JP2001158697A - 炭化珪素単結晶及びその製造方法 - Google Patents

炭化珪素単結晶及びその製造方法

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JP2001158697A
JP2001158697A JP33839199A JP33839199A JP2001158697A JP 2001158697 A JP2001158697 A JP 2001158697A JP 33839199 A JP33839199 A JP 33839199A JP 33839199 A JP33839199 A JP 33839199A JP 2001158697 A JP2001158697 A JP 2001158697A
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Atsuhito Okamoto
篤人 岡本
Naohiro Sugiyama
尚宏 杉山
Toshihiko Tani
俊彦 谷
Nobuo Kamiya
信雄 神谷
Fusao Hirose
富佐雄 廣瀬
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Denso Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
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Denso Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 炭化珪素単結晶に存在しているマイクロパイ
プ欠陥を炭化珪素単結晶の内部で閉塞させる。 【解決手段】 基板結晶1を用意し、マイクロパイプ欠
陥6の開口部を被覆材料5で被覆する。そして、熱処理
を施すと、基板結晶1に存在するマイクロパイプ欠陥6
を基板結晶1の内部で閉塞させることができる。この
後、被覆材料5を除去した後、基板結晶1を種結晶とし
て炭化珪素単結晶を成長させ、この成長させた炭化珪素
単結晶を再度基板結晶1として、基板結晶1を被覆材料
5で覆い、熱処理による閉塞工程を繰り返す。マイクロ
パイプ欠陥が閉塞した基板結晶を種結晶として炭化珪素
単結晶を成長させた場合、閉塞された部分ではマイクロ
パイプ欠陥が継承されないため、成長させた炭化珪素単
結晶を再度基板結晶1として閉塞工程を行えば、よりマ
イクロパイプ欠陥を閉塞することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロパイプ欠
陥が閉塞された炭化珪素(SiC)単結晶の製造方法お
よびマイクロパイプ欠陥が閉塞された炭化珪素単結晶に
関する。
【0002】
【従来の技術】SiC単結晶を種結晶として、改良レー
リー法(昇華法)にてSiC単結晶を製造する際、マイ
クロパイプ欠陥(中空貫通欠陥)と呼ばれる直径サブμ
m乃至数μmの中空貫通孔が略成長方向に沿って伸長
し、成長結晶中に内在される。マイクロパイプ欠陥はデ
バイスの電気的特性に悪影響を与えるため、マイクロパ
イプ欠陥があるSiC単結晶はデバイス形成用の基板に
適さない。このため、マイクロパイプ欠陥を低減するこ
とが重要な課題となっている。
【0003】マイクロパイプ欠陥の低減方法として、米
国特許第5,679,153号明細書や特許第2804
860号公報や特許第2876122号公報に示される
方法が提案されている。
【0004】米国特許第5,679,153号明細書に
示される方法は、シリコン中のSiC溶融を用いた液相
エピタキシー法によって結晶成長させると、エピタキシ
ャル成長途中でマイクロパイプ欠陥が閉塞されていくこ
とを利用して、マイクロパイプ欠陥を有する種結晶(欠
陥密度:50〜400cm-2)上にマイクロパイプ欠陥
が低減されたエピタキシャル層(欠陥密度:0〜50c
-2)を成長させている。
【0005】特許第2804860号公報に示される方
法は、種結晶の成長面として(0001)面に垂直な面
を使用することによって、アルカリエッチングに際し、
六角形エッチピットが全く観察されない単結晶、つまり
マイクロパイプ欠陥が存在しない単結晶を種結晶上に成
長させている。
【0006】特許第2876122号公報に示されてい
る方法は、α(六方晶)−SiC単結晶基板(種結晶)
の表面に、熱化学的蒸着(CVD)法によりβ(立方
晶)−SiCもしくはα−SiCの多結晶膜の成膜と、
それによって得られた複合体に対する熱処理とを複数回
繰り返すことにより、複数層のβ−SiCもしくはα−
SiC多結晶膜をα−SiC単結晶基板(種結晶)の結
晶軸と同一方位に配向(ある種の固相エピタキシャル成
長)させることによって、種結晶上にマイクロパイプ欠
陥などの結晶欠陥のない高品質、かつ、高膜厚の単結晶
SiCを成長させている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記した3つの方法は
共に、種結晶上に新たな単結晶を成長させ、その成長層
においてマイクロパイプ欠陥密度を低減するようにして
いる。
【0008】このため、第1の方法では、マイクロパイ
プ欠陥が無い部分を得るために、液相エピタキシー法に
て20〜75μm以上のエピタキシャル層を成長させな
ければならず、また、その範囲以下では、依然としてマ
イクロパイプ欠陥が存在するという問題がある。また、
このように形成されたエピタキシャル層を種結晶とし
て、再び昇華法によって単結晶成長を行うと、マイクロ
パイプ欠陥が閉塞された部分が薄いことから、その閉塞
された部分が昇華して再びマイクロパイプ欠陥の開口部
を生じる可能性があり、種結晶の試料調整や昇華法成長
条件の適正化が困難であるという問題もある。
【0009】一方、第2の方法では、マイクロパイプ欠
陥の発生を抑制する点では効果があるが、成長させた単
結晶に新たな積層欠陥が導入されるため、基板の電気的
特性に異方性を生じ、電子デバイス用基板としては適さ
ないという問題がある。
【0010】他方、第3の方法では、α−SiC単結晶
基板(種結晶)の表面にCVD法でβ−SiCもしくは
α−SiC多結晶膜を形成するため、結晶粒界を内在し
たSiC複合体が得られる。この複合体を熱処理し、種
結晶上に固相エピタキシャル成長させると、β−SiC
もしくはα−SiC多結晶膜中の結晶子が派生成長(ov
er growth)して明確な結晶粒界は熱処理とともに減少
していくが、上記結晶粒界や不均一相変態に伴う結晶境
界などにおける内部歪みを原因とした結晶欠陥が導入さ
れる危惧がある。こうした欠陥はキャリアのトラップ源
となるため電子デバイス用基板としては適さないという
問題がある。
【0011】本発明は上記問題に鑑みてなされ、新たな
成長層においてマイクロパイプ欠陥の発生、継承を抑制
するのではなく、炭化珪素単結晶に存在しているマイク
ロパイプ欠陥を炭化珪素単結晶の内部で閉塞させること
ができるようにすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1に記載の発明では、マイクロパイプ欠陥
(6)を有する炭化珪素単結晶からなる基板結晶(1)
を用意する工程と、基板結晶に形成されたマイクロパイ
プ欠陥の開口部の少なくとも一方を被覆材料(5)で被
覆する被覆工程と、熱処理を施すことにより、基板結晶
に存在するマイクロパイプ欠陥を基板結晶の内部で閉塞
させ、マイクロパイプ欠陥の少なくとも一部を閉塞孔
(7)にする閉塞工程と、マイクロパイプ欠陥の一部が
閉塞孔となった基板結晶の被覆材料を除去したのち、該
基板結晶を種結晶として炭化珪素単結晶を成長させる成
長工程とを含み、成長させた炭化珪素単結晶を再度基板
結晶として、被覆工程、閉塞工程及び成長工程を少なく
とも一回繰り返し、基板結晶に形成されているマイクロ
パイプ欠陥を閉塞させることを特徴としている。
【0013】このように、炭化珪素単結晶からなる基板
結晶を被覆材料で覆って熱処理を行えば、基板結晶の内
部でマイクロパイプ欠陥を閉塞させることができる。そ
して、マイクロパイプ欠陥が閉塞した基板結晶を種結晶
として炭化珪素単結晶を成長させた場合には、閉塞され
た部分については炭化珪素単結晶にマイクロパイプ欠陥
が継承されないため、成長させた炭化珪素単結晶を再度
基板結晶に用いて、被覆工程、閉塞工程、成長工程を少
なくと一回繰り返せば、さらにマイクロパイプ欠陥を閉
塞することができる。特に、請求項7に示すように、4
H多形の炭化珪素単結晶はマイクロパイプ欠陥が閉塞さ
れにくいため、繰り返し閉塞工程を行うことが有効とな
る。
【0014】請求項2に記載の発明においては、マイク
ロパイプ欠陥(6)を有する炭化珪素単結晶からなる基
板結晶(1)を用意する工程と、基板結晶に形成された
マイクロパイプ欠陥の開口部の少なくとも一方を被覆材
料(5)で被覆する被覆工程と、熱処理を施すことによ
り、基板結晶に存在するマイクロパイプ欠陥を基板結晶
の内部で閉塞させ、マイクロパイプ欠陥の少なくとも一
部を閉塞孔(7)にする閉塞工程とを有し、マイクロパ
イプ欠陥が閉塞孔となった基板結晶の被覆材料を除去し
たのち、再度、被覆工程及び閉塞工程を行う工程を少な
くとも一回繰り返し、基板結晶に形成されているマイク
ロパイプ欠陥を閉塞させることを特徴としている。
【0015】このように、マイクロパイプ欠陥の閉塞工
程を行った後、被覆工程、閉塞工程を繰り返し行うこと
で、1回目の閉塞工程で閉塞しなかったマイクロパイプ
欠陥も、2回目の閉塞工程で閉塞のための活性化エネル
ギーが低い場所に確率的に被覆層が形成されるために、
より多くのマイクロパイプ欠陥を閉塞することができ
る。
【0016】なお、請求項3に示すように、閉塞工程で
は、熱処理温度を2200〜2500℃とするのが望ま
しい。より好ましくは熱処理温度を2400℃前後にす
るのがよい。
【0017】請求項4に記載の発明においては、被覆工
程では、基板結晶のうちの(000−1)C面を被覆材
料で被覆することを特徴としている。
【0018】この(000−1)C面は4H多形の炭化
珪素単結晶を成長させ易い面であるため、この面におい
てマイクロパイプ欠陥を閉塞することにより、閉塞後に
4H多形の炭化珪素単結晶を成長させるのに好適であ
る。
【0019】請求項5に記載の発明においては、被覆工
程では、被覆材料の表面に表面保護膜を配置する工程を
含むことを特徴としている。
【0020】このように、被覆材料の表面に表面保護膜
を配置することにより、被覆材料が熱処理中に熱エッチ
ングによって除去されてしまうことを防止でき、マイク
ロパイプ欠陥を確実に被覆することができる。
【0021】請求項6に記載の発明においては、閉塞工
程では、被覆材料で被覆された基板結晶を炭化防止材料
で覆った状態で熱処理を行うことを特徴としている。
【0022】このように、基板結晶を炭化防止材料で覆
うようにすることで、熱処理中に基板結晶が炭化される
ことを防止することができる。この炭化防止材料として
は、SiCとSiを含む粉末などの固体原料、シラン、
プロパンなどの気相原料などが有効である。また、これ
らは、被覆材料5の熱エッチングを防止する効果もあ
る。
【0023】なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述
する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すも
のである。
【0024】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)以下、図に示す
実施形態について説明する。
【0025】図1に、基板結晶(炭化珪素単結晶)1の
マイクロパイプ欠陥6を閉塞するのに用いる熱処理装置
の概略断面図を示す。
【0026】熱処理装置は、上部が開口したるつぼ2
と、るつぼ2の開口部を覆う蓋体3により構成されてい
る。これらるつぼ2と蓋体3はグラファイトで構成され
ている。
【0027】るつぼ2内には、マイクロパイプ欠陥6を
閉塞するための熱処理を再現性良く安定に行うための原
料となる炭化珪素4が収容されている。基板結晶1は蓋
体3上に支持されるようになっており、るつぼ2の開口
部を蓋体3で覆ったときに、基板結晶1が炭化珪素4に
対向配置されるようになっている。以下、基板結晶1の
両表面のうち載置面側を載置面側表面といい、載置面の
反対側を非載置面側表面という。
【0028】なお、図1において図示していないが、る
つぼ2の外周には、グラファイト製の抵抗発熱体が配置
されており、この抵抗発熱体によってるつぼ2内の温
度、具体的には基板結晶1の温度や炭化珪素4の温度が
調整可能となっている。また、図示されていないが、る
つぼ2は雰囲気の圧力を調整できる容器内に入れられて
おり、るつぼ2内への不活性ガス等の導入や、雰囲気圧
力の調整が可能となっている。
【0029】図1の基板結晶1の近傍を拡大したものを
図2に示す。図2に示すように、基板結晶1の少なくと
も一方の表面(本図では非載置面側)を被覆材料5で覆
っている。例えば、基板結晶1の(000−1)C面を
被覆材料5で覆うようにしている。このようなC面(カ
ーボン面)は、4H多形を安定に成長させる結晶面であ
るため、C面においてマイクロパイプ欠陥6を閉塞すれ
ば、閉塞した後に閉塞された基板を種結晶として4H多
形の炭化珪素単結晶を成長させるのに好適である。
【0030】この被覆材料5は、後述するマイクロパイ
プ欠陥閉塞のための熱処理に先立って、例えば、化学蒸
着(CVD)法や分子線エピタキシー(MBE)法やス
パッタ蒸着法や昇華法などの気相成長法、液相エピタキ
シー(LPE)法などの液相成長法によって予め基板結
晶1上に堆積させたものである。
【0031】被覆材料5には基板結晶1と同じ結晶形の
SiC、異種多形のSiCいずれも適用可能であるが、
基板結晶1の材料が六方晶形炭化珪素単結晶の場合、立
方晶(3C多形)の炭化珪素エピタキシャル膜が適して
いる。
【0032】この他、被覆材料5として、SiC多結晶
体、SiC焼結体、アモルファスSiC、カーボン材料
(例えば黒鉛、カーボンナノチューブ、フラーレン
等)、珪素を含む材料とカーボン材料の複合体、及び高
融点物質(例えば、タングステン、炭化タングステン、
窒化ホウ素等)を適用することもできる。
【0033】なお、図1、図2では、基板結晶1の非載
置面側表面を被覆材料5で覆っているが、基板結晶1の
両表面の少なくとも一方を被覆材料5で覆っていればよ
く、必ずしも非載置面側表面である必要はないが非載置
面側表面であることが望ましい。また、後述する熱処理
に先立って被覆材料5を基板結晶1上に形成させてもよ
いが、熱処理工程中に基板結晶1の表面に形成させても
よい。
【0034】この被覆材料5は、数μm〜数mmの範囲
で選択することができるが、マイクロパイプ欠陥閉塞の
ための熱処理条件の自由度と製造コストを考慮すると、
数10μm〜数100μmの範囲で選択することが好ま
しい。
【0035】また、基板結晶1の厚さも任意に選択可能
であるが、基板結晶1を厚くした方がよりマイクロパイ
プ欠陥がないものを一度に多く形成できること、さらに
基板結晶1が薄すぎると変形、破損の可能性があり製造
プロセス中の操作性に難点があるということを考慮する
と、少なくとも100μm以上とするのが望ましい。
【0036】このように構成される基板結晶1を図1に
示す熱処理装置内に配置したのち、熱処理を施す。
【0037】このとき、熱処理の温度条件としては、基
板結晶1の温度を、1800〜2500℃の範囲となる
ようにする。特に基板結晶1が4H多形の場合、基板結
晶1の温度が2200〜2500℃の範囲となるように
通常の昇華法よりも比較的高温な熱処理温度としてい
る。このような温度範囲とした理由は、2200℃より
も低温であるとマイクロパイプ欠陥6が閉塞しにくいと
いう問題があり、2500℃よりも高温であると基板結
晶1が炭化するという問題があるためである。このよう
な熱処理温度を選択することにより、基板結晶1の構成
原子の気相拡散、固相拡散、表面拡散が促進され、閉塞
速度を向上させることが可能になる。なお、後述する実
施例で示すように、種々の実験によれば、2400℃前
後の温度がマイクロパイプ欠陥閉塞に最も適した熱処理
温度であった。
【0038】そして、基板結晶1として、例えば、6H
多形、4H多形のものを用いて上記条件の熱処理を施し
た。このマイクロパイプ欠陥6の閉塞工程を行った後の
様子を図3に示す。この図は、基板結晶1として6H多
形のものを用いたときのマイクロパイプ欠陥閉塞工程後
の断面を示したものである。
【0039】この図に示されるように、基板結晶1とし
て6H多形のものを用いた場合には、基板結晶1の表面
に開口を有していたマイクロパイプ欠陥6のすべてが基
板結晶1の表面の少なくとも一方向から閉塞された閉塞
孔7となっていた。
【0040】マイクロパイプ欠陥6が閉塞されるメカニ
ズムについては、以下のように推測される。
【0041】マイクロパイプ欠陥6は大きなバーガース
ベクトルを有するらせん転位芯が、大きな弾性歪みエネ
ルギーを緩和するために中空貫通孔になったものと考え
られている(F.C.Frank.Acta.Crys
t.4(1951)497参照)。
【0042】マイクロパイプ欠陥6の閉塞現象は上記マ
イクロパイプ欠陥6のメカニズムとは逆の現象が起きて
いると推定される。マイクロパイプ欠陥6の閉塞推定モ
デルを図4を用いて説明する。
【0043】被覆材料5として3C−SiCエピタキシ
ャル膜が形成されたマイクロパイプ欠陥6を含む基板結
晶1が黒鉛製の蓋体3に設置されている場合を考える
(図4(a))。この状態で図1に示した熱処理装置内
に配置し、適当な温度・圧力条件にて熱処理を行うと、
その温度における平衡蒸気圧を保つために、マイクロパ
イプ欠陥6の周辺、3C−SiCエピタキシャル膜及び
蓋体のグラファイトから、Si、SiC2 、Si2 C等
の蒸気種が図中の矢印のように昇華する。(図4
(b))。
【0044】その後、現在まだ理由は明らかでないが、
閉塞箇所の透過電子顕微鏡観察結果から、黒鉛製の蓋体
3との界面及び被覆材との界面において、大きなバーガ
ースベクトルを有するらせん転位(Super Screw Disl
ocation)から形成されるマイクロパイプ欠陥6が分解
されて、1c(6H−SiCの場合、c=1.5nm
で、cは単位格子のc軸長に対応する。)以下のバーガ
ースベクトルを有する数本のらせん転位の集合体(積層
欠陥、刃状転位を含む)となるとともに、中空孔にSi
Cが析出したと推定される。
【0045】なぜなら、その箇所においては、表面を有
する中空孔であるよりSiCが析出した方が、表面を形
成していることによる表面エネルギー不利が解消され、
さらに、環境相(気相)の分子が結晶中に組み込まれる
ことによる自由エネルギーの低下が、SiCの析出によ
って生じる結晶中の歪みエネルギーによる損失を上回る
ため、全系として自由エネルギーの利得がある。このた
め、昇華−再析出(/再配列)が進行したと推定される
(図4(c)(d))。
【0046】なお、閉塞のための原子の移動(拡散)は
気相を介して行われるよう説明したが、空孔、格子間原
子を介した固体内拡散、マイクロパイプ欠陥内壁表面の
表面拡散によって行われるメカニズムも考えられ得る。
【0047】本実施形態のマイクロパイプ欠陥6を有す
る炭化珪素単結晶1の少なくとも一方の面を被覆材料5
で被覆して(黒鉛製蓋体3に設置しただけの場合も含
む)熱処理を行うことがマイクロパイプ欠陥6(らせん
転位)のバーガースベクトルを分解する役目を果たし、
結果的にマイクロパイプ欠陥6が閉塞されて閉塞孔7と
なる効果を奏したと推定される。
【0048】一方、基板結晶1として4H多形のものを
用いた場合には、複数のマイクロパイプ欠陥6のうち閉
塞されたものもあれば、閉塞されていないものもあっ
た。
【0049】つまり、6H多形の場合には、被覆材料5
はマイクロパイプ欠陥閉塞現象においてマイクロパイプ
欠陥6の閉塞の活性化エネルギーを低下させるという意
味で触媒的な作用を果たしていると考えられるが、4H
多形の場合、被覆材料5が明確な触媒作用を果たしてい
ないようである。
【0050】しかも、6H多形の場合とは異なり、4H
多形の場合は、一旦閉塞が始まっても容易に閉塞が進行
しない。これは、4H多形の結晶中と6H多形の結晶中
のマイクロパイプ欠陥6において、それらの構成転位
(らせん転位、刃状転位)および内部歪みエネルギーに
差があるため、多形間や各マイクロパイプ欠陥6の間の
少なくとも一方において、若しくは一本のマイクロパイ
プ欠陥6においてもマイクロパイプ欠陥閉塞の活性化エ
ネルギーが異なることを示唆している。4H多形のもの
について実験したところ、マイクロパイプ欠陥6が破線
状に閉塞しており、このことからもマイクロパイプ欠陥
閉塞の活性化エネルギーが異なると考えられる。
【0051】そこで、マイクロパイプ欠陥6を完全に閉
塞するために閉塞工程の後にさらに以下の工程を行う。
【0052】まず、上記熱処理装置から基板結晶1を取
り出し、基板結晶1から被覆材料5を除去したのち、基
板結晶1を種結晶として、昇華法などにより基板結晶1
に炭化珪素単結晶を成長させる。
【0053】このとき、基板結晶1を種結晶として成長
させた炭化珪素単結晶(成長層)には、基板結晶1で閉
塞されたマイクロパイプ欠陥6は継承されず、閉塞され
てなかったマイクロパイプ欠陥6のみが継承される。
【0054】このため、基板結晶1として6H多形のも
のを用いた場合には、マイクロパイプ欠陥6が成長層に
継承されず、4H多形のものを用いた場合においても、
マイクロパイプ欠陥6が閉塞されなかった部分について
だけマイクロパイプ欠陥6が成長層に継承される。
【0055】この後、成長させた炭化珪素単結晶を切り
出し、この切り出した炭化珪素単結晶を再度基板結晶1
として、上記閉塞工程を繰り返す。すなわち、切り出し
た基板結晶1の少なくとも一方の表面を被覆材料5で覆
い、その後、上記条件の熱処理を行う。
【0056】これにより、基板結晶1として4H多形の
ものを用いた場合においても、1度目の熱処理時には閉
塞されなかったマイクロパイプ欠陥6が閉塞される。こ
のように、一旦閉塞されたマイクロパイプ欠陥6が成長
層に継承されない現象を利用することにより、1度のマ
イクロパイプ欠陥閉塞工程によってマイクロパイプ欠陥
6が完全に閉塞されなくても、成長層を再度基板結晶1
としてマイクロパイプ欠陥閉塞工程を施すことで、より
すべてのマイクロパイプ欠陥6を閉塞することができ
る。
【0057】そして、これまで困難だった4H結晶中の
マイクロパイプ欠陥6を閉塞することができるため、多
形を問わず、マイクロパイプ欠陥6が実質的に存在しな
い炭化珪素単結晶を製造することができる。
【0058】なお、ここでは、2度のマイクロパイプ欠
陥閉塞工程を行う場合を示しているが、2度行ってもマ
イクロパイプ欠陥6が完全に閉塞しない場合には、3度
以上マイクロパイプ欠陥閉塞工程を繰り返し行うことに
よって、基板結晶1として4H多形のものを用いた場合
にもマイクロパイプ欠陥6を完全に閉塞することができ
る。また、上述したように、4H多形の場合にはマイク
ロパイプ欠陥6が閉塞されにくいため上記閉塞工程を繰
り返し行うことが特に有効であるが、6H多形やその他
の多形の場合においても、1度のマイクロパイプ欠陥閉
塞工程で完全にマイクロパイプ欠陥6が閉塞されなかっ
た場合が有り得るため、このような場合には上記閉塞工
程を繰り返し行うことが有効である。
【0059】このようにして得られた基板結晶1からマ
イクロパイプ欠陥6が存在しない領域((0001)面
に平行な基板若しくはoff−axis基板)を切り出
すことによって、全くマイクロパイプ欠陥6のない基板
結晶1を得ることができる。こうして得られた基板結晶
は、そのまま高性能の高耐圧、高周波数、高速、耐環境
デバイス用の基板として供することができる。また、マ
イクロパイプ欠陥6が閉塞された基板結晶1を再び昇華
法の種結晶として供することも可能であり、これにより
得られた炭化珪素単結晶インゴットから数多くの基板を
切り出して加工処理することで、炭化珪素単結晶基板の
製造コストの大幅な低減を図ることができる。
【0060】そして、一旦成長によって生じたマイクロ
パイプ欠陥6を、その基板中やその基板を種結晶として
成長させた単結晶基板中で閉塞できるため、基板の大口
径化プロセス、すなわち、基板口径を順次拡大するため
の数多くの成長実験に多大な労力を要する必要がなくな
り、製造コストを大幅に削減することができる。
【0061】本実施形態の変形例として、被覆材料5の
上にさらに表面保護部材を配置した状態で上記熱処理を
行うようにしてもよい。このように、表面保護部材を被
覆材料5上に配置すると、熱処理の際、被覆材料5が熱
エッチングにより昇華して消失してしまうことがなく、
マイクロパイプ欠陥6の開口部が、被覆材料5によって
隙間なく塞がれた状態を熱処理時に実現できるため、マ
イクロパイプ欠陥6を確実に閉塞させることができる。
また、閉塞孔7を形成した後、被覆材料5を除去する際
に、被覆材料5や炭化珪素単結晶の厚さが熱処理前と比
べて変化しないため除去量が正確にわかり、閉塞孔7ま
で除去してしまうことを防止できる。
【0062】表面保護部材の材料としては、タングステ
ン、タンタルなどの高融点金属、黒鉛などのカーボン材
料、炭化珪素基板あるいは炭化珪素粉末などの高融点物
質を用いることができる。これらの材料は熱処理温度に
おいても比較的安定であるので表面保護部材として好ま
しい。
【0063】また、熱処理において基板結晶1が炭化し
ないように、基板結晶1の近傍に炭化防止材料を配置し
てもよい。図5に炭化防止材料を配置した熱処理装置の
簡略断面図を示す。炭化防止材料として、例えば、Si
CとSiを含む粉末などの固体原料、シラン、プロパン
などの気相原料などを用いることができる。また、これ
らは、被覆材料5の熱エッチングを防止する効果もあ
る。
【0064】(第2実施形態)上記第1実施形態では、
マイクロパイプ欠陥6を閉塞した基板結晶1の上に炭化
珪素単結晶を成長させ、この成長させた炭化珪素単結晶
を切り出したものを再度基板結晶1に用いてマイクロパ
イプ欠陥閉塞工程を繰り返すようにしているが、本実施
形態のようにしてもよい。
【0065】まず、第1実施形態と同様に、被覆材料5
によって被覆した基板結晶1に対してマイクロパイプ欠
陥閉塞工程を行い、基板結晶1のマイクロパイプ欠陥6
を閉塞する。これにより、まだすべてのマイクロパイプ
欠陥6が閉塞していない基板結晶1が得られる。
【0066】次に、基板結晶1のうち、マイクロパイプ
欠陥6が閉塞された領域を切り出し、この切り出した表
面に再度被覆材料5を配置する。このようにすること
で、被覆材料5によって被覆する位置を変化させること
ができる。
【0067】すなわち、第1実施形態において説明した
ように、1本のマイクロパイプ欠陥6においてもその場
所毎に閉塞の活性化エネルギーが異なるため、マイクロ
パイプ欠陥6の被覆位置を変化させることによって、閉
塞の活性化エネルギーを低下させることが可能となり、
よりすべてのマイクロパイプ欠陥6を閉塞することがで
きる。
【0068】そして、上記熱処理条件にてマイクロパイ
プ欠陥閉塞工程を行う。これにより、まだすべてのマイ
クロパイプ欠陥6が完全に閉塞していなければ、また基
板結晶1の表面を切り出し、マイクロパイプ欠陥閉塞工
程を繰り返す。
【0069】このようにすることで、基板結晶1の厚み
内でマイクロパイプ欠陥6を完全に閉塞することができ
る。このようにマイクロパイプ欠陥6が閉塞された基板
結晶1も第1実施形態と同様に高性能デバイスに使用し
たり、炭化珪素単結晶成長用の種結晶として用いること
ができる。
【0070】本実施形態においても、第1実施形態の変
形例で示したように、被覆材料5の表面を表面保護部材
で覆う、及び基板結晶1の近傍に炭化防止材料を配置す
るようにすれば、上記と同様の効果を得ることができ
る。
【0071】なお、マイクロパイプ欠陥閉塞のための熱
処理装置として、図1に示すように、蓋体3が位置する
るつぼ2の上部に基板結晶1を配置し、下部に炭化珪素
4を配置する場合について説明したが、これ以外の装
置、例えば図5に示すように炭化防止材料4で基板結晶
1を覆うようにしてもよい。また、るつぼ2の上部に炭
化珪素4、下部に基板結晶1を配置する場合についても
適用可能である。また、縦型の熱処理装置について述べ
たが、横型の熱処理装置にも適用可能である。さらに、
加熱方式も従来周知の高周波誘導加熱方式を用いても同
様な効果が得られる。
【0072】なお、基板結晶1が炭化珪素の場合につい
て述べたが、それ以外の結晶、例えば、ZnS等の中空
貫通欠陥を有する材料にも上記方法を適用することがで
きる。
【0073】
【実施例】以下、本実施形態における実施例について具
体的に説明する。
【0074】(実施例1)本実施例は、上記第1実施形
態を具体的に実験したものである。
【0075】まず欠陥密度が約50cm-2のマイクロパ
イプ欠陥6を有する厚さ300μmの4H多形のSiC
単結晶で構成された基板結晶1を用意し、この基板結晶
1のC面に被覆材料5として3C−SiCのエピタキシ
ャル膜をCVD法を用いて約15μmの厚さで形成し
た。
【0076】微分干渉顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型電子
顕微鏡を用いて観察したところ、マイクロパイプ欠陥6
の開口部は3C−SiCのエピタキシャル膜によって隙
間なく塞がれていた。なお、基板結晶1の表面は(00
01)ジャスト面を用いており、3C−SiCのエピタ
キシャル膜は(111)面を成長面として成膜されてい
る。
【0077】次に、上記被覆材料5の表面に表面保護部
材として厚さ約800μmのグラファイト板をカーボン
系接着剤で固定した状態で、基板結晶1を図1に示した
熱処理装置に配置した。マイクロパイプ欠陥閉塞熱処理
工程として、雰囲気圧力が6.67×104Pa(50
0Torr)、基板結晶1の温度が2390℃、炭化珪
素4と基板結晶1の間の温度差が10℃(炭化珪素4の
温度=2400℃)となるようにして24時間の熱処理
を行った。
【0078】このような工程を経て得られた基板結晶を
(0001)面に平行に鏡面研磨した後、微分干渉顕微
鏡と偏光顕微鏡を用いてその表面を詳細に観察した。そ
の結果、マイクロパイプ欠陥6のうち開口部が結晶表面
から露出していたものは全体の約20%であり、残り約
80%は鏡面研磨面において開口部を持たない状態、す
なわち完全に塞がれた状態になっていた。
【0079】このような工程で得られた基板結晶1を種
結晶として、昇華法成長を行った。その後、得られた4
H多形の単結晶インゴットから基板結晶2を切り出し、
鏡面研磨した後、偏光顕微鏡を用いてマイクロパイプ欠
陥密度を評価した。その結果、マイクロパイプ欠陥密度
は、マイクロパイプ欠陥閉塞工程を施す前には約50c
-2であったのが約10cm-2に減少していた。
【0080】そして、上記全工程を再度繰り返した結
果、最終的にマイクロパイプ欠陥密度が約1cm-2まで
減少した。
【0081】(実施例2)本実施例は、上記第2実施形
態を具体的に実験したものである。
【0082】まず欠陥密度が約50cm-2のマイクロパ
イプ欠陥6を有する厚さ300μmの4H多形のSiC
単結晶で構成された基板結晶1を用意し、この基板結晶
1のC面に被覆材料5として3C−SiCのエピタキシ
ャル膜をCVD法を用いて約15μmの厚さで形成し
た。
【0083】微分干渉顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型電子
顕微鏡を用いて観察したところ、マイクロパイプ欠陥6
の開口部は3C−SiCのエピタキシャル膜によって隙
間なく塞がれていた。なお、基板結晶1の表面は(00
01)ジャスト面を用いており、3C−SiCのエピタ
キシャル膜は(111)面を成長面として成膜されてい
る。
【0084】次に、上記被覆材料5の表面に表面保護部
材として厚さ約800μmのグラファイト板をカーボン
系接着剤で固定した状態で、基板結晶1を図1に示した
熱処理装置に配置した。マイクロパイプ欠陥閉塞熱処理
工程として、雰囲気圧力が6.67×104Pa、基板
結晶1の温度が2230℃、炭化珪素4と基板結晶1の
間の温度差が60℃(炭化珪素4の温度=2290℃)
となるようにして24時間の熱処理を行った。
【0085】このような工程を経て得られた基板結晶を
(0001)面に平行に鏡面研磨した後、微分干渉顕微
鏡と偏光顕微鏡を用いてその表面を詳細に観察した。そ
の結果、マイクロパイプ欠陥6のうち開口部が結晶表面
に露出していたものは全体の約45%であり、残り約5
5%は鏡面研磨面において開口部を持たない状態、すな
わち完全に塞がれた状態になっていた。
【0086】このような工程で得られた基板結晶1を用
いて、再度上記プロセスを繰り返した。その後、得られ
た基板結晶1を(0001)面に平行に鏡面研磨した
後、微分干渉顕微鏡と偏光顕微鏡を用いてその表面を詳
細に観察した。その結果、マイクロパイプ欠陥6のうち
開口部が結晶表面から露出していたものは全体の約25
%であり、残り約75%のものは鏡面研磨面において開
口部を持たない状態、すなわち完全に塞がれた状態にな
っていた。
【0087】以上のプロセスをさらに2回繰り返すこと
によって、最終的なマイクロパイプ欠陥密度は約5cm
-2まで減少した。
【0088】(実施例3)本実施例は、実施例1に対し
て、図5に示す熱処理装置を用いた場合を示している。
【0089】まず欠陥密度が約50cm-2のマイクロパ
イプ欠陥6を有する厚さ300μmの4H多形のSiC
単結晶で構成された基板結晶1を用意し、この基板結晶
1のC面に被覆材料5として3C−SiCのエピタキシ
ャル膜をCVD法を用いて約15μmの厚さで両面に形
成した。
【0090】微分干渉顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型電子
顕微鏡を用いて観察したところ、マイクロパイプ欠陥6
の開口部は3C−SiCのエピタキシャル膜によって隙
間なく塞がれていた。なお、基板結晶1の表面は(00
01)ジャスト面を用いており、3C−SiCのエピタ
キシャル膜は(111)面を成長面として成膜されてい
る。
【0091】次に、基板結晶1を図5に示した熱処理装
置に配置した。マイクロパイプ欠陥閉塞熱処理工程とし
て、雰囲気圧力が6.67×104Pa(500Tor
r)、基板結晶1の温度が2390℃、炭化防止材料4
としてのSiCとSiの混合粉末と基板結晶1の間の温
度差が数℃(炭化防止材料4の温度=2400℃)とな
るようにして24時間の熱処理を行った。
【0092】このような工程を経て得られた基板結晶を
(0001)面に平行に鏡面研磨した後、微分干渉顕微
鏡と偏光顕微鏡を用いてその表面を詳細に観察した。そ
の結果、マイクロパイプ欠陥6のうち開口部が結晶表面
から露出していたものは全体の約10%であり、残り約
90%は鏡面研磨面において開口部を持たない状態、す
なわち完全に塞がれた状態になっていた。
【0093】このような工程で得られた基板結晶1を種
結晶として、昇華法成長を行った。その後、得られた4
H多形の単結晶インゴットから基板結晶2を切り出し、
鏡面研磨した後、偏光顕微鏡を用いてマイクロパイプ欠
陥密度を評価した。その結果、マイクロパイプ欠陥密度
は、マイクロパイプ欠陥閉塞工程を施す前には約50c
-2であったのが約5cm-2に減少していた。
【0094】そして、上記全工程を再度繰り返した結
果、最終的にマイクロパイプ欠陥密度が約0.5cm-2
まで減少した。
【0095】(実施例4)本実施例は、実施例1に対し
て被覆材料5の表面保護部材を用いなかった場合を示し
ている。
【0096】まず欠陥密度が約50cm-2のマイクロパ
イプ欠陥6を有する厚さ300μmの4H多形のSiC
単結晶で構成された基板結晶1を用意し、この基板結晶
1のC面に被覆材料5として3C−SiCのエピタキシ
ャル膜をCVD法を用いて約15μmの厚さで形成し
た。
【0097】微分干渉顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型電子
顕微鏡を用いて観察したところ、マイクロパイプ欠陥6
の開口部は3C−SiCのエピタキシャル膜によって隙
間なく塞がれていた。なお、基板結晶1の表面は(00
01)ジャスト面を用いており、3C−SiCのエピタ
キシャル膜は(111)面を成長面として成膜されてい
る。
【0098】次に、上記第1実施例で用いた被覆材料5
の表面保護部材を用いずに、基板結晶1を図1に示した
熱処理装置に配置した。マイクロパイプ欠陥閉塞熱処理
工程として、雰囲気圧力が6.67×104Pa、基板
結晶1の温度が2390℃、炭化珪素4と基板結晶1の
間の温度差が10℃(炭化珪素4の温度=2400℃)
となるようにして24時間の熱処理を行った。
【0099】このような工程を経て得られた基板結晶1
を(0001)面に平行に鏡面研磨した後、微分干渉顕
微鏡と偏光顕微鏡を用いてその表面を詳細に観察した。
その結果、マイクロパイプ欠陥6のうち開口部が結晶表
面から露出していたものは全体の約85%であり、残り
約15%が鏡面研磨面において開口部を持たない状態、
すなわち完全に塞がれた状態になっていた。
【0100】このような工程で得られた基板結晶1を種
結晶として、昇華法成長を行った。その後、得られた4
H多形の単結晶インゴットから基板結晶2を切り出し、
鏡面研磨した後、偏光顕微鏡を用いてマイクロパイプ欠
陥密度を評価した。その結果、マイクロパイプ欠陥密度
は、マイクロパイプ欠陥閉塞工程を施す前には約50c
-2であったのが約45cm-2に減少しただけであっ
た。
【0101】そして、上記全工程を再度、繰り返した結
果、最終的にマイクロパイプ欠陥密度が約40cm-2
で僅かに減少した。
【0102】このように、表面保護部材がない場合にも
マイクロパイプ欠陥6が閉塞されるが、被覆材料5が熱
エッチングされるため、表面保護部材がある場合と比べ
てマイクロパイプ欠陥6の閉塞が十分でないといえる。
【0103】(実施例5)本実施例は、上記実施形態に
おける熱処理の温度条件よりも比較的低温で熱処理を行
った場合である。
【0104】まず欠陥密度が約50cm-2のマイクロパ
イプ欠陥6を有する厚さ300μmの4H多形のSiC
単結晶で構成された基板結晶1を用意し、この基板結晶
1のC面に被覆材料5として3C−SiCのエピタキシ
ャル膜をCVD法を用いて約15μmの厚さで形成し
た。
【0105】微分干渉顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型電子
顕微鏡を用いて観察したところ、マイクロパイプ欠陥6
の開口部は3C−SiCエピタキシャル膜によって隙間
なく塞がれていた。なお、基板結晶1の表面は(000
1)ジャスト面を用いており、3C−SiCエピタキシ
ャル膜は(111)面を成長面として成膜されている。
【0106】次に、上記被覆材料5の表面に厚さ約80
0μmのグラフィト板をカーボン系接着剤で固定した状
態で、基板結晶1を図1に示した熱処理装置に配置し
た。マイクロパイプ欠陥閉塞熱処理工程として、雰囲気
圧力が6.65×104Pa、基板結晶1の温度が21
00℃、炭化珪素4と基板結晶1の間の温度差が10℃
となるようにして24時間の熱処理を行った。
【0107】このような工程を経て得られた基板結晶を
(0001)面に平行に鏡面研磨した後、微分干渉顕微
鏡と偏光顕微鏡を用いてその表面を詳細に観察した。そ
の結果、マイクロパイプ欠陥6のうち開口部が結晶表面
から露出していたものは全体の約80%であり、残り約
20%は鏡面研磨面において開口部を持たない状態、す
なわち完全に塞がれた状態になっていた。
【0108】このような工程で得られた基板結晶1を種
結晶として、昇華法成長を行った。その後、得られた4
H多形の単結晶インゴットから基板結晶2を切り出し、
鏡面研磨した後、偏光顕微鏡を用いてマイクロパイプ欠
陥密度を評価した。その結果、マイクロパイプ欠陥密度
は、マイクロパイプ欠陥閉塞工程を施す前には約50c
-2であったのが約40cm-2に減少していた。
【0109】そして、上記全工程を再度、繰り返した結
果、最終的にマイクロパイプ欠陥密度が約30cm-2
で減少した。
【0110】このように、上記温度条件より比較的低温
であってもマイクロパイプ欠陥6を閉塞する効果が得ら
れるが、第1実施形態で示した温度条件とするのが好適
であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を適用する熱処理装置内
に基板結晶1を配置したときの図である。
【図2】図1に示す基板結晶1の近傍を拡大した図であ
る。
【図3】マイクロパイプ欠陥閉塞工程としての熱処理を
行った後における基板結晶1の様子を示す図である。
【図4】マイクロパイプ欠陥閉塞のメカニズムを説明す
るための図である。
【図5】炭化防止材料を配置した熱処理装置を説明する
ための図である。
【符号の説明】
1…基板結晶、2…るつぼ、3…蓋体、4…炭化珪素原
料、5…被覆材料、6…マイクロパイプ欠陥、7…閉塞
孔。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉山 尚宏 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 谷 俊彦 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 神谷 信雄 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 廣瀬 富佐雄 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 Fターム(参考) 4G077 AA10 BE08 DA01 DB01 ED01 FE07 FE11 FE19 5F045 AB06 AF02 AF12 BB12 HA16

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マイクロパイプ欠陥(6)を有する炭化
    珪素単結晶からなる基板結晶(1)を用意する工程と、 前記基板結晶に形成された前記マイクロパイプ欠陥の開
    口部の少なくとも一方を被覆材料(5)で被覆する被覆
    工程と、 熱処理を施すことにより、前記基板結晶に存在する前記
    マイクロパイプ欠陥を前記基板結晶の内部で閉塞させ、
    前記マイクロパイプ欠陥の少なくとも一部を閉塞孔
    (7)にする閉塞工程と、 前記マイクロパイプ欠陥の一部が閉塞孔となった前記基
    板結晶の前記被覆材料を除去したのち、該基板結晶を種
    結晶として炭化珪素単結晶を成長させる成長工程とを含
    み、 前記成長させた炭化珪素単結晶を再度基板結晶として、
    前記被覆工程、前記閉塞工程及び成長工程を少なくとも
    一回繰り返し、該基板結晶に形成されているマイクロパ
    イプ欠陥を閉塞させることを特徴とする炭化珪素単結晶
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 マイクロパイプ欠陥(6)を有する炭化
    珪素単結晶からなる基板結晶(1)を用意する工程と、 前記基板結晶に形成されたマイクロパイプ欠陥の開口部
    の少なくとも一方を被覆材料(5)で被覆する被覆工程
    と、 熱処理を施すことにより、前記基板結晶に存在する前記
    マイクロパイプ欠陥を前記基板結晶の内部で閉塞させ、
    前記マイクロパイプ欠陥の少なくとも一部を閉塞孔
    (7)にする閉塞工程とを有し、 前記マイクロパイプ欠陥が閉塞孔となった前記基板結晶
    の前記被覆材料を除去したのち、再度、前記被覆工程及
    び前記閉塞工程を行う工程を少なくとも一回繰り返し、
    前記基板結晶に形成されているマイクロパイプ欠陥を閉
    塞させることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記閉塞工程では、前記熱処理温度を2
    200〜2500℃とすることを特徴とする請求項1又
    は2に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記被覆工程では、前記基板結晶のうち
    の(000−1)C面を前記被覆材料で被覆することを
    特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の炭化
    珪素単結晶の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記被覆工程では、前記被覆材料の表面
    に、該被覆材料が熱エッチングされることを防止するた
    めの表面保護膜を配置する工程を含むことを特徴とする
    請求項1乃至4のいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記閉塞工程では、前記被覆材料で被覆
    された前記基板結晶を炭化防止材料で覆った状態で前記
    熱処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれ
    か1つに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記基板結晶として4H多形の炭化珪素
    単結晶を用いることを特徴とする請求項1乃至6のいず
    れか1つに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至7のいずれか一つに記載の
    炭化珪素単結晶製造方法を用いて製造された、マイクロ
    パイプ欠陥が閉塞された閉塞孔を有する基板結晶を種結
    晶として、該種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させるこ
    とを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
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