JP3805306B2 - 偏光板保護フイルムおよび偏光板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアセテートを使用した偏光板保護フイルムおよびそれを用いた偏光板に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアセテートフイルムは、その強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いられている。セルロースアセテートフイルムは、代表的な写真感光材料の支持体である。また、セルロースアセテートフイルムは、その光学的等方性から、近年市場の拡大している液晶表示装置にも用いられている。液晶表示装置における具体的な用途としては、偏光板の保護フイルムおよびカラーフィルターが代表的である。
セルロースアセテートの酢化度や重合度(粘度と相関関係あり)は、得られるフイルムの機械的強度や耐久性と密接な関係がある。酢化度や重合度が低下するにつれて、フイルムの弾性率、耐折強度、寸度安定性および耐湿熱性も低下する。写真用支持体や光学フイルムとして要求される品質を満足するためには、セルロースアセテートの酢化度は58%以上(好ましくは59%以上)が必要であるとされる。酢化度が58%以上のセルロースアセテートは、一般にトリアセチルセルロース(TAC)に分類される。重合度は、粘度平均重合度として270以上が好ましく、290以上がさらに好ましいと考えられている。
【0003】
セルロースアセテートフイルムは、一般にソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。メルトキャスト法では、セルロースアセテートを加熱により溶融したものを支持体上に流延し、冷却してフイルムを形成する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャスト法よりも平面性の高い良好なフイルムを製造することができる。このため、実用的には、ソルベントキャスト法の方が普通に採用されている。
ソルベントキャスト法については、多くの文献に記載がある。最近のソルベントキャスト法では、ドープを支持体上へ流延してから、支持体上の成形フイルムを剥離するまでに要する時間を短縮して、製膜工程の生産性を向上させることが課題になっている。例えば、特公平5−17844号公報には、高濃度ドープを冷却ドラム上に流延することにより、流延後、剥ぎ取りまでの時間を短縮することが提案されている。
【0004】
ソルベントキャスト法に用いる溶媒は、単にセルロースアセテートを溶解することだけでなく、様々な条件が要求される。すなわち、平面性に優れ、厚みの均一なフイルムを、経済的に効率よく製造するためには、適度な粘度とポリマー濃度を有する保存安定性に優れた溶液(ドープ)を調製する必要がある。ドープについては、ゲル化が容易であることや支持体からの剥離が容易であることも要求される。そのようなドープを調製するためは、溶媒の種類の選択が極めて重要である。溶媒については、蒸発が容易で、フイルム中の残留量が少ないことも要求される。
セルロースアセテートの溶媒として、様々な有機溶媒が提案されているが、以上の要求を全て満足する溶媒は、実質的にはメチレンクロリドに限られていた。言い換えると、メチレンクロリド以外の溶媒は、ほとんど実用化されていない。メチレンクロリド以外のセルロースアセテートの有機溶媒としては、エピクロルヒドリン(沸点:116℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、テトラヒドロフラン(沸点:65.4℃)、1,4−ジオキサン(沸点:101℃)、1,3−ジオキソラン(沸点:75℃)やニトロメタン(沸点:101℃)が知られている。これらの溶剤は、メチレンクロリド(沸点:41℃)よりも沸点が高いため、乾燥工程における負荷が大きくなる。エーテル化合物は、過酸化物生成による爆発の危険性がある。ニトロ化合物も爆発性がある。
【0005】
メチレンクロリドは、以上のような問題がない非常に優れた有機溶媒である。しかしながら、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素は、近年、地球環境保護の観点から、その使用は著しく規制される方向にある。また、メチレンクロリドは、低沸点(41℃)であるため、製造工程において揮散しやすい。このため、作業環境においても問題である。これらの問題を防止するため、製造工程のクローズド化が行なわれているが、密閉するにしても技術的な限界がある。従って、メチレンクロリドの代替となるような、セルロースアセテートの溶媒を捜し求めることが急務となっている。
ところで、汎用の有機溶剤であるアセトン(沸点:56℃)は、適度の沸点を有し、乾燥負荷もそれほど大きくない。また、人体や地球環境に対しても、塩素系有機溶剤に比べて問題が少ない。
しかし、アセトンは、セルロースアセテートに対する溶解性が低い。置換度2.70(酢化度58.8%)以下のセルロースアセテートに対しては、アセトンは若干の溶解性を示す。セルロースアセテートの置換度が2.70を越えると、アセトンの溶解性がさらに低下する。置換度2.80(酢化度60.1%)以上のセルロースアセテートとなると、アセトンは膨潤作用を示すのみで溶解性を示さない。
【0006】
ジェイ・エム・ジー・コーウィー(J.M.G.Cowie)他、Makromol,Chem.、1971年、143巻、105頁は、置換度2.80(酢化度60.1%)から置換度2.90(酢化度61.3%)のセルロースアセテートを、アセトン中で−80℃から−70℃に冷却した後、加温することにより、アセトン中にセルロースアセテートが0.5乃至5質量%に溶解している希薄溶液が得られたことを報告している。以下、このように、セルロースアセテートとアセトンとの混合物を冷却して、溶液を得る方法を「冷却溶解法」と称する。ただし、同論文に記載されている0.5乃至5質量%の希薄溶液は、セルロースアセテートフイルムを製造するためには不適当である。フイルムを製造するためのドープは、10乃至30質量%のセルロースアセテートの濃度が必要とされる。
なお、セルロースアセテートのアセトン中への溶解については、上出健二他、三酢酸セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸、繊維機械学会誌、1981年、34巻、57〜61頁にも記載がある。この論文は、その標題のように、冷却溶解法を紡糸方法の技術分野に適用したものである。論文では、得られる繊維の力学的性質、染色性や繊維の断面形状に留意しながら、冷却溶解法を検討している。この論文では、繊維の紡糸のために10乃至25質量%の濃度を有するセルロースアセテートの溶液を用いている。しかし、繊維の紡糸方法とフイルムの製造方法(製膜方法)では、技術分野の違いが著しく、技術内容の応用は困難であった。
【0007】
【特許文献1】
特公平5−17844号公報
【非特許文献1】
ジェイ・エム・ジー・コーウィー(J.M.G.Cowie)他、Makromol,Chem.、1971年、143巻、105頁
シー・ジェイ・マルム(C.J.Malm)他、Ind.Enig.Chem.、1951年、43巻、688頁
【非特許文献2】
上出健二他、三酢酸セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸、繊維機械学会誌、1981年、34巻、57〜61頁
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れたセルロースアセテートフイルムを用いて偏光板保護フイルムを得ることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(5)の偏光板保護フイルムおよび下記(6)の偏光板により達成された。
(1)セルロースアセテートを使用した偏光板保護フイルムであって、前記セルロースアセテートは、
平均酢化度が58.0乃至62.5%、
粘度平均重合度(DP)が290以上、
粘度平均重合度(DP)に対する落下球粘度法による濃厚溶液粘度(η)が
2.814×ln(DP)−11.753≦ln(η)≦6.29×ln(DP)−31.469を満たし、
溶融状態からの結晶化発熱量が5〜17J/gのものであることを特徴とする偏光板保護フイルム。
【0010】
(2)セルロースアセテートは、粘度平均重合度(DP)が299以上のものであることを特徴とする(1)の偏光板保護フイルム。
(3)セルロースアセテートは、平均酢化度が60.9%以下のものであることを特徴とする(1)の偏光板保護フイルム。
(4)セルロースアセテートは、平均酢化度が60.9%以下のものであることを特徴とする(2)の偏光板保護フイルム。
(5)セルロースアセテートは、製造時の硫酸触媒量がセルロース100質量部に対して10〜15質量部で反応して得られたものであることを特徴とする(1)〜(4)いずれかの偏光板保護フイルム。
(6)保護フイルムを有する偏光板において、前記保護フイルムは、前記(1)〜(5)いずれかの偏光板保護フイルムであることを特徴とする偏光板。
【0011】
【発明の実施の形態】
[セルロースアセテート]
本発明に用いるセルロースアセテートは、平均酢化度(アセチル化度)が58.0から62.5%である。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。平均酢化度は、実施例1に示す60.9%以下であることが好ましい。
このセルロースアセテートの酢化度の範囲は、前述したように、写真用支持体や光学フイルムとして要求される品質を満足するために必要とされる値である。また、酢化度が58.0未満のセルロースアセテートは、本発明の冷却溶解法を用いなくても、アセトン中に溶解することができる。
【0012】
セルロースアセテートは、綿花リンターまたは木材パルプから合成することができる。綿花リンターと木材パルプを混合して用いてもよい。一般に木材パルプから合成する方が、コストが低く経済的である。ただし、綿花リンターを混合することにより、剥ぎ取り時の負荷を軽減できる。また、綿花リンターを混合すると、短時間に製膜しても、フイルムの面状があまり悪化しない。
セルロースアセテートは、一般に、酢酸−無水酢酸−硫酸でセルロースを酢化して合成する。工業的には、メチレンクロリドを溶媒とするメチクロ法あるいはセルロースアセテートの非溶媒(例、ベンゼン、トルエン)を添加して繊維状で酢化する繊維状酢化法が用いられる。
【0013】
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、290以上である。粘度平均重合度は、実施例1に示す299以上であることが好ましい。重合度が250未満のセルロースアセテートでは、得られるフイルムの強度が悪化する。粘度平均重合度は、オストワルド粘度計にて測定したセルロースアセテートの固有粘度[η]から、下記の式により求める。
(1) DP=[η]/Km
式中、[η]は、セルロースアセテートの固有粘度であり、Kmは、定数6×10-4である。
【0014】
さらに、粘度平均重合度(DP)と落球式粘度法による濃厚溶液粘度(η)とが下記式(2)の関係を満足する。
(2)
2.814×ln(DP)−11.753≦ln(η)≦6.29×ln(DP)−31.469
式中、DPは290以上の粘度平均重合度の値であり、ηは落球式粘度法における標線間の通過時間(秒)である。
上記式(2)は、本発明者が行なった実験のデータから、粘度平均重合度と濃厚溶液粘度をプロットし、その結果から算出したものである。粘度平均重合度が290以上のセルロースアセテートにおいては、一般に重合度が高くなると濃厚溶液の粘度が指数的に増加する。これに対して、上記式を満足するセルロースアセテートでは、粘度平均重合度に対する濃厚溶液粘度の増加が直線的である。言い換えると、高い粘度平均重合度を有するセルロースアセテートの場合は、上記式(1)を満足するように濃厚溶液粘度の増加を抑制することが好ましい。
【0015】
また、本発明に使用するセルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0乃至1.7であることが好ましく、1.3乃至1.65であることがさらに好ましく、1.4乃至1.6であることが最も好ましい。Mw/Mnの値が1.7を越えると、ドープ粘度が大きくなり過ぎて、フイルムの平面性が低下する場合がある。なお、Mw/Mnの値が1.0乃至1.4の値のセルロースアセテートは、一般に製造が困難である。この範囲の値のセルロースアセテートを得ようとしても、実際には分子量が著しく低いものしか得られない。従って、そのようなセルロースアセテートから製造したフイルムは、分子量の低下によりフイルムの機械物性も低下する場合が多い。
【0016】
セルロースアセテートの結晶化発熱量は、小さい値であることが好ましい。結晶化は発熱量が小さいことは、結晶化度が小さいことを意味する。具体的な結晶化発熱量(ΔHc)は、5乃至17J/gであることが好ましく、6乃至16J/gであることがさらに好ましく、10乃至16J/gであることが最も好ましい。結晶化発熱量が17J/gを越えると、フイルム中に多くの微結晶成分が存在することになる。微結晶があると、溶媒であるアセトンへの溶解性が低下する。また、得られた溶液(ドープ)の安定性も低く、再び微結晶が生じやすい。さらに、得られるフイルムの加工適性や光学特性も低下する。一方、結晶化発熱量が5J/g未満であると、得られるフイルムの機械的強度が低下する。また、結晶化発熱量が低いと、ドープのゲル化に時間を要するとの問題もある。
【0017】
低分子成分が少ないセルロースアセテートは、以上述べたような粘度平均重合度(DP)と濃厚溶液粘度(η)の関係、Mw/Mnの分子量分布あるいは結晶化発熱量の範囲を、容易に満足することができる。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアセテートよりも低くなる。従って、前記のDPとηの関係を満足することができる。また、低分子成分が除去されると、分子量の分布も均一になる。さらに、低分子成分は結晶化しやすいため、これを除去することにより、結晶化発熱量を低下させることができる。
低分子成分の少ないセルロースアセテートは、通常の方法で合成した(例えば、市販の)セルロースアセテートから低分子成分を除去することにより得ることができる。
【0018】
低分子成分の除去は、セルロースアセテートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。有機溶媒の例としては、ケトン類(例、アセトン)、酢酸エステル類(例、メチルアセテート)およびセロソルブ類(例、メチルセロソルブ)が含まれる。本発明においては、ケトン類、特にアセトンを用いることが好ましい。
通常の方法により得られるセルロースアセテートを有機溶媒で一回洗浄すると、原料質量に対して10乃至15質量%程度の低分子セルロースアセテートが洗浄液中に除去される。洗浄後のセルロースアセテートに2回目の洗浄を実施すると、洗浄液中に除去される低分子セルロースアセテートは、一般に10質量%以下になる。アセトン抽出分が10質量%以下であれば、低分子成分が充分に少ないセルロースアセテートである。従って、通常は、一回の洗浄で低分子成分が充分に少ないセルロースアセテートが得られる。アセトン抽出分は、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
低分子成分の除去の効率を高めるために、洗浄前に、セルロースアセテートの粒子を粉砕あるいは篩にかけることで、粒子サイズを調節することが好ましい。具体的には、20メッシュを通過する粒子が70%以上となるように調節することが好ましい。
洗浄方法としては、ソックスレー抽出法のような溶剤循環方式を採用することができる。また、通常の攪拌槽にて溶媒と共に攪拌し、溶媒と分離することにより洗浄を実施することもできる。なお、一回目の洗浄では、10乃至15%程度の低分子成分が溶媒中に溶解するため、液が粘稠になりやすい。このため、処理の操作を考慮し、溶媒に対するセルロースアセテートの割合は、10質量%以下のすることが好ましい。
【0020】
低分子成分の少ないセルロースアセテートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して10乃至15質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲(比較的多量)にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアセテートを合成することができる。
【0021】
[ドープ形成(冷却溶解法)]
冷却溶解法により、実質的にアセトンからなる有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解して、溶液(ドープ)を形成することができる。有機溶媒中のアセトンの割合は、95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが最も好ましい。
ドープ形成においては、最初に、室温でアセトン中にセルロースアセテートを攪拌しながら徐々に添加する。この段階では、セルロースアセテートは、アセトン中で膨潤するが、溶解していない。セルロースアセテートの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。アセトン中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100乃至−10℃、好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30℃乃至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートとアセトンの混合物は固化する。
【0022】
さらに、これを0乃至50℃に加温すると、アセトン中にセルロースアセテートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよいし、温浴中で加温してもよい。このようにして、均一な溶液状態であるドープが得られる。なお、溶解が不充分である場合は、冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視によりドープの外観を観察するだけで判断することができる。冷却溶解方法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
【0023】
得られたドープの安定性は、フイルム製造における重要な条件である。ドープの移送時に、配管中で未溶解物が発生したり、製造装置の保守管理のための停止期間中に凝固が起きることは避けねばならない。ドープの経時安定性は、前述したセルロースアセテートの性質に加えて、保存温度やドープ濃度も関連する。
セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)をアセトンを溶媒として冷却溶解法により調製したドープについて、セルロースアセテート濃度とドープの保存温度との関係を図1に示す。図1に示すように実用的な保存温度範囲(−10℃から30℃)において、高温域でLCST型、低温域でUCST型の2つの相分離領域が認められた。このドープを安定に保存するためには、図1に示す均一相領域の温度を維持する必要がある。この領域範囲を外れると、ドープは相分離によるゲル化を生じて乳白色の固体となる。
なお、この均一領域は、セルロースアセテートの平均酢化度、粘度平均重合度やドープ濃度により異なる。
【0024】
[流延、乾燥]
ドープは、支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成することができる。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。支持体表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。支持体としては、ドラムまたはバンドが用いられる。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号各公報に記載がある。
【0025】
ドープは、表面温度が10℃以下の支持体上に流延することが好ましい。流延した2秒上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムを支持体から剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時の支持体表面温度においてドープがゲル化することが必要である。本発明に従い製造したドープは、この条件を満足する。
本発明に従い製造するフイルムの厚さは、5乃至500μmであることが好ましく、20乃至200μmであることがさらに好ましく、60乃至120μmであることが最も好ましい。
【0026】
[その他の添加剤]
セルロースアセテートフイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート、(DOP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)およびクエン酸アセチルトリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPが特に好ましい。
【0027】
さらに、下記式(I)、(II)または(III)で示される化合物を添加してもよい。
【0028】
【化1】
Figure 0003805306
【0029】
【化2】
Figure 0003805306
【0030】
式中、Rは、それそれ炭素原子数が1乃至4のアルキル基である。
上記化合物は、一般に結晶核形成剤(核剤)として知られている。結晶核形成剤は、従来から、結晶性高分子(特にポリプロピレン)を溶融成型する場合に、その光学的性質、機械的性質、熱的性質や成型性の向上するための改質剤として使用されている。
本発明では、上記化合物を結晶核形成剤として使用するのではなく、ドープのゲル化温度を高くするために使用することができる。上記化合物は、その両親媒性のある化学構造から、セルロースアセテートとの相互作用を有する。一方、上記化合物の自己凝集作用がアセチルセルロースよりも高いため、結果としてアセチルセルロースの凝集を促し、ゲル化温度が高くなると考えられる。
上記化合物は、ドープの粘度を下げる効果がある。上記化合物は、アセトンとセルロースアセテートの水酸基との溶媒和を妨害するため、ポリマーの広がりを抑えるためであると考えられる。
【0031】
上記式(I)、(II)または(III)で示される化合物の例には、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(アデカスタブNA−11、旭電化(株)製)、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム(アデカスタブNA−10、旭電化(株)製)、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビドール(ゲルオールMD、新日本理化(株)製)およびビス(p−エチルビンジリデン)ソルビトール(NC−4、三井東圧化学(株)製)が含まれる。
セルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤(例、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平5−197073号公報に記載がある。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
【0032】
【実施例】
各実施例において、セルロースアセテート、ドープおよびフイルムの化学的性質および物理的性質は、以下のように測定および算出した。
【0033】
(1)セルロースアセテートの酢化度(%)
酸化度はケン化法により測定した。乾燥したセルロースアセテートを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)に溶解した後、所定量の1N−水酸化ナトリウム水溶液を添加し、25℃で2時間ケン化した。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法により、ブランクテストを行った。そして、下記式に従って酢化度(%)を算出した。
酢化度(%)=(6.005×(B−A)×F)/W
式中、Aは試料の滴定に要した1N−硫酸量(ml)、Bはブランクテストに要した1N−硫酸量(ml)、Fは1N−硫酸のファクター、Wは試料質量を示す。
【0034】
(2)セルロースアセテートの平均分子量および分子量分布
ゲル濾過カラムに、屈折率、光散乱を検出する検出器を接続した高速液体クロマトグラフィーシステム(GPC−LALLS)を用い測定した。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロリド
カラム: GMH×1(東ソー(株)製)
試料濃度: 0.1W/v%
流量: 1ml/min
試料注入量:300μl
標準試料: ポリメタクリル酸メチル(Mw=188,200)
温度: 23℃
【0035】
(3)セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)
絶乾したセルロースアセテート約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶媒100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
Figure 0003805306
【0036】
(4)セルロースアセテートの濃厚溶液粘度(η)
セルロースアセテートを15質量%となるように、メチレンクロリド:メタノール=8:2(質量比)の混合溶媒に溶解し、溶液を内径2.6cmの粘度管に注入し、25℃に調温後、溶液中に直径3.15mm、0.135gの剛球を落下させて、間隔10cmの標線管を通過する時間(秒)を粘度とした。
【0037】
(5)セルロースアセテートの結晶化発熱量(ΔHc)
セルロースアセテートを、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶媒に溶解して、セルロースアセテート15質量%のドープを調製した。ドープを不織布を用いて加圧濾過し、平滑なガラス板上にバーコーターを用いて流延した。一日風乾後、ガラス板から剥離して80℃で4時間真空乾燥した。得られたフイルム試料10mgを標準アルミパンに詰め、熱補償型示差走査熱量計(DSC)の試料台に載せた。溶融温度で短時間保持して、試料を溶融させた後、降温速度4℃/minで室温まで冷却して結晶化させた。
このようにして得られたDSC曲線の発熱ピーク面積から結晶化発熱量(ΔHc)を求めた。DSC測定は窒素雰囲気下で行ない、温度較正は、In(融点:156.60℃)、Sn(融点:231.88℃)の二点較正で、熱量較正は、In(融解熱量:28.45J/g)の一点較正で、それぞれ行なった。また、結晶化温度の解析法は、JIS−K−7121(1987)の規定に、結晶化発熱量の解析法は、JIS−K−7122(1987)の規定に、それぞれ準拠した。
【0038】
(6)セルロースアセテートのアセトン抽出分(%)
セルロースアセテートの質量(A)を測定した後、10倍質量のアセトン中、室温で30分間攪拌した後、フィルターにて加圧濾過した。得られた濾液を乾燥し、固形分質量(B)を計量した。アセトン抽出分は、下記式により計算した。
アセトン抽出分=(B÷A)×100
【0039】
(7)ドープの粘度測定とゲル化の有無の判定
粘度計(HAAKE社製)により、下記アンドレードの式における係数Aの変化点を求めた。変化点と到達粘度からゲル化を判断した。
ローター:sv−DIN
剪断速度:0.1(1/sec)
降温速度:0.5℃/min
η=Aexp(B/T)
式中、Tは測定温度、AおよびBは、それぞれポリマーの状態により決まる任意の定数である。
ゲル化の有無は、係数Aの変化点の有無(粘度と温度のグラフが屈曲点を有するか否か)で判断できる。
【0040】
(8)フイルムの平衡水分率
温度25℃、相対湿度60%の条件以下でフイルムを24時間放置した後、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定した。得られた水分量(g)を試料質量(g)で除して、平衡水分率を算出した。
測定装置としては、三菱化学(株)製の水分測定装置CA−03、同試料乾燥装置VA−05を用いた。カールフィッシャー試薬としては、同社製のAKS、CKSを用いた。
【0041】
(9)フイルムの引張試験
長さ100mm、巾10mmの試料を、ISO1184−1983の規格に従い、初期試料長50mm、引張速度20mm/minにて測定し、弾性率および破断伸度を求めた。
【0042】
(10)フイルムの引裂試験
50mn×64mmに切りだした試料を、ISO6383/2−1983の規格に従い、引裂に要した引裂荷重を求めた。
【0043】
(11)フイルムの耐折試験
120mnに切りだした試料をISO8776/2−1988の規格に従い、
折り曲げよって切断するまでの往復回数を求めた。
【0044】
(12)フイルムの耐湿熱性
試料1gを折り畳んで15ml容量のガラス瓶に入れ、温度90℃、相対湿度100%条件下で調湿した後、密閉した。これを90℃で経時して200時間後に取り出した。フイルムの状態を目視で確認し、以下の判定をした。
A:特に異常が認められない
B:分解臭または分解による形状の変化が認められる
【0045】
(13)フイルムのレターデーション(Re)値
エリプソメーター(偏光解析計AEP−100:島津製作所(株)製)を用いて、波長632.8nmにおけるフイルム面に垂直方向から測定した正面レターデーション値を求めた。
【0046】
(14)フイルムのヘイズ
ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0047】
[実施例1]
室温において、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテート100質量部とアセトン400質量部を混合した。混合物中のセルロースアセテートの割合は、20質量%である。室温では、セルロースアセテートは溶解せずにアセトン中で膨潤した。得られた膨潤混合物は、溶解せずにスラリーを形成していた。
次に、膨潤混合物を二重構造の容器に入れた。混合物をゆっくり攪拌しながら外側のジャケットに冷媒としてドライアイス/メタノール混合物を流し込んだ。冷媒は、二酸化炭素の溶融温度である−78.5℃付近の温度の液体であり、これにより内側容器内の混合物を−70℃まで冷却した。混合物が均一に冷却されて固化するまで(30分間)、冷媒による冷却を継続した。
【0048】
容器の外側のジャケット内の冷媒を除去し、代わりに温水をジャケットに流し込んだ。内容物のゾル化がある程度進んだ段階で、内容物の攪拌を開始した。このようにして、30分間かけて室温まで加温した。
さらに、以上の冷却および加温の操作をもう一回繰り返した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てアセトン中に溶解しており、均一なドープが得られた。
ドープを(7)の測定方法で、ゲル化の有無の判定したところ、低温でのゲル化が認められた。
【0049】
ドープを、有効長6mのバンド流延機を用いて、乾燥膜厚が100μmになるように流延した。バンド温度は0℃とした。乾燥のため、2秒風に当てた後、フイルムをバンドから剥ぎ取り、さらに100℃で3分、130℃で5分、そして160℃で5分、フイルムの端部を固定しながら段階的に乾燥して、残りの溶剤を蒸発させた。このようにして、セルロースアセテートフイルムを製造した。
【0050】
[実施例2]
混合物中のセルロースアセテートの割合を、25質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、ドープを形成した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てアセトン中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
【0051】
[参考例1]
平均酢化度:60.2、粘度平均重合度:323のセルロースアセテートを用い、冷却を水/エチレングリコール系の冷媒(−30℃)を用いた実施した以外は、実施例1と同様にして、ドープを形成した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てアセトン中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
【0052】
[参考例2]
平均酢化度:59.5、粘度平均重合度:395のセルロースアセテートを用い、冷却を水/エチレングリコール系の冷媒(−20℃)を用いた実施した以外は、実施例1と同様にして、ドープを形成した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てアセトン中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
【0053】
[比較例1]
混合物中のセルロースアセテートの割合を、45.5質量%に変更した以外は実施例1と同様にして、ドープを形成した。
冷却溶解の操作を数回繰り返したが、セルロースアセテートを全てアセトン中に溶解することはできなかった。
【0054】
[比較例2]
室温(20℃)においてアセトン中に、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテートを、混合物中の割合が20質量%となるように混合した。得られた膨潤混合物は、溶解せずにスラリーを形成していた。
膨潤混合物を実施例1で用いた二重容器に投入した。混合物をゆっくり攪拌しながら、外側のジャケットに室温(20℃)の水を流し込んだ。このようにして混合物を室温で30分間攪拌を続けた。膨潤混合物は依然として、溶解せずにスラリーを形成していた。30分間の攪拌操作をさらに3回繰り返したが、膨潤混合物は依然として、溶解せずにスラリーを形成していた。
【0055】
[比較例3]
平均酢化度:60.2、粘度平均重合度:323のセルロースアセテートを用いた以外は、比較例2と同様にして、室温において溶液の作成を試みた。しかし、セルロースアセテートは、アセトン中に溶解せずに膨潤するだけであった。
【0056】
[比較例4]
平均酢化度:59.5、粘度平均重合度:395のセルロースアセテートを用いた以外は、比較例2と同様にして、室温において溶液の作成を試みた。しかし、セルロースアセテートは、アセトン中に溶解せずに膨潤するだけであった。
【0057】
[比較例5]
平均酢化度:57.0、粘度平均重合度:280のセルロースアセテートを用いた以外は、比較例2と同様にして、室温において溶液の作成を試みたところ、セルロースアセテートをアセトン中に溶解することができた。ドープを(7)の測定方法で、ゲル化の有無の判定したところ、低温でのゲル化は認められなかった。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造したところ、低温でのゲル化がないため、フイルムの乾燥がほぼ終了するまでフイルムを支持体から剥離することができなかった。また、乾燥工程の間、フイルムが支持体上に置かれているため、厚み方向にのみ収縮が生じ、平面方向に延伸したフイルムが得られた。このフイルムは、破断しやすく、物性強度が不充分であった。
【0058】
以上の実施例1、2、参考例1、2および比較例1〜5の結果を下記第1表にまとめて示す。
第1表に示される結果から明らかなように、実施例1〜2において冷却溶解法によりアセトン中に溶解できたセルロースアセテートも、濃度45.5質量%(比較例1)では、溶解することができなかった。また、実施例1、2、参考例1、2に用いたセルロースアセテートは、常温では溶解することができなかった(比較例2〜4)。平均酢化度が57.0%のセルロールアセテートは、常温で溶解することができたが、得られたドープは、低温ゲル化がなく、得られたフイルムに問題が生じた。
【0059】
【表1】
Figure 0003805306
【0060】
実施例1および比較例5で得られたドープについて、測定方法(7)に従い測定したドープ温度(1/K×103 )とドープ粘度(Logη)との関係を図2のグラフに示す。
図2のグラフから明らかなように、実施例1で得られたドープについてのグラフは、屈曲点を有し、明確なゲル化温度が存在している。
【0061】
[参考例3]
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)100質量部、アセトン375質量部およびジエチルフタレート(DEP)15質量部を混合した。
混合物を、参考例1と同様に、水/エチレングリコール系の冷媒(−30℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。
得られたドープについて、(7)の測定方法に従い、粘度とゲル化温度を測定したところ、粘度は240Pas(25℃)、ゲル化温度は−12℃であった。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
【0062】
[参考例4]
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)100質量部、アセトン385質量部、ジエチルフタレート(DEP)15質量部およびリン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(アデカスタブNA−11、旭電化(株)製)0.4質量部を混合した。
混合物を、参考例1と同様に、水/エチレングリコール系の冷媒(−30℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。
得られたドープについて、(7)の測定方法に従い、粘度とゲル化温度を測定したところ、粘度は100Pas(25℃)、ゲル化温度は−9℃であった。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
参考例3および4の結果を下記第2表に示す。
第2表に示される結果から明らかなように、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(NA−11)を添加すると、ゲル化温度の上昇とドープ粘度の低下が認められる。
【0063】
【表2】
Figure 0003805306
【0064】
(フイルムの評価)
実施例1および参考例4において得られたセルロースアセテートフイルムについて、前記の測定方法に従い、(8)平衡水分率の測定、(9)引張試験、(10)引裂試験、(11)耐折試験、(12)耐湿熱性、(13)レターデーション(Re)値の測定および(14)ヘイズの測定を行なった。
結果を下記第3表に示す。
第3表に示される結果は、本発明に従い製造したセルロースアセテートフイルムは、いずれも良好な物理的および化学的性質を有していることを示している。
【0065】
【表3】
Figure 0003805306
【0066】
[実施例3]
実施例1で用いたセルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を、10倍量のアセトン中、室温で30分間攪拌し、脱液および乾燥させた。
得られた(低分子成分を除去した)セルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:322)を用い、混合物中のセルロースアセテートの割合を22.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、冷却溶解法によりドープを形成した。さらに、得られたドープを用いて実施例1と同様にセルロースアセテートフイルムを製造した。
【0067】
[実施例4]
セルロースアセテート100質量部を、硫酸11.7質量部、無水酢酸260質量部および酢酸450質量部を用いて、通常の方法によりエステル化および加水分解を行ない、平均酢化度:60.2%、粘度平均重合度:312のセルロースアセテートを合成した。
得られた(低分子成分の少ない)セルロースアセテートを用い、混合物中のセルロースアセテートの割合を22.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、冷却溶解法によりドープを形成した。さらに、得られたドープを用いて実施例1と同様にセルロースアセテートフイルムを製造した。
【0068】
[比較例6]
平均酢化度:61.7%、粘度平均重合度:291のセルロースアセテートを用い、混合物中のセルロースアセテートの割合を22.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、冷却溶解法によりドープを形成した。さらに、得られたドープを用いて実施例1と同様にセルロースアセテートフイルムを製造した。
【0069】
実施例1、実施例3、4および比較例6で用いたセルロースアセテートについて、前記の測定方法に従い、(1)酢化度、(2)分子量分布(Mw/Mn)、(3)粘度平均重合度(DP)、(4)濃厚溶液粘度(η:秒)、(5)結晶化発熱量(ΔHc)および(6)アセトン抽出分を測定した。さらに(15)として、(4)の粘度の結果から、ln(η)の実測値を計算した。別に、(3)の重合度の結果および前記(2)の式で定義する重合度と濃厚溶液粘度との関係から、ln(η)の好ましい値の下限(16)と好ましい値の上限(17)を求めた。
以上の結果を第4表に示す。
【0070】
【表4】
Figure 0003805306
【0071】
さらに、実施例1および実施例3で得られたドープを、14℃の恒温槽に保存して経時変化を観察した。その結果、実施例1で得られたドープは、1時間保存後も均一な溶液相を形成していたが、5時間保存後は、セルロースアセテートの不溶化により相分離が生じていた。これに対して、実施例3で得られたドープは、240時間保存しても、均一な溶液相を保っていた。
【0072】
[参考例5]
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)100質量部、アセトン385質量部、トリフェニルホスフェート(TPP)15質量部を混合した。
混合物を参考例1と同様に、水/エチレングリコール系の冷媒(−30℃)を用いた冷却溶解方で処理して、ドープを形成した。
得られたドープについて、前記の測定方法に従い(8)平衡水分率の測定、(4)引張試験、(10)引裂試験、(11)耐折試験、(12)耐湿熱性、(13)レターデーション値の測定および(14)ヘイズの測定を行なった。
結果を下記第5表に示す。
第5表に示される結果から明らかなように、本発明に従い製造したセルロースアセテートフイルムは、良好な物理的および化学的性質を有している。
【0073】
【表5】
Figure 0003805306
【0074】
さらに、検討すると参考例5は、前記実施例1および参考例4と比較すると、耐湿熱性(12)の点で、性能が少し劣る。従って、特に耐湿熱性が要求される光学フイルムの用途においては、実施例1および参考例4のフイルムを適用することが望ましい。
また、参考例5は、前記参考例4と同様に、実施例1よりも平衡水分量が少ない。このため、環境湿度変化に対する寸度安定性が要求される技術分野には、参考例4および5のフイルムを適用することが望ましい。
【0075】
【発明の効果】
本発明に従うと、優れたセルロースアセテートフイルムを製造することができ、それを偏光板保護膜に用いることができ、さらにそれを偏光板に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セルロースアセテートを溶媒として冷却溶解法により調製したドープの状態について、濃度と保存温度との関係を示したグラフである。
【図2】実施例1および比較例5で得られたドープについて、ドープ温度(1/K×103 )とドープ粘度(Logη)との関係を示すグラフである。

Claims (6)

  1. セルロースアセテートを使用した偏光板保護フイルムであって、前記セルロースアセテートは、
    平均酢化度が58.0乃至62.5%、
    粘度平均重合度(DP)が290以上、
    粘度平均重合度(DP)に対する落下球粘度法による濃厚溶液粘度(η)が
    2.814×ln(DP)−11.753≦ln(η)≦6.29×ln(DP)−31.469を満たし、
    溶融状態からの結晶化発熱量が5〜17J/gのものであることを特徴とする偏光板保護フイルム。
  2. セルロースアセテートは、粘度平均重合度(DP)が299以上のものであることを特徴とする請求項1の偏光板保護フイルム。
  3. セルロースアセテートは、平均酢化度が60.9%以下のものであることを特徴とする請求項1の偏光板保護フイルム。
  4. セルロースアセテートは、平均酢化度が60.9%以下のものであることを特徴とする請求項2の偏光板保護フイルム。
  5. セルロースアセテートは、製造時の硫酸触媒量がセルロース100質量部に対して10〜15質量部で反応して得られたものであることを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの偏光板保護フイルム。
  6. 保護フイルムを有する偏光板において、前記保護フイルムは、前記請求項1〜請求項5いずれかの偏光板保護フイルムであることを特徴とする偏光板。
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