JP2001169797A - S―アデノシル−l−メチオニンの酵素的製造法 - Google Patents

S―アデノシル−l−メチオニンの酵素的製造法

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JP2001169797A
JP2001169797A JP2000155181A JP2000155181A JP2001169797A JP 2001169797 A JP2001169797 A JP 2001169797A JP 2000155181 A JP2000155181 A JP 2000155181A JP 2000155181 A JP2000155181 A JP 2000155181A JP 2001169797 A JP2001169797 A JP 2001169797A
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methionine
dna
polyphosphate
kinase
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Toshitada Noguchi
利忠 野口
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Yamasa Shoyu KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高価なアデノシン5’−トリリン酸(ATP)
を基質として使用せず、アデノシン5’−モノリン酸
(AMP)からのATP生成系とATPとL−メチオニ
ンからS―アデノシル−L−メチオニン(SAM)を合
成する系を共存させたSAMの酵素的合成法を提供す
る。 【解決手段】酵素としてポリリン酸キナーゼ、アデニレ
ートキナーゼ及びメチオニンアデノシルトランスフェラ
ーゼを用い、反応系にポリリン酸、L−メチオニン及び
AMPを添加し、これらを反応させることでSAMを合
成し、合成したSAMを採取することを特徴とするSA
Mの酵素的製造法及びそのための反応系に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、S―アデノシル−
L−メチオニン(SAM)の酵素的合成法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】SAMは、生体内における種々のトラン
スメチラーゼによるメチル化反応のメチル基供与体とし
て重要な役割を演じている生理活性物質である。したが
って、SAMは、種々の代謝不調疾患に対する化学療法
剤として有用性があり、肝血症、高脂血症、動脈硬化症
などに対する治療効果が報告されている。
【0003】従来、SAMの製造法としては、メチオニ
ン含有培地で微生物を培養し、菌体内に蓄積したSAM
を抽出する、いわゆる培養法が一般的であった(J. Bio
l.Chem., 229, 1051-1057 (1957), Agric. Biol. Che
m., 38, 1669-1672 (1974))。しかしながら、従来の培
養法においては、菌株、培養条件などを変えてもSAM
の蓄積量は極めて低く、またSAMを菌体外に漏出させ
ることは極めて困難なことであった。
【0004】培養法に代る方法としては酵素的合成法が
知られている。すなわち、酵母など微生物より単離精製
したSAM合成酵素(メチオニンアデノシルトランスフ
ェラーゼ)を用い、アデノシン5’−トリリン酸(AT
P)とL−メチオニンを基質としてSAMを酵素的に合
成する方法である(J. Biol. Chem., 231, 481-492 (19
58), 特開昭51―125717)。この方法は、培養
法と比べ、SAMの蓄積量が多く、菌体からのSAM抽
出操作が必要ないなどの利点はあるものの、酵素の調製
が煩雑であること、得られる酵素の活性が微弱であるこ
と、ATP分解活性などの妨害酵素活性を除去する必要
があること、さらに基質であるATPが極めて高価であ
ることなどの様々な問題を有し、必ずしも実用的な方法
とはなり得なかった。
【0005】しかしながら、近年の遺伝子工学の発展に
より、クローン化したSAM合成酵素遺伝子を用いて該
酵素の調製がより簡便になり(J. Biol. Chem., 255, 9
082-9092 (1980), J. Biol. Chem., 259, 14505-14507
(1984), J. Biol. Chem., 262, 16704-16709 (1987), M
ol. Cell. Biol., 8, 5132-5139 (1988) )、酵素調製
の問題は解決されつつあるものの、依然として高価なA
TPを基質として使用するなどの他の実用上の問題は解
決されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】一般に、ATPは極め
て高価であるのに対し、アデノシン5’−モノリン酸
(AMP)は比較的安価に供給され得る。そのため、S
AM合成酵素反応系に、高価なATPを添加するのでは
なく、安価なAMPからATPを生成する系を共存させ
ることで、反応系でATPを合成し、そのATPをSA
Mの酵素的合成に利用できるならば、上記問題を解決す
るだけでなく、SAMの製造コストを大幅に軽減できる
と考えられる。したがって、本発明は、高価なATPを
基質として使用せず、AMPからのATP生成系とAT
PとL−メチオニンからSAMを合成する系を共存させ
たSAMの酵素的合成法を提供することを目的とするも
のである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を
達成すべく研究を重ねた結果、大腸菌ポリリン酸キナー
ゼ(Biochim. Biophy. Acta., 26, 294-300 (1957))
が、ポリリン酸の存在下で大腸菌アデニレートキナーゼ
と協調することによりAMPからATPを合成する活性
を有することを見出し、該系をSAMの酵素的合成系と
共存させることで上記目的を達成できることを見いだ
し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、酵素と
してポリリン酸キナーゼ、アデニレートキナーゼ及びメ
チオニンアデノシルトランスフェラーゼを用い、反応系
にポリリン酸、L−メチオニン及びAMPを添加し、こ
れらを反応させることでSAMを合成し、合成したSA
Mを採取することを特徴とするSAMの酵素的製造法及
びそのための反応系に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で使用するポリリン酸キナ
ーゼ、アデニレートキナーゼおよびメチオニンアデノシ
ルトランスフェラーゼはすべて公知の酵素であり、特定
のものに制約されない。すなわち、ポリリン酸キナーゼ
としては、ポリリン酸及びアデニレートキナーゼの存在
下、ポリリン酸をリン酸供与体としてAMPをリン酸化
してアデノシン5’−ジリン酸(ADP)及びATPを
合成する活性を有するものであればよく、アデニレート
キナーゼとしては、ポリリン酸及びポリリン酸キナーゼ
の存在下、ポリリン酸をリン酸供与体としてAMPをリ
ン酸化してADP及びATPを合成する活性を有するも
のであればよく、また、メチオニンアデノシルトランス
フェラーゼとしては、ATP及びL−メチオニンの存在
下、SAMを合成する活性を有するものであればよい。
【0009】そのような酵素は、動物由来、植物由来、
微生物由来など特定の由来に限定されず、調製の簡便さ
などの点から微生物由来のものを使用するのが好都合で
ある。また、近年の遺伝子組み換え技術を利用して目的
とする酵素の遺伝子をクローン化し、大腸菌などを宿主
として当該酵素を大量に製造することも可能である(J.
Biol. Chem., 267, 22556-22561 (1992)、Nucleic Aci
ds Res., 13, 7139-7151(1985)、J. Biol. Chem., 255,
9082-9092 (1980)、J. Biol. Chem., 259, 14505-1450
7 (1984)、J. Biol. Chem., 262, 16704-16709 (198
7)、Mol. Cell. Biol., 8, 5132-5139 (1988))。
【0010】反応系に添加する酵素は、前記の活性を有
する限りどのような形態であっても良い。具体的には、
微生物の菌体、該菌体の処理物または該処理物から得ら
れる酵素調製物などを例示することができる。微生物の
菌体の調製は、当該微生物が生育可能な培地を用い、常
法により培養後、遠心分離等で集菌する方法で行うこと
ができる。具体的に、バシラス属または大腸菌類に属す
る細菌を例に挙げ説明すれば、培地としてはブイヨン培
地、LB培地(1%トリプトン、0.5%イーストエキ
ス、1%食塩)または2×YT培地(1.6%トリプト
ン、1%イーストエキス、0.5%食塩)などを使用す
ることができ、当該培地に種菌を接種後、20〜50℃
で1〜50時間程度必要により撹拌しながら培養し、得
られた培養液を遠心分離して微生物菌体を集菌すること
により目的とする酵素の活性を有する微生物菌体を調製
することができる。
【0011】微生物の菌体処理物としては、上記微生物
菌体を機械的破壊(ワーリングブレンダー、フレンチプ
レス、ホモジナイザー、乳鉢などによる)、凍結融解、
自己消化、乾燥(凍結乾燥、風乾などによる)、酵素処
理(リゾチームなどによる)、超音波処理、化学処理
(酸、アルカリ処理などによる)などの一般的な処理法
に従って処理して得られる菌体の破壊物または菌体の細
胞壁もしくは細胞膜の変性物を例示することができる。
酵素調製物としては、上記菌体処理物から目的とする酵
素活性を有する画分を通常の酵素の精製手段(塩析処
理、等電点沈澱処理、有機溶媒沈澱処理、透析処理、各
種クロマトグラフィー処理など)を施して得られる粗酵
素または精製酵素を例示することができる。
【0012】反応液に添加するAMP、L−メチオニン
及びポリリン酸は、それぞれ市販のものを使用すること
ができる。使用濃度としては、AMPおよびL−メチオ
ニンは1〜200mM、好ましくは1〜20mM、ポリ
リン酸は無機リン酸に換算して1〜1000mM、好ま
しくは10〜200mMの各範囲から適宜設定すること
ができる。SAMの合成反応は、pH4〜9の範囲の適
当な緩衝液中、AMP、L−メチオニン及びポリリン酸
を添加し、さらに0.001ユニット/ml以上、好ま
しくは0.001〜1.0ユニット/mlのポリリン酸
キナーゼ及びメチオニンアデノシルトランスフェラー
ゼ、0.01ユニット/ml以上、好ましくは0.1〜
10.0ユニット/ml以上のアデニレートキナーゼを
添加し、30℃以上、好ましくは32〜37℃で1〜5
0時間程、必要により撹拌しながら反応させることによ
り実施できる。また、上記の反応系に0.1〜5M、好
ましくは1〜2Mの尿素を添加することにより、SAM
の合成収率を向上させることができる。反応液中に生成
したSAMは、活性炭やイオン交換樹脂などを用いたS
AMの通常の方法により単離精製することができる。
【0013】
【発明の効果】本発明により、従来法の問題点を解決
し、AMPからの簡便かつ安価なSAMの合成が初めて
可能となった。
【0014】
【実施例】以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明
するが、本発明がこれに限定されないことは明らかであ
る。実施例におけるDNAの調製、制限酵素による切
断、T4DNAリガーゼによるDNA連結、Bal31
ヌクレアーゼ処理、T4DNAポリメラーゼを用いたD
NA末端の平滑化、並びに大腸菌の形質転換法は全て
「Molecular Cloning」(Maniatisら編、Cold spring H
arbor Laboratory, ColdSpring Harbor, New York (198
2))に従って行った。また、制限酵素、AmpliTa
qDNAポリメラーゼ、T4DNAリガーゼは宝酒造
(株)より入手した。さらに、反応液中のヌクレオチ
ド、ヌクレオシド類の定量にはHPLC法により行っ
た。具体的には、分離にはYMC社製のODS−AQ3
12カラムを用い、溶出液として0.5M リン酸一カ
リウム溶液を用いた。
【0015】実施例 (1)大腸菌ポリリン酸キナーゼ遺伝子のクローニング 大腸菌K12株JM109菌(宝酒造(株)より入手)
の染色体DNAを斉藤と三浦の方法(Biochim. Biophy
s. Acta., 72, 619 (1963))で調製した。このDNA
をテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマー
DNAを常法に従って合成し、PCR法により大腸菌ポ
リリン酸キナーゼ(ppk)遺伝子を増幅した。
【0016】 プライマー(A):5'-TACCATGGGTCAGGAAAAGCTATA-3' プライマー(B):5'-ATGGATCCTTATTCAGGTTGTTCGAGTGA
-3'
【0017】PCRによるppk遺伝子の増幅は、反応
液100μl(50mM 塩化カリウム、10mM ト
リス塩酸(pH8.3)、1.5mM 塩化マグネシウ
ム、0.001%ゼラチン、0.2mM dNTP、テ
ンペレートDNA 0.1μg、プライマーDNA
(A)(B)各々0.2μM、AmpliTaq DN
Aポリメラーゼ 2.5ユニット)を Perkin-ELmer Ce
tus Instrument社製 DNA Thermal Cycler を用いて、熱
変性(94℃、1分)、アニーリング(55℃、1.5
分)、ポリメライゼーション(72℃、1.5分)のス
テップを25回繰り返すことにより行った。
【0018】遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロ
ロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍
容のエタノールを添加しDNAを沈殿させた。沈殿回収
したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法
に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.9
kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素
NcoI及びBamHIで切断し、同じく制限酵素Nc
oI及びBamHIで消化したプラスミドpTrc99
A(Pharmacia Biotech.社より入手)とT4DNAリガ
ーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM
109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質
転換体よりプラスミド pTrc−PPKを単離した。
pTrc−PPKは、pTrc99Aのtrcプロモー
ター下流のNcoI−BamHI切断部位に大腸菌pp
k遺伝子を含有するNcoI−BamHI DNA断片
が挿入されたものである。
【0019】(2)大腸菌ポリリン酸キナーゼの調製 プラスミドpTrc−PPKを保持する大腸菌JM10
9菌を、100μg/mlのアンピシリンを含有する2
xYT培地 300mlに植菌し、37℃で振とう培養
した。4x108菌/mlに達した時点で、培養液に終
濃度1mMになるようにIPTGを添加し、さらに30
℃で5時間振とう培養を続けた。培養終了後、遠心分離
(9,000xg,10分)により菌体を回収し、60
mlの緩衝液(50mM トリス塩酸(pH7.5)、
5mM EDTA、0.1% トライトンX−100、
0.2mg/ml リゾチーム)に懸濁した。37℃で
1時間保温した後、超音波処理を行い、菌体を破砕し、
さらに遠心分離(20,000xg、10分)により菌
体残さを除去した。
【0020】このように得られた上清画分を5mM 塩
化マグネシウム及び1mM 2−メルカプトエタノール
を含有する50mMトリス塩酸(pH7.8)に対して
透析を行い、粗酵素液とした。粗酵素液におけるポリリ
ン酸キナーゼ比活性は、0.19ユニット/mg蛋白質
であり、対照菌(pTrc99Aを保持する大腸菌JM
109菌)の比活性(0.00018ユニット/mg蛋
白質)の約1000倍であった。次に粗酵素液をDEA
Eトヨパール650M(トーソー(株))を用いて0〜
0.5M NaClの濃度勾配にて分画し、ポリリン酸
キナーゼ画分を得た。この画分をポリリン酸キナーゼ酵
素標品とした。なお、この酵素標品におけるポリリン酸
キナーゼの比活性は、0.6ユニット/mg蛋白質であ
った。
【0021】なお、本発明におけるポリリン酸キナーゼ
活性の単位(ユニット)は、以下に示す方法で測定、算
出したものである。すなわち、5mM塩化マグネシウ
ム、100mM硫安、5mM ADP、及びポリリン酸
(無機リン酸として100mM)を含有する25mMト
リス塩酸緩衝液(pH7.8)に酵素標品を添加して、
37℃で保温することで反応を行い、100℃、1分間
の熱処理により反応を停止させる。高速液体クロマトグ
ラフィー(HPLC)を用いて反応液中のATPを定量
し、37℃で1分間に1μmoleのATPを生成する
活性を1単位(ユニット)とする。
【0022】(3)大腸菌アデニレートキナーゼのクロ
ーニング 大腸菌K12株JM109菌(宝酒造(株)より入手)
の染色体DNAを斉藤と三浦の方法(Biochim. Biophy
s. Acta., 72, 619 (1963))で調製した。このDNA
をテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマー
DNAを常法に従って合成し、PCR法により大腸菌ア
デニレートキナーゼ(adk)遺伝子を増幅した。
【0023】プライマー(C):5'-ATGGATCCCGTTTCAGC
CCCAGGTGCC-3' プライマー(D):5'-ATAAGCTTGGCCTGAGATTGCTGATAAG-
3'
【0024】PCRによるadk遺伝子の増幅は、反応
液100μl(50mM 塩化カリウム、10mM ト
リス塩酸(pH8.3)、1.5mM 塩化マグネシウ
ム、0.001% ゼラチン、0.2mM dNTP、
テンペレートDNA 0.1μg、プライマーDNA
(A)(B)各々 0.1μM、AmpliTaq D
NAポリメラーゼ 2.5ユニット)をPerkin-Elmer C
etus Instrument社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱
変性(94℃、1分)、アニーリング(56℃、1.0
分)、ポリメライゼーション(72℃、3.0分)のス
テップを25回繰り返すことにより行った。
【0025】遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロ
ロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍
容のエタノールを添加しDNAを沈殿させた。沈殿回収
したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法
に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.0
kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素
BamHI及びHindIIIで切断し、同じく制限酵
素BamHI及びHindIIIで消化したプラスミド
pUC18(宝酒造(株)より入手)とT4DNAリガ
ーゼを用いて連結した。連結反応液を用いて大腸菌JM
109菌を形質転換し、得られたアンピシリン耐性形質
転換体よりプラスミドpUC−ADKを単離した。pU
C−ADKは、pUC18のlacプロモーター下流の
BamHI−HindIII切断部位に大腸菌adk遺
伝子を含有するBamHI−HindIII DNA断
片が挿入されたものである。
【0026】(4)大腸菌アデニレートキナーゼの調製 プラスミドpUC−ADKを保持する大腸菌JM109
菌を、100μg/mlのアンピシリンを含有する2x
YT培地300mlに植菌し、37℃で振とう培養し
た。4x108菌/mlに達した時点で、培養液に終濃
度1mMになるようにIPTGを添加し、さらに30℃
で5時間振とう培養を続けた。培養終了後、遠心分離
(9,000xg,10分)により菌体を回収し、60
mlの緩衝液(50mM トリス塩酸(pH7.5)、
5mM EDTA、0.1%トライトンX−100、
0.2mg/ml リゾチーム)に懸濁した。37℃で
1時間保温した後、超音波処理を行い、菌体を破砕し、
さらに遠心分離(20,000xg、10分)により菌
体残さを除去した。
【0027】このように得られた上清画分を5mM 塩
化マグネシウム及び1mM 2−メルカプトエタノール
を含有する50mMトリス塩酸(pH7.8)に対して
透析を行い、粗酵素液とした。粗酵素液におけるアデニ
レートキナーゼの比活性は、134ユニット/mg蛋白
質であり、対照菌(pUC18を保持する大腸菌JM1
09菌)の比活性(1.9ユニット/mg蛋白質)の約
85倍であった。次に粗酵素液をDEAEトヨパール6
50M(トーソー(株))を用いて0〜0.5M Na
Clの濃度勾配にて分画し、アデニレートキナーゼ活性
のある画分を回収した。この画分をアデニレートキナー
ゼ酵素標品とした。なお、この酵素標品におけるポリリ
ン酸キナーゼの比活性は、344ユニット/mg蛋白質
であった。
【0028】本発明におけるアデニレートキナーゼ活性
の単位(ユニット)は、以下に示す方法で測定、算出し
たものである。すなわち、5mM塩化マグネシウム、5
mM ATP、及び5mM AMPを含有する50mM
トリス塩酸緩衝液(pH7.8)に酵素標品を添加して
37℃で保温することで反応を行い、100℃、1分間
の熱処理により反応を停止させる。HPLCを用いて反
応液中のADPを定量し、37℃で1分間に2μmol
eのADPを生成する活性を1単位(ユニット)とす
る。
【0029】(5)発現ベクターpTrc12−6の作
製 プラスミドベクターπAG1(プラスミドベクター π
AG1を保持した大腸菌 K−12株 TNC111菌
の寄託番号:FERM BP−6901号:平成11年
9月30日生命工学工業技術研究所寄託)を制限酵素E
coRIで切断後、T4DNAポリメラーゼを用いてD
NA末端を平滑化し、さらにT4DNAリガーゼを用い
て制限酵素BglIIリンカーを付与した。該DNAを
制限酵素BglII及びBamHIで切断し、カナマイ
シン耐性遺伝子を含む1.8kbのBglII−Bam
HI断片を調製した。
【0030】次に、pTrc99ADNAを制限酵素P
vuIで切断後、Bal31ヌクレアーゼによる部分消
化を行い、β―ラクタマーゼ遺伝子を欠失させ、さらに
pBglIIリンカーをT4 DNAリガーゼを用いて
DNA末端に付与し、さらに制限酵素BglIIで切断
した。該DNAと先に調製したカナマイシン耐性遺伝子
を含むDNA断片をT4DNAリガーゼを用いて連結
し、反応液を用いて大腸菌JM105菌を形質転換し
た。得られたカナマイシン耐性形質転換体より、プラス
ミドpTrc12−6を得た。pTrc12−6は、p
Trc99Aのβ−ラクタマーゼ遺伝子が完全に欠失し
(position 567 - 1816bp が欠失)、その欠失部位にT
n903由来のカナマイシン耐性遺伝子が挿入されたも
のである。
【0031】(6)大腸菌メチオニンアデノシルトラン
スフェラーゼ遺伝子のクローニング 大腸菌K12株JM109菌(宝酒造(株)より入手)
の染色体DNAを斉藤と三浦の方法(Biochim. Biophy
s. Acta., 72, 619 (1963))で調製した。このDNA
をテンペレートとして、以下に示す2種類のプライマー
DNAを常法に従って合成し、PCR法により大腸菌メ
チオニンアデノシルトランスフェラーゼ(metK)遺
伝子を増幅した。
【0032】プライマー(E):5'- ATCCATGGCGCTACCA
CAGAAAATCCACACAACAG -3' プライマー(F):5'- TACTGCAGGTTGGTGTAATCGGTTTCAG
GTTGTG-3'
【0033】PCRによるmetK遺伝子の増幅は、反
応液100μl(50mM 塩化カリウム、10mM
トリス塩酸(pH8.3)、1.5mM 塩化マグネシ
ウム、0.001% ゼラチン、0.2mM dNT
P、テンペレートDNA 0.1μg、プライマーDN
A(A)(B)各々0.1μM、AmpliTaq D
NAポリメラーゼ 2.5ユニット)をPerkin-Elmer C
etus Instrument社製 DNA Thermal Cyclerを用いて、熱
変性(94℃、1分)、アニーリング(36℃、1.0
分)、ポリメライゼーション(72℃、3.0分)のス
テップを35回繰り返すことにより行った。
【0034】遺伝子増幅後、反応液をフェノール/クロ
ロホルム(1:1)混合液で処理し、水溶性画分に2倍
容のエタノールを添加しDNAを沈殿させた。沈殿回収
したDNAを文献(Molecular Cloning、前述)の方法
に従ってアガロースゲル電気泳動により分離し、1.4
kb相当のDNA断片を精製した。該DNAを制限酵素
NcoI及びPstIで切断し、同じく制限酵素Nco
I及びPstIで消化したプラスミドpTrc12−6
とT4DNAリガーゼを用いて連結した。連結反応液を
用いて大腸菌JM105菌を形質転換し、得られたカナ
マイシン耐性形質転換体よりプラスミドpTrc−me
tKを単離した。pTrc−metKは、pTrc12
−6のtrcプロモーター下流のNcoI−PstI切
断部位に大腸菌metK遺伝子を含有するNcoI−P
stIDNA断片が挿入されたものである。
【0035】(7)大腸菌メチオニンアデノシルトラン
スフェラーゼの調製 プラスミドpTrc−metKを保持する大腸菌JM1
05菌を、20μg/mlのカナマイシンを含有する2
xYT培地300mlに植菌し、37℃で振とう培養し
た。4x108菌/mlに達した時点で、培養液に終濃
度0.5mMになるようにIPTGを添加し、さらに3
7℃で18時間振とう培養を続けた。培養終了後、遠心
分離(9,000xg,10分)により菌体を回収し、
30mlの緩衝液(50mM トリス塩酸(pH7.
5)、1mM EDTA)に懸濁した。37℃で1時間
保温した後、超音波処理を行い、菌体を破砕し、さらに
遠心分離(20,000xg、10分)により菌体残さ
を除去した上清液を酵素液とした。酵素液におけるメチ
オニンアデノシルトランスフェラーゼの比活性は、0.
80ユニット/mg蛋白質であった。
【0036】本発明におけるメチオニンアデノシルトラ
ンスフェラーゼ活性の単位(ユニット)は、以下に示す
方法で測定、算出したものである。すなわち、20mM
塩化マグネシウム、100mM 塩化カリウム、5mM
ATP、及び5mM メチオニンを含有する50mMト
リス塩酸緩衝液(pH8.0)に酵素標品を添加して3
7℃で保温することで反応を行い、塩酸を添加すること
により反応を停止させる。HPLCを用いて反応液中の
SAMを定量し、37℃で1分間に1μmoleのSA
Mを生成する活性を1単位(ユニット)とする。
【0037】(8)SAMの酵素的合成 I 20mM 塩化マグネシウム、100mM 塩化カリウ
ム、5mM AMP、5mMメチオニン、ポリリン酸
(リン酸として75mM)を含有する100mMトリス
塩酸緩衝液(pH8.0)に0.24ユニット/mlア
デニレートキナーゼ、0.12ユニット/mlポリリン
酸キナーゼ、0.36ユニット/mlメチオニンアデノ
シルトランスフェラーゼを添加して37℃で、7時間保
温した。反応液をHPLCを用いて分析したところ、
2.0mMのSAMの生成が確認された。
【0038】(9)SAMの酵素的合成 II 17.5mM 塩化マグネシウム、50mM 塩化カリ
ウム、10mM AMP、10mMメチオニン、ポリリ
ン酸(リン酸として75mM)および1.5M尿素を含
有する100mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に
5.0ユニット/mlアデニレートキナーゼ、3.0ユ
ニット/mlポリリン酸キナーゼ、1.2ユニット/m
lメチオニンアデノシルトランスフェラーゼを添加して
37℃で、7.5時間保温した。反応液をHPLCを用
いて分析したところ、6.35mMのSAMの生成が確
認された。
【0039】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> YAMASA CORPORATION <120> Process for the enzymatically preparation of S-adenosyl-L-methioni ne <130> YP2000-009 <140> <141> <160> 6 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 24 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> primer for amplification of ppk gene <400> 1 taccatgggt caggaaaagc tata 24 <210> 2 <211> 29 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> primer for amplification of ppk gene <400> 2 atggatcctt attcaggttg ttcgagtga 29 <210> 3 <211> 27 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> primer for amolication of adk gene <400> 3 atggatcccg tttcagcccc aggtgcc 27 <210> 4 <211> 28 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> primer for amplification of adk gene <400> 4 ataagcttgg cctgagattg ctgataag 28 <210> 5 <211> 35 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> primer for amplification of metK gene <400> 5 atccatggcg ctaccacaga aaatccacac aacag 35 <210> 6 <211> 34 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> primer for amplification of metK gene <400> 6 tactgcaggt tggtgtaatc ggtttcaggt tgtg 34
【0040】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、アデニレートキナーゼとポリリン酸キ
ナーゼによるポリリン酸に依存したAMPからのATP
生成系存在下におけるSAMの酵素的合成反応の経時的
変化を示したものである。
【0041】

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酵素としてポリリン酸キナーゼ、アデニ
    レートキナーゼ及びメチオニンアデノシルトランスフェ
    ラーゼを用い、反応系にポリリン酸、L−メチオニン及
    びアデノシン5’−モノリン酸(AMP)を添加し、こ
    れらを反応させることでS―アデノシル−L−メチオニ
    ン(SAM)を合成し、合成したSAMを採取すること
    を特徴とするSAMの酵素的製造法。
  2. 【請求項2】 反応系に尿素を添加する、請求項1記載
    のSAMの酵素的製造法。
  3. 【請求項3】 少なくともポリリン酸キナーゼ、アデニ
    レートキナーゼ、メチオニンアデノシルトランスフェラ
    ーゼ、ポリリン酸、L−メチオニン及びAMPから構成
    されるSAMを合成するための反応系。
  4. 【請求項4】 少なくともポリリン酸キナーゼ、アデニ
    レートキナーゼ、メチオニンアデノシルトランスフェラ
    ーゼ、ポリリン酸、L−メチオニン、尿素及びAMPか
    ら構成されるSAMを合成するための反応系。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2008090905A1 (ja) 2007-01-25 2008-07-31 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. 保存安定性に優れたs-アデノシル-l-メチオニン含有乾燥酵母の製造方法、その製造物及びその成型された組成物
CN109136311A (zh) * 2017-06-15 2019-01-04 深圳市古特新生生物科技有限公司 一种酶法制备s-腺苷甲硫氨酸的方法

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