JP2001152319A - 密着性に優れた表面処理層を有する表面処理金属部材、その表面処理方法、及びその表面処理方法を用いてなる回転機器用部材 - Google Patents

密着性に優れた表面処理層を有する表面処理金属部材、その表面処理方法、及びその表面処理方法を用いてなる回転機器用部材

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JP2001152319A
JP2001152319A JP33474399A JP33474399A JP2001152319A JP 2001152319 A JP2001152319 A JP 2001152319A JP 33474399 A JP33474399 A JP 33474399A JP 33474399 A JP33474399 A JP 33474399A JP 2001152319 A JP2001152319 A JP 2001152319A
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dlc
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Keizo Tamai
啓三 玉井
Kazunori Fukada
一徳 深田
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Kohan Kogyo Co Ltd
Original Assignee
Kohan Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 母材の金属部材とその表面に形成する表面処
理層の密着性、および表面処理層の耐摩耗性に優れた表
面処理金属部材、その表面処理方法、および表面処理方
法を用いてなる回転機器用部材を提供する。 【解決手段】 金属部材表面上に窒化層3とさらにその
上層のDLC層4とからなる表面処理層、または窒化層
とその上層のタングステンおよび/またはタングステン
カーバイドからなる中間層5と、さらにその上層のDL
C層4とからなる表面処理層を形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、密着性および耐摩
耗性に優れた表面処理層を有する表面処理金属部材、そ
の表面処理方法、および表面処理方法を用いてなる回転
機器用部材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、エアーモーターのベーンなど、高
速回転による摩耗、損傷、焼き付きなどが生じやすい部
分の部材として、耐摩耗性に優れたダイス鋼や高速度鋼
などが使用され、耐摩耗性を向上させるために、さらに
表面に窒化層などを形成する表面処理が施されている。
しかし、窒化層を構成する窒素化合物が母材から剥離し
やすく、使用寿命は極めて短く、また窒化処理層は形成
条件が難しく、生産性に乏しい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような状況に鑑
みて、本発明は母材の金属部材とその表面に形成する表
面処理層の密着性、および表面処理層の耐摩耗性に優れ
た表面処理金属部材、その表面処理方法、および表面処
理方法を用いてなる回転機器用部材を提供することを課
題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】請求項1の表面処理金属
部材は、金属部材表面上に、窒化層とさらにその上層の
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層とからなる表
面処理層を有することを特徴とする。請求項2の表面処
理金属部材は、金属部材表面上に、窒化層、タングステ
ンおよび/またはタングステンカーバイドからなる層、
およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)層を、下
から順に形成させてなる表面処理層を有することを特徴
とする。請求項3の表面処理金属部材は、前記金属部材
が鋼材であることを特徴とする。請求項4の金属部材の
表面処理方法は、金属部材表面に窒化層を形成させ、次
いでその表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)
層を設けることを特徴とする。請求項5の金属部材の表
面処理方法は、金属部材表面に窒化層を形成させ、次い
でその表面にタングステンおよび/またはタングステン
カーバイドからなる層を形成させ、さらにその表面にダ
イヤモンドライクカーボン(DLC)層を設けることを
特徴とする。請求項6の金属部材の表面処理方法は、前
記窒化層を、グロー放電光輝窒素拡散法を用いて形成さ
せることを特徴とする。請求項7の金属部材の表面処理
方法は、前記ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層
を、イオン化蒸着法を用いて形成させることを特徴とす
る。請求項8の回転機器用部材は、金属部材からなる回
転機器用部材の表面に、前記のいずれかの表面処理方法
を用いて表面処理層を形成させてなることを特徴とす
る。請求項9の回転機器用部材は、エアモーター用部材
であることを特徴とする。請求項10のエアモーター用
部材は、ローター、シリンダー、フロントシリンダカバ
ー、またはリアシリンダカバーのいずれか1つまたは2
つ以上であることを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明においては、金属部材表面
上に、窒化層とさらにその上層のダイヤモンドライクカ
ーボン(以下DLCで示す)層とからなる表面処理層を
形成させることにより、密着性、および耐摩耗性に優れ
た表面処理層を有する表面処理金属部材が得られること
が判明した。以下、本発明の実施形態を詳細に説明す
る。
【0006】図1は請求項1の表面処理金属部材の概略
断面である。表面処理金属部材1は、金属部材2の上に
窒化層3とDLC層4が形成されてなる。図2は請求項
2の表面処理金属部材の概略断面である。表面処理金属
部材1は、金属部材2の上に下から順に窒化層3、タン
グステンおよび/またはタングステンカーバイドからな
る層5、およびDLC層4が形成されてなる。
【0007】金属部材2としては、炭素鋼、合金鋼、工
具鋼、ステンレス鋼、高速度鋼、マルエージング鋼など
の鋼材や、チタン、チタン合金などを用いることができ
る。
【0008】窒化層3は従来のガス窒化法、溶融塩窒化
法を用いて形成することもできるが、減圧下で高温の水
素およびアンモニアの混合ガス雰囲気中でグロー放電さ
せる光輝窒素拡散法(以下、ラジカル窒化法という)を
用いて形成することにより、母材の金属部材との密着
性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐熱衝撃性、耐熱疲労性に優
れた窒化層が得られる。
【0009】DLC層4は、スパッタ法、アークイオン
プレーティング法、CVD法、プラズマCVD法、熱フ
ィラメント法などのいずれの方法を用いて形成すること
ができるが、炭素または炭化水素イオンを用いるイオン
化蒸着法を用いて形成することにより、下地の窒化層と
の密着性、および耐摩耗性に特に優れたDLC皮膜が得
られる。
【0010】また、窒化層3とDLC層4との密着性を
向上させるために、中間層としてシリコン、ゲルマニウ
ム、タングステン、モリブデン、シリコンカーバイド、
チタンカーバイド、タングステンカーバイド、シリコン
ナイトライド、チオタンナイトライドなどの1種または
2種以上を介在させることもできる。これらの中でタン
グステンおよび/またはタングステンカーバイドを用い
ることが特に好ましい。これらの中間層はスパッタ法、
アークイオンプレーティング法などを用いて形成させる
ことができる。
【0011】次に、本発明の表面処理金属部材の製造方
法について説明する。まず、金属部剤表面に窒化層を形
成させる。母材となる金属部材を有機溶媒系洗浄剤や水
系洗浄剤などを用いて洗浄し、汚れ、油脂、ゴミなどを
除去した後、金属部材を真空炉内に設けた陰極上に載
せ、真空炉内を0.13Pa程度まで排気減圧し、水素
とアンモニアの混合ガス雰囲気中で400〜580℃に
加熱し、真空炉内に設けた陽極との間に300〜500
Vの直流電圧を印加し、グロー放電によりガスをイオン
化し、1〜30時間処理して金属部剤の表面に窒素を拡
散させる。その後、窒素ガス雰囲気中または減圧下で自
然放冷する。このようにしてビッカース硬度(荷重:
0.98N)1000以上の硬度を有する10〜300
μmの厚さの窒化層が得られる。
【0012】次いで、上記のようにして形成させた前記
の窒化層上に、選択的に中間層を形成させる。上記のよ
うに、中間層として半導体、金属、炭化物、窒化物のい
ずれの層も適用できるが、窒化処理層およびDLC層と
の密着性の点から、ダイヤモンドとの熱膨張計数の差が
小さいタングステン、またはタングステンカーバイド、
もしくはタングステンとタングステンカーバイドの両方
からなる層を設けることにより、窒化処理層およびDL
C層との密着性がさらに向上する。形成方法としてはア
ークイオンプレーティング法を用いる。真空槽内にタン
グステンまたはタングステンカーバイドのターゲット
と、窒化層を形成した金属部材を配置し、1.3 x 1
-3Paの真空程度まで排気減圧した後、アルゴンなど
の不活性ガスとアセチレンなどの炭化水素ガスを導入し
て0.13Pa程度の真空度とする。次いでターゲット
に100〜180Aの電流を流してイオン(プラス)を
放出させ、金属部材をイオンと反対の極性(マイナス)
に50〜400Vの電圧を印加することにより、5〜3
0分の処理時間で0.1〜0.5μmの厚さのタングステ
ンまたはタングステンカーバイドの皮膜が得られる。タ
ングステンおよびタングステンカーバイドの両方の皮膜
を得る場合は、真空槽内に両方のターゲットを配置して
交互に皮膜を生成させるか、どちらか一方のターゲット
を真空槽内に配置してそのターゲットの皮膜を形成した
後、もう一方のターゲットに取り替え、そのターゲット
の皮膜を形成する。
【0013】次に窒化層上、または窒化層上に形成した
中間層上に、イオン化蒸着法を用いてDLC層を形成さ
せる。真空槽内に上記のいずれかの表面処理層を形成し
た金属部材を配置し、真空槽内を1.3 x 10-3Pa
程度まで排気減圧した後、メタンなどの炭化水素ガス、
またはそれと水素との混合ガス、もしくはそれらにさら
にアルゴン、ネオン、ヘリウムなどの不活性気体のキャ
リヤーガスを添加した混合ガスを真空槽内に導入して
0.13Pa程度とする。真空槽内に設けた熱陰極フィ
ラメントに交流電流を流して加熱し、真空槽内に設けた
熱陰極フィラメントを囲むように設けた対陰極とフィラ
メントの間に100〜300Vの電圧を印加して放電さ
せると炭化水素ガスは熱分解するとともにフィラメント
からの熱電子と衝突してイオン(プラス)化する。イオ
ンはイオンと反対の極性(マイナス)に400〜150
0Vに印加した金属部材に衝突して、DLC皮膜を生成
する。5〜60分の処理時間で、ビッカース硬度(荷
重:0.98N)4000以上の硬度を有する0.05
〜1μmの厚さのDLC皮膜が得られる。以上のように
して、母材の金属部材と表面処理層との密着性および耐
摩耗性に優れた表面処理金属部材が得られる。
【0014】本発明の表面処理方法は、回転機器用部材
に好適に適用できる。回転機器の例としてはベーン型エ
アモーターがあるが、エアモーター用部材としてロータ
ーとシリンダー、フロントシリンダカバー、およびリア
シリンダカバーに本発明の表面処理層を形成して耐磨耗
性を向上させることにより、使用寿命を大幅に増大する
ことができる。
【0015】図3はベーン型エアモーターの外観図で、
モーターの周囲はモーターケース19とエンドカバー2
0で囲われており、モーターケース19の外壁には空気
供給孔19Aが穿設されている。図4はエアモーターの
内部の構造を示す横断面図、図5はエアモーターを直角
方向から見た横断面図で、モーターの中心に存在するロ
ーター12は、シリンダー14の偏芯位置に加工された
円筒孔14Cの内壁14Dに接近して配設されている。
ローター12の両端12A及び12Bはローター12及
びシリンダー14の両側に配設されているフロントシリ
ンダーカバー15とリアシリンダーカバー16にそれぞ
れ嵌着された軸受け17及び18で支持されている。
【0016】また、シリンダー14、フロントシリンダ
ーカバー15、リアシリンダーカバー16はモーターケ
ース19の円筒孔19C内に嵌着され、エンドカバー2
0のねじ部20Aで固定されている。モーターケース1
9の内部であるシリンダー側にはシリンダー14の内壁
が敷設されており、ベーン31および35はその中に格
納されている。
【0017】ローター12の表面に穿設された溝12C
1にはベーン31が埋設され、同様にして他の溝(12
C2〜12C6)にはベーン32〜36がスライド可能
に配設され、ローター12の回転に従ってベーン31〜
36は溝12C1〜12C6の中を半径方向にスライド
して移動する。ローター12はシリンダー14内に偏芯
した状態で敷設されていて、シリンダー14も内壁との
間に空孔21を形成している。
【0018】シリンダー14の内壁の一部には、給気用
の空気室14Cおよび排気用空気室19Cが形成されて
おり、この空気室14Cおよび19Cはシリンダー14
に貫通穿設されている空気供給孔14Aまたは空気排気
孔14Bと連絡し、さらに空気供給孔14Aはモーター
ケース19の外壁に敷設されている空気供給孔14Aと
連絡している。また同様にして、空気排気孔14Bは、
モーターケース19の外壁に敷設されている空気排気孔
19Aと連結している。なお、モーターベーンの回転
は、時計の回転方向に対して正逆いずれの方向にも回転
可能なように、切替弁(図示せず)が付属している。
【0019】図5において空気供給孔19Aから高圧空
気を供給してモーターベーンを反時計方向へ回転させる
と、空気供給孔19Aよりシリンダー14の空気供給孔
14Aを経由してシリンダー14内の空気室14Cに吸
入され、ベーン31に作用するとローター12は反時計
方向へ回転力を受けて回転する。空気流は空気室14
C、空孔21およびベーンの移動作用により、ローター
12を回転させ、圧縮空気は最終的にはシリンダー14
の排気孔14Bを経由してモーターケースの排気孔19
Bから大気中に排出される。このようにして、ローター
12は連続的に反時計方向に回転する。
【0020】この場合、例えばローター12は500K
Paの圧力を受けて10000rpmで回転する。した
がって、ベーンの周辺部材はタービン油などの潤滑剤を
供給しないと、早期に摩耗や焼き付きを生じて、回転不
能や性能低下のトラブルが発生する。このように、ベー
ンと摺動接触するローター12、シリンダー14の内
壁、フロントシリンダーカバー15、リアシリンダーカ
バー16は、摩耗作用により摩滅し、放置しておくと脆
化し破損に至る。そのためこれらの部材に本発明の密着
性と対磨耗性に優れた表面処理層を形成させることによ
り、エアーモーターの使用寿命を大幅に増大することが
できる。
【0021】
【実施例】以下、順を追って本発明の表面処理層の形成
方法を説明する。 (実施例1) [ラジカル窒化]図6は本発明のラジカル窒化法の窒化装
置の概略図である。真空槽50の外壁の内部には加熱ヒ
ーター70が配置されている。真空槽50の内部には直
流電源71に接続された試料載置台を兼ねる陰極72と
陽極73が配置されている。真空槽50の下部には排気
管が接続され、圧力調整用バルブを介して真空ポンプに
接続されている。真空槽50の上部から原料ガス供給用
のノズルが挿入されており、水素ガス、アンモニアガス
が供給源から供給されるようになっている。陰極72の
上に金属部材74が配置される。金属部材として、ロッ
クウェル硬度(Cスケール)が約50となるように熱処
理を施したSKD61合金工具鋼の試片を平均表面粗さ
(Ra)0.001μmとなるように研磨してなる基材
74をアセトンで脱脂洗浄し、真空槽50内の陰極72
の上に載置し、固定した後、真空槽内を0.13Paま
で排気した。次いで、水素ガス70%とアンモニアガス
30%からなる混合ガスを真空槽50に導入し、真空槽
50の外壁に設けた加熱ヒーター70に通電して真空槽
内部を480℃に加熱した、陰極72と陽極73の間に
420Vの直流電圧を印加し、グロー放電を生じさせて
ガスをイオン化し、6時間経時した後、加熱、通電、お
よびガスの供給を停止し減圧下で自然放冷した。このよ
うにして基材表面に表面から0.1mm の深さまで窒化
物層を形成させた。
【0022】[中間層の形成]図7は中間層を形成させる
ためのアークイオンプレーティング装置の概略図であ
る。真空槽80の内部には定電流電源81の陰極に接続
されたタングステンのターゲット82と陽極に接続され
たアノード83、およびアース電位に対してマイナスの
電位となるように直流電源84の陰極に接続された基材
85が配置されている。真空槽80の下部には排気管が
接続され、圧力調整用バルブを介して真空ポンプに接続
されている。真空槽80の上部からガス供給用のノズル
が挿入されており、炭化水素ガス、アルゴンガスなどの
不活性ガスが供給源から供給されるようになっている。
【0023】上記のラジカル窒化法により、表面に窒化
層を形成した基材85、タングステンのターゲット8
2、およびアノード83を真空槽80内に配置した後、
真空槽内を4×10-3Pa まで排気した。次いで、定
電流電源から通電し、タングステンイオン衝撃により基
材85の表面を洗浄し、加熱した後、アセチレンガス9
0%とアルゴンガス10%からなる混合ガスを真空槽8
0に導入し、圧力を0.26Paとした。そして低電流
電源から150Aの電流を通電してターゲットからアー
ク放電によりタングステンイオンを放出させると共に、
ローター84には−300Vのバイアス電圧を印加し、
10分間経時した後、通電、およびガスの供給を停止し
減圧下で自然放冷した。このようにして基材表面に20
0nmの厚さのタングステンの層を形成させた。
【0024】[DLC層の形成]図8はDLCを形成させ
るためのイオン化蒸着装置の概略図である。真空槽90
の内部には陰極91に接続された基材95、熱陰極フィ
ラメント92、熱陰極フィラメント92を囲むように設
けられた対陰極93が配置されている。真空槽90の下
部には排気管が接続され、圧力調整用バルブを介して真
空ポンプに接続されている。真空槽90の上部からガス
供給用のノズルが挿入されており、炭化水素ガスが供給
源から供給されるようになっている。
【0025】上記のラジカル窒化法およびアークイオン
プレーティング法により、表面に窒化物層とタングステ
ン層を形成した基材95を陰極裏面に接続真空槽90内
に配置した後、真空槽内を1.3×10-2Paまで排気
した。次いで、メタンガスを真空槽90に導入し、圧力
を0.26Paとした。そして熱陰極フィラメント92
に交流電流を30Aを流してフィラメントを加熱し、熱
陰極フィラメント92と対陰極93の間にアース電位に
対して200Vの電圧を印加して放電を発生させ、メタ
ンガスをイオン化した。そして陰極91(基材95)と
対陰極の間にアース電位に対して−1000Vの電圧を
印加し、1時間経時した後、通電、およびガスの供給を
停止し減圧下で自然放冷した。このようにして基材表面
に 1.0μmの厚さのDLC層を形成させた。
【0026】(実施例2)実施例1と同一のSKD61
合金工具鋼からなる基材に、実施例1の中間層の形成に
おいて、タングステンのターゲットの変わりにタングス
テンカーバイドのターゲットを用いてタングステンカー
バイドからなる層を形成させた以外は、実施例1と同様
にしてラジカル窒化層と、中間層と、DLC層を順に形
成させた。中間層の形成における実施例1の場合と異な
る条件は以下の通りとした。。 ターゲット :タングステンカーバイド ガス圧力 :0.4Pa 放電電流 :170A バイアス電圧:−300V 処理時間 :20分 上記の条件にて、厚さ200nmのタングステンカーバ
イドの層を形成させた。
【0027】(実施例3)実施例1と同一のSKD61
合金工具鋼からなる基材に、実施例1の中間層を形成さ
せない以外は、実施例1と同様にしてラジカル窒化層
と、その上に直接DLC層を形成させた。
【0028】(比較例)比較例として、実施例1と同一
のSKD61合金工具鋼からなる基材に、実施例例1の
ラジカル窒化層および中間層を形成させず、実施例1と
同様にして基材上に直接DLC層を形成させた。
【0029】[特性評価]実施例1〜3および2と比較例
の表面処理を施した基材の表面処理層の密着性を、薄膜
評価試験機(CSEM社製Revetest)を用い、
スクラッチが発生する臨海荷重を測定し評価した。結果
を表1に示す。
【0030】
【0031】表1に示すように、合金工具鋼表面にラジ
カル窒化層を形成した上にさらにDLC層を形成させる
と、直接合金工具鋼表面にDLC層を形成させた場合に
比べ、スクラッチが発生する臨海荷重が大きく、密着性
に優れており、ラジカル窒化層とDLC層の間にタング
ステンやタングステンカーバイドからなる中間層を介在
させると、スクラッチが発生する臨海荷重はさらに大き
くなり、密着性は一層向上することが分かる。
【0032】
【発明の効果】本発明の、金属部材表面上にラジカル窒
化層とさらにその上層のDLC層とからなる表面処理
層、またはラジカル窒化層とその上層のタングステンお
よび/またはタングステンカーバイドからなる中間層
と、さらにその上層のDLC層とからなる表面処理層を
形成させた表面処理金属部材は密着性に優れている。そ
のため耐磨耗性にも優れているので、エアーモーターの
ような回転機器の部材であるローター、シリンダー、フ
ロントシリンダカバー、またはリアシリンダカバーのい
ずれか1つまたは2つ以上に好適に適用する事ができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面処理金属部材の一例の概略断面である。
【図2】表面処理金属部材の他の一例の概略断面であ
る。
【図3】ベーン型エアモーターの外観図である。
【図4】エアモーターの内部の構造を示す横断面図であ
る。
【図5】エアモーターを直角方向から見た横断面図であ
る。
【図6】ラジカル窒化装置の概略図である。
【図7】中間層を形成させるためのアークイオンプレー
ティング装置の概略図である。
【図8】DLCを形成させるためのイオン化蒸着装置の
概略図である。
【符号の説明】
1 :表面処理金属部材 2 :金属部材 3 :窒化層 4 :DLC層 5 :タングステンおよび/またはタングステンカーバ
イドからなる層 12 :ローター 14 :シリンダー 14A:シリンダーの空気供給孔 14B:シリンダーの排気孔 14C:シリンダーの給気用空気室 15 :フロントシリンダーカバー 16 :リアシリンダーカバー 17 :軸受 18 :軸受 19 :モーターケース 19A:モーターケースの空気供給孔 19B:モーターケースの排気孔 19C:シリンダーの排気用空気室 20 :エンドカバー 21 :空孔 31 :ベーン 35 :ベーン 50 :真空槽 70 :加熱ヒーター 71 :直流電源 72 :陰極 73 :陽極 74 :金属部材(基材) 80 :真空槽 81 :定電流電源 82 :ターゲット 83 :アノード 84 :直流電源 85 :基材 90 :真空槽 91 :陰極 92 :熱陰極フィラメント 93 :対陰極 95 :基材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F01C 21/08 F01C 21/08

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属部材表面上に、窒化層とさらにその
    上層のダイヤモンドライクカーボン(DLC)層とから
    なる表面処理層を有する表面処理金属部材。
  2. 【請求項2】 金属部材表面上に、窒化層、タングステ
    ンおよび/またはタングステンカーバイドからなる層、
    およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)層を、下
    から順に形成させてなる表面処理層を有する表面処理金
    属部材。
  3. 【請求項3】 前記金属部材が鋼材であることを特徴と
    する、請求項1または2に記載の表面処理金属部材。
  4. 【請求項4】 金属部材表面に窒化層を形成させ、次い
    でその表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)層
    を設けることを特徴とする、金属部材の表面処理方法。
  5. 【請求項5】 金属部材表面に窒化層を形成させ、次い
    でその表面にタングステンおよび/またはタングステン
    カーバイドからなる層を形成させ、さらにその表面にダ
    イヤモンドライクカーボン(DLC)層を設けることを
    特徴とする、金属部材の表面処理方法。
  6. 【請求項6】 前記窒化層を、グロー放電光輝窒素拡散
    法を用いて形成させることを特徴とする、請求項4また
    は5に記載の金属部材の表面処理方法。
  7. 【請求項7】 前記ダイヤモンドライクカーボン(DL
    C)層を、イオン化蒸着法を用いて形成させることを特
    徴とする、請求項4または5に記載の金属部材の表面処
    理方法。
  8. 【請求項8】 金属部材からなる回転機器用部材の表面
    に、請求項4〜7のいずれかに記載の表面処理方法を用
    いて表面処理層を形成させてなる、回転機器用部材。
  9. 【請求項9】 前記回転機器用部材がエアモーター用部
    材であることを特徴とする、請求項8に記載の回転機器
    用部材。
  10. 【請求項10】 前記エアモーター用部材がローター、
    シリンダー、フロントシリンダカバー、またはリアシリ
    ンダカバーのいずれか1つまたは2つ以上である、請求
    項9に記載のエアモーター用部材。
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