JP4388152B2 - 薄膜積層体の被覆部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜積層体およびその被覆部材に関するものである。特に、耐摩耗性、摺動特性および表面保護機能向上のため、切削工具、摩耗工具等の硬質基材表面、あるいは産業用、一般家庭用の電気・電子部品、機械部品、摺動部品または潤滑剤環境中の機械部品、摺動部品の表面に形成される薄膜積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
硬質炭素膜は、ダイヤモンド構造を一部に有するアモルファス状の炭素膜あるいは水素化炭素膜で、アモルファスカーボン(a−C、a−C:H)、i−C(アイ・カーボン)、ダイヤモンド状炭素(Diamond like carbon;DLC)などとも呼ばれている。硬質炭素膜は、一般にヌープ硬度が1000から8000と高硬度で耐摩耗性に優れる。多くの相手材料に対する無潤滑での摩擦係数は0.05から0.2と極めて低く、軟質金属の離型性が高い。化学的にも安定で、多くの酸、アルカリに対して極めて高い耐食性を有している。また、電気抵抗率は106から1014 Ω・cmと高い絶縁性を有し、赤外線に対して高い透過性を示すなど、ダイヤモンドに類似した特性を多く有している。
【0003】
これらの優れた性質を活かして種々の分野への応用が期待されており、特に、耐摩耗性部品、摺動部品、電気・電子部品、赤外線光学部品および成型・成形部品等へのコーティングに関し開発が進められている。
【0004】
工具・金型分野では、特にアルミニウムやマグネシウム合金、ハンダなどの軟質金属の切削加工、曲げ加工、絞り加工、射出成型などに適用が試みられている。また、機械部品では、ビデオ部品やビデオテープの潤滑性、耐擦傷性を向上させるための保護コーティング、各種回転軸、バルブ類の摩擦係数低減の潤滑性コーティングなどで実用化が著しい。
【0005】
硬質炭素膜の形成にはさまざまな手法がある。結晶質ダイヤモンド薄膜の合成に適用されているマイクロ波プラズマCVD法、ECRプラズマCVD法、フィラメント法などに準ずる手法の他に、高周波や直流放電等の各種プラズマ源を用いたプラズマCVD法、炭素または炭化水素イオンを用いるイオンビーム蒸着法、固体カーボンを原料とするスパッタリング法、カソードアークイオンプレーティング法等がある。対象基材や用途、処理数などによりこれらの手法は使い分けられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、硬質炭素膜は非常に高い内部応力を有しており、その応力ゆえ剥離が起きやすく、厚膜化が困難であるなどの問題を有している。このため、硬質炭素膜はその膜厚が1.5μmを超えるものを得るのが極めて困難で、かつ適用可能な基材材料も限られたものであった。
【0007】
従って、本発明の主目的は、種々の基材に対して高い密着性が得られ、かつ膜厚が厚い薄膜積層体とその被覆部材とを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するため種々の試験・検討を行った結果、硬質炭素膜と硬質炭素以外の金属化合物薄膜または金属薄膜とを交互に積層することで、硬質炭素膜の応力を緩和できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明薄膜積層体は、次の化合物薄膜Aと化合物薄膜Bとを交互に積層することを特徴とする。金属薄膜Cと化合物薄膜Dとを交互に積層することもできる。
【0010】
化合物薄膜A:周期律表IVa、Va、VIa族金属元素ならびにボロン、アルミニウム、シリコンおよびゲルマニウムの群から選択される1種以上の元素と炭素、窒素の1種以上との組み合わせからなる化合物薄膜。
化合物薄膜B:炭素と窒素を主成分とする化合物薄膜。
【0011】
金属薄膜C:周期律表IVa、Va、VIa族金属元素ならびにボロン、アルミニウム、シリコンおよびゲルマニウムの群から選択される1種以上の元素からなる金属薄膜。
化合物薄膜D:炭素を主成分とする化合物薄膜。
【0012】
ここで、化合物薄膜Aが「硬質炭素以外の金属化合物薄膜」に、金属薄膜Cが「硬質炭素以外の金属薄膜」に、化合物薄膜BおよびDが「硬質炭素膜」に相当する。このうち化合物薄膜Aは硬質な膜であると同時に、硬質炭素と比較して靭性に優れる。また、炭素及び窒素を主成分とする化合物薄膜Bは、硬質炭素と同様に高硬度で摺動特性や耐摩耗性にも優れた膜である。従って、これらを交互積層して得られた膜は、耐摩耗性の低下はほとんど無く、膜全体の靭性は向上し、応力の緩和にも効果があるものである。
【0013】
また、金属薄膜Cは前述の化合物薄膜Aや化合物薄膜Bと比較して硬度は小さいが、靭性が極めて大きく、応力緩和に関しては、金属化合物よりはるかに優れる。
【0014】
化合物(金属)薄膜AまたはCと化合物薄膜BまたはDとの平均の膜厚比(硬質炭素以外の金属化合物層または金属層厚)/(硬質炭素層厚)は2:98から80:20であることが好ましい。2/98より小さいと、金属化合物層または金属層による応力緩和の効果がほとんど見られなくなり、80/20より大きいと耐摩耗性や摺動特性が悪くなる。
【0015】
また、積層の繰り返し周期を1nm〜1μmとし、全体の膜厚が0.1μm〜10μmであることが望ましい。この積層周期(λ)とは、たとえば図1に示すように、2種類の化合物A(C)とB(D)を交互に繰り返し積層した場合、A(C)の一層の厚みとB(D)の一層の厚みの和のことである。積層周期が1nm未満の場合、現実的に積層構造の制御が不可能であり、一方1μmを越えるように周期を厚くすると、単層の特性が顕著になり積層効果が見られなくなるためである。nmオーダーの積層周期の測定は、透過電子顕微鏡(TEM)による観察および小角X線回折法により行えばよい。長周期の積層構造に関しては、高分解能走査電子顕微鏡による積層周期の測定も可能である。なお、全体の膜厚を0.1μm〜10μmとしたのは、0.1μm未満の場合、耐摩耗性に問題があり、10μmを越えると被膜に蓄積される内部応力が大きくなり、剥離しやすくなるからである。
【0016】
さらに、本発明は上記の薄膜積層体を含む硬質膜を基材に被覆した被覆部材も特徴としている。この硬質膜は、上記薄膜積層体のみからなるものの他、上記薄膜積層体と他の硬質被膜とを積層したものでもよい。後者の場合、この薄膜積層体の総膜厚が硬質被膜全体の膜厚の20%以上であり、硬質被膜全体の膜厚が0.1μm〜10μmであることが望ましい。これは薄膜積層体の効果が得やすい膜厚から設定した。
【0017】
また、基材と薄膜積層体と間に所定の界面層を形成することで基材と薄膜積層体との密着性が大幅に向上し、部品寿命がさらに延びる。密着強度が高くなる界面層の膜厚は0.05μm〜2μmの範囲が好ましい。この界面層の材質としては、次のものが挙げられる。
【0018】
▲1▼周期律表IVa、Va、VIa族金属元素の群から選択される1種以上の元素と、炭素および窒素の1種以上の組み合わせからなる化合物の少なくとも1種からなる材料。
【0019】
▲2▼周期律表IVa、Va、VIa族金属元素の群から選択される1種以上の元素M1と、周期律表IVa、Va、VIa族金属元素の群から選択される元素と、炭素および窒素の1種以上の組み合わせからなる化合物M2が複合して構成される材料。
【0020】
さらには硬質被膜の表面粗さをRz表示で1μm以下とすることが望ましい。このような表面粗さを得るには、薄膜積層体を基材表面に被覆した後、その表面をラッピング処理することが挙げられる。これにより、著しく耐摩耗性および摺動特性が向上する。
【0021】
このような被覆部材の基材材質としては、WC基超硬合金、サーメット、セラミックス(炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ガラス、ダイアモンドなど)、各種鋼材(高速度鋼、ダイス鋼、ステンレス鋼など)、アルミニウム合金、半導体(シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素など)、ZnS、ZnSe等の光学材料、銅合金などが適用できる。
【0022】
また、通用する対象としては、切削用チップ、ドリルまたはエンドミルに用いられる耐摩耗部品、産業用、一般家庭用の電気・電子部品、機械部品、摺動部品、潤滑剤環境中の機械部品、摺動部品などが挙げられる。
【0023】
成膜に適用する手法は、公知のいずれの手法でもよい。
例えば、前記化合物薄膜Aの合成には、例えば、イオンプレーティング法、マグネトロンスパッタリング法、アンバランスドマグネトロンスパッタリング法、カソードアークイオンプレーティング法、プラズマCVD法等が適用出来る。
【0024】
また、前記金属薄膜Cの合成には、同様に、イオンプレーティング法、マグネトロンスパッタリング法、アンバランスドマグネトロンスパッタリング法、カソードアークイオンプレーテイング法、プラズマCVD法等のほかに、真空蒸着法の適用も可能である。
【0025】
炭素と窒素を主成分とする化合物薄膜B、炭素を主成分とする化合物薄膜Dの合成には、各種プラズマ発生源を用いたプラズマCVD法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーテイング法、マグネトロンスパッタリング法、アンバランスドマグネトロンスパッタリング法、カソードアークイオンプレーテイング法等が適用できる。
【0026】
上記各々のプロセスを2つ以上組み合わせて薄膜積層体を合成することもできるが、カソードアークイオンプレーティング法やマグネトロンスパッタリング法、アンバランスドマグネトロンスパッタリング法などを使用すると、連続的に交互処理が出来る。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の薄膜積層体の効果について、実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
基材として、組成がJIS 規格P30、形状がJIS SNG432の超硬合金製切削チップを用意し、その表面に下記のように公知の真空アーク放電によるイオンプレーティング法を用いて表1、2に示す薄膜積層構造を形成し、本発明例の表面被覆切削チップ試料を本発明品1〜16,25〜32とした。
【0028】
【表1】
Figure 0004388152
【0029】
【表2】
Figure 0004388152
【0030】
すなわち、図2に示すように、成膜装置4内に複数個のターゲット5、6を配置し、ターゲットの中心点を中心としてこれらのターゲット間で回転する基材保持具7に上記切削チップ8を装着し、切削チップの回転数と真空アークの放電電流(ターゲット材料の蒸発量)の一方または両方を調整することにより、繰り返し周期を制御した。ターゲット5、6およびチップ8には電源2、3により所定の電流・電圧を印加することができる。まず、成膜装置4内の真空度を10 5Torrの雰囲気とし、ついでAr(アルゴン)ガスを導入して10 2Torrの雰囲気に保持しながら、基板加熱ヒーター1を用いて200℃まで加熱し、切削チップに−1000Vの電圧をかけて洗浄を行った後、Arガスを排気した。次に、成膜装置4内にN2ガス、CH4ガスのいずれか一種類あるいは数種類を基材回転に合わせて時間制御を行い、200cc/minの割合で導入しながら、真空アーク放電により周期律表IVa、Va、VIa族金属元素、ボロン、アルミニウム、シリコンおよびグラファイトのターゲットを蒸発、イオン化させる。これにより、回転する切削チップがターゲットの前を通過する際にターゲット材料と導入ガス中のC、Nとの化合物層が切削チップ上に形成される。
【0031】
また、比較のため表3に示す従来例(比較品8〜10)のコーティング切削チップ試料も用意した。すなわち、比較品8〜10は通常の成膜装置を使用して真空アーク放電を用いたイオンプレーティング法により、上記と同じ切削チップの表面に単独の硬質被覆層を形成して製造した。
【0032】
【表3】
Figure 0004388152
【0033】
次に、上記の方法で製造した各表面被覆切削チップ試料について、表4の条件による連続切削試験と断続切削試験を行い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。上記の各切削試験の結果を表1〜3に示す。
【0034】
【表4】
Figure 0004388152
【0035】
表1〜3の結果から、従来からの表面被覆切削チップ試料のうち硬質被覆層をPVD法で形成した比較品8〜10は耐摩耗性に劣るのに対し、本発明例の表面被覆切削チップ(本発明品1〜16,25〜32)は連続切削および断続切削の両方において優れた耐摩耗性を有する。同時に、硬質被覆層をPVD法で形成したので、基材の靭性が維持され優れた耐欠損性を備えることがわかる。
【0036】
また、本発明品1-1〜1-7の結果から明らかなように、薄膜積層体を切削工具に適用した場合の最適な繰り返し積層周期としては、1nm〜1μmであることがわかる。また、界面層の膜厚としては0.05μm〜2μmが適当であることが試験結果から明らかである。さらに、薄膜積層体の全体膜厚としては0.5μm〜10μmが適当であることが試験結果からわかる。
【0037】
(実施例2)
20×20×5のサイズの鏡面研磨したSUS440Cを基板として、薄膜積層体の合成を行った。
【0038】
硬質炭素膜の合成には、プラズマCVD法とスパッタリング法のいずれかを適用した。プラズマCVD法の場合は、雰囲気にCH4またはCH4とArの混合ガスを導入して基板に600Wの高周波を印加し硬質炭素層の合成を行った。スパッタリング法の場合は、グラファイト製の固体ターゲットを原料とし、アンバランスドマグネトロンスパッタ法でAr雰囲気中またはN2またはCH4とArとの混合ガスでグラファイトを蒸発させ、50Vに印加した基板に硬質炭素膜の合成を行った。
【0039】
一方、金属又は金属化合物膜の合成にはスパッタリング法を適用した。金属の場合は金属製のターゲット材を原料とし、アンバランスドマグネトロンスパッタ法でAr雰囲気中にてターゲット材を蒸発させ、−50Vに印加した基板に蒸着を行なった。金属化合物の場合は、金属製のターゲット材を原料とし、アンバランスドマグネトロンスパッタ法でN2またはCH4とArとの混合ガス雰囲気中でターゲット材を蒸発させ、−50Vに印加した基板に反応蒸着を行なった。
【0040】
界面層の膜種、膜厚、薄膜積層体の膜種、手法、周期、層比、膜厚を表5に示す。界面層は膜厚1μmのTiN、薄膜積層部分の総膜厚は3μmに固定した。
【0041】
それぞれの膜につき、大気中の摺動試験による摩擦係数と摩耗探さ、潤滑油中での摩擦係数を表5に併せて示す。摺動試験の条件は表6に示す通りである。
【0042】
【表5】
Figure 0004388152
【0043】
【表6】
Figure 0004388152
【0044】
表5の結果から、層比が80/20〜2/98の範囲が、摩擦係数や摩耗量の点で優れていることが判る。その他、反応性スパッタ法やプラズマCVD法などの組み合わせによる積層例も表5に示す。
【0045】
(実施例3)
実施例1と全く同じ方法により、表1中の本発明品2を作製したのと全く同じ条件で超硬製ドリルの表面に薄膜積層体を被覆した。次に、上記の方法により製造した各表面被覆切削ドリルについて、表7の条件によるアルミの穴開け加工を行い、穴開け個数と刃先の状態を評価した。比較材として、従来から用いられている表中の比較品8〜10のセラミックスを被覆したドリルも準備した。
【0046】
【表7】
Figure 0004388152
【0047】
その結果、従来からの表面被覆切削ドリル(硬質被覆層をPVD法で形成した比較品8〜10)は1000穴あけたところで被加工材にバリが生じたため、ドリルの状態を調べたところ、刃先に剥離が生じ、
【0048】
その先端でアルミの凝着が認められた。一方、本発明品2のドリルでは5000穴あけた時点でも全く被加工材の加工状況に問題がなく、ドリル刃先にもアルミの凝着は認められなかった。
【0049】
さらに、この本発明品2のドリルの表面をラッピング処理し、表面粗さRz表示で0.9μmに調整して上記と全く同じ方法でアルミ材の穴開け加工を行ったところ、10000穴あけた時点でも全く刃先に異常はなく、被加工材の加工状況も非常に良好であった。
【0050】
(実施例4)
膜の耐摩耗性を磁気ヘッドと磁気ディスクとの接触摩耗試験法で評価した。磁気ヘッドとしてアルミニウムと炭化チタンからなる焼結体(ビッカース硬度4000kgf/mm2)を用い、これを磁気ディスク表面の保護膜上に、荷重600kgf/mm2で押し付け、次に磁気ディスクを磁気ヘッドが浮上するまで高速回転させ、浮上後回転を停止し、再びヘッドをディスク面に接触させることを繰り返すCSS試験を行った。CSS試験とは、磁気ヘッドと磁気記録媒体とを接触状態でセットした後、磁気記録媒体を回転浮上させた後、回転を停止し、磁気ヘッドと磁気記録媒体を接触させるサイクル試験である。
【0051】
本発明品7(実施例1の表1中の薄膜積層体)を用いて、上記CSS 試験を10万サイクル行った。その後、表面状態を確認したところ変化は認められず、再生出力の低下もなかった。比較例としてSiO2を保護膜として用いた場合には、表面にトレース跡が認められ、再生出力が5dB低下した。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の薄膜積層体を用いれば、切削工具や耐摩耗工具の基材強度を維持するとともに、従来より優れた耐摩耗性と摺動性を有することで、その切削・耐摩寿命を著しく延長させることができる。
【0053】
また、耐摩耗性が強く要求される、たとえば産業用、一般家庭用の電気・電子部品、機械部品、摺動部品、および潤滑剤環境中の機械部品、摺動部品の表面の耐磨耗膜や保護膜として優れた特性を有する。
【0054】
さらに、切削工具の用途以外に、薄膜積層体の適用が期待できるものとしては、光磁気記録媒体、光学レンズ等の表面保護膜あるいは光学特性、電気特性等にも優れた薄膜が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明薄膜積層体の部分拡大断面図である。
【図2】本発明薄膜積層体の製造装置一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 ヒーター 2、3 電源 4 成膜装置 5、6 ターゲット
7 基材保持具 8 基材(チップ)

Claims (6)

  1. 周期律表IVa、Va、VIa族金属元素ならびにボロン、アルミニウム、シリコンおよびゲルマニウムの群から選択される1種以上の元素と炭素、窒素の1種以上との組み合わせからなる化合物薄膜Aと、炭素及び窒素を主成分とする化合物薄膜Bとを交互に繰り返し積層した薄膜積層体を含む硬質被膜を基材の表面に被覆しており、
    前記基材と前記薄膜積層体との間に界面層が形成され、
    この界面層は、周期律表IVa、Va、VIa族金属元素の群から選択される1種以上の元素M1と、周期律表IVa、Va、VIa族金属元素の群から選択される元素と、炭素および窒素の1種以上の組み合わせからなる化合物M2が複合して構成され、
    その界面層の膜厚が0.05μm〜2μmであることを特徴とする薄膜積層体の被覆部材。
  2. 周期律表IVa、Va、VIa族金属元素ならびにボロン、アルミニウム、シリコンおよびゲルマニウムの群から選択される1種以上の元素と炭素、窒素の1種以上との組み合わせからなる化合物薄膜Aと、炭素及び窒素を主成分とする化合物薄膜Bとを交互に繰り返し積層した薄膜積層体を含む硬質被膜を基材の表面に被覆しており、
    前記硬質被膜の表面粗さをRz表示で1μm以下としたことを特徴とする薄膜積層体の被覆部材。
  3. 請求項1又は2に記載の薄膜積層体の被覆部材において、
    化合物薄膜Aと化合物薄膜Bとの平均の膜厚比が2:98から80:20であることを特徴とする薄膜積層体の被覆部材
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜積層体の被覆部材において、
    前記繰り返し積層周期を1nm〜1μmとし、全体の膜厚が0.1μm〜10μmであることを特徴とする薄膜積層体の被覆部材
  5. 前記薄膜積層体の総膜厚が硬質被膜全体の膜厚の20%以上であり、硬質被膜全体の膜厚が0.1μm〜10μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜積層体の被覆部材。
  6. 前記基材材質が、WC基超硬合金、サーメット、セラミックス、鋼材、アルミニウム合金、半導体、ZnS、ZnSe等の光学材料、銅合金のいずれかからなり、
    用途が、切削用耐摩耗部品、産業用、一般家庭用の電気・電子部品、機械部品、摺動部品、潤滑剤環境中の機械部品または摺動部品であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜積層体の被覆部材。
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