JPH0518357A - 冷媒圧縮機 - Google Patents

冷媒圧縮機

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JPH0518357A
JPH0518357A JP16666291A JP16666291A JPH0518357A JP H0518357 A JPH0518357 A JP H0518357A JP 16666291 A JP16666291 A JP 16666291A JP 16666291 A JP16666291 A JP 16666291A JP H0518357 A JPH0518357 A JP H0518357A
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JP
Japan
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chromium
compound layer
nitrogen
refrigerant
refrigerant compressor
Prior art date
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JP16666291A
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English (en)
Inventor
Shoichiro Kitaichi
昌一郎 北市
Shinobu Sato
佐藤  忍
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 冷媒としてHFC134a またはHFC152a を用い、
これらの冷媒と相溶性を有する冷凍機油を使用する冷媒
圧縮機において、摺動部材の耐摩耗性を向上させ、長期
使用を可能とする。 【構成】 密閉された容器内に圧縮機構が内蔵され、か
つ冷媒として1,1,1,2-テトラフルオロエタンまたは1,1-
ジフルオロエタンを用い、冷凍機油として前記冷媒と相
溶性を有する冷凍機油を用いた冷媒圧縮機において、前
記圧縮機構における摺動部材の一方が鋳鉄から成り、他
方がPVD法によって形成されたクロム(Cr)と窒素
(N)とを主成分とする化合物層を表面に有する鉄系金
属材から成る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷媒圧縮機に係り、特
に冷媒として1,1,1,2-テトラフルオロエタン(以下、HF
C134a と略称する。)または1,1-ジフルオロエタン(HF
C152a と略称する。)を使用する冷媒圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】空気調和機や冷蔵庫などには、冷風や温
風を送り出すために、例えば図1に示すロータリー式の
密閉型圧縮機や、図3に示すレシプロ式の密閉型圧縮
機、カーエアコン用の半密閉型冷媒圧縮機(図示省略)
などの冷媒圧縮機が使用されている。
【0003】一例として図1に縦断面図を示した代表的
なロータリー式の密閉型冷媒圧縮機を説明する。
【0004】図1において、密閉されたケーシング1内
にはステータ2とロータ3とで構成されるモータ機構4
が設置されている。
【0005】モータ機構4の下部には圧縮機構5が配設
され、上記モータ機構4によって圧縮機構5が駆動され
る。
【0006】これによって、図示しないアキュムレータ
を介して供給管6から導入された冷媒が圧縮され、ケー
シング1内に一旦吐出させた後、ケーシング1の上部に
設けられた吐出管7から冷凍機側に冷媒が供給される。
【0007】このような密閉型圧縮機における圧縮機構
5について、図2を加えて詳しく説明する。図2は圧縮
機構5の横断面図である。
【0008】図1および図2において、ケーシング1内
にはモータ機構4が収容され、このモータ機構4により
回転するシャフト8がフレーム9の軸受に軸支されてシ
リンダ10内を貫通し、更にその下端部はサブベアリン
グ11の軸受に軸支されている。
【0009】シャフト8のシリンダ10の内部は、クラ
ンク部12(偏心部)となっており、このクランク部1
2とシリンダ10との間にローラ13が嵌合され、シャ
フト8の回転によりローラ13が遊星運動する。
【0010】またシリンダ10を貫通してブレード14
が設けられ、スプリング15の付勢力によりブレード1
4の一端側はローラ13の外周に接触し、シリンダ10
内を吸込室16と吐出室17に分割している。上記ロー
ラ13の遊星運動に応じてブレード14は往復運動す
る。
【0011】冷媒ガスはシャフト8の回転に伴うローラ
13の遊星運動に応じて、吸込口18から吸込まれ、圧
縮され、吐出口19から吐出されるが、この摺動部の動
作を円滑にするためにケーシング1内には冷凍機油20
が収容されている。この冷凍機油20は、シャフト8の
回転により、シャフト8下端に設けられている図示され
ないポンプに沿って吸い上げられ、摺動部を潤滑するよ
うになっている。
【0012】このような冷媒圧縮機内に発生する摩耗
は、ブレード14とシャフト8を中心とした2つの原因
により発生する。
【0013】第1の原因は、ブレード14はシャフト8
の回転に伴い往復運動するが、この際分割されたシリン
ダ10内の2室の圧力差によりシリンダ10の貫通孔内
面にこすりつけられブレード14、シリンダ10ともに
摩耗することによる。また、ブレード14はスプリング
15によりその端部がローラ13に押付けられているた
め、ローラ13の外周も摩耗することがある。
【0014】第2の原因は、シャフト8は、ローラ13
を介してスプリング15やシリンダ10内の圧力を受
け、フレーム9の軸受とサブベアリング11に押付けら
れて若干湾曲した形状となって高速回転するため、シャ
フト8の外面、フレーム9の軸受及びサブベアリング1
1の内面が同様に摩耗することによる。
【0015】このような密閉型冷媒圧縮機には従来から
冷媒としてジクロロジフロロメタン(以下CFC12 と略称
する。)やモノクロロジフロロメタン(以下HCFC22と略
称する。)が主に用いられており、また圧縮機構5に封
入される冷凍機油としては、CFC12 やHCFC22に対して溶
解性を示すナフテン系やパラフィン系鉱油が用いられて
いる。
【0016】これら冷媒や冷凍機油はケーシング1内を
直接循環するため、圧縮機構5における摺動部品は耐摩
耗性が要求されている。
【0017】ところで、最近、上述した冷媒などからの
フロンの放出がオゾン層の破壊に繋がり人体や生物系に
深刻な影響を与えることがはっきりしてきたため、オゾ
ン破壊係数(ODP)の高いCFC12 などは段階的に使用
が削減され、将来的には使用しない方針が国際的に決定
している。
【0018】このような状況に対応するため、CFC12 の
代替冷媒として、HFC134a やHFC152a 等の冷媒が開発さ
れており、この冷媒に適した圧縮機用の材料の開発が望
まれている。HFC134a やHFC152a は、両方ともその分子
内に塩素(Cl)原子を含まないため、オゾン破壊係数
(ODP)は 0であることと、熱的特性がCFC12 に近似
しているため圧縮機構部の設計を大幅に変更する必要が
ないことの二点からCFC12 の代替冷媒として非常に有用
である。
【0019】一方、冷媒圧縮機の運転中は、冷凍サイク
ル内に冷凍機油の残留を防止し、確実に冷凍機油を冷媒
圧縮機の圧縮機構部に戻し、機構部の潤滑および冷却を
保持する必要がある。このため、冷媒圧縮機の冷媒とし
てHFC134a やHFC152a を用いる場合、冷媒との相溶性を
有することが冷凍機油の特性として必要である。
【0020】しかし、HFC134a およびHFC152a は従来の
冷凍機油である鉱油にはほとんど溶解しない。そこで、
HFC134a およびHFC152a と相溶性を有するポリエーテル
系油、ポリエステル系油、フッ素系油などの使用が試み
られている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、冷媒と
して上述したHFC134a またはHFC152a と、これらの冷媒
に溶解性を示す冷凍機油、例えばポリアルキレングリコ
ール系油やポリエステル系油とを用いた場合、上述した
ような圧縮機構5の摺動部材として使用されている鋳鉄
(例えばFC25)、炭素鋼(例えばS−15C、S−
12C等)、冷間鍛造鋼(例えばSWRCH10A、S
WCH15A等)、合金鋼(例えばSCM435)、焼
結合金、ステンレス鋼などの耐摩耗性が低下し、長期間
安定して冷媒圧縮機を運転することができないという問
題が生じている。
【0022】この原因として次のことが考えられる。
【0023】はじめに、冷媒としてCFC12 を用いた場
合、CFC12 中の塩素(Cl)原子が、金属基材の鉄(F
e)原子と反応して塩化鉄(FeClx)膜を形成す
る。この塩化鉄(FeClx)膜は、自己潤滑性を有
し、耐摩耗性に優れる。一方、HFC134a またはHFC152a
を用いた場合には、塩素(Cl)原子が存在しないため
に塩化鉄(FeClx)膜からなる潤滑膜が形成されな
い。
【0024】つぎに、鉱油系冷凍機油には、環状化合物
が含まれており油膜形成能力が高い。一方、HFC134a ま
たはHFC152a と相溶性を有する冷凍機油は、環状化合物
を含まない鎖状化合物であるため油膜形成能力が低く、
厳しい摺動条件下では油膜を保持できない。
【0025】従って、冷媒としてHFC134a またはHFC152
aを用い、これらの冷媒と相溶性を有する冷凍機油とし
て、例えばポリアルキレングリコール系油やポリエステ
ル系油を使用する冷媒圧縮機において、摺動部材の耐摩
耗性を向上させ、長期使用を可能とすることが、早急に
解決すべき課題となっている。
【0026】本発明は、このような課題を解決するため
に成されたもので、HFC134a またはHFC152a の使用に際
して、摺動部での耐摩耗性を向上させ、長寿命化を図っ
た冷媒圧縮機を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる冷媒圧縮
機は、密閉された容器内に圧縮機構が内蔵され、かつ冷
媒として1,1,1,2-テトラフルオロエタンまたは1,1-ジフ
ルオロエタンを用い、冷凍機油として前記冷媒と相溶性
を有する冷凍機油を用いた冷媒圧縮機において、 前記
圧縮機構における摺動部材の一方が鋳鉄から成り、他方
がPVD法によって形成されたクロム(Cr)と窒素
(N)とを主成分とする化合物層を表面に有する鉄系金
属材から成ることを特徴とする。
【0028】本発明に係わる冷媒圧縮機の摺動部材に使
用する鋳鉄は、通常の冷媒圧縮機の摺動部材に用いられ
る鋳鉄であれば特に制限がなく、例えば、FC25等が
ある。 前記鋳鉄と組合せて使用する、クロム(Cr)
と窒素(N)とを主成分とする化合物層を表面に有する
鉄系金属材は、前記鋳鉄に加えて炭素鋼(例えばS−1
5C、S−12C等)、冷間鍛造鋼(例えばSWRCH
10A、SWCH15A等)、合金鋼(例えばSCM4
35)、焼結合金、ステンレス鋼など通常の冷媒圧縮機
の摺動部材に用いられるものが使用できる。
【0029】前記クロム(Cr)と窒素(N)とを主成
分とする化合物は、CrNx(x=0.5〜1.0)の
組成を有する化合物が主成分となっているものをいう。
前記化合物には、六方晶系の窒化クロム(Cr2 N)、
立方晶系の窒化クロム(CrN)、または、これらの混
合物等がある。
【0030】前記鉄系金属材の表面に化合物層を形成さ
せる方法には、代表的なものとしてCVD(Chemical Va
por Deposition) 法とPVD(Physical Vapor Depositi
on)法とがある。
【0031】金属および化合物の被膜を被処理物表面に
形成させるのに、高温化学反応による方法がCVD法で
あり、物理的な手法による方法がPVD法である。
【0032】CVD法における化学反応は基板と気相の
界面における触媒的接触反応を通して進むため、700 〜
1000 ℃以上の高温で一般に行われる。このため熱歪み
の問題が生じるので、これを避けるため低温化(約400
〜 500℃)を狙った低温プラズマCVD法が開発されつ
つある。しかし、より低温にすると、生成膜と基板との
密着性が悪いという問題点がある。
【0033】例えば、基板温度 200℃にした場合のCV
D法によって形成された化合物膜の耐摩耗特性につい
て、PVD法と比較して次のような試験をした。図4に
示す装置は、ピンオンディスク摩耗試験機で、回転する
ディスク24と、固定されたピン23から成り、また荷
重、回転速度、温度を変化させることができ、摩擦力、
動摩擦係数を測定することにより種々の材料の耐摩耗性
を評価することができる。 図5に、ピン23を鋳鉄と
し、ディスク24を鋼としその表面に種々の化合物層を
200℃でそれぞれCVD法、PVD法によって形成させ
た場合の試験結果について示す。これより低温CVD法
に比較して、PVD法における窒化クロムを主成分とす
る化合物層の場合が最も優れていることが分かる。CV
D法においては膜の密着性が悪く、試験開始後まもなく
膜の剥離が生じていることが分かる。これより、低温で
密着性の良好な膜の形成法としてPVD法が優れてい
る。
【0034】PVD法には、真空や放電を用いる方法、
あるいは気相の分解による方法などがあり、いずれの方
法も使用できる。その中でも、イオンプレーティング法
はイオン化したガス雰囲気下で行う蒸着法であり、本発
明の実施をするために好ましい方法である。この方法の
利点として、1)比較的高い圧力(10-2〜10-3Torr)下
で行えること、2)特に基板を加熱しなくても基板表面
の温度を見掛上高くできること(低温処理ができる)、
3)イオン化した粒子やガスが入射されるので、基板上
での反応が期待でき結晶化が進むこと(膜の密着性が良
い)等が挙げられる。
【0035】イオンプレーティング法には、反応性イオ
ンプレーティング法や高周波イオンプレーティング法等
があるが、いずれの方法においても基板表面の温度は 2
00〜500 ℃の範囲で行うことが寸法精度の良い部品を作
製するうえで好ましい。
【0036】イオンプレーティング法による、鉄系金属
基材上にクロム(Cr)と窒素(N)を主成分とする化
合物層は、例えば、次の方法で形成することができる。
【0037】図6に反応性イオンプレーティング法の装
置を示す。真空層内は、10-3Torrの圧力にしておく。蒸
発源は、電子銃25を用いてクロム(Cr)(99.5%)
を蒸発させる。イオン化電極26には40〜50Vの正電圧
をバイアスしておき、蒸発したクロム(Cr)をイオン
化する。イオン化したクロム(Cr)は負の電圧をバイ
アスした基板27へ向かって加速されるので、高い運動
エネルギーを持って基板27へ衝突する。反応ガスとし
て窒素ガス(N2 )を用いれば、CrNxを主成分とす
る化合物層ができる。
【0038】また、図7のような装置を用いた高周波イ
オンプレーティング法によっても形成することができ
る。これは、真空層の中で蒸発粒子を高周波電界を利用
して積極的にイオン化する方法である。基板27には加
速用直流電源28により負の直流電圧を印加し、真空層
には稀薄な窒素ガス(N2 )を導入し、高周波電源29
およびスイッチングボックス30を通じて高周波電界を
かけることにより高周波放電を起こす。蒸発用電源31
を有する蒸発源32から出たクロム(Cr)粒子は高周
波電極33の作る電磁界によってイオン化されるか、あ
るいは高周波放電によってイオン化された窒素ガス(N
2 )と衝突してイオン化された粒子となる。このイオン
化された粒子は基板27に印加した負の直流電圧により
加速されて基板上にCrNxを主成分とした膜を形成す
ることができる。
【0039】本発明において、PVD法によって形成さ
れたクロム(Cr)と窒素(N)とを主成分とする化合
物層の膜厚は、0.1 〜 10 μmが好ましく、より好まし
くは、 0.5〜 2.0μmである。膜厚が 0.1μm未満であ
ると下地である基材の影響で密着性ならびに強度に不足
が生じ、 10 μmを越えると、摺動部品としての寸法精
度の制御に問題が生じてくる。
【0040】また、本発明において、上記クロム(C
r)と窒素(N)を主成分とする化合物層は部品加工後
のPVD法によっても形成することができる。
【0041】本発明に係わる冷媒圧縮機の摺動部材の一
断面図を図8に示す。
【0042】図8に示すように、本発明に係わる冷媒圧
縮機の摺動部材の一方は、鉄系金属基材35上にクロム
(Cr)と窒素(N)を主成分とする化合物層34を連
続的に形成した表面層を有するものである。
【0043】本発明に係わる冷媒圧縮機の摺動部材は、
鋳鉄と、PVD法によって形成されたクロム(Cr)と
窒素(N)とを主成分とする化合物層を表面に有する鉄
系金属材との組合せからなることを特徴とする。
【0044】図4に示すピンオンディスク摩耗試験機を
用いて、種々の摺動部材の組合せについて評価した。
【0045】図9にピン23を鋳鉄とし、ディスク24
を鋼としその表面に種々の化合物層を形成させた場合の
耐焼付き性の試験結果について示す。これより窒化クロ
ムを主成分とする化合物層の場合が最も優れ、広範囲の
荷重条件において有効であることが分かる。また、図1
0には窒化クロムを主成分とする化合物層の相手材の影
響について検討した結果を示す。これより、油の保持性
の良好な鋳鉄が最も優れることがわかる。
【0046】なお、本発明の冷媒圧縮機に使用する冷凍
機油は、HFC134a またはHFC152a との相溶性のある油で
あれば良いが、実用性から考えると、例えばポリアルキ
レングリコール系油や、ポリエステル系油が好適であ
る。また吸湿性を低減するためとベースオイルの潤滑油
性向上のため、ナフテン系鉱油またはアルキルベンゼン
系合成油の少なくとも1種を、ポリエーテル系油、また
はポリエステル系油に混合、溶解させても良い。さら
に、二硫化モリブデン、黒鉛などの固体潤滑剤やイオウ
系、ハロゲン系、リン系の極圧添加剤もしくは耐摩耗性
向上剤や酸化防止剤等を併用することもできる。
【0047】
【作用】表1および図11に示すように、HFC134a ある
いはHFC152a に対する水の溶解度は高い、またこれらと
相溶性を有するポリアルキレングリコール系の冷凍機油
も吸湿性が非常に高い。これらは、共に強い極性基を有
するためである。
【0048】また、CFC12 の代替冷媒として塩素(C
l)原子を含まないHFC134a やHFC152a を用いる場合、
塩化鉄(FeClx)層の形成による摩耗低減の効果は
期待されない。さらに、冷凍機油に関しても充分な油膜
保持力が不足している。以上の結果、摺動部での耐摩耗
性が悪くなる。
【0049】一般に、金属同士の摩耗の形態には、凝着
摩耗、アプレシブ摩耗、腐食摩耗、疲労摩耗などが機構
別に挙げられる。そのうち、凝着摩耗は摩擦面の微小突
起の凝着が主原因で起こるもので、摩耗機構上最も基本
的なものである。凝着摩耗が一度形成されると、それら
ジャンクション部から原子または原子団が移動する。こ
れは、接着したジャンクション部の力が材料の凝集より
大きいためである。この凝着摩耗は、強度的に近いも
の、特に同種金属の組合せのときに起りやすい。また、
冷媒圧縮機内の摺動部では、金属と金属のミクロな接触
にて(境界潤滑)、その接触部は非常に高温( 500℃以
上)となるため、金属材料の表面近辺の性質が耐摩耗性
に非常に関係がある。
【0050】従って、鋳鉄と、クロム(Cr)と窒素
(N)を主成分とする化合物層をPVD法によって表面
に形成した鉄系金属基材とを高荷重負荷部分に組合せる
ことにより、摺動部の凝着摩耗を防止し、耐摩耗性を長
期にわたって維持することができる。即ち、塩素(C
l)による潤滑層のない場合や、冷凍機油の油膜保持力
が不足している場合に、摺動部で発生する凝着摩耗に対
してその影響が受けにくい性質となり、耐摩耗性を向上
させることが可能となる。
【0051】また、本発明における上記クロム(Cr)
と窒素(N)を主成分とする化合物層は、冷媒圧縮機の
摺動部材として基材の強靭性を損なわず耐摩耗性に優れ
た性質を持つ。また、本発明において、化合物層を低温
によって形成することにより、被処理品の寸法にあまり
変化がなく、精度の良い部品とすることができる。
【0052】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明
する。
【0053】実施例1 反応性イオンプレーティング法を用いて、冷媒圧縮機の
シャフトにクロム(Cr)と窒素(N)を主成分とする
化合物層を形成した実施例について説明する。
【0054】はじめに、合金鋼(SCM435)を所定
形状に切出したシャフトをアセトンで脱脂して、反応性
イオンプレーティング型の真空装置内に挿入し、基板上
にセットした。
【0055】次ぎに、ロータリーポンプにより装置内を
10-3Torr程度まで排気し、基板温度を 200℃とした。
【0056】次いで、窒素ガス(N2 )を導入して、内
部の圧力を約 5×10-2Torrに維持した。蒸発源として純
度が 99.95%のクロム(Cr)を用い、電子銃にて蒸発
させた。イオン化電極には約45Vの正電圧をバイアスし
ておき、蒸発したクロム(Cr)をイオン化した。この
ようにして、90分間でシャフトにクロム(Cr)と窒素
(N)を主成分とする化合物層を 2μm形成した。
【0057】一方、比較例として、シャフト表面に化合
物層をコーティングせずに合金鋼のみにしたものを作製
した。
【0058】得られた2種のシャフトについて、その一
部を切出し、表面層についてX線光電子分光分析(XP
S分析)を行い、この実施例におけるクロム(Cr)と
窒素(N)を主成分とする化合物層の存在を確認した。
この結果を図12および図13に示す。
【0059】図12は、実施例1におけるシャフトのX
線光電子分光分析結果、図13は上述した比較例のシャ
フトのX線光電子分光分析結果であり、それぞれ成分元
素の光電子結合エネルギー近傍のスペクトルを示してい
る。
【0060】これらの結果から、実施例1においては、
クロム(Cr)(ピーク位置:574eV)、窒素(N)
(ピーク位置: 399eV)を主成分とする層の存在が認
められた。
【0061】更に、図14に示すような摩擦摩耗評価装
置を用いてシャフトの耐焼付性および耐摩耗性を評価し
た。この装置はシャフト36を二個のサブベアリング3
7で挟み込んだ構造となっている。
【0062】耐焼付性については、シャフト36の回転
数を 290rpm、サブベアリング37の締付けによる荷
重を22.5kg/3min の割合で 135kgまで上昇させ、荷
重とトルクの関係を調べた。耐摩耗性については、サブ
ベアリング37の締付けによる荷重を一定の値に設定
し、シャフト36の回転時間の増加に伴うシャフト36
の摩耗量を調べた。なお、サブベアリング37の材質は
鋳鉄とし、冷媒はHFC134a またはHFC152a 、冷凍機油は
ポリエステル系油を使用した。
【0063】測定結果を示した図15から明らかなよう
に、比較例のシャフトではトルク上昇カーブが急激な段
階状であり、焼付きによる不安定な回転状態が認められ
凝着摩耗が生じている。これに対し、実施例1のシャフ
トではトルク上昇カーブが滑らかで安定しており焼付
き、即ち凝着摩耗が生じていない。
【0064】さらに、耐摩耗性試験においても、実施例
1におけるシャフトは良好な値を示し、クロム(Cr)
と窒素(N)を主成分とする化合物層と鋳鉄の組合せは
耐摩耗性の向上に寄与することが明かになった。
【0065】次ぎに、このシャフトを用い、軸受に鋳鉄
を用いて、図1に示したロータリー式冷媒圧縮機と同一
構成の冷媒圧縮機を組み立てて、冷媒としてHFC134a ,
冷凍機油としてポリエステル系油を供給して、この冷媒
圧縮機を 300時間運転した。一方、比較例として合金鋼
のみで作成したシャフトを用いた冷媒圧縮機を組み立
て、冷媒としてHFC134a 、冷凍機油としてポリエステル
系油を供給した冷媒圧縮機を 300時間運転した。
【0066】次ぎに、上述した試験を終了した実施例1
と比較例の2種類のシャフトについて摺動部表面を走査
型電子顕微鏡(SEM)にて観察を行った結果、実施例
1では凝着摩耗が認められなかったにもかかわらず、比
較例では摩耗痕と凝着摩耗が認められた。膜の形状につ
いても実施例1ではクラックや剥離などは認められなか
った。
【0067】また、実施例1と同一の摺動部材を用い
て、使用する冷媒をHFC134a からHFC152a に代えて評価
をした結果、実施例1と同一の結果が得られた。
【0068】実施例2 図3に示すレシプロ式の冷媒圧縮機のピストンとシリン
ダーの組合せについて、ピストンにクロム(Cr)と窒
素(N)を主成分とする化合物層、シリンダーを鋳鉄と
した実施例について示す。
【0069】はじめに、炭素鋼(S−15C)を所定形
状に切り出したピストンをアセトンで脱脂して、実施例
1の条件と同様にして、反応性イオンプレーティング法
によって、クロム(Cr)と窒素(N)を主成分とする
化合物層を約 2μm形成した。 一方、比較例として、
ピストン表面に化合物層をコーティングしなかったもの
を作製した。
【0070】得られた2種のピストンについて、シリン
ダーを鋳鉄とし図3に示すレシプロ式の冷媒圧縮機と同
一構成の冷媒圧縮機を組み立てて、冷媒としてHFC152a
、冷凍機油としてポリエステル系油を供給して、この
冷媒圧縮機を 300時間運転させた。
【0071】次に、上述した試験を終了した実施例2と
比較例の2種のピストンについて摺動部表面観察を走査
型電子顕微鏡(SEM)にて行った結果、実施例2では
凝着摩耗が認められず、比較例では摩耗痕と凝着摩耗に
よる基材の剥離が認められた。 また、図3に示すスラ
イダー22とスライダー受け部との組合せについても、
スライダーを鋳鉄、スライダー受けにクロム(Cr)と
窒素(N)を主成分とする化合物層とした場合にも同一
の結果が得られた。
【0072】以上述べてきたように、HFC134a またはHF
C152a とポリエステル系油を用いて、摺動部材の組合せ
として、PVD法によって鉄系金属基材上にクロム(C
r)と窒素(N)を主成分とする化合物層を形成させた
ものと、鋳鉄を使用することによって、摺動部品の耐焼
付性ならびに耐摩耗性を大幅に向上させ、寿命の長い冷
媒圧縮機を得ることができた。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】以上説明したように本発明の冷媒圧縮機
は、HFC134a またはHFC152a およびこれと相溶性を有す
る冷凍機油に対して、摺動部材の一方が鋳鉄から成り、
他方がPVD法によって形成されたクロム(Cr)と窒
素(N)とを主成分とする化合物層を表面に有する鉄系
金属材から成っているので、摺動部での耐焼付性と耐摩
耗性が長時間安定して保たれ、耐久性に優れたものとな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ロータリー式の密閉型圧縮機の縦断面を示す図
である。
【図2】図1に示す圧縮機構5の横断面を示す図であ
る。
【図3】レシプロ式の密閉型圧縮機の縦断面を示す図で
ある。
【図4】ピンオンディスク方式の摩耗試験装置を示す図
である。
【図5】ピンオンディスク方式の摩耗試験による処理温
度200℃におけるCVD法とPVD法による生成膜の
耐摩耗性を示す図である。
【図6】反応性イオンプレーティング法の装置を示す図
である。
【図7】高周波イオンプレーティング法の装置を示す図
である。
【図8】本発明に係わる冷媒圧縮機の摺動部材の一断面
図を示す図である。
【図9】鋳鉄と表面化合物層との耐焼付き性を示す図で
ある。
【図10】窒化クロムを主成分とする化合物層と相手材
との耐焼付き性を示す図である。
【図11】HFC134a に対する水の溶解度を示す図であ
る。
【図12】実施例1におけるシャフト表面についてのX
PS分析結果を示す図である。
【図13】比較例におけるシャフト表面についてのXP
S分析結果を示す図である。
【図14】摩擦摩耗評価装置を示す図である。
【図15】摩擦摩耗評価結果を示す図である。
【符号の説明】
1………ケーシング、2………ステータ、3………ロー
タ、4………モータ機構、5………圧縮機構、6………
供給管、7………吐出管、8………シャフト、9………
フレーム、10………シリンダ、11………サブベアリ
ング、12………クランク、13………ローラ、14…
……ブレード、15………スプリング、16………吸込
室、17………吐出室、18………吸込口、19………
吐出口、20………冷凍機油、21………ピストン、2
2………スライダー、23………ピン、24………ディ
スク、25………電子銃、26………イオン化電極、2
7………基板、28………加速用直流電源、29………
高周波電源、30………スイッチングボックス、31…
……蒸発用電源、32………蒸発源、33………高周波
電極、34………クロム(Cr)および窒素(N)を主
成分とする化合物層、35………鉄系金属基材、36…
……シャフト、37………サブベアリング、

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 密閉された容器内に圧縮機構が内蔵さ
    れ、かつ冷媒として1,1,1,2-テトラフルオロエタンまた
    は1,1-ジフルオロエタンを用い、冷凍機油として前記冷
    媒と相溶性を有する冷凍機油を用いた冷媒圧縮機におい
    て、 前記圧縮機構における摺動部材の一方が鋳鉄から成り、
    他方がPVD法によって形成されたクロム(Cr)と窒
    素(N)とを主成分とする化合物層を表面に有する鉄系
    金属材から成ることを特徴とする冷媒圧縮機。
JP16666291A 1991-07-08 1991-07-08 冷媒圧縮機 Pending JPH0518357A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008002368A (ja) * 2006-06-23 2008-01-10 Matsushita Electric Ind Co Ltd 圧縮機
WO2008143589A1 (en) * 2007-05-21 2008-11-27 Panasonic Corporation Refrigerant compressor sliding surface with non-integral reaction layer
JP2017155650A (ja) * 2016-03-01 2017-09-07 日立アプライアンス株式会社 密閉型圧縮機およびこれを備えた冷蔵庫並びに自動販売機

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