JP2000080992A - ベーンおよびそれを用いた冷媒圧縮機 - Google Patents

ベーンおよびそれを用いた冷媒圧縮機

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JP2000080992A
JP2000080992A JP10251260A JP25126098A JP2000080992A JP 2000080992 A JP2000080992 A JP 2000080992A JP 10251260 A JP10251260 A JP 10251260A JP 25126098 A JP25126098 A JP 25126098A JP 2000080992 A JP2000080992 A JP 2000080992A
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refrigerant
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steel
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JP10251260A
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Kazuhisa Ishikawa
和久 石川
Takashi Sunaga
高史 須永
Masazo Okajima
政三 岡島
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Sanyo Electric Co Ltd
Original Assignee
Sanyo Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷凍機油としてエステル系冷凍機油やエーテ
ル系冷凍機油を用い、HFC系冷媒や炭化水素系冷媒を
使用した場合でも、ベーンの表面の摺動部における耐摩
耗性が高いベーンおよびそれを備えた冷媒圧縮機を提供
すること。 【解決手段】 金属部材の表面にショットピーニング処
理を施した後、その上にCrNコーテイング膜あるいは
硬質炭素薄膜を形成したベーンを用いる。そのベーンを
備えた冷媒圧縮機により課題を解決できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベーンおよびそれ
を用いた冷媒圧縮機に関するものであり、さらに詳しく
はベーンの摺動面の耐摩耗性を向上したベーン、および
オゾン層を破壊する危険がないHFC系冷媒などを使用
する冷凍装置に使用される冷媒圧縮機であって、摺動面
の耐摩耗性を向上した冷媒圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】冷凍機の冷媒としては従来ジクロロジフ
ルオロメタン(R−12)や共沸混合冷媒のR−22と
モノクロロペンタフルオロエタン(R−115a)とか
らなるR−502が用いられており、これらの冷媒は、
通常の冷凍装置に好適であり、冷媒と相溶性のある鉱物
油やアルキルベンゼン系油等の冷凍機油を使用した冷凍
サイクルは、信頼性、耐久性など高い品質レベルに至っ
ている。
【0003】しかしながら、上記の冷媒は、オゾン破壊
が高く、大気中に放出されて地球上空のオゾン層に到達
すると、このオゾン層を破壊する。このオゾン層の破壊
は冷媒中の塩素基(Cl)により引き起こされる。そこ
で、塩素基の含有量の少ない冷媒、例えばクロロジフル
オロメタン(HCFC−22、R−22)、塩素基を含
まない冷媒、例えはジフルオロメタン(HFC−32、
R−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125、
R−125)や1,1,1,2−テトラフルオロエタン
(HFC−134a、R−134a)など、あるいはこ
れらの混合物(以下、HFC系冷媒と称す)や、プロパ
ン、ブタン、ペンタンなどの炭化水素系冷媒や、HFC
系冷媒と炭化水素系冷媒の混合物や、ヘリウムなどや、
アンモニアなど、空気などがこれらの代替冷媒として考
えられている。
【0004】HFC系冷媒や炭化水素系冷媒に対して使
用される冷凍機油としては、HFC系冷媒などと相溶性
のない鉱物油やアルキルベンゼン系油などや、HFC系
冷媒などと相溶性のあるエステル系冷凍機油、エーテル
系冷凍機油、それらの混合油などがある。
【0005】従来、ロータリ式圧縮機のベーンは、SK
H51などを使用し耐摩耗性の向上を計るために、イオ
ン窒化処理、CrNコーテイング処理などの表面処理が
行われたベーンが用いられていた。しかし、冷媒がHF
C系冷媒などに替わり、冷凍機油がエステル系冷凍機油
やエーテル系冷凍機油に移行すると、これら従来の表面
処理、例えば、イオン窒化処理の場合は耐摩耗性が悪
く、冷凍回路内で劣化し、スラッジなどが形成され、こ
のスラッジが冷凍サイクル内のキャピラリ内壁に堆積し
たり閉塞などの問題がある。また、CrNコーテイング
処理の場合は、被膜が運転中に剥離する問題がある。
【0006】一方、電気かみそりなどの刃物などの表面
に例えばSiなどを主成分とする中間層を設けその上に
硬質炭素薄膜からなる硬質被膜を形成することが提案さ
れている(特開平1−317197号公報、特開平7−
316818号公報、特開平7−330490号公報な
ど)。本発明者等は先に、アンモニアガスと水素ガスを
用いて金属部材の表面を窒化し、その上にSi、Tiな
どの単体、あるいはこれらに炭素、窒素および酸素など
の元素を含む中間層を設け、さらにその上に硬質炭素薄
膜を形成したベーンおよびこのベーンを用いた冷媒圧縮
機を提案した(特願平10−68618号明細書)。し
かし硬質炭素薄膜の接着性、ベーンの表面の摺動部にお
ける摩擦係数、耐摩耗性などにおいて改良の余地があっ
た。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的
は、冷凍機油としてエステル系冷凍機油やエーテル系冷
凍機油などを用いたり、HFC系冷媒や炭化水素系冷媒
などの冷媒を使用した場合でも、ベーンの表面に形成し
たCrNコーテイング膜あるいは硬質炭素薄膜が剥離し
たりせず、摺動部における耐摩耗性があるベーンを提供
することであり、本発明の第2の目的は、このベーンを
用いた長期に亘り安定して運転できる冷媒圧縮機を提供
することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記の課題
を解決するため鋭意研究を重ねた結果、金属部材の表面
にショットピーニング処理を施した後、その上にCrN
コーテイング膜あるいは硬質炭素薄膜を形成すれば、シ
ョットピーニング処理によって金属部材の表面の疲労強
度や硬度が高められるとともに微細な凹凸が形成される
ので、形成されたCrNコーテイング膜あるいは硬質炭
素薄膜と下地の密着強度の改善につながり、使用中に剥
離することがなくなり、摺動部における耐摩耗性が格段
に向上することを見いだし、本発明を完成するに至っ
た。
【0009】上記課題を解決するため請求項1の発明
は、金属部材の表面にショットピーニング処理を施した
後、その上にCrNコーテイング膜あるいは硬質炭素薄
膜を形成したことを特徴とするベーンである。
【0010】本発明の請求項2の発明は、請求項1記載
のベーンにおいて、前記金属部材がSKHなどの高速度
工具鋼、SKDなどの熱間加工鋼、SUSなどの耐熱耐
酸鋼、S45Cなどの構造鋼、あるいはこれらの焼結鋼
から選ばれ、焼入れを施した金属部材であることを特徴
とする。
【0011】本発明の請求項3の発明は、請求項1ある
いは請求項2記載のベーンにおいて、前記硬質炭素薄膜
は、ダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド構造と非晶質炭素
構造との混合膜、または非晶質炭素薄膜から構成されて
いることを特徴とする。
【0012】本発明の請求項4の発明は、回転軸を有す
る電動要素と、この電動要素の回転軸によって駆動され
る圧縮要素を備え、吸入したHFC系冷媒、HFC系冷
媒を主体とする冷媒、炭化水素系冷媒あるいはこれらの
混合物から選ばれる冷媒をこの圧縮要素により圧縮して
吐出するようにした冷媒圧縮機であって、前記圧縮要素
はシリンダと、前記回転軸の偏心部によりこのシリンダ
内を回転するローラと、このローラに接してシリンダ内
を分けるベーンなどを備えており、前記ベーンとして、
金属部材の表面にショットピーニング処理を施した後、
その上にCrNコーテイング膜あるいは硬質炭素薄膜を
形成したベーンを用いることを特徴とする冷媒圧縮機で
ある。
【0013】本発明の請求項5の発明は、請求項4記載
の冷媒圧縮機において、前記ローラは、Ni、Cr、M
oを含み、あるいはさらにBなどを添加した高合金鋳鉄
の焼入れ材からなるローラであることを特徴とする。
【0014】本発明の請求項6の発明は、請求項4ある
いは請求項5記載の冷媒圧縮機において、冷凍機油がエ
ステル系潤滑油、エーテル系潤滑油あるいはこれらの混
合物であることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】以下本発明を図1〜3に基づいて
説明する。図1に、蒸発気化したHFC系冷媒を圧縮し
て凝縮器に吐出する本発明の冷媒圧縮機a、同冷媒を凝
縮液化する凝縮器b、同冷媒の圧力を減じるキャピラリ
チューブc、液化冷媒を蒸発させる蒸発器dなどを順次
冷媒管でつないで形成した冷凍装置の冷凍サイクルを示
す。
【0016】図2は、本発明の冷媒圧縮機の一例の縦断
面図である。図3は、図2に示した本発明の冷媒圧縮機
の横断面図である。図2及び図3において、1は密閉容
器で、この容器内には上側に電動要素2が、下側にこの
電動要素によって駆動される回転圧縮要素3が夫々収納
されている。電動要素2は有機系材料で絶縁された巻線
4を有する固定子5とこの固定子の内側に設けられた回
転子6とで構成されている。回転圧縮要素3はシリンダ
7と、回転軸8の偏心部9によってシリンダ7の内壁に
沿って回転させるローラ10と、このローラの周面に圧
接されてシリンダ7内を吸込側と吐出側とに区画するよ
うにバネ11で押圧されるベーン12と、シリンダ7の
開口を封じるとともに、回転軸8を軸支する上部軸受1
3及び下部軸受14とで構成されている。
【0017】そして、上部軸受13にはシリンダ7の吐
出側と連通する吐出孔15が設けられている。また、上
部軸受13には吐出孔15を開閉する吐出弁16と、こ
の吐出弁を覆うように吐出マフラ17とが取付けられて
いる。
【0018】密閉容器1内の底部にはHFC系冷媒、例
えば、R134aとR32とR125との3種混合冷媒
あるいはR32とR125との2種混合冷媒が封入され
ている。
【0019】そして、冷凍機油としてのエステル系冷凍
機油(オイル)あるいはエーテル系冷凍機油(オイル)
18は回転圧縮要素3の摺動部材であるローラ10とベ
ーン12との摺動面を潤滑している。
【0020】本発明で用いるエステル系冷凍機油は特に
限定されない。具体的には例えば、ペンタエリスリトー
ル(PET)、トリメチロールプロパン(TMP)、ネ
オペンチルグリコール(NPG)などの多価アルコール
と炭素数5〜10の脂肪酸、好ましくは炭素数7〜9の
脂肪酸、さらに好ましくは炭素数7〜9の側鎖脂肪酸と
からなるエステル系油を挙げることができる。さらに具
体的には、平均分子量512、粘度(cSt)(40
℃)51.8のポリオールエステル系油(α56、ジャ
パンエナジー社製)、平均分子量668、粘度(cS
t)(40℃)64.2のポリオールエステル系油(α
68、ジャパンエナジー社製)などを挙げることができ
る。
【0021】本発明で用いるエーテル系冷凍機油は特に
限定されない。具体的には例えば、下記の一般式(1)
で表されるポリビニルエーテル系油は好ましく使用でき
る。式中、R1 〜R3 は各々水素原子または炭素数1〜
8の炭化水素基を示し、それらは同一でもよく、異なっ
ていてもよい。R4 は炭素数1〜4の炭化水素基を示
す。nは1以上の整数である。
【0022】
【化1】
【0023】これらの冷凍機油に対して熱化学的安定性
を向上させるためにエポキシやカルボジイミドを添加し
たり、酸化劣化を防止する目的でフェノール系酸化防止
剤を加えたり、必要に応じてベンゾトリアゾール系の銅
不活性化剤を加えることができる。これらは単独である
いは組み合わせて添加することができる。
【0024】回転圧縮要素3のシリンダ7内に流入して
ローラ10とベーン12との協働で圧縮される冷媒は上
述のように、例えばR407C[R134aとR32と
R125との混合冷媒]やR410A[R32とR12
5との混合冷媒]などである。
【0025】19は密閉容器1に取付けてシリンダ7の
吸込側に冷媒を案内する吸込管、20は密閉容器1の上
壁に取付けられて回転圧縮要素3で圧縮されて電動要素
2を介して密閉容器1外に冷媒を吐出する吐出管であ
る。
【0026】吸込管19からシリンダ7内の吸込側に流
入した冷媒はローラ10とベーン12との協働で圧縮さ
れ、吐出孔15を通って吐出弁16を開放して吐出マフ
ラ17内に吐出される。この吐出マフラ17内の冷媒は
電動要素2を介して吐出管20から密閉容器1外に吐出
れさる。そして、密閉容器1の底部に入れられたオイル
18は、回転軸8の高速回転によって上方開放端にでき
る渦流による真空現象によって回転軸8の中空孔21を
通って吸い上げられ、回転圧縮要素3のローラ10やベ
ーン12等の摺動部材の摺動面、回転軸8と上部軸受1
3、下部軸受14との摺動面などに供給されて潤滑を行
っている。また、シリンダ7内で圧縮された冷媒が低圧
側にリークしないようにしている。
【0027】本発明において、ベーン12として、SK
Hなどの高速度工具鋼、SKDなどの熱間加工鋼、SU
Sなどの耐熱耐酸鋼、S45Cなどの構造鋼、あるいは
これらの焼結鋼から選ばれ、焼入れを施した金属部材の
表面にショットピーニング処理を施した後、その上にC
rNコーテイング膜あるいは硬質炭素薄膜を形成したベ
ーンを用いることが好ましい。
【0028】このショットピーニング処理は、金属部材
の表面にスチールやセラミックなどの微細粒子で形成さ
れるショット粒を加圧空気などによって高速度で噴射し
て、ショット粒を多数衝突させて被処理面に圧縮残留応
力を与えることで被処理面の疲労強度や硬度を高めるも
のである。ショットピーニング処理を行うと、金属部材
の表面に形成されるCrNコーテイング膜あるいは硬質
炭素薄膜と下地との硬度の差が少なくなる。また、ショ
ットピーニング処理によって、被処理面に微細な凹凸が
形成される。これらの理由によりCrNコーテイング膜
あるいは硬質炭素薄膜が下地とよく接着するので、ベー
ン12の使用中にCrNコーテイング膜あるいは硬質炭
素薄膜が剥離することがなくなり、摺動部における耐摩
耗性が格段に高められる。したがって冷媒がHFC系冷
媒などに替わり、冷凍機油がエステル系冷凍機油やエー
テル系冷凍機油に移行しても、ベーン12とローラ10
との摺動面において耐摩耗性が格段に向上する。
【0029】本発明において、ショットピーニング処理
に用いられる装置は公知のもの(例えば、実開平6−7
1058号公報、実開平5−24264号公報などに記
載のもの)を用いることができる。ショット粒の材質、
粒径、噴射速度、処理時間、処理温度などによりショッ
トピーニング処理効果が影響を受けるので何回処理して
も、あるいは長時間処理しても均一で優れたショットピ
ーニング処理効果が得られるように諸条件を選定するこ
とが好ましい。
【0030】自動車関係、工具などの分野において部品
や工具などの長寿命化などに利用されるショットピーニ
ング処理に用いられるショット粒子の粒径は一般的に約
400〜800μm程度であるが、本発明においては、
被処理面の疲労強度や硬度を高め、そして被処理面に微
細な凹凸を形成するためには、粒径約30〜100μm
程度の鋼球、セラミックビーズなどのショット粒子を用
いることが好ましい。そしてこのショット粒子を噴射速
度約80〜260m/sec.で噴射して衝突エネルギ
ーを被処理面に与えることが好ましい。平均粒径が30
μm未満であると、金属部材やCrN、硬質炭素系薄膜
などを形成した金属部材にショットピーニングした場
合、衝突エネルギーが小さく、残留応力の形成が十分で
なく、素材と形成したCrN、硬質炭素系薄膜間の硬さ
の差を少なくする傾斜機能が得られず密着強度改善効果
がない。噴射速度が80m/sec.未満であると、や
はり衝突エネルギーが小さく、残留応力の形成が十分で
なく、素材と形成したCrN、硬質炭素系薄膜間の硬さ
の差を少なくする傾斜機能が得られず密着強度改善効果
がない。平均粒径が100μmを越えると、過大エネル
ギーが生じて、金属被処理材の面粗度の悪化やクラック
の発生を伴い、効果が得られない。噴射速度が260m
/sec.を越えると、やはり過大エネルギーが生じ
て、金属被処理材の面粗度の悪化やクラックの発生を伴
い、効果が得られない。
【0031】ショットピーニング処理した表面にCrN
コーテイング膜を形成したベーン12を作る方法は特に
限定されるものではない。ショットピーニング処理した
表面にCrNコーテイング膜を形成する前にグロー放電
により窒化処理して、その上にCrNコーテイング膜を
形成する例を次に説明する。本発明においては、勿論、
ショットピーニング処理した表面に窒化処理せずに直接
CrNコーテイング膜を形成することができる。使用す
る装置はグロー放電用電極、プラズマ化ガス用配管、真
空ポンプに接続された排気管を備えた真空チャンバを備
えたものであればよく、例えば、図4に示す装置を使用
する。装置は真空容器31、真空排気ポンプ32、ガス
制御弁33、プラズマ電源34、外部加熱ヒータ35、
クーラー36、陰極37、フローコントローラ38、自
動圧力調整弁39を備え、処理ガスとしては水素とアン
モニアの混合ガスを用いる。処理ガスはフロートコント
ローラ38により流量制御されて、混合された後に真空
容器31内に供給される。真空容器31内の圧力は圧力
調整弁39により数Torrの値に保持する。
【0032】そしてショットピーニング処理した金属部
材30を保持する電極37に直流電圧を印加し、グロー
放電を発生させる。この放電により、処理ガスをプラズ
マ化し、窒素イオン、窒素−水素分子イオンや各種のラ
ジカルなどの活性種を発生させ、窒化処理を行う。金属
部材30は主に外部加熱ヒータ35により昇温し、一定
温度に保持する。プラズマは陰極37を陰極とし、真空
容器31を陽極として発生したグロー放電によって生成
する。プラズマのイオン化率やエネルギー状態を低くし
てあるので、プラズマにより金属部材30はほとんど加
熱されない。アンモニアガス成分比率を約20%以下と
してイオン化率を押さえ、高い反応性を有するラジカル
を発生させることが好ましい窒化層を形成できる。
【0033】グロー放電を行って窒化する際の条件の1
例を次に示す。 処理温度;300〜650℃、例えば510℃ 電圧; 400〜500V、例えば450V 電流密度;0.001〜2mA/cm2 アンモニアガス濃度;10〜50%、例えば20% 放電時間;1〜10時間、例えば3時間。 電流密度を0.001〜2mA/cm2 とするのは、こ
の電流密度の範囲においてのみグロー放電はアンモニア
ガスおよび水素ガスをプラズマ化することができ、余熱
を発生させないからである。電流密度が0.001mA
/cm2 未満ではプラズマ化を充分に起こすことができ
ず、電流密度が2mA/cm2 を超えると金属部材の表
面に過熱状態が生じたりして有効な窒化処理が行われな
い。グロー放電を発生する放電は、直流放電、高周波放
電のいずれでもよい。
【0034】このようにしてグロー放電を行って窒化し
た後、その上にCrNをイオンプレーテイングする。C
rNをイオンプレーテイングする方法は公知の方法(例
えば特開平6−93990号公報に記載の方法)を用い
ることができる。イオンプレーテイング層の厚さは特に
限定されないが、約1〜10μmが好ましく、約4〜5
μmがさらに好ましい。1μm未満では耐摩耗性が劣
り、10μmを超えると表面に凹凸ができるので好まし
くない。ショットピーニング処理した後、グロー放電を
行って窒化した窒化層の上のCrNのイオンプレーテイ
ング層は密着性がよく長期の使用によっても剥離せず、
耐摩耗性が高い。
【0035】ショットピーニング処理した後、その上に
硬質炭素薄膜(ダイヤモンドライクカーボン薄膜:以
下、DLC薄膜と称す)を形成したベーン12を作る方
法は特に限定されるものではない。ショットピーニング
処理した後、その上にDLC薄膜を形成する前にイオン
窒化、プラズマ窒化、ラジカル窒化などの各種方法で窒
化処理し、窒化した後、さらにその上にSi、Tiなど
の単体、あるいはこれらに炭素、窒素および酸素などの
元素を含む中間層を設け、その上にDLC薄膜を形成す
る例を次に説明する。例えば、ショットピーニング処理
した後、その上にDLC薄膜を形成する前にグロー放電
を行って窒化処理する方法を用いる場合は、具体的には
例えば、図4に示した前記装置を使用しかつ前記の窒化
条件で処理する例を挙げることができる。
【0036】DLC薄膜は、ダイヤモンド薄膜、ダイヤ
モンド構造と非晶質炭素構造との混合膜、または非晶質
炭素薄膜から構成される。図5は、前記中間層およびD
LC薄膜形成のための装置の一例を示す概略断面図であ
る。真空チャンバ48には、プラズマ発生室44が設け
られている。プラズマ発生室44には、導波管42の一
端が取り付けられており、導波管42の他端には、マイ
クロ波供給手段41が設けられている。マイクロ波供給
手段41で発生したマイクロ波は、導波管42及びマイ
クロ波導入窓43を通って、プラズマ発生室44に導か
れる。プラズマ発生室44には、プラズマ発生室44内
にアルゴン(Ar)ガスなどの放電ガスを導入させるた
めの放電ガス導入管45が設けられている。またプラズ
マ発生室44の周囲には、プラズマ磁界発生装置46が
設けられている。マイクロ波による高周波磁界と、プラ
ズマ磁界発生装置46からの磁界を作用させることによ
り、プラズマ発生室44内に高密度のプラズマが形成さ
れる。
【0037】真空チャンバ48内には筒状の金属部材ホ
ルダ52が設けられている。この筒状の金属部材ホルダ
52は、真空チャンバ48の壁面に対し垂直に設けられ
た軸(図示せず)のまわりに回転自在に設けられてい
る。金属部材ホルダ52の周面には、前記のようにして
ショットピーニング処理した後、窒化処理した複数の金
属部材53が等しい間隔で装着されている。なお、本実
施形態では金属部材ホルダ52の周面に金属部材53を
24個装着している。金属部材ホルダ52には、高周波
電源50が接続されている。
【0038】金属部材ホルダ52の周囲には、金属製の
筒状のシールドカバー54が所定の距離隔てて設けられ
ている。このシールドカバー54は、接地電極に接続さ
れている。このシールドカバー54は、被膜を形成する
ときに、金属部材ホルダ52に印加されるRF電圧によ
って被膜形成箇所以外の金属部材ホルダ52と真空チャ
ンバ48との間で放電が発生するのを防止するために設
けられている。金属部材ホルダ52とシールドカバー5
4との間の間隙は、気体分子の平均自由行程以下の距離
となるように配置されている。気体分子の平均自由行程
は、何らかの原因で発生したイオン及び電子が電界によ
り加速され、衝突せずに移動できる平均距離と同じある
いはそれ以下の距離である。従って、金属部材ホルダ5
2とシールドカバー54との間隙を気体分子の平均自由
行程以下にすることにより、イオン及び電子が気体分子
と衝突する確率を小さくし、連鎖的に電離が進行するの
を防止している。
【0039】金属部材ホルダ52とシールドカバー54
との間隙は、特に気体分子の平均自由行程の1/10以
下の距離にすることが好ましい。本実施形態では、金属
部材ホルダ52とシールドカバー54との間隙を気体分
子の平均自由行程の1/10以下である約5mmとして
いる。
【0040】シールドカバー54には、開口部55が形
成されている。この開口部55を通って、プラズマ発生
室44から引き出されたプラズマが金属部材ホルダ52
に装着された金属部材53に放射されるようになってい
る。真空チャンバ48内には、反応ガス導入管56が設
けられている。この反応ガス導入管56の先端は、開口
部55の上方に位置する。反応ガス導入管56は、外部
から真空チャンバ48内にCH4 ガスを導入する。
【0041】第1開口部55の反対側には、第2開口部
63が形成されている。第2開口部63の下方には、中
間層を構成する材料原子からなるターゲット66が設け
られている。またターゲット66の近傍には、ターゲッ
ト66をスパッタするため、不活性ガスのイオンをター
ゲット66に放射するイオンガン67が設けられてい
る。本実施形態では、不活性ガスとしてArガスを用い
ている。本実施形態においては、ターゲット66及びイ
オンガン67により、中間層形成手段が構成されてい
る。ターゲット66及びイオンガン67により第2開口
部63を介して、ショットピーニング処理した後、窒化
処理した金属部材53上に中間層を構成する材料原子が
放射される。
【0042】以下、Siを主成分とする中間層を形成
し、その中間層の上にDLC薄膜を形成する実施形態に
ついて説明する。まず、真空チャンバ48内を10-5
10-7Torrに排気して、金属部材ホルダ52を約1
0rpmの速度で回転させる。次に、イオンガン67に
Arガスを供給して、Arイオンを取り出し、これをS
iからなるターゲット66の表面に放射する。このとき
のArイオンの加速電圧は900eV、イオン電流密度
は0.3mA/cm2 に設定した。以上の工程を約20
分間行い、ショットピーニング処理した後、窒化処理し
た金属部材53の表面に膜厚200ÅのSiを主成分と
する中間層を形成した。
【0043】次に、イオンガン67からのArイオンの
放射を止めた後、ECRプラズマ発生装置の放電ガス導
入管45からArガスを5.7×10-4Torrで供給
するとともに、マイクロ波供給手段41から2.45G
Hz、100Wのマイクロ波を供給して、プラズマ発生
室44内に形成されたArプラズマを金属部材53の表
面に放射する。これと同時に、金属部材53に発生する
自己バイアスが−5Vとなるように、高周波電源50か
ら13.56MHzのRF電圧を金属部材ホルダ52に
印加し、反応ガス導入管56からのCH4 ガスを1.3
×10-3Torrで供給する。
【0044】以上の工程を約30分間行い、金属部材5
3上に形成した中間層の上に膜厚12000ÅのDLC
薄膜を形成した。以上の2つの工程の結果、ショットピ
ーニング処理後に窒化処理した金属部材53の表面にS
iを主成分とする中間層を形成し、この中間層上に、D
LC薄膜を形成した積層薄膜が得られた。
【0045】本発明において、ローラ10としては、N
i、Cr、Moを含み、あるいはさらにBなどを添加し
た高合金鋳鉄の焼入れ材からなるローラを用いることが
好ましい。前記ベーン12と上記のNi、Cr、Moを
含み、あるいはさらにBなどを添加した高合金鋳鉄の焼
入れ材からなるローラ10はそれぞれ耐摩耗性が従来よ
り向上しているので、これらを用いた本発明の冷媒圧縮
機は、冷媒がHFC系冷媒などに替わり、冷凍機油がエ
ステル系冷凍機油やエーテル系冷凍機油に移行しても、
ベーン12とローラ10の摺動部における耐摩耗性が高
く、長期に亘り安定して運転できる。
【0046】本発明の冷媒圧縮機の形式は上記のような
密閉型圧縮機でもよいが、開放型圧縮機でもよく特に限
定されない。なお、本発明は上記実施例に限定されるも
のではないので、特許請求の範囲に記載の趣旨から逸脱
しない範囲で各種の変形実施が可能である。
【0047】
【発明の効果】金属部材の表面にショットピーニング処
理を施した後、その上にCrNコーテイング膜あるいは
硬質炭素薄膜を形成した本発明のベーンは、ショットピ
ーニング処理により被処理面の疲労強度や硬度が高めら
れるので、その上に形成されるCrNコーテイング膜あ
るいは硬質炭素薄膜と下地の硬度の差が少なくなり、ま
た、ショットピーニング処理によって、被処理面に微細
な凹凸が形成されるために下地との接着性が改善され、
使用中にCrNコーテイング膜あるいは硬質炭素薄膜が
下地から剥離することがなくなり、摺動部における耐摩
耗性が格段に高められる。したがって冷媒がHFC系冷
媒などに替わり、冷凍機油がエステル系冷凍機油やエー
テル系冷凍機油に移行しても、ベーンとローラとの摺動
面において耐摩耗性が格段に向上する。
【0048】このような本発明のベーンを備えた本発明
の冷媒圧縮機は、ベーンとローラとの摺動面などにおい
て耐摩耗性が高められ長期に亘り安定して運転できる。
【0049】ローラとして、Ni、Cr、Moを含み、
あるいはさらにBなどを添加した高合金鋳鉄の焼入れ材
からなるローラを用いた本発明の冷媒圧縮機は耐摩耗性
が格段に向上し、一層長期に亘り安定して運転できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 冷凍装置の冷凍回路図である。
【図2】 本発明の冷媒圧縮機の一例の縦断面図であ
る。
【図3】 図2の冷媒圧縮機の横断面図である。
【図4】 本発明におけるCrNコーテイング膜形成の
ための装置の一例を示す概略断面図である。
【図5】 本発明におけるDLC薄膜形成のための装置
の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
a 本発明の冷媒圧縮機 1 密閉容器 2 電動要素 3 圧縮要素 7 シリンダ 8 回転軸 9 偏心部 10 ローラ 12 ベーン 18 オイル(冷凍機油)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡島 政三 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 三 洋電機株式会社内 Fターム(参考) 3H029 AA04 AA13 AB03 BB31 BB44 CC01 CC03 CC05 CC38 CC40

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属部材の表面にショットピーニング処
    理を施した後、その上にCrNコーテイング膜あるいは
    硬質炭素薄膜を形成したことを特徴とするベーン。
  2. 【請求項2】 前記金属部材がSKHなどの高速度工具
    鋼、SKDなどの熱間加工鋼、SUSなどの耐熱耐酸
    鋼、S45Cなどの構造鋼、あるいはこれらの焼結鋼か
    ら選ばれ、焼入れを施した金属部材であることを特徴と
    する請求項1記載のベーン。
  3. 【請求項3】 前記硬質炭素薄膜は、ダイヤモンド薄
    膜、ダイヤモンド構造と非晶質炭素構造との混合膜、ま
    たは非晶質炭素薄膜から構成されていることを特徴とす
    る請求項1あるいは請求項2記載のベーン。
  4. 【請求項4】 回転軸を有する電動要素と、この電動要
    素の回転軸によって駆動される圧縮要素を備え、吸入し
    たHFC系冷媒、HFC系冷媒を主体とする冷媒、炭化
    水素系冷媒あるいはこれらの混合物から選ばれる冷媒を
    この圧縮要素により圧縮して吐出するようにした冷媒圧
    縮機であって、前記圧縮要素はシリンダと、前記回転軸
    の偏心部によりこのシリンダ内を回転するローラと、こ
    のローラに接してシリンダ内を分けるベーンなどを備え
    ており、前記ベーンとして、金属部材の表面にショット
    ピーニング処理を施した後、その上にCrNコーテイン
    グ膜あるいは硬質炭素薄膜を形成したベーンを用いるこ
    とを特徴とする冷媒圧縮機。
  5. 【請求項5】 前記ローラは、Ni、Cr、Moを含
    み、あるいはさらにBなどを添加した高合金鋳鉄の焼入
    れ材からなるローラであることを特徴とする請求項4記
    載の冷媒圧縮機。
  6. 【請求項6】 冷凍機油がエステル系潤滑油、エーテル
    系潤滑油あるいはこれらの混合物であることを特徴とす
    る請求項4あるいは請求項5記載の冷媒圧縮機。
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