JPH10226874A - 硬質炭素膜及びその被覆部材 - Google Patents

硬質炭素膜及びその被覆部材

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JPH10226874A
JPH10226874A JP3477297A JP3477297A JPH10226874A JP H10226874 A JPH10226874 A JP H10226874A JP 3477297 A JP3477297 A JP 3477297A JP 3477297 A JP3477297 A JP 3477297A JP H10226874 A JPH10226874 A JP H10226874A
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hard carbon
film
carbon film
coating
laminated
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JP3477297A
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Inventor
Kazuhiko Oda
一彦 織田
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 厚膜化を容易にし、内部応力に起因する剥離
を防ぐ硬質炭素膜を被覆した部材を提供する。 【解決手段】 表面側の硬質炭素から成る積層膜3又は4
と基材1側の硬質炭素炭素から成る積層膜4又は3の電気
抵抗率が少なくとも2桁異なる硬質炭素膜2で構成す
る。その間に表面側が高電気抵抗率または表面側が低電
気抵抗率となるような電気抵抗率の順で硬質炭素から成
る中間の積層膜11が積層されている。あるいは、基材1
側から表面側へ向かって電気抵抗率が、厚さ方向に連続
して、大きくあるいは小さくなるように変化し、基材1
側と表面側の硬質炭素膜の電気抵抗率が少なくとも2桁
相違する硬質炭素膜2で構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工具、金型などの
耐摩耗性部品、産業用・一般家庭用の機械部品・摺動部
品、電気・電子部品等のコーティングに用いられる硬質
炭素膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】硬質炭素膜は、ダイヤモンド構造を一部
に有するアモルファス状の炭素膜あるいは水素化炭素膜
で、アモルファスカーボン(a-C、a-C:H)、i-C(アイ
・カーボン)、ダイヤモンド状炭素(Diamond like car
bon ; DLC)などとも呼ばれている。硬質炭素膜は、一
般にヌープ硬度(HK)が1000から8000と高硬度で、多
くの相手材料に対する無潤滑での摩擦係数が0.1から0.2
と極めて低く、軟質金属の離型性が高い。
【0003】硬質炭素膜は、化学的にも安定で、多くの
酸、アルカリに対して極めて高い耐食性を有している。
また、その電気抵抗率は106から1014Ωcmと高い絶縁性
を有し、赤外線に対して高い透過性を有するなど、硬質
炭素膜はダイヤモンドに類似した多くの特性を有してい
る。
【0004】硬質炭素膜は、上記の優れた性質を活かし
て種々の分野への応用が期待されており、特に、耐摩耗
性部品、摺動部品、電気・電子部品、赤外線光学部品お
よび成型・成形部品等へのコーティングに関し開発が進
められている。
【0005】特に近年、ビデオ部品やビデオテープ・ハ
ードディスクなどの潤滑性、耐擦傷性を向上させるため
の保護コーティング、各種回転軸、バルブ類の摩擦係数
低減の潤滑性コーティング、ハンダやAlなど軟質金属の
溶着防止の離型性コーティングなどへの硬質炭素膜の実
用化が著しい。
【0006】硬質炭素膜の形成にはさまざまな手法があ
る。結晶質ダイヤモンド薄膜の合成に適用されているマ
イクロ波プラズマCVD(chemical vapor deposition)
法、ECR(electron cyclotron resonance)プラズマCVD
法、フィラメント法などの他に、各種プラズマ源を用い
たプラズマCVD法、炭素または炭化水素イオンを用いる
イオンビーム蒸着法、固体炭素源からスパッタリングや
アーク放電にて炭素を気化し基体上に成膜する手法等が
ある。対象基材や用途、処理数などによりこれらの手法
は使い分けられている。
【0007】一方、硬質炭素膜のコーティング構造は、
基材の上に直接硬質炭素膜が形成されることが多いが、
一部で密着性を高めるためSiなどの中間膜を導入してい
る例もある。
【0008】さらに、特開平5-65625号公報に示される
ように、硬質炭素膜とバッファ膜と称する膜とを交互に
積層することで硬質炭素膜の内部応力をバッファ膜によ
り緩和させるため厚膜化するものや、特開平6-212429号
公報に示されるように、硬質炭素膜に不純物元素を含有
させることで、内部応力などの特性を改善するものが提
案されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、硬質炭
素膜は非常に高い内部応力を有しており、その内部応力
ゆえ剥離が起きやすい、あるいは厚膜化が困難であるな
どの問題を有している。一般に硬質炭素膜の有する内部
応力は数GPaを超える。
【0010】これは、ハードコーティングで一般的に用
いられるPVD(phasical vapor deposition)法によるTiN
膜に比べ約一桁高い値である。このため、硬質炭素膜厚
が1.5μmを超えるものを得るのは極めて困難で、かつ被
覆可能な基材も限られたものであった。
【0011】こうした課題を解決するため、前述のよう
に中間膜を導入する手法が一部で適用されている。しか
し、中間膜を用いる手法は、基材の種類を拡げることに
は有効であるが、現状では厚膜化における剥離等の未解
決の問題がある。
【0012】一方、特開平5-65625号公報に示される硬
質炭素膜とバッファ膜を交互に積層した積層膜は、厚膜
化には有効な手法である。しかし、この構造の硬質炭素
膜を被覆した部材は、その使用法によってはバッファ膜
と硬質炭素膜との界面において剥離する例が見られるこ
ともあり、基材との密着性の問題とは別に、膜同士の界
面の密着性が不十分という問題も有している。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明では、以下の硬質炭素膜を提供する。1)成分
が炭素、または炭素と水素からなり、基材側と表面側の
電気抵抗率が少なくとも2桁相違しているもの、2)基材
側と表面側の電気抵抗率が厚さ方向に不連続に変化し、
基材側と表面側の電気抵抗率が少なくとも2桁相違して
いるもの、3)基材側と表面側の電気抵抗率が厚さ方向に
連続して、大きく若しくは小さく変化し、基材側と表面
側の電気抵抗率が少なくとも2桁相違しているものであ
る。
【0014】さらに、4)電気抵抗率が厚さ方向に繰り返
し変化し、構成される硬質炭素膜の電気抵抗率の最大値
と最小値が少なくとも2桁相違し、繰り返し厚さが1nm
乃至3μmの周期であるもの、5)電気抵抗率が厚さ方向に
繰り返して周期的に不連続に変化し、該繰り返し厚さが
1nm乃至3μmの周期であり、電気抵抗率の最大値と最小
値が少なくとも2桁相違しているもの、6)上記5)での電
気抵抗率の変化が連続して変化するものである。
【0015】そして、上記のいずれかの硬質炭素膜が被
覆されている被覆部材、あるいは、成分が炭素、または
炭素と水素から成る硬質炭素膜以外の中間膜を介して、
上記のいずれかの硬質炭素膜が被覆されている被覆部材
を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】図1(被覆部材の断面模式図であ
る(A)、それに対応した電気抵抗率と硬質炭素膜厚との
関係を示す3つの態様図(B)、(C)、(D)、及び前記(B)、(C)
とは電気抵抗率の高低が逆になっている態様図(E)、(F))
に示すように、硬質炭素膜2は炭素または炭素と水素を
成分とし、電気抵抗率が異なる少なくとも2種類の硬質
炭素から成る積層膜3又は4を積層するか、または表面側
の電気抵抗率(高電気抵抗率または低電気抵抗率)と基材
側の電気抵抗率(低電気抵抗率または高電気抵抗率)の中
間の電気抵抗率を有する積層膜11からなり、表面側の積
層膜3又は4と基材側の積層膜4又は3の電気抵抗率が少な
くとも2桁異なることを特徴とする硬質炭素膜被覆部材
である。
【0017】表面側に高電気抵抗率の硬質炭素から成る
積層膜あるいは低電気抵抗率の硬質炭素からなる積層膜
のいずれを持ってくるかは、用途に応じ使い分ければよ
い。例えば、最表面に導電性を要求する場合には、表面
側を電気抵抗率が低い積層膜とすればよく、耐摩耗性を
重視する場合には、表面側が硬度の高い高電気抵抗率の
積層膜となるようにすればよい。電気抵抗率が2桁以上
異なるのは、内部応力低減の効果を十分に活用するに
は、電気抵抗率が少なくとも2桁は異なることが好まし
いためである。
【0018】なお、図1(B)、(E)は電気抵抗率が異なる
3種類の積層膜3、4、11を用いた電気抵抗率と硬質炭素膜
厚の関係を示し、同(C)、(F)は電気抵抗率が異なる2種
類の積層膜3、4を用いた場合、同(D)は表面側が低電気抵
抗率で基材側が高電気抵抗率となるように順に電気抵抗
率を変えて積層された積層膜11からなる場合を示してい
る。
【0019】図2(被覆部材の断面図(A)と、それに対応
した電気抵抗率と硬質炭素膜厚との関係を示す3つの態
様図(B)、(C)、(D))は、炭素または炭素と水素を成分と
し、基材1側と表面側とで電気抵抗率が徐々に厚さに沿
って変化し、基材側と表面側の硬質炭素膜5の電気抵抗
率が2桁以上異なることを特徴とする硬質炭素膜被覆部
材を示す図である。これは、図1の説明で述べた硬質炭
素膜の構成とは別に、電気抵抗率の異なる硬質炭素の積
層膜同士の界面の無い傾斜構造とすることで、積層膜間
の界面における剥離等の問題を低減するものである。
【0020】なお、図2(B)に示す硬質炭素膜5は、電気
抵抗率が膜厚の方向に連続している状況、同(C)は3種
類の硬質炭素膜のうち中央部分の電気抵抗率が膜厚の方
向に連続している状況、同(D)は硬質炭素膜での電気抵
抗率を順次変えて積層された個々の膜厚の界面で連続さ
せている状況の例を示している。
【0021】図3(被覆部材の断面図(A)と、それに対応
した電気抵抗率と硬質炭素膜厚との関係を示す2つの態
様図(B)、(C))は、炭素または炭素と水素を主成分とし、
電気抵抗率が異なる少なくとも2種類の硬質炭素から成
る積層膜6、7を繰り返し交互に積層した硬質炭素膜12で
被覆が形成され、構成される硬質炭素から成る積層膜6、
7の電気抵抗率が最大と最小で少なくとも2桁異なり、
各積層に該当する繰り返しの厚さが1nm乃至3μmの周期
である硬質炭素膜被覆部材を示す図である。
【0022】この構造は、内部応力の低い低電気抵抗率
の硬質炭素から成る積層膜6と内部応力の高い高電気抵
抗率の硬質炭素から成る積層膜7とを繰り返し積層する
ことで、硬質炭素膜12の厚膜化を効果的に行ない、基材
1側から表面側まで平均的には均質の被覆が得られるこ
とに特徴がある。
【0023】ここで、繰り返しの周期は1nmから3μmの
範囲が望ましい。下限の1nmは、硬質炭素膜がその特性
を維持するのに必要な最低限の周期であり、上限の3μm
は、これ以上周期を厚くすると被覆である硬質炭素膜が
内部応力により破壊してしまうための上限である。
【0024】なお、図3(B)は、硬質炭素膜12が2種類
の硬質炭素から成る積層膜6、7を交互に積層して形成さ
れた場合の電気抵抗率と硬質炭素膜厚関係を示す図であ
り、同(C)は前記2種類の積層膜の間に、中間の電気抵
抗率を有する硬質炭素から成る積層膜を介在して形成さ
れた場合のもの、すなわち3種類の積層膜が積層されて
いる場合を示す図である。
【0025】図4(被覆部材の断面図(A)と、それに対応
した電気抵抗率と硬質炭素膜厚との関係を示す2つの態
様図(B)、(C))は、炭素または炭素と水素を成分とし、電
気抵抗率が少なくとも2桁異なる硬質炭素膜8が形成さ
れ、電気抵抗率の繰り返しの周期が1nm乃至3μmであ
り、電気抵抗率が連続的に変化していることを特徴とす
る硬質炭素膜被覆部材を示す図である。この硬質炭素膜
8は、図3の説明で述べた繰り返し構造とは別の、各硬
質炭素の積層膜同志の界面を無傾斜構造とすることで、
各積層膜の界面の剥離等の問題を低減するものである。
【0026】なお、図4(B)に示すのは、電気抵抗率が
硬質炭素膜厚の方向にやや曲線的に連続している場合、
同(C)は3種類の積層膜のうち中間の電気抵抗率が膜厚
の方向に直線的に連続している例を示している。
【0027】図5に示すように、上記に記載した硬質炭
素膜2、5、8、12のいずれかの硬質炭素膜10を、炭素または
炭素と水素を主成分とする硬質炭素膜以外の少なくとも
1種類の中間膜9(例えば、材料が窒化チタン、窒化クロ
ム)を介して基材1上に積層することができる。
【0028】これは、基材と硬質炭素膜との親和性が極
めて低く硬質炭素膜の応力を低減させても被覆が困難な
場合がある。その場合、基材と硬質炭素膜の両方に親和
性の高い材料を中間膜として導入すると有効である。ま
た、硬質炭素膜をイオンビーム蒸着法などの製法で合成
する場合、基材が導電性を有するほうが合成に有利な場
合がある。このようなとき、基材の表面に各種メッキ
法、PVD法、CVD法などで導電性の中間膜を合成すると、
硬質炭素膜の合成が可能となる場合もある。
【0029】これら中間膜を用いる方法は、従来の硬質
炭素膜においても適用されていることが多いが、本発明
では応力が低い硬質炭素膜を用いるため、従来法では不
可能であった厚膜化も可能とすることができる。
【0030】以下、本発明をどのように実施するかを具
体的に示した実施例を記載する。 (実施例1) 硬質炭素膜被覆部材の構造を模式的に表
現した図1(C)に対応する硬質炭素膜2の形成方法の実施
例を示す。すなわち、アルミ合金製の半導体製造装置用
搬送治具に、高周波プラズマCVD法及びイオンビーム蒸
着法で硬質炭素から成る積層膜を被覆した。
【0031】まず、アルゴンプラズマにて基材表面をク
リーニングし、その後、基材1に高周波を印加してメタ
ンプラズマを発生させ、電気抵抗率が108Ωcm以上の高
抵抗の硬質炭素から成る積層膜を1μm形成した。続い
て、2500eVに加速したベンゼンイオンを基材に照射し電
気抵抗率が20Ωcmの硬質炭素から成る積層膜を15μmの
膜厚に形成した。
【0032】被覆後、表面の平坦度を出すべく研磨を行
なった。従来の硬質炭素膜は、膜厚が約1μmと薄いため
に研磨で除去すべき部分(通称研磨代と称される。)が
不足しており、たとえ研磨が出来たとしても高い内部応
力のため剥離が発生した。しかし、本硬質炭素膜は、膜
厚が16μmと厚く、内部応力が低いこともあって、研磨
が可能となり、精度のよい表面平坦度が得られた。
【0033】本被覆治具を半導体製造装置の搬送機構に
組み込んで使用したところ、治具からの摩耗粉の発生が
極めて少なく、また導電性があるため静電気によるダス
トの吸着もないため、歩留まりが大幅に向上した。
【0034】(実施例2) 硬質炭素膜被覆部材の構造
を模式的に表現した図2(B)に対応する実施例を示す。す
なわち、超硬合金製のアルミ合金絞り型に、デュアルイ
オンビーム蒸着法で硬質炭素膜を被覆した。補助イオン
源にアルゴンガスを導入し、加速エネルギー3000eVのア
ルゴンイオンで基材表面をクリーニングした。続いて、
合成用イオン源から500keVのアセチレンイオンを照射し
て硬質炭素膜の形成を行なった。アセチレンイオンによ
る硬質炭素膜の形成中、同時に補助イオン源から3000eV
のアルゴンイオンを同時照射した。
【0035】アセチレンイオン電流とアルゴンイオン電
流との比は、成膜開始時は1:1とし、徐々にアルゴンイ
オン電流を減少させ、成膜終了時にアセチレンイオンを
100%となるように設定した。処理膜厚は全体で4μmで
あった。そして、成膜開始時に該当する硬質炭素より成
る積層膜の電気抵抗率は3×109Ωcm、成膜終了時に該当
する硬質炭素より成る積層膜の電気抵抗率は2×102Ωcm
であった。
【0036】従来の硬質炭素膜は、本金型には膜厚1.5
μmが限界であり、また高い応力に起因する剥離が頻繁
に起こった。しかし、本発明による硬質炭素膜は、4μm
形成しても剥離が発生しなかった。金型として実際に使
用すると、金型のメンテナンスの間隔が未コーティング
品に比べ100倍以上伸び、従来の硬質炭素膜の被覆部材
に比べても金型寿命が10倍に伸びた。
【0037】(実施例3) 硬質炭素膜被覆部材の構造
を模式的に表現した図3(B)に対応する実施例を超硬合金
製マイクロドリルにカソードアークイオンプレーティン
グ法にて検討した。まず、基材電極をヒーターにより30
0℃まで加熱した。その後、真空槽にアルゴンガスを30m
Torrまで導入し、基材電極にマイナス1000Vの直流電圧
を印加してグロー放電を形成し、基材表面のクリーニン
グを行なった。
【0038】続いて、カーボンターゲットに電圧を印加
してアーク放電を発生させ、基材上に硬質炭素膜を形成
した。この硬質炭素膜は、基材に印加する直流電圧をマ
イナス600Vとマイナス60Vで交互に変化させ、電気抵抗
率が2×102Ωcmとなる硬質炭素から成る積層膜と8×108
Ωcmとなる硬質炭素から成る積層膜を交互に積層し、積
層膜厚10nmの周期にて、合計4.5μmの硬質炭素膜を形成
した。
【0039】比較のため、電気抵抗率が8×108Ωcmの硬
質炭素膜を単膜で4.5μmの膜厚で形成したものも準備し
た。成膜後、2日間大気中に放置しておいたところ、電
気抵抗率8×108Ωcmの硬質炭素膜を単膜で膜厚4.5μm被
覆したマイクロドリルは、表面積の6割以上において剥
離が観察された。
【0040】剥離しなかった電気抵抗率が2×102Ωcmと
なる硬質炭素膜と8×108Ωcmとなる硬質炭素膜を交互に
積層し膜厚10nmの周期で合計4.5μm形成した本発明実施
品であるマイクロドリルを用いて、切削試験を行なった
ところ、本発明の交互積層した硬質炭素膜被覆マイクロ
ドリルの寿命は、従来の硬質炭素膜を1μm被覆したマイ
クロドリルの寿命に比べて、8倍以上長かった。
【0041】(実施例4) 硬質炭素膜被覆部材の構造
を模式的に表現した図4(B)に対応する実施例を、ステン
レス製のシャフト外周に、イオンビーム蒸着法にて硬質
炭素膜を被覆して検討した。まず、加速エネルギー2000
eVのアルゴンイオンにより基材表面をクリーニングし
た。続いて、イオン源にベンゼンガスを導入し、ベンゼ
ンガスイオンを照射して硬質炭素膜の形成を行なった。
このとき、成膜条件は、次の4つのステップを繰り返し
て行なった。
【0042】第1のステップは、加速エネルギーを800e
Vとして0.1μmの硬質炭素から成る積層膜(電気抵抗率は
3×107Ωcm)を形成、第2のステップは、加速エネルギ
ーを800eVから2500eVまで徐々に変化させながら硬質炭
素から成る積層膜を0.1μm形成、第3のステップは、加
速エネルギー2500eVで0.1μmの硬質炭素から成る積層膜
(電気抵抗率は7×102Ωcm)を形成、第4のステップは、
加速エネルギー2500eVから800eVまで徐々に変化させて
硬質炭素から成る積層膜を0.1μm形成するというもので
ある。このサイクルを20回繰り返して全厚8μmの硬質炭
素膜を形成した。
【0043】これを、ステンレス円筒の内部に差し込
み、回転数5000rpmで回転させたところ、従来の硬質炭
素膜厚1μm被覆したシャフトに比べ、焼き付きが発生す
るまでの時間が約20倍に伸びた。
【0044】(実施例5) 硬質炭素膜被覆部材の構造
を模式的に表現した図5に対応する実施例を次に示す。
すなわち、窒化クロムを3μm形成した表面にカソードア
ークイオンプレーティング法により基材電圧をマイナス
60Vとして0.5μmの硬質炭素から成る積層膜(電気抵抗率
が8×108Ωcm)、次に基材電圧をマイナス600Vとして4.5
μmの硬質炭素から成る積層膜を積層した。基材電圧マ
イナス600Vで成膜された硬質炭素から成る積層膜の電気
抵抗率は2×102Ωcmであった。
【0045】比較例として、アルミナ燒結体の表面にカ
ソードアークイオンプレーティング法により窒化クロム
を3μm合成し、その表面に同じくカソードアークイオン
プレーティング法により基材電圧をマイナス60Vとして
電気抵抗率が8×108Ωcmの硬質炭素膜を5μm形成した。
【0046】上記比較例である電気抵抗率が8×108Ωcm
の硬質炭素膜のみを窒化クロムの表面に形成したもの
は、成膜室から大気に取り出した時点で既に全面に剥離
が観察されたが、本願発明の実施例である電気抵抗率が
8×108Ωcm、2×102Ωcmの2種類の硬質炭素から成る積
層膜を積層した硬質炭素膜には剥離は認められなかっ
た。
【0047】本願発明である実施例であるこの積層した
硬質炭素膜を被覆したアルミナ燒結体を、さらに温度90
℃、湿度95%の環境下で1ケ月保持したが、被覆表面に
何ら異常は認められなかった。
【0048】
【発明の効果】基材側と表面側の電気抵抗率が少なくと
も2桁相違している硬質炭素膜、あるいは、電気抵抗率
が厚さ方向に繰り返し連続して変化し、該繰り返しの厚
さが1nm乃至3μmの周期であり、該繰り返しの電気抵抗
率の最大値と最小値が少なくとも2桁相違している硬質
炭素から成る積層膜を用いた硬質炭素膜は、内部応力に
起因する剥離のない良好な厚膜の被覆部材を供給するの
に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】硬質炭素膜被覆部材の断面構造を示す模式図と
電気抵抗率と硬質炭素膜との関係を示す図である。
【図2】硬質炭素膜被覆部材の断面構造を示す他の模式
図と電気抵抗率と硬質炭素膜との関係を示す図である。
【図3】硬質炭素膜被覆部材の断面構造を示す他の模式
図と電気抵抗率と硬質炭素膜との関係を示す図である。
【図4】硬質炭素膜被覆部材の断面構造を示す他の模式
図と電気抵抗率と硬質炭素膜との関係を示す図である。
【図5】硬質炭素膜被覆部材の断面構造を示す他の模式
図である。
【符号の説明】
1:基材 2,5,8,10,12:硬質炭素膜 3,4,6,7:硬質炭素から成る積層膜 9:中間膜 11:硬質炭素から成る中間の積層膜

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成分が炭素、又は炭素と水素からなり、
    基材側と表面側の電気抵抗率が少なくとも2桁相違して
    いることを特徴とする硬質炭素膜。
  2. 【請求項2】 電気抵抗率が厚さ方向に不連続に変化す
    る、積層された積層膜であることを特徴とする請求項1
    記載の硬質炭素膜。
  3. 【請求項3】 電気抵抗率が厚さ方向に連続して変化す
    ることを特徴とする請求項1記載の硬質炭素膜。
  4. 【請求項4】 成分が炭素、又は炭素と水素からなり、
    電気抵抗率が厚さ方向に繰り返し変化し、該繰り返しの
    厚さが1nm乃至3μmの周期であり、該繰り返しの電気抵
    抗率の最大値と最小値が少なくとも2桁相違しているこ
    とを特徴とする硬質炭素膜。
  5. 【請求項5】 電気抵抗率が厚さ方向に不連続に変化
    し、該電気抵抗率が相違する少なくとも2種類の硬質炭
    素膜が交互に積層された積層膜であることを特徴とする
    請求項4記載の硬質炭素膜。
  6. 【請求項6】 電気抵抗率が厚さ方向に連続して変化し
    ていることを特徴とする請求項4記載の硬質炭素膜。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項記載の硬質
    炭素膜が被覆されている硬質炭素膜被覆部材。
  8. 【請求項8】 請求項1〜6のいずれか1項記載の硬質
    炭素膜と基材との間に、前記硬質炭素膜以外の少なくと
    も1種類の中間膜を有する硬質炭素膜被覆部材。
JP3477297A 1997-02-19 1997-02-19 硬質炭素膜及びその被覆部材 Pending JPH10226874A (ja)

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