JP2001131773A - 表面処理鋼板 - Google Patents

表面処理鋼板

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JP2001131773A
JP2001131773A JP2000234309A JP2000234309A JP2001131773A JP 2001131773 A JP2001131773 A JP 2001131773A JP 2000234309 A JP2000234309 A JP 2000234309A JP 2000234309 A JP2000234309 A JP 2000234309A JP 2001131773 A JP2001131773 A JP 2001131773A
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mass
zinc phosphate
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Kyoko Hamahara
京子 浜原
Naomasa Nakakoji
尚匡 中小路
Kazuo Mochizuki
一雄 望月
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Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車車体用の防錆鋼板として有利に適合す
る、優れた耐穴あき性、塗料密着性、電着塗装性、プレ
ス成形性、及び溶接性を有する表面処理鋼板を、クロム
を用いることなしに提供する。 【解決手段】 亜鉛系めっき鋼板の表面に、Mgを含有す
るリン酸亜鉛系皮膜を有し、さらに該リン酸亜鉛系皮膜
の表面に、有機物と反応する官能基をもつ特定のシリコ
ーン樹脂を含有する特殊皮膜を有することを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、主に自動車車体
用鋼板として供される表面処理鋼板、特に耐穴あき性、
塗料密着性、電着塗装性、プレス成形性、及び溶接性に
優れた表面処理鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】亜鉛系のめっきを施した鋼板は、自動車
の車体強度が長期間の腐食環境下での使用によって低下
するのを防ぐために広く使用されており、わが国におい
ては、主として亜鉛合金めっきである亜鉛−ニッケル合
金めっき鋼板と亜鉛−鉄合金めっき鋼板が使用されてい
る。
【0003】これら亜鉛系合金めっきは、亜鉛とNiやFe
を合金化させることによって、高耐食性を鋼板に付与す
ることができるものの、合金化による次に示す生産上の
問題点がある。
【0004】亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板は、電気め
っき法によって製造されるが、Niが高価であるためコス
トが高くなり、また、Ni含有量を極めて狭い範囲(通常
12±1質量%)に制御せねばならず製造し難いという問
題点がある。
【0005】亜鉛−鉄合金めっき鋼板は、電気めっき法
と溶融めっき法のいずれかの方法によって製造すること
ができるが、一般には、溶融めっき法によって製造され
ることが多い。
【0006】亜鉛−鉄合金めっき鋼板を電気めっき法に
よって製造する場合には、上述した亜鉛−ニッケル合金
めっき鋼板と同様に亜鉛めっき層中の鉄含有率を極めて
狭い範囲に制御する合金制御が困難であることに加え
て、めっき液中のFe2+イオンが酸化しやすく、これによ
りめっきが不安定となって製造に困難が伴い、結果的に
コストが高くなるという問題がある。
【0007】また、亜鉛−鉄合金めっき鋼板を溶融めっ
き法によって製造する場合には、鋼板表面に溶融した亜
鉛を被着させた後に、高温に保持して鋼板と亜鉛を合金
化させる必要があるが、合金化させるための温度及び時
間や溶融亜鉛めっき浴中のAlの影響などによって、均一
な合金めっき層を製造することが困難であり品質が安定
しないという問題がある。さらにこれらの結果としてコ
ストが高くなる。
【0008】以上示したように、亜鉛系合金めっきは製
造が困難であり、さらにコストが高くなるという問題を
有している。
【0009】一方、亜鉛のみをめっきした亜鉛めっき鋼
板は、低コストで電気めっき法及び溶融めっき法のいず
れでも製造することができるが、自動車車体に使用され
ることは希であった。この理由は、亜鉛めっきのみでは
耐食牲が不十分であり、とりわけ、亜鉛めっき鋼板を長
期間にわたって腐食環境下に曝した場合に、腐食によっ
て鋼板の穴あきが生じ易く、車体の強度保証上問題があ
るためである。また、スポット溶接時に電極に多量の亜
鉛が蓄積されやすく、電極の寿命を短くしてしまうとい
う問題やプレス成形性が劣るという問題があった。
【0010】ところで、自動車車体の製造では、鋼板又
はめっき鋼板を、プレス加工した後に溶接し、さらに化
成処理、電着塗装、スプレー塗装を順次施してから自動
車車体として使用する。
【0011】また、自動車車体において、腐食により最
も穴あきを生じ易い部分は、ドアの下部であると一般に
言われている。この理由は、ドア下部は、その内部に窓
の隙間等を通じて侵入した水が溜まり易い構造になって
おり、腐食の進行速度が他の車体部分に比べて速くなる
傾向があるからである。
【0012】そして、ドアの下部は、化成処理と電着塗
装については廻り込むものの、その後に行われるスプレ
ー塗装では隙間が狭いために塗料がまわらず、スプレー
塗装による防食効果は期待できないことから、電着塗装
後の耐穴あき性が重要となる。また、その中でも最も腐
食環境の厳しい袋構造部においては、電着塗装も行き渡
らず、そのまま腐食環境にさらされる。従って耐穴あき
性は、電着塗装されない場合(無塗装)と電着塗装のみ
施された場合(電着塗装後)の両方で重要となる。
【0013】ここで、亜鉛めっき鋼板の耐食性を向上さ
せる方法としては、亜鉛めっき上に、Mgを含有する皮膜
を形成することが有用であり、例えば特開平1−312
081号公報には、電気亜鉛めっき層上に0.1 質量%以
上のMgを含有するりん酸塩皮膜を形成した表面処理金属
材料が開示されている。
【0014】しかしながら、上掲公報に記載されたMgの
みを含有するりん酸塩皮膜を形成した表面処理金属材料
は、塩水噴霧試験での錆発生については抑制効果がある
ものの、自動車車体の実際の腐食と結果がよく一致する
複合サイクル腐食試験での耐穴あき性については不十分
である。
【0015】また、耐食性を向上させた表面処理鋼板と
しては、20もしくは30g/m2 の電気亜鉛ニッケル合金
めっき鋼板上にクロメート層とシリカを含有する有機高
分子樹脂層とを形成した有機複合被覆鋼板、60g/m2
の厚目付けの溶融亜鉛めっき鋼板、または60g/m2
厚目付けの電気亜鉛めっき鋼板等がある。
【0016】これらの表面処理鋼板は、車体組立後に行
われる電着塗装が充分に付き回らない状態でも良好な耐
食性を有しているため、自動車の長寿命化に貢献するも
のである。
【0017】しかしながら、上記の有機複合被覆鋼板
は、クロメート層を有し、クロムは環境に与える影響が
大きいところから、その使用に際しては極めて厳しい排
水処理などを行う必要があるために、コスト高になると
いう問題を有している。
【0018】一方、クロムを使用しない厚目付け溶融亜
鉛めっき鋼板は、プレス成形性に劣り、また電着塗装時
にクレーターが発生しやすく電着塗装性にも劣るため
に、品質上の問題が残るものである。
【0019】さらに、厚目付け電気亜鉛めっき鋼板は、
厚目付け溶融亜鉛めっき鋼板と同様、プレス成形性に根
本的な問題があり、さらに電気コストの高いわが国にお
いてはコストに関しても問題があった。
【0020】すなわち、上記鋼板の耐穴あき性に大きく
寄与していたクロメート層を有する場合は、下地めっき
層は薄くても良いが、クロメート層が無い場合には、め
っきが厚くならざるを得ないため、プレス成形性や電着
塗装性に劣るものであった。
【0021】ここで、クロムを使用せず、しかも、めっ
き厚も厚くすることなしに耐穴あき性または塗料密着性
を向上する技術としては、例えば特開昭52−80239 号公
報及び特開昭63−219587号公報等がある。
【0022】特開昭52−80239 号公報には、鋼板または
10g/m2 以下の亜鉛めっき鋼板に、鉄系あるいは亜鉛
系のリン酸塩処理を施した後、塗料密着性改善を目的と
したシランカップリング剤にてシーリング処理を行うこ
とが記載されており、また、特開昭63−219587号公報に
は、りん酸亜鉛処理後にシランカップリング剤によりシ
ーリング処理を行うことが記載されている。
【0023】しかし、上掲公報に記載された表面処理鋼
板はいずれも、自動車車体用として、特に昨今の非常に
厳しい耐食性の要求に対しては全く考慮されておらず、
また亜鉛付着量も少ないため、このままシーリング処理
を行っても亜鉛による鉄に対する犠牲防食作用が長期間
に渡って発揮できないため、早期に鉄の腐食が始まり、
耐穴あき性が著しく劣っていた。
【0024】ここで、シランカップリング剤は、1つの
分子中に無機質と化学結合する反応基(メトキシ基、エ
トキシ基、セロソルブ基等)と、有機材料と化学結合す
る反応基(ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプ
ト基等)とを持つため、金属と有機塗装皮膜との密着性
に寄与する。
【0025】従って、シランカップリング剤で処理され
た鋼板にそのまま塗装が行われる場合には、塗料密着性
並びに塗装後耐食性は良好になる。
【0026】しかし、シランカップリング剤は、それ自
体が耐アルカリ性に劣るため、自動車の化成処理工程で
溶出するという欠点がある。
【0027】すなわち、自動車メーカーでは、素材をま
ずブランキング加工し、次いでプレス成形し、そして化
成処理を施すのが一般的であるが、この化成処理工程で
のシランカップリング剤の溶出量が多いと、当然充分な
塗料密着性が確保できず、また車体組立後に行われる電
着塗装が充分につき回らない部分での耐穴あき性が確保
できないという不利がある。
【0028】なお、上記特開昭52−80239 号公報には、
化成処理をせずにそのまま塗装し評価した結果が示さ
れ、同様に特開昭63−219587号公報にも、シランカップ
リング剤によるシーリング処理後に自動車用化成処理を
行わずに、そのまま塗装することが記載されている。
【0029】特に、特開昭63−219587号公報に記載の技
術は、自動車製造ラインのリン酸処理を特殊リン酸塩処
理に置き換え、その後の処理工程にてシランカップリン
グ剤でシーリング処理を行うものであり、従って自動車
の通常の素材としてブランキング加工やプレス成形、さ
らに化成処理に続く各種処理に供し得る素材を提供する
ものではなく、加えて、この公報には、塗装後の耐食性
が示されており、電着塗装が充分につき回らない部分で
の耐食性、つまり耐穴あき性については評価されていな
い。
【0030】さらに、特開昭59−219478号公報には、化
成処理された金属表面の水性後処理剤として、オルガノ
アルコキシシラン化合物を添加した処理剤が開示されて
いるが、これも自動車の通常の素材としてブランキング
加工やプレス加工、さらに化成処理に続く自動車メーカ
ーでの工程を考慮した素材を提供することは難しい。
【0031】また、特開昭63−102929号公報には、化成
処理皮膜上にラダー型シリコーン樹脂による被膜を形成
した有機被覆鋼板が示されている。
【0032】ここで、ラダー型シリコーン樹脂とは、シ
ロキサン結合(-Si-O-Si-)が網目状構造
【数1】 を持つシリコーン樹脂である。
【0033】このため、バリア性に優れ耐穴あき性の向
上に有効であるが、加工時に樹脂が素材の変形に追随す
ることができず、逆に素材の変形を押え込んでしまい、
素材が割れやすくなるために、十分なプレス成形性を得
ることができないという問題がある。
【0034】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明の目
的は、自動車車体用の防錆鋼板として有利に適合する、
優れた耐穴あき性、塗料密着性、電着塗装性、プレス成
形性及び溶接性を有する表面処理鋼板を、特にクロムを
用いることなしに提供しようとするものである。
【0035】
【発明が解決するための手段】発明者らは、 従来技術に
おける問題点を解決する手法について鋭意究明したとこ
ろ、亜鉛系めっき鋼板の表面上に、Mgを含有するリン酸
亜鉛系皮膜を積層形成し、さらに該リン酸亜鉛系皮膜の
表面に、有機物と反応する官能基をもつ特定のシリコー
ン樹脂を含有する特殊皮膜を形成することによって、無
塗装での耐穴あき性が向上し、さらに塗料密着性、電着
塗装性、プレス成形性及び溶接性が向上することを見出
した。
【0036】加えて、前記特殊被膜は、さらに酸化ポリ
エチレンを含有させると、プレス成形性がより一層向上
することを見出した。
【0037】また、前記リン酸亜鉛系皮膜は、Mgに加え
てNi及びMnも含有することによって、電着塗装後の耐穴
あき性も優れることを見出した。
【0038】さらに、前記リン酸亜鉛系皮膜中のMg、Ni
及びMnの含有量の適正化を図ること、より具体的には、
前記リン酸亜鉛系皮膜中に、Mg:0.5 〜10.0質量%、N
i:0.1 〜2.0 質量%及びMn:0.5 〜8.0 質量%を含有
させ、かつMnとNiの含有量が下記(1) の関係式を満足す
ることによって、電着塗装後の耐穴あき性が飛躍的に向
上することを見出した。 記 〔Ni〕×7.6 −10.9≦〔Mn〕≦〔Ni〕×11.4 ------ (1) 但し、〔Mn〕はMn質量%、〔Ni〕はNi質量%である。
【0039】さらにまた、発明者らは、上記構成のう
ち、りん酸亜鉛系皮膜中のMg、Ni及びMnの含有量をさら
に特定の狭い範囲に限定すること、より具体的には、前
記リン酸亜鉛系皮膜中に、Mg:2.0 〜7.0 質量%、Ni:
0.1 〜1.4 質量%及びMn:0.5〜5.0 質量%を含有さ
せ、かつMnとNiの含有量が下記(2) の関係式を満足する
ように設定することによって、耐穴あき性とプレス成形
性の双方が向上することも見出した。 記 〔Mn〕≦〔Ni〕×11.4 ------ (2) 但し、〔Mn〕はMn質量%、〔Ni〕はNi質量%である。
【0040】加えて、前記りん酸亜鉛系皮膜は、りん酸
亜鉛結晶を粒状とし、かつその大きさを2.5 μm未満と
することによって、特にプレス成形性がより一層向上す
ることを見出した。
【0041】加えてまた、上記した手段に従えば、クロ
ムを用いることなくめっき量を少なくし得ることも判明
した。この発明は、以上の知見に基づいて成されたもの
である。
【0042】
【発明の実施の形態】この発明の表面処理鋼板の素材と
しては、亜鉛または亜鉛系合金めっき鋼板を用いる。中
でも、純亜鉛めっきは低コストで汎用性があるため推奨
される。
【0043】亜鉛系めっき鋼板を構成する亜鉛系めっき
皮膜は、公知の電気めっき法か、あるいは溶融めっき法
によって形成することができ、片面当たりのめっき付着
量は20〜60g/m2 の範囲であることが好ましい。めっ
き付着量が20g/m2 未満になると、十分な耐穴あき性
が得られず、また、60g/m2 を超えると、耐穴あき性
は十分であるが、多量の亜鉛を付着させることは不経済
であるばかりでなく、プレス成形性や溶接性を悪化させ
るので好ましくないからである。
【0044】尚、各めっき法によって形成した亜鉛系め
っき皮膜は、その皮膜中にSn、Ni、Fe、Al等の不可避的
不純物が混入するのが一般的であるため、この発明で
は、これらの不純物を不可避的に混入した亜鉛系めっき
皮膜も対象とする。この場合、亜鉛系めっき皮膜中の上
記不可避的不純物の各含有量は1質量%以下であること
が好ましい。
【0045】この発明の表面処理鋼板は、上記亜鉛系め
っき鋼板の表面に、第2層としてMgを含有するリン酸亜
鉛系皮膜を形成し、さらに、このりん酸亜鉛系皮膜の表
面に第3層として有機物と反応する官能基をもつ特定の
シリコーン樹脂を含有する特殊皮膜を形成する。これに
よって、無塗装部の耐穴あき性とプレス成形性が向上す
る。
【0046】プレス成形性が向上する理由は、リン酸亜
鉛系皮膜は金属面間(亜鉛めっきと金型)の抵抗を減少
せしめると共に、この皮膜がプレス油を保持し金属間の
緩衝体として摩擦による亜鉛系めっき皮膜の損傷を最小
限に防止することができるからである。
【0047】無塗装部の耐穴あき性が向上する理由は、
リン酸亜鉛系皮膜がMgを含有することによって、Mg酸化
物が不動態化して腐食環境における亜鉛の溶解を遅延さ
せる作用があるためと考えられる。
【0048】また、Mgを含有するリン酸亜鉛系皮膜中
に、さらにNi及びMnを含有させれば、電着塗装後の耐穴
あき性も向上する。
【0049】特に、リン酸亜鉛系皮膜中のMg,Ni,Mnの含
有量を、それぞれ0.5 〜10.0質量%、0.1 〜2.0 質量%
及び0.5 〜8.0 質量%とし、かつMnとNiの含有量を下記
(1)の関係式を満足するように設定することによって、
電着塗装後の耐穴あき性を飛躍的に向上させることがで
きる。 記 〔Ni〕×7.6 −10.9≦〔Mn〕≦〔Ni〕×11.4 ------ (1) 但し、〔Mn〕はMn質量%、〔Ni〕はNi質量%である。
【0050】以下、りん酸亜鉛系皮膜中の成分組成を上
記範囲に限定するに至るまでの経緯を説明する。
【0051】自動車車体の製造工程では、プレス成形後
に溶接等で組み上げられたボディを化成処理し、さらに
電着塗装、スプレー塗装するのが一般的であるが、腐食
によって穴あきに至りやすい箇所(例えばドア内面側)
では、スプレー塗装されず電着塗装までしか行わない。
また、その中でも最も腐食環境の厳しい袋構造部に至っ
ては、電着塗装も行き渡らず、そのまま腐食環境に曝さ
れる。従って、耐穴あき性は、電着塗装されなかった場
合とスプレー塗装されずに電着塗装のみ施された場合に
おいて重要となる。
【0052】化成処理と上記各塗装を順次行った亜鉛系
めっき鋼板を腐食環境下に曝すと、腐食環境中の水分に
よって化成処理皮膜が復水(吸着水あるいは結合水を持
つようになる現象。)して、塗膜膨れを生じやすくな
り、その結果、腐食進行が速くなる傾向がある。
【0053】このため、自動車用の亜鉛系めっき鋼板で
は、その化成処理(りん酸亜鉛)皮膜中にNiやMnを含有
させることで、この復水を防ぎ、電着塗装後の耐食性を
改善することが一般に行われている。
【0054】また、りん酸亜鉛皮膜中にMgを含有させる
と、耐食性が向上することも知られている。
【0055】発明者らは、りん酸亜鉛皮膜中にMgとNi、
Mnとを含有させることができれば、Mgの耐食性向上効果
と、Ni及びMnの塗膜膨れ防止効果の双方の相乗効果によ
って、電着塗装後の耐食性、特に耐穴あき性を向上でき
ると考えて鋭意検討を行った。
【0056】その結果、りん酸亜鉛皮膜中に所定量以上
のMgを含有させると、適正量のNi、Mnを前記皮膜中に含
有させることができず、反対に、りん酸亜鉛皮膜中に所
定量以上のNi、Mnを含有させると、適正量のMgを前記皮
膜中に含有させることができず、よって、いずれにして
も、りん酸亜鉛皮膜中にMgとNi、Mnとの双方を適正量含
有させることが現状では困難であり、十分な耐穴あき性
が得られないことが分かった。
【0057】そこで、発明者らは、りん酸亜鉛系皮膜中
のMgとNi、Mnとの双方を適正に含有させるための検討を
さらに進めた結果、Mgを0.5 〜10.0質量%の範囲に限定
すれば、耐食性の向上が図れるとともに、塗膜膨れ防止
効果が発揮できる量のNiとMnを含有させることが可能と
なり、加えて、NiとMnの含有量の適正化を図ることによ
って、特に電着塗装後の耐穴あき性が向上することを見
出した。
【0058】即ち、りん酸亜鉛系皮膜中のMg含有量を0.
5 〜10.0質量%の範囲に限定したのは、Mg含有量が上記
範囲よりも少ないと、耐穴あき性が十分に得られず、一
方、上記範囲よりも多いと、Ni及びMnを塗膜膨れ防止効
果が発揮できる程度の量を含有させることができないた
め、腐食環境下での塗膜膨れが大きくなって耐穴あき性
が不十分となるからである。
【0059】加えて、りん酸亜鉛系皮膜中のMg含有量を
2.0 〜7.0 質量%の範囲に限定すれば、りん酸亜鉛結晶
が粒状でかつその結晶の大きさが2.5 μm未満と細かく
なる結果、プレス成形性が飛躍的に向上する。その理由
は、定かではないが、りん酸亜鉛結晶が粒状でかつ細か
いとプレス加工時の金型との接触において摺動摩擦抵抗
が小さくなるためと考えられる。
【0060】尚、前記Mg含有量が2.0 質量%未満だと、
りん酸亜鉛結晶が鱗片状となり(図2(a),(b)参照)かつ
その結晶の大きさが2.5 μm以上となって、プレス成形
性の向上効果が顕著ではなくなるからであり、また、前
記Mg含有量が7.0 質量%を超えると、りん酸亜鉛結晶自
体が脆くなり、プレス成形性の向上効果が顕著ではなく
なるからである。
【0061】図1は、りん酸亜鉛皮膜中のMg含有量の異
なる種々の亜鉛めっき鋼板を試作し、これらの亜鉛めっ
き鋼板について、100 mmのブランク径に打ち抜き、ポ
ンチ径:50mmφ、ダイス径:52mmφ、しわ押さえ
圧:1トン(9806N)及びポンチスピード:120 mm/
分の条件下でプレス加工試験を行い、プレス成形性を評
価したときの結果であり、縦軸がプレス加工時のポンチ
荷重(t)であり、横軸がりん酸亜鉛系皮膜中のMg含有
量 (質量%)であり、前記ポンチ荷重が小さいほど、プ
レス成形性に優れていることを意味する。
【0062】また、図2は、りん酸亜鉛系皮膜中のMg含
有量が異なる4種類の亜鉛めっき鋼板のりん酸亜鉛皮膜
表面のSEMのイメージ画像を示したものである。
【0063】図1及び図2から、前記Mg含有量を2.0 〜
7.0 質量%の範囲に限定すれば、りん酸亜鉛結晶が粒状
かつその結晶の大きさが2.5 μm未満と細かくなるとと
もに、プレス成形性が格段に向上していることがわか
る。尚、ここでいう粒状とは、SEMのイメージ画像で
観察される、1個の結晶を、図4の様に表した時に、短
辺c/長辺aの比が0.2 を超えるものを意味する。
【0064】よって、プレス成形性をさらに向上させる
必要がある場合には、前記Mg含有量を2.0 〜7.0 質量%
の範囲にすることが好ましい。
【0065】また、図3に示すようにNi含有量を0.1 〜
2.0 質量%の範囲、Mn含有量を0.5〜8.0 質量%の範
囲、かつ、〔Ni〕×7.6 −10.9≦〔Mn〕≦〔Ni〕×11.4
の関係式を満足すること、即ち、NiとMnの含有量を図3
に示す適正範囲に限定したのは、りん酸亜鉛系皮膜中の
Ni含有量が0.1 質量%未満、及びMn含有量が0.5 質量%
未満であると、腐食環境下での塗膜膨れが大きくなって
耐穴あき性が十分に得られないからであり、一方、Ni含
有量が2.0 質量%超え、及びMn含有量が8.0 質量%超え
であると、りん酸亜鉛系皮膜中にMgを上述した適正含有
範囲の下限値である0.5 質量%以上含有させることが極
めて困難になり、結局、耐穴あき性が十分に得られない
からである。
【0066】さらに、Mn質量%が{〔Ni〕×7.6 −10.
9}未満だと、腐食環境下での塗膜膨れが大きくなって
耐穴あき性が不十分であり、一方、Mn質量%が{〔Ni〕
×11.4}よりも大きいと、りん酸亜鉛系皮膜中にMgを0.
5 質量%以上含有させることが極めて困難になり、結
局、耐穴あき性が十分に得られないからである。
【0067】また、Mg含有量を2.0 〜7.0 質量%に限定
するとともに、Ni及びMnの含有量の上記適正範囲を図3
の斜線範囲内であってかつ横線範囲内に制限すること、
即ち、りん酸亜鉛系皮膜中のNi含有量を0.1 〜1.4 質量
%、Mn含有量を0.5 〜5.0 質量%とし、かつMnとNiの含
有量が〔Mn〕≦〔Ni〕×11.4を満足する範囲内に限定す
れば、耐穴あき性の向上に加えてプレス成形性も向上さ
せることができる。
【0068】この場合、りん酸亜鉛系皮膜中のNi含有量
が0.1 質量%未満であるか、あるいはMn含有量が0.5 質
量%未満であると、腐食環境下での塗膜膨れが大きくな
って耐穴あき性が十分に得られないからであり、一方、
Ni含有量が1.4 質量%超えか、あるいはMn含有量が5.0
質量%超えだと、りん酸亜鉛皮膜中にMgを2.0 質量%以
上含有させにくくなるとともに、りん酸亜鉛結晶が鱗片
状でかつその結晶の大きさが細かくならずに2.5 μm以
上のままであるため、プレス成形性の向上効果が得られ
なくなるからである。
【0069】さらに、Mn含有量が(2)式中の{〔Ni〕
×11.4}にNi含有量を代入したときの値よりも大きい
と、りん酸亜鉛系皮膜中にMgを2.0 質量%以上含有させ
ることが極めて困難になり、結局、耐穴あき性が十分に
得られないからである。
【0070】また、りん酸亜鉛系皮膜は、片面当たりの
付着量が0.5 〜3.0 g/m2 の範囲であることが好まし
い。前記付着量が0.5g/m2 未満だと、電着塗装後の耐穴
あき性とプレス成形性の向上効果が不十分であり、ま
た、りん酸亜鉛系皮膜の表面に形成するシリコーン樹脂
を含有する皮膜との密着性が十分に得られないため、自
動車用化成処理工程でシリコーン樹脂が溶解しやすくな
るからである。一方、前記付着量が3.0g/m2 超えだと、
耐穴あき性は十分であるが、皮膜形成に長時間を要する
ためコストがかさむばかりでなく、表面の摩擦抵抗が大
きくなってプレス成形性が劣化するからである。尚、り
ん酸亜鉛系皮膜の付着量は、電着塗装後の耐穴あき性と
プレス成形性の点から、0.5 〜2.0 g/m2 の範囲にす
ることがより好適である。
【0071】さらに、リン酸亜鉛系皮膜の表面に、シリ
コーン樹脂を含有する特殊皮膜を形成することとし、こ
れによって、耐穴あき性が格段に向上するのである。
【0072】前記特殊皮膜には、有機物と反応する官能
基をもち、かつ特定のシリコーン樹脂が含まれているこ
とが肝要である。なぜなら、特殊皮膜は、その表面上
に、自動車の製造工程で電着塗装皮膜層(有機物皮膜)
が形成されるため、この上層の有機物との密着性に優れ
る性質を有することが肝要であるからである。
【0073】尚、前記特殊皮膜と有機物との密着性は、
シリケート部、シラノール部と、さらに有機物と反応す
る官能基部によって十分に得ることができる。
【0074】また、前記特殊皮膜は、該皮膜の下地とな
るリン酸亜鉛系皮膜またはその皮膜に存在するピンホー
ルを通じて露出した亜鉛系めっき皮膜等の無機物と密着
する性質を有することが必要であるが、シリコーン樹脂
中のシリケート(Si-OR) 部(Rはアルキル基であ
る。)およびシラノール(Si-OH) 部が前記無機物と密
着する性質を有する。
【0075】ここで、この発明の表面処理鋼板を構成す
る特殊皮膜に用いられる特定のシリコーン樹脂とは、
【数2】 で表わされるn≧2の組成のものをいう。つまり、シロ
キサン結合を主鎖とした樹脂であり、主鎖の一部が分岐
していてもよい。
【0076】一方、シランカップリング剤は、
【数3】 で表わされるもので、主にR1を骨格として、端部にシリ
ケートを有するものである。ここで、R1は、C−Cある
いはC=C結合と有機官能基からなり、R2は、アルキル
基である。このシランカップリング剤は、分子量が小さ
いこと、あるいは下地との密着性が充分でないために、
前述のとおり自動車の化成処理工程で溶出しやすい。
【0077】したがって、この発明では、上記特定のシ
リコーン樹脂を含有させなければならない。
【0078】また、有機物と反応する官能基をもつシリ
コーン樹脂は、空気中の水分との反応によりシラノール
基(Si−OH)を形成し、このシラノール基自体が亜鉛
系めっき皮膜の耐食性を著しく向上させる効果を有し、
併せてシラノール基によって親水性の向上が図れ、電着
塗装時の通電点を十分に確保することができる結果、電
着塗装性の向上も達成される。
【0079】さらに、リン酸亜鉛系皮膜中のOと前記特
殊皮膜のシラノ−ル基のOH結合数が増加し、化学的結
合により、またシロキサン結合(-Si-O-Si-) が主に直
鎖型または分岐的に連なったシリコーン樹脂がリン酸亜
鉛系皮膜とからみあい(つまり物理的結合) により、自
動車メーカーでの化成処理工程でも溶出しない化成処理
性に優れた皮膜が得られる。
【0080】前記特殊皮膜は、耐穴あき性向上の点か
ら、0.02g/m2 以上の付着量で形成することが好まし
く、一方付着量が多すぎる場合にはコスト高となる他、
溶接性が低下するため、付着量は0.02〜3.00g/m2
することが好ましい。
【0081】ここで、有機物と反応するシリコーン樹脂
の官能基としては、例えばアミノ基、メルカプト基また
はイソシアネート基等があり、いずれかの官能基を有す
るシリコーン樹脂を用いることにより優れた密着性が得
られるのである。特に、有機樹脂と反応する有機基がア
ミノ基である場合には、シリコーン樹脂皮膜上に形成さ
れる電着塗膜との密着性はより優れたものになり、また
親水性も有するために電着塗装時の通電点もより充分に
確保され、優れた電着塗装性を有する皮膜が得られる。
【0082】また、有機物と反応する官能基をもつシリ
コーン樹脂は、前記特殊皮膜中に50〜100 質量%程度の
範囲で含有させることが好ましい。なぜなら、該シリコ
ーン樹脂の含有率が50質量%未満では、前述のごとく、
耐穴あき性、塗料密着性、化成処理性および電着塗装性
が充分確保されないからである。前記特殊皮膜は、前記
シリコーン樹脂以外に、後述する防錆顔料、潤滑性付与
剤、その他の有機樹脂などを含有させることが好まし
い。
【0083】但し、ラダー型シリコーン樹脂は、プレス
成形性を劣化させるため、適用を除外することが好まし
い。なぜなら、ラダー型シリコーン樹脂は
【数4】 の網目構造をもつシリコーン樹脂であり、まったく変形
する余地のない構造であり、柔軟性がないため、プレス
成形時に樹脂が素材の変形に追随できず、逆に素材の変
形を押え込んでしまい、素材が割れやすくなり、加え
て、直鎖型あるいは分岐型樹脂と比較して、シリケート
部やシラノール部が 1/2 以下となり、塗料密着性や、
亜鉛系めっきの耐穴あき性も不充分となるからである。
【0084】なお、前記特殊皮膜を形成させたこの発明
の表面処理鋼板は、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂な
どの有機樹脂と比べて優れた耐食性を示し、 SiO2などの
防錆顔料を添加しなくても充分な耐食性を有する。勿
論、シリコーン樹脂含有皮膜に防錆顔料を添加してもよ
く、さらに必要に応じて、潤滑性付与剤や、エポキシ
系、アクリル系およびウレタン系等の有機樹脂を添加し
ても良い。
【0085】特に、酸化ポリエチレンを添加した場合に
は、以下に示す理由から、極めてプレス成形性に優れた
鋼板を得ることができる。
【0086】前述のごとく、りん酸亜鉛系皮膜はプレス
油を保持し、金属間の緩衝体として摩擦による亜鉛系め
っき皮膜の損傷を防止する働きがあるが、プレス成形法
は、車種や部品によってもさまざまで、特に粘性の低い
プレス油を使用する場合や、高い面圧下でプレス加工さ
れる場合には鋼板表面にほとんどプレス油が無い、いわ
ゆる油切れ状態となる。
【0087】しかしながら、このような場合であって
も、シリコーン樹脂に酸化ポリエチレンを添加すると、
プレス油の違いや極端に高い面圧下でプレス加工された
としても問題なくプレス加工することができる。
【0088】図5は、プレス油の無い場合(表面を溶剤
脱脂後)の平面摺動性に対する酸化ポリエチレンの添加
量の関係の一例を示したものであるが、この図から明ら
かなように、酸化ポリエチレンを所定量以上添加すれ
ば、プレス油無しの場合にも優れた摺動性を示し、さら
に、その添加量が3質量%以上になると、酸化ポリエチ
レンを添加しないでプレス油を塗布した場合よりも摺動
性が優れているのがわかる。
【0089】すなわち、酸化ポリエチレンの添加量は、
シリコーン樹脂100 重量部に対して1〜30重量部とする
のが好ましく、より好ましくは3〜20重量部とする。酸
化ポリエチレンの添加量が1重量部未満の場合にはプレ
ス成形性の向上効果が顕著ではなくなるからであり、ま
た、酸化ポリエチレンを30重量部を超えて添加してもそ
れ以上の向上効果は期待できないばかりかコスト高を引
き起こすだけにすぎないからである。
【0090】尚、添加する酸化ポリエチレンの分子量が
低い場合には、自動車の製造工程で施される電着塗装皮
膜との密着性が低下する傾向があるため、分子量2000以
上の酸化ポリエチレンを用いるのがより好適である。
【0091】上述したところは、この発明の実施形態の
一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更
を加えることができる。
【0092】
【実施例】厚さ0.7 mmの冷延鋼板に、表3に示すめっき
法及び付着量で亜鉛又は亜鉛合金めっき皮膜を形成し、
この皮膜の表面に、表1に示すりん酸亜鉛系処理液によ
ってリン酸亜鉛系皮膜を形成した。尚、りん酸亜鉛系処
理の前には必要に応じて脱油処理を行った後、通常の表
面調整処理を行った。その後、このリン酸亜鉛系皮膜の
表面に、表2に示すシリコーン樹脂を含有する特殊皮膜
を表3に示す付着量で片面のみに形成した。かくして得
られた表面処理鋼板は、以下に示す各種試験を行い、諸
特性を評価した。
【0093】〔耐穴あき性 (無塗装耐食性) 〕各表面処
理鋼板から採取した試料を 165℃×25分間で空焼きした
後、下記に示すサイクルを1日1回、10日間繰り返し行
って、10日後の赤錆発生面積率を調査した。調査結果に
ついては、赤錆発生面積率50%未満を「〇」、赤錆発生
面積率50%以上100 %未満を「△」、及び赤錆発生面積
率100 %を「×」として評価した。
【0094】記 塩水噴霧(35℃, 6h)→乾燥(50℃, 3h)→湿潤(50
℃, 14h)→放置(35℃,1h)
【0095】〔耐穴あき性 (電着塗装後耐食性) 〕各表
面処理鋼板は、自動車車体製造工程に準じて、通常のア
ルカリ脱脂、次いで表面調整を行ったのち、りん酸塩処
理液SD2500(日本ペイント(株)社製)に2分間浸漬し
た。その後、日本ペイント(株)社製のV20電着塗料
(浴温:28〜30℃)を用いて電着電圧250 V、180 秒間
通電して電着塗装を施し、165 ℃で20分間焼き付けし電
着塗膜(膜厚:10μm )を形成した。電着塗装後のサン
プルは、ナイフによるクロスカットを入れた後、下記に
示す複合サイクル腐食試験を1日1回、100 日間にわた
って繰り返し行い、最大腐食深さを測定することによっ
て、電着塗装後の耐穴あき性を評価した。
【0096】記 塩水噴霧(35℃, 6h)→乾燥(50℃, 3h)→湿潤(50
℃, 14h)→放置(35℃,1h)
【0097】〔電着塗装性〕上記と同様の化成処理後の
鋼板を、日本ペイント(株)社製のV−20電着塗料(浴
温:28〜30℃)に浸漬し、電着電圧 250Vで 180秒間通
電して電着塗装を施し、 165 ℃で20分間焼き付けし、ピ
ンホール状の電着塗膜欠陥(ガスピンまたはクレータ
ー)等の発生を観察した。そして、ガスピンまたはクレ
ーターの発生がない場合を「〇」、同ガスピンまたはク
レーターの発生が1個/cm2以上3個/cm2未満の場合を
「△」および同ガスピンまたはクレーターの発生が3個
/cm2以上の場合を「×」として評価した。
【0098】〔塗料密着性〕耐水二次密着性試験により
評価した。上記のSD2500による化成処理、次いで電着塗
装後の鋼板に、自動車用中塗り塗装OTO-870H (日本ペイ
ント(株)社製)と自動車用上塗り塗装OTO650 (日本ペ
イント(株)製)をそれぞれ40μmの厚さで塗布し、 50
℃の純水に10日間浸漬したのち取り出し、直ちに2mm幅
のナイフによるクロスカットを入れた後、碁盤目テープ
を用いた剥離試験を行い、塗膜の剥離状況を観察した。
そして、剥離試験後の塗膜残存率が95%〜 100%を
「〇」、同塗膜残存率85%以上95%未満を「△」および
同塗膜残存率85%未満を「×」として評価した。
【0099】〔プレス成形性〕 A.鋼板表面にプレス油を塗布したときのプレス成形性 作製した鋼板(片面は第2層まで、反対面は第3層まで
形成)から採取した長さ300mm および幅20mmの試験片に
ついて、その表面にプレス油(日石洗浄油P1600)を
1.5g/m2 で塗布した後、押付荷重:9.8 N/mm2
引き抜き速度:80mm/sおよび室温の条件下で、長さ10
mm、幅20mmの長平面ダイスを用いて、平面摺動性試験を
行って摩擦係数を測定した。そして、測定された摩擦係
数μが、μ<0.12の場合を「〇」、同0.12≦μ<0.15の
場合を「△」および同0.15≦μの場合を「×」として評
価した。
【0100】B.鋼板表面にプレス油を塗布しないとき
のプレス成形性 試験片を試験前にn−ヘキサンにて脱脂し、洗浄油(プ
レス油)を塗布せずに上記A.と同じ試験法による平面
摺動性試験を行った。測定中に試験片が破断若しくは動
かなくなってしまった場合を「×」、測定は行えたが摩
擦係数が0.2 よりも大きい場合を「○」及び摩擦係数が
0.2 以下の場合を「◎」として評価した。
【0101】〔溶接性〕各種表面処理鋼板と冷延鋼板を
25点毎に交互に下記に示す条件でスポット溶接する混合
打点方式により連続打点を行った。電極先端径以上のボ
タン径が形成されるまでの打点数が500 点以上を
「○」、500 点未満を「×」として評価した。
【0102】記 (溶接条件) 使用電極: CF型×F型 加圧力: 2450N(250kgf) 溶接電流:チリ発生直前の電流 スクイズ: 35サイクル/60Hz スロープ: 0 ウエルド: 14サイクル/60Hz ホールド: 2サイクル/60Hz 冷却水量: 3 l/min
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【発明の効果】この発明によって、低コストで、かつ耐
穴あき性、塗料密着性、電着塗装性、プレス成形性、及
び溶接性に優れた表面処理鋼板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 りん酸亜鉛系皮膜中のMg含有量が異なる種々
の鋼板についてプレス加工試験を行い、このときのポン
チ荷重を、りん酸亜鉛系皮膜中のMg含有量に対してプロ
ットした図である。
【図2】 (a) 〜(d) はそれぞれ、りん酸亜鉛系皮膜中
のMg、Ni及びMnの含有量が異なる4種類の亜鉛系めっき
鋼板のりん酸亜鉛系皮膜表面のSEMで観察したときの
イメージ画像である。
【図3】 この発明の亜鉛系めっき鋼板上に形成するり
ん酸亜鉛系皮膜中のMnとNiの含有量の適正範囲を説明す
るための図である。
【図4】 この発明の亜鉛系めっき鋼板上に形成する粒
状のりん酸亜鉛結晶を説明するための図である。
【図5】 特殊皮膜中に添加量の異なる酸化ポリエチレ
ンを含有した鋼板のプレス油無しの平面摺動性を示した
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 望月 一雄 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛系めっき鋼板の表面に、Mgを含有す
    るリン酸亜鉛系皮膜を有し、さらに該リン酸亜鉛系皮膜
    の表面に、有機物と反応する官能基をもつ特定のシリコ
    ーン樹脂を含有する特殊皮膜を有することを特徴とする
    表面処理鋼板。
  2. 【請求項2】 前記特殊被膜は、さらに酸化ポリエチレ
    ンを含有する請求項1に記載の表面処理鋼板。
  3. 【請求項3】 前記リン酸亜鉛系皮膜は、Mgに加えてNi
    及びMnも含有する請求項1または2に記載の表面処理鋼
    板。
  4. 【請求項4】 前記リン酸亜鉛系皮膜中に、Mg:0.5 〜
    10.0質量%、Ni:0.1 〜2.0 質量%及びMn:0.5 〜8.0
    質量%を含有させ、かつMnとNiの含有量が下記(1) の関
    係式を満足する請求項3に記載の表面処理鋼板。 記 〔Ni〕×7.6 −10.9≦〔Mn〕≦〔Ni〕×11.4 ------ (1) 但し、〔Mn〕はMn質量%、〔Ni〕はNi質量%である。
  5. 【請求項5】 前記リン酸亜鉛系皮膜中に、Mg:2.0 〜
    7.0 質量%、Ni:0.1 〜1.4 質量%及びMn:0.5 〜5.0
    質量%を含有させ、かつMnとNiの含有量が下記(2) の関
    係式を満足する請求項3に記載の表面処理鋼板。 記 〔Mn〕≦〔Ni〕×11.4 ------ (2) 但し、〔Mn〕はMn質量%、〔Ni〕はNi質量%である。
  6. 【請求項6】 前記りん酸亜鉛系皮膜は、りん酸亜鉛結
    晶が粒状であり、かつその大きさが2.5 μm未満である
    請求項5に記載の表面処理鋼板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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