JP2003055465A - セルロースアシレート溶液、及びセルロースアシレートフイルムの製造方法 - Google Patents

セルロースアシレート溶液、及びセルロースアシレートフイルムの製造方法

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JP2003055465A
JP2003055465A JP2001246721A JP2001246721A JP2003055465A JP 2003055465 A JP2003055465 A JP 2003055465A JP 2001246721 A JP2001246721 A JP 2001246721A JP 2001246721 A JP2001246721 A JP 2001246721A JP 2003055465 A JP2003055465 A JP 2003055465A
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JP2001246721A
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Tsukasa Yamada
司 山田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 経時安定性に優れ、かつ生産性に優れた
セルロースアシレート溶液を提供する。さらにまた、生
産性に優れ、かつ面状の優れたセルロースアシレートフ
イルムを製造する。 【解決手段】 セルロースアシレートを実質的に非塩素
系有機溶媒から構成される溶剤に溶解させるセルロース
アシレート溶液の製造方法であって、該有機溶剤が、炭
素原子数が12以下であるケトン類を含有し、その亜臨
界〜超臨界領域に属する温度及び圧力下で溶解させ、溶
液から作製されたフイルムの全反射スペクトルにおける
1300〜1400cm-1の吸収強度に対する1100
〜1200cm-1のケタール由来のピーク強度が0%〜
10%の強度範囲に入るように溶解温度及び圧力を調整
することを特徴とするセルロースアシレート溶液の製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はセルロースアシレー
ト溶液およびセルロースアシレートフイルムの製造方
法、詳しくは、高い濃度で溶解したセルロースアシレー
ト溶液から形成されるセルロースアシレートフイルムの
製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】セルロース系ポリマー、とりわけセルロ
ースアシレートは、汎用合成樹脂に比べて、寸法安定性
および耐熱性が高く、粘着性であるという特色を有して
いる。そのため、プラスチック、ラッカーなどの材料と
して利用されると共に、種々の成形品、例えばフイルム
や繊維などに成形されている。セルロースアシレートフ
イルムは代表的な写真感光材料の支持体であり、またそ
の光学的等方性から液晶表示装置の部材(偏光板の保護
フイルム、光学補償シートの支持体、カラーフィルター
など)としても使用されている。さらに、環境保護の観
点から生分解性ポリマーのニーズは近年益々高まってお
り、その結果セルロース系ポリマーの重要性が再認識さ
れてきている。
【0003】したがって、セルロースアシレートに代表
されるセルロース系ポリマーは今後も重要性が増してく
ると思われるが、従来それをフイルムなどに成形する際
の溶液化には溶媒として塩化メチレン等の塩素系溶媒が
これまで多用されてきた。その理由は溶解性が高く、か
つ低沸点で溶媒の除去が容易であるためである。しかし
ながら、塩素系溶媒は発癌性などの毒性がある物質であ
ったり、オゾン層破壊に代表される環境有害物質である
ことから使用が非常に制限されてきている。塩化メチレ
ンは、後者の理由で大気への放出が厳しく制限されてい
る。
【0004】そこで、近年これらの問題を解決するため
の研究が活発に行われており、一部その技術が公開され
ている。例えば1,3−ジオキサンや1,3−ジオキソ
ランなどの環状ジエーテルを用いる方法(特開平8−1
43708号公報、同8−323785号公報など)、
トリフルオロエタノールなどのフルオロアルコールを用
いる方法(特開平8−143709号公報、同11−6
0807号公報など)が提案されている。しかしなが
ら、前者の環状ジエーテルは必ずしも安全性の維持が万
全でなく、可燃性が高いなどの点で十分満足できるもの
ではなかった。また後者のフルオロアルコールはコスト
が高く、ポリマー成形用という大量使用の溶媒としては
実用的でない。
【0005】そこで、安全で出来るだけ廉価な溶剤の使
用が検討されているが、そのような溶媒にセルロースア
シレートなどのセルロース系ポリマーを生産性上必要と
される所定濃度で溶解することは単なる混合では困難で
ある。そこで、溶解度を上げるための手段が種々検討さ
れている。それらの方法の具体例としては、(1)冷却
溶解法(Makromol. Chem.,143,105(1971))を用いた方法
(特開平9−95538号公報、同9−95544号公
報など)、(2)アセトンを主成分とする有機溶媒中、
超高圧をかける方法(特開平11−21379号公
報)、(3)超音波を用いる方法(特開平11−714
63号公報)、(4)アセトン、トリアセチン、メタノ
ールもしくはエタノールと二酸化炭素等との高圧下二成
分系混合流体を用いる方法(特開平8−232115号
公報、Journal of Supercritical Fluids,13,135(199
8))などが挙げられる。
【0006】上記(1)〜(4)の方法は、確かに溶解
度の改良には効果的であるが、工業的製法という観点で
見た場合にはそれぞれ問題がある。すなわち、(1)の
方法において十分な溶解度を得るためには、−70℃以
下の極低温が必要であり、そのための設備化には高額な
投資が必要である。(2)の方法において短時間で十分
な溶解度を得るためには100MPa(約1000気
圧)近い超高圧が必要であり、やはり設備的に工業的実
用化は難しい。(3)の方法においては工業的規模で使
用できる超音波発生装置を開発する必要があり、現時点
では実用化はかなり困難である。(4)の方法において
は、溶解させうるセルロース系ポリマーの量が少ない
(特許・論文で報告されている濃度は2〜4質量%)た
め、フイルム化等の成形に用いることは困難である。さ
らにこの二酸化炭素を用いて溶解する方法は、一旦溶解
はするものの、室温で放置するとその一部がゲル化する
欠点がある。このように、環境等に有害な塩素系溶媒を
用いずにセルロース系ポリマーを溶解して成形(フイル
ム化)する技術で、設備投資額が小さく工業的に実用可
能な方法は未だ無いと言って良く、新しい方法の開発が
強く望まれているのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、安全性が高
く、環境負荷も小さく、更に設備投資的負荷も小さい
(すなわち安価に)、易溶解性のセルロース系ポリマー
粉体の製造方法を提供することを目的とする。また本発
明の目的は、上記のような、安全性の維持、環境負荷の
問題に対応した、溶解状態の極めて優れる、セルロース
系ポリマー溶液の製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の目的
達成のため種々検討を重ねた結果、セルロースアシレー
トをケトン類を含有した非塩素系有機溶媒に分散攪拌
し、臨界点、または超臨界もしくは亜臨界領域の温度・
圧力に曝すと極めてよく溶解すること、そしてその溶液
を常温常圧に戻してもポリマーが析出しないことを見出
した。しかしながら、一方でケトン類を含有する溶媒中
でセルロースアシレートを超臨界もしくは亜臨界領域の
温度・圧力に曝すとケタールが生成し膜強度等の面で好
ましくないことがわかった。本発明はこれらの新しい知
見に基づきなされたものである。すなわち、本発明の課
題は以下の手段によって達成された。
【0009】(1)セルロースアシレートを、実質的に
非塩素系有機溶剤から構成される有機溶剤に溶解させる
セルロースアシレート溶液の製造方法であって、該有機
溶剤が、少なくとも炭素原子数が12以下であるケトン
類を含有する単一または混合の有機溶剤であり、該有機
溶剤の亜臨界〜超臨界領域に属する温度及び圧力下で溶
解させ、溶液から作製されたフイルムの全反射スペクト
ルにおける1300〜1400cm-1の吸収強度に対す
る1100〜1200cm-1のケタール由来のピーク強
度が0%〜10%の強度範囲に入るように溶解温度及び
圧力を調整することを特徴とするセルロースアシレート
溶液の製造方法。 (2)溶解させる温度及び圧力が、該有機溶剤の沸点以
上で臨界温度以下の温度であり、1.013MPa(1
0kgf/cm2 )以上の圧力であることを特徴とする
(1)に記載のセルロースアシレート溶液の製造方法。 (3)溶解させる温度及び圧力が、該有機溶剤の臨界温
度以下で423K以上の温度であり、1.013MPa
(10kgf/cm2 )以上で臨界圧力以下の圧力であ
ることを特徴とする(1)もしくは(2)に記載のセル
ロースアシレート溶液の製造方法。
【0010】(4)セルロースアシレートの全アシル置
換度の合計が2.75以上2.90以下であり、かつ6
位のアシル置換度が0.92以上であることを特徴とす
る(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載のセルロー
スアシレート溶液の製造方法。 (5)6位のアシル置換度が2位、3位のアシル置換度
に比べて高いことを特徴とする(1)乃至(4)のうち
のいずれかに記載のセルロースアシレート溶液の製造方
法。 (6)平均粒子径が0.1μm以下のシリカ粒子、可塑
剤および紫外線吸収剤が添加されたことを特徴とする
(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載のセルロース
アシレート溶液の製造方法。
【0011】(7)(1)乃至(6)のうちのいずれか
に記載の製造方法により得られたセルロースアシレート
溶液を支持体上に塗布して、セルロースアシレートフイ
ルムを形成することを特徴とするセルロースアシレート
フイルムの製造方法。 (8)共流延法により二層以上の層を流延製膜すること
を特徴とする(7)に記載のセルロースアシレートフイ
ルムの製造方法。 (9)セルロースアシレートフイルムが二層以上の多層
構造を有し、該セルロースアシレートフイルムの少なく
とも一方の側の外部層の厚さが1〜50μmの範囲にあ
ることを特徴とする(8)に記載のセルロースアシレー
トフイルムの製造方法。
【0012】(10)セルロースアシレートフイルムが
三層以上の多層構造を有し、該セルロースアシレートフ
イルムの少なくとも一方の側の外部層の厚さが1〜50
μmの範囲にあることを特徴とする(8)もしくは
(9)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方
法。 (11)外部層の厚さが1〜20μmの範囲にある
(8)乃至(10)のうちのいずれかに記載のセルロー
スアシレートフイルムの製造方法。 (12)(8)乃至(11)のうちのいずれかに記載の
製造方法により得られたセルロースアシレートフイルム
から形成されたことを特徴とする偏光板保護膜。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明において、好ましく用いら
れるセルロースアシレート原料綿については発明協会公
開技報2001−1745,7頁右段の26行目以降に
記載の「4.セルロースアシレート原料綿」に関する記
載事項を用いることができる。
【0014】セルロースアシレートの合成方法の基本的
な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出
版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法
は、無水酢酸−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法であ
る。具体的には、木材パルプ等のセルロース原料を適当
量の有機酸で前処理した後、予め冷却したアシル化混液
に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート
(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ
3.00)を合成する。上記アシル化混液は、一般に、
溶媒としての有機酸、エステル化剤としての無水有機酸
および触媒としての硫酸を含む。無水有機酸は、これと
反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よ
りも、化学量論的に過剰量で使用することが普通であ
る。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の
無水有機酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中
和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウ
ム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩また
は酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セ
ルロースアシレートを、少量の酢化反応触媒(一般に
は、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つこ
とにより、ケン化熟成し、所望のアシル置換度および重
合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所
望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残
存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中
和するか、あるいは、中和することなく、水または希硫
酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セ
ルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)
してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化
処理によりセルロースアシレートを得る。
【0015】次にセルロースアシレートの置換度につい
て記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合して
いるグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の
水酸基を有しており、セルロースアシレートは、これら
の水酸基の一部または全部を酢酸によりエステル化した
ポリマーである。アシル置換度は、2位、3位および6
位のそれぞれについて、セルロースがエステル化してい
る割合(100%のエステル化は、1.00)を意味す
る。
【0016】全アシル置換度の合計が2.75以下の場
合、フイルムが吸湿しやすくなり、加水分解を受けやす
くなるためフイルムの耐久性が低下する。また、湿度等
による寸法変化も大きくなる。逆に、2.90以上であ
るとセルロースアシレートの有機性が上がるため溶媒と
の親和性が増大し、ドープの粘度が上昇してしまう。従
って、全アシル置換度の合計は、2.75以上、2.9
0以下であることが好ましい。
【0017】ところで6位の水酸基が、2位、3位の水
酸基と異なり、一級水酸基であるため、水酸基の水素結
合が極めて起こりやすいことがわかってきた。従って6
位のアシル置換度を0.92以上とすることにより、溶
剤への溶解性は極めて顕著に向上し、粘度が低下するた
めに流延適性上好ましいドープを得ることが可能とな
る。6位のアシル置換度の範囲は、合成適正等を考慮す
ると0.92以上、0.99以下が好ましく、0.93
以上、0.98以下がさらに好ましい。また、6位のア
シル置換度が0.92以上のセルロースアシレートは、
膜強度の観点からアシル置換基の炭素数が小さい方が望
ましく、全てアセチル基であるほうが好ましい。なお、
特開平11−5851号公報には、全アセチル置換基の
合計が2.67以上であり、2位、3位のアセチル置換
基の合計が1.97以下であるセルロースアセテートが
記載されているが、これはフイルムの光学適性からは好
ましい範囲を記載したものであり、流延適性、面状、膜
強度等の観点においては、本明細書に記載の範囲の方が
より好ましい。
【0018】上記のセルロースアシレートについて実用
面、および合成的観点から記述する。通常フイルムとし
て用いられるセルロースアシレートは、6位のアシル置
換度は0.92未満であるものが多い。これは、有機溶
剤への溶解性のために、全体のアシル置換度を低下させ
ることが必要であったためである。通常のセルロースア
シレートの合成方法では、2位または3位のアシル置換
度の方が、6位のアシル置換度よりも高い値になる。従
って、6位のアシル置換度を0.92以上であり、6位
のアシル置換度が2位、3位に対して高いものは今まで
ほとんど検討されていなかった。該セルロースアシレー
トの具体的な合成条件としては、通常のセルロースアシ
レートのアシル化の工程において硫酸等の酸触媒の量を
減らし、アシル化反応の時間を長くすることが好まし
い。硫酸触媒が多いと、アシル化反応の進行が速くなる
が、触媒量に応じてセルロースとの間に硫酸エステルが
生成し、反応終了時に遊離して残存水酸基を生じる。硫
酸エステルは、反応性が高い6位により多く生成する。
そのため、硫酸触媒が多いと6位のアシル置換度が小さ
くなる。従って、その合成には、可能な限り硫酸触媒の
量を削減し、それにより低下した反応速度を補うため、
反応時間を延長する必要がある。
【0019】本発明においては、ソルベントキャスト法
によりセルロースアシレートフイルムを製造することが
好ましく、セルロースアシレートドープを用いてフイル
ムは製造される。用いられる有機溶媒は特に限定されな
いが、炭素数12以下のケトン類を含有したものであ
り、併用溶剤としてエステル類等が用いられる。これら
のエステル類、ケトン類は環状構造を有していてもよ
く、2種類以上の官能基を有するものでもよい。
【0020】ケトン類の例には、アセトン、メチルエチ
ルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、
シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
このうちアセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノ
ンが特に好ましい。また、エステル類の例には、蟻酸メ
チル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エ
チル等が挙げられる。このうち酢酸メチルが特に好まし
い。
【0021】ところで地球環境や作業環境の観点では、
有機溶媒は塩素系溶剤を実質的に含まないものであるこ
とが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中
の塩素系溶剤の割合が10質量%未満であり、好ましく
は5質量%未満、より好ましくは3質量%未満であるこ
とを意味する。また、製造したセルロースアシレートフ
イルムから、メチレンクロリドのような塩素系溶剤が全
く検出されないことが好ましい。
【0022】実際の溶媒系は、塩素系、非塩素系を問わ
ず、特に限定なく用いることができるが、上述の通り実
質的に塩素系溶剤は含まない系であることが必要であ
る。また、ケトン類は全溶剤の5〜50質量%、好まし
くは10〜40質量%であることが好ましい。更にケト
ン類およびエステル類が全溶媒の70質量%以上である
ことが好ましい。
【0023】本発明で好ましいこれらの溶媒の組み合わ
せの具体例は、発明協会公開技報2001−1745,
15頁右段の1行目から16頁左段の8行目に記載のも
のを挙げることができるが、本明細書に記載の溶解法に
おいては、ケトン類を含有する系で顕著な効果が認めら
れる。但し、塩素系溶媒は実質的に含まない系にするこ
とが必要である。
【0024】本明細書に記載のセルロースアシレート溶
液を作製するには、室温下でタンク中の溶剤を撹拌しな
がら上記セルロースアシレートを添加することで、まず
溶剤への膨潤を行う。膨潤時間は、最低10分以上が必
要であり、10分以下では不溶解物が残存する。また、
セルロースアシレートを十分膨潤させるためには溶剤の
温度は、0乃至40℃であることが好ましい。0℃以下
では膨潤速度が低下し不溶解物が残存する傾向にある、
40℃以上では膨潤が急激に起こるために中心部分が十
分膨潤しない。
【0025】本発明では、原料セルロース系ポリマー
を、前記溶媒を主成分とする非塩素系有機溶媒にその亜
臨界〜超臨界領域に属する温度及び圧力下で溶解させ
る。ここで、臨界点、超臨界領域および亜臨界領域につ
いて説明する(参照:齋藤正三郎監修「超臨界流体の科
学と技術」1996年、三共ビジネス)。
【0026】物質は、温度・圧力(あるいは体積)など
の環境条件の変化により気体、液体、固体の三つの状態
の間を移り変わるが、これは分子間力と運動エネルギー
とのバランスで決定される。横軸に温度を、縦軸に圧力
をとって気液固三態の移り変わりを表したものを状態図
(相図)というが、その中で気体、液体、固体の三相が
共存し、平衡にある点を三重点という。三重点より温度
が高い場合は、液体とその蒸気が平衡になる。この時の
圧力は飽和蒸気圧であり、蒸発曲線(蒸気圧線)で表さ
れる。この曲線で表される圧力よりも低い圧力では液体
は全部気化し、またこれよりも高い圧力を加えれば蒸気
は全部液化する。圧力を一定にして温度も変化させても
この曲線を越えると液体が蒸気に、また蒸気が液体にな
る。この蒸発曲線には、高温、高圧側に終点があり、こ
れを臨界点(critical point)と呼ぶ。臨界点は、物質
を特徴づける重要な点であり、液体と蒸気との区別がつ
かなくなる状態で、気液の境界面も消失する。
【0027】臨界点より高温の状態では、気液共存状態
を生じることなく液体と気体の間を移り変わることがで
きる。臨界温度以上でかつ臨界圧力以上の状態にある流
体を超臨界流体といい、超臨界流体を与える温度・圧力
領域を超臨界領域という。超臨界流体は、高い運動エネ
ルギーを有する高密度流体と理解でき、溶質を溶解する
という点では液体的な挙動を、密度の可変性という点で
は気体的な特徴を示す。超臨界流体の溶媒特性はいろい
ろあるが、低粘性で高拡散性であり固体材料への浸透性
が優れていることが重要な特性である。
【0028】臨界温度よりわずかに低い温度域での高密
度領域を、一般に、亜臨界領域と呼ぶが、本発明におい
ては、亜臨界領域を、温度が有機溶媒の沸点以上で、圧
力が10kgf/cm2 (1.013MPa)以上であ
る領域と定義する。好ましい亜臨界領域は、温度が(有
機溶媒の沸点(K)+50)K以上で、圧力が15kg
f/cm2 (1.520MPa)以上である。より好ま
しい亜臨界領域は温度が423K(150℃)以上で、
圧力が20kgf/cm2 (2.026MPa)以上で
ある。特に好ましい亜臨界領域は温度が423K(15
0℃)以上で、圧力が2.026〜7.084MPa
(20〜70kgf/cm2 )の範囲である。
【0029】臨界点近傍では分子が会合し、巨大分子と
なりクラスターが形成される。このクラスターの大きさ
が光の波長と同程度となると、超臨界流体に照射された
光は強い散乱を受け、その透過光はあたかも着色したか
のように観測される。この現象を臨界たんぱく光と言
う。通常流体の気液臨界点は、試料流体を観測用の覗き
窓をもつ容器(気液臨界点測定用セル)に封入し、外部
よりこの窓を通して気液境界面と臨界たんぱく光を観測
し、界面が消滅・生成し、たんぱく光が最も強く観測さ
れる状態を臨界点であるとして測定される。あるいは、
気液界面に生ずるメニスカスの消滅により測定される。
臨界点を規定するのは、臨界定数という臨界温度(T
C)、臨界圧力(PC)、臨界密度(ρC)であり、こ
れらが測定される物理量である。混合物についても同様
にして臨界点が決定される。
【0030】以下に、本発明に用いられる溶媒の中で代
表的な溶媒の臨界定数を挙げる。これらの定数について
は例えば、日本化学会編、改訂4版「化学便覧」、基礎
編II、1993年、106〜108頁、丸善(株)等に
記載されている。()内の数値は、順に臨界温度
(K)、臨界圧力(MPa)、臨界密度(kgm-3)を
表す。ギ酸メチル(487.2、6.00、349)、
酢酸メチル(506.8、4.69、325)、酢酸エ
チル(523.2、3.83、308)、メタノール
(512.58、8.09、272)、エタノール(5
13.9、6.14、276)、1−ブタノール(56
3.1、4.42、270)、ジイソプロピルエーテル
(500.0、2.88、265)、テトラヒドロフラ
ン(540.2、5.19、322)、ジメトキシメタ
ン(481、3.95、357)、アセトン(508.
2、4.70、278)、シクロヘキサノン(629.
2、3.85、322)、エチルメチルケトン(53
5.6、4.15、270)、エタン(305.3、
6.14、276)、プロパン(369.82、4.2
50、217)、トルエン(591.79、4.10
9、292)、アセトニトリル(545.5、4.8
3、237)、トリメチルアミン(432.8、4.0
87、233)、ペルフルオロヘキサン(448.6、
1.87、558)、ペルフルオロシクロヘキサン(4
57.1、2.43、654)、フルオロベンゼン(5
60.1、4.551、357)。
【0031】また、混合溶剤における臨界定数は複雑で
あるが、本特許においては、混合溶剤の加重平均と定義
する。
【0032】次に、原料セルロース系ポリマーを前記の
各溶媒の亜臨界〜超臨界領域に属する温度及び圧力下で
溶解させる方法について説明する。反応装置は高圧に耐
える、加熱可能な装置である必要がある。一般に用いら
れる装置は、オートクレーブと呼ばれる装置で、用いる
圧力および溶媒により多様な装置が市販されており入手
が容易である。本発明において用いられる装置は、ステ
ンレス製で内圧30MPa(約300気圧)まで耐えう
る通常のオートクレーブでほとんど十分である。
【0033】具体的操作手順の代表例を次に示して本発
明を説明する。オートクレーブ中の内圧は、装置の容積
と導入した溶媒量、および温度で決まる。容積が可変で
ない一般のオートクレーブを用いる場合、目的の温度と
圧力を達成するにはオートクレーブに導入する溶媒量を
調整することが必要である。オートクレーブの容積にあ
った溶媒の必要量は、溶媒の臨界定数(文献値が知られ
ていない場合は前記の気液臨界点測定用セルを用いて測
定)等をもとに計算して決める。連続的に容積可変の特
殊なオートクレーブの場合は、内容積を変化させること
により温度一定で圧力を連続的に変化させることができ
るので、溶媒量の調整はさほど重要ではなくなる。溶解
の最適条件を決める場合などは、容積可変型オートクレ
ーブは便利である。一般のオートクレーブを用いる場
合、オートクレーブ装置中にまず溶解させたいセルロー
ス系ポリマーを必要量入れ、装置の蓋を閉じる。次に装
置内を真空ポンプで十分に減圧しバルブを閉める。次に
溶媒の導入口のバルブを開け、使用する溶媒の必要量を
装置内に導入する。溶媒導入終了後バルブを閉め、外部
から加熱して内部圧力の変化を圧力ゲージで、内部温度
の変化をセンサーで観測しながら目的の温度・圧力に調
節する。
【0034】目的の温度・圧力に到達後、完全に溶解す
るために撹拌する時間は、通常1分〜100時間であ
り、好ましくは30分〜30時間である。特に好ましく
は30分〜10時間である。覗き窓付きオートクレーブ
を用いる場合は、内部の変化を観測しながら最適時間を
決めることも可能である。また、本発明によるセルロー
スポリマーは易溶解性であり、そのままで高濃度液の調
製ができるが、溶液調製後さらに有機溶媒を蒸発などに
より除き、さらに濃縮することもできる。
【0035】次に、全反射スペクトルについて述べる。
本発明における溶解条件により、溶媒であるケトン類
は、セルロースアシレートの溶解を大きく良化させるこ
とが判明したが、同時にケトンとセルロースアシレート
との反応が起こりケタール類が生成することが判明し
た。生成したケタールは膜強度を低下させ、フイルムの
ヘイズを上昇させるため、ケタールの生成を一定以下に
抑制することが重要であることがわかった。すなわち、
フイルム中に生成したケタールの量を全反射スペクトル
で規定することによって、膜強度、ヘイズ値に影響のな
いフイルムを作製する溶解条件を決定することができ
る。なお、ケタールは高温、高圧力条件ほど生成しやす
く、溶解時間を長くすることにより顕著に増加する。全
反射スペクトルにおける1300〜1400cm-1の吸
収は、セルロースアシレートのC−H結合由来の吸収で
あり、ほぼセルロースアシレートの量を現したものとな
っている。これに対し1100〜1200cm-1の吸収
は、ケタール由来のものであり、この吸収を一定の強度
以下に抑制することが必要となる。尚、ピーク強度とは
吸光度で測定した吸収の高さを意味し、強度比とはそれ
らの高さの比を表すものである。1300〜1400c
-1の吸収強度に対する1100〜1200cm-1のピ
ーク強度が0%〜10%の強度範囲のものが好ましく、
0〜5%の範囲がさらに好ましい。
【0036】上記で得られたドープのセルロースアシレ
ートは場合により、更に溶解し易くするために低い濃度
で溶解してから、しかる後に濃縮手段を用いて濃縮して
もよい。具体的な方法としては、発明協会公開技報20
01−1745,25頁左段の10行目から同28行目
の(溶液濃縮)に記載のものを挙げることができる。
【0037】溶液は流延に先だって金網、紙やネルなど
の適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの
異物を濾過除去しておくのが好ましい具体的な方法とし
ては、発明協会公開技報2001−1745,25頁左
段の29行目から右段の33行目の(ろ過)に記載のも
のを挙げることができる。
【0038】セルロースアシレート溶液には、各調製工
程において用途に応じた種々の添加剤を加えることがで
きる。添加剤の例としては、可塑剤、紫外線防止剤や劣
化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル
禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)、剥離
剤、および微粒子等が挙げられる。具体的には、発明協
会公開技報2001−1745,16頁左段の28行目
から22頁右段の下から5行目までに記載のものを挙げ
ることができる。
【0039】次に、セルロースアシレート溶液を用いた
フイルムの製造方法について述べる。セルロースアシレ
ートフイルムを製造する方法及び設備は、従来セルロー
ストリアセテートフイルム製造に供する溶液流延製膜方
法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解タンク
(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶
液)をストックタンクで一旦貯蔵し、ドープに含まれて
いる泡を脱泡したり最終調製をする。ドープをドープ排
出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液でき
る加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ド
ープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに
走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延さ
れ、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドー
プ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得
られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながら
テンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群
で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き
取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせは
その目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電
子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方
法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電
防止層、ハレーション防止層、保護層等のフイルムへの
表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。
【0040】本発明では、得られたセルロースアシレー
ト溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはド
ラム上に2層以上の複数のセルロースアシレート液を共
流延することが好ましい。例えば、複数のセルロースア
シレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に
間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレ
ートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフ
イルムを作製してもよく、例えば特開平11−1982
85号公報などに記載の方法が適応できる。また、2つ
の流延口からセルロースアシレート溶液を流延すること
によってフイルム化する方法が挙げられ、特開平6−1
34933号公報に記載の方法で実施できる。また、特
開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロー
スアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレー
ト溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレ
ート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフイルム
流延方法でもよい。このような共流延を行なうことによ
り、前述の様に表面の乾燥における平滑化が進行するた
め、面状の大幅な改良が期待できる。共流延の場合、各
層の厚さは特に限定されないが、好ましくは外部層が内
部層より薄いことが好ましい。その際の外部層の膜厚
は、1〜50μmであることが好ましく、特に好ましく
は1〜30μmである。ここで、外部層とは、2層の場
合はバンド面(ドラム面)ではない面、3層以上の場合
は完成したフイルムの両表面側の層を示す。内部層と
は、2層の場合はバンド面(ドラム面)。3層以上の場
合は外部層より内側に有る層を示す。さらに本発明のセ
ルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着
層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV
吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しう
る。
【0041】本発明のセルロースアシレートフイルムの
製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、乾
燥工程における乾燥温度は30〜250℃、特に40〜
180℃が好ましく、特公平5−17844号公報に記
載がある。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあ
り、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−
152125号、同4−284211号、同4−298
310号、同11−48271号などに記載されてい
る。フイルムの延伸は、一軸延伸でもよく二軸延伸でも
よい。フイルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸によ
る増加分の比率)は、10〜30%であることが好まし
い。
【0042】本発明の出来上がり(乾燥後)のセルロー
スアシレートフイルムの厚さは、使用目的によって異な
るが、通常5〜500μmの範囲であり、更に20〜2
50μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範
囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜11
0μmの範囲が特に好ましい。フイルム厚さの調製は、
所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃
度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧
力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0043】ここで場合により、セルロースアシレート
フイルムの表面処理を行うことによって、セルロースア
シレートフイルムと各機能層(例えば、下塗層およびバ
ック層)との接着の向上を達成することができる。具体
的には発明協会公開技報2001−1745,32頁左
段の16行目から32頁右段の42行目に記載のものを
あげることができる。
【0044】用途によっては、セルロースアシレートフ
イルムの少なくとも一層に帯電防止層を設けたり、偏光
子と接着するための親水性バインダー層が設けられるこ
とが好ましい。具体的には発明協会公開技報2001−
1745,32頁右段の下から12行目から45頁左段
の下から3行目に記載の層を設けることができる。
【0045】セルロースアシレート溶液からなるセルロ
ースアシレートフイルムは、様々な用途で用いることが
できる。具体的には発明協会公開技報2001−174
5,45頁右段の下から5行目以降に記載されている
「14.用途」の項目を挙げることができる。
【0046】
【実施例】各実施例において、セルロースアシレート、
溶液およびフイルムの化学的性質および物理的性質は、
以下のように測定および算出した。
【0047】(0)セルロースアシレートの置換度
(%) 酢化度はケン化法により測定した。乾燥したセルロース
アシレートを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシド
との混合溶媒(容量比4:1)に溶解した後、所定量の
1N−水酸化ナトリウム水溶液を添加し、25℃で2時
間ケン化した。フェノールフタレインを指示薬として添
加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸
化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法によ
り、ブランクテストを行った。そして、下記式に従って
酢化度(%)を算出した。 酢化度(%)=(6.005×(B−A)×F)/W 式中、Aは試料の滴定に要した1N−硫酸量(ml)、
Bはブランクテストに要した1N−硫酸量(ml)、F
は1N−硫酸のファクター、Wは試料質量を示す。尚、
複数のアシル基を含有する系では、そのpKaの差を使
って、各アシル基の量を求めた。また、公知文献(T.Se
i,K.Ishitani,R.Suzuki,K.Ikematsu Polymer Journal 1
7 1065(1985))に記載の方法によっても同様に求め、そ
の値が正しいことを別途確認した。さらに、これらによ
り求められた酢化度、その他のアシル基の量からモル分
子量を考慮して置換度に換算した。
【0048】(1)セルロースアシレートの粘度平均重
合度(DP) 絶乾したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、メ
チレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合
溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計
にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式によ
り求めた。 ηrel =T/T0 T :測定試料の落下秒数 [η]=(1nηrel )/C T0:溶剤単独の落下秒数 DP=[η]/Km C : 濃度(g/l) Km:6×10-4
【0049】(2)溶液の安定性 得られた溶液またはスラリーの状態を常温(23℃)で
20日間静置保存したまま観察し、以下のA、B、C、
Dの4段階に評価した。 A:透明性と液均一性を示す。 B:若干の溶け残りがある、または少し白濁が見られ
る。 C:明らかな溶け残りがある、または溶液がゲル化して
いる。 D:液は膨潤・溶解が見られず不透明性で不均一な溶液
状態である。
【0050】(3)フイルム面状 フイルムを目視で観察し、その面状を以下の如く評価し
た。 A:フイルム表面は平滑であり、きわめて面状が良好で
ある。 B:フイルム表面は平滑であるが、まれに凹凸が認めら
れる。 C:フイルム表面は平滑であるが、弱い凹凸が比較的多
数見られる。 D:フイルム全面に弱い凹凸が認められる。 E:フイルムに強い凹凸が見られ、異物が見られる。
【0051】(4)フイルムのヘイズ ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を
用いて測定した。
【0052】(5)全反射スペクトル FT−IR分光器(Nicolet社製、710型)を
用いて、ATR条件、KRS−5(両面に50mm×1
0mmのサンプルを貼り付け)45度条件で分解能4c
-1、積算100回のもとで測定した。セルロースアシ
レートのメチレン由来の1300〜1400cm-1の吸
収強度を吸光度換算の高さで求め、これに対する110
0〜1200cm-1のケタール由来のピーク強度を求め
た。
【0053】(1−1)セルロースアシレート溶液の作
製 下記の2種の溶解方法によりセルロースアシレート溶液
を作製した。各本発明および比較例の詳細な溶剤組成に
ついては第1表に記載した。なお、シリカ粒子(粒径2
0nm)、トリフェニルフォスフェート/ビフェニルジ
フェニルフォスフェート(1/2)、2,4−ビス−
(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5
−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジ
ンをそれぞれセルロースアシレートの0.5質量%、1
0質量%、1.0質量%添加した。また、剥離剤として
クエン酸をセルロースアシレートに対して200ppm
添加した。尚、本発明における共流延の内部層、外部層
を形成する液としては上記セルロースアシレート溶液を
濃度および溶剤組成を変えて用いた。詳細は第1表に合
わせて示した。
【0054】(1−1a)高圧高温溶解 溶剤中に、よく攪拌しつつ第1表記載のセルロースアシ
レートを徐々に添加し、室温(25℃)にて3時間放置
し膨潤させた。得られた膨潤混合物を、二重構造のステ
ンレス製密閉容器に入れた。容器の外側のジャケットに
高圧水蒸気を通すことで+8℃/分で加温し、第1表記
載の温度および圧力で5分間保持した。この後外側のジ
ャケットに50℃の水を通し−8℃/分で50℃まで冷
却し、ドープを得た。
【0055】(1−2)セルロースアシレート溶液の濾
過 次に得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.0
1mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、
さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社
製、FH025)にて濾過した。
【0056】(1−3)(1−2)の溶液を、特開昭5
6−162617号公報に記載の流延機を用いて流延
し、120℃の環境下で30分乾燥して溶剤を蒸発させ
セルロースアシレートフイルムを得た。層構成は単層、
および二層または三層であり、二層ではバンド面から内
部層/外部層の構成、三層では外部層/内部層/外部層
のサンドイッチ型構成であった。詳細は第1表に示し
た。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】(1−3)結果 得られたセルロースアシレートの溶液およびフイルム
を、上述の項目に従って評価した。本発明のセルロース
アシレート溶液およびフイルムは、その溶液安定性、フ
イルムの機械物性、光学物性において特に問題は認めら
れなかった。一方、比較例では得られたフイルムの面状
に問題が認められた。
【0060】また、これらのフイルムを、製膜工程中の
乾燥工程中にオンラインで、あるいはその後オフライン
で130℃にて10%〜30%MD、TD延伸延伸し
た。これらは、延伸倍率に比例し40nm〜160nm
にレターデーションを増加させることができた。このよ
うにして得たセルロースアシレートフイルムを、特開平
10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装
置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のデ
ィスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビ
ニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−15
4261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装
置、特開2000−154261号公報の図10〜15
に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性
能が得られた。さらに、特開昭54−016575号公
報に記載の偏光板として用いたところ、良好な性能が得
られた。
【0061】
【表3】
【0062】
【発明の効果】セルロースアシレートを実質的に非塩素
系有機溶媒から構成される溶剤に溶解させる溶解方法で
あって、該有機溶剤が炭素数12以下のケトン類を含有
し、その亜臨界〜超臨界領域に属する温度及び圧力下で
溶解させ、溶液から作製されたフイルムの全反射スペク
トルにおける1300〜1400cm-1の吸収強度に対
する1100〜1200cm-1のケタール由来のピーク
強度が0%〜10%の強度範囲に入るように溶解温度及
び圧力を調整することを特徴とするセルロースアシレー
ト溶液の製造方法により、フイルムの面状を改良すると
共に機械特性等で問題のないセルロースアシレートフイ
ルムの製造方法を達成した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07H 13/06 C07H 13/06 4F071 C08J 5/18 C08J 5/18 4F100 C08K 5/07 C08K 5/07 4F205 C08L 1/10 ZBP C08L 1/10 ZBP 4J002 G02B 5/20 G02B 5/20 5/30 5/30 G03C 1/795 G03C 1/795 // B29K 1:00 B29K 1:00 B29L 7:00 B29L 7:00 Fターム(参考) 2H023 FA01 2H048 AA05 AA15 2H049 BA02 BB33 BB63 BC09 BC22 4C057 DD02 HH03 4F070 AA02 AC39 AC43 CA11 CB04 CB11 4F071 AA09 AB26 AC07 AC10 AE04 AE05 AE11 AE17 AH19 BA02 BB02 BC01 BC17 4F100 AA20A AA20B AA20C AJ06A BA03 BA06 BA10A BA10C BA14 CA04A CA04B CA04C CA07A CA07B CA07C CA23A CA23B CA23C EA061 EG002 EH462 GB41 JA06B JA06C JL00 JL02 4F205 AA01J AB06 AB07 AB11 AB17 AB20A AC05 AG01 AG03 AH73 GA07 GB26 GC06 GE22 GF03 GF24 GN22 4J002 AB021 EE026 EE036 FD206 GT00 HA03

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セルロースアシレートを、実質的に非塩
    素系有機溶剤から構成される有機溶剤に溶解させるセル
    ロースアシレート溶液の製造方法であって、該有機溶剤
    が、少なくとも炭素原子数が12以下であるケトン類を
    含有する単一または混合の有機溶剤であり、該有機溶剤
    の亜臨界〜超臨界領域に属する温度及び圧力下で溶解さ
    せ、溶液から作製されたフイルムの全反射スペクトルに
    おける1300〜1400cm-1の吸収強度に対する1
    100〜1200cm-1のケタール由来のピーク強度が
    0%〜10%の強度範囲に入るように溶解温度及び圧力
    を調整することを特徴とするセルロースアシレート溶液
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 溶解させる温度及び圧力が、該有機溶剤
    の沸点以上で臨界温度以下の温度であり、1.013M
    Pa(10kgf/cm2 )以上の圧力であることを特
    徴とする請求項1に記載のセルロースアシレート溶液の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 溶解させる温度及び圧力が、該有機溶剤
    の臨界温度以下で423K以上の温度であり、1.01
    3MPa(10kgf/cm2 )以上で臨界圧力以下の
    圧力であることを特徴とする請求項1もしくは2に記載
    のセルロースアシレート溶液の製造方法。
  4. 【請求項4】 セルロースアシレートの全アシル置換度
    の合計が2.75以上2.90以下であり、かつ6位の
    アシル置換度が0.92以上であることを特徴とする請
    求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載のセルロース
    アシレート溶液の製造方法。
  5. 【請求項5】 6位のアシル置換度が2位、3位のアシ
    ル置換度に比べて高いことを特徴とする請求項1乃至4
    のうちのいずれかの項に記載のセルロースアシレート溶
    液の製造方法。
  6. 【請求項6】 平均粒子径が0.1μm以下のシリカ粒
    子、可塑剤および紫外線吸収剤が添加されたことを特徴
    とする請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載のセ
    ルロースアシレート溶液の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6のうちのいずれかの項に
    記載の製造方法により得られたセルロースアシレート溶
    液を支持体上に塗布して、セルロースアシレートフイル
    ムを形成することを特徴とするセルロースアシレートフ
    イルムの製造方法。
  8. 【請求項8】 共流延法により二層以上の層を流延製膜
    することを特徴とする請求項7に記載のセルロースアシ
    レートフイルムの製造方法。
  9. 【請求項9】 セルロースアシレートフイルムが二層以
    上の多層構造を有し、該セルロースアシレートフイルム
    の少なくとも一方の側の外部層の厚さが1〜50μmの
    範囲にあることを特徴とする請求項8に記載のセルロー
    スアシレートフイルムの製造方法。
  10. 【請求項10】 セルロースアシレートフイルムが三層
    以上の多層構造を有し、該セルロースアシレートフイル
    ムの少なくとも一方の側の外部層の厚さが1〜50μm
    の範囲にあることを特徴とする請求項8もしくは9に記
    載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  11. 【請求項11】 外部層の厚さが1〜20μmの範囲に
    ある請求項8乃至10のうちのいずれかの項に記載のセ
    ルロースアシレートフイルムの製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項8乃至11のうちのいずれかの
    項に記載の製造方法により得られたセルロースアシレー
    トフイルムから形成されたことを特徴とする偏光板保護
    膜。
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