JP2001190265A - 香味の改良された香味液および合成清酒 - Google Patents

香味の改良された香味液および合成清酒

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 吟醸清酒様の香りとコク味を有し、かつ合成
清酒に多量に添加することのできる、米の使用量を節約
した香味液及び前記香味液を多量に添加することにより
得られる、発酵に由来する香りとコク味に富む、香味の
改良された合成清酒を提供する。 【解決手段】 糖、酒粕及び麹を、酵母を用いてアルコ
ール発酵することによって得られる発酵液を火入れする
ことにより得られる香味液及び前記香味液を含む合成清
酒。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合成清酒に吟醸清
酒様の香りとコク味を濃厚に付与することが可能な香味
液、および香味の改良された合成清酒に関する。
【0002】
【従来の技術】合成清酒の製造は、古くから行われてい
る。例えば、清酒醸造法と同様の方法で、香味液を調製
する。また、植物性蛋白質に、糖類、酸類、及び無機塩
類を加え、清酒酵母を接種して、発酵させ、発酵液を得
る。前記香味液と発酵液を、ブドウ糖、水飴などの糖類
を水にとかし、乳酸酸性にしたところに加え、香りとコ
ク味を整える。その後濾過、火入れを行い合成清酒を製
造する方法が知られている(特公大14−4375
号)。しかし、前記方法は、吟醸香を付与するために、
清酒醸造と同様の方法で作られた香味液を添加し、さら
にコク味を付与するために発酵液を添加しなければなら
ず、操作が煩雑であった。また、アルコールに清酒と同
様の醸造方法で製造した香味液を1割前後添加して、更
に糖類、酸類、アミノ酸類、無機塩を添加して味を整え
て、合成清酒を製造する方法(特開平11−46750
号公報)が報告されている。しかしながらこの方法で製
造した合成清酒は、発酵に由来する成分が少ないため
に、香りとコクに乏しいものであった。また香味液が着
色している場合があり、この香味液を使用して得られる
合成清酒が変色を起こすこともあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】合成清酒の香味は、香
味液を添加することにより改良することができる。より
豊かな香味を付与するためには、香味液の配合量を多く
すればよい。しかし、酒税法により、合成清酒とは、
「原料として使用する米の重量が、アルコール20%に
換算した合成清酒の重量の5%以下の酒類」と定義され
ている。この原料米の使用制限のため、従来の合成清酒
における、香味液の使用割合は上述のように1割程度に
制限される。以上の理由から、アルコールに、より豊か
な香味を付与するため、香味液を多量に添加することは
困難であった。そこで、本発明の目的は、吟醸清酒様の
香りとコク味を有し、かつ合成清酒に多量に添加するこ
とのできる、米の使用量を節約した香味液を提供するこ
とにある。さらに、本発明の目的は、前記香味液を多量
に添加することにより得られる、発酵に由来する香りと
コク味に富む、香味の改良された合成清酒を提供するこ
とにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意研究を行った。その結果、清酒醸
造と同様の方法で作られる香味液の仕込みにおいて、掛
け米を液糖に置き換え、さらに窒素源として酒粕を補っ
て発酵を行うことにより、米の使用量を節約しつつ、酒
質的に遜色のない香味液が得られることを見出し、本発
明を完成するに至った。さらに、前記香味液を使用する
と、合成清酒への香味液の使用割合を多くすることがで
き、発酵に由来する香りとコクに富む合成清酒を得るこ
とができることを見出した。すなわち、本発明は、糖、
酒粕及び麹を酵母を用いてアルコール発酵することによ
って得られる発酵液を火入れすることにより得られる香
味液に関する。さらに、本発明は上記香味液を含有する
香味の改良された合成清酒に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の香味液は、糖、酒粕及び
麹を、酵母を用いてアルコール発酵することによって得
られる発酵液を、火入れすることによって得られる。
【0006】本発明で用いられる糖は、例えば液糖であ
ることができる。液糖は、着色のない無色のもので、鉄
分等の金属塩や蛋白質等の不純物が精製により取り除か
れたものであることが好ましい。また、本発明では、ブ
ドウ糖、水飴等の固体又は飴状の糖類を水に溶かしたも
のを糖として使用することもできる。
【0007】酒粕としては、新鮮な清酒粕を使用するこ
とができる。酒粕は、酵母の窒素源として用いられる。
酒粕の使用量は総固形分(液糖、麹、酒粕の合計量)の
9〜16%、好ましくは12〜14%の範囲とすること
が適当である。使用量をこの範囲とすると、清酒とほと
んど遜色のない香味を有し、かつ安定性の良い香味液を
得ることができる。酒粕の使用量が9%より少ないと発
酵が緩慢になり、揮発酸臭が強くなる傾向がある。一
方、酒粕の使用量が16%を超えるとアミノ酸が高くな
り、着色しやすく老香の出やすくなり、安定性が悪くな
る傾向がある。
【0008】窒素源として小麦粉や大豆蛋白質などの植
物性蛋白質原料を使用した場合、発酵は順調で生成直後
の香味も良好であるが、得られる香味液の安定性が悪
く、すぐに着色したり老香が発生したりする。また、植
物性蛋白質原料には鉄分が多く含まれているため、麹と
ともに用いると、得られる香味液が着色を起こす。これ
は、麹のデフェリフェリクシンが鉄と結合して着色物質
であるフェリクシンが生成するためである。このような
事情を考慮して、本発明では、窒素源として、植物性蛋
白質の代わりに、酒粕を、好ましくは前述の使用量の範
囲で使用する。これにより、香味・色沢が豊かで、安定
性も良好な香味液が得られる。
【0009】麹は、清酒醸造で使用するものと同様の麹
であることができる。麹の使用量は、総固形分の12〜
14%とすることが適当である。12%未満では、清酒
様の香味が薄くなり、濃厚な酒質の香味液が得にくく、
14%を超えると、濃厚な酒質の香味液は得られるが、
酒税法において、使用できる米量に制限があるために、
最終的な合成清酒に添加できる香味液の容量を減らさな
ければならなくなる。
【0010】酵母は、清酒酵母、ワイン酵母、アルコー
ル発酵酵母等の任意の酵母を用いることができるが、醸
造協会の清酒酵母を使用することが好ましい。
【0011】本発明では、アルコール発酵を、無機塩類
の存在下で行うことが好ましい。無機塩類は、アルコー
ル発酵の際の酵母の生育及び増殖を促進することができ
る。本発明で用いられる無機塩類としては、例えば、リ
ン酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウ
ム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウ
ム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシ
ウム、食塩等の一種又は二種以上を挙げることができ
る。
【0012】本発明では、アルコール発酵を乳酸の存在
下で行うことが好ましい。乳酸は、発酵液の雑菌汚染防
止に効果がある。
【0013】さらに、アルコール発酵の際に酵素剤を酵
母と併用することが好ましい。例えば、酵素剤として蛋
白質分解酵素を使用すると、酒粕が分解されることによ
りアミノ酸が生成され、このアミノ酸がアルコール発酵
の際に酵母の栄養源となり、さらに、本発明によって得
られる香味液の旨味成分の一つとなるため好ましい。
【0014】本発明の香味液は、通常の清酒醸造と同様
にアルコール発酵することによって得られる発酵液を火
入れすることによって得られる。清酒醸造におけるアル
コール発酵は、通常、糖質原料を2回または3回に分け
て添加する、いわゆる3段仕込みが一般的である。しか
し、本発明の場合、液糖の使用量が多く、3段仕込みで
は糖濃度が高くなりすぎて、酵母のアルコール発酵が旺
盛に進展しにくい。そこで、本発明では、アルコール発
酵の際に、液糖を4回以上、好ましくは6回に分けて添
加することが適当である。
【0015】本発明の香味液を得るには、水に麹及び酵
母並びに必要により乳酸及び無機塩類を各濃度で添加
し、混ぜ合わせて発酵を開始させ(これを水麹とい
う)、例えば水麹を調製した翌日に、水麹に液糖、水及
び酒粕並びに必要により乳酸及び蛋白質分解酵素などの
酵素剤を、使用する米量の1/1000〜1/5000
の量で加え、さらに一日間発酵させる(これを添とい
う)。添の後、例えば1日放置する(これを踊とい
う)。踊に、米麹、液糖、水及び酒粕を加え、一日間発
酵させる(これを仲という)。仲に、さらに米麹、液
糖、水及び酒粕を加えさらに18〜21日間発酵させる
(これを留という)。留から発酵終了(後述の上槽)ま
での間に、さらに追加的に液糖を添加する(この過程を
四段という)。四段において、液糖は1回以上、好まし
くは3回に分けて添加することが適当である。得られた
発酵液に、アルコール水溶液を加え(上槽という)、発
酵を終了させる。水麹から上槽の間、アルコール発酵が
行われる。上槽後、常法通りに圧搾、濾過してから、殺
菌、酵素の破壊及び香味の熟成の調節のために、例えば
65〜70℃で10〜30分間加熱し(火入れとい
う)、香味液を得ることができる。より清酒に近い酒質
の香味液にするために、例えば2ヶ月以上貯蔵して熟成
させることが適当である。
【0016】合成清酒とは、酒税法において、「使用す
る米の重量が、アルコール分を20度に換算した場合に
当該酒類の重量の100分の5以下であるもの」と定義
されている。本発明の合成清酒は、前記酒税法における
合成清酒の定義に適するように、貯蔵熟成後の香味液
に、糖類、水及びアルコールを適量添加して得ることが
できる。尚、アルコール発酵の際に使用する米麹の量
を、酒税法による合成清酒の米の使用量制限の範囲内の
量にすることによって、又は、発酵液に添加するアルコ
ール水溶液の量若しくはアルコール濃度を調整すること
によって、香味液をそのまま、又は割水するだけで合成
清酒とすることもできる。得られた合成清酒は、活性炭
を加えて濾過することが好ましい。前記の濾過は、火入
れ前の発酵液、火入れ後の香味液又は熟成後の香味液に
対して行うことも可能である。
【0017】尚、酒税法によって、合成清酒に使用でき
る米量は制限されている。しかし、本発明においては、
香味液仕込時の原料米の使用量を節約しているため、最
終的に得られる合成清酒あたり、香味液を50%以上
(発酵液としては40%以上)添加することも可能であ
る。その結果、清酒様の豊かな香味を有する合成清酒を
得ることができる。
【0018】
【実施例】次に、具体的に実施例を挙げて、本発明を更
に詳細に説明する。 (実施例1)本発明の香味液を得るための仕込み配合量
を表1に示した。具体的な香味液の仕込み方法を以下に
記す。水2550mLに、米麹760g、酵母16g、
乳酸10.1g、リン酸1カリウム0.53g、リン酸
1カルシウム0.84g、硫酸マグネシウム0.26g
及び食塩0.40gを加え、混ぜ合わせ、一日間発酵さ
せる(これを水麹という)。この水麹に液糖(昭和産業
製KG25−75)に、水を加えて水分50%とした液糖水1
375mL、水900mL、酒粕600g、プロテアーゼ
(商品名:アマノM、天野製薬製)2.3g、乳酸5.
3gを加え、一日間発酵させる(添)。添の後、1日放
置する(踊)。踊に米麹760g、液糖水2750m
L、水5550g、酒粕900gを加えさらに一日間発
酵させる(仲)。仲にさらに米麹780g、液糖水41
25mL、水8450mL、酒粕900gを加え、発酵さ
せる(留)。留の後にさらに四段を3回に分けて液糖水
を添加し、発酵させる。液糖水の各添加量は、3270
mL、2730mL、1640mLである。ここにアルコ
ール37.1%水溶液を4500mL加え、圧搾、濾過
を行って清澄な香味液を得た(上槽)。留〜上槽までの
過程は、11〜14℃の温度範囲で18日かけて行っ
た。この香味液を活性炭を加えて濾過した後、65℃で
10分間火入れを行い、常温で2ヶ月貯蔵させて熟成さ
せて本発明の香味液を得た。得られた香味液の組成を表
2に示す。表2中、アルコール分、エキス分、酸度、及
びアミノ酸度は、「第4回改正国税庁所定分析注解」
(日本醸造協会発行)による測定方法によって得られた
数値である。この香味液を5割使用して、アルコールと
糖類を加えて味を整え、表3に示す合成清酒を得た。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】(比較例1)清酒と同様の醸造方法で製造
した香味液を1割前後使用して、これにアルコール、糖
類、酸類、アミノ酸類、無機塩を添加して調整した通常
の合成清酒、実施例1で得られた表3に示す本発明の合
成清酒及び常法により製造した清酒との香気成分の比較
を行った結果を表4に記載する。香気成分の分析は、
「第4回改正国税庁所定分析注解(p273)」(日本醸造
協会発行)に記載のヘッドスペースガスクロマトグラフ
ィー法によって行った。
【0023】
【表4】
【0024】表4から、通常の合成清酒は、いずれの香
気成分も通常の清酒と比較して明らかに少ないのに対
し、本発明の香味液を用いて製造した合成清酒は、発酵
により生成する香気成分が清酒と同程度近くまで多く含
まれていることがわかる。
【0025】(比較例2)10名の専門パネルにより、
通常の合成清酒(対照)と本発明の合成清酒及び通常の
清酒を比較して5段階で官能評価を行った。全パネルの
評価結果の平均点を表5に記載する。
【0026】
【表5】
【0027】表5に記載されているように、本発明の合
成清酒は、清酒様香味の強さ、コク味の強さ、味のバラ
ンスの良さ、後味の良さのいずれの評価項目においても
通常の合成清酒より勝っており、清酒同様の評価を得て
いる。そして、総合評価においても、明らかに通常の合
成清酒よりも優れており、清酒以上の評価を得ている。
【0028】(実施例2)実施例1で得られた香味液で
は総固形分の13.8%であった香味液の原料となる酒
粕の量を、9%、14%又は16%と変化させた以外は
実施例1と同様にして発酵及び火入れを行って得られた
香味液を用い、実施例1と同様にして合成清酒を調製し
た。得られた各合成清酒について、生成直後と55℃で
5日間保存後に、10名の専門パネルにより、香味、色
沢の官能評価を行い、さらに着色度を示す吸光度430
nmを測定した。結果を表6に記載する。
【0029】
【表6】
【0030】表6の結果から明らかなように、酒粕が9
%より少ないと酸臭が強くなる傾向がある。一方、酒粕
が16%のものは生成直後の官能評価は良好である。但
し保存により着色し老香が出やすくなる。酒粕が14%
のものは、香味の良さと保存による安定性の両方を備え
ている。さらに詳細に検討した結果、酒粕使用量が12
〜14%の範囲で最も好ましい酒質となる。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、吟醸清酒様の香りとコ
ク味を有する香味液を提供することができる。本発明の
香味液を純合成清酒に添加することにより、吟醸清酒様
の香りを有し、コク味をも濃厚に有する良好な合成清酒
が得られる。本発明においては、清酒醸造と同様の方法
において、掛け米を液糖に置き換えることで、米の使用
量を節約することができ、さらに窒素源として酒粕を補
って発酵を行うことにより、酒質的にも遜色のない香味
液が得られる。本発明の香味液を使用すれば、香味液含
有量を最終製品の50%以上とすることができ、しかも
得られる合成清酒は、極めて発酵風味が豊かでかつ安定
性の良いものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B015 AG02 AG05 AG07 AG17 CG02 CG05 CG07 CG17 GG02 GG05 GG14 GG15 GG17 LG01 LG02 LG03 LH12

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】糖、酒粕及び麹を、酵母を用いてアルコー
    ル発酵することによって得られる発酵液を火入れするこ
    とによって得られる香味液。
  2. 【請求項2】前記アルコール発酵を、無機塩類及び/又
    は乳酸の存在下で行う請求項1に記載の香味液。
  3. 【請求項3】酵母とともに酵素剤を用いる請求項1又は
    2に記載の香味液。
  4. 【請求項4】アルコール発酵途中の発酵液に糖、酒粕及
    び麹の少なくとも1つを追加的に添加する請求項1〜3
    のいずれか1項に記載の香味液。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれか1項に記載の香味
    液を含む合成清酒。
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