JP3712238B2 - セルロースアセテート溶液の調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法 - Google Patents
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Description
セルロースアセテートの酢化度や重合度(粘度と相関関係あり)は、得られるフイルムの機械的強度や耐久性と密接な関係がある。酢化度や重合度が低下するにつれて、フイルムの弾性率、耐折強度、寸度安定性および耐湿熱性も低下する。写真用支持体や光学フイルムとして要求される品質を満足するためには、セルロースアセテートの酢化度は58%以上(好ましくは59%以上)が必要であるとされる。酢化度が58%以上のセルロースアセテートは、一般にトリアセチルセルロース(TAC)に分類される。重合度は、粘度平均重合度として270以上が好ましく、290以上がさらに好ましいと考えられている。
ソルベントキャスト法については、多くの文献に記載がある。最近のソルベントキャスト法では、ドープを支持体上へ流延してから、支持体上の成形フイルムを剥離するまでに要する時間を短縮して、製膜工程の生産性を向上させることが課題になっている。例えば、高濃度ドープを冷却ドラム上に流延することにより、流延後、剥ぎ取りまでの時間を短縮することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
セルロースアセテートの溶媒として、様々な有機溶媒が提案されているが、実用化されている有機溶媒は、実質的にはメチレンクロリドに限られていた。
しかし、アセトンは、セルロースアセテートに対する溶解性が低い。置換度2.70(酢化度58.8%)以下のセルロースアセテートに対しては、アセトンは若干の溶解性を示す。セルロースアセテートの置換度が2.70を越えると、アセトンの溶解性がさらに低下する。置換度2.80(酢化度60.1%)以上のセルロースアセテートとなると、アセトンは膨潤作用を示すのみで溶解性を示さない。
また、セルロースアセテートのアセトン中への溶解について、冷却溶解法を紡糸方法の技術分野に適用することも提案されている(例えば、非特許文献2参照)。その論文では、得られる繊維の力学的性質、染色性や繊維の断面形状に留意しながら、冷却溶解法を検討している。その論文では、繊維の紡糸のために10乃至25重量%の濃度を有するセルロースアセテートの溶液を用いている。
溶液の安定性は、フイルムのような製品製造における重要な条件である。溶液の移送時に、配管中で未溶解物が発生したり、製造装置の保守管理のための停止期間中に凝固が起きることは避けねばならない。
セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を、アセトンを溶媒として冷却溶解法により調製した溶液について、セルロースアセテート濃度と溶液の保存温度との関係を図1に示す。図1に示すように実用的な保存温度範囲(−10℃から30℃)において、高温域でLCST型、低温域でUCST型の2つの相分離領域が認められた。この溶液を安定に保存するためには、図1に示す均一相領域の温度を維持する必要がある。この領域範囲を外れると、溶液は相分離によるゲル化を生じて乳白色の固体となる。
また本発明の目的は、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素系有機溶剤を使用せずに、安定なセルロースアセテート溶液を調製することでもある。
さらに本発明の目的は、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素系有機溶剤を使用せずに、優れたセルロースアセテートフイルムを製造することすることでもある。
(1)58.0乃至62.5%の平均酢化度を有するセルロースアセテートを、炭素原子数が3乃至12のエーテル類、炭素原子数が4乃至12のケトン類および炭素原子数が3乃至12のエステル類から選ばれ、ハロゲン化炭化水素を実質的に含まない有機溶媒中に膨潤させる工程、膨潤混合物を−100乃至−10℃に冷却する工程、および冷却した混合物を0乃至50℃に加温して、有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解する工程からなるセルロースアセテート溶液の調製方法。
(2)有機溶媒が、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキサノン、エチルホルメートおよびメチルアセテートから選ばれる(1)に記載のセルロースアセテート溶液の調製方法。
(4)(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の方法で調製したセルロースアセテート溶液を支持体上に流延する工程および溶媒を蒸発させてフイルムを形成する工程からなるセルロースアセテートフイルムの製造方法。
(5)セルロースアセテートを流延する支持体が、10℃以下の表面温度を有している(4)に記載の製造方法。
本発明に用いるセルロースアセテートは、平均酢化度(アセチル化度)が58.0から62.5%である。酢化度とは、セルロース単位重量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
このセルロースアセテートの酢化度の範囲は、前述したように、写真用支持体や光学フイルムとして要求される品質を満足するために必要とされる値である。また、酢化度が58.0未満のセルロースアセテートは、本発明の冷却溶解法を用いなくても、アセトン中に溶解することができる。
セルロースアセテートは、一般に、酢酸−無水酢酸−硫酸でセルロースを酢化して合成する。工業的には、メチレンクロリドを溶媒とするメチクロ法あるいはセルロースアセテートの非溶媒(例、ベンゼン、トルエン)を添加して繊維状で酢化する繊維状酢化法が用いられる。
(1) DP=[η]/Km
式中、[η]は、セルロースアセテートの固有粘度であり、Kmは、定数6×10−4である。
(2)
2.814×ln(DP)−11.753≦ln(η)≦6.29×ln(DP)−31.469
式中、DPは290以上の粘度平均重合度の値であり、ηは落球式粘度法における標線間の通過時間(秒)である。
上記式(2)は、本発明者が行なった実験のデータから、粘度平均重合度と濃厚溶液粘度をプロットし、その結果から算出したものである。粘度平均重合度が290以上のセルロースアセテートにおいては、一般に重合度が高くなると濃厚溶液の粘度が指数的に増加する。これに対して、上記式を満足するセルロースアセテートでは、粘度平均重合度に対する濃厚溶液粘度の増加が直線的である。言い換えると、高い粘度平均重合度を有するセルロースアセテートの場合は、上記式(1)を満足するように濃厚溶液粘度の増加を抑制することが好ましい。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアセテートよりも低くなる。従って、前記のDPとηの関係を満足することができる。また、低分子成分が除去されると、分子量の分布も均一になる。さらに、低分子成分は結晶化しやすいため、これを除去することにより、結晶化発熱量を低下させることができる。
低分子成分の少ないセルロースアセテートは、通常の方法で合成した(例えば、市販の)セルロースアセテートから低分子成分を除去することにより得ることができる。
通常の方法により得られるセルロースアセテートを有機溶媒で一回洗浄すると、原料重量に対して10乃至15重量%程度の低分子セルロースアセテートが洗浄液中に除去される。洗浄後のセルロースアセテートに2回目の洗浄を実施すると、洗浄液中に除去される低分子セルロースアセテートは、一般に10重量%以下になる。アセトン抽出分が10重量%以下であれば、低分子成分が充分に少ないセルロースアセテートである。従って、通常は、一回の洗浄で低分子成分が充分に少ないセルロースアセテートが得られる。アセトン抽出分は、5重量%以下であることがさらに好ましい。
洗浄方法としては、ソックスレー抽出法のような溶剤循環方式を採用することができる。また、通常の攪拌槽にて溶媒と共に攪拌し、溶媒と分離することにより洗浄を実施することもできる。なお、一回目の洗浄では、10乃至15%程度の低分子成分が溶媒中に溶解するため、液が粘稠になりやすい。このため、処理の操作を考慮し、溶媒に対するセルロースアセテートの割合は、10重量%以下にすることが好ましい。
本発明では、セルロースアセテート溶液の調製に有機溶媒を使用する。この有機溶媒は、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5重量%未満(好ましくは2重量%未満)であることを意味する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル類、炭素原子数が4乃至12のケトン類および炭素原子数が3乃至12のエステル類から選ばれる。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が4乃至12のケトン類の例には、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
一般に、溶媒がポリマーを膨潤するか溶解するか、すなわち溶媒の溶解力は、ポリマーと溶媒とを混合した場合の自由エネルギー変化である。さらに溶媒がポリマーを溶解する溶解力は、微分分子希釈自由エネルギー(ΔF)である。ΔFは、ある濃度の無限量の溶液に1モルの溶媒を加えたときの自由エネルギー変化に相当する。ポリマー溶液では、ΔFは一般に下記式(3)で表わされる。
(3)
ΔF=RT[ln(1−v)+(1−1/φ)v+χv2 ]
式中、Rは気体定数、Tは絶対温度、vはポリマーの容積分率、φはポリマーと溶媒分子の容積比、そしてχは相互作用係数である。
本発明に使用する有機溶媒は、19.0乃至20.0MPa1/2の溶解度パラメーターを有することが好ましい。溶解度パラメーターは、下記式(4)で定義される。
(4)
δ=(E/v)1/2
式中、δは溶解度パラメーター(MPa1/2 )であり、Eは蒸発エネルギー(J/モル)であり、そしてvはモル容積(ml/モル、20℃)である。
溶解度パラメーターが19.0乃至20.0MPa1/2 である有機溶媒の例としては、メチルアセテート(19.6MPa1/2)、シクロヘキサノン(19.7MPa1/2 )、エチルホルメート(19.4MPa1/2 )および2−メチル−2−ブタノール(19.0MP1/2)を挙げることができる。
メチルアセテートが最も好ましい。
さらにメチルアセテートは、セルロースアセテートの冷却溶解後の溶媒和能力も大きいため、アセトンと比較して溶液の安定性が非常に高い。なお、メチルアセテートは、溶液の粘度が比較的高くなるとの欠点があるが、この欠点はメチルアセテートと他の有機溶媒を併用することで簡単に解消できる。
併用する良溶媒の例には、ニトロメタンが含まれる。良溶媒を併用すると、冷却溶解法における冷却温度を、比較的高い温度とすることができる。
併用する貧溶媒の沸点は60℃以上であることが好ましい。好ましい貧溶媒は炭素原子数が1乃至6のアルコール類(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール)である。貧溶媒の添加により溶液の粘度が調整できる。また、貧溶媒を併用するとフイルムの乾燥も容易である。さらに貧溶媒には、溶液のゲル化温度を高くし、ゲル強度を大きくする作用もあり、それにより、フイルムを支持体からの剥ぎ取りを容易にする効果もある。フイルムの剥ぎ取りが容易であると、フイルムの製造時間を短縮することが可能になる。
本発明の有機溶媒と他の溶媒を併用する場合、混合溶媒中の本発明の有機溶媒の割合は、10乃至99.5重量%であることが好ましく、20乃至99重量%であることがより好ましく、40乃至98.5重量%であることがさらに好ましく、60乃至98重量%であることが最も好ましい。
本発明では、冷却溶解法により、以上のような混合溶媒中にセルロースアセテートを溶解して、溶液(ドープ)を形成する。
溶液の調製においては、最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアセテートを攪拌しながら徐々に添加する。この段階では、セルロースアセテートは、一般に有機溶媒中で膨潤するが溶解しない。なお、室温でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。セルロースアセテートの量は、この混合物中に10乃至40重量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10乃至30重量%であることがさらに好ましい。混合溶媒中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートと混合溶媒の混合物は固化する。
冷却溶解方法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20重量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保存する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの平均酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
調製したセルロースエステル溶液は、フイルムの製造に用いることができる。具体的には、溶液をソルベントキャスト法におけるドープとして利用する。
ドープは、支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。支持体表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。支持体としては、ドラムまたはバンドが用いられる。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号各公報に記載がある。
本発明に従い製造するフイルムの厚さは、5乃至500μmであることが好ましく、20乃至200μmであることがさらに好ましく、60乃至120μmであることが最も好ましい。
セルロースアセテートフイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート、(DOP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)およびクエン酸アセチルトリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPが特に好ましい。
上記化合物は、一般に結晶核形成剤(核剤)として知られている。結晶核形成剤は、従来から、結晶性高分子(特にポリプロピレン)を溶融成型する場合に、その光学的性質、機械的性質、熱的性質や成型性を向上するための改質剤として使用されている。
本発明では、上記化合物を結晶核形成剤として使用するのではなく、ドープのゲル化温度を高くするために使用することができる。上記化合物は、その両親媒性のある化学構造から、セルロースアセテートとの相互作用を有する。一方、上記化合物の自己凝集作用がアセチルセルロースよりも高いため、結果としてアセチルセルロースの凝集を促し、ゲル化温度が高くなると考えられる。
上記化合物は、ドープの粘度を下げる効果がある。上記化合物は、有機溶媒とセルロースアセテートの水酸基との溶媒和を妨害するため、ポリマーの広がりを抑えるためであると考えられる。
セルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤(例、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平5−1907073号公報に記載がある。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
酸化度はケン化法により測定した。乾燥したセルロースアセテートを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)に溶解した後、所定量の1N−水酸化ナトリウム水溶液を添加し、25℃で2時間ケン化した。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法により、ブランクテストを行った。そして、下記式に従って酢化度(%)を算出した。
酢化度(%)=(6.005×(B−A)×F)/W
式中、Aは試料の滴定に要した1N−硫酸量(ml)、Bはブランクテストに要した1N−硫酸量(ml)、Fは1N−硫酸のファクター、Wは試料重量を示す。
ゲル濾過カラムに、屈折率、光散乱を検出する検出器を接続した高速液体クロマトグラフィーシステム(GPC−LALLS)を用い測定した。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロリド
カラム: GMH×1(東ソー(株)製)
試料濃度: 0.1W/v%
流量: 1ml/min
試料注入量:300μl
標準試料: ポリメタクリル酸メチル(Mw=188,200)
温度: 23℃
絶乾したセルロースアセテート約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(重量比)の混合溶媒100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/To T: 測定試料の落下秒数
[η]=(1nηrel )/C To:溶剤単独の落下秒数
DP=[η]/Km C: 濃度(g/l)
Km:6×10−4
セルロースアセテートを15重量%となるように、メチレンクロリド:メタノール=8:2(重量比)の混合溶媒に溶解し、溶液を内径2.6cmの粘度管に注入し、25℃に調温後、溶液中に直径3.15mm、0.135gの剛球を落下させて、間隔10cmの標線管を通過する時間(秒)を粘度とした。
セルロースアセテートを、メチレンクロリド:エタノール=9:1(重量比)の混合溶媒に溶解して、セルロースアセテート15重量%のドープを調製した。ドープを不織布を用いて加圧濾過し、平滑なガラス板上にバーコーターを用いて流延した。一日風乾後、ガラス板から剥離して80℃で4時間真空乾燥した。得られたフイルム試料10mgを標準アルミパンに詰め、熱補償型示差走査熱量計(DSC)の試料台に載せた。溶融温度で短時間保持して、試料を溶融させた後、降温速度4℃/minで室温まで冷却して結晶化させた。
このようにして得られたDSC曲線の発熱ピーク面積から結晶化発熱量(ΔHc)を求めた。DSC測定は窒素雰囲気下で行ない、温度較正は、In(融点:156.60℃)、Sn(融点:231.88℃)の二点較正で、熱量較正は、In(融解熱量:28.45J/g)の一点較正で、それぞれ行なった。また、結晶化温度の解析法は、JIS−K−7121(1987)の規定に、結晶化発熱量の解析法は、JIS−K−7122(1987)の規定に、それぞれ準拠した。
セルロースアセテートの重量(A)を測定した後、10倍重量のアセトン中、室温で30分間攪拌した後、フィルターにて加圧濾過した。得られた濾液を乾燥し、固形分重量(B)を計量した。アセトン抽出分は、下記式により計算した。
アセトン抽出分=(B÷A)×100
粘度計(HAAKE社製)により、下記アンドレードの式における係数Aの変化点を求めた。変化点と到達粘度からゲル化を判断した。
ローター:sv−DIN
剪断速度:0.1(1/sec)
降温速度:0.5℃/min
η=Aexp(B/T)
式中、Tは測定温度、AおよびBは、それぞれポリマーの状態により決まる任意の定数である。
ゲル化の有無は、係数Aの変化点の有無(粘度と温度のグラフが屈曲点を有するか否か)で判断できる。
温度25℃、相対湿度60%の条件以下でフイルムを24時間放置した後、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定した。得られた水分量(g)を試料重量(g)で除して、平衡水分率を算出した。
測定装置としては、三菱化学(株)製の水分測定装置CA−03、同試料乾燥装置VA−05を用いた。カールフィッシャー試薬としては、同社製のAKS、CKSを用いた。
長さ100mm、巾10mmの試料を、ISO1184−1983の規格に従い、初期試料長50mm、引張速度20mm/minにて測定し、弾性率および破断伸度を求めた。
50mn×64mmに切りだした試料を、ISO6383/2−1983の規格に従い、引裂に要した引裂荷重を求めた。
120mnに切りだした試料をISO8776/2−1988の規格に従い、折り曲げよって切断するまでの往復回数を求めた。
試料1gを折り畳んで15ml容量のガラス瓶に入れ、温度90℃、相対湿度100%条件下で調湿した後、密閉した。これを90℃で経時して200時間後に取り出した。フイルムの状態を目視で確認し、以下の判定をした。
A:特に異常が認められない
B:分解臭または分解による形状の変化が認められる
エリプソメーター(偏光解析計AEP−100:島津製作所(株)製)を用いて、波長632.8nmにおけるフイルム面に垂直方向から測定した正面レターデーション値を求めた。
ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
−5℃の支持体上にフイルム状にドープを流延し、支持体から剥ぎ取ったときのフイルムの性状を評価した。フイルムの剥ぎ取り性は以下の二段階に分類できた。
A:20秒以内で剥ぎ取りができるもの
B:60秒以上経過しても剥げ残りがあるもの
対象とする溶媒83重量部に対し17重量部のセルロースエステル試料を投入し、常温(23℃)で3時間攪拌した。得られた溶液またはスラリーの状態を、常温(23℃)で静置保存したまま観察し、以下のA、BおよびCの三段階で評価した。
A:10日間経時しても、透明性と均一性を保持し、良好な溶解性と溶液安定性を示す。
B:攪拌終了時には透明性と均一性を呈して良好な溶解性を示すが、一日経時すると相分離を生じ、不均一な状態となる。
C:攪拌終了直後から不均一なスラリーを形成し、透明性と均一性のある溶液状態を示さない。
室温において、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテート100重量部およびメチルアセテート400重量部を混合した。混合物中のセルロースアセテートの割合は、20重量%である。室温では、セルロースアセテートは溶解せずにメチルアセテート中で膨潤した。得られた膨潤混合物は、溶解せずにスラリーを形成していた。
次に、膨潤混合物を二重構造の容器に入れた。混合物をゆっくり攪拌しながら外側のジャケットに冷媒として水/エチレングリコール混合物を流し込んだ。これにより内側容器内の混合物を−30℃まで冷却した。混合物が均一に冷却されて固化するまで(30分間)、冷媒による冷却を継続した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全て混合溶媒中に溶解しており、均一なドープが得られた。
ドープを(7)の測定方法で、ゲル化の有無の判定をしたところ、低温でのゲル化が認められた。
以上のようにして、均一なドープが得られたが、念のためさらに、以上の冷却および加温の操作をもう一回繰り返した。
有機溶媒をメチルアセテート400重量部から、エチルホルメート400重量部に変更した以外は、実施例1と同様に室温で膨潤混合物を調製した。得られた膨潤混合物は、いずれも溶解せずにスラリーを形成していた。
次に、膨潤混合物を実施例1と同様に冷却溶解法により処理してドープを形成した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てエチルホルメート中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
室温において、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテート100重量部およびメチルアセテート400重量部を混合した。混合物中のセルロースアセテートの割合は、20重量%である。室温では、セルロースアセテートは溶解せずにメチルアセテート中で膨潤した。得られた膨潤混合物は、溶解せずにスラリーを形成していた。
有機溶媒をメチルアセテート400重量部から、シクロヘキサノン100重量部に変更した以外は、実施例1と同様に室温で膨潤混合物を調製した。得られた膨潤混合物は、いずれも溶解せずにスラリーを形成していた。
次に、膨潤混合物を実施例1と同様に冷却溶解法により処理してドープを形成した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てメチルアセテート中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
室温において、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテート100重量部および1,3−ジオキソラン400重量部を混合した。混合物中のセルロースアセテートの割合は、20重量%である。
混合物を室温で4時間攪拌したところ、セルロースアセテートは全て1,3−ジオキソラン中に溶解した。
別に混合物(セルロースアセテートの一部が溶解し、残りが膨潤している状態)を、実施例1と同様に冷却溶解法により処理してドープを形成した。得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全て1,3−ジオキソラン中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。冷却溶解法を用いると、室温で攪拌を継続する場合よりも短時間(1時間)で、セルロースアセテートを全て溶解することできた。
室温において、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテート100重量部および1,4−ジオキサン400重量部を混合した。混合物中のセルロースアセテートの割合は、20重量%である。
混合物を室温で5時間攪拌したところ、セルロースアセテートは全て1,4−ジオキサン中に溶解した。
別に混合物(セルロースアセテートの一部が溶解し、残りが膨潤している状態)を、実施例1と同様に冷却溶解法により処理してドープを形成した。得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全て1,4−ジオキサン中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。冷却溶解法を用いると、室温で攪拌を継続する場合よりも短時間(1時間)で、セルロースアセテートを全て溶解することができた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
室温において、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテート100重量部および第1表に示すアルコール類400重量部を混合した。混合物中のセルロースアセテートの割合は、20重量%である。セルロースアセテートは、いずれのアルコール類にも溶解せず、ほとんど膨潤もしなかった。
セルロースアセテートとアルコール類の混合物を実施例1と同様に冷却溶解法により処理したところ、セルロースアセテートは、いずれのアルコール類にも溶解せず、ほとんど膨潤もしなかった。
以上の実施例1〜5および比較例1〜6の結果を下記第1表にまとめて示す。
────────────────────────────────────────
有機溶媒の種類 沸点 溶解度 溶解性
パラメーター 室温 冷却
────────────────────────────────────────
実施例1 メチルアセテート 57.8℃ 19.6 膨潤 溶解
実施例2 エチルホルメート 54.2℃ 19.4 膨潤 溶解
実施例3 シクロヘキサノン 155.7℃ 19.7 膨潤 溶解
実施例4 1,3−ジオキソラン 74.5℃ 22.6 溶解 溶解
実施例5 1,4−ジオキサン 101.3℃ 20.5 溶解 溶解
比較例1 シクロヘキサノール 161.0℃ 20.8 なし なし
比較例2 2−メチル−2−ブタノール 101.8℃ 19.0 なし なし
比較例3 t−ブタノール 82.5℃ 20.7 なし なし
比較例4 1−ブタノール 117.7℃ 23.4 なし なし
比較例5 エタノール 78.3℃ 25.8 なし なし
比較例6 メタノール 64.5℃ 29.5 なし なし
────────────────────────────────────────
混合物の組成を、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテート100重量部およびメチルアセテート350重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、ドープを形成した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てメチルアセテート中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
混合物の組成を、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテート100重量部およびシクロヘキサノン400重量部に変更し、さらに冷却温度を−70℃に変更した以外は実施例1と同様にして、ドープを形成した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てシクロヘキサノン中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
混合物の組成を、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテート100重量部、エチルホルメート400重量部に変更し、さらに冷媒としてメタノール/ドライアイスを用い冷却温度を−70℃に変更した以外は実施例1と同様にして、ドープを形成した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てエチルホルメート中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
以上の実施例6〜8の結果を下記第2表にまとめて示す。
───────────────────────────────────
有機溶媒の種類 有機溶媒の 溶解処理 有機溶媒 低温
使用量 温度 溶解 ゲル化
───────────────────────────────────
実施例6 メチルアセテート 350重量部 −30℃ 溶解 有り
実施例7 シクロヘキサノン 400重量部 −70℃ 溶解 有り
実施例8 エチルホルメート 400重量部 −70℃ 溶解 有り
───────────────────────────────────
平均酢化度:60.2%、粘度平均重合度:323のセルロースアセテートを用いた以外は、実施例1と同様にして、ドープを形成した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てメチルアセテート中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
平均酢化度:59.5%、粘度平均重合度:395のセルロースアセテートを用い、冷却温度を−20℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、ドープを形成した。
得られたドープを目視により観察したところ、セルロースアセテートが全てメチルアセテート中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認められた。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
以上の実施例9および10の結果を下記第3表にまとめて示す。
───────────────────────────────────
セルロースアセテート 有機溶媒の種類 溶解処理 低温
酢化度 重合度 温度 ゲル化
───────────────────────────────────
実施例9 60.2 323 メチルアセテート −30℃ 有り
実施例10 59.5 395 メチルアセテート −20℃ 有り
───────────────────────────────────
室温(20℃)においてメチルアセテート400重量部中に、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテート100重量部を混合した。得られた膨潤混合物は、溶解せずにスラリーを形成していた。
膨潤混合物を実施例1で用いた二重容器に投入した。混合物をゆっくり攪拌しながら、外側のジャケットに室温(20℃)の水を流し込んだ。このようにして混合物を室温で30分間攪拌を続けた。膨潤混合物は依然として、溶解せずにスラリーを形成していた。30分間の攪拌操作をさらに3回繰り返したが、膨潤混合物は依然として、溶解せずにスラリーを形成していた。
平均酢化度:57.0%、粘度平均重合度:280のセルロースアセテートを用いた以外は、比較例7と同様にして、室温において溶液の作成を試みたところ、セルロースアセテートをメチルアセテート中に溶解することができた。ドープを(7)の測定方法で、ゲル化の有無の判定をしたところ、低温でのゲル化は認められなかった。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造したところ、低温でのゲル化がないため、フイルムの乾燥がほぼ終了するまでフイルムを支持体から剥離することができなかった。また、乾燥工程の間、フイルムが支持体上に置かれているため、厚み方向にのみ収縮が生じ、平面方向に延伸したフイルムが得られた。このフイルムは、破断しやすく、物性強度が不充分であった。
以上の比較例7および8の結果を下記第4表にまとめて示す。
────────────────────────────────────
セルロースアセテート 有機溶媒の種類 溶解処理 溶解 低温
酢化度 重合度 温度 性 ゲル化
────────────────────────────────────
比較例7 60.9 299 メチルアセテート 20℃ 不溶 −
比較例8 57.0 280 メチルアセテート 20℃ 溶解 なし
────────────────────────────────────
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)100重量部、メチルアセテート525重量部およびジエチルフタレート(DEP)15重量部を混合した。
混合物を、実施例1と同様に、水/エチレングリコール系の冷媒(−30℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。
得られたドープについて、(7)の測定方法に従い、粘度とゲル化温度を測定したところ、粘度は90Pas(40℃)、ゲル化温度は11℃であった。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)100重量部、メチルアセテート525重量部、ジエチルフタレート(DEP)15重量部およびリン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(アデカスタブNA−11、旭電化(株)製)0.4重量部を混合した。
混合物を、実施例1と同様に、水/エチレングリコール系の冷媒(−30℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。
得られたドープについて、(7)の測定方法に従い、粘度とゲル化温度を測定したところ、粘度は80Pas(40℃)、ゲル化温度は15℃であった。
ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
実施例11および12の結果を下記第5表に示す。
第5表に示される結果から明らかなように、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(NA−11)を添加すると、ゲル化温度の上昇とドープ粘度の低下が認められる。
───────────────────────────────────────
ドープ組成(重量部) 粘度(40℃) ゲル化
CA メチルアセテート DEP NA−11 Pas 温度
───────────────────────────────────────
実施例11 100 525 15 − 90 11℃
実施例12 100 525 15 0.4 80 15℃
───────────────────────────────────────
(註)CA:セルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.2%、粘度平均重合度:323)100重量部、メチルアセテート470重量部およびジエチルフタレート(DEP)15重量部を混合した。
混合物を、実施例8と同様に、メタノール/ドライアイス系の冷媒(−70℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。得られたドープの溶液としての安定性は良好であった。
ドープを実施例1と同様に支持体上に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。なお、フイルムの支持体から剥ぎ取る前に、60秒以上の乾燥が必要であった。
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.2%、粘度平均重合度:323)100重量部、メチルアセテート400重量部、エタノール70重量部およびジエチルフタレート(DEP)15重量部を混合した。
混合物を、実施例8と同様に、メタノール/ドライアイス系の冷媒(−70℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。得られたドープの溶液としての安定性は良好であった。
ドープを実施例1と同様に支持体上に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。なお、フイルムの支持体からの剥ぎ取る前に、60秒以上の乾燥が必要であった。
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.2%、粘度平均重合度:323)100重量部、メチルアセテート375重量部、エタノール95重量部およびジエチルフタレート(DEP)15重量部を混合した。
混合物を、実施例8と同様に、メタノール/ドライアイス系の冷媒(−70℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。得られたドープの溶液としての安定性は良好であった。
ドープを実施例1と同様に支持体上に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。フイルムは、流延してから20秒以内で支持体から剥ぎ取ることができた。
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.2%、粘度平均重合度:323)100重量部、アセトン470重量部およびジエチルフタレート(DEP)15重量部を混合した。
混合物を、実施例8と同様に、メタノール/ドライアイス系の冷媒(−70℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。得られたドープは、溶液として安定であったが、安定性としては実施例13〜15のドープよりも劣っていた。
ドープを実施例1と同様に支持体上に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。なお、フイルムの支持体から剥ぎ取る前に、60秒以上の乾燥が必要であった。
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.2%、粘度平均重合度:323)100重量部、アセトン400重量部、エタノール70重量部およびジエチルフタレート(DEP)15重量部を混合した。
混合物を、実施例8と同様に、メタノール/ドライアイス系の冷媒(−70℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。得られたドープは、溶液として不安定で、白濁が生じていた。
ドープを実施例1と同様に支持体上に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。なお、フイルムの支持体から剥ぎ取る前に、60秒以上の乾燥が必要であった。
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.2%、粘度平均重合度:323)100重量部、アセトン375重量部、エタノール95重量部およびジエチルフタレート(DEP)15重量部を混合した。
混合物を、実施例8と同様に、メタノール/ドライアイス系の冷媒(−70℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。得られたドープは、溶液として不安定で、白濁が生じていた。
ドープを実施例1と同様に支持体上に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造した。なお、フイルムの支持体から剥ぎ取る前に、60秒以上の乾燥が必要であった。
実施例13〜15および比較例9〜11の結果を下記第6表に示す。
────────────────────────────────────
有機溶媒の種類 使用量 溶液 フイルム
(重量部) 安定性 剥ぎ取り
────────────────────────────────────
実施例13 メチルアセテート 470 A B
実施例14 メチルアセテート/エタノール 400/70 A B
実施例15 メチルアセテート/エタノール 375/95 A A
比較例9 アセトン 470 B B
比較例10 アセトン/エタノール 400/70 C B
比較例11 アセトン/エタノール 375/95 C B
────────────────────────────────────
実施例11および実施例12において得られたセルロースアセテートフイルムについて、前記の測定方法に従い、(8)平衡水分率の測定、(9)引張試験、(10)引裂試験、(11)耐折試験、(12)耐湿熱性、(13)レターデーション(Re)値の測定および(14)ヘイズの測定を行なった。
結果を下記第7表に示す。
第7表に示される結果は、本発明に従い製造したセルロースアセテートフイルムは、良好な物理的および化学的性質を有していることを示している。
─────────────────────────────────────
(8) (9) (10) (11)(12)(13) (14)
(%) (Kg/mm2)(kg) (回数) (nm) (%)
─────────────────────────────────────
実施例11 1.7 295 25 146 A 2 0.4
実施例12 1.7 305 24 152 A 3 0.3
─────────────────────────────────────
実施例1の混合物中のセルロースアセテートの割合を18.5重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、冷却溶解法によりドープを形成した。さらに、得られたドープを用いて実施例1と同様にして、厚さが100μmのセルロースアセテートフイルムを製造した。
実施例1で用いたセルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を、10倍量のアセトン中、室温で30分間攪拌し、脱液および乾燥させた。
得られた(低分子成分を除去した)セルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:322)を用い、混合物中のセルロースアセテートの割合を18.5重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、冷却溶解法によりドープを形成した。さらに、得られたドープを用いて実施例1と同様にして、厚さが100μmのセルロースアセテートフイルムを製造した。
セルロースアセテート100重量部を、硫酸11.7重量部、無水酢酸260重量部および酢酸450重量部を用いて、通常の方法によりエステル化および加水分解を行ない、平均酢化度:60.2%、粘度平均重合度:313のセルロースアセテートを合成した。
得られた(低分子成分の少ない)セルロースアセテートを用い、混合物中のセルロースアセテートの割合を18.5重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、冷却溶解法によりドープを形成した。さらに、得られたドープを用いて実施例1と同様にして、厚さが100μmのセルロースアセテートフイルムを製造した。
平均酢化度:61.7%、粘度平均重合度:291のセルロースアセテートを用い、混合物中のセルロースアセテートの割合を18.5重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、冷却溶解法によりドープを形成した。さらに、得られたドープを用いて実施例1と同様にして、厚さが100μmのセルロースアセテートフイルムを製造した。
実施例16のドープの調製に用いたメチルアセテートに代えて、メチルアセテート/エタノール(混合比87/13)の混合溶媒を用い、混合物中のセルロースアセテートの割合を17.5重量%に変更した以外は、実施例16と同様にして、厚さが100μmのセルロースアセテートフイルムを製造した。
実施例17のドープの調製に用いたメチルアセテートに代えて、メチルアセテート/エタノール(混合比87/13)の混合溶媒を用い、混合物中のセルロースアセテートの割合を17.5重量%に変更した以外は、実施例17と同様にして、厚さが100μmのセルロースアセテートフイルムを製造した。
実施例16(実施例20も同じ)、実施例17(実施例21も同じ)、実施例18および実施例19で用いたセルロースアセテートについて、前記の測定方法に従い、(1)酢化度、(2)分子量分布(Mw/Mn)、(3)粘度平均重合度(DP)、(4)濃厚溶液粘度(η:秒)、(5)結晶化発熱量(ΔHc)および(6)アセトン抽出分を測定した。さらに(15)として、(4)の粘度の結果から、ln(η)の実測値を計算した。別に、(3)の重合度の結果および前記(2)の式で定義する重合度と濃厚溶液粘度との関係から、ln(η)の好ましい値の下限(16)と好ましい値の上限(17)を求めた。
以上の結果を第8表に示す。
─────────────────────────────────────
評価項目 実施例16 実施例17 実施例18 実施例19
─────────────────────────────────────
(1)% 60.9 60.9 60.2 61.7
(2) 2.74 1.60 1.54 2.34
(3) 299 322 313 291
(4)η:秒 85.0 101.5 92.7 107.8
(5)J/g 17.5 14.0 13.5 18.1
(6)% 12.1 0.4 0.4 12.1
(15) 4.31 4.62 4.53 4.68
(16) 4.29 4.50 4.42 4.21
(17) 4.44 4.85 4.67 4.22
─────────────────────────────────────
実施例16〜18において得られたセルロースアセテートフイルムについて、前記の測定方法に従い、(9)引張試験(弾性率および破断伸度)、(10)引裂試験、(11)耐折試験、(13)レターデーション(Re)値の測定および(14)ヘイズの測定を行なった。
結果を下記第9表に示す。
──────────────────────────────────
(9) (10) (11) (13) (14)
弾性率 破断伸度 引裂強度 耐折強度 Re値 ヘイズ
(Kg/mm2)(kg) (g/f) (回数) (nm)
──────────────────────────────────
実施例16 254/232 35/38 18.7/18.5 120/140 3 0.3
実施例17 228/219 27/31 16.5/26.1 157/168 3 0.4
実施例18 253/249 33/37 17.7/18.0 132/124 3 0.3
──────────────────────────────────
(註)254/232のような物性値は、フイルム流延方向/フイルム流延方向に対して垂直方向の物性値を意味する。
室温において、セルロースアセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)100重量部、メチルアセテート385重量部、トリフェニルホスフェート(TPP)15重量部を混合した。
混合物を実施例11と同様に、水/エチレングリコール系の冷媒(−30℃)を用いた冷却溶解方で処理して、ドープを形成した。
得られたドープについて、前記の測定方法に従い(8)平衡水分率の測定、(9)引張試験、(10)引裂試験、(11)耐折試験、(12)耐湿熱性、(13)レターデーション値の測定および(14)ヘイズの測定を行なった。
結果を下記第10表に示す。
第10表に示される結果から明らかなように、本発明に従い製造したセルロースアセテートフイルムは、良好な物理的および化学的性質を有している。
─────────────────────────────────────
(8) (9) (10) (11)(12)(13) (14)
(%) (Kg/mm2)(kg) (回数) (nm) (%)
─────────────────────────────────────
実施例22 1.6 310 17 160 B 40 1.4
─────────────────────────────────────
Claims (5)
- 58.0乃至62.5%の平均酢化度を有するセルロースアセテートを、炭素原子数が3乃至12のエーテル類、炭素原子数が4乃至12のケトン類および炭素原子数が3乃至12のエステル類から選ばれ、ハロゲン化炭化水素を実質的に含まない有機溶媒中に膨潤させる工程、膨潤混合物を−100乃至−10℃に冷却する工程、および冷却した混合物を0乃至50℃に加温して、有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解する工程からなるセルロースアセテート溶液の調製方法。
- 有機溶媒が、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキサノン、エチルホルメートおよびメチルアセテートから選ばれる請求項1に記載のセルロースアセテート溶液の調製方法。
- 58.0乃至62.5%の平均酢化度および250乃至400の粘度平均重合度を有するセルロースアセテートおよび有機溶媒との混合物であって、ハロゲン化炭化水素を実質的に含まず、かつ該有機溶媒が炭素原子数が3乃至12のエーテル類、炭素原子数が4乃至12のケトン類および炭素原子数が3乃至12のエステル類から選ばれる混合物を−100乃至−10℃に冷却する工程、および冷却した混合物を0乃至50℃に加温して、有機溶媒中にセルロースアセテートを溶解する工程からなるセルロースアセテート溶液の調製方法。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法で調製したセルロースアセテート溶液を支持体上に流延する工程および溶媒を蒸発させてフイルムを形成する工程からなるセルロースアセテートフイルムの製造方法。
- セルロースアセテートを流延する支持体が、10℃以下の表面温度を有している請求項4に記載の製造方法。
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