JP2001173733A - 小型モータ用遊星歯車減速機構 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来よりも静音性と耐久性を向上させた、取
り付け容易な一体型の小型モータ用の減速機構を提供す
る。 【解決手段】 ヘリカル型ギヤの太陽歯車22と遊星歯車
23とを備えたキャリアユニット20を、複数段、同一方向
に重ね、円筒内周面にヘリカル型ギヤの内歯車10aを備
えたハウジングケース10に納める。この際、出力軸３か
らハウジングケース10内部に向けて突出して、キャリア
ユニット20の回転中心を回転自在に貫くセンターシャフ
ト31を出力軸３と同軸上に設け、出力軸３と一体のセン
ターシャフト31に、ボス32の位置決め部材を、各キャリ
アユニット20間に圧入固定して、キャリアユニット20の
位置がセンターシャフト31のスラスト方向のどちらかに
移動してズレることを防ぐ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば直径２０mm
φ以下の小型モータの駆動軸出力を、減速して高トルク
化する遊星歯車減速機に関するものである。

【従来の技術】

【０００２】例えば、オフィスにおけるパソコン・ＯＡ
周辺機器等のメディア挿入出駆動装置等においては、動
力源である電動機（小型モータ）の軸回転出力を所望の
回転域に減速し、高トルク化して駆動力を伝動しなけれ
ばならない箇所が多々ある。また他の用途としても、映
像と音声を同時に記録する業務用ビデオカメラなどの精
密機器に搭載する場合などは、より駆動動作が繊細で、
より静粛性の優れた減速機付の小型モータが望まれてい
る。

【０００３】こうした要求の場合、モータと一体化で
き、かつ小型軽量で比較的大きい減速比を得るために、
円筒型の小型歯車を用いた多段の遊星歯車式減速機構を
用いることが考えられる。図３は、一般的な従来例であ
る３段式の遊星歯車減速機構100の断面概略図を示すも
のである。

【０００４】この遊星歯車減速機構100においては、円
筒内径に内歯車101aが形成されたハウジングケース101
に、これと同軸上に３組のキャリアユニット110が同一
方向一列に収納され、出力側をベアリング６を一体に内
包したフランジ４で配置固定するとにより、多段式の遊
星歯車減速構造が形成されている。

【０００５】キャリアユニット110は、円板状の遊星キ
ャリア111の一面の中心軸上に太陽歯車112（サンギア）
を固定保持しており、また、他面側の周縁部に遊星歯車
113（プラネットギヤ）を120°等配分で計３個、回転自
在に備えた構成である。

【０００６】また第１段に位置する側のキャリアユニッ
ト110端部、つまりハウジングケース101の一端開口部側
には、外部モータとの接続具であるエンドキャップ５が
あり、駆動用モータがこれに取り付けられた時、当該駆
動用モータの回転軸２に固着されたカナ歯車２aが、キ
ャリアユニット110の第１段遊星歯車113と噛み合うよう
な構造となり、この第１段のキャリアユニット110の太
陽歯車112は次段のキャリアユニット110の遊星歯車113
…に噛み合うようになる。

【０００７】このようにして各段のキャリアユニット11
0は、各々の遊星歯車113、遊星キャリア111および太陽
歯車112を介して、その回転力を減速・高トルク化して
次段のキャリアユニット110に伝達し、そして、最終段
のキャリアユニット110の遊星キャリア111は太陽歯車11
2の代わりに出力軸３を、その中心軸上に固定保持し、
最終的な減速出力を突出した出力軸３に伝えている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の減速機
構においては、一般的な従来の歯車減速機と比べて機械
強度的には優れているものの、騒音が高くなってしまう
問題点を有していた。これは、ハウジングケースに内包
するキャリアユニットの一段一段が、ハウジングケース
内である程度遊びを持たせて接触する構造に重ねて組み
込まれているためであり、これらの摩擦抵抗が駆動騒音
の問題として取り上げられている。

【０００９】特に、高精度な駆動でかつ静粛性が要求さ
れる、例えば業務用ビデオカメラのズームレンズ駆動用
のギヤ付モータなど、駆動モータおよびこれに用いられ
る減速機構部は、上述した業界の特殊な用途から、より
高精度でかつ静音性と耐久性が優れたものが求められて
いる。

【００１０】この課題に対し、各歯車形状をヘリカル型
にして組み合わせることが考えられるが、周知のとお
り、ヘリカル型歯車（以下ヘリカルギヤという）の噛み
合わせにより、軸方向のスラスト力が発生し、回転方向
によりスラスト力の方向が変わってしまう。このため従
来のキャリアユニットのような単純な組み合わせにおい
ては、例えば前記図３で示した内部構造に適用した場
合、スラスト板８側にスラスト力が加わる方向に回転さ
せた場合、摩擦抵抗が大きくなり、伝動回転動作が停止
するおそれがある。

【００１１】そこで、本発明の目的は、遊星歯車減速機
構100に代表される従来の小型モータ用の減速機構を改
良し、従来に比べて格段に静音性及びその他の動力性能
を向上させ、小型の駆動用モータに取り付けるヘリカル
ギヤを用いた遊星歯車減速機構を提供することにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、請求項１に記載の発明は、円板状の遊星キャリア
（21）の一面の回転中心に太陽歯車（22）を固定し、他
面側の同心円周縁部に遊星歯車（23）を少なくとも一つ
以上自転可能に備えたキャリアユニット（20）を、複数
段、内周壁面に遊星歯車と噛み合う内歯車（10a）を備
えた円筒状のハウジングケース内（10）に納め、前記ハ
ウジングケース開口側一端面に配置された駆動用小型モ
ータの回転軸(２)によって遊星歯車及び太陽歯車が回転
し、最終段で前記ハウジングケース内部から外部に突出
した出力軸を回転させる遊星歯車減速機構(１)であっ
て、前記太陽歯車と前記遊星歯車と前記ハウジングケー
ス内歯車とがそれぞれヘリカル型の歯車構造で組み合わ
されていることを特徴とする。

【００１３】また、請求項２記載の発明は、請求項１記
載の小型モータ用遊星歯車減速機構において、前記各段
のキャリアユニットの軸方向の位置ずれを防ぐ、回転中
心軸線状に配置された位置決め手段を備えることを特徴
とする。

【００１４】また、請求項３記載の発明は、請求項２記
載の小型モータ用遊星歯車減速機構において、前記位置
決め手段として、減速機出力軸と同軸方向にハウジング
ケース内部を貫通するように突出し、最終段の出力軸一
体のキャリアユニットに固定され、かつ各段のキャリア
ユニットの回転中心を回転自在に貫く軸（例えばセンタ
ーシャフト31）と、この軸に挿通し、軸方向の任意の位
置に固定されるリング状の前記キャリアユニットの位置
ズレを防ぐ位置決め部材（例えばボス32）とを備えたこ
とを特徴とする。

【００１５】以上のような構成におけるヘリカルギヤを
用いた遊星歯車機構は、特に静音性に優れ、また同時に
モータ回転軸の回転方向により生じるヘリカルギヤ同士
のスラスト力の発生が、軸上に配置したボス（位置決め
部材）による規制範囲の設定により相殺され、減速機構
内の動力伝達が円滑に行える。

【００１６】従って、請求項１〜３に係る小型モータ用
遊星歯車減速機構は、太陽歯車と遊星歯車とハウジング
ケース内歯車をヘリカル型の歯車にしても、従来と比べ
て、静音性、耐久性に優れることはもちろん、動損が少
ないヘリカル型の遊星歯車減速機がえられる。

【００１７】このように、請求項２および３に係る小型
モータ用遊星歯車減速機構は、キャリアユニットがそれ
ぞれ軸方向で位置決めされているため、ヘリカル型の太
陽歯車と遊星歯車の噛み合わせ回転方向による単一軸方
向への力（このスラスト力の向きは歯車の回転方向、す
なわちモータの回転駆動方向によって逆転する）が加わ
っても、キャリアユニットの中心軸上の位置ズレは生じ
ない。従って、前記記載のスラスト板に強く当たること
はないので、当該小型モータ用遊星歯車減速機構の伝達
効率は回転駆動方向によらず、常に安定する。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下、図１の断面概略図および図
２の分解斜視図を用いて本発明の一実施例である小型モ
ータ用遊星歯車減速機構１について説明する。小型モー
タ用遊星歯車減速機構１は、例えば直径２mm〜２０mm程
度の小型モータの回転軸側にネジにより取り付けられ
る。図に示すように多段式の遊星歯車減速機構は、円筒
内径にヘリカル型の内歯車10aが形成されたハウジング
ケース10に、これと同軸上に３組のキャリアユニット20
を同一方向一列に円筒内部に収納し、出力側をフランジ
４で、またモータ取り付け側をエンドキャップ５でパッ
ケージングしたものである。

【００１９】キャリアユニット20は従来の図３における
キャリアユニット110と基本的には部品構成が同じであ
るが、歯車形状が太陽歯車22および遊星歯車23および内
歯車10a共に、ヘリカル型の歯車形状（ヘリカルギヤ）
を採用し、また遊星キャリア21の軸中心に貫通孔21ａを
設け、センターシャフト31を中心軸とした支持構成であ
る。

【００２０】また、各キャリアユニット20の貫通孔21ａ
は、出力軸３の端面に固定され、同軸上に突出したセン
ターシャフト31（中心軸）により貫かれており、また、
各キャリアユニット20の間、及びセンターシャフト31端
末部には、それぞれ、センターシャフト31に貫通し配置
固定された、リング状のボス32（位置決め部材）が設け
られ、各キャリアユニット20を軸方向（スラスト方向）
に位置決め規制している。

【００２１】また、遊星歯車減速機構１の組立方法は、
以下の通りである。まず、最終段のキャリアユニット20
（一面に太陽歯車がなく出力軸と一体のユニット）の出
力軸３にスラスト板７を先端方向から挿入し、また他面
の円板状端面側の中心にはセンターシャフト31を圧入固
定し取り付け、このローター部をフランジ４内包のベア
リング６内径に配置し、出力軸３を回転自在に嵌合支持
させ、次にフランジ４外周部段に円筒状の筐体であるハ
ウジングケース10を組み込む。

【００２２】次に、ハウジングケース10内中心に配置し
たセンターシャフト31に、ボス32，キャリアユニット2
0，ボス32，キャリアユニット20，最後に端末のボス32
の各部品を、この順番になるように、３個のボス32はセ
ンターシャフト31に圧入して固定、またキャリアユニッ
ト20はセンターシャフト31に対して回転自在に差し込ん
で軸支する。その後、スラスト板８を挟んで最後にエン
ドキャップ５をハウジングケース10の他端側に取り付け
固定する。

【００２３】このような構成の遊星歯車減速機構１によ
れば、ヘリカルギヤ特有の回転方向によるスラスト力の
発生による保持部との接触摩擦による回転力の動損の差
は少なくなり、同時に静音性、耐久性は向上する。

【００２４】このように、センターシャフト31の規制位
置にボス32を圧入固定配置したので、キャリアユニット
20はセンターシャフト31に対して位置決めされ、各キャ
リアユニットが位置ズレして、エンドキャップ５側のス
ラスト板８に強く当接して摩擦抵抗が大きくなることは
ない。従って、小型モータ用遊星歯車減速機構１の動作
は、ヘリカルギヤで構成しても回転動作が安定する。

【００２５】なお、本発明は図１及び図２に示す本実施
例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない
範囲で任意に設計変更することは可能である。例えば、
本発明に係る位置決め手段として、前記図１、図２では
センターシャフト31とボス32を用いたが、例えばハウジ
ングケース10を出力軸３に垂直な断面方向に複数に分割
し、各分割部のハウジングケース各段の分割面から、ス
トッパー部を突出させて、キャリアユニット20に当接さ
せて位置決めしてもよい。また、センターシャフト31を
分割して組み合わせ、端部にボス32と同等の段差位置決
め部を設けてもよい。

【００２６】

【発明の効果】以上より、本発明の構成による遊星歯車
減速機構によれば、減速機機構を構成する各歯車をヘリ
カルギヤにできるので、ハウジング内部でのギヤの噛み
合わせにより発生する機械音は低減でき、静音性が向上
する。

【００２７】また、本発明の構成による遊星歯車減速機
構によれば、前記センターシャフトの規制位置にボス部
品を圧入固定して配置したので、キャリアユニットはセ
ンターシャフトに対して軸上で位置決めされ、これによ
り動力伝達機構の各キャリアユニットの位置決め配置が
確実に行われる。

【００２８】よってヘリカルギヤ特有の回転方向による
スラスト力の発生による位置ズレ、特に減速歯車機構の
駆動部を保持するフランジ側あるいはエンドキャップ側
端面のスラスト板に対する大きな摩擦抵抗を引き起すこ
とは少なくなるので、キャリアユニットの回転運動に対
する動損は低減できる無くなる。

【００２９】従って、これらにより小型モータ用遊星歯
車減速機構の動作は、ヘリカルギヤで組み合わせても回
転動作が安定し、また同時に静音性、耐久性が向上し、
さらに小型モータへの取り付けが容易な一体型の遊星歯
車減速機構付の小型モータが提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例である小型モータ用遊星歯車
減速機構の断面概略図である。

【図２】同小型モータ用遊星歯車減速機の分解斜視図で
ある。

【図３】従来例である多段式の遊星歯車減速機構の断面
概略図である。

【符号の説明】

１ 遊星歯車減速機構 ２ モータ回転軸 ３ 出力軸 10 ハウジングケース 10a 内歯車 20 キャリアユニット 21 遊星キャリア 22 太陽歯車 23 遊星歯車 31 センターシャフト（軸） 32 ボス（位置決め部材）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 3J027 FA12 FA13 FA14 FB23 FB28 GA03 GB03 GC13 GC25 GC26 GC29 GD04 GD08 GD12 GE05 GE26 5H607 AA04 BB01 CC01 CC03 CC05 DD03 DD08 DD17 EE33 EE36 FF01 GG03

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円板状の遊星キャリアの一面の回転中心
   に太陽歯車を固定し、他面の同心円周縁部に遊星歯車を
   少なくとも一つ以上自転可能に備えたキャリアユニット
   を、複数段、内周壁面に遊星歯車と噛み合う内歯車を備
   えた円筒状のハウジングケース内に納め、前記ハウジン
   グケースの一端面に配置された駆動用小型モータの回転
   軸によって遊星歯車及び太陽歯車が回転し、最終段で前
   記ハウジングケース内部から外部に突出した出力軸を回
   転させる遊星歯車減速機構であって、前記太陽歯車と前
   記遊星歯車と前記ハウジングケース内歯車とがそれぞれ
   ヘリカル型の歯車構造で組み合わされていることを特徴
   とする小型モータ用遊星歯車減速機構。
2. 【請求項２】 請求項１記載の小型モータ用遊星歯車減
   速機構において、前記各段のキャリアユニットの軸方向
   の位置ずれを防ぐ、回転中心軸線状に配置された位置決
   め手段を備えることを特徴とする小型モータ用遊星歯車
   減速機構。
3. 【請求項３】 請求項２記載の小型モータ用遊星歯車減
   速機構において、前記位置決め手段として、減速機出力
   軸と同軸方向にハウジングケース内部を貫通するように
   突出し、最終段の出力軸一体のキャリアユニットに固定
   され、かつ各段のキャリアユニットの回転中心を回転自
   在に貫く中心軸と、この中心軸に挿通し、中心軸の軸方
   向の任意の位置に固定されるリング状の前記キャリアユ
   ニットの位置ズレを防ぐ位置決め部材とを備えたことを
   特徴とする小型モータ用遊星歯車減速機構。