JP2001181986A - パラ系アラミド繊維の染色方法およびその方法で染色したパラ系アラミド繊維 - Google Patents

パラ系アラミド繊維の染色方法およびその方法で染色したパラ系アラミド繊維

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武 波多野
Teruo Hori
照夫 堀
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一彦 小菅
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昭次 川口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】衣料分野等への応用に耐えうる多色への染め分
けができ、実用的なパラ系アラミド繊維の染色方法及び
染色糸を提供する。 【解決手段】 染色前の水分含量を常に15%以上に維
持したパラ系アラミド繊維を超臨界状態の溶媒中で染料
により染色することを特徴とするパラ系アラミド繊維の
染色方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はパラ系アラミド繊維
の染色方法に関し、特に衣料分野の使用に耐えうる実用
的な鮮明度を得るパラ系アラミド繊維の染色方法および
その方法によって染色されたパラ系アラミド繊維に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊
維(以下PPTA繊維と記す)は、パラ系アラミド繊維
の一種であり高強度、高弾性率、高耐熱性、非導電性、
錆びないなどの高い機能性と、有機繊維特有のしなやか
さと軽量性を併せ持った合成繊維である。これらの特長
から、自動車や自動二輪、および自転車用のタイヤ、自
動車用歯付きベルト、コンベヤ等の補強材料として用い
られている。また、光ファイバーケーブルの補強やロー
プにも利用されている。さらに衣料分野において、防弾
チョッキや、刃物に対してきれにくい性質を利用した作
業用手袋や、作業服などの防護衣料及びスポーツ衣料、
また燃え難さを利用した消防服への応用、など機能性衣
料への応用が行われている。
【0003】これらの利用分野において上記性能に加
え、特に衣料分野においては染色性の付与が求められて
いるが、高い結晶性と分子間結合力が強固で緻密な構造
のためを染色することは容易ではなかった。
【0004】しかしながら、PPTA繊維を染色する方
法ないしは着色したPPTA繊維に関する研究提案は多
数なされてきている。
【0005】特開昭63−145412公報には、紡糸
直後の水分率が80%以上のパラ系アラミド繊維を張力
が緩和した工程に導いて主としてカチオン染料による染
色液に接触させる方法が提案されている。
【0006】また、特開平8−260362公報には、
繊維膨潤剤を用いて、カチオン系染料により、130℃
以上でパラ系アラミド繊維を染色する方法が開示されて
いる。特開平02−41414には、紡糸ドープ中に有
機顔料を添加する方法が記載されている。
【0007】特開平7−258980公報には、固有粘
度が2.5dl/g以下であるパラ系芳香族ポリアミド
を水で膨潤させた状態で染料液と接触させる方法が提案
されている。
【0008】特開昭63−145412公報及び特開平
8−260362公報の方法は、主としてカチオン染料
による染色方法である。アラミド系繊維にカチオン染料
を適用した場合高い染色耐光堅牢度は得難く、実際これ
らの公報には耐光堅牢度に関する記載がない。
【0009】特開平2−41414公報に記載の方法
は、いわゆる原着紡糸方法についての提案である。一色
あたりの量的な生産が前提となる上、色相が限られる。
【0010】特開平7−258980公報の方法は、ポ
リマー粘度が低いために繊維の強度が極端に低く、高強
度繊維であるパラ系アラミド繊維の特長を備えていな
い。
【0011】染色した繊維を利用する上において、種々
の色彩を求める消費者の要求にこたえることは重要であ
り、製糸工程と染色工程を切り離すことは重要な意味を
持つ。製糸工程で一旦繊維をチューブ状の巻き芯に巻き
取り、工程を打ち切ることによりその後繊維を染色工程
に移し、顧客の要求する種々の色彩に染め分けることが
可能になるのである。
【0012】これまで、PPTA繊維の特長である高強
度、高弾性率という特長を維持したフィラメントの形態
で、多種類の色展開が可能な後染めという手法すなわ
ち、紡糸後一旦チューブ状の巻き芯に巻き取るなどして
工程を打ち切ったあと、種々の色に染め分けることが可
能な染色工程に移して、高い染色耐光堅牢度を持ったア
ラミド系繊維の染色を行う方法は実現できていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の問題点に鑑み、衣料分野等への応用に耐えうる実用
的なパラ系アラミド繊維の染色方法を提供することを目
的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は次の手段を採る。 (1)染色前の水分含量を常に15%以上に維持したパ
ラ系アラミド繊維を超臨界状態の溶媒中で染料により染
色することを特徴とするパラ系アラミド繊維の染色方
法。 (2)溶媒が液化炭酸ガスであることを特徴とする上記
(1)記載の染色方法。 (3)染料が分散染料であることを特徴とする上記
(1)または(2)記載の染色方法。 (4)パラ系アラミド繊維がポリパラフェニレンテレフ
タルアミド繊維である上記(1)〜(3)いずれか記載
の染色方法。 (5)パラ系アラミド繊維の引っ張り強度が1.5N/
tex以上、結晶サイズ(110方向)が3〜5.5n
mである上記(1)〜(4)いずれかに記載の染色方
法。 (6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の染色方法
によって染色されたパラ系アラミド繊維。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明におけるパラ系アラミド繊
維とは、パラ系全芳香族ポリアミド繊維であり、例え
ば、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維(東レ・デ
ュポン(株)製商品名ケブラー(R))、およびコポリ
パラフェニレン−3,4´−ジフェニルエーテルテレフ
タラミド繊維(帝人(株)製商品名・テクノーラ)など
がある。
【0016】ポリパラフェニレエンテレフタルアミド
(PPTA)とは、テレフタル酸とパラフェニレンジア
ミンを重縮合して得られる重合体であるが、少量のジカ
ルボン酸およびジアミンを共重合したものも使用でき
る。本発明のポリパラフェニレエンテレフタルアミド繊
維(以下PPTA繊維と記す)は、5以上の固有粘度
(ηinh)を持つポリパラフェニレンテレフタルアミド
と濃硫酸から光学異方性ドープをつくり、該ドープを紡
糸口金の細孔を通して一旦空気中に紡出し、直ちに水中
に導き凝固させ、ネルソンローラに導いて水酸化ナトリ
ウム水溶液で中和処理し、水洗工程をへてホットロール
によってわずかに乾燥し、フィラメントとしてチューブ
状の巻き芯に巻き取る工程を途切れることなく通過させ
て得られる。巻き取ったPPTA繊維は、染色工程まで
の間に乾燥しないようポリエチレンフィルムなどによっ
て包装される。
【0017】この段階で繊維の引張り弾性率は40N/
texを超えており高弾性率糸としての性能を備えてい
るが、弾性率をさらに向上させるために、乾燥後350
〜400℃で5〜10秒熱処理すると結晶化度は50%
を越え、結晶(110方向)サイズは5.5nm以上で
あるのが普通である。
【0018】本発明に用いるパラ系アラミド繊維の固有
粘度(ηinh)は5以上が望ましい。固有粘度5未満で
は、高強度、高弾性率の繊維物性が得にくい。
【0019】本発明に用いるパラ系アラミド繊維は、結
晶サイズ(110方向)が、3.0〜5.5nmであ
り、かつ水分量が常に15%以上であることが必要であ
る。結晶サイズが3.0nm未満では繊維の緻密化が不
十分で高強度、高弾性率の繊維物性が得られないし、ま
た、5.5nmを越えると染色が困難となる。
【0020】ここで、「水分量を常に15%以上に維持
する」とは、紡糸以降水分が15%未満になるように乾
燥した履歴を持たないということである。水分率が15
%未満になるように乾燥すると構造が緻密となり、染色
が困難となる。再び水分を付与しても染色性は回復しな
い。好ましくは、繊維の水分率は15〜60%が望まし
い。水分率60%以上では、製造した原糸をチューブ状
の巻き芯に巻き取るときにガイド類への摩擦抵抗が高く
巻き取り張力の変動が大きく巻き芯への巻き取りが困難
となる傾向がある。さらに好ましくは、水分率20〜5
0%が望ましい。このような水分率にするには、紡糸し
たパラ系アラミド繊維を、表面温度100℃前後のホッ
トローラに5〜20秒間接触させて低温乾燥する事が望
ましい。
【0021】本発明の染色したパラ系アラミド繊維は、
各種用途に有用である。染色したパラ系アラミド繊維フ
ィラメントは、各色相のミシン糸、コード、ロープ、織
物、とすることができる。本発明によって得られた色相
豊かなPPTA繊維織物は、スポーツ衣料、鞄地、作業
服、消防服、各種防護衣料、テント生地などに利用でき
る。目立たない色相に染色した防弾チョッキ生地は、万
一被弾して外皮が破れ、防弾生地としての繊維織物が露
出しても、目立たない色相のために敵に発見されにく
い。
【0022】染色したパラ系アラミド繊維フィラメント
を、クリンパーにかけて、市販のパラ系アラミド繊維と
同様の捲縮(6クリンプ/25mm)を与え、紡績に適
した長さ、すなわち20〜150mmにカットして着色
した繊維ステープルを得ることができる。染色したパラ
系アラミド繊維を、クリンプをかけることなく0.1か
ら3mmにカットする事によって、電気植毛用のフロッ
クとすることもできる。
【0023】また、前記したような水分率を持つ染色前
のパラ系アラミド繊維にクリンプをかけて後、所定の繊
維長にカットしてステープルとなし、ポリ袋などに密閉
して染色行程まで所定の水分率を維持したステープルを
染色行程に移して染色してもよい。フィラメントを所定
の長さにカットした後染色して、電気植毛用フロックと
する事もできる。
【0024】本発明における超臨界流体とは、例えば炭
酸ガスを温度31.3℃以上72.9気圧以上、の環境
におくことで流体と気体の臨界状態となり、これを超臨
界流体という。超臨界流体技術による染色は、公知の染
色技術に従ってなされる。例えば被染物を高圧釜に入
れ、超臨界状態まで圧縮された液化炭酸ガスを所定の温
度に加熱しこれに染料を溶かして前期高圧釜中を循環さ
せるのである。
【0025】超臨界流体技術による染色では、分散染料
による染色が適している。一般に、分散染料によって染
色した繊維は、光による劣化すなわち耐光堅牢度が高
い。従って分散染料を用い、本発明の方法により染色し
たパラ系アラミド繊維の染色耐光堅牢度は高い。
【0026】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
する。実施例における評価方法はつぎの方法によった。 [結晶サイズ]広角X線解析法によった。 X線解析装置:(株)理学電機社製 4036A2型 X線原:CuKα線 湾曲結晶モノクロメータ(グラファイト使用) [固有粘度(ηinh)]98.5重量%の濃硫酸に濃度
(C)=0.5g/dlでポリマーを溶かした溶液を30℃
で常法により測定する。 [繊維の繊度、強伸度特性]糸条の繊度、引張り強度、引
張り弾性率(初期引張り抵抗度)は、JIS L101
3によった。 [水分率]JIS L 1013によった。 付着水分率(%)=(W−W’)X100/W’ ここに、W:試料採取時の質量 W’:試料の絶乾時質量 [染着性]JIS Z 8729に従いL,a*、b*表
色系で示した。測定は、スガ試験器(株)製多色光源測
色器を用いた。 [操作]通常の方法で得られたPPTA(ηinh=6.
5)を99.9%の濃硫酸に溶かし、ポリマー濃度1
9.0%、温度80℃の紡糸ドープとし、孔径0.06
mmの細孔数1000個を有する口金からわずかの間空
気中へ紡出した後、4℃の水中に導いて凝固させ、ネル
ソンローラに導き、8%の水酸化ナトリウム水溶液で中
和処理し、水洗後表面温度110℃のホットローラを1
5秒間通過させる予備乾燥工程をへて、プラスチックの
チューブの巻き芯に巻き取る工程を途切れることなく通
過させて、フィラメント数1000からなる総繊度15
6tex(テックス・絶乾換算)のPPTA繊維A(フ
ィラメント糸)を得た。
【0027】PPTA繊維Aをチューブに巻き取ること
なく、つづいて設置されたホットローラに導いてさらに
350℃10秒間の熱処理を行った後巻き取って、乾燥
したPPTA繊維B(フィラメント糸)を得た。
【0028】これらPPTA繊維の物性を表1に示す。
【0029】
【表1】 これらのPPTA繊維フィラメント糸を下記の超臨界流
体の条件下で青色及び赤色に染色した。owfは乾燥し
た繊維重量に対する染料の重量%を示す。 溶媒 :液体炭酸ガス 温度 :150℃ 圧力 :250気圧 染料 :青色 CI Disperse Red 60 :赤色 CI Disperse Red 60 浴比 :3%owf 時間 :30 min 染色処理したサンプルは、アセトンで洗浄して染着しな
かった染料を除去した後、L、a*、b*値を測定し
た。L値は、数値が小さいほど光の反射が少なく、濃い
色合いであることを示す。同一色相の場合は、数値が小
さいほど良く染着されていることを示す。a*は数値が
高いほど赤色系統によく染色されていることを示す。b
*は数値が低いほど青色系統によく染色されていること
を示す。 実施例1、比較例1 PPTA繊維A及びBを前記処方により赤色に染色し
た。染色結果を表2に示す。
【0030】
【表2】 染色前の水分率が高いPPTA繊維Aの染色前後のL値
を比較すると、染色後のL値は染色前より低く、従って
染色前よりも光の反射率が低く、PPTA繊維Aが染料
を良く吸収していることがわかる。また、数値が大きい
ほど赤色系に染まっていることを示すa*値を、PPT
A繊維Aの染色前後において比較すると、染色後のa*
値は染色前より高く、赤色に良く染色されていることを
示している。
【0031】一方染色前の水分率が低いPPTA繊維B
の染色前後のL値を比較すると、染色前後のL値の差は
少なく、染料の吸収が少ないことを示しているまた、数
値が大きいほど赤色系に染まっていることを示すa*値
を、PPTA繊維Bの染色前後において比較すると、染
色前後においてその差はほとんどなく赤色染料で染色し
たにもかかわらず赤色系統に提色していないことがわか
る。 実施例2、比較例2 PPTA繊維A及びBを前記処方により青色に染色し
た。染色結果を表3に示す。
【0032】
【表3】 PPTA繊維Aの染色前後のL値を比較すると、染色後
のL値は染色前より低く、従って染色前よりも光の反射
率が低く、PPTA繊維Aが染料を良く吸収しているこ
とがわかる。また、数値が低いほど青色系に染まってい
ることを示すb*値を、PPTA繊維Aの染色前後にお
いて比較すると、染色後のb*値は染色前より低く、青
色に良く染色されていることを示している。
【0033】一方PPTA繊維Bの染色前後のL値を比
較すると、染色前後のL値の差は少なく、染料の吸収が
少ないことを示しているまた、数値が低いほど青色系に
染まっていることを示すb*値を、PPTA繊維Bの染
色前後において比較すると、染色前後においてその差は
ほとんどなく青色染料で染色したにもかかわらず青色系
統に呈色していないことがわかる。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、顧客の要望する色種に
容易に染め分けることができ、耐光堅牢度が高く、実用
性の高い、かつ実用に耐えうる染色したパラ系アラミド
繊維を得ることができる。
フロントページの続き (72)発明者 川口 昭次 愛知県東海市新宝町31番地6 東レ・デュ ポン株式会社東海事業場内 Fターム(参考) 4H057 AA02 BA08 CA29 CB45 CB46 CB49 CC02 DA01 DA22 HA01 HA02 HA90 JA10 JA14

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 染色前の水分含量を常に15%以上に維
    持したパラ系アラミド繊維を超臨界状態の溶媒中で染料
    により染色することを特徴とするパラ系アラミド繊維の
    染色方法。
  2. 【請求項2】溶媒が液化炭酸ガスであることを特徴とす
    る請求項1に記載の染色方法。
  3. 【請求項3】染料が分散染料であることを特徴とする請
    求項1または2に記載の染色方法。
  4. 【請求項4】パラ系アラミド繊維がポリパラフェニレン
    テレフタルアミド繊維である請求項1〜3いずれか記載
    の染色方法。
  5. 【請求項5】パラ系アラミド繊維の引っ張り強度が1.
    5N/tex以上、結晶サイズ(110方向)が3〜
    5.5nmである請求項1〜4いずれかに記載の染色方
    法。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれかに記載の染色方法
    によって染色されたパラ系アラミド繊維。
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