JP2021164432A - ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法 - Google Patents

ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】豊かな余韻が増強されたビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明に係るビールテイスト飲料は、酢酸テルピニルの含有量が30〜3000ppbである。本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法は、酢酸テルピニルの含有量を30〜3000ppbとする工程を含む。本発明に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、ビールテイスト飲料の豊かな余韻を増強させる香味向上方法であって、前記ビールテイスト飲料の酢酸テルピニルの含有量を30〜3000ppbとする。【選択図】なし

Description

本発明は、ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法に関する。
消費者の多様な嗜好に応えるべく、多くの種類のビールテイスト飲料やその製造方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、0.3〜5ppmのクワシンおよび/または0.5〜5ppmのキニーネを含んでなる、ビールテイスト飲料が開示されている。
そして、特許文献1では、ビールらしい苦味と後キレを有するビールテイスト飲料が提供できると説明されている。
特開2017−006077号公報
特許文献1に係る技術は、ビールテイスト飲料の後キレに着目している。
ビールテイスト飲料の香味として、特許文献1が目指しているような後味のキレのよいものを好む消費者が一定の割合で存在する一方で、後味において口腔内に広がるビールらしい香味(豊かな余韻)を好む消費者も多く存在する。
よって、本発明者らは、ビールテイスト飲料の豊かな余韻を増強させることによって、後味を楽しむ消費者を十分に満足させるような発明を創出したいと考えた。
そこで、本発明は、豊かな余韻が増強されたビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)酢酸テルピニルの含有量が30〜3000ppbであるビールテイスト飲料。
(2)酢酸テルピニルの含有量が200〜2000ppbである前記1に記載のビールテイスト飲料。
(3)酢酸テルピニルの含有量に対するリナロールの含有量の比率(=リナロールの含有量[ppb]/酢酸テルピニルの含有量[ppb])が0.002〜2.500である前記1又は前記2に記載のビールテイスト飲料。
(4)酢酸テルピニルの含有量に対するリナロールの含有量の比率(=リナロールの含有量[ppb]/酢酸テルピニルの含有量[ppb])が0.015〜1.500である前記1から前記3のいずれか1つに記載のビールテイスト飲料。
(5)酢酸テルピニルの含有量を30〜3000ppbとする工程を含むビールテイスト飲料の製造方法。
(6)ビールテイスト飲料の豊かな余韻を増強させる香味向上方法であって、前記ビールテイスト飲料の酢酸テルピニルの含有量を30〜3000ppbとするビールテイスト飲料の香味向上方法。
本発明に係るビールテイスト飲料は、豊かな余韻が増強されている。
本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法は、豊かな余韻が増強されたビールテイスト飲料を製造することができる。
本発明に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、ビールテイスト飲料の豊かな余韻を増強することができる。
以下、本発明に係るビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
[ビールテイスト飲料]
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酢酸テルピニルの含有量が所定範囲内となる飲料である。そして、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、リナロールを含有し、酢酸テルピニルの含有量に対するリナロールの含有量の比率が所定範囲内となっていてもよい。
ここで、ビールテイスト飲料とは、ビール様(風)飲料とも呼ばれ、ビール様の香味を奏する飲料、言い換えると、ビール様の香味を奏するように調製された飲料である。そして、ビールテイスト飲料としては、例えば、酒税法(令和元年十二月四日公布(令和元年法律第六十三号)改正)で定義される「発泡性酒類」(ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類)に分類されるものが挙げられる。なお、前記したその他の発泡性酒類としては、「その他の醸造酒(発泡性)(1)」(第三のビール)や「リキュール(発泡性)(1)」(新ジャンルビール)がある。また、ビールテイスト飲料としては、ビール様の香味を奏していればよく、酒税法で定義される発泡性酒類には属さない飲料および清涼飲料水(例えばノンアルコールビールテイスト飲料など)も挙げることができる。
(酢酸テルピニル)
酢酸テルピニル(terpinyl acetate)とは、分子式C1220で表される物質でありテルピネオール酢酸エステルとも呼ばれる。
そして、本発明者らは、この酢酸テルピニルをビールテイスト飲料に含有させるとともに、含有量を所定範囲内に調整することによって、ビールテイスト飲料の「豊かな余韻」を増強できるとともに、「ウッディーな香り」も増強できることを見出した。
酢酸テルピニルの含有量は、30ppb以上が好ましく、50ppb以上、100ppb以上、150ppb以上、180ppb以上、200ppb以上、250ppb以上、280ppb以上、290ppb以上、300ppb以上がより好ましい。酢酸テルピニルの含有量が所定値以上であることによって、豊かな余韻が増強されるとともに、心地よいウッディーな香りも増強される。
酢酸テルピニルの含有量は、3000ppb以下が好ましく、2800ppb以下、2500ppb以下、2000ppb以下、1800ppb以下、1500ppb以下がより好ましい。酢酸テルピニルの含有量が所定値以下であることによって、豊かな余韻の増強効果と心地よいウッディーな香りの増強効果とを十分に発揮させることができる。
なお、本明細書において「ppb」という単位は「μg/L」と同義である。
酢酸テルピニルの含有量、及び、後記するリナロールの含有量は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編、2013年増補改訂)の「8.22 低沸点香気成分」に記載されている方法(FID付ヘッドスペースガスクロマトグラフを用いる方法)によって測定することができる。
また、酢酸テルピニルの含有量は、後記する発酵前工程(仕込み工程)で使用する原料によって制御することができるが、例えば、発酵後工程での酢酸テルピニルを含む香料や植物原料等、さらには酢酸テルピニルそのものの添加によって制御することもできる。
(リナロール)
リナロール(linalool)とは、分子式C1018Oで表されるモノテルペンアルコールの一種である。
そして、本発明者らは、このリナロールの含有量を所定範囲内に調整することによって、酢酸テルピニルを含有するビールテイスト飲料について、「清涼感のある複雑な香り」と「喉を通過する際の爽快さ」とを増強できることを見出した。
リナロールの含有量は、5.20ppb以上が好ましく、5.34ppb以上、5.50ppb以上、5.67ppb以上、10ppb以上、20ppb以上、30ppb以上、40ppb以上、50ppb以上、60ppb以上、70ppb以上、72ppb以上がより好ましい。リナロールの含有量が所定値以上であることによって、清涼感のある複雑な香りが増強されるとともに、喉を通過する際の爽快さも増強される。
リナロールの含有量は、1000ppb以下、900ppb以下、800ppb以下、700ppb以下、675ppb以下、600ppb以下、500ppb以下、400ppb以下、340ppb以下がより好ましい。リナロールの含有量が所定値以下であることによって、清涼感のある複雑な香りの増強効果と喉を通過する際の爽快さの増強効果とを十分に発揮させることができる。
また、リナロールの含有量は、後記する発酵前工程(仕込み工程)で使用する原料によって制御することができるが、発酵後工程でのリナロールを含む香料や植物原料等、さらにはリナロールそのものの添加によって制御することもできる。
(リナロールの含有量/酢酸テルピニルの含有量)
前記したリナロールの含有量の範囲を規定する代わりに(又は、併用して)、酢酸テルピニルの含有量に対するリナロールの含有量の比率(=リナロールの含有量[ppb]/酢酸テルピニルの含有量[ppb])を特定してもよい。
詳細には、酢酸テルピニルの含有量に対するリナロールの含有量の比率は、0.002以上が好ましく、0.010以上、0.015以上、0.018以上、0.019以上、0.100以上、0.150以上、0.170以上、0.200以上、0.230以上、0.240以上がより好ましい。この比率が所定値以上であることによって、清涼感のある複雑な香りが増強されるとともに、喉を通過する際の爽快さも増強される。
酢酸テルピニルの含有量に対するリナロールの含有量の比率は、2.500以下が好ましく、2.250以下、2.000以下、1.800以下、1.500以下、1.200以下、1.133以下がより好ましい。この比率が所定値以下であることによって、清涼感のある複雑な香りの増強効果と喉を通過する際の爽快さの増強効果とを十分に発揮させることができる。
(アルコール度数)
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、特に限定されないものの、例えば、1%(v/v%)以上、3%以上、4%以上であり、15%以下、10%以下、9%以下、8%以下、6%以下であってよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、麦由来原料を発酵させて得られた飲料の値であってもよいが、当該飲料に対して、適宜、蒸留アルコールを添加して調整してもよいし、発酵を経ない場合(調合の場合)は、蒸留アルコールの添加のみで調整してもよい。
蒸留アルコールとしては、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられる。蒸留アルコールは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において「スピリッツ」とは、蒸留酒であるスピリッツを指し、酒税法上のスピリッツとは異なる場合もある。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。そして、ビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3−4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
(発泡性)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であるのが好ましい。
そして、本実施形態に係るビールテイスト飲料の20℃におけるガス圧は、特に限定されないものの、例えば、2.0kg/cm以上、2.2kg/cm以上、2.3kg/cm以上、2.4kg/cm以上であり、5.0kg/cm以下、4.0kg/cm以下、3.0kg/cm以下である。そして、ビールテイスト飲料のガス圧は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)8−3ガス圧に基づいて測定することができる。
(その他)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、例えば、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
(容器詰めビールテイスト飲料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にビールテイスト飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、例えば、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、「豊かな余韻」が増強されている。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、「心地よいウッディーな香り」、「清涼感のある複雑な香り」、「喉を通過する際の爽快さ」についても増強されている。
[ビールテイスト飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法について説明する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、酢酸テルピニルの含有量を所定範囲内とする工程を含む。そして、詳細には、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、発酵前工程と、発酵工程と、発酵後工程と、を含む。
(発酵前工程)
発酵前工程では、麦芽、麦、糖類、酵素、各種添加剤、副原料等を適宜混合して原料を糖化し、糖化液を得る。そして、糖化液を適宜ろ過して得られた麦汁に、適宜、ホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を調製する。
発酵前工程において調製される発酵前液は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源となる麦由来原料(麦芽や麦、又はそれらのエキス)を含む溶液であれば特に限られない。窒素源及び炭素源は、酵母が資化可能なものであれば特に限られない。酵母が資化可能な窒素源とは、例えば、麦由来原料に含まれるアミノ酸及びペプチドのうちの少なくとも一つである。酵母が資化可能な炭素源とは、例えば、前記した糖類や麦由来原料に含まれる糖類である。
発酵前工程で使用する麦芽は、麦を発芽させ焙燥した後に根を除いたものであり、また、発酵前工程で使用する麦とは、発芽させていない状態の麦である。そして、麦とは、大麦、小麦、ライ麦、燕麦等であるが、大麦が好ましい。
なお、麦芽比率(ビールテイスト飲料の製造に用いられる原料のうち水及びホップ以外のものの全重量に占める麦芽の重量の比率)は、特に限定されないものの、例えば、下限は1%以上、10%以上、25%以上、30%以上、50%以上であり、上限は100%以下、95%以下である。
発酵前工程で使用する副原料は、酒税法施行規則(令和元年六月二十八日公布(令和元年財務省令第十三号)改正)の第4条第2項各号に掲げられている物品、さらには、果実(果実を乾燥させ、若しくは煮つめたもの又は濃縮させた果汁を含む)等が挙げられる。
発酵前工程で使用するホップは、特に限定されず、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが挙げられるとともに、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
(発酵工程)
発酵工程は、発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程である。本実施形態においては、例えば、予め温度が所定の範囲内(例えば、0〜40℃の範囲)に調製された発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製し、発酵を行う。
発酵工程においては、さらに熟成を行うこととしてもよい。熟成は、上述のような発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。この熟成により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り除き、また、香味を向上させることができる。
こうして発酵工程においては、酵母により生成されたエタノール及び各種成分を含有する発酵後液を得ることができる。発酵後液に含まれるエタノールの濃度(アルコール度数)は、例えば、1〜20%とすることができる。
(発酵後工程)
発酵後工程は、発酵後液に所定の処理を施して最終的にビールテイスト飲料を得る工程である。発酵後工程としては、例えば、発酵工程により得られた発酵後液のろ過(いわゆる一次ろ過)が挙げられる。この一次ろ過により、発酵後液から不溶性の固形分や酵母を除去することができる。また、発酵後工程においては、さらに発酵後液の精密ろ過(いわゆる二次ろ過)を行ってもよい。二次ろ過により、発酵後液から雑菌や、残存する酵母を除去することができる。なお、精密ろ過に代えて、発酵後液を加熱することにより殺菌することとしてもよい。発酵後工程における一次ろ過、二次ろ過、加熱は、ビールテイスト飲料を製造する際に使用される一般的な設備で行うことができる。
なお、発酵後工程には、前記した容器に充填する工程も含まれる。
発酵後工程によって得られたビールテイスト飲料の各成分の含有量を所定範囲内とする方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
具体的には、副原料として、カルダモンを用いつつ、当該カルダモンの添加量を調整することで、ビールテイスト飲料の酢酸テルピニルの含有量を制御することができる。そして、リナロールの含有量については、副原料のカルダモンの添加量の調整によって制御することができ、ホップの添加量や添加するホップの種類によって制御することもできる。
加えて、ビールテイスト飲料の各成分の含有量は、発酵後工程において、酢酸テルピニルやリナロール、又は、それらを含有する香料や植物原料等を添加することによって調整することもできる。
また、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発酵工程を経ないで製造することもできる。つまり、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、非発酵飲料として製造されてもよい。
この場合、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、混合タンクに、水、酢酸テルピニルやそれを含む香料や植物原料等、リナロールやそれを含む香料や植物原料等、添加剤、麦芽エキス、蒸留アルコールなどの原料を適宜投入する調合工程(混合工程)と、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を行う後処理工程と、を含むこととなる。
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、「豊かな余韻」が増強されたビールテイスト飲料を製造することができる。
また、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、「心地よいウッディーな香り」、「清涼感のある複雑な香り」、「喉を通過する際の爽快さ」についても増強されたビールテイスト飲料を製造することができる。
[ビールテイスト飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、ビールテイスト飲料の豊かな余韻を増強させる香味向上方法であって、酢酸テルピニルの含有量を所定範囲内とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「ビールテイスト飲料」において説明した値と同じである。
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、ビールテイスト飲料の「豊かな余韻」を増強することができる。
また、本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、ビールテイスト飲料の「心地よいウッディーな香り」、「清涼感のある複雑な香り」、「喉を通過する際の爽快さ」についても増強することができる。
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
[サンプルの準備]
市販のビール(麦芽比率:50%以上、アルコール度数:5%、20℃におけるガス圧:2.3kg/cm、酢酸テルピニル:含有せず、リナロールの含有量:5ppb)をベース液(サンプル1−1)とした。
ベース液に対して、酢酸テルピニル、リナロールを適宜添加し、表1、2に示すサンプルを準備した。
なお、サンプルを準備する際に添加した各物質は極微量であったため、各サンプルのアルコール度数やガス圧などは、市販のビール(ベース液)と同じ値と判断することができる。
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプルについて、選抜された識別能力のあるパネル4名が下記評価基準に則って「豊かな余韻」、「心地よいウッディーな香り」、「清涼感のある複雑な香り」、「喉を通過する際の爽快さ」について、1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、各評価は、各サンプルを飲んで評価した。また、香りの評価については、各サンプルを飲んでいる最中に感じる香りだけでなく、立ち香(飲む前に感じる立ち昇る香り)も併せて総合的に評価した。
(豊かな余韻:評価基準)
豊かな余韻の評価については、「豊かな余韻が強い」場合を5点、「豊かな余韻が弱い」場合を1点として5段階で評価した。なお、この評価は、サンプル1−1の1点を基準に設定し、相対評価を行った。そして、豊かな余韻の評価については、点数が高いほど、好ましいと判断できる。
ここで「豊かな余韻がある」とは、ビールの香味としてポジティブな苦味や渋味が、後味において口腔内に広がる様子を示している。そして、この点数が高い場合は、後味においてポジティブな香味(苦味や渋味)が強く広がる状態であり、この点数が低い場合は、後味においてポジティブな香味がほとんど広がらない状態、又は、後味において広がる香味がポジティブではなく、ビールに適さないネガティブな香味(バランスの崩れた香味)である状態を示している。
(心地よいウッディーな香り:評価基準)
心地よいウッディーな香りの評価については、「心地よいウッディーな香りが強い」場合を5点、「心地よいウッディーな香りが弱い」場合を1点として5段階で評価した。なお、この評価は、サンプル1−1の1点を基準に設定し、相対評価を行った。そして、心地よいウッディーな香りの評価については、点数が高いほど、好ましいと判断できる。
ここで「心地よいウッディーな香り」とは、ビールの香味としてポジティブなウッディーな香りであり、具体的には、ビールの香味を邪魔しない新鮮な草木のような香りである。
(清涼感のある複雑な香り:評価基準)
清涼感のある複雑な香りの評価については、「清涼感のある複雑な香りが強い」場合を5点、「清涼感のある複雑な香りが弱い」場合を1点として5段階で評価した。なお、この評価は、サンプル1−1の1点を基準に設定し、相対評価を行った。そして、清涼感のある複雑な香りの評価については、点数が高いほど、好ましいと判断できる。
ここで「清涼感のある複雑な香り」とは、立ち香、及び、口に含んだときに感じる香りであって、冷涼感とフルーティー感とグリーン感とがバランス良く混ざった複合的な香りである。
(喉を通過する際の爽快さ:評価基準)
喉を通過する際の爽快さの評価については、「喉を通過する際の爽快さが強い」場合を5点、「喉を通過する際の爽快さが弱い」場合を1点として5段階で評価した。なお、この評価は、サンプル1−1の1点を基準に設定し、相対評価を行った。そして、喉を通過する際の爽快さの評価については、点数が高いほど、好ましいと判断できる。
ここで「喉を通過する際の爽快さ」とは、のどごしにおいて感じる爽快さであり、この点数が高いほど、のどごしにおける爽快さが強い(のどごしが良い)状態を示している。
なお、前記した各評価において、刺激感、溶媒的(薬品的)な香味、収斂味、えぐ味、雑味といったネガティブな香味を強く感じるほど、低い点数となる傾向を示す。
表1、2に、各サンプルの各評価結果を示す。そして、表における酢酸テルピニルとリナロールの量は、含有量である。
なお、ベース液として使用した市販のビールは、酢酸テルピニルを含有せず、リナロールの含有量が5ppbであった。よって、各サンプルの酢酸テルピニルの添加量を酢酸テルピニルの含有量とし、各サンプルのリナロールの添加量に5ppbを足し合わせた値をリナロールの含有量とした。
Figure 2021164432
Figure 2021164432
(結果の検討)
表1は、酢酸テルピニルの含有量がビールテイスト飲料の香味に与える影響を確認した結果である。
表1の結果から、酢酸テルピニルの含有量が所定範囲内となると、豊かな余韻が増強されるとともに、心地よいウッディーな香りも増強されることが確認できた。
詳細には、「豊かな余韻」については、サンプル1−1〜1−7の中でも、サンプル1−3〜1−6(特に、サンプル1−4、1−5)について好ましい結果(2点以上、より好ましくは3点以上)が得られた。
また、「心地よいウッディーな香り」については、サンプル1−1〜1−7の中でも、サンプル1−3〜1−6(特に、サンプル1−4、1−5)について好ましい結果(1.5点以上、より好ましくは3点以上)が得られた。
表2は、リナロールの含有量がビールテイスト飲料の香味に与える影響を確認した結果である。
表2の結果から、リナロールの含有量が所定範囲内(又は、酢酸テルピニルの含有量に対するリナロールの含有量の比率が所定範囲内)となると、清涼感のある複雑な香りが増強されるとともに、喉を通過する際の爽快さも増強されることが確認できた。
詳細には、「清涼感のある複雑な香り」については、サンプル2−1〜2−8の中でも、サンプル2−3〜2−7(特に、サンプル2−4〜2−6)について好ましい結果(2点以上、より好ましくは3.5点以上)が得られた。
また、「喉を通過する際の爽快さ」については、サンプル2−1〜2−8の中でも、サンプル2−3〜2−7(特に、サンプル2−4〜2−6)について好ましい結果(2点以上、より好ましくは3点以上)が得られた。

Claims (6)

  1. 酢酸テルピニルの含有量が30〜3000ppbであるビールテイスト飲料。
  2. 酢酸テルピニルの含有量が200〜2000ppbである請求項1に記載のビールテイスト飲料。
  3. 酢酸テルピニルの含有量に対するリナロールの含有量の比率(=リナロールの含有量[ppb]/酢酸テルピニルの含有量[ppb])が0.002〜2.500である請求項1又は請求項2に記載のビールテイスト飲料。
  4. 酢酸テルピニルの含有量に対するリナロールの含有量の比率(=リナロールの含有量[ppb]/酢酸テルピニルの含有量[ppb])が0.015〜1.500である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
  5. 酢酸テルピニルの含有量を30〜3000ppbとする工程を含むビールテイスト飲料の製造方法。
  6. ビールテイスト飲料の豊かな余韻を増強させる香味向上方法であって、
    前記ビールテイスト飲料の酢酸テルピニルの含有量を30〜3000ppbとするビールテイスト飲料の香味向上方法。
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WO2023127439A1 (ja) * 2021-12-27 2023-07-06 サントリーホールディングス株式会社 アルコールの刺激感と戻り香が低減された飲料

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