JPH11264392A - ベーンおよびそれを使用した冷媒圧縮機 - Google Patents

ベーンおよびそれを使用した冷媒圧縮機

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JPH11264392A
JPH11264392A JP6861898A JP6861898A JPH11264392A JP H11264392 A JPH11264392 A JP H11264392A JP 6861898 A JP6861898 A JP 6861898A JP 6861898 A JP6861898 A JP 6861898A JP H11264392 A JPH11264392 A JP H11264392A
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vane
refrigerant
roller
thin film
intermediate layer
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JP6861898A
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Masazo Okajima
政三 岡島
Takashi Sunaga
高史 須永
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Sanyo Electric Co Ltd
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Sanyo Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷凍機油としてエステル系冷凍機油を用い、
HFC系冷媒を使用した場合でも、ベーンの表面の摺動
部における摩擦係数が低く、耐摩耗性が高いベーンおよ
びそれを備えた冷媒圧縮機を提供すること。 【解決手段】 アンモニアガスと水素ガスを用いて金属
部材の表面を窒化し、その上にSi、Ti、Zr、M
o、W、Ru、Geの単体、あるいはこれらに炭素、窒
素および酸素のうちの少なくとも1種の元素を含む中間
層を設け、さらにその上に硬質炭素薄膜を形成したベー
ンおよびそれを備えた冷媒圧縮機により課題を解決でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ベーンおよびそれ
を使用した冷媒圧縮機に関するものであり、さらに詳し
くはベーンの摺動面の耐摩耗性を向上したベーン、およ
びオゾン層を破壊する危険がないHFC系冷媒などを使
用する冷凍装置に使用される冷媒圧縮機であって、摺動
面の耐摩耗性を向上した冷媒圧縮機に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】冷凍機の冷媒としては従来ジクロロジフ
ルオロメタン(R−12)や共沸混合冷媒のR−22と
モノクロロペンタフルオロエタン(R−115a)とか
らなるR−502が用いられており、これらの冷媒は、
通常の冷凍装置に好適であり、冷媒と相溶性のある鉱物
油やアルキルベンゼン系油等の冷凍機油を使用した冷凍
サイクルは、信頼性、耐久性など高い品質レベルに至っ
ている。
【0003】しかしながら、上記の冷媒は、オゾン破壊
が高く、大気中に放出されて地球上空のオゾン層に到達
すると、このオゾン層を破壊する。このオゾン層の破壊
は冷媒中の塩素基(Cl)により引き起こされる。そこ
で、塩素基の含有量の少ない冷媒、例えばクロロジフル
オロメタン(HCFC−22、R−22)、塩素基を含
まない冷媒、例えはジフルオロメタン(HFC−32、
R−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125、
R−125)や1,1,1,2−テトラフルオロエタン
(HFC−134a、R−134a)などがこれらの代
替冷媒(以下、HFC系冷媒と称す)として考えられて
いる。HFC系冷媒に対して使用される冷凍機油として
は、HFC系冷媒と相溶性のない鉱物油やアルキルベン
ゼン系油などや、HFC系冷媒と相溶性のあるエステル
系冷凍機油、エーテル系冷凍機油、それらの混合油など
がある。
【0004】従来、ロータリ式圧縮機のベーンは、SK
H51などを使用し耐摩耗性の向上を計るために、イオ
ン窒化処理、CrNコーテイング処理などの表面処理が
行われたり、アルミ含浸カーボン材や繊維強化アルミ材
を用いたベーンが用いられていた。しかし、冷媒がHF
C系冷媒に替わり、冷凍機油がエステル系冷凍機油やエ
ーテル系冷凍機油に移行すると、これら従来の表面処
理、例えば、イオン窒化処理の場合は摩擦係数が高いた
めに、冷凍回路内に水分が存在し、摩擦により高温にな
るとエステル系冷凍機油やエーテル系冷凍機油が加水分
解されて酸が発生し、発生した酸により金属石鹸などの
スラツジが形成され、このスラッジがベーンの表面の摺
動部に堆積したり、腐食、摩耗するなどの問題がある。
また、CrNコーテイング処理の場合は、被膜が運転中
に剥離する問題やコーテイング被膜厚のバラツキにより
生産対応しにくい問題がある。またアルミ含浸カーボン
材や繊維強化アルミ材を用いたベーンは、機械的強度や
耐摩耗性が不足し、かつ相手のローラへの攻撃性がある
ので、これらのベーンを備えたロータリ圧縮機は長期に
亘り安定して運転できなかった。
【0005】一方、電気かみそりなどの刃物などの表面
に例えばSiなどを主成分とする中間層を設けその上に
硬質炭素薄膜からなる硬質被膜を形成することが提案さ
れている(特開平1−317197号公報、特開平7−
316818号公報、特開平7−330490号公報な
ど)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、冷凍
機油としてエステル系冷凍機油やエーテル系冷凍機油な
どを用いたり、HFC系冷媒を使用した場合でも、ベー
ンの表面の摺動部における摩擦係数が低く、耐摩耗性が
あり、ベーンの表面の摺動部におけるスラッジの発生を
防止したベーン、およびそのベーンを使用した長期に亘
り安定して運転できる冷媒圧縮機を提供することであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
請求項1の発明は、アンモニアガスと水素ガスを用いて
金属部材の表面を窒化し、その上にSi、Ti、Zr、
Mo、W、Ru、Geの単体、あるいはこれらに炭素、
窒素および酸素のうちの少なくとも1種の元素を含む中
間層を設け、さらにその上に硬質炭素薄膜を形成したこ
とを特徴とするベーンである。
【0008】上記課題を解決するため請求項2の発明
は、回転軸を有する電動要素と、この電動要素の回転軸
によって駆動される圧縮要素を備え、吸入したHFC系
冷媒あるいはHFC系冷媒を主体とする冷媒をこの圧縮
要素により圧縮して吐出するようにした冷媒圧縮機であ
って、前記圧縮要素はシリンダと、前記回転軸の偏心部
によりこのシリンダ内を回転するローラと、このローラ
に接してシリンダ内を分けるベーンと、前記シリンダの
開口を封じる上軸受部と下軸受部などから構成されてお
り、前記ベーンとして、アンモニアガスと水素ガスを用
いて金属部材の表面を窒化し、その上にSi、Ti、Z
r、Mo、W、Ru、Geの単体、あるいはこれらに炭
素、窒素および酸素のうちの少なくとも1種の元素を含
む中間層を設け、さらにその上に硬質炭素薄膜を形成し
たベーンを用いることを特徴とする冷媒圧縮機である。
【0009】本発明の請求項3の発明は、請求項2記載
の冷媒圧縮機において、前記ローラは下記の(1)〜
(4)から選ばれるローラであることを特徴とする。 (1)Ni、Cr、Moを含み、あるいはさらにBなど
を添加した高合金鋳鉄の焼入れ材からなるローラ、
(2)Ni、Cr、Moを含み、あるいはさらにBなど
を添加した高合金鋳鉄の焼入れ材の表面をアンモニアガ
スと水素ガスを用いて窒化したローラ、(3)Ni、C
r、Moを含み、あるいはさらにBなどを添加した高合
金鋳鉄の焼入れ材の表面をアンモニアガスと水素ガスを
用いて窒化し、その上にSi、Ti、Zr、Mo、W、
Ru、Geと炭素、窒素および酸素のうちの少なくとも
1種の元素を含む中間層を設け、さらにその上に硬質炭
素薄膜を形成したローラ、(4)S40またはS45C
相当材の焼入れ材、またはFC−300相当材をNi−
P系メッキ処理し、メッキ膜のマトリックス中に粒径1
μm以下のTiN、Si34 のセラミック粒子を1〜
5重量%分散したローラ。
【0010】本発明の請求項4の発明は、請求項2ある
いは請求項3記載の冷媒圧縮機において、冷凍機油がエ
ステル系潤滑油、エーテル系潤滑油あるいはこれらの混
合物であることを特徴とする。
【0011】本発明の請求項5の発明は、請求項2から
請求項4のいずれかに記載の冷媒圧縮機において、前記
硬質炭素薄膜は、ダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド構造
と非晶質炭素構造との混合膜、または非晶質炭素薄膜か
ら構成されていることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】以下本発明を図1〜3に基づいて
説明する。図1に、蒸発気化したHFC系冷媒を圧縮し
て凝縮器に吐出する本発明の冷媒圧縮機a、同冷媒を凝
縮液化する凝縮器b、同冷媒の圧力を減じるキャピラリ
チューブc、液化冷媒を蒸発させる蒸発器dなどを順次
冷媒管でつないで形成した冷凍装置の冷凍サイクルを示
す。
【0013】図2は、本発明の冷媒圧縮機の一例の縦断
面図である。図3は、図2に示した本発明の冷媒圧縮機
の横断面図である。図2及び図3において、1は密閉容
器で、この容器内には上側に電動要素2が、下側にこの
電動要素によって駆動される回転圧縮要素3が夫々収納
されている。電動要素2は有機系材料で絶縁された巻線
4を有する固定子5とこの固定子の内側に設けられた回
転子6とで構成されている。回転圧縮要素3はシリンダ
7と、回転軸8の偏心部9によってシリンダ7の内壁に
沿って回転させるローラ10と、このローラの周面に圧
接されてシリンダ7内を吸込側と吐出側とに区画するよ
うにバネ11で押圧されるベーン12と、シリンダ7の
開口を封じるとともに、回転軸8を軸支する上部軸受1
3及び下部軸受14とで構成されている。
【0014】そして、上部軸受13にはシリンダ7の吐
出側と連通する吐出孔15が設けられている。また、上
部軸受13には吐出孔15を開閉する吐出弁16と、こ
の吐出弁を覆うように吐出マフラ17とが取付けられて
いる。密閉容器1内の底部にはHFC系冷媒、例えば、
R134aとR32とR125との3種混合冷媒あるい
はR32とR125との2種混合冷媒が封入されてい
る。
【0015】そして、冷凍機油としてのエステル系冷凍
機油(オイル)18は回転圧縮要素3の摺動部材である
ローラ10とベーン12との摺動面を潤滑している。
【0016】回転圧縮要素3のシリンダ7内に流入して
ローラ10とベーン12との協働で圧縮される冷媒は上
述のように、例えばR407C[R134aとR32と
R125との混合冷媒]やR410A[R32とR12
5との混合冷媒]などである。
【0017】19は密閉容器1に取付けてシリンダ7の
吸込側に冷媒を案内する吸込管、20は密閉容器1の上
壁に取付けられて回転圧縮要素3で圧縮されて電動要素
2を介して密閉容器1外に冷媒を吐出する吐出管であ
る。
【0018】吸込管19からシリンダ7内の吸込側に流
入した冷媒はローラ10とベーン12との協働で圧縮さ
れ、吐出孔15を通って吐出弁16を開放して吐出マフ
ラ17内に吐出される。この吐出マフラ17内の冷媒は
電動要素2を介して吐出管20から密閉容器1外に吐出
れさる。そして、密閉容器1の底部に入れられたオイル
18は、回転軸8の高速回転によって上方開放端にでき
る渦流による真空現象によって回転軸8の中空孔21を
通って吸い上げられ、回転圧縮要素3のローラ10やベ
ーン12等の摺動部材の摺動面、回転軸8と上部軸受1
3、下部軸受14との摺動面などに供給されて潤滑を行
っている。また、シリンダ7内で圧縮された冷媒が低圧
側にリークしないようにしている。
【0019】上記ベーン12は、SKHなどの高速度工
具鋼、SKDなどの熱間加工鋼、SUSなどの耐熱、耐
酸鋼、S45Cなどの構造鋼、あるいは焼結材などの金
属部材をアンモニアガスと水素ガスを用いて金属部材の
表面を窒化し、その上にSi、Ti、Zr、Mo、W、
Ru、Geの単体、あるいはこれらに炭素、窒素および
酸素のうちの少なくとも1種の元素を含む中間層を設
け、さらにその上に硬質炭素薄膜(ダイヤモンドライク
カーボン薄膜:以下、DLC薄膜と称す)を形成したベ
ーンである。このベーン12は、表面の摩擦係数が低
く、また耐摩耗性が高い。したがって冷媒がHFC系冷
媒に替わり、冷凍機油がエステル系冷凍機油に移行して
も、ベーン12とローラ10との摺動面などにおいて被
膜が剥離するなどがない。
【0020】窒化処理は、イオン窒化、プラズマ窒化、
ラジカル窒化などの各種方法で行うことができる。グロ
ー放電を行って窒化する際に用いる装置はグロー放電用
電極、プラズマ化ガス用配管、真空ポンプに接続された
排気管を備えた真空チャンバを備えたものであれば特に
限定されないが、例えば特開平8−35053号公報の
図1に記載の窒化装置を用いることができる。グロー放
電を行って窒化する際の条件の1例を次に示す。 処理温度;300〜650℃、好ましくは400〜60
0℃、例えば510℃ 電圧; 400〜500V、例えば450V 電流密度;0.001〜2mA/cm2 アンモニアガス濃度;10〜50%、例えば20%(残
りは水素ガス) 放電時間;1〜10時間、例えば3時間。 電流密度を0.001〜2mA/cm2 とするのは、こ
の電流密度の範囲においてのみグロー放電はアンモニア
ガスおよび水素ガスをプラズマ化することができ、余熱
を発生させないからである。電流密度が0.001mA
/cm2 未満ではプラズマ化を充分に起こすことができ
ず、電流密度が2mA/cm2 を超えると金属部材の表
面に過熱状態が生じたりして有効な窒化処理が行われな
い。アンモニアガスと水素ガスの比率が3:1〜1:1
の範囲において密着性、平滑性などに優れた窒化処理を
行うことができる。グロー放電を発生する放電は、直流
放電、高周波放電のいずれでもよい。
【0021】次に、グロー放電を行って窒化した後、そ
の上にSi、Ti、Zr、Mo、W、Ru、Geの単
体、あるいはこれらに炭素、窒素および酸素のうちの少
なくとも1種の元素を含む中間層を設け、さらにその上
にDLC薄膜を形成する方法について述べる。
【0022】DLC薄膜は、ダイヤモンド薄膜、ダイヤ
モンド構造と非晶質炭素構造との混合膜、または非晶質
炭素薄膜から構成される。図4は、本発明における中間
層およびDLC薄膜形成のための装置の一例を示す概略
断面図である。真空チャンバ38には、プラズマ発生室
34が設けられている。プラズマ発生室34には、導波
管32の一端が取り付けられており、導波管32の他端
には、マイクロ波供給手段31が設けられている。マイ
クロ波供給手段31で発生したマイクロ波は、導波管3
2及びマイクロ波導入窓33を通って、プラズマ発生室
34に導かれる。プラズマ発生室34には、プラズマ発
生室34内にアルゴン(Ar)ガスなどの放電ガスを導
入させるための放電ガス導入管35が設けられている。
またプラズマ発生室34の周囲には、プラズマ磁界発生
装置36が設けられている。マイクロ波による高周波磁
界と、プラズマ磁界発生装置36からの磁界を作用させ
ることにより、プラズマ発生室34内に高密度のプラズ
マが形成される。
【0023】真空チャンバ38内には筒状の金属部材ホ
ルダ42が設けられている。この筒状の金属部材ホルダ
42は、真空チャンバ38の壁面に対し垂直に設けられ
た軸(図示せず)のまわりに回転自在に設けられてい
る。金属部材ホルダ42の周面には、窒化処理した複数
の金属部材43が等しい間隔で装着されている。なお、
本実施例では金属部材ホルダ42の周面に金属部材43
を24個装着している。金属部材ホルダ42には、高周
波電源40が接続されている。
【0024】金属部材ホルダ42の周囲には、金属製の
筒状のシールドカバー44が所定の距離隔てて設けられ
ている。このシールドカバー44は、接地電極に接続さ
れている。このシールドカバー44は、被膜を形成する
ときに、金属部材ホルダ42に印加されるRF電圧によ
って被膜形成箇所以外の金属部材ホルダ42と真空チャ
ンバ38との間で放電が発生するのを防止するために設
けられている。金属部材ホルダ42とシールドカバー4
4との間の間隙は、気体分子の平均自由行程以下の距離
となるように配置されている。気体分子の平均自由行程
は、何らかの原因で発生したイオン及び電子が電界によ
り加速され、衝突せずに移動できる平均距離と同じある
いはそれ以下の距離である。従って、金属部材ホルダ4
2とシールドカバー44との間隙を気体分子の平均自由
行程以下にすることにより、イオン及び電子が気体分子
と衝突する確率を小さくし、連鎖的に電離が進行するの
を防止している。
【0025】金属部材ホルダ42とシールドカバー44
との間隙は、特に気体分子の平均自由行程の1/10以
下の距離にすることが好ましい。本実施例では、金属部
材ホルダ42とシールドカバー44との間隙を気体分子
の平均自由行程の1/10以下である約5mmとしてい
る。
【0026】シールドカバー44には、開口部45が形
成されている。この開口部45を通って、プラズマ発生
室34から引き出されたプラズマが金属部材ホルダ42
に装着された金属部材43に放射されるようになってい
る。真空チャンバ38内には、反応ガス導入管46が設
けられている。この反応ガス導入管46の先端は、開口
部45の上方に位置する。反応ガス導入管46は、外部
から真空チャンバ38内にCH4 ガスを導入する。
【0027】第1開口部45の反対側には、第2開口部
53が形成されている。第2開口部53の下方には、中
間層を構成する材料原子からなるターゲット56が設け
られている。またターゲット56の近傍には、ターゲッ
ト56をスパッタするため、不活性ガスのイオンをター
ゲット56に放射するイオンガン57が設けられてい
る。本実施例では、不活性ガスとしてArガスを用いて
いる。本実施例においては、ターゲット56及びイオン
ガン57により、中間層形成手段が構成されている。タ
ーゲット56及びイオンガン57により第2開口部53
を介して、金属部材43上に中間層を構成する材料原子
が放射される。
【0028】以下、Siを主成分とする中間層を形成
し、その中間層の上にDLC薄膜を形成する実施例につ
いて説明する。まず、真空チャンバ8内を10-5〜10
-7Torrに排気して、金属部材ホルダ42を約10r
pmの速度で回転させる。次に、イオンガン57にAr
ガスを供給して、Arイオンを取り出し、これをSiか
らなるターゲット56の表面に放射する。このときのA
rイオンの加速電圧は900eV、イオン電流密度は
0.3mA/cm2 に設定した。以上の工程を約20分
間行い、金属部材43の表面に膜厚200ÅのSiを主
成分とする中間層を形成した。
【0029】次に、イオンガン57からのArイオンの
放射を止めた後、ECRプラズマ発生装置の放電ガス導
入管35からArガスを5.7×10-4Torrで供給
するとともに、マイクロ波供給手段31から2.45G
Hz、100Wのマイクロ波を供給して、プラズマ発生
室34内に形成されたArプラズマを金属部材43の表
面に放射する。これと同時に、金属部材43に発生する
自己バイアスが−5Vとなるように、高周波電源40か
ら13.56MHzのRF電圧を金属部材ホルダ42に
印加し、反応ガス導入管46からのCH4 ガスを1.3
×10-3Torrで供給する。
【0030】以上の工程を約30分間行い、金属部材4
3上に形成した中間層の上に膜厚12000ÅのDLC
薄膜を形成した。以上の2つの工程の結果、窒化処理し
た金属部材43の表面にSiを主成分とする中間層を形
成し、この中間層上に、DLC薄膜を形成した積層薄膜
が得られた。このような中間層の形成により、DLC薄
膜中の応力を緩和させることができ、金属部材とDLC
薄膜の密着性を高めることができる。窒化処理した上に
形成した中間層の存在により、金属部材とDLC薄膜と
の熱膨張係数の差により生じていた熱応力を緩和させる
ことができるため、DLC薄膜中の応力を緩和させるこ
とができるものと考えられる。
【0031】窒化処理した金属部材43の表面にSiと
Cの混合した中間層を形成する場合は、第1開口部45
におけるプラズマCVD法による炭素被膜形成と、第2
開口部53におけるSiのスパッタリングを同時に行う
ことにより形成できる。そしてこのSiとCの混合した
中間層上に同様にしてDLC薄膜を形成する。
【0032】ローラ10としては下記の(1)〜(4)
から選ばれるいずれかのローラを用いることにより、前
記ベーン12とローラ10はそれぞれ耐摩耗性が従来よ
り向上できる。したがって冷媒がHFC系冷媒に替わ
り、冷凍機油がエステル系冷凍機油に移行しても、ベー
ン12とローラ10との摺動面などにおいて被膜が剥離
するなどがない。 (1)Ni、Cr、Moを含み、あるいはさらにBなど
を添加した高合金鋳鉄の焼入れ材からなるローラ、
(2)Ni、Cr、Moを含み、あるいはさらにBなど
を添加した高合金鋳鉄の焼入れ材の表面をアンモニアガ
スと水素ガスを用いて窒化したローラ、(3)Ni、C
r、Moを含み、あるいはさらにBなどを添加した高合
金鋳鉄の焼入れ材の表面をアンモニアガスと水素ガスを
用て窒化し、その上にSi、Ti、Zr、Mo、W、R
u、Geと炭素、窒素および酸素のうちの少なくとも1
種の元素を含む中間層を設け、さらにその上にDLC薄
膜を形成したローラ、(4)S40またはS45C相当
材の焼入れ材、またはFC−300相当材をNi−P系
メッキ処理し、メッキ膜のマトリックス中に粒径1μm
以下のTiN、Si34 のセラミック粒子を1〜5重
量%分散したローラ。
【0033】ローラの熱処理条件の例を次に示す。 雰囲気;無酸化雰囲気炉(ブタン変性ガス中) 焼入れ温度、時間;850〜950℃、約60分 焼戻し温度、時間;300〜350℃、約120分
【0034】本発明の冷媒圧縮機の形式は上記のような
密閉型圧縮機でもよいが、開放型圧縮機でもよく特に限
定されない。なお、本発明は上記実施例に限定されるも
のではないので、特許請求の範囲に記載の趣旨から逸脱
しない範囲で各種の変形実施が可能である。
【0035】
【発明の効果】この発明は上記のように構成したことに
より、冷凍機油としてエステル系冷凍機油、エーテル系
冷凍機油などを用いたり、HFC系冷媒を使用した場合
でも、ベーンの表面の摺動部における摩擦係数が低く、
耐摩耗性が高く、このベーンを備えた冷媒圧縮機は、長
期に亘り安定して運転することができる。このベーンと
ともに特定のローラを備えた冷媒圧縮機はさらに耐摩耗
性が向上し、一層長期に亘り安定して運転することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 冷凍装置の冷凍回路図である。
【図2】 本発明の冷媒圧縮機の一例の縦断面図であ
る。
【図3】 図2の冷媒圧縮機の横断面図である。
【図4】 本発明における中間層およびDLC薄膜形成
のための装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 密閉容器 2 電動要素 3 圧縮要素 4 巻線 5 固定子 6 回転子 7 シリンダ 8 回転軸 9 偏心部 10 ローラ 11 バネ 12 ベーン 13 上部軸受 14 下部軸受 15 吐出孔 16 吐出弁 17 吐出マフラ 18 オイル 19 吸込管 20 吐出管 21 中空孔

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アンモニアガスと水素ガスを用いて金属
    部材の表面を窒化し、その上にSi、Ti、Zr、M
    o、W、Ru、Geの単体、あるいはこれらに炭素、窒
    素および酸素のうちの少なくとも1種の元素を含む中間
    層を設け、さらにその上に硬質炭素薄膜を形成したこと
    を特徴とするベーン。
  2. 【請求項2】 回転軸を有する電動要素と、この電動要
    素の回転軸によって駆動される圧縮要素を備え、吸入し
    たHFC系冷媒あるいはHFC系冷媒を主体とする冷媒
    をこの圧縮要素により圧縮して吐出するようにした冷媒
    圧縮機であって、前記圧縮要素はシリンダと、前記回転
    軸の偏心部によりこのシリンダ内を回転するローラと、
    このローラに接してシリンダ内を分けるベーンと、前記
    シリンダの開口を封じる上軸受部と下軸受部などから構
    成されており、前記ベーンとして、アンモニアガスと水
    素ガスを用いて金属部材の表面を窒化し、その上にS
    i、Ti、Zr、Mo、W、Ru、Geの単体、あるい
    はこれらに炭素、窒素および酸素のうちの少なくとも1
    種の元素を含む中間層を設け、さらにその上に硬質炭素
    薄膜を形成したベーンを用いることを特徴とする冷媒圧
    縮機。
  3. 【請求項3】 前記ローラは下記の(1)〜(4)から
    選ばれるローラであることを特徴とする請求項2記載の
    冷媒圧縮機。 (1)Ni、Cr、Moを含み、あるいはさらにBなど
    を添加した高合金鋳鉄の焼入れ材からなるローラ、
    (2)Ni、Cr、Moを含み、あるいはさらにBなど
    を添加した高合金鋳鉄の焼入れ材の表面をアンモニアガ
    スと水素ガスを用いて窒化したローラ、(3)Ni、C
    r、Moを含み、あるいはさらにBなどを添加した高合
    金鋳鉄の焼入れ材の表面をアンモニアガスと水素ガスを
    用いて窒化し、その上にSi、Ti、Zr、Mo、W、
    Ru、Geと炭素、窒素および酸素のうちの少なくとも
    1種の元素を含む中間層を設け、さらにその上に硬質炭
    素薄膜を形成したローラ、(4)S40またはS45C
    相当材の焼入れ材、またはFC−300相当材をNi−
    P系メッキ処理し、メッキ膜のマトリックス中に粒径1
    μm以下のTiN、Si34 のセラミック粒子を1〜
    5重量%分散したローラ。
  4. 【請求項4】 冷凍機油がエステル系潤滑油、エーテル
    系潤滑油あるいはこれらの混合物であることを特徴とす
    る請求項2あるいは請求項3記載の冷媒圧縮機。
  5. 【請求項5】 前記硬質炭素薄膜は、ダイヤモンド薄
    膜、ダイヤモンド構造と非晶質炭素構造との混合膜、ま
    たは非晶質炭素薄膜から構成されていることを特徴とす
    る請求項2から請求項4のいずれかに記載の冷媒圧縮
    機。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007056720A (ja) * 2005-08-23 2007-03-08 Sanden Corp 斜板式圧縮機
JP2007056721A (ja) * 2005-08-23 2007-03-08 Sanden Corp 斜板式圧縮機

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JP2007056720A (ja) * 2005-08-23 2007-03-08 Sanden Corp 斜板式圧縮機
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