びグルーブ双方に記録を施し
た。ランド、グルーブ部ともに40dB以上の良好な記
録が確認できた。
【0044】
【化5】
【0045】比較例1 実施例1において、記録層の有機色素を下記式(F)の
シアニン色素(Aldrich Chemical社製、「39041−
0」)に代えた以外は同様にして光ディスクを作製し
た。該有機色素の成膜状態での吸収スペクトルを図6に
示す。
【0046】該光ディスクに対して、実施例1と同様に
信号記録を行った。その後、同様の装置で再生を試みた
が、再生光でピットが潰れ、記録部位の信頼性は十分で
はなかった。
【0047】
【化6】
【0048】
【発明の効果】本発明では、記録層に、その吸収スペク
トルにおいて400nm以下の波長λ1に吸収の第1の
極大値を有し、且つ該λ1よりも長波長側に吸収の第2
の極大値を有する有機色素を使用し、該第2の極大値が
属する吸収帯がエネルギー緩和レベルとして機能するこ
とにより、波長430nm以下、特に波長390〜43
0nmの青紫色レーザーでの記録が良好に行われ、又、
同波長における再生に対しても、耐光性及び保存寿命に
優れる汎用性の高い、高密度記録可能な光記録媒体が提
供でき、青紫色レーザー対応の15GB以上の高容量を
有するHD−DVDRの実用化に対応できるものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光記録媒体の一実施形態に係る概略断
面図である。
【図2】本発明の光記録媒体の他の実施形態に係る概略
断面図である。
【図3】本発明の課題を説明する概念図である。
【図4】実施例1で使用した有機色素の膜状態での吸収
スペクトルである。
【図5】実施例4で使用した有機色素の膜状態での吸収
スペクトルである。
【図6】比較例1で使用した有機色素の膜状態での吸収
スペクトルである。
【符号の説明】
1 支持基板 2 記録層 3 反射層 4 保護層 5 ダミー基板 1’ 支持基板 2’ 記録層 3’ 反射層 4’ 透明保護層 5’ 光透過層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村山 俊介 千葉県袖ヶ浦市長浦580−32 三井化学株 式会社内 (72)発明者 小池 正士 千葉県袖ヶ浦市長浦580−32 三井化学株 式会社内 (72)発明者 奈良 亮介 千葉県袖ヶ浦市長浦580−32 三井化学株 式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持基板上に少なくとも有機色素を主成
    分とする記録層を有してなり、該有機色素がその吸収ス
    ペクトルにおいて400nm以下の波長λ1に吸収の第
    1の極大値を有し、且つ該λ1よりも長波長側に吸収の
    第2の極大値を有し、さらに前記第1の極大値を含む吸
    収帯の長波長側の下降スロープにおいて、前記有機色素
    の屈折率(n)及び吸収係数(k)が以下の関係 n≧1.90 0.03≦k≦0.30 を満足する波長帯が存在することを特徴とする光記録媒
    体。
  2. 【請求項2】 前記波長帯の中から選択される波長λ0
    を記録レーザー波長とし、該λ0が300nm〜450
    nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光
    記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記第2の極大値が前記λ0から100
    nm〜400nm離れた長波長側にあることを特徴とす
    る請求項2に記載の光記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記第2の極大値における前記有機色素
    の分子吸光係数(ε)が ε>10E+4 cm-1mol-1 を満足することを特徴とする請求項3に記載の光記録媒
    体。
  5. 【請求項5】 前記有機色素が、フタロシアニン系、ポ
    ルフィリン系、アザポルフィリン系色素、キノン系の少
    なくとも1種から選択される請求項2乃至4のいずれか
    1項に記載の光記録媒体。
  6. 【請求項6】 支持基板上に記録層と反射層とが順次形
    成され、記録再生が前記支持基板側から行われることを
    特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光記
    録媒体。
  7. 【請求項7】 支持基板上に反射層と記録層が順次形成
    され、該記録層上に10〜200μm厚の光透過層とを
    有し、記録再生が該光透過層側から行われることを特徴
    とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光記録媒
    体。
  8. 【請求項8】 前記反射層は、銀又は銀合金からなるこ
    とを特徴とする請求項6又は7に記載の光記録媒体。
  9. 【請求項9】 前記支持基板上に案内溝が形成されてお
    り、案内溝及び案内溝間のランド部の両方に前記記録層
    への記録領域が備えられたことを特徴とする請求項1乃
    至8のいずれか1項に記載の光記録媒体。
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