JP2001183505A - 光学素子の設計方法及び製造方法並びに光学素子 - Google Patents

光学素子の設計方法及び製造方法並びに光学素子

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JP2001183505A JP36625499A JP36625499A JP2001183505A JP 2001183505 A JP2001183505 A JP 2001183505A JP 36625499 A JP36625499 A JP 36625499A JP 36625499 A JP36625499 A JP 36625499A JP 2001183505 A JP2001183505 A JP 2001183505A
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貴之 秋山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 各層の膜厚を正確に測定することができ、そ
の結果として目標とする光学特性が確実に得られるよう
な光学素子の設計方法を提供する。 【解決手段】 ステップS1において、従来の方法を使
用して、目的とする光学特性が得られるように多層膜各
層の膜厚を決定する。次にステップS2に移り、所望精
度で膜厚測定を行うことができない層があるかどうかを
判定する。このような層が1層でもある場合は、ステッ
プS3に移行し、このような層のうち最下層の膜厚を、
膜厚測定が可能な膜厚に変更する。ステップS4に移行
し、多層膜全体で得られる、目的とする光学特性が許容
範囲に入っているかどうかをチェックする。目的とする
光学特性が許容範囲に入っていないと判断された場合
は、ステップS5に移行し、膜厚を変更した層より上層
の膜厚を変更して所望の光学特性が得られるようにす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面に反射防止膜
等の多層膜を有する光学素子の設計方法、その製造方法
及び多層膜を有する光学素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】レンズや反射鏡等の光学素子には、反射
防止を行ったり、波長ごとの透過率や反射率を所定の特
性にしたり、波長ごとの位相特性を所定の特性にしたり
するために、その表面に多層膜が成膜されることが多
い。この多層膜の層数は数十層に達するものがあり、多
層膜を構成する各膜の厚さを制御することにより、所定
の光学特性を得るようになっている。
【0003】図2に、このような多層膜を成膜する方法
の例を示す。図2において、(a)は基板ホルダーを下か
ら見た図、(b)はA−A’位置での装置の端面図を示
す。真空チャンバー1の中には基板ホルダー2が設けら
れ、回転軸3のまわりに回転している。基板ホルダー2
の下面には、表面に成膜を施す光学素子4が同心円状に
取り付けられているが、光学素子4を取り付ける場所の
1ヶ所にはモニター基板5が取り付けられている。真空
チャンバー1の下部にはスパッター装置6が設けられ、
そこから膜を構成する成分の粒子が飛び出して、光学素
子4とモニター基板5の表面に当たって膜を形成する。
【0004】真空チャンバー1の一部には、上下面に窓
7が設けられており、投光器8より照射された光が、光
学素子4又はモニター基板5を透過して受光器9で受光
され、膜厚が測定できるようになっている。
【0005】モニター基板5は、透明な平板からなるも
のであり、膜厚測定のために用いられるダミー光学素子
である。すなわち、光学素子4はレンズのように一般に
その表面が曲面であるため、膜厚を正確に測定すること
ができない。そのため、平板のモニター基板5を配置
し、その上に成膜された膜の厚さを測定することによ
り、それと同条件で成膜される光学素子4上の膜厚を間
接的に測定するものである。
【0006】図2に示すような装置を用いた光学素子の
成膜は、以下のようにして行なわれる。まず、所定の光
学特性(反射率、透過率、位相特性等)が得られるよう
に、計算により膜の材質、層数、各層の厚さが決定され
る。このようにして設計が終了すると、まず、第1層の
成膜が行なわれる。膜厚の測定が基板ホルダー2の回転
を止めずに行なえる場合には、モニター基板5が投光器
8と受光器9の位置を通り過ぎる毎に膜厚の測定を行
う。もちろん、所定の膜厚を形成するために必要な概略
の時間は計算により求まるので、膜厚の測定は、この時
間に近い時間が経過してから実施するようにしてもよ
い。
【0007】膜厚の測定が基板ホルダー2の回転を止め
ないと行なえない場合には、所定の膜厚を形成するため
に必要な時間に近い時間が経過してから、周期的に基板
ホルダー2の回転を止めて測定を行なう。この際、スパ
ッター装置6からの粒子が特定の光学素子4に付着しな
いようにするために、スパッター装置6とその直上の光
学素子4の間をシャッターにより遮蔽する。
【0008】このようにして、膜厚を測定しながら成膜
を続け、膜厚が許容差以内に入ったところで第1層目の
成膜を終了する。そして、スパッターに用いる材料を変
更して、同様にして第2層目の成膜を実施する。以下、
これを繰り返して、最終膜までの成膜を行なう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、
レンズ等の基本光学素子の上に多層膜を成膜するプロセ
スにおいては、各層を構成する膜厚の測定を行いながら
成膜を行っている。ところが、膜厚の選定の仕方によっ
ては、膜厚の測定誤差が大きくなってしまう場合があ
る。従来技術においては、設計段階においてこのような
ことを考慮することなく、各層の膜厚を決定していたの
で、特定の層の膜厚誤差が大きくなり、その結果、多層
膜全体として得られる光学特性が目標値から外れてしま
うことが発生するという問題があった。このことは、多
層膜の層数が30層程度以下である場合にはあまり問題
とならなかったが、層数が数十層に及ぶようになると、
深刻な問題となってきた。
【0010】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
もので、多層膜を構成する各層の膜厚を正確に測定する
ことができ、その結果として目標とする光学特性が確実
に得られるような光学素子の設計方法、光学素子の製造
方法、光学素子を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の第1の手段は、表面に多層膜を有する光学素子の設計
方法であって、多層膜を構成する各膜の設計厚さを、所
望の精度での膜厚測定が可能な厚さに決定するプロセス
を有してなることを特徴とする光学素子の設計方法(請
求項1)である。
【0012】前述のように、各層の膜厚は、成膜中又は
成膜後のモニター基板の膜厚を測定するが、本発明にお
いては、所望の精度で膜厚が測定できるような膜厚を、
各層の設計膜厚に選定している。よって、成膜プロセス
において、成膜された膜厚を、全ての層において所望の
精度で測定できるので、各膜を正確な厚さとすることが
でき、所望の光学特性を持った光学素子を製造すること
ができる。なお、「所望の精度」は、必ずしも全ての層
で同一とする必要はなく、例えば、各層ごとに、目的と
する光学特性に与える影響度を考慮して決定することが
できる。
【0013】前記課題を解決するための第2の手段は、
前記第1の手段によって決定された多層膜を構成する各
膜の厚さを基準値として成膜を行なうプロセスを有して
なることを特徴とする光学素子の製造方法(請求項2)
である。
【0014】「基準値として」とは、各層の膜厚の目標
値としてということである。本手段においては、各膜の
基準厚さが、膜厚が所望の精度で測定できるように決定
されているので、各膜を正確な厚さとすることができ、
所望の光学的特性を持った光学素子を製造することがで
きる。「所望の精度」とは、前記第1の手段で述べたの
と同じ意味である。
【0015】前記課題を解決するための第3の手段は、
前記第1の手段によって決定された多層膜を構成する各
膜の厚さを基準値として成膜を行ない、成膜を行った層
の厚さの基準値からのずれを求め、目的とする光学特性
への影響を最小限とするように、それ以後の少なくとも
1層の膜厚の基準値を変更して成膜を行うプロセスを有
してなることを特徴とする光学素子の製造方法(請求項
3)である。
【0016】実際の成膜においては、基準値と全く同じ
膜厚に成膜することはできず、微小なずれが避けられな
い。このため、層数が数十層にもなる多層膜を成膜する
場合、各層の微小なずれが積み重なり、結果として目的
とする光学特性が得られなくなることがある。このよう
なことが起きることを防ぐために、本手段においては、
n層目の成膜を行った後で、n層目の厚さが許容値を外
れている場合には、それに応じて(n+1)層目の目標
成膜厚さ、又はこれに加えてさらにその上の層の目標成
膜厚さを当初設計の厚さより変化させ、結果として目的
とする光学的特性への影響を最小限としている。
【0017】このようにして、n層目の実測膜厚に応じ
て(n+1)層目、あるいはそれ以後の層を含めた膜厚
の目標値を変化させることを、本明細書においてはフィ
ードフォワード制御とよんでいる。フィードフォワード
制御を行えば、各層の膜厚目標値は設計膜厚と異なる値
に修正されることがあるが、この修正量は一般的に小さ
いので、この修正により膜厚測定が不能な領域に入るこ
とはない。
【0018】本手段においては、成膜段階において最終
目標とされる光学特性が得られるようにそれ以後の膜厚
目標値を変えているので、安定して目標光学特性を有す
る光学素子を製造することができる。
【0019】前記課題を解決するための第4の手段は、
表面に多層膜を有する光学素子であって、多層膜を構成
する各膜の厚さが、所望の精度での膜厚測定が可能な厚
さとされていることを特徴とする光学素子(請求項4)
である。
【0020】本手段においては、その製造工程におい
て、前述のように各膜を正確な厚さとすることができる
と共に、前記第3の手段で説明したフィードフォワード
制御を正確に行うことができるので、所望の光学的特性
に極めて近い光学的特性を持った光学素子とすることが
できる。「所望の精度」とは、前記第1の手段で述べた
のと同じ意味である。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
するが、それに先立ち、この実施の形態で使用する膜厚
測定の方法の一例を説明する。これは、図2に示したよ
うな装置において、モニター基板の分光透過率を計測
し、それに基づいて膜厚を測定する方法であり、その原
理を図3に基づいて説明する。図3において、(a)はモ
ニター基板5の上に、多層薄膜Mが成膜されている状態
を示している。多層薄膜Mは、M1〜Mnまでのn層が
成膜された状態となっており、この状態で第n層の薄膜
Mnの厚さdnを測定するものとする。このとき測定さ
れるのは、多層薄膜M全体とモニター基板5によって決
定される分光透過率である。すなわち、このときの分光
透過率をTnとすると、Tnは
【0022】
【数1】 Tn = Tn(λ,d1,d2,…d(n-1),dn,a1,a2,…a(n-1),an) …(1) で決定される。ここにdi(i=1〜n)は第i層の厚
さであり、ai(i=1〜n)は第i層の材質によって
決定される値である。厳密に言えば、モニター基板5の
厚さと材質も関係するが、これは一定であるとして(1)
式では無視している。
【0023】第n層の厚さを測定する場合には、(1)式
においてd1〜d(n−1)とa1〜anは既知であ
る。ここで、dnの目標値をdn0として、(1)式にdn
0を代入して分光透過率を計算する。その結果が例えば
図3(b)のA(実線)で示される曲線になったとする。
これに対し、dnがdn0+Δ、dn0−Δとなったとし
て、これらの値を(1)式に代入して分光透過率を計算す
る。その結果は、それぞれ図3(b)のB(破線)、C
(一点鎖線)で示されるように、Δ、−Δの値に対応し
て、Aで示される曲線からずれる。
【0024】このように、dnを目標値dn0から±m
Δ(mは適当な整数)ずらせた場合に得られる分光透過
率曲線を予め計算しておき、実際に測定された分光透過
率曲線に一番近いものを選択し、それに対応する膜厚を
測定膜厚とする。具体的には、計算された分光透過率を
T(dn0+iΔ,λ)(i=−m〜m)、実測された
分光透過率をTa(λ)とすると、
【0025】
【数2】
【0026】を各iについて求め、Sの値が最も小さく
なるiを採用する。ただし、(2)式の積分範囲は分光透
過率の測定範囲内で、フィッティング計算(本明細書に
おいて「フィッティング計算」とは、あるパラメータに
よって決定される計算量と実際に観測された量の比較を
行い、最も観測された量に近い計算量を与えるパラメー
タを採用する計算をいい、比較の方法として最小2乗法
や、差の絶対値の和の最小を与えるパラメータを求める
方法、相互相関係数を求めてそれが最大となるものを採
用する方法等が代表的なものである)を行なう範囲とす
る。また、実際には(2)式の代わりにサンプル値を用い
た数値計算によって積分値を求めることはいうまでもな
い。
【0027】このような膜厚測定方法を前提として以
下、本発明の実施の形態の例を図を用いて説明する。図
1は本発明の実施の形態の1例を示すフローチャートで
ある。まず、ステップS1において、従来の方法を使用
して、目的とする光学特性(反射率、透過率、位相特性
等)が得られるように多層膜各層の膜厚を決定する。次
にステップS2に移り、所望精度で膜厚測定を行うこと
ができない層があるかどうかを判定する。例えば、図3
で説明したように分光透過率を使用して膜厚測定を行う
場合、ある層に必要とされる膜厚測定精度が±1nmであ
ったとする。その層の設計膜厚における分光透過率をT
(λ)とし、その層の膜厚が設計値より+1nm変化した
ときの分光透過率をT’(λ)、その層の膜厚が設計値
より−1nm変化したときの分光透過率をT”(λ)とす
ると、これらはすべて計算により求めることができる。
このとき、
【0028】
【数3】
【0029】の値を求め、この値が例えば測定器の測定
精度の所定倍以下かどうかを判断する。ただし、(3)、
(4)式の積分範囲は測定器の測定範囲内でフィッテング
計算を行なう範囲とする。この値が測定器の測定精度の
所定倍以下である場合は、膜厚を測定した場合に±1nm
以内の精度で測定することができないと判断し、その層
を、所望精度で膜厚を測定することが不可能な層である
とする。「所定倍」をいくらにするかについては、積分
計算を行なう場合の近似計算のやり方等に応じて、当業
者が適当に決定することができる。
【0030】このような層が1層もない場合は、得られ
た膜厚の値が適当なものであるとして処理を終了する。
このような層が1層でもある場合は、ステップS3に移
行し、このような層のうち最下層の膜厚を、膜厚測定が
可能な膜厚に変更する。即ち、最下層の膜厚を現在の設
計値から増加方向、減少方向に交互に変化させながら所
定量ずつ変化量を増やして行き、前記(3)、(4)式で得ら
れる量が、所望精度で膜厚を測定することが可能な量で
あると判断されるまでこれを繰り返す。
【0031】このようにして最下層の膜厚が変更される
と、ステップS4に移行し、多層膜全体で得られる、目
的とする光学特性が許容範囲に入っているかどうかをチ
ェックする。もし、目的とする光学特性が許容範囲に入
っている場合は、ステップS2に移行し、再び所望精度
で膜厚測定が不可能な層があるかどうかをチェックす
る。
【0032】ステップS4において、目的とする光学特
性が許容範囲に入っていないと判断された場合は、ステ
ップS5に移行し、膜厚を変更した層より上層の膜厚を
変更して所望の光学特性が得られるようにする。この計
算には従来用いられていた膜厚決定方法が用いられる。
【0033】この作業の結果、最終的に所望の光学特性
が得られたかどうかをステップS6においてチェックす
る。もし、最終的に所望の光学特性が得られない場合
は、ステップS7に移行して設計条件の基本変更を行
う。すなわち、層数を増したり、膜の材質を変更したり
する。その上でステップS1に移って、最初から作業を
やり直す。ステップS6で所望の光学特性が得られた場
合は、再びステップS2に戻って、所望精度で膜厚測定
が不可能な層があるかどうかをチェックする。図1に示
す処理を終了すれば、全ての層が層厚測定が可能で、か
つ、多層膜全体としては所望の光学特性が得られる多層
膜が得られる。
【0034】以上説明したようなプロセスにより各層の
膜厚が決定された後は、従来の技術の欄で説明したよう
な方法により、各層の設計膜厚が得られるように成膜工
程を繰り返していき、多層膜を構成すればよい。その
際、従来の技術の欄で説明したスパッターを利用した成
膜の他に、CVDによる成膜、真空蒸着による成膜、イ
オンビームアシストによる成膜、イオンプレーティング
による成膜を行ってもよい。
【0035】ところで、従来技術の欄で説明した成膜の
方法では、各層の成膜時に発生する設計膜厚からの微小
なずれが累積してしまうので、そのまま成膜を続けると
目的とする光学的特性が得られなくなることがある。こ
のようなことが起きることを防ぐためには、フィードフ
ォワード制御を行うことが好ましい。
【0036】すなわち、n層目の成膜を行った後で、n
層目の厚さが許容値を外れている場合には、それに応じ
て(n+1)層目の目標成膜厚さを当初設計の厚さより
変化させる。どの程度変化させるかは、例えば、(n+
2)層目以後の設計膜厚を変化させなくても、最終的な
目標光学特性が得られるような値に変化させる。フィー
ドフォワード制御を行えば、各層の膜厚目標値は設計膜
厚と異なる値に修正されることがあるが、この修正量は
小さいので、この修正により膜厚測定が不能な領域に入
ることはない。
【0037】以上の説明においては、多層膜の光学特性
を透過率により測定して膜厚を決定したが、本発明は、
光学特性を反射率により測定して膜厚を決定する場合、
また、反射率と透過率を測定してこれらを組み合わせて
膜厚を決定するような場合をも含むことは言うまでもな
く、これらは主に、求められる分光特性が反射率特性か
透過率特性かにより決定される。
【0038】
【実施例】本発明に基づいて光学素子上の多層膜形成を
行なった。成膜は図2に示されるスパッタリング装置に
より行なった。このスパッタリング装置は投光器8と受
光器9を有し、400nmから850nmまでの分光透過率を測定
できる光学モニタを具えている。膜厚の測定は、実測さ
れた分光透過率と計算された膜厚における分光透過率と
の差からフィッティングにより行った。%を単位とする
透過率の値を400nmから850nmまで2nm置きに取り、これ
らの値を用いてフィッティング計算をした。この場合デ
ータ数は225である。
【0039】次に、周知の多層膜の最適化設計法を用
い、多層膜の膜構成の設計を行なった。この膜構成を、
所望精度で膜厚測定が行なえるように、図lの手順で解
析し、補正した膜構成を得た。図1のステップS2に於
ける[所望精度で膜厚測定不可能な層があるか]の判断
は以下のようにして行なった。
【0040】ある層の成膜後のある目標膜厚における分
光透過率の計算値の2nm置きの数値をT(1)からT(225)と
し、膜厚測定に必要とされる膜厚精度だけ膜厚がずれた
場合の膜厚における分光透過率の計算値の2nmおきの数
値をT'(1)からT'(225)とする。そして、それぞれの波長
に対応して差の絶対値を求める。つまり、T(1)-T'(1)か
らT(225)-T'(225)を計算し、それらの絶対値を求める。
次に得られた225個の数値の和を取り、それをAとす
る。Aの値が100%未満のときは、特性のずれが小さす
ぎるので、十分なフィッティング精度が得られないとし
て、その層の目標膜厚を変更することにした。Aの値が
100より大きいときは、フィッティング計算が可能なも
のとしてその目標膜厚は変更しないこととした。
【0041】スパッタリング装置を用いた成膜に当たっ
ては、設計特性に極力近い光学特性を得るために、膜厚
制御方式としてフィードフォワード制御法を採用した。
このフィードフォワード制御での各層の成膜手順を図4
に示す。第1層から最終層までこの成膜手順を繰り返し
た。
【0042】図4のステップAlでは、多層膜の目標の
分光透過率特性としての設計分光透過率特性とこれに対
する成膜対象層の目標膜厚、及び目標膜厚からずらせた
場合の種々の分光透過率特性とこれらの各々に対する膜
厚を取得し、制御装置に記憶させておいた。
【0043】ステップA2では、目標膜厚となるように
時間制御で成膜を行なった。時間制御を行なうために、
予め成膜対象層の成膜速度を求めて制御装置に記憶して
おき、この成膜速度と目標膜厚とから決まる時間の間成
膜を行なった。
【0044】ステップA3では、この層の成膜終了段階
での多層膜の分光透過率特性を測定した。ステップA4
では、ステップA3で測定された分光透過率特性とステ
ップAlで取得された分光透過率特性とのフィッティン
グを行い、この層の膜厚を決定した。本実施例で用いた
スパッタリング装置の成膜速度の不安定さは±1〜1.5
%であったので、目標膜厚からの微小な膜厚ずれが避け
られなかった。
【0045】ステップA5では、この層で生じた微小な
膜厚ずれが、目標の分光透過率特性に与える影響を最小
限にするために、成膜済の各層の膜厚を固定した状態
で、再度、目標の分光透過率特性を得るための設計を行
なった。具体的に本実施例では、まだ成膜していない残
りの層の各膜厚を当業者に周知の前記多層膜の最適化設
計法により決定した。一般に、このようにして決定され
た残りの層の各膜厚は、最初の成膜対象層の成膜のステ
ップA1の時点で決定していた膜厚とは各々異なってい
た。しかしながら、各層の成膜で生じた微小な膜ずれに
よる目標の分光透過率特性への影響を最小限に抑えるた
めの再設計であるので、個々の層の膜厚は元の設計の膜
厚とそれほど大きな相違を生じていなかった。
【0046】このようにして再び、次の層の成膜のため
のフィードフォワード制御のステップA1に戻り、この
ステップA1からステップA5までの過程を最終層まで
繰り返して行なうことによって多層膜の成膜を終了し
た。上記手順を用いて、Nb25/SiO2の28層か
らなる多層膜を石英ガラス基板上に形成した。この多層
膜は基板上にNb25層とSiO2層が順に28層交互に
積層された、全ての層の膜厚が異なる任意膜厚多層膜で
あった。成膜された多層膜の分光透遇率特性の測定値を
図5の実線で示す。破線は設計値である。透過率1.0は1
00%に相当する。本発明の設計手法、成膜方法にて設計
特性と非常に近い光学特性が得られていることがわか
る。
【0047】この多層膜を形成したフィルターは、透過
率を測定するための分光光度計等、光学測定器のS/N
比の波長依存性を軽減するために用いられた。光学測定
器のS/N比は、一般に光源の強度の波長依存性と受光
器の感度の波長依存性の積で与えられる波長依存性を持
つ。ある光学測定器では、異なった波長間での透過率測
定値の精度を一定にする必要があったので、S/N比の
波長依存性を解消する必要があった。
【0048】この必要性を満たすためには、光源光強度
の波長依存性と受光器の感度の波長依存性を合成した特
性がフラット化するように調整された、即ち、光源の強
度の波長依存性と受光器の感度の波長依存性の積で与え
られる波長依存性の逆特性を持つフィルターを光源と受
光器との間に配置すればよいのである。
【0049】以上説明したように、本実施例では、ステ
ップA2で時間制御の成膜を行い、ステップA3で分光
透過率測定を行い、ステップA4でフィッティングによ
る膜厚決定を行なったが、これらステップA2、ステッ
プA3、及びステップA4は、上記説明したように段階
を迫ってでなく、同時に行なってもよい。そうすると、
成膜を行ないながら分光特性を測定し、同時にフィッテ
ィングにより成膜対象層の膜厚を随時その場で決定する
ので、ステップAlで取得された目標膜厚に達した段階
で成膜を終了すればよい。よって、予め成膜対象層の成
膜速度を求めておく必要がなく、成膜速度の不安定性に
よる成膜対象層の目標膜厚からの膜厚ずれが減少する可
能性がある。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
各膜の基準厚さが、膜厚が所望の精度で測定できるよう
に決定されているので、各膜を正確な厚さとすることが
できると共に、フィードフォワード制御を正確に行うこ
とができ、所望の光学的特性を持った光学素子を製造す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示すフローチャー
トである。
【図2】多層膜を成膜する方法の例を示す図である。
【図3】分光透過率に基づいて膜厚を測定する方法の原
理を示す図である。
【図4】フィードフォワード制御の実施の形態の例を示
すフローチャートである。
【図5】本発明を使用した結果得られた、多層膜の光学
特性の測定値を示す図である。
【符号の説明】
1…真空チャンバー 2…基板ホルダー 3…回転軸 4…光学素子 5…モニター基板 6…スパッター装置 7…窓 8…投光器 9…受光器 M…多層薄膜 M1〜Mn…薄膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡本 幹夫 東京都千代田区丸の内3丁目2番3号 株 式会社ニコン内 Fターム(参考) 2K009 AA09 BB02 CC03 DD03 DD04 DD07 DD09 EE00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に多層膜を有する光学素子の設計方
    法であって、多層膜を構成する各膜の設計厚さを、所望
    の精度での膜厚測定が可能な厚さに決定するプロセスを
    有してなることを特徴とする光学素子の設計方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の光学素子の設計方法に
    よって決定された多層膜を構成する各膜の厚さを基準値
    として成膜を行なうプロセスを有してなることを特徴と
    する光学素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の光学素子の設計方法に
    よって決定された多層膜を構成する各膜の厚さを基準値
    として成膜を行ない、成膜を行った層の厚さの基準値か
    らのずれを求め、目的とする光学特性への影響を最小限
    とするように、それ以後の少なくとも1層の膜厚の基準
    値を変更して成膜を行うプロセスを有してなることを特
    徴とする光学素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 表面に多層膜を有する光学素子であっ
    て、多層膜を構成する各膜の厚さが、所望の精度での膜
    厚測定が可能な厚さとされていることを特徴とする光学
    素子。
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