JP2001247717A - セルロースエステル用可塑剤、セルロースエステルフイルムおよびその製造方法 - Google Patents
セルロースエステル用可塑剤、セルロースエステルフイルムおよびその製造方法Info
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Abstract
する作用を有するセルロースエステル用可塑剤を得る。 【解決手段】 ヘキソースの糖アルコール(例、ソルビ
トール)のエステルまたはエーテルを可塑剤として用い
る。
Description
ル用可塑剤、セルロースエステルフイルムおよびその製
造方法に関する。
靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いられ
ている。セルロースエステルフイルムは、代表的な写真
感光材料の支持体である。また、セルロースエステルフ
イルムは、その光学的等方性から、近年市場の拡大して
いる液晶表示装置にも用いられている。液晶表示装置に
おける具体的な用途としては、偏光板の保護フイルム、
光学補償シートの支持体およびカラーフィルターが代表
的である。セルロースエステルフイルムおよびその製造
方法については、従来から多くの改良手段が提案されて
いる。最近では、セルロースアセテートと有機溶媒の混
合物を冷却し、さらに加温することによって、有機溶媒
中にセルロースアセテートを溶解してセルロースアセテ
ート溶液を調製する方法が提案されている(特開平9−
95538号、同9−95544号、同9−95557
号の各公報記載)。この冷却工程と加温工程とを有する
方法(以下、冷却溶解法と称する)によると、従来の方
法では溶解することができなかった、セルロースアセテ
ートと有機溶媒の組み合わせであっても、溶液を調製す
ることができる。冷却溶解法は、溶解性が低いトリアセ
チルセルロース(平均酢化度が58%以上)からフイル
ムを製造する場合に特に有効である。
重要な(実質的に必須の)添加剤である。セルロースエ
ステルに使用する可塑剤としては、トリフェニルホスフ
ェート(TPP)のようなリン酸エステル可塑剤および
ジメチルフタレート(DMP)のような芳香族カルボン
酸エステル可塑剤が代表的である。プラスチック材料講
座17「繊維素系樹脂」、丸澤他、日刊工業新聞社(昭
和45年)発行の121頁には、セルロースプラスチッ
クに用いられる様々な可塑剤が開示されている。しか
し、リン酸エステルと芳香族カルボン酸エステル以外の
可塑剤には、様々な問題があり、実際にはほとんど使用
されていない。例えば、グリセリントリアセテート、グ
リセリントリプロピオネートおよびグリセリントリブチ
レートのようなグリセリンの低級脂肪酸エステル(グリ
セリド)可塑剤には、吸水性が高いとの問題がある。
作成したセルロースエステルフイルムには、光学異方性
(例えば、厚み方向のレターデーション値)が大きくな
るとの問題がある。セルロースエステルフイルムを光学
材料に使用する場合、フイルムの光学的異方性を小さく
する必要がある。本発明の目的は、セルロースエステル
の光学的異方性を小さくする作用を有するセルロースエ
ステル用可塑剤を提供することである。また、本発明の
目的は、厚み方向のレターデーション値が小さいセルロ
ースエステルフイルムを提供することでもある。さら
に、本発明の目的は、光学的異方性を大きくすることな
く、冷却溶解法によりセルロースエステルフイルムを製
造することでもある。
(1)および(2)のセルロースエステル用可塑剤、下
記(3)〜(5)のセルロースエステルフイルムおよび
下記(6)のセルロースエステルフイルムの製造方法に
より達成された。 (1)下記式(I)で表わされる化合物からなるセルロ
ースエステル用可塑剤:
よびR6 は、それぞれ独立に、炭素原子数が2乃至18
のアシル基、炭素原子数が2乃至18の脂肪族基、炭素
原子数が6乃至18の芳香族基または水素原子であり、
R1 、R2 、R3 、R4 、R5およびR6 の少なくとも
五つは、炭素原子数が2乃至18のアシル基、炭素原子
数が2乃至18の脂肪族基または炭素原子数が6乃至1
8の芳香族基である]。 (2)R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 は、そ
れぞれ独立に、炭素原子数が2乃至18のアシル基また
は水素原子であり、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およ
びR6 の少なくとも五つは、炭素原子数が2乃至18の
アシル基である(1)に記載のセルロースエステル用可
塑剤。
ースエステルフイルムであって、さらに上記式(I)で
表わされる化合物を2乃至25重量%の範囲で含むこと
を特徴とするセルロースエステルフイルム。 (4)セルロースエステルがセルロースアセテートであ
る(3)に記載のセルロースエステルフイルム。 (5)厚さ方向のレターデーション値が100nm以下
である(3)に記載のセルロースエステルフイルム。 (6)セルロースエステルおよび上記式(I)で表わさ
れる化合物を、アセトンまたは酢酸メチルを50重量%
以上含む有機溶媒と混合し、これによりセルロースエス
テルを有機溶媒中に膨潤させる工程;膨潤した混合物を
−100乃至−10℃に冷却する工程;冷却した混合物
を0乃至200℃に加温し、セルロースの低級脂肪酸エ
ステルが有機溶媒中に溶解しているセルロースエステル
溶液を調製する工程;調製したセルロースエステル溶液
を支持体上に流延する工程;そして有機溶媒を蒸発させ
てフイルムを形成する工程からなるセルロースエステル
フイルムの製造方法。
表わされる化合物は、セルロースエステルの可塑剤とし
ての機能が優れていることが判明した。さらに本発明者
が研究を進めたところ、上記式(I)で表わされる化合
物には、セルロースエステルの光学的異方性を小さくす
る作用があることも判明した。そのため、上記式(I)
で表わされる化合物を可塑剤として用いることで、光学
的異方性が小さいセルロースエステルを得ることがで
き、厚み方向のレターデーション値が小さいセルロース
エステルフイルムを製造することも可能になった。本発
明は、冷却溶解法のようなフイルムの光学的異方性が高
くなりやすい製造方法において、特に有効である。ま
た、上記式(I)で表わされる化合物には、人体や環境
に対して、ほとんど無害であるとの特徴もある。
本発明では、下記式(I)で表わされる化合物を、セル
ロースエステル用可塑剤として使用する。
4 、R5 およびR6 は、それぞれ独立に、炭素原子数が
2乃至18のアシル基、炭素原子数が1乃至18の脂肪
族基、炭素原子数が6乃至18の芳香族基または水素原
子であり、R1 、R2 、R3、R4 、R5 およびR6 の
少なくとも五つは、炭素原子数が2乃至18のアシル
基、炭素原子数が1乃至18の脂肪族基または炭素原子
数が6乃至18の芳香族基である。R1 、R2 、R3 、
R4 、R5 およびR6 は、それぞれ独立に、炭素原子数
が2乃至18のアシル基または水素原子であり、R1 、
R2 、R3 、R4、R5 およびR6 の少なくとも五つ
は、炭素原子数が2乃至18のアシル基であることが好
ましい。アシル基は、−CO−R(Rは、脂肪族基、芳
香族基または複素環基)で示される。上記Rは、脂肪族
基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換
アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)また
は芳香族基(アリール基、置換アリール基)であること
が好ましく、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル
基、置換アルケニル基、アリール基または置換アリール
基であることがより好ましく、アルキル基、アルケニル
基またはアリール基であることがさらに好ましく、アル
キル基であることが最も好ましい。
ル基は、環状構造よりも鎖状構造を有していることが好
ましい。鎖状構造は、分岐を有していてもよい。置換ア
ルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、アラ
ルキル基および置換アラルキル基のアルキル部分、アル
ケニル部分およびアルキニル部分は、上記アルキル基、
アルケニル基およびアルキニル基と同様である。置換ア
ルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基および
置換アラルキル基の置換基の例には、アリール基(例、
フェニル)が含まれる。アリール基および置換アリール
基のアリール部分は、フェニルであることが好ましい。
置換アリール基の置換基の例には、アルキル基が含まれ
る。アシル基の例には、アセチル、プロピオニル、ブチ
ロイル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オ
クタノイル、デカノイル、ドデカノイル、ヘキサデカノ
イル、オクタデカノイル、オレオイル、ベンゾイルおよ
びシンナモイルが含まれる。R1 、R2 、R3 、R4 、
R5 およびR6 の総炭素原子数は、5乃至108であ
る。R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 の総炭素
原子数は、6乃64であることが好ましく、8乃至48
であることがさらに好ましい。
00乃至600℃であることが好ましく、250乃至5
00℃であることがさらに好ましく、300乃至400
℃であることが最も好ましい。以下に、式(I)で表わ
される化合物の具体例を示す。
スの糖アルコール(例、ソルビトール)とカルボン酸ま
たは酸クロリドとのエステル化反応により容易に合成す
ることができる。また、予め合成された、あるいは市販
の糖アルコールのエステル(例、ソルビトールヘキサア
クリレート)をカルボン酸とエステル交換することによ
っても合成することができる。R1 〜R6 が脂肪族基ま
たは芳香族基である場合は、脂肪族または芳香族ハロゲ
ン化化合物(クロル体またはブロム体)を原料として、
エーテル結合を形成することができる。式(I)で表わ
される化合物は、可塑剤として、セルロースエステル溶
液に添加して使用する。溶液中の可塑剤の濃度は、0.
2乃至5重量%であることが好ましく、0.5乃至5重
量%であることがさらに好ましく、1乃至4重量%であ
ることが最も好ましい。セルロースエステルの成型品
(例えば、セルロースエステルフイルム)中での可塑剤
の量は、成型品の固形分量の2乃至25重量%であるこ
とが好ましく、2乃至20重量%であることがさらに好
ましく、5乃至18重量%であることが最も好ましい。
併用してもよい。式(I)で表わされる化合物と他の可
塑剤とを併用することもできる。他の可塑剤としては、
リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられ
る。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェ
ート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)
およびトリオクチルフタレート(TOP)が含まれる。
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよび
クエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの
例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタ
レート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジ
オクチルフタレート(DOP)およびジエチルヘキシル
フタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステル
の例には、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)
およびクエン酸アセチルトリブチル(OACTB)が含
まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイ
ン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸
ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
式(I)で表わされる化合物と他の可塑剤とを併用する
場合は、式(I)で表わされる化合物を可塑剤の合計量
の50重量%以上の割合で使用することが好ましい。式
(I)で表わされる化合物の割合は、70重量%以上で
あることがより好ましく、80重量%以上であることが
さらに好ましい。
ルは、セルロースと低級脂肪酸とのエステルであること
が好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂
肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテ
ート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セ
ルロースブチレート)であることが好ましい。セルロー
スアセテートがさらに好ましく、セルローストリアセテ
ート(酢化度:57.0乃至62.5%、好ましくは、
57.5乃至62.5%、さらに好ましくは58.0乃
至62.5%)が最も好ましい。なお、セルロースアセ
テートの酢化度は、ASTM:D−817−91(セル
ロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の
測定および計算に従う。セルロースアセートプロピオネ
ートやセルロースアセテートブチレートのようなセルロ
ースの混合脂肪酸エステルを用いてもよい。セルロース
の混合脂肪酸エステル中のセルロースアセテートの割合
は、25乃至97重量%であることが好ましく、40乃
至95重量%であることがさらに好ましく、50乃至9
0重量%であることが最も好ましい。セルロースエステ
ルの粘度平均重合度(DP)は、150乃至500であ
ることが好ましく、200乃至400であることがさら
に好ましく、250乃至360であることが最も好まし
い。また、セルロースエステルは、ゲルパーミエーショ
ンクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは重量平
均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いこ
とが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.
0乃至1.7であることが好ましく、1.3乃至1.6
5であることがさらに好ましく、1.4乃至1.6であ
ることが最も好ましい。
とは、有機溶媒に溶解して溶液(ドープ)を調製する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル類、炭
素原子数が3乃至12のケトン類、炭素原子数が3乃至
12のエステル類および炭素原子数が1乃至6のハロゲ
ン化炭化水素から選ばれる溶媒であることが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有して
いてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基
(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のい
ずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用い
ることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のよ
うな他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能
基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれ
かの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソ
プロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタ
ン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テト
ラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含ま
れる。炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、ア
セトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソ
ブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘ
キサノンが含まれる。炭素原子数が3乃至12のエステ
ル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメー
ト、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルア
セテートおよびペンチルアセテートが含まれる。二種類
以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシ
エチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−
ブトキシエタノールが含まれる。
素の例には、メチレンクロライドおよびクロロホルムが
含まれる。なお、技術的にハロゲン化炭化水素は問題な
く使用できるが、地球環境や作業環境の観点では、有機
溶媒はハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好
ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロ
ゲン化炭化水素の割合が5重量%未満(好ましくは2重
量%未満)であることを意味する。また、製造したセル
ロースエステルフイルムから、ハロゲン化炭化水素が全
く検出されないことが好ましい。有機溶媒は、以上のよ
うな溶媒(第1の溶媒)に加えて、炭素原子数が3乃至
8の分岐状または環状アルコール(第2の溶媒)を含む
ことができる。アルコールは一価であることが好まし
い。アルコールの炭化水素部分は、飽和脂肪族炭化水素
であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級
〜第三級のいずれであってもよい。炭素原子数が3乃至
8の分岐状または環状アルコールの例には、イソプロパ
ノール、イソブタノール、t−ブタノール、イソペンタ
ノール、イソヘキサノールおよびシクロヘキサノールが
含まれる。
の直鎖状一価アルコール(第3の溶媒)を含むことが好
ましい。アルコールの水酸基は、炭化水素直鎖の末端に
結合してもよいし(第一級アルコール)、中間に結合し
てもよい(第二級アルコール)。第3の溶媒は、具体的
には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2
−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1
−ペンタノール、2−ペンタノールおよび3−ペンタノ
ールから選ばれる。直鎖状一価アルコールの炭素原子数
は、1乃至4であることが好ましく、1乃至3であるこ
とがさらに好ましく、1または2であることが最も好ま
しい。エタノールが特に好ましく用いられる。
5重量%含まれることが好ましく、60乃至92重量%
含まれることがより好ましく、65乃至90重量%含ま
れることが更に好ましく、70乃至88重量%含まれる
ことが最も好ましい。第2の溶媒は、1乃至20重量%
含まれることが好ましく、2乃至15重量%含まれるこ
とがさらに好ましく、3乃至15重量%含まれることが
最も好ましい。第3の溶媒は、1乃至15重量%含まれ
ることが好ましく、2乃至15重量%含まれることがさ
らに好ましく、3乃至10重量%含まれることがさらに
好ましく、4乃至22重量%含まれることが最も好まし
い。さらに他の有機溶媒を併用して、四種以上の混合溶
媒としてもよい。
は、冷却溶解法により、以上のような有機溶媒中にセル
ロースエステルおよび可塑剤を溶解して、溶液を形成す
ることが好ましい。溶液の調製においては、最初に、室
温で有機溶媒中にセルロースエステルを撹拌しながら徐
々に添加する。この段階では、セルロースエステルは、
一般に有機溶媒中で膨潤するが溶解しない。なお、室温
でセルロースエステルを溶解できる溶媒であっても、冷
却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果
がある。セルロースエステルの量は、この混合物中に1
0乃至40重量%含まれるように調整することが好まし
い。セルロースエステルの量は、10乃至30重量%で
あることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述
する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50
乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に
冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール
浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液
(−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷
却すると、セルロースエステル、グリセリド可塑剤と有
機溶媒との混合物は固化する。冷却速度は、4℃/分以
上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさ
らに好ましく、12℃/分以上であることが最も好まし
い。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/
秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上
限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。
なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な
冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度
に達するまでの時間で割った値である。
は0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至120℃、
最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒
中にセルロースエステルが溶解する。昇温は、室温中に
放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。加温
速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分
以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であ
ることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましい
が、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000
℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実
用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する
時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してか
ら最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値であ
る。以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、
溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返し
てもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶
液の外観を観察するだけで判断することができる。冷却
溶解方法においては、冷却時の結露による水分混入を避
けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷
却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧す
ると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減
圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ま
しい。調整したセルロースエステル溶液(ドープ)は、
ゴミや異物を除去するためにフィルターで濾過すること
が望ましい。ゴミや異物を除去することで、フイルムの
面状が改善される。フィルターの孔径は、100μm以
下であることが好ましく、30μm以下であることがさ
らに好ましく、10μm以下であることが最も好まし
い。フィルターによる濾過は、一般に加圧下で実施す
る。
ステル溶液から、セルロースエステルフイルムを製造す
る。具体的には、溶液をソルベントキャスト法における
ドープとして利用する。ドープは、ドラムまたはバンド
上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流
延前のドープは、固形分量が18乃至35重量%となる
ように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバ
ンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好まし
い。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法
については、米国特許2336310号、同23676
03号、同2492078号、同2492977号、同
2492978号、同2607704号、同27390
69号、同2739070号、英国特許640731
号、同736892号の各明細書、特公昭45−455
4号、同49−5614号、特開昭60−176834
号、同60−203430号、同62−115035号
の各公報に記載がある。
またはバンド上に流延することが好ましい。流延した
後、2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得ら
れたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さら
に100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾
燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法
は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方
法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮するこ
とが可能である。この方法を実施するためには、流延時
のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル
化することが必要である。本発明に従い調製した溶液
(ドープ)は、この条件を満足する。製造するフイルム
の厚さは、5乃至500μmであることが好ましく、2
0乃至200μmであることがさらに好ましく、60乃
至150μmであることが最も好ましい。
止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止
剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止
剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3
−199201号、同5−1907073号、同5−1
94789号、同5−271471号、同6−1078
54号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、
調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1重量%である
ことが好ましく、0.1乃至0.2重量%であることが
さらに好ましい。
光学的等方性を有する(レターデーションが低い)との
特徴がある。フィルムの面内レターデーション(Re)
は、エリプソメーター(AEP−100、島津製作所
(株)製)を用いて測定できる。面内レターデーション
は、具体的には、波長632.8nmで測定した面内の
縦横の屈折率差にフィルム膜厚を乗じた値として、下記
式に従って求めることができる。 Re=(nx−ny)×d 式中、nxは、遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)
の屈折率であり;nyは、遅相軸に直交する方向の屈折
率であり;そして、dは、フイルムの厚さ(単位:n
m)である。セルロースエステルフイルムの面内レター
デーション(Re)は、50nm以下であることが好ま
しく、40nm以下であることがより好ましく、30n
m以下であることがさらに好ましく、20nm以下であ
ることが最も好ましい。
(Rth)は、具体的には、波長632.8nmで測定し
た厚さ方向の複屈折率にフィルム膜厚を乗じた値とし
て、下記式に従って求めることができる。 Rth={(nx+ny)/2−nz}×d 式中、nxは、遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)
の屈折率であり;nyは、遅相軸に直交する方向の屈折
率であり;nzは、厚さ方向の屈折率であり;そして、
dは、フイルムの厚さ(単位:nm)である。セルロー
スエステルフイルムの厚さ方向のレターデーション(R
th)は、100nm以下であることが好ましく、50n
m以下であることがより好ましく、40nm以下である
ことがさらに好ましく、30nm以下であることが最も
好ましい。厚さ方向の複屈折率{(nx+ny)/2−
nz}は、0.0005以下であることが好ましく、
0.0002以下であることがさらに好ましく、0.0
001以下であることが最も好ましい。
セテートフイルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持
体あるいは液晶表示装置の保護膜として有利に用いるこ
とができる。透過型の液晶表示装置は、液晶セルの両側
に二枚の偏光板を配置した構成を有する。反射型の液晶
表示装置では、反射板、液晶セル、そして偏光板の順序
の構成を有する。偏光板は、偏光膜の両側に二枚の保護
膜を配置した構成を有する。作製したセルロースアセテ
ートフイルムは、この偏光板の保護膜として特に有利に
用いることができる。液晶セルは、棒状液晶性分子、そ
れを封入するための二枚の基板および棒状液晶性分子に
電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、棒状
液晶性分子の配向状態の違いで、透過型については、T
N(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switchin
g)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OC
B(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper
Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、反
射型については、TN、HAN(Hybrid Aligned Nemat
ic)のような様々な表示モードが提案されている。
よびセルロースエステルフイルムの物性は、以下のよう
に評価した。
察し、以下のA、BおよびCの三段階で評価した。 A:10日間経時しても、透明性と均一性を保持し、良
好な溶解性と溶液安定性を示す。 B:攪拌終了時には透明性と均一性を呈して良好な溶解
性を示すが、一日経時すると相分離を生じ、不均一な状
態となる。 C:攪拌終了直後から不均一なスラリーを形成し、透明
性と均一性のある溶液状態を示さない。
式における係数Aの変化点を求めた。変化点と到達粘度
からゲル化を判断した。 ローター:sv−DIN 剪断速度:0.1(1/sec) 降温速度:0.5℃/min η=Aexp(B/T) 式中、Tは測定温度、AおよびBは、それぞれポリマー
の状態により決まる任意の定数である。ゲル化の有無
は、係数Aの変化点の有無(粘度と温度のグラフが屈曲
点を有するか否か)で判断できる。
体から剥ぎ取ったときのフイルムの性状を評価した。フ
イルムの剥ぎ取り性は以下の二段階に分類できた。 A:20秒以内で剥ぎ取りができるもの B:60秒以上経過しても剥げ残りがあるもの
−1983の規格に従い、初期試料長50mm、引張速
度20mm/minにて測定し、弾性率(kg/m
m2 )を求めた。
で5分間放置した。その後、水洗して70℃で10分間
乾燥した。フイルムの表面の白化度を、目視で下記三段
階に評価した。 A:全面が白く変化して不透明である B:全面が少し白くなったが、透明である C:変化が見られない
温度90℃、相対湿度100%条件下で調湿した後、密
閉した。これを90℃で経時して200時間後に取り出
した。フイルムの状態を目視で確認し、以下の判定をし
た。 A:特に異常が認められない B:分解臭または分解による形状の変化が認められる
(Re)値 エリプソメーター(AEP−100、島津製作所(株)
製)を用いた測定値から、前述した式に従い算出した。
ョン(Rth)値 エリプソメーター(AEP−100、島津製作所(株)
製)を用いた測定値から、前述した式に従い算出した。
製した。種類及び含有量は表1に記載の通りである。 ・セルロースエステル セルロースアセテート(酢化度59.5%、粘度平均重合度305) 含有量は表1に記載 ・可塑剤 含有量は表1に記載 ・溶剤(酢酸メチル/シクロヘキサノール/t−ブタノール /エタノール=80/5/5/10 重量比) ・紫外線吸収剤a (セルロースエステルに対して 0.5重量%) ・紫外線吸収剤b (セルロースエステルに対して 1.0重量%) ・コロイダルシリカ(セルロースエステルに対して 0.04重量%) なお、セルロースエステルの溶液中での濃度は17重量
%として調液した。
た。混合物をゆっくり撹拌しながらこれらの混合物を室
温中でよく攪拌して膨潤させスラリーを形成させた。次
に、この膨潤混合物を二重構造の容器に入れ混合物をゆ
っくり撹拌しながら、外側のジャケットに冷媒してドラ
イアイス/メタノールにて、内側容器内の混合物を−7
0℃まで冷却し6時間放置した。次にジャケットに温水
流し加温し室温まで加温した。得られたドープを目視に
より観察し、ゲル化の有無の判定した。
厚が100μmになるように流延した。バンド温度は0
℃とした(この時流延ギーサー部は、窒素を流し込み雰
囲気から酸素を除去し、着火防止を施した)。乾燥のた
め、2秒風に当てた後、フィルムをバンドから剥ぎ取
り、さらに100℃で3分、130℃で5分、そして1
60℃で5分、フィルムの端部を固定しながら段階的に
乾燥して、残りの溶剤を蒸発させた。このようにして、
セルロースアセテートフィルムを製造した。
性を、表1に掲げる。なお、溶解性は全て問題なかっ
た。可塑剤を全く含まない試料1−1は液安定性が悪
く、弾性率、Re及びRthの点で著しく劣るものであ
った。又、本発明の可塑剤以外の比較可塑剤を用いた試
料1−15〜1−19は、Re及びRthが大きくかつ
液安定性や耐湿熱性などの点で劣るものであった。又、
本発明の可塑剤を用いてもその含有量が、本発明の範囲
外の少ない場合(試料1−2)はReやRthの改善は
見られず、液安定性,弾性率においても劣り、多い場合
(試料1−3)はフィルム剥ぎ取り性と耐湿熱性におい
て劣るものであった。これに対して本発明の試料は、液
安定性,ゲル化特性,フィルム剥ぎ取り性,弾性率,ア
ルカリ耐久性,耐湿熱性,Re及びRthの全ての点で
著しく優れるものであった。これらの結果から、本発明
が従来の技術では得られなかった優れた技術であること
が理解できる。
て、酢酸メチルの替わりにアセトンを使用する以外は実
施例1−7と全く同様にして本発明試料2−1を作製し
た。試料2−1は、液安定性,ゲル化特性,フィルム剥
ぎ取り性,弾性率,アルカリ耐久性,耐湿熱性,Re及
びRthの全ての点で優れるものであり表1に結果を示
す。したがって、本発明の酢酸メチルに限定されずアセ
トンも優れた主溶剤で或ることが明らかである。
て、酢酸メチルの替わりにメチレンクロライドを使用
し、−70℃の冷却を室温で実施する以外は実施例1−
7と全く同様にして、本発明試料3−1を作製した。試
料3−1は、液安定性,ゲル化特性,フィルム剥ぎ取り
性,弾性率,アルカリ耐久性,耐湿熱性,Re及びRt
hの全ての点で優れるものであり表1に結果を示す。し
たがって、本発明の酢酸メチルに限定されずメチレンク
ロライドも優れた主溶剤で或ることが明らかである。
て、溶剤のt−ブタノールをn−ブタノールにさらにシ
クロヘキサノールをn−ヘキサノールに変更する以外は
実施例1−7と全く同様にして本発明の試料4−1を作
製したところ、Reが14そしてRthが19と若干上
がった。したがって、本発明においては溶剤Aである分
枝状アルコールのt−ブタノールとシクロヘキサノール
を併用することで、ReとRthを低下させたセルロー
スエステルフィルムを提供することが可能となった。
て、セルロースエステルのセルローストリアセテートの
25%分を、セルロースアセテートジブチレートに変え
る以外は実施例1−7と全く同様にして本発明試料5−
1を作製したところ、本発明のセルロースエステルフィ
ルムと同様に優れた液特性と製膜性とフィルム特性を有
するものであった。
施例1の富士写真フィルム(株)製トリアセチルセルロ
ースを、本発明の実施例1の試料1−7のセルロースエ
ステルフィルムに変更する以外は、特開平7−3334
33の実施例1と全く同様にした光学補償フィルターフ
ィルム本発明試料6−1を作製した。得られたフィルタ
ーフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであ
った。一方、本発明の可塑剤を使用しなかった比較試料
1−15を、特開平7−333433の実施例1の富士
写真フィルム(株)製トリアセチルセルロースに変更す
る以外は、特開平7−333433の実施例1と全く同
様にした比較用光学補償フィルターフィルム試料6−2
を作製した。得られた比較用フィルターフィルム比較試
料6−2の視野角を評価したところ、本発明のセルロー
スエステル試料6−1を用いた場合に比べ、左右上下共
にその視野角は著しく劣るものであった。したがって、
本発明のセルロースエステルフィルムが、光学的用途と
して優れたものであることが判る。
7の本発明のフィルムベースの一方に、特開平4−73
736号の実施例1の(バック層組成)第一層及び第2
層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバッ
ク層を作製した。更に、前記で得られたバック層を付与
したフィルムベースの反対の面に、特開平7−2873
45号の実施例1に記載されたカラーネガ感材層を重層
塗布して、ハロゲン化銀乳剤層付きの本発明の感材試料
7−1を作製した。得られた感材は弾性率に優れ、写真
として優れるものであった。これらの結果から、本発明
の可塑剤を用いた感材が従来の技術では得られなかった
優れた技術であることが理解できる。
Claims (6)
- 【請求項1】 下記式(I)で表わされる化合物からな
るセルロースエステル用可塑剤: 【化1】 [式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 は、
それぞれ独立に、炭素原子数が2乃至18のアシル基、
炭素原子数が1乃至18の脂肪族基、炭素原子数が6乃
至18の芳香族基または水素原子であり、R1 、R2 、
R3 、R4 、R5およびR6 の少なくとも五つは、炭素
原子数が2乃至18のアシル基、炭素原子数が2乃至1
8の脂肪族基または炭素原子数が6乃至18の芳香族基
である]。 - 【請求項2】 R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR
6 は、それぞれ独立に、炭素原子数が2乃至18のアシ
ル基または水素原子であり、R1 、R2 、R 3 、R4 、
R5 およびR6 の少なくとも五つは、炭素原子数が2乃
至18のアシル基である請求項1に記載のセルロースエ
ステル用可塑剤。 - 【請求項3】 セルロースエステルからなるセルロース
エステルフイルムであって、さらに下記式(I)で表わ
される化合物を2乃至25重量%の範囲で含むことを特
徴とするセルロースエステルフイルム: 【化2】 [式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 は、
それぞれ独立に、炭素原子数が2乃至18のアシル基、
炭素原子数が1乃至18の脂肪族基、炭素原子数が6乃
至18の芳香族基または水素原子であり、R1 、R2 、
R3 、R4 、R5およびR6 の少なくとも五つは、炭素
原子数が2乃至18のアシル基、炭素原子数が2乃至1
8の脂肪族基または炭素原子数が6乃至18の芳香族基
である]。 - 【請求項4】 セルロースエステルがセルロースアセテ
ートである請求項3に記載のセルロースエステルフイル
ム。 - 【請求項5】 厚さ方向のレターデーション値が100
nm以下である請求項3に記載のセルロースエステルフ
イルム。 - 【請求項6】 セルロースエステルおよび下記式(I)
で表わされる化合物を、アセトンまたは酢酸メチルを5
0重量%以上含む有機溶媒と混合し、これによりセルロ
ースエステルを有機溶媒中に膨潤させる工程;膨潤した
混合物を−100乃至−10℃に冷却する工程;冷却し
た混合物を0乃至200℃に加温し、セルロースの低級
脂肪酸エステルが有機溶媒中に溶解しているセルロース
エステル溶液を調製する工程;調製したセルロースエス
テル溶液を支持体上に流延する工程;そして有機溶媒を
蒸発させてフイルムを形成する工程からなるセルロース
エステルフイルムの製造方法: 【化3】 [式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 は、
それぞれ独立に、炭素原子数が2乃至18のアシル基、
炭素原子数が1乃至18の脂肪族基、炭素原子数が6乃
至18の芳香族基または水素原子であり、R1 、R2 、
R3 、R4 、R5およびR6 の少なくとも五つは、炭素
原子数が2乃至18のアシル基、炭素原子数が2乃至1
8の脂肪族基または炭素原子数が6乃至18の芳香族基
である]。
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